説明

回転ドラム式粉砕装置

【課題】排出時に被粉砕物が飛散しないように飛散防止カバーあるいは被粉砕物の回収カバーを設けていなければならないが、目クラ蓋と交換した排出スリットが狭いため被粉砕物が回転ドラム内に残る、また排出時には、飛散防止カバーが取り付けられていても被粉砕物の飛散を防ぐことが困難である。と同時に被粉砕物の回収歩留まりが低下する。また排出時の密閉性は保つことができない。等の課題がある。
【解決手段】粉砕室と粉砕媒体と被粉砕物を分離する排出スリットを有した分離室があり、排出時には本体を回転しながら転倒することにより、排出シュート部に被粉砕物が回収されることから被粉砕物の飛散はなく、また排出スリット部が広いために被粉砕物を完全に回収する特徴がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な構成の回転ドラム式粉砕装置に関する。さらに詳しくは、本回転ドラム式粉砕装置は、電動機により回転ドラムを回転させる回転ドラム式粉砕装置に於いて該回転ドラムを二部屋に分け、一つの部屋は、粉砕用に、他の一つは、被粉砕物の排出のために粉砕媒体と被粉砕物の分離用とした部屋を有し、該回転ドラムには、粉砕用に回転する電動装置と粉砕後の被粉砕物を排出用に転倒させる電動装置を設けている回転ドラム式粉砕装置に関する。
【0002】
本回転ドラム式粉砕装置は、該回転ドラムの粉砕室側に該回転ドラムを回転させる軸受けを設け、該回転ドラムの約重芯側に該回転ドラムを転倒させる軸受けを設ける。ここで該回転ドラムの粉砕用部屋を粉砕室と被粉砕物と粉砕媒体を分離する部屋を分離室と言う。
【0003】
該回転ドラムの粉砕室と分離室の繋ぎ部分を、連絡短管と言い、該回転ドラムが回転している粉砕運転中に被粉砕物あるいは粉砕媒体が分離室側に移動しないように逆スクリュウ羽根を設けている。粉砕が終了後、被粉砕物を排出するために該回転ドラムを回転しながら徐々に該回転ドラムを転倒させる。この転倒により、粉砕室の被粉砕物と粉砕媒体は、連絡短管を通り分離室に移動する。
【0004】
該回転ドラムは、粉砕室から連絡短管部分に向かって円錐状に狭くなりまた連絡短管から分離室に向かって広くなる円錐状を有している。分離室内部は、連絡短管と反対側に被粉砕物と粉砕媒体との分離用に粉砕媒体のサイズを考慮した隙間のスリットまたは網を設けている。
【0005】
回転ドラムは、回転ドラム転倒用軸受けに取り付けられ該回転ドラムの回転を保護する二つ以上のローラーを有した回転ドラム支持腕内に収められ、該回転ドラム支持腕の軸受けを介して該回転ドラムの粉砕室側に取り付けられた電動装置による回転と回転ドラム架台に取り付けられた該回転ドラム転倒用軸受けを介して転倒電動装置により該回転ドラムを転倒させる。この該回転ドラムの回転をしつつ該回転ドラムの転倒をし被粉砕物と粉砕媒体を連絡短管から分離室に移動することができる。
【0006】
またスリットまたは網に対する連絡短管と反対側に被粉砕物の排出口を設け、また排出口を有している側の該回転ドラムの外側より被粉砕物を供給するための配管を設ける。その配管は、該スリットまたは網を貫通し連絡短管を通り粉砕室にまで通じることもある。
【0007】
該回転ドラムは、不純物混入を防ぐために、セラミック、プラスチックのライニングをしたり、内部の冷却、加熱用に外装にジャケットを設けることがあり、また該回転ドラムの粉砕室には、粉砕媒体または、被粉砕物も投入可能な投入口を設ける事がある。
【0008】
本発明の回転ドラム式粉砕装置は、回転ドラムが回転ドラム転倒用軸受けで回転ドラム支持腕に収まっているが、回転ドラム支持腕の粉砕室側の軸受け部近くに回転ドラム架台から安全のためのサポート装置を取ることがある。
【0009】
