説明

回転可能試験素子

本発明は、原則としてディスク形かつ平坦な試験素子であって、好ましくは該ディスク形の試験素子の平面に対して垂直な中心軸の周囲で回転することができる試験素子に関し、該試験素子は、液体サンプルを注入するためのサンプル注入孔、中心軸から離れた第1端部と中心軸に近い第2端部とを有する、特に吸収性多孔質マトリックスである毛細管活性ゾーン、および中心軸に近い領域から中心軸から離れた毛細管活性ゾーンの第1端部までつながるサンプルチャンネルを含む。さらに、本発明は、該試験素子を用いてアナライトを測定する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試験素子に関するものであり、該試験素子はほぼディスク形であり、かつ平坦であり、そしてディスク形試験素子の平面に直交する好ましくは中心軸の回りを回転させることができ、液体サンプルを注入するためのサンプル注入孔と、毛細管活性ゾーン、特に吸収性多孔質マトリックスと、そしてサンプル注入孔から毛細管活性ゾーンに達するサンプルチャンネルと、を含む。更に、本発明は、アナライトを、試験素子を使用して測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基本的に、液体サンプル材料または液体形態に変化させることができるサンプル材料を分析するシステムは、2つの種類に分類することができる:一方の種類として、いわゆる湿式試薬のみを扱う分析システムがあり、他方の種類として、いわゆる乾燥試薬を使用するシステムがある。特に、医療診断では、そして更に、環境分析およびプロセス分析では、前者のシステムは、固定設備を備える研究機関において主として使用されるのに対し、後者のシステムは、「オンサイト」分析に関して主として使用される。
【0003】
乾燥試薬を使用する分析システムは、医療診断分野において、特にいわゆる検査用担体、例えば試験紙の形態で提供される。この主要な例が血糖値を測定するための試験紙、または尿分析試験紙である。そのような検査用担体は通常、幾つかの機能(例えば、乾燥状態での試薬の保管、または非常に稀であるが、溶液中での試薬の保管;望ましくないサンプル成分、特に赤血球の全血サンプルからの分離;イムノアッセイを行なう場合のいわゆるバウンドフリー分離;サンプル体積の計量;装置の外部から装置の内部へのサンプル液の移送;個々の反応ステップの時系列的な順序の制御など)を集合的に提供する。この点に関して、サンプル移送の機能は多くの場合、吸収性材料(例えば、紙またはフリース)によって、毛管チャンネルによって、または外部駆動力(例えば、圧力、吸引力などの)を使用することにより、あるいは遠心力により可能になる。ディスク形の検査用担体、いわゆるラボディスクまたは光バイオディスクは、サンプル移送を遠心力によって制御するアイデアを実践しようとしている。そのようなディスク形のコンパクトディスク状検査用担体によって、マイクロ流体構造を利用することによる小規模化が可能になると同時に、1つのサンプルからの同様の分析の、または異なるサンプルからの同じ分析の並列での処理のために同じ構造を繰り返し適用することにより、複数のプロセスを並列して行うことができる。特に、光バイオディスクの分野では、光学的に保存されたデジタルデータを統合して検査用担体を特定する、または光バイオディスク上の分析システムを制御することが可能になる。
【0004】
分析の小規模化および並列処理化、ならびに光ディスク上でのデジタルデータの統合の他に、バイオディスクは一般に、これらのバイオディスクを、確立された製造プロセスによって製造することができ、かつ確立された評価技術によって測定することができるという利点をもたらす。このような光バイオディスクが化学要素および生化学要素によって構成される場合、通常、公知の化学要素および生化学要素を利用することができる。遠心力および毛管力のみを利用する光ラボディスクまたは光バイオディスクの不利な点は、試薬を固定化することが難しく、かつ検出の精度が低いことである。特に、例えばイムノアッセイのような特異的結合反応を利用する検出システムの場合、特にいわゆるバウンドフリー分離での従来の試験紙システムと比べると、かさばる構成要素がない。
【0005】
この理由により近年、特にイムノアッセイの分野において、従来の試験紙およびバイオディスクを組み合わせたハイブリッド構造を構築する試みがなされている。これにより、一方で液体移送を行なう複数のチャンネルおよびチャンネル状構造を有し、そしてかさばる吸収性材料がこれらの構造内に(少なくとも部分的に)他方において設けられているバイオディスクがもたらされる。
【0006】
WO 2005/001429(ファン(Phan)ら)には、光バイオディスクが記載されており、この光バイオディスクは、メンブレンの小片を試薬担体としてチャンネルシステムの一部に有する。試薬は、ディスクに供給される液体によって溶解するので緩衝試薬溶液が得られ、従って、緩衝試薬溶液がサンプルと接触するようになる。
【0007】
WO 2005/009581(ランドール(Randall)ら)に公知の光バイオディスクは、吸収性メンブレンまたは吸収紙を含むことにより、サンプル液を移動させ、粒子状サンプル成分を分離し、試薬を運び、またはサンプルを分析する。サンプルはまず、バイオディスクの外側エッジの近くの血液分離メンブレンに注入され、そしてこのメンブレンを通って半径方向に、バイオディスクの中心に更に近い位置に配置される試薬紙に移動する。その後、サンプルは再び、外側に向かって半径方向に、すなわちバイオディスクの中心から遠ざかるように移動し、そしていわゆる分析メンブレンを通って流れる。外側に向かっての移動は、この場合は、クロマトグラフィーによって生じ、クロマトグラフィーはバイオディスクを回転させることにより、従ってサンプルに作用する遠心力を利用して行なわれる。
【0008】
US 2002/0076354 A1(コーエン(Cohen))には光バイオディスクが開示されており、この光バイオディスクは、液体サンプルを移送するチャンネルシステムの他に、いわゆる「捕捉層」を有する。後出の捕捉層は、例えばニトロセルロースにより構成することができる。「捕捉層」を通過する流れは、ディスクを回転させるときの遠心力を利用して起こる。
【0009】
US 2005/0014249(スタイマー(Staimer)ら)、およびUS 2005/0037484(スタイマー(Staimer)ら)には、チャンネルに組み込まれ、クロマトグラフィー分離媒質として機能する多孔質材料を含む光バイオディスクが記載されている。サンプル液は外側に向かって、遠心力によって中心近傍のサンプル注入位置から分離媒質を通って押し出され、そしてフィルターを通過した後、続いて再び、チャンネル内を内側に向かって半径方向に流れる。
【0010】
US 2004/0265171(プージャ(Pugia)ら)には、液体チャンネルを有する試験素子が記載されており、液体チャンネルでは、サンプル液が毛管力および遠心力の相互作用によって移送される。ニトロセルロース紙は液体チャンネルの内部に配設することができ、液体チャンネルには凝集試薬を流し、凝集試薬はアナライトと反応するので、いわゆるバンドを形成することができ、これらのバンドは最終的に光学測定されるので、サンプル中のアナライト濃度を測定するために使用される。ニトロセルロース紙によって、サンプル液を遠心力に平行に移送することができるだけでなく、別の吸収性材料、例えば吸収性のニトロセルロース紙を使用して吸引作用を強める場合には、遠心力とは逆の方向に移送することができる。
【0011】
