説明

回転体アシスト装置

【課題】部品点数を少なくできる回転体アシスト装置を得る。
【解決手段】回転体アシスト装置16はベース20、可動体としてのスライダー22、保持体としてのキャッチャー24、付勢手段としてのコイルスプリング26、制動手段としてのピストンダンパー28を備えており、ベース20にはレール部30が形成されている。また、コイルスプリング26によって付勢されるスライダー22の内部には、キャッチャー24を制動するピストンダンパー28が収納されており、ピストンダンパー28がキャッチャー24に対してコイルスプリング26と同じ側に設定されている。このため、制動手段が保持体を挟んで付勢手段と反対側に設定されている構成に比べて、部品点数を少なくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体が開位置から閉位置に向けて所定位置まで回転操作されたときに作動して、この回転体の回動を補助する回転体アシスト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転体アシスト装置としては、例えば、特許文献1がある。この従来技術では、キャッチャーは、ストライカーを捕捉又は解放可能とする待機位置と、最終位置との間を往復動可能にベースに支持されている。また、キャッチャーは、待機位置からの往動時は待機位置から一定角度回転した後、最終位置に向けてスライド移動するようになっている。このとき、ベースに備えられた付勢手段の付勢力によって、キャッチャーが待機位置にある状態での保持と、スライド移動とがなされる。そして、回転体の往動により待機位置にあるキャッチャーにストライカーが捕捉されると、キャッチャーの保持が解かれてキャッチャーの往動回転が開始されると共に、付勢手段の付勢によって、往動がアシストされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−95979号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、可動体の往動の終点到達に際して、キャッチャーの往動を制動するための制動手段が、キャッチャーを挟んで付勢手段と反対側に設定されている。このため、付勢手段とキャッチャーとを連結する部材と、制動手段とキャッチャーとを連結する部材とが必要になり、部品点数が多くなる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、部品点数を少なくできる回転体アシスト装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明の回転体アシスト装置は、固定体と該固定体に回動可能に支持された回動体との一方に固定されるベースと、前記ベースに直線移動可能に取り付けられた可動体と、前記可動体における前記移動方向に沿った一方の端部に回転可能に取り付けられ、前記固定体と前記回動体との他方に設けられたストライカーを受け入れる受け入れ溝が形成され、回転して前記ストライカーを保持する保持体と、前記可動体における前記移動方向に沿った他方の端部と前記ベースとの間に設けられ、前記保持体側へ前記可動体を付勢する付勢手段と、前記保持体に対して前記付勢手段側となる位置において前記ベースに固定され、前記可動体が前記保持体側に移動する際に、前記可動体の移動を制動する制動手段と、前記ベースに前記可動体の移動方向に対して交差する斜め方向に沿って形成され、前記保持体を、前記ストライカーを受け入れると共に解放する待機位置と前記ストライカーを保持し前記回動体が閉位置となる最終位置とへ案内するレール部と、を有する。
【0007】
請求項1に記載の本発明の回転体アシスト装置では、固定体と固定体に回動可能に支持された回動体との一方に固定されるベースに可動体が直線移動可能に取り付けられている。また、可動体の移動方向に沿った一方の端部には保持体が、回転可能に取り付けられている。保持体には固定体と回動体との他方に設けられたストライカーを受け入れる受け入れ溝が形成されており、保持体は回転してストライカーを保持する。また、ベースには可動体の移動方向に対して交差する斜め方向に沿ってレール部が形成されており、レール部は、保持体を、ストライカーを受け入れると共に解放する待機位置と、ストライカーを保持し回動体が閉位置となる最終位置とへ案内する。一方、可動体の移動方向に沿った他方の端部とベースとの間には付勢手段が設けられており、この付勢手段は、保持体側へ可動体を付勢する。また、保持体に対して付勢手段側となる位置において、ベースに制動手段が固定されており、制動手段は可動体が保持体側に移動する際に可動体の移動を制動する。
【0008】
このように、制動手段が保持体に対して付勢手段と同じ側に設定されている。このため、制動手段が保持体を挟んで付勢手段と反対側に設定されており、付勢手段と保持体とを連結する部材と、制動手段と保持体とを連結する部材とを有する構成に比べて、部品点数を少なくできる。
【0009】
請求項2記載の本発明は請求項1に記載の回転体アシスト装置において、前記レール部には、前記保持体を前記付勢手段の付勢力に抗して前記待機位置に保持すると共に、前記保持体が前記ストライカーを受け入れて回転することで前記保持状態を解除する保持部が形成されている。