本発明の回転ドラム式粉砕装置は、回転ドラムが回転ドラム転倒用軸受けで回転ドラム支持腕に収まり、回転と転倒が行われるが、回転ドラム支持腕と回転ドラム架台から回転ドラムの転倒の際の安全のためのサポート装置を取ることがある。
【背景技術】
【0010】
ドラムを回転させる回転ドラム式粉砕機装置は、従来から公知の考えとして多く利用されている。
【0011】
従来の回転ドラム式粉砕装置は、回転ドラムの投入口から粉砕媒体と被粉砕物を投入し、回転ドラムを回転することにより粉砕を行う。被粉砕物の排出は、投入口の目クラ蓋をスリットあるいは網に取り換え、回転ドラムを再度回転することにより被粉砕物を排出する。このとき被粉砕物の飛散を防ぐために被粉砕物の回収を兼ねた防塵カバーを設けることが一般的である。この回転ドラム式粉砕装置をボールミルと言われ古くから利用されている。
【0012】
また特許文献1記載に、被粉砕物の排出時に回転ドラムを転倒させ、最初から取り付けている排出用スリット部を下向きにし、バルブを開き回転ドラムを回転させながら被粉砕物を排出する回転ドラム式粉砕装置がある。この場合は、粉砕方法が湿式であり、被粉砕物の排出が従来の粉砕装置に比較してスリットの取り換えは不要であるが、本発明と比較すると排出スリットの面積が小さいことから排出に時間がかかり、また粉砕媒体に付着した被粉砕物が取れにくく残留物が多くなる。また、この装置を乾式に使用した場合は、完全に排出することが困難である。
【0013】
古く従来から利用されている連続式回転粉砕装置は、回転ドラムが一つのであり投入口の反対側に被粉砕物の粉砕後の排出用のスリットを設け被粉砕物を連続的に投入排出する。この回転ドラム式粉砕装置をチューブミルと言われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平06−134330号公報
【特許文献2】特開平06−320035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで本発明者が検討した結果、従来の方法では、被粉砕物を粉砕処理後排出するに当たり、粉砕媒体と処理された被粉砕物を分離することに疑問を持った。
【0016】
従来の回転ドラム式粉砕装置は、被処理物を排出する前から排出用スリットを有している場合と、排出時に排出スリットを粉砕時の目クラ蓋と交換して排出する方法がある。
【0017】
被処理物を排出する前から排出用スリットを有している場合は、被粉砕物の処理中に、排出用スリットの溝の中に被粉砕物が入ってしまい、これにより未処理の被粉砕物が、混入する課題がある。
【0018】
また、一方従来の回転ドラム式粉砕装置に於いて、被粉砕物を粉砕処理後排出するに当たり、被粉砕物と粉砕媒体とを分離するために目クラ蓋を排出用スリットに交換し、被粉砕物を排出する方法は、排出スリットに交換し、回転ドラムを回転しなければ被粉砕物を排出することはできない。
【0019】
そのために従来の回転ドラム式粉砕装置は、乾式にて被粉砕物を排出する場合に、被粉砕物が飛散しないように回転ドラムの外周に被粉砕物の回収を兼ねた飛散防止カバーを取り付け、被粉砕物を飛散防止カバーで捕集しする。回転ドラムと防塵カバーとの間には、どうしても隙間ができる。このために被粉砕物の回収率の低下を招き、環境にも良くない課題がある。
【0020】
また従来の回転ドラム式粉砕装置は、回転ドラム部分が長いため、回転ドラムの両サイドに排出されない被粉砕物が残ることは避けられないことと、あるいは、排出スリットが、回転ドラムの中心部に設けられることが一般であり、またその排出スリット面積が、小さいことから完全に排出することは、不可能な課題がある。
【0021】