WO 99/58245(ラーソン(Larsson)ら)には、マイクロ流体試験素子が記載されており、この試験素子では、液体の移動は、例えば異なる親水性などの異なる表面特性を有する異なる表面によって制御される。
【0012】
米国特許第5,242,606号(ブレーニン(Braynin)ら)には、遠心分離機の円形の円盤状ロータが開示されており、円盤状ロータには、サンプル液を移送するためのチャンネルおよびチャンバが配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第WO 2005/001429号
【特許文献2】国際公開第WO 2005/009581号
【特許文献3】米国出願公開第2002/0076354 A1号
【特許文献4】米国出願公開第2005/0014249号
【特許文献5】米国出願公開第2005/0037484号
【特許文献6】米国出願公開第2004/0265171号
【特許文献7】国際公開第WO 99/58245号
【特許文献8】米国特許第5,242,606号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
先行技術におけるコンセプトの不利な点は、試薬を取り込んだ後、かつ試薬が吸収性多孔質マトリックスに流入した後のサンプル液の反応時間および滞留時間に対する特定の制御が、特に、例えばイムノアッセイのような特異的結合アッセイに関して可能でないことである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、先行技術における不利な点をなくすことにある。
【0016】
この目的は、本発明の構成要件によって達成される。
【0017】
本発明の構成要件は、請求項1または14に記載の試験素子、請求項19に記載の測定システム、請求項20に記載の試験素子および測定システムの使用だけでなく、請求項15に記載の方法である。本発明の有利な構成および好ましい実施形態は従属特許請求項の構成要件である。
【0018】
本発明による試験素子はほぼディスク形であり、かつ平坦である。当該試験素子は、試験素子内のディスク形試験素子の平面に直交する好ましくは中心軸の回りを回転させることができる。試験素子は典型的にはコンパクトディスクと同等の円形ディスクである。しかしながら、本発明はこの形状のディスクに制限されるのではなく、非対称なディスク、または非円形のディスクにも容易に使用することができる。
【0019】
構成要素に関して、試験素子はまず、サンプル注入孔を含み、サンプル注入孔には、液体サンプルをピペットで注入する、または別の方法で導入することができる。サンプル注入孔は軸の近傍(すなわち、ディスクの中心の近傍)に位置させる、または軸から離れて(すなわち、ディスクの縁部の近傍に)位置させることができる。サンプル注入孔が軸から離れて位置する場合、試験素子は少なくとも1つのチャンネルを含み、これらのチャンネルによって液体サンプルを、軸から離れた位置から軸の近傍の位置に毛管力によって移送することができる。
【0020】
この点に関して、サンプル注入孔からサンプルチャンネルに直接放出する操作が可能である。しかしながら、サンプル注入孔が最初に、サンプル注入孔の背後に位置する貯蔵部に達し、この貯蔵部にサンプルが、当該サンプルが流れてきてサンプルチャンネルに更に流入する前に流入するようにすることもできる。サンプルがサンプル注入孔から次の流体構造に、別の支援を含むことなく流入する動作は、適切な寸法によって確保することができる。この動作には、流体構造の表面の親水性する、および/または毛管力の発生を促進する構造の使用が必要である。しかしながら、外力、好ましくは遠心力が試験素子に作用した後に、本発明による試験素子の流体構造のみをサンプル注入孔から充填することもできる。
【0021】
試験素子は更に、特に吸収性多孔質マトリックスの形態の毛細管活性ゾーン、または液体サンプルの少なくとも一部分を保持する毛管チャンネルを含む。毛細管活性ゾーンは、軸から離れた第1端部と、軸の近傍の第2端部とを有する。
【0022】
更に、試験素子は、サンプル注入孔から、毛細管活性ゾーンの、軸から離れた第1端部にまで、特に吸収性多孔質マトリックスにまで延びるサンプルチャンネルを有する。この場合、サンプルチャンネルは、毛細管活性ゾーンの軸から離れた第1端部よりも好ましくは中心軸に近い、軸近傍の領域を少なくとも1回は通過する。
【0023】
本発明の試験素子の重要な特徴は、毛細管活性ゾーン、特に吸収性多孔質マトリックスが軸に近い第2端部を有することである。毛細管活性ゾーンの軸から離れた第1端部はサンプルチャンネルと接触し、サンプルチャンネルでは、サンプルを毛管力および/または遠心力および/または陽圧または陰圧のような他の外力によって移動させることができる。液体サンプルが、毛細管活性ゾーンの軸から離れた第1端部に、任意であるが、試薬および/または希釈媒体の取り込みが行なわれ、かつ/またはプレ反応が起こった後に達すると直ぐに、当該液体サンプルが前記ゾーンに取り込まれ、そして毛管力によって前記ゾーンを通って移送される(毛管力は、吸収性多孔質マトリックスの場合は、吸引力と表記することもできる)。
【0024】
毛細管活性ゾーンは典型的には、吸収性多孔質マトリックス、特に紙、メンブレン、またはフリースである。
【0025】
毛細管活性ゾーン、特に吸収性多孔質マトリックスは通常、固定化された試薬を含む一つ以上のゾーンを含む。
【0026】
特異的結合試薬、例えば抗原、抗体、(ポリ)ハプテン、ストレプトアビジン、ポリストレプトアビジン、リガンド、受容体、核酸ストランド(捕捉プローブ)などのような特異的結合パートナーは通常、毛細管活性ゾーン内に、特に吸収性多孔質マトリックス内に固定化される。特異的結合試薬は、アナライトを、またはアナライトに含まれる分子種、またはアナライトに関連する分子種を、毛細管活性ゾーンを通過して流れるサンプルから特異的に捕捉するために用いられる。これらの結合パートナーは、ライン、点、パターンの形態で毛細管活性ゾーンの材料の中に、または材料の上に固定化されて存在することができる、またはこれらの結合パートナーは毛細管活性ゾーンに、例えばいわゆるビーズを利用して間接的に結合させることができる。従って、例えばイムノアッセイを行なう場合、アナライトに対する1つの抗体は毛細管活性ゾーンの表面に固定化されて、または吸収性多孔質マトリックスの中に固定化されて存在することができ、次に抗体が、アナライト(この場合は抗原またはハプテン)をサンプルから捕捉し、更にアナライトを、吸収性マトリックスなどの毛細管活性ゾーンの中に固定化する。この場合、アナライトは、例えば標識を利用して検出可能とすることができ、標識は、例えば当該標識を、標識した結合可能なパートナーと更に接触させる更なる反応によって、視覚的に、光学的に、または蛍光によって検出することができる。
【0027】
本発明による試験素子の好ましい実施形態では、毛細管活性ゾーンの、特に吸収性多孔質マトリックスの、軸の近傍の第2端部は、別の吸収性材料または吸収性構造に隣接するので、該吸収性材料または吸収性構造が液体を毛細管活性ゾーンから取り込むことができる。吸収性多孔質マトリックスおよび別の材料は典型的には、この目的を達成するためにわずかに重なり合っている。別の材料または別の吸収性構造は一方では、毛細管活性ゾーンの、特に吸収性多孔質マトリックスの吸引作用を支援するように機能し、そして他方では、毛細管活性ゾーンを既に通過した液体の保持ゾーンとして機能する。この点に関して、別の材料は、マトリックスと同じ材料またはマトリックスとは異なる材料により構成することができる。例えば、マトリックスはメンブレンとすることができ、そして別の吸収性材料はフリースまたは紙とすることができる。当然ながら、他の組み合わせが同様に可能である。