【0010】
請求項2記載の本発明の回転体アシスト装置では、保持体はルール部に形成された保持部において付勢手段の付勢力に抗して待機位置に保持される。また、保持体は待機位置においてストライカーを受け入れて回転することで前記保持状態を解除される。この結果、簡単な構成で、保持体を待機位置に保持できる。
【0011】
請求項3記載の本発明は請求項1または請求項2に記載の回転体アシスト装置において、前記制動手段は、前記可動体の前記ベースに対する移動により、シリンダに対してピストンロッドが移動し圧縮されるピストンダンパーである。
【0012】
請求項3記載の本発明の回転体アシスト装置では、可動体がベースに対して移動することにより、ピストンダンパーのシリンダに対してピストンロッドが移動し、ピストンダンパーが圧縮される。このため、ピストンダンパーによって可動体が確実に制動される。
【0013】
請求項4記載の本発明は請求項3に記載の回転体アシスト装置において、前記ピストンダンパーは、前記ベースに設けられ枠形状とされた前記可動体の内部に挿入されたストッパーと前記可動体の内壁とによって圧縮される。
【0014】
請求項4記載の本発明の回転体アシスト装置では、ピストンダンパーが、ベースに設けられたストッパーが枠形状とされた可動体の内部に挿入されており、このストッパーと可動体の内壁とによってピストンダンパーが圧縮される。このため、回転体アシスト装置における長手方向の寸法と幅方向の寸法とが大きくならない。この結果、回転体アシスト装置を小型化できる。
【0015】
請求項5記載の本発明は請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の回転体アシスト装置において、前記可動体の端部に前記ベースの長手方向と交差する方向に沿って形成された長孔と、前記保持体に設けられ前記長孔に移動可能に係合された軸体と、を備え、前記長孔と前記軸体との係合によって、前記保持体が前記可動体に前記待機位置で回転可能に取り付けられている。
【0016】
請求項5記載の本発明の回転体アシスト装置では、可動体の端部にベースの長手方向と交差する方向に沿って形成された長孔に、保持体に設けられた軸体が移動可能に係合されることで、保持体が可動体に待機位置で回転可能に取り付けられている。このため、簡単な構成で保持体を可動体に回転可能に連結することができる。
【0017】
請求項6記載の本発明は請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の回転体アシスト装置において、前記保持体に形成され前記保持体が前記最終位置にある場合に、前記ストライカーを受け入れ、前記ストライカーを前記受け入れ溝内に案内するための補助溝を備えている。
【0018】
請求項6記載の本発明の回転体アシスト装置では、回動体が開位置から閉位置へ回動する際に、保持体が最終位置にある場合には、保持体に形成された補助溝がストライカーを受け入れ、ストライカーを受け入れ溝内に案内する。このため、取り付け初期等に保持体が最終位置にあり、回動体が閉位置にない場合にも、回動体が開位置から閉位置へ回動することでストライカーを受け入れ溝内に容易に挿入することができる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の本発明の回転体アシスト装置は、上記構成としたので、部品点数を少なくできる。
【0020】
請求項2に記載の本発明の回転体アシスト装置は、上記構成としたので、簡単な構成で、保持体を待機位置に保持できる。
【0021】
請求項3に記載の本発明の回転体アシスト装置は、上記構成としたので、可動体を確実に制動できる。
【0022】
請求項4に記載の本発明の回転体アシスト装置は、上記構成としたので、回転体アシスト装置を小型化できる。
【0023】
請求項5に記載の本発明の回転体アシスト装置は、上記構成としたので、簡単な構成で保持体を可動体に回転可能に連結することができる。
【0024】
請求項6に記載の本発明の回転体アシスト装置は、上記構成としたので、保持体が最終位置にあり、回動体が閉位置にない場合にも、ストライカーを受け入れ溝内に容易に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る回転体アシスト装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る回転体アシスト装置を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る回転体アシスト装置の一部を示す拡大分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る回転体アシスト装置の一部を示す拡大斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る回転体アシスト装置を示す下方から見た平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