また回転ドラムと防塵カバーとの間には隙間ができるため不活性ガス雰囲気での被粉砕物の粉砕排出は、不可能な課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意開発に努力をした結果、下記構成の回転ドラム式粉砕装置にすれば、後述の実施例で示すように、粉砕処理された被粉砕物を問題なく排出回収することができることが分かり、本発明に想到した。本発明は、粉砕処理のみでなく混合、反応、メカニカルアロイング、メカニカルミリング等にも充分応用されることも分かった。
【0023】
処理された被粉砕物を回転ドラム内から限りなく全量を排出するために排出用スリットの面積を多くした。
【0024】
その方法は、前記した通り本発明の回転ドラム式粉砕装置に於いて該回転ドラムを粉砕室と分離室とに分け、粉砕室と分離室との連結短管は、内部に粉砕媒体が通ることができる程度のスクリュー羽根を有した細い連結短管を設けている。
【0025】
該連結短管は、被粉砕物の粉砕運転中は、粉砕媒体と被粉砕物が粉砕室から分離室に移動しないように該回転ドラムの回転と逆回転のスクリュー羽根を有し、また粉砕運転が終了し被粉砕物を排出する場合は、該回転ドラムの回転を逆回転しつつ該回転ドラムを転倒することにより粉砕媒体と被粉砕物を該連結短管を通り分離室へ移動させる目的である。
【0026】
該回転ドラムの分離室に設けられた排出用スリットは、該回転ドラム直径に限りなく近い直径を有した大きな面積を得ることが可能である。処理後の被粉砕物の排出は、該回転ドラムを転倒しつつ粉砕媒体と被粉砕物を分離室の該排出用スリットで分離が容易に行われ、該排出用スリットの面積が広いことから未回収となる残量がないことが特徴である。
【0027】
粉砕中の回転ドラムの回転は、回転ドラムを横型状態で回転し、被粉砕物を排出する場合には、回転ドラムを地面に直交状態に立てて回転させることで被粉砕物が飛散なく回収されることができる。
【0028】
また、不活性ガス雰囲気で粉砕を行う場合は、回転ドラムの被粉砕物の排出側を上部に向けて、バルブセットを利用して回転ドラム内部を真空にし、不活性ガスを注入し、不活性状態にした被粉砕物入れた投入ホッパーを上部のバルブに取り付け、配管を通して、被粉砕物を粉砕室に投入し、次に回転ドラムを横状態に戻し、横状態にて回転ドラムを回転し不活性雰囲気状態で粉砕することができる特徴がある。
【0029】
また不活性雰囲気にて粉砕した被粉砕物を排出する場合は、回転ドラムを回転しながら排出バルブ側を下側に転倒をし、不活性ガス状態の製品受けを取り付け回転ドラムを回転しながら不活性ガス状態で被粉砕物の排出ができ、被粉砕物を大気に接触させることなく回収できる特徴がある。
【発明の効果】
【0030】
本発明の回転ドラム式粉砕装置は、回転ドラムを粉砕室と分離室とに分けたことが、被粉砕物を粉砕処理し、被粉砕物を排出する場合に排出スリットを従来の回転ドラム粉砕装置より大きくすることが可能であり、そのために回転ドラム内部の残量がなく、完全排出が可能であることが最大の発明の効果がある。
【0031】
また、本発明の回転ドラム式粉砕装置は、被粉砕物を排出する場合に飛散防止のカバーを必要としないことから集塵装置の必要がなく、これに対する被粉砕物の環境問題が解決され、なお回収は全量となる効果がある。
【0032】
また、本発明は、回転ドラム内の真空引きと不活性ガス雰囲気状態で被粉砕物を投入、排出できることから従来の回転ドラム式粉砕装置では不可能であった不活性ガス雰囲気での粉砕ができ、大きな効果がある。
【0033】
本発明は、具体的には実施例で示すが、回転ドラムに粉砕室と分離室を設け回転ドラムを回転と転倒が出来ることから完全排出が可能であり、集塵を兼ねた飛散防止カバーの不要、不活性ガス状態での製品の回収ができる、等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態における14回転ドラム式粉砕装置である。
【図2】本発明の29回転ドラム断面である。