【0028】
好ましい実施形態では本発明による試験素子は、サンプルチャンネルが、異なる寸法および/または異なる機能を有するゾーンを含むことを特徴とする。例えば、サンプルチャンネルは、サンプル中に溶解することができる、またはサンプル中に懸濁させることができる試薬を含むゾーンを含むことができる。これらの試薬は液体サンプルに、液体サンプルがチャンネルに流入する、またはチャンネルを通過するときに溶解させる、または懸濁させることができ、そしてサンプル中のアナライトと、または他のサンプル成分と反応することができる。
【0029】
サンプルチャンネル内の異なるゾーンは、毛細管現象を起こすゾーン、および毛細管現象を起こすことがないゾーンが配設されるという点で異ならせることもできる。更に、親水性の高いゾーン、および親水性の低いゾーンを配設することができる。個々のゾーンは半シームレスな機構になるように互いに対して融合することができ、または互いから、バルブのようなある種のバリアによって、特に幾何学バルブまたは疎水性バリアのような非閉止バルブによって分離することができる。
【0030】
サンプルチャンネル内の試薬は、乾燥試薬または凍結乾燥試薬の形態で存在することが好ましい。しかしながら、試薬は、本発明による試験素子の中で、液体の形態で存在することも可能である。
【0031】
試薬は、試験素子内に公知の方法により導入することができる。試験素子は好ましくは、少なくとも2つの層、すなわち下部層およびカバー層を含み、下部層には、流体構造が導入され、カバー層は、液体流入孔、および排出孔以外の別の構造を含んでいない。試験装置の製造中の試薬の導入は通常、試験素子の上側部分(カバー層)を下側部分(下部層)に取り付ける前に行なわれる。この時点で、流体構造が下側部分において開いているので、試薬は液体試薬または乾燥試薬として容易に計量することができる。この点に関して、試薬は、例えば押圧、または分注により導入することができる。しかしながら、試験素子に挿入された紙、フリースまたはメンブレンなどの吸収性材料に試薬を含浸させることにより、試薬を試験素子に導入することも可能である。試薬を配置し、吸収性材料、例えば吸収性多孔質マトリックス(メンブレン)、および任意であるが、別の吸収性材料(廃液用フリースなど)を挿入した後、試験素子の上側部分および下側部分を互いに連結させる、例えばクリップ留めする、溶接する、糊で接着させるなどする。
【0032】
別の構成として、下部層は液体流入孔および排出孔を、流体構造の他に有することもできる。この場合、カバー層は、駆動ユニットを収容するための中心孔を除いて、任意の孔を設けることなく完成させることができる。この場合、特にカバー部分は単に、下側部分に糊で接着させた、または下側部分に溶接させたプラスチック箔により構成することができる。
【0033】
サンプルチャンネルは通常、粒子成分を液体サンプルから分離するゾーンを含む。特に、血液、または細胞成分を含む他の体液がサンプル材料として使用される場合、このゾーンはサンプルの細胞成分を分離するように機能する。従って、後続の視覚検出法または光学検出法を行なうために、著しく着色した血液よりも通常は好適なほとんど無色の血漿または血清は、特に赤血球(erythrocytes)を血液から分離することにより収集することができる。
【0034】
サンプルの細胞成分は、遠心力によって、すなわち試験素子を、試験素子に液体サンプルを充填した後に高速回転させることにより分離されることが好ましい。この目的で、本発明による試験素子は、適切な寸法および幾何学的構造を有するチャンネルおよび/またはチャンバを含む。詳細には、試験素子は、血液細胞成分の分離を行なう赤血球回収ゾーン(赤血球チャンバまたは赤血球トラップ)と、血清または血漿回収ゾーン(血清または血漿チャンバ)とを含む。
【0035】
試験素子内でのサンプル液の流れを制御するために、試験素子はバルブを、特にサンプルチャンネル内に含むことができ、特にいわゆる非閉止または幾何学バルブ、あるいは疎水性バリアを含むことができる。これらのバルブは毛細管停止部として機能する。これらのバルブによって、試験素子のサンプルチャンネルおよび個々のゾーンを通過するサンプル流を特定の時系列の、かつ空間的な制御を確保することができる。
【0036】
詳細には、サンプルチャンネルはサンプル計量ゾーンを有することができ、サンプル計量ゾーンによって、最初に余剰に注入されるサンプルを正確に測定することができる。好適な実施形態では、サンプル計量ゾーンはサンプル注入孔から、適切なサンプルチャンネルを経由して流体構造内のバルブにまで、特に幾何学バルブまたは疎水性バリアにまで延びる。この点に関して、サンプル注入孔はまず、余剰のサンプル物質を受け入れることができる。サンプルは、毛管力または遠心力のいずれかによって駆動されてサンプル注入ゾーンから移送が行なわれるチャンネル構造に流れ、そしてバルブに至るまでの当該チャンネル構造を充填する。余剰のサンプルは最初は、サンプル注入ゾーン内に残留する。チャンネル構造がバルブに至るまでの部分まで充填される場合にのみ、サンプル注入ゾーンに隣接し、かつサンプルチャンネルから分岐する余剰サンプルチャンバが、例えば毛管力によって、または試験素子を遠心することにより充填される。この場合、適切なバルブを選択することによって、測定対象のサンプル体積が最初に、バルブを超えて移送されることがないようにする動作を確保する必要がある。一旦、余剰のサンプルが対応するオーバーフローチャンバに回収されてしまうと、サンプル体積が、一方の側のサンプルチャンネルのバルブと、他方の側のサンプルオーバーフローチャンバの流入口との間で正確に定量される。次に、正確に定量されたこのサンプル体積を、外力を加えることにより、特にもう一度遠心することによりバルブを超えて移動させる。従って、バルブの後ろに位置し、かつサンプルと接触するようになる全ての流体領域が最初に、正確に定量されたこのサンプル体積によって充填される。
【0037】
サンプルチャンネルは更に、サンプル液とは別の液体の流入口を有することができる。例えば、洗浄液または試薬液で充填することができる第2チャンネルは、サンプルチャンネルへの放出を行なうことができる。
【0038】
測定装置および試験素子からなる本発明によるシステムを使用して液体サンプル中のアナライトを測定する。この場合、測定装置はとりわけ、試験素子を回転させる少なくとも一つの駆動機構、および試験素子の視覚シグナルまたは光シグナルを分析する計測光学系を備える。
【0039】
測定装置の光学システムを使用して蛍光を空間分解検出することによって測定することができることが好ましい。2次元走査光学系、すなわち平面計測光学系の場合、典型的にはLEDまたはレーザーを使用することにより、試験素子の検出領域を照明し、そして任意であるが、光学的に検出可能な標識を励起する。光シグナルはCMOSまたはCCD(典型的には、640×480ピクセルの分解能を持つ)によって検出される。光路は直線的である、または折り返される(例えば、ミラーまたはプリズムによって)。
【0040】
歪像光学系の場合、照明または励起は典型的には、好ましくは検出ラインおよび対照ラインに直交する試験素子の検出領域を照明する照明ラインによって行なわれる。この場合、検出は、ダイオードラインを利用して行なうことができる。この場合は試験素子の回転移動を利用してダイオードラインで計測される対象の平面領域を2次元的に照明し、そして走査する。
【0041】