る回転体アシスト装置を示す下方から見た平面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る回転体アシスト装置を示す下方から見た平面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る回転体アシスト装置を示す下方から見た平面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る回転体アシスト装置を示す下方から見たストライカーベースを除いた平面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る回転体アシスト装置の一部を示すスライダーを除いた拡大斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る回転体アシスト装置の一部を示す拡大斜視図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る回転体アシスト装置の一部を示す拡大斜視図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る回転体アシスト装置を示す斜視図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る回転体アシスト装置を示すストライカーベースを除いた斜視図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る回転体アシスト装置を示すストライカーベースを除いた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の回転体アシスト装置の一実施形態を図1〜図15に従って説明する。
なお、図中、同一又は対応する機能を有する部材(構成要素)には同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0027】
図5に示すように、本実施形態では、固定体としての扉枠10に、回動体としての扉12が、ヒンジ11を介して開位置(展開位置)と閉位置(基準位置)とへ回動可能に支持されている。また、扉枠10の上枠10Aの下面には回転体アシスト装置16が取り付けられている。
【0028】
回転体アシスト装置16は扉枠10の上枠10Aの長手方向に沿った長尺状とされており、ビス等の固定部材13によって、上枠10Aの下面に固定されている。一方、扉12の上部12Aにおける上枠10Aへの突き当たり側の面には、ストライカーベース18が取り付けられている。
【0029】
図4に示すように、ストライカーベース18は、扉12への取り付け部18Aと、この取り付け部18Aの一面から扉12の閉方向に突き出されたアーム18Bと、を備えている。また、アーム18Bの先端部には、軸状のストライカー19が上方に向けて突き出している。そして、扉12を基準位置としての閉じ位置としたとき、アーム18Bは回転体アシスト装置16の下方に位置され、ストライカー19は回転体アシスト装置16内に入り込むようになっている。なお、ストライカー19の内部には、図示を省略したばね等の付勢手段が設けられており、下方(図4の矢印E方向)へ向かって押圧された場合には、付勢手段が弾性変形することで下方へ移動可能になっている。
【0030】
図2に示すように、回転体アシスト装置16はベース20、可動体としてのスライダー22、保持体としてのキャッチャー24、付勢手段としてのコイルスプリング26、制動手段としてのピストンダンパー28を備えており、ベース20にはレール部30が形成されている。
【0031】
図5に示すように、ベース20は長尺状とされており、その長手方向を扉枠10の上枠10Aの長さ方向に沿わせるようにして、上枠10Aにおけるヒンジ11の設けられた側に取り付けられている。そして、扉12を待機位置(開き位置)から基準位置(閉じ位置)に向けて往動操作すると所定位置において待機位置にあるキャッチャー24にストライカー19が捕捉され、この捕捉後のキャッチャー24の往動によって、ストライカー19を介して扉12が図9に示す閉じ位置に引き込まれるようになっている。なお、図9ではキャッチャー24の位置を明確にするため、ストライカーベース18を除いた平面図となっている。
【0032】
図2に示すように、ベース20は長手方向に沿った一方側がキャッチャー支持部20Aとなっており、他方側がスライダー収納部20Bとなっている。キャッチャー支持部20Aは板状となっており、レール部30が形成されている。一方、スライダー収納部20Bは上面を開放させた箱状となっており、スライダー収納部20Bにおけるキャッチャー支持部20Aの側は開放され、ストッパー60が立設されている。なお、ベース20には、扉枠10の上枠10Aの下面に固定するための取付孔32が複数形成されている。
【0033】