【図3】本発明による32排出状態の回転ドラムである。
【図4】本発明による37投入ホッパーを取り付けた断面である。
【図5】本発明による34バルブセット
【図6】本発明による35回転ドラム式粉砕装置テスト機
【図7】36従来の回転ドラム式粉砕装置である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、本実施形態の回転ドラム式粉砕装置の構成の概略を、図1に示す。
【0036】
本発明の14回転ドラム式粉砕装置は、粉砕室20と分離室21を有した回転ドラム1を回転させる回転ドラム用支持腕12で支持し、回転ドラム用軸受け11を通して回転ドラム回転用電動装置9により回転される。
【0037】
該回転ドラム1は、該回転ドラム1の内部を冷却(加熱)するために該回転ドラムの外装にジャケット23を設け、冷却(加熱)水入口4と出口5を有したロータリージョイント13を介して該回転ドラム1の内部の温度調整を行う。
【0038】
また、マンホール3を有した該回転ドラム1は、主に被粉砕物30を粉砕媒体26により粉砕(混合)をされ粉砕室20と排出スリット22により被粉砕物30と粉砕媒体26と分離する分離室21を設ける。
【0039】
分離室21で排出スリット22により被粉砕物30は、粉砕媒体26と分離され排出シュート25で被粉砕物30を集め、排出バルブ6を介して製品受け31で回収される。
【0040】
また、該回転ドラム1内の粉砕室20と分離室21を結ぶ連結短管27の目的は、粉砕室20で粉砕されている間に被粉砕物30及び粉砕媒体26が容易に分離室21に移動しないように連結短管27内部にスクリュー羽根を取り付けられることがある。このスクリュー羽根の回転方向と該回転ドラム1の回転方向により被粉砕物30及び粉砕媒体26の移動を調整することができる。
【0041】
図1の14回転ドラム式粉砕装置は、被粉砕物30を粉砕する時の形状であり、図2の29回転ドラム断面は、粉砕室20内部に粉砕媒体26や被粉砕物30を充填し被粉砕物30を粉砕する時の状態であり、その場合の断面図である。
【0042】
また図3の32排出状態の回転ドラムは、粉砕の処理が終了し排出時の形状であり、被粉砕物と粉砕媒体が、粉砕室から連結短管を通り分離室に移動する状態である。
【0043】
これは、該回転ドラム1を回転しながらまたそれを回転ドラム転倒用電動装置8により回転ドラム転倒用軸受けスプロケット2−1及び回転ドラム転倒用軸受け2を介し、転倒しつつ粉砕媒体26と被粉砕物30を粉砕室20から分離室21に移動させる。これにより排出スリット22で粉砕媒体26と被粉砕物30とが分離され、被粉砕物30は、排出シュート25を通じて製品受け31で回収される。この時製品を大気との接触を防ぐため排出バルブ6を操作することもある。
【0044】
被粉砕物30を該回転ドラム1に投入する場合、図1の状態でマンホール3から投入する方法と該回転ドラム1を被粉砕物30を排出する状態と反対方向に排出スリット22が上向きになる状態で投入バルブ7のところに被粉砕物投入ホッパー33を取り付け配管28を介して粉砕室20に投入することもできる。これは、図4の37投入ホッパーを取り付けた断面図でわかる。
【0045】
また、配管28は、排出シュート25から排出スリット22を貫通して連結短管27に取り付けられているスクリュー羽根の中を通り粉砕室20の内部まで入っている。この配管28は、必要に応じて使用し、必ずしも常に必要とするものではない。
【0046】
大気に接触させることのできない被粉砕物30を不活性ガス(反応ガス)雰囲気で粉砕(混合または反応)する場合には、投入バルブ7に34バルブセットを取り付け、先ず回転ドラム1の内部を真空引きバルブ34−1の操作にて真空にし、次にガス注入バルブ34−2の操作にて、不活性ガス(反応ガス)雰囲気にし、投入ホッパー33から処理物を回転ドラム1に投入することができる。