エンコーダ付きのDCモーター、またはステップモーターを、駆動機構として試験素子を回転させ、そして位置決めするために使用することができる。
【0042】
試験素子の温度は、例えばディスク形の試験素子を装置内で載せるプレートを加熱する、または冷却することにより、装置内で間接的に維持することが好ましい。温度は非接触式で測定されることが好ましい。
【0043】
本発明による方法は、液体サンプル中のアナライトを検出するために利用される。サンプルをまず、試験素子のサンプル注入孔に注入する。次に、試験素子を、当該試験素子の好ましくは中心軸の回りを回転させることが好ましい;しかしながら、本発明による方法を、回転が、試験素子の外部に設けることもできる別の軸を回って行なわれるように実行することもできる。このプロセスでは、サンプルをサンプル注入孔から毛細管活性ゾーンの、特に吸収性多孔質マトリックスの、軸から離れた端部に移送する。次に、試験素子の回転を遅くする、または停止させて、サンプルまたは試験素子を通って流れるときにサンプルから得られる物質(例えば、サンプルおよび試薬の混合物、試験素子からの試薬とのプレ反応によって変化したサンプル、赤血球を分離した後の全血サンプルから血清または血漿などの一部の成分が取り除かれたサンプルなど)が、軸から離れた毛細管活性ゾーンの、特に吸収性多孔質マトリックスの端部から、軸の近傍の端部に向かって移送されるようにする。アナライトを最終的に、毛細管活性ゾーンの中で、特に吸収性多孔質マトリックスの中で、または毛細管活性ゾーンの下流のゾーンの中で、視覚的に、または光学的に検出する。
【0044】
サンプル(または、サンプルから得られる物質)が、特に試験素子の回転を遅くする、または停止させることによって、毛細管活性ゾーンを通って移動し始める時点を正確に測定し、そして制御することができる。毛細管活性ゾーンへの、そして毛細管活性ゾーンを通ってのサンプルの移動は、毛細管活性ゾーンにおける毛管力(吸引力)の大きさが反対方向の遠心力の大きさを上回る場合にのみときになる。毛細管活性ゾーンにおける液体移送は詳細には、このようにして始めることができる。従って例えば、試験素子の回転を、サンプルが毛細管活性ゾーンに流入することができる程度に遅くする、または停止させる前に、考えられるサンプルのプレ反応またはプレインキュベーション、あるいはサンプルのインキュベーションが行なわれる時間に亘って待機することができる。
【0045】
毛細管活性ゾーンを通ってのサンプル(または、サンプルから得られる物質)の移送は詳細には、試験素子を、当該試験素子の好ましくは中心軸の回りの新たな回転により遅くする、または停止させることができる。回転中に生じる遠心力は、サンプル液を、毛細管活性ゾーンの軸から離れた端部から軸の近傍の端部にまで移動させるように作用する毛管力と反対方向に作用する。従って、毛細管活性ゾーンにおけるサンプルの流速に対する特定の制御、特に流速の低下は、流動方向を反転させる程度にまでも可能である。このようにして、例えば毛細管活性ゾーンにおけるサンプルの滞留時間を制御することができる。
【0046】
特に、本発明による試験素子および方法では、試験素子の回転によって毛細管活性ゾーンを通過する液体サンプル、および/または別の液体の移動の方向を反転させることもでき、この場合、この操作を数回行なうことにより、液体の往復移動を実現することができる。毛細管活性ゾーン内の液体を外側から(すなわち、軸から離れた端部から)内側に向かって(すなわち、軸の近傍の端部に向かって)移送するように作用する毛管力、および反対方向の遠心力を連携して相互作用させることにより、とりわけ、毛細管活性ゾーンにおける結合反応の結合効率を高めて、可溶性試薬の溶解度を高め、そしてこれらの試薬をサンプルまたは他の液体と混合させることが可能であり、または親和性アッセイにおける洗浄効率(バウンドフリー分離)を高めることが可能である。
【0047】
特に、イムノアッセイに関連して、検出は、サンドイッチアッセイの原理に従って、または競合試験の形態で行なうことができる。
【0048】
別の液体を試験素子に、試験素子を回転させた後に注入することもでき、前記液体はサンプルの後に続いて、毛細管活性ゾーンの、特に吸収性多孔質マトリックスの、軸から離れた端部から軸の近傍の端部に向かって移送される。
【0049】
別の液体は特に、バッファー、好ましくは洗浄バッファー、または試薬液とすることができる。別の液体を追加することにより、シグナル対バックグランド比を、従来の試験紙と比べて、特にイムノアッセイに関して高めることができるが、これは、液体を追加するステップをバウンドフリー分離を行なった後の洗浄ステップとして使用することができるからである。
【0050】
本発明は以下の利点を有する:
毛細管活性ゾーンにおける、特に吸収性多孔質マトリックス材料における遠心力を利用する液体移送、および吸引力を利用する液体移送を組み合わせることにより、液体流動に対する正確な制御が可能になる。本発明によれば、毛細管活性ゾーン、特に吸収性多孔質マトリックスが、液体を軸から離れた端部から軸の近傍の端部に、すなわちディスク形の試験素子の周辺から回転軸に向かって移送する。液体を移動させるために使用することもできる遠心力は、この移送方向に対して正確に反対方向に作用する。従って、試験素子の回転を体系的に制御(例えば、相対的に速い/遅い回転、回転運動のオンおよびオフの切り替えなど)することにより、毛細管活性ゾーンにおける、特に吸収性多孔質マトリックスにおけるサンプル液の流れを遅くする、または停止させることができるので、選択的な、かつ正確な反応条件を維持することができる。同時に、イムノアッセイでのバウンドフリー分離を行なうための捕捉マトリックスとしてほぼ機能する吸収性多孔質マトリックスを使用することにより、イムノアッセイを行なっている間のサンプル成分の効率的な捕捉が可能になる。特に、遠心力および毛管力(吸引力)を相互作用させることにより、サンプルを、操作技術の複雑さを増大させることなく、試薬ゾーン、特に固定化された試薬を含むゾーン(特に、異なるイムノアッセイのための捕捉ゾーン)にわたって前後に移動させることができ、従って試薬を更に高い効率で溶解させる、サンプルを試薬と混合させる、またはサンプル成分を、固定化された結合パートナーで捕捉する動作を確保することができる。同時に、サンプル成分(とりわけ、アナライト)を、固定化された結合パートナーに結合させることにより結合効率を高める場合の枯渇現象を無くすことができる(すなわち、アナライトが欠乏しているサンプル成分を、アナライトを多量に含むサンプル成分に、サンプルを捕捉ゾーンを往復移動させることにより、そして/または効率的な混合を行なうことにより入れ替えることができる)。更に、毛細管活性ゾーンにおける液体の往復移動によって、小さい液体体積を最も高い効率で、反応目的に利用することができる(この場合、サンプル体積が特に利用される)だけでなく、洗浄目的にも利用することができるので、例えば捕捉ゾーンにおける結合標識およびフリー標識の判別を容易にすることができる。これにより、サンプルおよび液体試薬だけでなく、洗浄バッファーの量を効率的に減らすことができる。
【0051】
試験素子内での回転軸の好ましくは中心での配置により、試験素子自体だけでなく、接続先の測定装置を出来る限り小さくなるように設計することができる。例えば、US 2004/0265171の図1および2に示される試験素子のようなチップ形(chip-shaped)の試験素子の場合、回転軸は試験素子の外部に位置する。従って、接続されるターンテーブルまたはロータは、試験素子が同じ寸法を持ち、かつ回転軸が本発明による試験素子の場合のように、試験素子内に位置し、好ましくは中心に配置される場合よりも必然的に大きくなる。
