説明

回転ホイール、光源装置、プロジェクタ、及び、回転ホイールの製造方法

【課題】 ハブ等の部材を使用することなく好適に回転ホイールの重量合わせを行って、振動の発生を抑止しながら小型化、軽量化や部品コストの低減、及び回転ホイールの組み立ての製造コストを低減することができる回転ホイール、それを用いた光源装置、プロジェクタ、及び、その回転ホイールの製造方法を提供する。
【解決手段】 回転ホイールは、円板形状をした回転ホイールであって、上記円板形状の周縁に沿って蛍光体が設けられる蛍光発光領域101aと、回転ホイールの上記蛍光発光領域が形成される面を基準面とし、当該基準面に対して段状に形成された環状の段差部101bと、段差部101bに設置されたバランス補正材である接着剤102と、を備え、段差部101bに上記回転ホイールの回転時の回転バランスを均一化させるように接着剤102を設置させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ホイール、光源装置、プロジェクタ、及び、回転ホイールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、パーソナルコンピュータの画面やビデオ画像、さらにメモリカード等に記憶されている画像データによる画像等をスクリーンに投影する画像投影装置としてのデータプロジェクタが多用されている。このプロジェクタは、光源から射出された光をDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)と呼ばれるマイクロミラー表示素子、又は、液晶板に集光させ、スクリーン上にカラー画像を表示させるものである。
【0003】
そして、プロジェクタは、パーソナルコンピュータやDVDプレーヤーなどの映像機器の普及に伴って、業務用プレゼンテーションから家庭用に至るまで、用途が拡大している。このようなプロジェクタにおいて、従来は高輝度の放電ランプを光源とするものが主流であったが、近年、光源としてレーザーダイオード等の半導体発光素子を用いる開発や提案が多々なされている。
【0004】
例えば、レーザーダイオードによる青色の波長帯域光を射出する励起光源と、この励起光源から射出された光を吸収して可視光に変換する蛍光体の層を有し、モータによって回転駆動される蛍光ホイール(回転板)と、を備えた光源装置及びこの光源装置を備えたプロジェクタが提案されている。
【0005】
下記に示す特許文献1には、カラーホイールのような回転ディスクの回転時の重量バランスを均等として振動を抑えるために回転ディスクに設けた皿状の容器に硬化性の液体を収容して、回転ディスクの振動を効果的に除去することができる振動防止装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−197922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1の提案は、カラーホイールを回転軸の先端で結合させる皿状の容器であるハブからなる部材を設けて、そのハブに接着剤を注入させる構成であって、部品数を増やすとともに、製造工程も増やすこととなり製造コストを増加させてしまうものであった。
【0008】
また、ハブを設けることにより、ホイールの励起光源側に励起光を効率良く集光させるための集光レンズ等からなるレンズユニットを配置させるにあたって、レンズユニットとハブとのスペースを確保しながら配置させることとなり、大型化させてしまうという課題があった。
【0009】
本発明は上述したような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ハブ等の部材を使用することなく好適に回転ホイールの重量合わせを行って、振動の発生を抑止しながら小型化、軽量化や部品コストの低減、及び回転ホイールの組み立ての製造コストを低減することができる回転ホイール、それを用いた光源装置、プロジェクタ、及び、その回転ホイールの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の回転ホイールは、円板形状をした回転ホイールであって、前記円板形状の周縁に沿って蛍光体が設けられる蛍光発光領域と、前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が形成される面を基準面とし、当該基準面に対して段状に形成された環状の段差部と、前記段差部に設置されたバランス補正材と、を備え、前記段差部に前記回転ホイールの回転時の回転バランスを均一化させるように前記バランス補正材を設置させたことを特徴とする。
【0011】
本発明の光源装置は、上述の本発明の回転ホイールと、前記回転ホイールに光を照射させる励起光源と、前記回転ホイールと連結されて該回転ホイールを回転させるホイールモータと、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明のプロジェクタは、光源装置と、表示素子と、前記光源装置からの光を前記表示素子に導光する光源側光学系と、前記表示素子から射出された画像をスクリーンに投影する投影側光学系と、前記光源装置や表示素子を制御するプロジェクタ制御手段と、を備え、前記光源装置が、複数の光源として赤色波長帯域光を発する光源、青色波長帯域光を発する光源、及び、緑色波長帯域光を発する光源を備えている上述の本発明の光源装置であることを特徴とする。
【0013】
本発明の回転ホイールの製造方法は、ベース板を機械加工において円板形状とした回転ホイールの製造方法において、前記回転ホイールが、前記円板形状の周縁に沿って蛍光体が設けられる蛍光発光領域と、前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が形成される面を基準面とし、当該基準面に対して段状に形成された環状の段差部と、前記段差部に設置されたバランス補正材と、を備え、前記円板形状のベース板の機械加工のときに、前記段差部を形成させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の回転ホイールの製造方法は、金属製で薄板のベース板を機械加工において円板形状とした回転ホイールの製造方法において、前記回転ホイールが、前記円板形状の周縁に沿って蛍光体が設けられる蛍光発光領域と、前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が形成される面を基準面とし、当該基準面に対して段状に形成された環状の段差部と、前記段差部に設置されたバランス補正材と、を備え、前記円板形状のベース板の機械加工のときに、前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が形成される平面を基準として当該回転ホイールを所定の角度折り曲げることで前記段差部を形成させることもある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ハブ等