【0047】
また、不活性ガス(反応ガス)雰囲気で粉砕(混合または反応)処理された材料を排出する場合は、排出バルブ6に必要に応じて34バルブセットの一部を取り付け、真空引きした製品受け31を下側に向けながら被処理物を排出する。この時投入バルブ7側から不活性ガス等を注入することもできる。
【0048】
また、被処理物を排出したのちに排出スリット22の上にある粉砕媒体26は、回転ドラム1を回転しながら回転ドラム転倒用電動装置9により排出スリット22側を37投入ホッパーを取り付けた断面のように上部に向けることにより粉砕媒体26を分離室21から連結短管27を通って粉砕室20に戻すことができる。
【0049】
ここでの被粉砕物とは、被処理物が、粉砕用、混合用、分散用、反応用、メカニカルアロイング用、メカニカルミリング用、等の目的に粉砕媒体を使用することにより処理される物を言う。例えば、電池材料の粉砕、電池材料の混合、金属と酸化物の粉砕または混合、金属と金属の粉砕または混合、酸化物間の粉砕または混合がある。あるいは、金属による合金の製造、金属と無機物による材料の製造、金属と酸化物による材料の製造、無機物と酸化物による材料の製造、無機物と無機物による材料の製造、酸化物と酸化物による材料の製造がある。また金属と有機物による材料の製造、無機物と有機物とによる材料の製造、酸化物と有機物による材料の製造、有機物と有機物による材料の製造がある。これらの粉砕、混合、反応、等には、一種類でなく数種類の材料を組み合わせて行うこともある。
【0050】
また、ここでの粉砕媒体とは、被処理物が、粉砕用、混合用、分散用、反応用、メカニカルアロイング用、メカニカルミリング用、等の目的に使用される媒体のことを言う。例えば、鋼球、セラミックボール、プラスチックボール、あるいは被粉砕物自身等がある。
【実施例1】
【0051】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明をする。
【0052】
テスト機として粉砕室の大きさは50cmφ×25cmL(容量:約58リットル)である。また粉砕室は、連結短管27に向かって円錐状になっている。粉砕媒体を90kg充填し、回転ドラム1の内部を真空状態にし、アルゴンガスで満たす。粉砕媒体にφ5mmのクロム鋼球を使用した。
【0053】
次に32排出状態の回転ドラム図を180度上下反対にした状態で、即ち、37投入ホッパーを取り付けた断面図のように投入ホッパー31が上向きとなる状態でバルブ7のところに取り付け、アルゴンガス雰囲気状態の金属材料8kgと酸化物1kgを投入ホッパー31から連結短管27を介して粉砕室20に投入した。
【0054】
次に回転ドラム1を29回転ドラム断面のように横状態とし、回転ドラム1の冷却用ジャケット26に温度15℃一定の冷却水15リットル/min,を流し、運転した。そのテスト機の参考図を35回転ドラム式粉砕装置テスト機として示す。
【0055】
このテストの目的は、粉砕だけでなく金属材料の結晶構造を延ばし破壊し、そこに酸化物を埋め込むように混合する。アルゴンガス雰囲気状態で、この繰り返しにより金属材料を層状にしたナノ結晶粒子構造の材料を製造することである。
【0056】
テスト機の電動機は、回転ドラム用が1・5kW、回転ドラム転倒用0.4kWである。回転ドラムの回転数は、60rpmとし48時間運転をした。その結果は、乾式でその他の粉砕機(例えば36従来の回転ドラム式粉砕装置)と比較した場合、本発明の回転ドラム式粉砕装置の方が、均一な目的の粉砕混合ができた。
【0057】
一方、被処理物を排出する場合に36従来の回転ドラム式粉砕装置は、回転ドラムを回転しながらでないと被処理物の排出ができない。従って、被処理物を排出する場合には、回転ドラムに防塵カバーを取り付けた状態で排出したため被処理物は大気と接触し酸化が進み、目標とした製品を得ることができなかった。
