説明

回転・バイブレーション型ドリルヘッド

【課題】給進力の増大に伴って起振力を増大させ、さく孔速度を向上させることができる回転・バイブレーション型ドリルヘッドを提供する。
【解決手段】本体フレーム2に軸方向に変位可能に設けられ、先端にドリルロッドが連結されるスピンドル3と、スピンドル3を回転させる回転駆動装置5と、スピンドル3を軸方向に起振する起振装置8と、起振装置8を本体フレーム2に弾性支持する弾性支持機構11,12とを備え、スピンドルの軸方向に給進される回転・バイブレーション型ドリルヘッドであって、弾性支持機構11は給進力の増大に伴って、ばね定数が増大するものであり、給進力の増大に伴って非支持状態から支持状態に変化する支持体11aを含む複数の支持体11a,11bからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転・バイブレーション型ドリルヘッドに関し、さらに詳細には、ドリルロッドに回転力と起振力を加えながら地盤をさく孔するさく孔機におけるドリルヘッド関する。
【背景技術】
【0002】
回転・バイブレーション型ドリルヘッドを備えたさく孔機は、ドリルロッドに回転力のみならず、起振力を与えながら地盤をさく孔するものであるため、特に比較的軟弱な地盤を低騒音で、かつスピーディにさく孔することができるものとして知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この回転・バイブレーション型ドリルヘッドにおいて、ドリルロッドに起振力を与える起振装置は本体フレームに金属ばねやゴム等の弾性支持体を介して支持されている。図5は、この弾性支持体による起振装置の支持構造をモデル化して示している。起振装置8は所定の振動数fで稼働され、支持体51のばね定数に応じた振幅値Xで振動する。ここに、支持体51によるばねのばね定数は一定である。
【0004】
ところで、さく孔時にはドリルロッドを地盤に押し込むための力、すなわち給進力がドリルヘッドに与えられ、地層によりその大きさが調整される。その際、起振装置8には地盤からの給進反力が作用し、支持体がたわんで反発エネルギが蓄えられる。この結果、起振装置8自体の起振力に加えて支持体51のばね反発力が起振力として作用することになる。
【0005】
しかしながら、従来の支持構造は支持体51のばね定数が上述のように一定である。このため、そのばね定数に比例したばね反発力しか得られない。
【特許文献1】特開2004−108072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、給進力の増大に伴って起振力を増大させ、さく孔速度を向上させることができる回転・バイブレーション型ドリルヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、本体フレームに軸方向に変位可能に設けられ、先端にドリルロッドが連結されるスピンドルと、このスピンドルを回転させる回転駆動装置と、前記スピンドルを軸方向に起振する起振装置と、この起振装置を前記本体フレームに弾性支持する弾性支持機構とを備え、前記スピンドルの軸方向に給進される回転・バイブレーション型ドリルヘッドであって、
前記弾性支持機構は給進力の増大に伴って、ばね定数が増大するものであることを特徴とする回転・バイブレーション型ドリルヘッドにある。
【0008】
より具体的には、前記弾性支持機構は、給進力の増大に伴って非支持状態から支持状態に変化する支持体を含む複数の支持体からなる。また、前記複数の支持体は、前記起振装置と前記本体フレームとの間に並列に配置されている。前記複数の支持体は例えばゴム体からなり、前記本体フレームに着脱自在に設けられている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、起振装置を支持する弾性支持機構のばね定数が給進力の増大に伴って大きくなるので、ばね反発力も大きくなり起振力を増大させることができ、これによりさく孔速度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、この発明の実施形態を示し、図1はドリルヘッドの正面図、図2は左側面図、図3は背面図である。ドリルヘッド1は、図示しないガイドセルなどの案内部材に往復移動可能に設けられ、図示しない給進装置により給進力が与えられる。図1においてZは給進方向を示している。このドリルヘッド1の本体フレーム2には、スピンドル3が貫通して設けられ、スピンドル3は軸方向に所定長さ範囲で変位可能となっている。図1に示されるSが変位許容範囲である。図示しないドリルロッドは、スピンドル3の先端に設けられたねじ部4に連結される。
【0011】
本体フレーム2には回転駆動装置5が設けられている。回転駆動装置5には歯車伝達機構が内蔵され、スピンドル3はこの歯車伝達機構に軸方向に移動可能に連結されている。回転駆動装置5は複数の駆動モータ6(オイルモータ)を有し、その回転力が前記歯車伝達機構を介してスピンドル3に伝達され、該スピンドルが回転する。
【0012】
スピンドル3には起振装置8が連結されている。スピンドル3は、この起振装置8に対して回転は可能であるが、軸方向に関しては一体化されている。起振装置8は、その詳細は図示しないが特許文献1に記載されたものとほぼ同様である。すなわち、起振装置8はスピンドル3の両側にその軸と直交するように配置された1対の軸と、これらの軸に設けられた偏心ロータとを有している。
【0013】
これらの偏心ロータを互いに逆方向に回転させることにより、起振装置8がスピンドル3の軸方向に振動し、それに伴ってスピンドル3が軸方向に振動する。駆動モータ(オイルモータ)9は、偏心ロータの軸に連結されて、該ロータを回転させるためのものである。なお、起振装置8と本体フレーム2との間に配置された部材10は、スピンドル3を覆うための蛇腹である。