【0052】
本発明は更に、以下の実施例および図によって明らかになる。この場合、免疫学的サンドイッチアッセイを参照する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。本発明は他のタイプのイムノアッセイに適用することができる、特に競合イムノアッセイにも適用することができる、または他のタイプの特異的結合アッセイ(例えば、結合パートナーとしての糖およびレクチン、ホルモン、およびホルモンの受容体を使用する、または相補的な核酸ペアを使用するアッセイも)に適用することができる。これらの特異的結合アッセイの代表的な例は当該技術分野の当業者には公知であり(イムノアッセイに関しては、米国特許第4,861,711号の図1および2、および明細書中のこれらの図に関する一節を参照することにより明らかになる)、そして本発明に容易に適用することができる。以下の実施例および図では、吸収性多孔質マトリックス(メンブレン)が毛細管活性ゾーンの代表的な例として記載されている。しかしながら、本発明はこのようなマトリックスに限定されない。例えば、マトリックスではなく、毛細管活性チャンネルを使用することができ、これは、液体流を制御する、または試薬を供給する、もしくは固定化する、あるいは液体および/または試薬を混合させるマイクロ構造を有することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明による試験素子の好ましい実施形態の上面図を模式図として示している。図を分かり易くするために、試験素子の内、流体構造を含む層のみを示している。図示の実施形態は、サンプル液および/または洗浄液を導入する孔を一つしか含んでいない。この実施形態では、妨害性のサンプル成分は、サンプルを試薬と接触させた後に分離される。
【図2】本発明による試験素子の別の好適な実施形態を模式的に示している。この場合も、試験素子の流体要素を有する構造のみを示している。試験素子のこの実施形態では、2つの個別のサンプル注入孔、および洗浄バッファー注入孔が設けられている。この場合、サンプル細胞成分はサンプルを試薬と接触させる前に分離される。
【図3】図1に記載の実施形態の変形例を模式図で示している。この場合も、サンプル細胞成分はサンプルを試薬と接触させた後に分離される。しかしながら、図3に記載の構造は洗浄液用の個別の供給口を有する。
【図4】本発明による試験素子の更に別の好ましい実施形態を、図2と同様の模式図で示している。
【図5】図3に記載の試験素子の更なるわずかに変更を示している。図3に記載の実施形態とは異なり、図5では、異なる幾何学的配置の廃液用フリース、および異なるタイプのバルブがサンプル計量セクションの端部に設けられている。
【図6】図5に記載の試験素子の更なる変更の上面図を模式的に示している。図5に記載の実施形態とは異なり、図6に記載の実施形態は、余剰サンプルを受け入れる流体構造を有する。
【図7】図3に記載の試験素子の別の変形例を模式的に示している。流体構造は図3の流体構造と機能的にほとんど類似している。しかしながら、これらの流体構造の幾何学的配置および構造が異なっている。
【図8】本発明による試験素子の更に別の好ましい実施形態を模式的に示している。図8の構造は、図4に記載の試験素子から既に判明している機能にほぼ対応している。
【図9】図6に記載の試験素子に替わる試験素子の上面図を模式的に示している。図6に記載の実施形態とは異なり、図9による実施形態は、軸から離れ、かつサンプルを最初に、試験素子の中心に更に近い毛細管を介して移動させる、すなわち軸に近い領域の中に移動させるように作用するサンプル注入孔を有する。
【図10】全血サンプルにおけるトロポニンT測定に対応する代表的な曲線形状を示している(ng/mlで表示されるトロポニンTの濃度がシグナル強度(カウント数)に対してプロットされている)。組換えトロポニンTをサンプルに添加してそれぞれの濃度を作成した。データは実施例2からのものであり、そして図6/実施例1に記載の試験素子を援用して取得した。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1〜9は、本発明による試験素子(1)の種々の好適な実施形態を示している。本質的に、流体構造および中心孔(駆動孔3)を含む基板(2)が各事例に示されている。例えば、一体型部材または複合部材とすることができ、かつ射出成形加工、圧延加工によって、または複数の適切な層を重ね合わせることによって構成することができる基板の他に、本発明によるディスク形試験素子(1)は更に通常、カバー層を含み、カバー層は図を分かり易くするために図には示していない。カバー層には基本的に、構造を設けることもできるが、通常、カバー層には試験素子に注入する必要のあるサンプルおよび/または他の液体のための孔以外の構造は全く設けられない。カバー層はまた、全体を孔を付設することなく構成することができ、例えば箔の形態とすることができ、この箔を基板に結合させ、そしてこの箔によって、箔内に位置する構造を閉じ込める。
【0055】
図1〜9に示す実施形態は複数の流体構造を示し、これらの流体構造は、これらの流体構造が細部において実施形態ごとに異なる場合でも、ほとんど同じ機能を備えている。従って、基本構成および基本機能は、図1に記載の実施形態に基づいて非常に詳細に説明される。図2〜9に記載の実施形態を続いて、互いの間の具体的な差異に基づいてのみ特に詳細に説明することにより、説明を不必要に繰り返すことがないようにしている。
【0056】
図1は、本発明によるディスク形試験素子(1)の第1の好適な実施形態を示している。試験素子(1)は基板(2)を含み、基板(2)は流体構造およびマイクロ流体構造だけでなく、クロマトグラフィー構造を含む。基板(2)は対応する対向部材(カバー層)(図示せず)によって覆われ、対向部材はサンプル注入孔およびサンプル排出孔を含み、これらの孔は、基板(2)内の構造に対応する。カバー層だけでなく基板(2)は中心孔(3)を有し、中心孔(3)によって、ディスク形試験素子(1)は、測定装置の該当する駆動ユニットと相互作用することによって回転することができる。別の構成として、試験素子(図1〜9の内の1つの図による)はこのような中心孔(3)を持たなくても良く、そして駆動機構は、回転プレートのような試験素子の外側凹凸面に対応する測定装置の駆動ユニットによって回転し、回転プレートの中に試験素子が挿入され、試験素子は試験素子の形状に合った凹部に挿入される。
【0057】
サンプル液、特に全血サンプルを試験素子(1)にサンプル注入孔(4)を介して注入する。サンプル液をサンプル計量ゾーン(5)に充填し、サンプル計量ゾーン(5)では、毛管力および/または遠心力によって移送が行なわれる。サンプル計量ゾーン(5)にはこの点に関しては、乾燥試薬を収容することもできる。サンプル計量ゾーン(5)は毛細管停止部(6および8)によって区切られ、これらの毛細管停止部は、例えば疎水性バリアまたは幾何学バルブ/非閉止バルブの形態とすることができる。サンプル計量ゾーン(5)の境界を毛細管停止部(6,8)によって区切ることによって、所定のサンプル体積を取り込み、そしてサンプル計量ゾーン(5)の下流に位置する流体ゾーンに流し込む操作を確実に行なうことができる。試験素子(1)を回転させると、全ての余剰サンプルがサンプル注入孔(4)およびサンプル計量ゾーン(5)から余剰サンプル容器(7)に移送されるのに対し、計測された量のサンプルはサンプル計量ゾーン(5)からチャンネル(9)に移送される。