ベース20におけるスライダー収納部20Bには、スライダー22がベース20における長手方向(図2の矢印A方向または矢印B方向)に直線移動可能に取り付けられている。また、スライダー22はベース20の長手方向に沿った長尺の矩形の枠形状となっており、ベース20のキャッチャー支持部20Aと反対側となるスライダー22の端部22Aからは、スプリングガイド34が長手方向に沿って延設されている。
【0034】
図1に示すように、スプリングガイド34の先端部34Aは、ベース20のスライダー収納部20Bにおけるキャッチャー支持部20Aと反対側の壁部20Cに形成された貫通孔36に挿入されている。また、スライダー22の端部22Aとベース20の壁部20Cとの間には、コイルスプリング26が配置されており、スプリングガイド34はコイルスプリング26を貫通している。従って、スライダー22はコイルスプリング26によって、ベース20の長手方向に沿って、コイルスプリング26と反対方向(図1の矢印A方向)、即ち、キャッチャー支持部20A側へ付勢されている。
【0035】
図2に示すように、スライダー22におけるベース20のキャッチャー支持部20A側となる端部22Bには、ベース20の長手方向と直交する方向に沿って長孔38が形成されており、この長孔38にキャッチャー24が回転可能に連結されている。なお、スライダー22の端部22Bには、ストライカー19の移動軌跡上となる位置にゲート部39が形成されており、ゲート部39は長孔38の扉12側への延長線上に形成されている。また、キャッチャー24は、扉12を開位置(展開位置)から閉位置(基準位置)に向けて回動操作したとき、相対的に移動されてくるストライカー19を捕捉するように構成されている。また、キャッチャー24は、ストライカー19を捕捉又は解放可能とする待機位置(図5及び図6の位置)と最終位置(図9の位置)との間を往復動可能にベース20に支持されていると共に、待機位置から最終位置への往動時は待機位置から一定角度回転した後、最終位置に向けてスライド移動するようになっている。なお、キャッチャー24は、最終位置から待機位置への復動時においては、最終位置から往動時と逆向きにスライド移動した後、待機位置まで往動時と逆向きに一定角度回転されるようになっている。
【0036】
図1に示すように、キャッチャー24は長尺のブロック形状となっており、一方の端部24A(図1における右側)をスライダー22側に位置させるようにして、ベース20のキャッチャー支持部20Aに支持されている。また、図5に示すように、キャッチャー24は待機位置において、他端部24Dをベース20から扉12の方向に突き出すようになっている。
【0037】
図2に示すように、キャッチャー24の一方の端部24Aには、上下一対の軸受部24B、24Cが形成されており、軸受部24Bと軸受部24Cとの間に、スライダー22の端部22Bが挿入されている。また、軸受部24Bと軸受部24Cとには、軸体としてのピン40の長手方向両端部が軸支されており、スライダー22の長孔38を貫通するピン40の長手方向中間部にはローラー42が回転可能に支持されている。従って、キャッチャー24とスライダー22とは互いに連結されており、キャッチャー24はスライダー22と一体となってベース20の長手方向(図2の矢印A方向または矢印B方向)に移動するようになっている。また、ローラー42が長孔38に沿って移動することで、キャッチャー24の端部24Aがスライダー22の長孔38に沿って移動可能となっている。なお、ローラー42が回転することで、キャッチャー24の端部24Aが長孔38に沿って円滑に移動できるようになっている。
【0038】
図3に示すように、キャッチャー24の他方の端部24Dからは、ストライカー19を受け入れるための受け入れ溝64がキャッチャー24の長手方向に沿って形成されている。受け入れ溝64は一方が開口部64Aとなっており、他方が閉塞部64Bとなっている。ストライカー19は、待機位置において受け入れ溝64の開口部64Aに入り込み、閉塞部64Bに向かって案内されるようになっている。なお、キャッチャー24が待機位置にあるとき、受け入れ溝64の開口部64Aが扉12に設けられたストライカー19の移動軌跡上に位置されるようになっている。
【0039】
ベース20のキャッチャー支持部20Aに形成されたレール部30は、ベース20の長手方向(図3の矢印A方向及び矢印B方向)に対して交差する斜め方向(図3の矢印C方向及び矢印D方向)に沿っている。また、レール部30におけるストライカー19を受け入れる側の端部は保持部30Aとなっており、保持部30Aは、他の部位30Bに比べて、ベース20の長手方向に沿った幅が広げられている。一方、レール部30の底部30Cには、レール部30の長手方向に沿った長孔44が形成されている。この長孔44にはキャッチャー24の回転中心となる回転軸46が移動可能に挿入されており、この回転軸46は、キャッチャー24に固定されている。
【0040】
キャッチャー24には、レール部30に挿入される係合部48が形成されている。また、係合部48には、キャッチャー24がレール部30から下方へ落下するのを防止するためのフランジ状の係合凸部50が形成されており、係合凸部50は、レール部30に形成した係合凹部52に係合している。
【0041】