【0014】
起振装置8を本体フレーム2に弾性支持するための支持機構は、起振装置8の給進方向前後にそれぞれ複数個(この実施形態では4個)ずつ並列に配置された弾性支持体11(11a、11b),12(12a、12b)からなっている。弾性支持体11,12は、この実施形態では円柱形のゴムからなり、端部には取付穴13が設けられている。他方、本体フレーム2の内面にはピン14が設けられ、このピン14を取付穴13に嵌め込むことにより、支持体11,12が本体フレーム2に着脱自在に取り付けられる。
【0015】
起振装置8の給進方向後方側の支持体11のうち、一方の対角位置にある2つの支持体11aは本体フレーム2と起振装置8との間に隙間なく配置されている。これに対して、他方の対角位置にある2つの支持体11bは、本体フレーム2と起振装置8との間に隙間が存するように配置されている。すなわち、支持体11bは支持体11aよりも無荷重状態での長さが短くなっている。このような配置態様は、起振装置8の給進方向前方側に配置された支持体12a,12bについても同様であり、支持体12bは支持体12aよりも無荷重状態での長さが短くなっている。
【0016】
図4は、上記支持機構の作用をモデル化して示す図である。さく孔時において、給進力が小さい時は、起振装置8は支持体11a,12aによって支持される(図4(a))。ドリルヘッド1の給進により、起振装置8にはドリルロッド及びスピンドル3を介して給進反力が作用し、支持体11aがたわむことにより反発力が生じる。この反発力は起振装置8自体の持つ起振力に付加され、起振力を大きくするように作用する。なお、このときのばね定数は、当然のことながら支持体11aのみによるものである。
【0017】
ここで、さらに給進力が大きくなると、給進反力も大きくなることから支持体11aのたわみ量が大きくなり、起振装置8は支持体11bに当接して両支持体11a,11bによって支持され、支持体11bにもたわみを生じさせることになる(図4(b))。この結果、ばね定数は支持体11a,11bによって定まる大きなものに変化し、反発力も大きくなる。
【0018】
これにより、起振力がより大きくなってドリルロッド先端のさく孔ビットに伝達され、さく孔速度を向上させることができる。また、給進力の増大に伴って、起振装置8を支持する支持体の数が増えることになるので、支持体1個当たりも荷重が減少し、支持体の損傷を軽減させることが可能となる。
【0019】
なお、支持体12はさく孔時には起振力増大のためのものとしては機能しない。したがって、支持体11のみを上記配置態様とし、支持体12は従来と同様の配置態様としてもさく孔時における起振力増大は達成できる。しかしながら、ジャミング等が生じた際、ドリルロッドの引抜き時(抜管時)にも起振装置8による起振力を発生させることが有効である。このような場合、上記のような支持体12a,12bの配置態様を採ることにより、上記とは逆方向の反発力が支持体12a,12bに作用し、ドリルロッド引抜きの際の起振力の増大を図ることができる。
【0020】
上記実施形態は例示にすぎず、この発明は種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態では支持体としてゴムが用いられているが、金属ばね等、他の弾性体を用いることができる。また、支持体の数、配列は上記以外にも種々の態様を採ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施形態を示す正面図である。
【図2】同実施形態の一部破断した左側面図である。
【図3】同実施形態の背面図である。
【図4】支持機構の作用をモデル化して示す図である。
【図5】従来の支持機構をモデル化して示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ドリルヘッド
2 本体フレーム
3 スピンドル
3 スピンドル
5 回転駆動装置
6 駆動モータ
8 起振装置
9 駆動モータ
11a,11b 弾性支持体
11a,12a 弾性支持体
13 取付穴
14 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体フレームに軸方向に変位可能に設けられ、先端にドリルロッドが連結されるスピンドルと、このスピンドルを回転させる回転駆動装置と、前記スピンドルを軸方向に起振する起振装置と、この起振装置を前記本体フレームに弾性支持する弾性支持機構とを備え、前記スピンドルの軸方向に給進される回転・バイブレーション型ドリルヘッドであって、
前記弾性支持機構は給進力の増大に伴って、ばね定数が増大するものであることを特徴とする回転・バイブレーション型ドリルヘッド。
【請求項2】
前記弾性支持機構は、給進力の増大に伴って非支持状態から支持状態に変化する支持体を含む複数の支持体からなることを特徴とする請求項1記載の回転・バイブレーション型ドリルヘッド。
【請求項3】
前記複数の支持体は、前記起振装置と前記本体フレームとの間に並列に配置されていることを特徴とする請求項2記載の回転・バイブレーション型ドリルヘッド。
【請求項4】
前記複数の支持体はゴム体からなり、前記本体フレームに着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項3記載の回転・バイブレーション型ドリルヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−125121(P2006−125121A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317542(P2004−317542)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(000168506)鉱研工業株式会社 (43)
【Fターム(参考)】