の部材を使用することなく好適に回転ホイールの重量合わせを行って、振動の発生を抑止しながら小型化、軽量化や部品コストの低減、及び回転ホイールの組み立ての製造コストを低減することができる回転ホイール、それを用いた光源装置、プロジェクタ、及び、その回転ホイールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るプロジェクタを示す外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るプロジェクタの機能ブロックを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るプロジェクタの内部を示す平面模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係る蛍光発光装置の説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る蛍光ホイールの斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る変形例の蛍光発光装置の説明図である。
【図7】本発明の実施形態に係る変形例の蛍光ホイールの斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る蛍光発光装置の重量バランス調整工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて詳説する。図1は、プロジェクタ10の外観斜視図である。なお、本実施形態において、プロジェクタ10における左右とは投影方向に対しての左右方向を示し、前後とはプロジェクタ10のスクリーン側方向及び光線束の進行方向に対しての前後方向を示す。
【0018】
そして、プロジェクタ10は、図1に示すように、略直方体形状である。このプロジェクタ10は、プロジェクタ筐体の前方の側板とされる正面パネル12の側方に投影口を覆うレンズカバー19を有する。この正面パネル12には複数の吸気孔18を設けている。さらに、プロジェクタ10は、図示しないがリモートコントローラからの制御信号を受信するIr受信部を備えている。
【0019】
また、筐体の上面パネル11にはキー/インジケータ部37が設けられている。このキー/インジケータ部37には、電源スイッチキーや電源のオン又はオフを報知するパワーインジケータ、投影のオン、オフを切りかえる投影スイッチキー、光源ユニットや表示素子又は制御回路等が過熱したときに報知をする過熱インジケータ等のキーやインジケータが配置されている。
【0020】
さらに、筐体の背面には、背面パネルにUSB端子やアナログRGB映像信号が入力される映像信号入力用のD−SUB端子、S端子、RCA端子が設けられている。さらに、この筐体の背面には、音声出力端子等を設ける入出力コネクタ部及び電源アダプタプラグ等の各種端子20が設けられている。また、背面パネルには、複数の吸気孔が形成されている。なお、図示しない筐体の側板である右側パネル、及び、図1に示した側板である左側パネル15には、各々複数の排気孔17が形成されている。また、左側パネル15の背面パネル近傍の隅部には、吸気孔18も形成されている。
【0021】
次に、プロジェクタ10のプロジェクタ制御手段について図2の機能ブロック図を用いて述べる。プロジェクタ制御手段は、制御部38、入出力インターフェース22、画像変換部23、表示エンコーダ24、表示駆動部26等から構成される。
【0022】
この制御部38は、プロジェクタ10内の各回路の動作制御を司るものである。そして、この制御部38は、CPU、各種セッティング等の動作プログラムを固定的に記憶したROM及びワークメモリとして使用されるRAM等により構成されている。
【0023】
そして、このプロジェクタ制御手段により、入出力コネクタ部21から入力された各種規格の画像信号は、入出力インターフェース22、システムバス(SB)を介して画像変換部23で表示に適した所定のフォーマットの画像信号に統一するように変換される。その後、変換された各種規格の画像信号は、表示エンコーダ24に出力される。
【0024】
また、表示エンコーダ24は、入力された画像信号をビデオRAM25に展開記憶させた上でこのビデオRAM25の記憶内容からビデオ信号を生成して表示駆動部26に出力する。
【0025】
表示駆動部26は、表示素子制御手段として機能するものであり、表示エンコーダ24から出力された画像信号に対応して適宜フレームレートで空間的光変調素子(SOM)である表示素子51を駆動する。光源ユニット60から射出された光線束は先述の光源側光学系170を介して表示素子51に照射される。そして、このプロジェクタ10は、表示素子51の反射光で光像を形成し、先述の投影側光学系220を介して図示しないスクリーンに画像を投影表示する。なお、この投影側光学系220の可動レンズ群235は、レンズモータ45によりズーム調整やフォーカス調整のための駆動が行われる。
【0026】
また、画像圧縮/伸長部31は、画像信号の輝度信号及び色差信号をADCT及びハフマン符号化等の処理によりデータ圧縮して着脱自在な記録媒体とされるメモリカード32に順次書き込む記録処理を行う。
【0027】
さらに、画像圧縮/伸長部31は、再生モード時にメモリカード32に記録された画像データを読み出し、一連の動画を構成する個々の画像データを1フレーム単位で伸長する。そして、この画像データを、画像変換部23を介して表示エンコーダ24に出力し、メモリカード32に記憶された画像データに基づいて動画等の表示を可能とする処理を行う。
【0028】
筐体の上面パネル11に設けられるメインキー及びインジケータ等により構成されるキー/インジケータ部37からの操作信号は、直接に制御部38に送出される。また、リモートコントローラからのキー操作信号は、Ir受信部35で受信され、Ir処理部36で復調されたコード信号が制御部38に出力される。
【0029】
なお、制御部38にはシステムバス(SB)を介して音声処理部47が接続されている。この音声処理部47は、PCM音源等の音源回路を備えており、投影モード及び再生モード時には音声データをアナログ化し、スピーカ48を駆動して拡声放音させる。
【0030】
また、制御部38は、光源制御手段としての光源制御回路41を制御している。この光源制御回路41は、画像生成時に要求される所定波長帯域の光が光源ユニット60から射出されるように、光源ユニット60の赤色光源装置、緑色光源装置及び青色光源装置の発光を個別に制御する。
【0031】
さらに、制御部38は、冷却ファン駆動制御回路43に光源ユニット60等に設けた複数の温度センサによる温度検出を行わせる。この温度検出の結果から冷却ファンの回転速度を制御させている。また、制御部38は、冷却ファン駆動制御回路43にタイマー等によりプロジェクタ本体の電源オフ後も冷却ファンの回転を持続させる。そして、制御部38は、温度センサによる温度検出の結果によってはプロジェクタ本体の電源をオフにする等の制御も行う。