図2に示すように、レール部30における保持部30Aでは、係合凹部52がレール部30の対向する縦壁部30Dと縦壁部30Eとの底部30Cの近傍にそれぞれ形成されている。一方、図3に示すように、レール部30における他の部位30Bでは係合凹部52が、ベース20の端部20D側となる縦壁部30Dに形成されている。
【0042】
従って、キャッチャー24はレール部30に係合した状態で、レール部30に沿って図3の矢印C方向及び矢印D方向へ移動可能である。また、キャッチャー24はレール部30における保持部30Aでは回転軸46を中心にして回転可能となっている。このため、キャッチャー24は、レール部30に沿って移動後、保持部30Aで回転することで、コイルスプリング26の付勢力に抗して保持状態となるようになっている。
【0043】
より具体的に説明すると、キャッチャー24の係合部48の端部には当接面48Aが形成されており、この当接面48Aは、キャッチャー24が回転軸46を中心に回転することで、保持部30Aにおけるコイルスプリング26と反対側の壁部30Dと当接するようになっている。また、当接面48Aと壁部30Dとは、コイルスプリング26の付勢力が作用する方向(図3の矢印A方向)と直交している。そして、キャッチャー24が待機位置にあるときは、保持部30Aの壁部30Dにキャッチャー24の係合部48の当接面48Aが、コイルスプリング26の付勢力により押しつけられるようになっている。これにより、キャッチャー24が待機位置に保持されるようになっている。
【0044】
一方、待機状態のキャッチャー24がストライカー19を捕捉して、キャッチャー24の往動回転が開始されると、キャッチャー24は、コイルスプリング26の付勢力に抗して、ベース20の内部に入る方向(図7の矢印G方向)に回転軸46(図2参照)を回転中心として回転されるようになっている。そして、図7に示すように、レール部30の壁部30Dとキャッチャー24の係合部48の当接面48Aとの当接が解除されると、コイルスプリング26の付勢力により、スライダー22とキャッチャー24がレール部30に沿って移動され、これによりキャッチャー24の往動が途中からアシストされるようになっている。そして、この後、コイルスプリング26の付勢力によりキャッチャー24は最終位置までそのスライド移動をアシストされるようになっている。
【0045】
従って、扉12が待機位置から基準位置に向けて操作されるときに所定位置でキャッチャー24にストライカー19を捕捉させて、キャッチャー24を介して扉12の基準位置への移動をアシストすることができるようになっている。また、キャッチャー24の移動は途中からスライド移動になることから、キャッチャー24の移動を全て回転となる構成に比べて、キャッチャー24の移動のためのスペースは小さくすることができる。このため、キャッチャー24のスライド移動方向に直交する向きの回転体アシスト装置16の幅を小さくすることが可能となる。
【0046】
一方、ストライカー19を捕捉したキャッチャー24が最終位置にある状態から扉12を復動、つまり開き操作する場合には、受け入れ溝64が、閉塞部64Bから開口部64Aに向かうに連れて、ストライカー19の回動方向と交差する方向に延びている。このため、ストライカー19が受け入れ溝64から外れることがなく、キャッチャー24はストライカー19によって、レール部30に沿って復動され、待機位置に戻るようになっている。
【0047】
図2に示すように、スライダー22は矩形の枠形状とされており、ピストンダンパー28はスライダー22の内部に収納されている。ピストンダンパー28はシリンダ54とピストンロッド56とを備えており、ピストンロッド56の移動に対する抵抗を制動力としている。また、シリンダ54の一端部54Aから突出したピストンロッド56の先端部56Aは円盤状となっており、スライダー22の端部22Aの内壁22Cに形成された係合部58に係合されている。一方、シリンダ54の他端部54Bは、ベース20におけるスライダー22の収納部の端部に形成したストッパー60の円孔61に挿入され、ストッパー60に固定されている。なお、ストッパー60はスライダー22の内部に挿入されている。
【0048】
従って、スライダー22がベース20の長手方向に沿ってコイルスプリング26と反対方向(図1の矢印A方向)へ移動した場合には、ピストンダンパー28のシリンダ54にピストンロッド56が押し込まれるようになっている。このため、スライダー22の図1の矢印A方向の移動がピストンダンパー28によって制動されるようになっている。
【0049】
図10に示すように、キャッチャー24には、キャッチャー24がレール部30の最終位置(図10に示す位置)にある場合に、ストライカー19を受け入れるための補助溝70が形成されている。補助溝70は受け入れ溝64の両側壁部64B、64Cにおける保持部30A側となる側壁部64Bに形成された切欠72によって、受け入れ溝64の閉塞部64Bの近傍に連結されている。また、補助溝70の下面は、切欠72に向かって傾斜した傾斜面70Aとなっており、補助溝70の内部を移動するストライカー19は傾斜面70Aと摺動するようになっている。なお、図10ではレール部30の保持部30Aの形状を明確にするためスライダー22を除いた斜視図となっている。