【0058】
赤血球および他のサンプル細胞成分の分離はチャンネル(9)において適切な回転速度で開始される。サンプル計量ゾーン(5)に収容される試薬は、サンプルがチャンネル(9)に流入するときにはサンプルに溶解して既に含まれている。この点に関して、サンプルが毛細管停止部(8)を通ってチャンネル(9)に流入することによって、サンプル内の試薬が混合される。
【0059】
本発明による試験素子によって可能になる回転プロセスを時間的に制御することにより、滞留時間を選択的に制御することができるので、試薬を含むサンプルのインキュベーション時間、および反応時間を選択的に制御することができる。
【0060】
回転中、試薬・サンプル混合物を流体構造(10)(血清/血漿回収ゾーン)および流体構造(11)(赤血球回収ゾーン)に流入させる。試薬・サンプル混合物に作用する遠心力によって、血漿または血清が赤血球から分離される。このプロセスでは、赤血球が赤血球回収ゾーン(11)に回収されるのに対し、血清はほとんどが回収ゾーン(10)に残る。
【0061】
メンブレンまたはフリースを使用して粒子状サンプル成分を分離する(例えば、一般的に血液分離メンブレンまたはフリースと表記されるガラス繊維フリースまたは非対称多孔性プラスチックメンブレンを使用して赤血球を全血サンプルから分離する)試験素子とは異なり、サンプル体積は、本発明による試験素子によってずっと高い効率で利用することができるが、これは、デッドボリューム(例えば、繊維の隙間の体積、または繊維の孔の体積)がほとんど生じることがなく、デッドボリュームからはサンプルをもはや取り出すことができないからである。更に、先行技術におけるこれらの血液分離メンブレンおよびフリースの幾つかは、サンプル成分(例えば、タンパク質)を吸収する、または細胞を破壊する(溶解させる)望ましくない傾向を示し、この傾向も本発明による試験素子には観察されない。
【0062】
試験素子(1)の回転が停止する、または遅くする場合、試薬・血漿混合物(この混合物では、イムノアッセイを行なう場合、アナライト・抗体コンジュゲートのサンドイッチ複合体が、例えばアナライトが存在する状態で形成されている)が吸収性多孔質マトリックス(12)に、当該マトリックスの吸引作用によって取り込まれ、そしてこのマトリックスを通過する。イムノアッセイを行なう場合、アナライトを含む複合体が検出ゾーンにおいて、メンブレン(12)に含まれる固定化結合パートナーによって捕捉され、そして標識した未結合コンジュゲートが対照ゾーンにおいて結合される。フリース(13)を吸収性多孔質マトリックスに隣接して置くことにより、サンプルがメンブレン(12)を通って移動し易くする。フリース(13)は更に、サンプルがメンブレン(12)を通って流れた後にサンプルを受け入れるように機能する。
【0063】
液体サンプルがサンプル注入孔(4)から試験素子(1)の流体構造を通ってフリース(13)にまで流れた後、洗浄バッファーをサンプル注入孔(4)に次のステップでピペット注入する。毛管力、遠心力、およびクロマトグラフィー力を同じ大きさで合成すると、洗浄バッファーは試験素子(1)の該当する流体構造を通って流れ、そして特に、メンブレン(12)を洗浄し、このメンブレンには、結合したアナライト複合体がこの時点で位置しており、従って余剰の残留試薬が除去される。洗浄ステップは1回または数回繰り返すことにより、シグナル対バックグランド比を高めることができる。これにより、アナライトの検出限界を最適化し、そして動的測定範囲を広くすることができる。
【0064】
液体サンプルを試験素子(1)の中でサンプル注入孔(4)から、メンブレン(12)の軸から離れた第1端部に移送するサンプルチャンネルは本事例では、サンプル計量ゾーン(5)と、毛細管停止部(8)と、チャンネル(9)と、血清/血漿回収ゾーン(10)と、そして赤血球チャンバ(11)とを含む。他の実施形態では、サンプルチャンネルは、1つよりも多い、または少ないゾーン/領域/チャンバにより構成することができる。
【0065】
図3、5、6、7、および9は、図1にほぼ類似する実施形態を示している。図3は図1とは、一方では、余剰サンプル容器(7)がサンプル注入孔(4)に取り付けられることがなく、かつ毛細管停止部がサンプル計量セクション(5)の端部に設けられない(すなわち、計量されたサンプルの注入がこの場合に必要になる)点で異なり、そして他方では、例えば洗浄バッファーのような別の液体のための別の注入孔(16)、およびバッファーをメンブレン(12)に移送することができる接続チャンネル(15)が設けられる点が異なる。メンブレン(12)へのバッファーの移送はこの場合、毛管力または遠心力に基づくことができる。
【0066】
図5に記載の実施形態は図3に記載の実施形態とほぼ同じである。2つの実施形態は、廃液用フリース(13)の形状、および図5に記載の試験素子が毛細管停止部(8)をサンプル計量セクション(5)の端部に有する点においてのみ異なる。
【0067】
図6に記載の実施形態は同じように、図5に記載の実施形態とほぼ同じであり、かつ図5の実施形態とは、余剰サンプル容器(7)をサンプル注入孔(4)とサンプル計量ゾーン(5)との間の領域に追加して設けている点で異なる。この場合には、サンプルを計量して注入する必要はない(図1と同様)。
【0068】
図7に記載の本発明の試験素子(1)の実施形態は、図6の試験素子(1)とほぼ一致する。これらの実施形態は共に、同じ流体構造および機能を有する。配置および幾何学的構造のみが異なる。図7に記載の実施形態は、図6と比べると、流体構造の寸法が異なるために必要となる追加の排出孔(17)を有し、このことによりこれらの構造にサンプルまたは洗浄液を充填することができるようになる。この場合には、チャンネル(9)は細い毛細管として設計され、この毛細管への充填は、試験素子が回転するまで行なわれない(すなわち、毛細管停止部(8)を超える流れは、遠心力によってのみ生じさせることができる)。図7に記載の試験素子(1)を用いる場合、回収された血漿を赤血球回収ゾーン(11)から回転中に事前に放出させることができ;デカントユニット(18)はこの目的に使用され、デカントユニットは最終的に血清/血漿回収ゾーン(10)で終端する。
【0069】
図9に記載の本発明の試験素子(1)の実施形態は、図6の試験素子(1)とほぼ一致する。これらの実施形態は共に、同じ流体構造および機能を有する。配置および幾何学的構造のみが異なる。図9に記載の実施形態は基本的に、外側に更に離れて位置する、すなわち軸から離れて位置するサンプル注入孔(4)を有する。この構成は、試験素子(1)が既に、測定装置に収容されている場合に試験素子にサンプルを充填するために有利となる。この場合には、サンプル注入孔(4)は、サンプル注入孔(4)が各事例において、軸の近傍に配置される(すなわち、試験素子の外側エッジから離れて配置される)構成の図1〜8に記載の試験素子を用いて可能であるよりもユーザーが容易に操作することができる。
【0070】