【0032】
次に、このプロジェクタ10の内部構造について述べる。図3は、プロジェクタ10の内部構造を示す平面模式図である。プロジェクタ10は、図3に示すように、右側パネル14の近傍に制御回路基板241を備えている。この制御回路基板241は、電源回路ブロックや光源制御ブロック等を備えてなる。また、プロジェクタ10は、制御回路基板241の側方、つまり、プロジェクタ筐体の略中央部分に光源ユニット60を備えている。さらに、プロジェクタ10は、光源ユニット60と左側パネル15との間に光学系ユニット160を備えている。
【0033】
光源ユニット60は、プロジェクタ筐体の左右方向における略中央部分であって背面パネル13近傍に配置される励起光照射装置70を備える。さらに光源ユニット60は、この励起光照射装置70から射出される光線束の光軸上であって正面パネル12の近傍に配置される蛍光発光装置100による緑色光源装置80を備える。さらに光源ユニット60は、この蛍光発光装置100から射出される光線束と平行となるように正面パネル12の近傍に配置される青色光源装置300を備える。さらに光源ユニット60は、励起光照射装置70と蛍光発光装置100との間に配置される赤色光源装置120を備える。そして、さらに光源ユニット60は、蛍光発光装置100からの射出光や赤色光源装置120からの射出光、青色光源装置300からの射出光の光軸が夫々同一の光軸となるように変換して各色光を所定の一面であるライトトンネル175の入射口に集光する導光光学系140を備える。
【0034】
緑色光源装置80における励起光照射装置70は、背面パネル13と光軸が平行になるよう配置された半導体発光素子による励起光源71を備える。さらに、励起光照射装置70は励起光源71からの射出光の光軸を正面パネル12方向に90度変換する反射ミラー群75を備える。さらに励起光照射装置70は、反射ミラー群75で反射した励起光源71からの射出光を集光する集光レンズ78を備える。さらに励起光照射装置70は、励起光源71と右側パネル14との間に配置されたヒートシンク81を備える。
【0035】
励起光源71は、3行8列の計24個の半導体発光素子である青色レーザーダイオードがマトリクス状に配列されている。各青色レーザーダイオードの光軸上には、各青色レーザーダイオードからの射出光を平行光に変換する集光レンズであるコリメータレンズ73が夫々配置されている。また、反射ミラー群75は、複数の反射ミラーが階段状に配列されてなり、励起光源71から射出される光線束の断面積を一方向に縮小して集光レンズ78に射出する。
【0036】
ヒートシンク81と背面パネル13との間には冷却ファン261が配置されている。この冷却ファン261とヒートシンク81とによって励起光源71が冷却される。さらに、反射ミラー群75と背面パネル13との間にも冷却ファン261が配置されている。この冷却ファン261によって反射ミラー群75や集光レンズ78が冷却される。
【0037】
緑色光源装置80である蛍光発光装置100は、正面パネル12と平行となるように配置されている。蛍光発光装置100は、励起光照射装置70からの射出光の光軸と直交するように配置された回転ホイールである蛍光ホイール101を備える。さらに蛍光発光装置100は、この蛍光ホイール101を回転駆動するホイールモータ110を備える。さらに蛍光発光装置100は、蛍光ホイール101から背面パネル13方向に射出される光線束を集光する集光レンズ群111を備える。
【0038】
蛍光ホイール101は、円板状の金属基材である。蛍光ホイール101には励起光源71からの射出光を励起光として緑色波長帯域の蛍光発光光を射出する環状の蛍光発光領域が形成されている。蛍光ホイール101は励起光を受けて蛍光発光する蛍光板として機能する。また、蛍光発光領域を含む蛍光ホイール101の励起光源71側の表面は、銀蒸着等によってミラー加工されることで光を反射する反射面が形成され、この反射面上に緑色蛍光体の層が敷設されている。
【0039】
そして、蛍光ホイール101の緑色蛍光体層に照射された励起光照射装置70からの射出光は、緑色蛍光体層における緑色蛍光体を励起する。そして、緑色蛍光体から全方位に蛍光発光された光線束は、直接励起光源71側へ、あるいは、蛍光ホイール101の反射面で反射した後に励起光源71側へ射出される。
【0040】
また、蛍光体層の蛍光体に吸収されることなく、金属基材に照射された励起光は、反射面により反射されて再び蛍光体層に入射し、蛍光体を励起することとなる。よって、蛍光ホイール101の表面を反射面とすることにより、緑色の光源である励起光源71から射出される励起光の利用効率を上げることができ、より明るく発光させることができる。
【0041】
なお、蛍光ホイール101の反射面で蛍光体層側に反射された励起光において蛍光体に吸収されることなく励起光源71側に射出された励起光は、後述する第一ダイクロイックミラー141を透過し、蛍光光は第一ダイクロイックミラー141により反射される。そのため、励起光が外部に射出されることはない。そして、ホイールモータ110と正面パネル12との間には冷却ファン261が配置されている。この冷却ファン261によって蛍光ホイール101が冷却される。なお、蛍光ホイール101の構造及び、蛍光ホイール101の回転バランスを安定化させる構造については後述する。
【0042】
赤色光源装置120は、励起光源71と光軸が平行となるように配置された赤色光源121を備える。さらに赤色光源装置120は、赤色光源121からの射出光を集光する集光レンズ群125を備える。そして、この赤色光源装置120は、励起光照射装置70からの射出光及び蛍光ホイール101から射出される緑色波長帯域光と光軸が交差するように配置されている。
【0043】
また、赤色光源121は、赤色の波長帯域光を発する半導体発光素子である赤色発光ダイオードである。さらに、赤色光源装置120は、赤色光源121の右側パネル14側に配置されるヒートシンク130を備える。そして、ヒートシンク130と正面パネル12との間には冷却ファン261が配置されており、この冷却ファン261によって赤色光源121が冷却される。
【0044】
青色光源装置300は、蛍光発光装置100からの射出光の光軸と平行となるように配置された青色光源301を備える。さらに青色光源装置300は青色光源301からの射出光を集光する集光レンズ群305を備える。そして、この青色光源装置300は、赤色光源装置120からの射出光と光軸が交差するように配置されている。また、青色光源301は、青色の波長帯域光を発する半導体発光素子である青色発光ダイオードである。さらに、青色光源装置300は、青色光源301の正面パネル12側に配置されるヒートシンク310を備える。そして、ヒートシンク310と正面パネル12との間には冷却ファン261が配置されており、この冷却ファン261によって青色光源301が冷却される。
【0045】
そして、導光光学系140は、赤色、緑色、青色波長帯域の光線束を集光させる集光レンズや、各色波長帯域の光線束の光軸を変換して同一の光軸とさせるダイクロイックミラー等からなる。