【0058】
また、36従来の回転ドラム式粉砕装置は、被処理物を排出する場合は、回転ドラムの目クラ蓋を排出用のスリット蓋に交換する必要がある。本発明は、このような交換作業をする必要もなく、排出カバーを取り付ける必要もない。
【実施例2】
【0059】
また、前記同様のドラム容量約58リットルテスト機に於いて、かさ比重が1.2のアルミナとかさ比重0.3のカーボンの混合粉砕テストについて説明する。この場合は、不活性ガス雰囲気でなく大気雰囲気にて行った。
【0060】
粉砕媒体を直径10mmのアルミナボール45kgに被粉砕物のアルミナ9kgとカーボン1kgを投入した。
【0061】
テストの目的として被粉砕物の完全混合と完全排出である。粉砕時間は、1時間で目的の混合粉砕が得られた。
【0062】
もう一つの目的の完全排出については、最初に投入した材料のアルミナとカーボンの合計が10kgのところ排出量も10kgであり、完全に排出された。
【0063】
従来の回転ドラム式粉砕装置では、排出時に粉塵として回収不能な分と回転ドラムが横長なことからドラムの両サイドの隅に残る未回収分などから排出された量の歩留まりは、85〜90%となる。
【0064】
このように従来の回転ドラム式粉砕装置の欠点を改善したのが、本発明の回転ドラム式粉砕装置である。粉砕装置と表現をしているが、粉砕だけを目的としたものではなく前記したが、粉砕、混合、分散、反応、メカニカルアロイング、メカニカルミリング、等の目的に粉砕媒体を使用することにより処理される物を言う。例えば、電池材料の粉砕、電池材料の混合、金属と酸化物の粉砕または混合、金属と金属の粉砕または混合、酸化物間の粉砕または混合、あるいは、前記記載の材料のメカニカルアロイングまたはメカニカルミリング等がある。
【0065】
ここで言う、かさ比重とは、粉体、粒体、繊維体などをある容器に詰めたとき、個々の粒子や繊維の間に存在する空間を含めた重さである。
【0066】
ここで言う、メカニカルアロイングとは、メカニカルアロイング法のことで不活性雰囲気中でのボールミル等におけるボールの衝突エネルギーを利用して、粉末同士の折りたたみと圧延を繰り返し起こさせることにより、微細に混合していく方法。極限的には原子オーダーまでの混合が可能であるため、従来の方法(融解→凝固)では得られなかった特異な合金相の実現も期待でき、新物質・新材料の創成法として研究されている。
【0067】
ここで言う、メカニカルミリングとは、メカニカルミリング法のことでボールミル等を用いて撹拌、衝撃、混合等の強い力を与え金属材料に超強加工を施す方法であり、メカニカルアロイングと並んで新物質・新材料の創成法として研究されている。
【産業上の利用可能性】
【0068】
従来の回転式ボールミルでは、二種類の材料を混合粉砕する場合、実施例2で示したように、例えば、カーボンとアルミナの被処理物を混合粉砕した場合、排出後の歩留まりが、85〜90%となり、即ち10〜15%が、ドラム内部の残量とその他として未回収であった。
【0069】
ドラム内部の残量は、必ずしもアルミナとカーボンの比が初期の比率と同じでないことから次に初期と同じ比率の材料を投入することができない。即ち精密混合粉砕には、従来の回転ドラム式粉砕装置を使用することは不可能である。
【0070】
この結果からわかるように精密混合粉砕には、本発明の回転ドラム式粉砕装置は、欠かせない利用可能な装置である。
【0071】
本発明の回転ドラム式粉砕装置は、従来の回転ドラム式粉砕装置では、不可能な不活性ガス雰囲気での粉砕は、電池材料を始め同様な雰囲気で行うメカニカルアロイングやメカニカルミリングをするには欠かすことのできない回転ドラム式粉砕装置である。
【0072】