【0050】
従って、ストライカー19は傾斜面70Aと摺動し、内部に設けたばね等の付勢手段が弾性変形することで下方へ移動すると共に、切欠72を越えると、内部に設けたばね等の付勢手段によって上方へ移動し、受け入れ溝64の内部に挿入されるようになっている。
【0051】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用と効果について説明する。
(扉を閉める場合)
【0052】
図5に示すように、本実施形態では、扉枠10に支持された扉12を待機位置(開き位置)から基準位置(閉じ位置)に向かう方向(図5の矢印F方向)へ往動操作(回動)させると、扉12に取り付けられたストライカー19が、扉枠10の上枠10Aに取り付けられた回転体アシスト装置16のキャッチャー24に接近する。このとき、キャッチャー24は、回転体アシスト装置16のベース20に形成されたレール部30の保持部30Aに保持されており、待機位置となっている。
【0053】
次に、図6に示すように、扉12を閉位置へ向かう方向(図6の矢印F方向)へ更に回動させると、ストライカー19が、キャッチャー24の受け入れ溝64の開口部64Aに入る。
【0054】
次に、図7に示すように、扉12を閉位置へ向かう方向(図7の矢印F方向)へ更に回動させると、ストライカー19に押されて、キャッチャー24が、回転軸46(図2参照)を中心にして、キャッチャー24の端部24Dがベース20の内部に入る方向(図7の矢印G方向)へ回転する。この結果、キャッチャー24は、回転体アシスト装置16のベース20に形成されたレール部30の保持部30Aから解除される。
【0055】
次に、図8に示すように、キャッチャー24が、回転体アシスト装置16のベース20に形成されたレール部30の保持部30Aから解除されると、コイルスプリング26の付勢力によって、スライダー22がキャッチャー24の方向(図8の矢印A方向)へ移動する。このため、スライダー22に連結されたキャッチャー24は、回転体アシスト装置16のベース20に形成されたレール部30に沿って矢印C方向へ移動する。この結果、コイルスプリング26の付勢力によって、扉12の閉位置へ向かう方向(図8の矢印F方向)への回動を補助することができる。このとき、キャッチャー24の端部24Aは、スライダー22の長孔38に沿って扉12から離れる方向(図8の矢印I方向)へ移動する。
【0056】
次に、図9に示すように、キャッチャー24がレール部30における最終位置に達すると、扉12が閉位置となる。
【0057】
(扉を開ける場合)
図10に示すように、扉枠10に支持された扉12を閉位置から開位置へ向かう方向(図10の矢印H方向)へ回動(復動)させると、扉12に取り付けられたストライカー19は、扉と同方向(図10の矢印H方向)へ回動する。
【0058】
次に、図11に示すように、ストライカー19が図10の矢印H方向へ回動すると、ストライカー19が受け入れ溝64に係合されているキャッチャー24がストライカー19に引かれ、レール部30に沿って矢印D方向へ移動する。このため、キャッチャー24に連結されたスライダー22が、コイルスプリング26(図2参照)の付勢力に抗して、コイルスプリング26の方向(図11の矢印B方向)へ移動する。このとき、キャッチャー24の端部24Aは、スライダー22の長孔38に沿って扉12に近づく方向(図11の矢印J方向)へ移動する。
【0059】
次に、図12に示すように、キャッチャー24はレール部30に沿って移動し、レール部30の保持部30Aに達する。キャッチャー24は、レール部30の保持部30Aに達すると、回転軸46(図2参照)が長孔44の端部に当たるため、回転軸46を中心にして端部24Dがベース20から突出する方向(図12の矢印K方向)へ回転する。この結果、図6に示すように、保持部30Aの壁部30Dにキャッチャー24の係合部48の当接面48Aが、コイルスプリング26の付勢力により押しつけられ、キャッチャー24が待機位置に保持される。また、図12に示すように、ストライカー19が、キャッチャー24の受け入れ溝64の開口部64Aから抜け出す。この結果、扉12が回転体アシスト装置16から切り離され、扉12を開位置方向へ更に回動することができる。
【0060】
(回転体アシスト装置を組み付ける場合)
図13に示すように、回転体アシスト装置16を組み付ける場合、または、キャッチャー24のみを強制的に最終位置へ移動させた場合には、扉12が閉位置になくても、キャッチャー24がレール部30における最終位置に存在する。
【0061】
この状態で、扉枠10に支持された扉12を開位置から閉位置へ向かう往方向(図13の矢印F方向)へ回動させると、扉12に取り付けられたストライカー19が、扉枠10の上枠10Aに取り付けられた回転体アシスト装置16のキャッチャー24に接近する。
【0062】
次に、図14に示すように、扉12を閉位置へ向かう方向へ更に回動させると、ストライカー19が、スライダー22のゲート部39を通過した後、キャッチャー24の補助溝70に入る。なお、図14ではストライカー19の位置を明確にするためストライカーベース18を除いた斜視図となっている。