【0046】
具体的には、励起光照射装置70から射出される青色波長帯域光及び蛍光ホイール101から射出される緑色波長帯域光の光軸と、赤色光源装置120から射出される赤色波長帯域光の光軸と、が交差する位置に第一ダイクロイックミラー141が配置されている。この第一ダイクロイックミラー141は、青色及び赤色波長帯域光を透過し、緑色波長帯域光を反射してこの緑色光の光軸を左側パネル15方向に90度変換する。
【0047】
また、青色光源装置300から射出される青色波長帯域光の光軸と、赤色光源装置120から射出される赤色波長帯域光の光軸と、が交差する位置に、第二ダイクロイックミラー148が配置されている。この第二ダイクロイックミラー148は、青色波長帯域光を透過し、緑色及び赤色波長帯域光を反射してこの緑色及び赤色光の光軸を背面パネル13方向に90度変換する。そして、第一ダイクロイックミラー141と第二ダイクロイックミラー148との間には、集光レンズが配置されている。さらに、ライトトンネル175の近傍には、ライトトンネル175の入射口に光源光を集光する集光レンズ173が配置されている。
【0048】
光学系ユニット160は、励起光照射装置70の左側方に位置する照明側ブロック161を備えている。さらに光学系ユニット160は、背面パネル13と左側パネル15とが交差する位置の近傍に位置する画像生成ブロック165を備えている。さらに光学系ユニット160は、導光光学系140と左側パネル15との間に位置する投影側ブロック168を備えている。光学系ユニット160は、この3つのブロックによって略コの字状に構成されている。
【0049】
この照明側ブロック161は、画像生成ブロック165が備える表示素子51に光源ユニット60から射出された光源光を導光する光源側光学系170の一部を備えている。この照明側ブロック161が有する光源側光学系170としては、光源ユニット60から射出された光線束を均一な強度分布の光束とするライトトンネル175、ライトトンネル175から射出された光を集光する集光レンズ178、ライトトンネル175から射出された光線束の光軸を画像生成ブロック165方向に変換する光軸変換ミラー181等がある。
【0050】
画像生成ブロック165は、光源側光学系170として、光軸変換ミラー181で反射した光源光を表示素子51に集光させる集光レンズ183を備える。さらに画像生成ブロック165は、この集光レンズ183を透過した光線束を表示素子51に所定の角度で照射する照射ミラー185を有している。さらに、画像生成ブロック165は、表示素子51とするDMDを備えている。この表示素子51と背面パネル13との間には表示素子51を冷却するためのヒートシンク190が配置されて、このヒートシンク190によって表示素子51が冷却される。また、表示素子51の正面近傍には、投影側光学系220としてのコンデンサレンズ195が配置されている。
【0051】
投影側ブロック168は、表示素子51で反射されたオン光をスクリーンに放出する投影側光学系220のレンズ群を有している。この投影側光学系220は、固定鏡筒に内蔵する固定レンズ群225を備えている。さらに画像生成ブロック165は可動鏡筒に内蔵する可動レンズ群235を備えている。そして投影側ブロック168は以上の構成によりズーム機能を備えた可変焦点型レンズとされている。投影側ブロック168はレンズモータ45により可動レンズ群235を移動させることによりズーム調整やフォーカス調整を可能としている。
【0052】
次に、光源装置としての回転ホイールである蛍光ホイール101の構造及び、蛍光ホイール101の回転バランスを安定化させる構造について図を用いて説明する。尚、蛍光ホイール101の蛍光発光領域101a一面に蛍光体の層を敷設した場合において、蛍光ホイール101の回転バランスがずれるのは、例えば、蛍光発光領域101aに蛍光体の層を敷設した際におこる敷設ムラによって蛍光ホイール101の重量バランスが不均一になることが原因と考えられる。図4は、プロジェクタ10の光源装置である蛍光発光装置100の一例の説明図である。図4(a)は本発明の実施形態に係る蛍光発光装置の平面図である。図4(b)は図4(a)に示した本発明の実施形態に係る蛍光発光装置の断面図である。
【0053】
蛍光ホイール101は、図4(a)に示すように、円板形状で約0.5mm厚の薄板金属基材である。蛍光ホイール101は、励起光源71からの射出光を励起光として緑色波長帯域の蛍光発光光を射出する環状の蛍光発光領域101aが形成され、励起光を受けて蛍光発光する蛍光板として機能する。
【0054】
そして、蛍光ホイール101は、中央に穴を有し、図4(b)に示すように、その穴にホイールモータ110のモータ軸110aを圧入、又は、接着材等によりホイールモータ110と接続されており、モータ軸110aと連動して回転させる回転ホイールである。
【0055】
そして、本発明の蛍光ホイール101は、ホイールモータ110のモータ軸110aとの接続にあたって、蛍光ホイール101をモータ軸110aの先端で挟持させるとともに、蛍光ホイール101の回転バランスを安定化させるためにバランス補正材である接着剤を設置させるための液溜めを設けており、ハブを用いずにモータ軸110aに固定される構成としている。
【0056】
そして、本発明の蛍光ホイール101は、その蛍光ホイール101の蛍光発光領域101aが形成される平面と直交するように折り曲げられた環状の段差部を液溜めとして有している。この段差部に回転バランスを安定化させるための接着剤102を設置させる。即ち、蛍光ホイール101は、この蛍光ホイール101の蛍光発光領域101aが形成される面を基準面とし、その基準面に対して段状に形成された環状の段差部を有している。また、この段差部は蛍光ホイール101の蛍光発光領域101aが形成される面に対して直交する側壁部103を備えている。尚、本実施形態では、接着剤としてアクリル系・エポキシ系等で粘度100〜150[Pa・s]のものが好適に用いられるが、勿論、その他の接着剤をバランス補正材として用いてもよい。
【0057】
その段差部は、蛍光発光領域101aの内周側に形成され、蛍光ホイール101の蛍光発光領域101aが凸部となるように設けられている。そしてこの段差部は、蛍光発光領域101aの内周側を所定の半径で蛍光ホイール中央の領域全体を凹とすることにより、形成される環状の表面段差部101bである。
【0058】
なお、表面段差部101bは、製造方法として、蛍光ホイール101のベース材である金属基材を、絞り加工等の機械加工において外形形状を形成するときに同時に形成することができる。また、本実施形態における段差部は蛍光ホイール101の平面と直交するように折り曲げられて形成される。即ち、段差部は蛍光ホイール101の蛍光発光領域101aが形成される面に対して直交する側壁部103を有するように形成される。そのため形成加工が簡単である。
【0059】