不活性ガス雰囲気でメカニカルアロイング、メカニカルミリングを行うことのできる装置は、現在では、ほとんどがテスト機クラスの小型機であり生産量をこなすには無理がある。
【0073】
また、縦型の媒体撹拌ミルが、従来からあるが撹拌シャフトの部のシールが問題となり、不活性ガスを入れて完全密閉の雰囲気を作ることは難しい。
【符号の説明】
【0074】
1 回転ドラム
2 回転ドラム転倒用軸受け
2−1回転ドラム転倒用軸受けスプロケット
3 マンホール
4 冷却(加熱)水入口4
5 冷却(加熱)水出口5
6 排出バルブ
7 投入バルブ
7−1バルブ
8 回転ドラム転倒用電動装置
9 回転ドラム回転用電動装置
10 回転ドラム架台
11 回転ドラム用軸受け
12 回転ドラム用支持腕
13 ロータリージョイント
14 回転ドラム式粉砕装置

20 粉砕室
21 分離室
22 排出スリット
23 ジャケット
24 回転軸
25 排出シュート
26 粉砕媒体
27 連結短管
28 配管
29 回転ドラム断面
30 被粉砕物
31 製品受け
32 排出状態の回転ドラム
33 投入ホッパー
34 バルブセット
34−1 真空引きバルブ
34−2 ガス注入バルブ
34−3 短管
35 回転ドラム式粉砕装置テスト機
36 従来の回転ドラム式粉砕装置
37 投入ホッパーを取り付けた断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明は、回転ドラムを回転させる電動装置と該回転ドラムを転倒させる電動装置を有し、該回転ドラムを粉砕室と粉砕媒体と被粉砕物とを分離する排出スリットを有した分離室の二室からなることを特徴とする回転ドラム式粉砕装置。
【請求項2】
回転ドラム架台の回転ドラム転倒用軸受けに取り付けられ、また該回転ドラムの電動装置による回転を保護する二つ以上のローラーを有した回転ドラム支持腕内に収められた該回転ドラムは、粉砕室側に取り付けられた該回転ドラムの軸を回転ドラム支持腕の粉砕室側の回転ドラム軸受けを介した電動装置により回転される。この該回転ドラムを有した回転ドラム支持腕は、該回転ドラムの回転用電動機と共に転倒用電動機により転倒することができることを特徴とする請求項1記載の回転ドラム式粉砕装置。
【請求項3】
本発明の回転ドラム内の粉砕室と分離室を連絡する連絡短管を有することを特徴とする請求項1〜2記載の回転ドラム式粉砕装置
【請求項4】
回転ドラム内に不活性ガスを注入して金属、あるいは金属と酸化物、あるいは金属と無機物、等の粉砕を行い、回転ドラム式粉砕装置から被粉砕物を排出する場合においても不活性ガス状態で排出できる請求項1〜3記載の回転ドラム式粉砕装置。
【請求項5】
回転ドラムは、回転ドラム転倒用軸受けに取り付けられ回転ドラムの回転を保護する二つ以上のローラーを有した回転ドラム支持腕内に収められ、該回転ドラム支持腕の軸受けを介して該回転ドラムの粉砕室側に取り付けられた電動装置による回転と回転ドラム架台に取り付けられた該回転ドラム転倒用軸受けを介して転倒電動装置により該回転ドラムを転倒させることを特徴とする請求項1〜4記載の回転ドラム式粉砕装置。
【請求項6】
回転ドラムの安全な回転を行うために回転ドラム架台から粉砕室側の回転ドラム支持腕にサポート装置を取り付けることがある。また該回転ドラムを転倒する場合にも安全な転倒をするためにサポート装置を取り付けることがある。このようなことを特徴とする請求項1〜5記載の回転ドラム式粉砕装置。
【請求項7】
本発明の回転ドラムの外装に冷却あるいは加熱用にジャケットを設けることがあることを特徴とする請求項1〜6記載の回転ドラム式粉砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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