説明

回転リンク機構、これを用いた動力変換機構又はこれを用いた回転動力機構

【課題】 機構を簡略化することが可能で、かつ、第2リンク機構の傾きの制御が容易となる回転リンク機構を提供する。
【解決手段】 回転中心1と、第1リンク21〜24と、第2リンク31〜34と、ガイド4とを備えている。第1リンク21〜24は、回転中心1を中心として回転するように構成されている。第2リンク31〜34は、第1リンク21〜24に対して回動可能なように取り付けられている。ガイド4は、第1リンク21〜24の回転に伴って回転する第2リンク31〜34を、閉じた軌跡に沿って誘導する構成となっている。
ガイド4の軌跡の形状に応じて、第2リンク31〜34の傾きを制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転リンク機構、これを用いた動力変換機構又はこれを用いた回転動力機構
に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、回転中心を互いに偏心させた二つのリンクを用いて翼部材の迎角を変化させ、これによって推進力を持つ回転翼を提案している(特願2003−286536号)。この回転翼では、回転角度によって翼部材の揚力が異なるので、翼部材が一周する間の揚力の合成力はどちらか一方向を向く。すると、その方向への推進力を得ることができる。
【0003】
また、この回転翼を用いると、流体の流れ(例えば風)から回転力を得ることもできる。
【0004】
ところで、この回転翼では、二つのリンクを用いて翼部材の迎角を制御しているので、機構が複雑化し、重量が重くなりがちである。
【0005】
さらに、この回転翼では、二つのリンクの長さや軸心位置によって幾何学的に定まる一定の位置を翼部材が通過するので、回転角度に応じた所望の傾きを翼部材に与えることは難しかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、機構を簡略化することが可能で、かつ、翼部材(本発明における第2リンク機構)の傾きの制御が容易となる回転リンク機構を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の回転リンク機構は、回転中心と、第1リンクと、第2リンクと、ガイドとを備えている。前記第1リンクは、前記回転中心を中心として回転するように構成されている。前記第2リンクは、前記第1リンクに対して回動可能なように取り付けられている。前記ガイドは、前記第1リンクの回転に伴って回転する前記第2リンクを、閉じた軌跡に沿って誘導する構成となっている。
【0008】
請求項2に記載の回転リンク機構は、請求項1に記載のものにおいて、前記ガイドにおける前記軌跡が円形状となっており、かつ、前記軌跡の中心が前記回転中心とはずれている構成となっているものである。
【0009】
請求項3に記載の回転リンク機構は、請求項1に記載のものにおいて、前記ガイドにおける前記軌跡が略楕円形状となっているものである。
【0010】
請求項4に記載の回転リンク機構は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のものにおいて、前記第2リンクが翼部材となっているものである。
【0011】
請求項5に記載の動力変換機構は、請求項4に記載の回転リンク機構を用いており、かつ、前記翼部材により、流体から回転力を取り出す構成となっているものである。
【0012】
請求項6に記載の回転動力機構は、請求項4に記載の回転リンク機構を用いており、かつ、前記翼部材を、前記回転中心を中心として回転させることにより、推進力を得る構成となっているものである。
【0013】
請求項7に記載の回転リンク機構は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のものにおいて、第3リンクと第2ガイドとをさらに備えている。前記第3リンクは、前記第2リンクに対して回動可能なように取り付けられている。前記第2ガイドは、前記第2リンクの回転に伴って回転する前記第3リンクを、閉じた軌跡に沿って誘導する構成となっている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、機構を簡略化することが可能で、かつ、第2リンク機構の傾きの制御が容易となる回転リンク機構を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態の構成)