また、接着剤102は、図5に示すように表面段差部101bの側壁部103の角101cに設置させることにより、側壁部103によって蛍光ホイール101が回転されても遠心力で放射方向に接着剤102が脱落飛散することを抑止することができる。
【0060】
このようにして、蛍光ホイール101を挟持させ、回転バランスを安定化させるために接着剤を設置させるための液溜めを設けたハブを有さない構造であることから、蛍光ホイール101を備える光源装置の軽量化をはかるとともに、部品コストを軽減させることができる。
【0061】
そして、ハブを有さないことから、ホイールの励起光源側に励起光を効率良く集光させるための集光レンズ群111等からなるレンズユニットを配置させるにあたって、設計の自由度が増す。
【0062】
なお、回転バランスを安定化させるために接着剤を設置させる蛍光ホイールの段差部の構成については、蛍光発光領域101aが形成された面における表面段差部101bに限定するものではない。
【0063】
図6(a)は本発明の実施形態に係る変形例の蛍光発光装置の平面図である。図6(b)は図6(a)に示した本発明の実施形態に係る蛍光発光装置の断面図である。図6に示す変形例の蛍光ホイール401の段差部は、蛍光発光領域401aの外周側に形成されている。この段差部は、蛍光ホイール401の蛍光発光領域401aが設けられた面側とは反対側方向に、蛍光ホイール401の円周周縁で直交するように折り曲げられた環状の裏面段差部401bである。そして、変形例の蛍光ホイール401は、その裏面段差部401bに回転バランスを安定化させるための接着剤402を設置させる。即ち、蛍光ホイール401は、この蛍光ホイール401の蛍光発光領域401aの外周側であって、蛍光ホイール401の蛍光発光領域401aが設けられた面側とは反対側の蛍光ホイール401の円周周縁に形成された環状の裏面段差部401bを有している。また、この裏面段差部401bは蛍光ホイール401の蛍光発光領域401aが形成される面に対して直交する側壁部403を備えている。
【0064】
なお、裏面段差部401bは、製造方法として、蛍光ホイール101のベース材である金属基材を、プレス加工等の機械加工において外形形状を形成するときに同時に形成することができる。また、本実施形態における裏面段差部401bは蛍光ホイール401の平面と直交するように折り曲げられて形成される。即ち、裏面段差部401bは蛍光ホイール101の蛍光発光領域401aが形成される面に対して直交する側壁部403を有するように形成される。そのため形成加工が簡単である。
【0065】
また、バランス補正材とする接着剤402は、図7に示すように裏面段差部401bの側壁部403の角401cに設置させることにより、側壁部403によって、蛍光ホイール101が回転されても遠心力で放射方向に接着剤402が脱落飛散することを抑止することができる。
【0066】
なお、段差部としては、上述の表面段差部及び裏面段差部を両方兼ね備えた構成であっても構わない。具体的には、蛍光ホイールの段差部は、蛍光発光領域の内周側に形成され蛍光ホイールの蛍光発光領域が凸部となるように設けられた蛍光ホイール中央の環状の表面段差部を備える。さらに蛍光ホイールの段差部は、蛍光発光領域の外周側に形成され蛍光ホイールの蛍光発光領域が設けられた面側とは反対側方向に蛍光ホイールの円周周縁で直交するように折り曲げられた環状の裏面段差部を備えるものとする。即ち、段差部は、蛍光発光領域の内周側に形成され回転ホイールの蛍光発光領域が凸部となるように設けられた蛍光ホイール中央の環状の表面段差部を備える。さらに段差部は、蛍光発光領域の外周側に形成され回転ホイールの蛍光発光領域が設けられた面側とは反対側方向の回転ホイールの円周周縁に形成された環状の裏面段差部を備える。また、この表面段差部及び裏面段差部は蛍光ホイールの蛍光発光領域が形成される面に対して直交する側壁部をそれぞれ備えている。
【0067】
なお、これらの段差部は、製造方法として、蛍光ホイールのベース材である金属基材を、絞り加工やプレス加工等の機械加工において外形形状を形成するときに同時に形成することができる。
【0068】
そして、その表面段差部、又は、裏面段差部に回転バランスを安定化させるための接着剤を設置させる。具体的には、回転バランスを安定化させるための接着剤は、例えば、後述する蛍光発光装置の重量バランスの調整工程において、重量バランスが僅かに均等でないときには、蛍光発光領域の内周側に形成される表面段差部に接着剤を設置させる。また、蛍光発光装置の重量バランスが大きくずれているときには、蛍光発光領域の外周側に形成される裏面段差部に接着剤を設置させるようにする。このようにすれば、調整を的確に実行することができる。
【0069】
また、段差部としては、例えば、上述の蛍光発光領域の内周側に形成される表面段差部の凹部の周縁部分に更に凹部となる溝を形成しても構わない。即ち、蛍光発光領域から垂直に裏面側に延びる壁面の高さを、蛍光発光領域を形成する蛍光ホイールの表面から表面段差部の表面までの高さよりも、高くするものである。
【0070】
これにより、段差部に設置される接着剤の設置面である段差部の側壁部を高くすることができることから、側壁部によって、蛍光ホイールが回転しても遠心力で放射方向に接着剤が脱落飛散するのを防止することができる。
【0071】
なお、蛍光ホイールに段差部を形成するにあたって、蛍光ホイールの蛍光発光領域に歪み等が生じるおそれがある場合には、段差部と蛍光発光領域の内縁との間に適当な距離を設けることが好ましい。
【0072】
ところで、蛍光ホイールの外径をD、段差部外径をd、接着剤の密度をρ、接着剤の半径をh(=段差部深さh)(接着剤は段差部の側壁と底面とに接触することで、球形状の1/4の大きさと仮定。)とし、単純化した2次元モデルを利用して蛍光体ホイールの重心補正計算を以下のようにおこなった。
【0073】
補正材の質量m
【0074】
【数1】

【0075】
重力加速度gとすると補正材のモーメントM
【0076】
【数2】

【0077】
今、蛍光ホイールでバランスが崩れる原因として蛍光体塗りムラ等による蛍光体厚さばらつき、又は蛍光体設置位置ずれなどが考えられる。そのときのモーメントをΔMとおくと
【0078】
【数3】

【0079】
(Δm:蛍光体塗りムラ等による変化質量)
となる。
【0080】
バランス補正によって、蛍光ホイールの重心が当該蛍光ホイールの中心軸と一致させるようにアンバランスを減少させる条件としては
【0081】
【数4】

が成り立てば良い。そこで、数式(1)〜数式(4)より、
【0082】
【数5】

【0083】
が導き出される。
【0084】
そして、
【数6】

【0085】
を定数Aとおくと、数式(5)より、
【0086】
【数7】

【0087】
という条件式が導きだせる。
【0088】
これにより、重心が中心にくるように設定した場合、dはhに反比例し、且つDに比例することが分かる。
【0089】
また、数式(6)を変形し、
【数8】

【0090】