【0063】
次に、図15に示すように、扉12を閉位置へ向かう方向へ更に回動させると、ストライカー19が、補助溝70に沿って移動すると共に、補助溝70の傾斜面70Aと摺動する。このとき、ストライカー19は内部に設けた付勢手段が弾性変形することで下方へ移動し、受け入れ溝64の側壁部64Bに形成された切欠72を越えると、内部に設けた付勢手段によって上方へ移動し、受け入れ溝64の内部で復帰する。なお、図15ではストライカー19の位置を明確にするためストライカーベース18を除いた斜視図となっている。
【0064】
この結果、ストライカー19をキャッチャー24の受け入れ溝64に係合させることができ、扉12を閉位置から開位置へ向かう方向へ回動させると、ストライカー19に引かれて、キャッチャー24がレール部30に沿って移動する。
【0065】
このように、本実施形態では、ピストンダンパー28がキャッチャー24に対してコイルスプリング26と同じ側に設定されており、コイルスプリング26によって付勢されるスライダー22にキャッチャー24が連結されている。また、スライダー22にピストンダンパー28が収納されている。このため、本実施形態では、ピストンダンパー28等の制動手段がキャッチャー24を挟んでコイルスプリング26等の付勢手段と反対側に設定されており、付勢手段とキャッチャーとを連結する部材と、制動手段とキャッチャーとを連結する部材とを有する構成に比べて、部品点数を少なくできる。
【0066】
また、本実施形態では、キャッチャー24を待機位置と最終位置とへ案内するレール部30を、ベース20の長手方向に対して交差する斜め方向に沿って形成したため、回転体アシスト装置16の幅の長さの増加を押さえつつ、制動距離を長く取ることができる。また、本実施形態の回転体アシスト装置16では、回転体アシスト装置16の長さ及び幅の増加を防ぐことで、回転体アシスト装置16の配置スペースを小さくできる。
【0067】
また、本実施形態では、扉12が閉位置から開位置へ回動する際に、キャッチャー24は、レール部30の保持部30Aに達すると回転軸46を中心にして図12の矢印K方向へ回転する。この結果、図3に示す保持部30Aの壁部30Dにキャッチャー24の係合部48の当接面48Aが、コイルスプリング26の付勢力により押しつけられ、キャッチャー24が待機位置に保持される。このため、簡単な構成で、キャッチャー24を待機位置に保持できる。
【0068】
また、本実施形態では、ピストンダンパー28のピストンロッド56の先端部56Aがスライダー22の係合部58に係合され、シリンダ54がベース20のストッパー60に固定されている。このため、扉12の開位置から閉位置への回動によりスライダー22が移動することで、シリンダ54とピストンロッド56とが圧縮方向へ相対移動する。この結果、ピストンダンパー28によってスライダー22が確実に制動される。
【0069】
また、本実施形態では、ピストンダンパー28が枠形状とされたスライダー22の内部に収納されているため、回転体アシスト装置16における長手方向の寸法と幅方向の寸法とが大きくならない。この結果、回転体アシスト装置16を小型化できる。
【0070】
また、本実施形態の回転体アシスト装置16では、スライダー22の端部にベース20の長手方向と直交する方向に沿って形成された長孔38にキャッチャー24に設けられた回転軸40が移動可能に係合されている。このため、簡単な構成でキャッチャー24をスライダー22に回転可能に取付けることができる。
【0071】
また、本実施形態では、扉12が開位置から閉位置へ回動する際に、キャッチャー24が最終位置にある場合には、キャッチャー24に形成された補助溝70がストライカー19を受け入れ、ストライカー19を受け入れ溝64内に案内する。このため、回転体アシスト装置16を組み付ける場合、または、キャッチャー24のみを強制的に最終位置へ移動させた場合等で、キャッチャー24が最終位置にあり、扉12が閉位置にない場合にも、扉12を開位置から閉位置へ回動することで、ストライカー19を受け入れ溝64内に容易に挿入することができる。
【0072】
(その他の実施形態)
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、固定体としての扉枠10に回転体アシスト装置16を取り付け、回動体としての扉12にストライカー19を設けたが、これに代えて、回動体としての扉12に回転体アシスト装置16を取り付け、固定体としての扉枠10にストライカー19を設けた構成としてもよい。また、固定体は扉枠10に限定されず、回動体も扉12に限定されない。
【0073】