図1、3、5、6、7、および9に記載の実施形態とは異なり、図2、4、および8による実施形態の場合、サンプル細胞成分はサンプル液から、サンプルが試薬に接触する前に分離される。この構成は、全血サンプル、または血漿サンプル、または血清サンプルをサンプル材料として使用することにより、血漿または血清が必ず最初に試薬に接触することによる異なった結果を招かず、従って溶解/インキュベーション/反応挙動がほぼ同じになるはずであるという利点がある。また、図2、4、および8による実施形態では、液体サンプルがまず、試験素子(1)にサンプル注入孔(4)を通って注入される。サンプルは次に、サンプル注入孔(4)からチャンネル構造に毛管力および/または遠心力によって更に移送される。図2および4に記載の実施形態では、サンプルはサンプル計量セクション(5)に、サンプル注入孔(4)に注入された後に移送され、次に血清または血漿が、全血サンプルから回転によって分離される。ほとんどが赤血球である望ましくないサンプル細胞成分は赤血球トラップ(11)に回収されるのに対し、血清または血漿はゾーン(10)に回収される。血清はゾーン(10)から毛細管を通って排出され、そしてチャンネル構造(9)に更に移送され、チャンネル構造(9)では、乾燥試薬が収容され、そしてサンプルが流入すると溶解する。サンプル・試薬混合物は、この場合も同じようにして試験素子(1)を回転させることにより、毛細管停止部(14)を超えてチャンネル構造(9)から流出することができるので、メンブレン(12)にチャンネル(15)を通って達することができる。回転を遅くする、または停止させると、サンプル・試薬混合物は、メンブレン(12)を通って廃液用フリース(13)に移送される。
【0071】
図2に記載の実施形態、および図4に記載の実施形態は、余剰サンプル容器(7)が図2において配設されるのに対し、図4に記載の実施形態はこのような機能を提供しない点が異なる。図3に記載の実施形態と同じように、サンプルを計量して注入する操作はこの場合は好都合である。
【0072】
図8は、図2および4に記載の実施形態の変形例を示している。この事例では、サンプルは遠心によって、サンプル注入孔(4)の直ぐ後ろの赤血球分離構造(10,11)に、サンプルが第1幾何学バルブ(19)を通過した後に移送される。(10)で指示される領域はこの事例では、血清/血漿回収ゾーン(10)として機能し、このゾーンから、遠心後に細胞から遊離される血清または血漿が毛管チャンネル(21)を通って移送される。チャンバ(20)は余剰の血清または血漿の回収容器として機能し、余剰の血清または血漿は所定の環境下で、サンプル計量セクション(5)に充填が完全に行なわれた後に血清/血漿回収ゾーン(10)から流出し続ける。全ての他の機能および構造は図1〜7と同様である。
【0073】
試験素子(1)の表面の親水性または疎水性は、サンプル液および/または洗浄液が回転および結果として生じる遠心力を援用してのみ、または遠心力および毛管力を組み合わせることによってのみ移動するように選択的に設計することができる。疎水性を持たせる場合、少なくとも部分的に親水性化した表面が試験素子(1)の流体構造に必要になる。
【0074】
図1に関連して上に既に詳細に説明したように、図1、2、6、7、8、および9に記載の本発明の試験素子は自動化機能を有し、自動化機能によって、サンプルの内、試験素子に余剰に注入されるサンプルの一部を比較的正確に測定することができる(いわゆる、計量システム)。この計量システムは本発明の別の構成要件である。計量システムは基本的に、図示される試験素子(1)の構成要素4、5、6、および7を含む。サンプル液、特に全血サンプルを試験素子(1)にサンプル注入孔(4)を通して送り込む。サンプル液は、毛管力および/または遠心力によって駆動されてサンプル計量ゾーン(5)に充填される。サンプル計量ゾーン(5)はこの点に関して、乾燥試薬を収容することもできる。サンプル計量ゾーン(5)は毛細管停止部(6および8)によって区切られ、毛細管停止部は、例えば疎水性バリアまたは幾何学/非閉止バルブの形態とすることができる。サンプル計量ゾーン(5)を毛細管停止部(6,8)によって区切ることにより、正確に計量されたサンプル体積を取り込み、そしてサンプル計量ゾーン(5)の下流に位置する流体ゾーンに流入させる操作を確実に行なうことができる。試験素子(1)を回転させると、余剰サンプルは全て、サンプル注入孔(4)およびサンプル計量ゾーン(5)から余剰サンプル容器(7)に移送されるのに対し、計量された量のサンプルはサンプル計量ゾーン(5)からチャンネル(9)に移送される。別の構成として、回転によって発生する力ではなく、例えば陽圧をサンプル入力側に加える、または陰圧をサンプル出力側に加えることによりサンプルを移動させる他の力をこの目的に使用することもできる。従って、図示の計量システムは回転可能試験素子に必ずしも組み込む必要があるというのではなく、他の試験素子において使用することもできる。
【0075】
同様の計量システムは、例えば米国特許第5,061,381号から公知である。また、この特許文献には、サンプル液が余剰に試験素子に注入されるシステムが記載されている。この事例では、次のステップで試験素子の中で更に処理される比較的正確な量のサンプルの一部分の計量は、計量ゾーン(計量チャンバ)および余剰サンプルゾーン(オーバーフローチャンバ)の相互作用によって行なうこともでき、この場合、本発明とは異なり、これらの2つのゾーンは非常に狭いチャンネルを介して連絡し、このチャンネルによって常に液交換を、少なくとも充填中に行なうことができる。この事例では、サンプル液は試験素子に充填が行なわれている間に直ぐに、広いチャンネルを通って計量チャンバに流入する部分と、そして狭いチャンネルを通ってオーバーフローチャンバに流入する部分とに分離される。計量チャンバが完全に充填された後、試験素子を回転させ、そして全ての余剰サンプルをオーバーフローチャンバに流入させて、次のステップで更に処理される所望の計量サンプル体積のみが計量チャンバに残るようにする。
【0076】
米国特許第5,061,381号に記載の計量システムの構造の不利な点は、サンプル体積が試験素子に注入され、かつ最小体積に厳密に一致する、または最小体積よりもわずかに多い場合、サンプルの一部が処理開始時点から邪魔されることなくオーバーフローチャンバに常に流入するので、計量ゾーンに充填される液量が少なくなる恐れがあることである。
【0077】
この問題は、計量システムの本明細書中で提案する構造によって、毛細管停止部(疎水性バリアまたは幾何学バルブまたは非閉止バルブ)が計量ゾーンと余剰サンプルゾーンとの間に配置されるので解決される。従って、試験素子にサンプルを充填すると、サンプルはまず、実際には他のゾーンよりも先に計量ゾーンに流れ込む。このプロセスでは、毛細管停止部は、サンプルが余剰サンプルゾーンに、サンプル計量ゾーンが完全に充填される前に流入する現象を阻止するように作用する。また、サンプル体積が試験素子に注入され、かつ最小体積に厳密に一致する、または最小体積よりもわずかに多い場合、これによって、サンプル計量ゾーンが完全に充填される動作が確保される。
【実施例1】
【0078】
図6に記載の試験素子の製作
1.1 基板(2)の作製
図6に記載の基板(2)(約60×80mmの寸法)を、ポリカーボネート(PC)(別の構成として、ポリスチレン(PS),ABSプラスチックまたはポリメチルメタクリレート(PMMA)を材料として使用することもできる)により射出成形を利用して作製する。個々のチャンネルおよびゾーン(流体構造)は次の寸法(構造の深さ(d)および任意であるが、これらの構造の容積(V);参照番号は図6に関する番号であり、そして構造が図6に示される)を有する:
4と5との間の毛細管:d=500μm
参照番号7:d=700μm
参照番号5:d=150μm;V=26.5mm
参照番号8:d=500μm
参照番号9:d=110μm
参照番号10:d=550μm
参照番号11:d=130μm;V=15mm
参照番号15:d=150μm;V=11.4mm
【0079】