とし、段差部外径dと段差部深さhとの数値範囲について以下に考察する。まず、蛍光ホイールの外径であるDの値の範囲について述べる。モータの回転軸径を考慮すると蛍光ホイールの径はφ10mm以上必要である。また、モバイル用途のプロジェクタへの利用を鑑みた場合、プロジェクタ筐体大きさ等の制限から蛍光ホイールの外径はφ60mm以下となる。よって、Dの値の範囲は
10mm以上60mm以下となる。
【0091】
次に、定数Aの値の範囲について考える。
定数Aは前記のように、
【0092】
【数9】

【0093】
で現されるため、Δmと、ρとの値の範囲が決まればAの値の範囲も決まる。バランス補正用接着剤の比重ρの値の範囲は、市販されている普通の接着剤の比重0.001g/mmからバランス補正用途で用いられる接着剤の比重0.0025g/mmである。
【0094】
また、Δmの値の範囲としては、蛍光体ホイールの一枚当たりの蛍光体部分重量は約0.1gであり、蛍光体塗りムラ等による変化質量は蛍光体部分質量の1/100から1/10であるので、Δmは0.001gから0.01gとなる。
【0095】
上記のようにρ、Δmの値の範囲が決まるので、それに伴いAの値の範囲も決まる。そして、Aの値の範囲は、0.38mm以上9.55mm以下となる。
【0096】
以上のようにAとDの数値範囲が決まるので、dhの数値範囲が以下のように決まる。
3.8≦dh≦573(mm) ・・・数式(8)
【0097】
上記数式(8)を満たすように、段差部外径dと段差部深さhとを決定し蛍光ホイール101に段差部を形成すれば蛍光ホイール101のバランス取りができる接着剤を確実に設置することができる。尚、表面段差部101b、裏面段差部401bは共に本関係式を用いて設計することが可能である。また、裏面段差部401bは表面段差部101bに比べて蛍光ホイールの外周側に形成することができるので、数式(6)から接着剤の量を少なくできることが分かる。よって裏面段差部は表面段差部に比べて段差部深さを浅くすることができる。
【0098】
次に、回転ホイールを有する蛍光発光装置100の回転バランスを安定化させる重量バランスの調整工程の流れについて図を用いて説明する。図8は、プロジェクタ10の光源装置80である蛍光発光装置100の重量バランスの調整工程のフローチャートである。なお、蛍光発光装置100の重量バランスの調整工程における蛍光ホイールは、表面段差部101bを有するものを適用して下記で説明する。
【0099】
先ず、蛍光発光装置100の製造にあたって、回転ホイールである蛍光ホイール101の穴にホイールモータ110のモータ軸110aを圧入、又は/及び、接着材等によりホイールモータ110と接続して一体とさせる組立工程(ステップS80)を行う。
【0100】
次に、蛍光ホイール101とホイールモータ110とが一体とされた蛍光発光装置100の回転バランスを安定化させるために、重量バランスの調整工程として、ホイールの重量バランスを測定する測定工程(ステップS83)を行う。
【0101】
なお、ホイールの重量バランスを測定する調整機は、ホイールを回転させて回転速度の速度ムラを測定し、円板形状のホイールにおいて重量バランスが他の範囲と比較して軽い範囲を判定して、アンバランス部分を特定させるものである。
【0102】
次に、その調整機で特定されたアンバランス部分に接着剤102を塗布させて重量バランスを均等にさせる接着剤塗布工程(ステップS85)を行う。
【0103】
そして、接着剤102を塗布して重量バランスを均等化させた蛍光発光装置100をあらためて調整機で回転させてホイールの重量バランスを測定し、合否判定(ステップS90)を行う。
【0104】
合否判定(ステップS90)において、ホイールの重量バランスが均等化されて合格と判定されれば、その調整工程を終了する。また、合否判定(ステップS90)において、ホイールの重量バランスが均等化されていないと判定されれば、あらためて検出されたアンバランス部分に接着剤102を塗布させて重量バランスを均等にさせる接着剤塗布工程(ステップS85)に戻る。
【0105】
以上のように、本実施形態によれば、ハブ等の部材を使用することなく好適に回転ホイールの重量合わせを行って、振動の発生を抑止しながら小型化、軽量化や部品コストの低減、及び回転ホイールの組み立ての製造コストを低減することができる回転ホイール、それを用いた光源装置、プロジェクタ10、及び、その回転ホイールの製造方法を提供することができる。
【0106】
さらに、本実施形態によれば、ハブを有さないことから、ホイールの励起光源側に励起光を効率良く集光させるための集光レンズ群111等からなるレンズユニットを配置させるにあたって、設計の自由度が増す。
【0107】
また、本実施形態によれば、回転ホイールの蛍光体が設けられた面側の中心近傍の表面段差部101bにバランス補正材である接着剤102を設置させるようにすることから、ホイールの正面から容易に接着剤102を塗布することができる。
【0108】
そして、本実施形態によれば、裏面段差部401bにバランス補正材である接着剤402を設置させるようにすることから、ホイールの回転時に接着剤402が脱落しても反対面に位置する蛍光体に飛散することはない。
【0109】
さらに、本実施形態によれば、表面段差部又は/及び裏面段差部に接着剤を設置させるようにすることから、蛍光発光装置100の重量バランスの調整工程において、重量バランスが僅かに均等でないときには、表面段差部に接着剤を設置させ、重量バランスが大きくずれているときには、裏面段差部に接着剤を設置させるようにすれば、調整を的確に実行することができる。
【0110】
また、本実施形態によれば、回転ホイールの製造方法として、円板形状のベース板を機械加工するときに同時に接着剤を塗布させるための段差部を絞り加工やプレス加工により形成させることができることから、部品コストを軽減させることができる。
【0111】
尚、本実施形態では、放熱特性やコスト等を鑑みた上でベース板として金属基材を用い、回転ホイールを形成したが、回転ホイールはこれに限らず、高熱伝導性の樹脂や高熱伝導性のセラミックなどの他の部材からなるベース板を用いることができる。このような他の部材からなるベース材を用いて、蛍光発光領域が形成される面を基準面とし、この基準面に対して段状に形成された環状の段差部を備えるように回転ホイールを形成してもよい。
【0112】
尚、本実施形態の蛍光ホイールは、当該蛍光ホイールの蛍光発光領域が形成される平面と直交するように折り曲げられた環状の段差部を有している。しかし、蛍光ホイールが回転した状態で遠心力により放射方向に接着剤が脱落しないならば、環状の段差部を、蛍光ホイールの蛍光発光領域が形成される平面を基準にしてこの蛍光ホイールを直交以外の所定角度折り曲げることで形成してもよい。
【0113】
尚、上述した段差部の外径d、深さhどちらの値も、上記した範囲に限ったものではなく、蛍光体層のバラツキ度合い、使用する接着剤等のバランス補正材の比重、プロジェクタ製品の形状制約、その他部品の形状兼ね合い等の条件によっては変わる。よって、適正な段差部形状はそれらに伴い流動的に変化する場合はある。