以下、本発明の第1実施形態に係る回転リンク機構を、図1を参照して説明する。
【0016】
本実施形態の回転リンク機構は、回転中心1と、第1リンク21〜24と、第2リンク31〜34と、ガイド4とを備えている。
【0017】
第1リンク21〜24は、回転中心1を中心として回転するように構成されている。第1リンクの数は、この実施形態では4本であるが、特に制約されない。第1リンク21〜24は、多少の変形は許容されるものの、実質的に剛体となっている。各第1リンク21〜24は、回転中心1からその外側方向へ延長されている。より詳しくは、第1リンク21〜24は、回転中心1から放射状に伸びる方向に配置されている。さらに第1リンク21〜24どうしは、等長であり、かつ等間隔となっている。
【0018】
第1リンク21〜24は、ベアリングなどの適宜な機構を用いることによって、回転中心1に対して回転可能となっている。また、例えば、適宜な軸に第1リンク21〜24を取り付け、軸を回転させることで、これらの第1リンク21〜24を、回転中心1を中心に回転させる構成であっても良い。
【0019】
第2リンク31〜34は、第1リンク21〜24に対して回動可能(本明細書では、「少なくとも、動作に必要な角度範囲では、正逆方向に回転可能なこと」をいう)なように取り付けられている。回動可能なように取り付ける手段としては、既存の種々のものを利用可能であるが、例えばヒンジを用いる手段がある。第2リンク31〜34は、この実施形態では板状とされている。
【0020】
第2リンク31〜34が流体の力を受け、又は流体に力を与えられる形状である場合(例えば板状)、本明細書では、第2リンク31〜34が「翼部材」になっていると称する。
【0021】
また、第2リンク31〜34は、その一端において、第1リンク21〜24の先端に取り付けられている。
【0022】
ガイド4は、第1リンク21〜24の回転に伴って回転する第2リンク31〜34の他端近傍を、閉じた軌跡に沿って誘導する構成となっている。本実施形態では、ガイド4における軌跡は、円形状となっており、かつ、軌跡の中心41は、回転中心1とは、ずれた位置となっている。ガイド4と第2リンク31〜34との接触部分には、摩擦を少なくするために、ベアリング、液体による浮上、油膜形成などの、従来から用いられる手段を適用することが好ましい。
【0023】
(第1実施形態の動作)
つぎに、前記のように構成された本実施形態に係る回転リンク機構の動作を、図1及び図2により説明する。
【0024】
第1リンク21〜24が回転すると、その回転に伴って、第2リンク31〜34は、第1リンク21〜24への取付部分においては、回転中心1を中心として回転する。
【0025】
一方、第2リンク31〜34の、ガイド4への取付部分は、ガイド4における閉じた軌跡に沿って誘導される。
【0026】
すると、第2リンク31〜34は、第1リンク21〜24の回転に伴って、ガイド4における軌跡の形状(本実施形態では、偏心した円形状)に対応して、その傾斜角を変化させることになる。図2は、図1における第1リンク31〜34が、図中反時計方向に45°回転した状態を示している。
【0027】
このように、本実施形態の回転リンク機構によれば、第1リンク21〜24の回転角度の変化に対応して、第2リンク31〜34の傾きを制御することができるという利点がある。
【0028】
また、本発明者による従来の提案では、回転中心が異なる2種類のリンクにより、翼部材(つまり第2リンク31〜34)の傾斜を制御することになっていた。しかし、本実施形態では、第1リンク21〜24(ただし第1リンクは1本でもよい)とガイド4とにより第2リンク31〜34の傾斜を制御できるので、機構を簡略化することができる。したがって、軽量化や低コスト化を図ることができる。
【0029】
さらに、従来の提案では、回転中心が異なる2種類のリンクにより、第2リンク31〜34の傾斜を制御することになっていたために、幾何学的な制約条件が強く、第2リンク31〜34の傾斜角度や傾斜時期を制御できる範囲が狭かった。これに対して、本実施形態では、ガイド4の軌跡を適宜に設計することにより、第2リンク31〜34の傾斜角度や傾斜時期を比較的に自由かつ容易に設計することができる。したがって、必要な機能に応じた傾斜角度や傾斜時期を得やすいという利点がある。
【0030】