また、上記実施形態では、レール部30に保持部30Aを形成することで、キャッチャー24をコイルスプリング26の付勢力に抗して待機位置に保持すると共に、キャッチャー24がストライカー19を受け入れて回転することで保持状態を解除する構成としたが、これに代えて、レール部30に取り付けたカム等の別部材によって、キャッチャー24をコイルスプリング26の付勢力に抗して待機位置に保持すると共に、キャッチャー24がストライカー19を受け入れて回転することで保持状態を解除する等の他の構成としてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、制動手段としてピストンダンパー28を使用したが、制動手段はピストンダンパー28に限定されず、ピストンダンパー28でない他の制動手段としてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、ピストンダンパー28のピストンロッド56がスライダー22の内壁22Cに係合し、シリンダ54がベース20のストッパー60に固定されているが、これに代えて、ピストンダンパー28のピストンロッド56をベース20のストッパー60に固定し、シリンダ54をスライダー22の内壁22Cに係合する等の他の構成としてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、キャッチャー24に固定されたピン40が、スライダー22の長孔38を貫通することによって、キャッチャー24がスライダー22に回転可能に連結されているが、これに代えて、他の構成で、キャッチャー24をスライダー22に待機位置で回転可能となるように連結してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、キャッチャー24がレール部30の最終位置にある場合に、ストライカー19を受け入れるための補助溝70をキャッチャー24に形成したが、補助溝70に代えて、他の構成で、キャッチャー24がレール部30の最終位置にある場合に、ストライカー19を受け入れ溝64へ受け入れるようにしてもよい。また、補助溝70を設けない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 扉枠(固定体)
12 扉(回動体)
16 回転体アシスト装置
19 ストライカー
20 ベース
22 スライダー(可動体)
22C スライダーの内壁
24 キャッチャー(保持体)
26 コイルスプリング(付勢手段)
28 ピストンダンパー(制動手段)
30 レール部
30A レール部の保持部
38 長孔
40 ピン(軸体)
46 回転軸
48 キャッチャーの係合部
54 シリンダ
56 ピストンロッド
60 ストッパー
64 受け入れ溝
70 補助溝
70A 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体と該固定体に回動可能に支持された回動体との一方に固定されるベースと、
前記ベースに直線移動可能に取り付けられた可動体と、
前記可動体における前記移動方向に沿った一方の端部に回転可能に取り付けられ、前記固定体と前記回動体との他方に設けられたストライカーを受け入れる受け入れ溝が形成され、回転して前記ストライカーを保持する保持体と、
前記可動体における前記移動方向に沿った他方の端部と前記ベースとの間に設けられ、前記保持体側へ前記可動体を付勢する付勢手段と、
前記保持体に対して前記付勢手段側となる位置において前記ベースに固定され、前記可動体が前記保持体側に移動する際に、前記可動体の移動を制動する制動手段と、
前記ベースに前記可動体の移動方向に対して交差する斜め方向に沿って形成され、前記保持体を、前記ストライカーを受け入れると共に解放する待機位置と前記ストライカーを保持し前記回動体が閉位置となる最終位置とへ案内するレール部と、
を有する回転体アシスト装置。
【請求項2】
前記レール部には、前記保持体を前記付勢手段の付勢力に抗して前記待機位置に保持すると共に、前記保持体が前記ストライカーを受け入れて回転することで前記保持状態を解除する保持部が形成されている請求項1に記載の回転体アシスト装置。
【請求項3】
前記制動手段は、前記可動体の前記ベースに対する移動により、シリンダに対してピストンロッドが移動し圧縮されるピストンダンパーである請求項1または請求項2に記載の回転体アシスト装置。
【請求項4】
前記ピストンダンパーは、前記ベースに設けられ枠形状とされた前記可動体の内部に挿入されたストッパーと前記可動体の内壁とによって圧縮される請求項3に記載の回転体アシスト装置。
【請求項5】
前記可動体の端部に前記ベースの長手方向と交差する方向に沿って形成された長孔と、前記保持体に設けられ前記長孔に移動可能に係合された軸体と、を備え、前記長孔と前記軸体との係合によって、前記保持体が前記可動体に前記待機位置で回転可能に取り付けられている請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の回転体アシスト装置。
【請求項6】
前記保持体に形成され前記保持体が前記最終位置にある場合に、前記ストライカーを受け入れ、前記ストライカーを前記受け入れ溝内に案内するための補助溝を備えている請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の回転体アシスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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