【0114】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0115】
以下に、本願出願の最初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 円板形状をした回転ホイールであって、
前記円板形状の周縁に沿って蛍光体が設けられる蛍光発光領域と、
前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が形成される面を基準面とし、当該基準面に対して段状に形成された環状の段差部と、
前記段差部に設置されたバランス補正材と、
を備え、
前記段差部に前記回転ホイールの回転時の回転バランスを均一化させるように前記バランス補正材を設置させたことを特徴とする回転ホイール。
[2] 前記段差部は、前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が凸部となるように当該回転ホイール中央に設けられた環状の表面段差部であって、
前記表面段差部は前記蛍光発光領域の内周側に形成され、
前記表面段差部に前記バランス補正材を設置させたことを特徴とする前記[1]に記載の回転ホイール。
[3] 前記段差部は、前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が設けられた面側とは反対側の当該回転ホイールの円周周縁に形成された環状の裏面段差部であって、
前記裏面段差部は、前記蛍光発光領域の外周側に形成され、 前記裏面段差部に前記バランス補正材を設置させたことを特徴とする前記[1]に記載の回転ホイール。
[4] 前記段差部は、前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が凸部となるように当該回転ホイール中央に設けられた環状の表面段差部と、前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が設けられた面側とは反対側の当該回転ホイールの円周周縁に形成された環状の裏面段差部とを備え、
前記裏面段差部、又は前記裏面段差部に前記バランス補正材を設置させたことを特徴とする前記[1]に記載の回転ホイール。
[5] 前記表面段差部は前記蛍光発光領域の内周側に形成され、
前記裏面段差部は、前記蛍光発光領域の外周側に形成されていることを特徴とする前記[4]記載の回転ホイール。
[6] 前記段差部の外径をd、前記段差部の深さをhとして、
前記段差部外径と前記段差部の深さとは、3.8≦dh≦573(mm)を満たすように設定されることを特徴とする前記[1]乃至前記[5]の何れかに記載の回転ホイール。
[7] 前記段差部は、前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が形成される面に対して直交する側壁部を有することを特徴とする前記[1]乃至前記[6]の何れかに記載の回転ホイール。
[8] 前記回転ホイールは金属からなる薄板であることを特徴とする前記[1]乃至前記[7]の何れかに記載の回転ホイール。
[9] 前記バランス補正材は接着剤であることを特徴とする前記[1]乃至前記[8]の何れかに記載の回転ホイール。
[10] 前記[1]乃至前記[9]の何れかに記載の回転ホイールと、
前記回転ホイールに光を照射させる励起光源と、
前記回転ホイールと連結されて該回転ホイールを回転させるホイールモータと、
を備えることを特徴とする光源装置。
[11] 光源装置と、
表示素子と、
前記光源装置からの光を前記表示素子に導光する光源側光学系と、
前記表示素子から射出された画像をスクリーンに投影する投影側光学系と、
前記光源装置や表示素子を制御するプロジェクタ制御手段と、を備え、
前記光源装置が、複数の光源として赤色波長帯域光を発する光源、青色波長帯域光を発する光源、及び、緑色波長帯域光を発する光源を備えている前記[11]に記載の光源装置であることを特徴とするプロジェクタ。
[12] ベース板を機械加工において円板形状とした回転ホイールの製造方法において、
前記回転ホイールが、
前記円板形状の周縁に沿って蛍光体が設けられる蛍光発光領域と、
前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が形成される面を基準面とし、当該基準面に対して段状に形成された環状の段差部と、
前記段差部に設置されたバランス補正材と、
を備え、
前記円板形状のベース板の機械加工のときに、前記段差部を形成させることを特徴とする回転ホイールの製造方法。
[13] 金属製で薄板のベース板を機械加工において円板形状とした回転ホイールの製造方法において、
前記回転ホイールが、
前記円板形状の周縁に沿って蛍光体が設けられる蛍光発光領域と、
前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が形成される面を基準面とし、当該基準面に対して段状に形成された環状の段差部と、
前記段差部に設置されたバランス補正材と、
を備え、
前記円板形状のベース板の機械加工のときに、前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が形成される平面を基準として当該回転ホイールを所定の角度折り曲げることで前記段差部を形成させることを特徴とする回転ホイールの製造方法。
[14] 前記段差部は、前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が形成される平面と直交する側壁部を有するように形成することを特徴とする前記[12]又は前記[13]に記載の回転ホイールの製造方法。
【符号の説明】
【0116】
10 プロジェクタ 11 上面パネル
12 正面パネル
13 背面パネル 14 右側パネル
15 左側パネル 17 排気孔
18 吸気孔 19 レンズカバー
20 各種端子 21 入出力コネクタ部
22 入出力インターフェース 23 画像変換部
24 表示エンコーダ 25 ビデオRAM
26 表示駆動部 31 画像圧縮/伸長部
32 メモリカード 35 Ir受信部
36 Ir処理部 37 キー/インジケータ部
38 制御部 41 光源制御回路
43 冷却ファン駆動制御回路 45 レンズモータ
47 音声処理部 48 スピーカ
51 表示素子 60 光源ユニット
70 励起光照射装置 71 励起光源
73 コリメータレンズ 75 反射ミラー群
78 集光レンズ 80 緑色光源装置
81 ヒートシンク
100,400 蛍光発光装置 101,401 蛍光ホイール
101a,401a 蛍光発光領域 101b 表面段差部
101c 角 102,402 接着剤
103,403 側壁部
110 ホイールモータ 110a モータ軸
111 集光レンズ群
120 赤色光源装置 121 赤色光源
125 集光レンズ群 130 ヒートシンク
140 導光光学系 141 第一ダイクロイックミラー
148 第二ダイクロイックミラー