また、本実施形態では、ガイド4により第2リンク31〜34を支持することができるので、第2リンク31〜34に強い力が作用しても、破壊や損傷の可能性を抑えることが可能となり、機構全体としての強度を向上させることが可能となる。
【0031】
本実施形態の回転リンク機構は、第2リンク31〜34に一方向からの流体の流れを与えることにより、流体の流れから回転力を得る動力変換機構とすることができる。これは、第2リンク(回転翼)31〜34の迎角が回転角度により変化するためである。
【0032】
また、本実施形態の回転リンク機構は、第1リンク21〜24を動力により回転させることにより、一方向への推進力を得るための回転動力機構とすることができる。これも、第2リンク(回転翼)31〜34の迎角が回転角度により変化するためであり、動力変換機構の場合と原理は同じである。
【0033】
なお、第2リンク31〜34の傾斜角度を変える必要がないときは、ガイド4における軌跡の中心と回転中心1とを一致させればよい。つまり、本明細書において、傾斜角度の制御とは、傾斜角度が一定の場合を含んでいる。
【0034】
また、図3に示すように、弾性部材で構成されたサブリンク51及び52により、第2リンク31〜34を連結しても良い。この例では、第2リンク31と33をサブリンク51により連結し、第2リンク32と34とをサブリンク52により連結している。このようにすれば、機構全体としての強度をさらに向上させることができる。
【0035】
(実施例)
前記実施形態の回転リンク機構を具体化した実施例を図4〜図7に示す。これらの図は、見る角度を変えたもので、回転角度はどの図においても同じである。
【0036】
実施例では、基台6の上面にガイド4が形成されている。基台6の上面から上方に回転軸7が延長されている。第1リンク21〜24は、回転軸7に取り付けられている。回転軸7の回転中心は、前記実施形態における回転中心1となっている。
【0037】
また、この実施例では、第2リンク31〜34が、単純な平板状ではなく、飛行機の翼の形状となっている。
【0038】
(第2実施形態)
つぎに、本発明の第2実施形態に係る回転リンク機構を、図8を参照しながら説明する。第2実施形態の説明においては、第1実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付すことによって説明を省略する。
【0039】
この回転リンク機構は、第3リンク81〜84と第2ガイド9とをさらに備えている。
【0040】
第3リンク81〜84は、第2リンク31〜34の端部に対して回動可能なように取り付けられている。
【0041】
第2ガイド9は、第2リンク31〜34の回転に伴って回転する第3リンク81〜84を、閉じた軌跡に沿って誘導する構成となっている。第2ガイド9による軌跡は、この実施形態では、ガイド4による軌跡と同心の円形状となっているが、ガイド4とは偏心していてもよいし、楕円等の別の形状であってもよい。
【0042】
第2実施形態によれば、第2リンク31〜34のみならず、第3リンク81〜84の傾斜角度をも制御することができる。制御できる原理は第1実施形態と同様である。
【0043】
第2実施形態における他の構成及び利点は、第1実施形態と同様なので、説明を省略する。
【0044】
なお、本発明に係る回転リンク機構は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはもちろんである。
【0045】
例えば、前記各実施形態では、第1リンクの本数を4としたが、これに限らないことは当然である。第1リンクの本数は偶数でも奇数でも良い。第2及び第3リンクの本数は、通常は、第1リンクの本数と同じとなる。
【0046】
また、前記各実施形態では、各第1リンクどうしを、等長かつ等間隔としたが、これに限らず、異なる長さや、異なる間隔であってもよい。
【0047】
さらに、前記各実施形態では、第2リンク31〜34を板状とし、各第1リンクに対して回動可能な状態で取り付けた。しかし、例えば第2リンク31〜34を弾性変形可能な材料とし、これを各第1リンクに固定することで、第2リンクを第1リンクに対して回動可能としてもよい。第2リンクと第1リンクとの接続部分のみを弾性材料とすることによって、第2リンクを回動可能とすることも可能である。また、第2リンクは板状ではなく、いかなる翼形状を用いても良い。要するに、第2リンク31〜34は、ガイド4によって迎角を変化させることができるものであればよい。第3リンク81〜84も、第2ガイド9によって迎角を変化させることができるものであればよい。