160 光学系ユニット 161 照明側ブロック
165 画像生成ブロック 168 投影側ブロック
170 光源側光学系 173 集光レンズ
175 ライトトンネル 178 集光レンズ
181 光軸変換ミラー 183 集光レンズ
185 照射ミラー 190 ヒートシンク
195 コンデンサレンズ
220 投影側光学系
225 固定レンズ群 235 可動レンズ群
241 制御回路基板 261 冷却ファン
300 青色光源装置 301 青色光源
305 集光レンズ群 310 ヒートシンク
401b 裏面段差部 401c 角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板形状をした回転ホイールであって、
前記円板形状の周縁に沿って蛍光体が設けられる蛍光発光領域と、
前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が形成される面を基準面とし、当該基準面に対して段状に形成された環状の段差部と、
前記段差部に設置されたバランス補正材と、
を備え、
前記段差部に前記回転ホイールの回転時の回転バランスを均一化させるように前記バランス補正材を設置させたことを特徴とする回転ホイール。
【請求項2】
前記段差部は、前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が凸部となるように当該回転ホイール中央に設けられた環状の表面段差部であって、
前記表面段差部は前記蛍光発光領域の内周側に形成され、
前記表面段差部に前記バランス補正材を設置させたことを特徴とする請求項1に記載の回転ホイール。
【請求項3】
前記段差部は、前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が設けられた面側とは反対側の当該回転ホイールの円周周縁に形成された環状の裏面段差部であって、
前記裏面段差部は、前記蛍光発光領域の外周側に形成され、 前記裏面段差部に前記バランス補正材を設置させたことを特徴とする請求項1に記載の回転ホイール。
【請求項4】
前記段差部は、前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が凸部となるように当該回転ホイール中央に設けられた環状の表面段差部と、前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が設けられた面側とは反対側の当該回転ホイールの円周周縁に形成された環状の裏面段差部とを備え、
前記裏面段差部、又は前記裏面段差部に前記バランス補正材を設置させたことを特徴とする請求項1に記載の回転ホイール。
【請求項5】
前記表面段差部は前記蛍光発光領域の内周側に形成され、
前記裏面段差部は、前記蛍光発光領域の外周側に形成されていることを特徴とする請求項4記載の回転ホイール。
【請求項6】
前記段差部の外径をd、前記段差部の深さをhとして、
前記段差部外径と前記段差部の深さとは、3.8≦dh≦573(mm)を満たすように設定されることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の回転ホイール。
【請求項7】
前記段差部は、前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が形成される面に対して直交する側壁部を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の回転ホイール。
【請求項8】
前記回転ホイールは金属からなる薄板であることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の回転ホイール。
【請求項9】
前記バランス補正材は接着剤であることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の回転ホイール。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9の何れかに記載の回転ホイールと、
前記回転ホイールに光を照射させる励起光源と、
前記回転ホイールと連結されて該回転ホイールを回転させるホイールモータと、
を備えることを特徴とする光源装置。
【請求項11】
光源装置と、
表示素子と、
前記光源装置からの光を前記表示素子に導光する光源側光学系と、
前記表示素子から射出された画像をスクリーンに投影する投影側光学系と、
前記光源装置や表示素子を制御するプロジェクタ制御手段と、を備え、
前記光源装置が、複数の光源として赤色波長帯域光を発する光源、青色波長帯域光を発する光源、及び、緑色波長帯域光を発する光源を備えている請求項10に記載の光源装置であることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項12】
ベース板を機械加工において円板形状とした回転ホイールの製造方法において、
前記回転ホイールが、
前記円板形状の周縁に沿って蛍光体が設けられる蛍光発光領域と、
前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が形成される面を基準面とし、当該基準面に対して段状に形成された環状の段差部と、
前記段差部に設置されたバランス補正材と、
を備え、
前記円板形状のベース板の機械加工のときに、前記段差部を形成させることを特徴とする回転ホイールの製造方法。
【請求項13】
金属製で薄板のベース板を機械加工において円板形状とした回転ホイールの製造方法において、
前記回転ホイールが、
前記円板形状の周縁に沿って蛍光体が設けられる蛍光発光領域と、
前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が形成される面を基準面とし、当該基準面に対して段状に形成された環状の段差部と、
前記段差部に設置されたバランス補正材と、
を備え、
前記円板形状のベース板の機械加工のときに、前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が形成される平面を基準として当該回転ホイールを所定の角度折り曲げることで前記段差部を形成させることを特徴とする回転ホイールの製造方法。
【請求項14】
前記段差部は、前記回転ホイールの前記蛍光発光領域が形成される平面と直交する側壁部を有するように形成することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の回転ホイールの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−47793(P2013−47793A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−161785(P2012−161785)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】