【0048】
また前記各実施形態では、ガイド4及び第2ガイド9における軌跡を円形としたが、これに限らず、楕円や任意の曲線の形状であってもよい。要するに、第2リンク31〜34又は第3リンク81〜84を必要な角度に制御できる形状であればよい。ただし、これらのガイドは、各リンクが届く位置(通過できる位置)に形成する必要がある。
【0049】
さらに、前記各実施形態では、ガイド4を、第2リンク31〜34の下端側のみに設けた。しかし、ガイド4を、第2リンク31〜34の上端側や側面にも設けることができる。このようにすれば機構全体の強度をさらに向上させることができる。第2ガイド9についても同様である。
【0050】
さらに、前記各実施形態の回転リンク機構は、第3リンクよりもさらに多くの(第4〜第nの)リンクを備えていても良い。また、これらのリンクの移動軌跡を誘導するガイド(第4〜第nのガイド)を備えていても良い。一つのリンクが複数のガイドで誘導されたり、複数のリンクが一つのガイドで誘導される構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の回転リンク機構は、例えば、流体(空気や水など)の流れから回転力を取り出す動力変換機構や、流体中での推進力を得る回転動力機構として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態に係る回転リンク機構の概略的な構成を示す平面図である。
【図2】図1に示す回転リンク機構における第1リンクを図中反時計方向に45°回転させた状態の図である。
【図3】第1実施形態に係る回転リンク機構の変形例を示す平面図である。
【図4】第1実施形態に係る回転リンク機構の実施例を示す斜視図である。
【図5】図4の回転リンク機構を別の角度から見た斜視図である。
【図6】図4の回転リンク機構をさらに別の角度から見た斜視図である。
【図7】図4の回転リンク機構をさらに別の角度から見た斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る回転リンク機構の概略的な構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 回転中心
21〜24 第1リンク
31〜34 第2リンク
4 ガイド
41 軌跡の中心
51・52 サブリンク
6 基台
7 回転軸
81〜84 第3リンク
9 第2ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心と、第1リンクと、第2リンクと、ガイドとを備えており、
前記第1リンクは、前記回転中心を中心として回転するように構成されており、
前記第2リンクは、前記第1リンクに対して回動可能なように取り付けられており、
前記ガイドは、前記第1リンクの回転に伴って回転する前記第2リンクを、閉じた軌跡に沿って誘導する構成となっている
ことを特徴とする回転リンク機構。
【請求項2】
前記ガイドにおける前記軌跡は、円形状となっており、かつ、前記軌跡の中心は、前記回転中心とはずれていることを特徴とする、請求項1記載の回転リンク機構。
【請求項3】
前記ガイドにおける前記軌跡は略楕円形状となっていることを特徴とする、請求項1記載の回転リンク機構。
【請求項4】
前記第2リンクは翼部材であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転リンク機構。
【請求項5】
前記翼部材により、流体から回転力を取り出すことを特徴とする、請求項4記載の回転リンク機構を用いた動力変換機構。
【請求項6】
前記翼部材を、前記回転中心を中心として回転させることにより、推進力を得る構成となっていることを特徴とする、請求項4記載の回転リンク機構を用いた回転動力機構。
【請求項7】
第3リンクと第2ガイドとをさらに備えており、
前記第3リンクは、前記第2リンクに対して回動可能なように取り付けられており、
前記第2ガイドは、前記第2リンクの回転に伴って回転する前記第3リンクを、閉じた軌跡に沿って誘導する構成となっている
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転リンク機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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