深さの浅い構造から深さの深い構造への移行部は通常、力(例えば、遠心力)が外部から加わるときに流体構造内の液体のみが利用することができる。このような移行部は幾何学(非閉止)バルブとして作用する。
【0080】
流体構造(上記参照)の他に、基板(2)は更に、サンプルおよびバッファー注入孔(4,16)、排出孔(17)、および中心孔(3)を有する。
【0081】
流体構造を有する基板(2)の表面を次に、プラズマ処理によって清浄化し、親水化することができる。
【0082】
1.2 試薬の導入
アナライトの検出に必要な複数の試薬(例えば、ビオチン化抗アナライト抗体、および蛍光標識で標識した抗アナライト抗体)のうちの幾つかの試薬を、ピエゾ法によってサンプル計量セクション(5)に、点状のスポットとして溶液として交互に導入し、次に乾燥させて、内部表面のほぼ全体に試薬が残るようにする。
【0083】
試薬溶液の組成は次の通りである:
ビオチン化抗体:50mM Mes pH5.6;100μg ビオチン化モノクロナール抗トロポニンT抗体
標識した抗体:50mM Hepes pH7.4,スクアリン酸誘導体,蛍光色素 JG9(ポリスチレン樹脂粒子に包埋されている)、蛍光標識モノクロナール抗トロポニンT抗体(0.35%溶液)を含む。
【0084】
1.3 メンブレン(12)を挿入する
アナライト検出ライン(ポリストレプトアビジン)および対照ライン(ポリハプテン)をライン含浸法(以下を参照)によって導入した多孔性マトリックス(12)(プラストック担体箔の上のニトロセルロースメンブレン;21×5mm;100μmのPE箔で補強されている硝酸セルロースメンブレン(ドイツのザルトリウス社製のタイプCN 140))を基板(2)の該当する凹部に挿入し、そして任意に、両面接着テープによって取り付ける。
【0085】
ストレプトアビジン水溶液(4.75mg/ml)を上述の硝酸セルロースメンブレンにライン計量することによりアプライする。この操作を行なうために、約0.4mm幅のラインが形成されるように注入量を選択する(計量注入量0.12ml/分、トラック速度3m/分)。このラインを使用して、求める対象のアナライトを検出し、そしてこのラインは1つのメンブレン当たり約0.95μgのストレプトアビジンを含む。
【0086】
0.3mg/mlのトロポニンT−ポリハプテン水溶液を、ストレプトアビジンラインの下流の約4mmの距離の位置に同じ計量条件でアプライする。このラインは、試験素子の機能対照として作用し、そして1回の試験当たり約0.06μgのポリハプテンを含む。
【0087】
1.4 カバーを取り付ける
次に、カバー(任意に親水化することができる流体構造を持たない箔部分または射出成形部分)を取り付け、そして任意であるが、基板(2)に恒久的に結合させる、好ましくは糊で接着させる、溶接する、またはクリップ留めする。
【0088】
1.5 廃液用フリース(13)を挿入する
最後に、基板をひっくり返し、そして廃液用フリース(13)(13×7×1.5mmの寸法のフリースであり、このフリースは、100重量部のガラス繊維(直径は0.49〜0.58μmであり、長さは1000μmである)、および約180g/mの単位面積当たり重量を有する5重量部のポリビニルアルコール繊維(Kuraray(クラレ)社製のKuralon VPB 105−2)から成る)を該当する凹部に挿入し、次に基板(2)に接着テープによって取り付ける。
【0089】
半自動計量サンプル取り込みユニット(サンプル注入孔(4)、サンプル計量セクション(5)、および隣接構造(毛細管停止部(8)および余剰サンプル容器(7)を含む)によって、試験素子(1)に注入されるサンプルの量に関係なく(当該量が最小体積(この実施例では27μl)を超えるとする)、再現可能な同じサンプル量が、異なる試験素子を使用する場合に使用されるようになることを保証する。
【0090】
試薬のサンプル体積全体での均一な溶解は、試薬をサンプル計量セクション(5)全体に分布させることにより行なうことができ、好ましくは交互の複数の試薬スポット(すなわち、小さいほとんど点状の試薬ゾーン)を、特に充填が溶解よりも非常に速い速度で行なわれる場合には、サンプル計量セクション(5)にサンプルを高速に充填する処理と組み合わせる形で行なうことができる。更に、試薬をほぼ全て溶解させることができるので、ここでも同じように、吸収性材料を利用する従来の試験素子(試験紙、試薬パッドを有するバイオディスクなど)に比べて高い再現性が観察される。
【実施例2】
【0091】
トロポニンTを実施例1の試験素子を用いて検出する
異なる量の組換えトロポニンTを混合した27μlの全血サンプルを、実施例1に記載の試験素子に注入した。試験素子を次に、表1に記載されるプロセスに従って更に処理し、そして最後に、異なる濃度に対応する蛍光シグナルを測定する。
【表1】

【0092】
測定データを図10に示す。それぞれの測定シグナル(カウント数)を、[ng/ml]で表示される組換えトロポニンTの濃度(c(TnT))に対してプロットする。全血サンプルにおける実際のトロポニンT濃度を、参照試験法「ロシュダイアグノスティックスのエレクシス(Elecsys)トロポニンT試験」を使用して測定した。
【0093】
例えばロシュダイアグノスティックスの心筋トロポニンTなどの従来の免疫クロマトグラフィー式トロポニンT試験紙と比べると、定量的に評価することができる測定範囲の検出限界は本発明による試験素子を用いることによって小さい方にシフトし(心筋トロポニンT:0.1ng/ml;本発明:0.02ng/ml)、そして測定ダイナミックレンジが拡大する(心筋トロポニンT:2.0ng/ml;本発明:20ng/ml)。本発明による試験素子は精度の向上も示す。
【符号の説明】
【0094】
1 ディスク形試験素子(ディスク)
2 基板(例えば、一体型部材または複合部材、射出成形加工部材、圧延加工部材、複数層部材など)
3 中心孔(駆動孔)
4 サンプル注入孔
5 サンプル計量ゾーン(チャンネルの計量ゾーン)
6 毛細管停止部(例えば、疎水性バリア、幾何学/非閉止バルブ)
7 余剰サンプル容器
8 毛細管停止部(例えば、疎水性バリア、幾何学/非閉止バルブ)
9 チャンネル
10 血清/血漿回収ゾーン(血清/血漿チャンバ)
11 赤血球回収ゾーン(赤血球チャンバ)
12 吸収性多孔質マトリックス(メンブレン)
13 廃液(フリース)
14 毛細管停止部(例えば、疎水性バリア、幾何学/非閉止バルブ)
15 チャンネル
16 別の液体、例えば洗浄バッファーを追加するための孔
17 排出孔
18 デカント用チャンネル
19 毛細管停止部(例えば、疎水性バリア、幾何学/非閉止バルブ)
20 捕捉貯蔵器
21 毛管チャンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原則としてディスク形の試験素子(1)であって、
該試験素子の平面に直交し、かつその回りを該試験素子が回転することができる該試験素子内の軸と、
液体サンプルを注入するためのサンプル注入孔(4)と、
該軸から離れた第1端部と、該軸に近接する第2端部とを有する毛細管活性ゾーン、特に吸収性多孔質マトリックス(12)と、そして
該サンプル注入孔から該軸に近接する領域を経由して該毛細管活性ゾーンの該軸から離れた第1端部にまで延びるサンプルチャンネル(9)と、
を備える、上記試験素子(1)。
【請求項2】
前記サンプル注入孔が前記軸に近接し、かつ前記サンプルチャンネルが、該軸に近接するサンプル注入孔から前記毛細管活性ゾーンの前記軸から離れた第1端部にまで延びる、請求項1に記載の試験素子。
【請求項3】
前記サンプル注入孔が前記軸から離れており、かつ前記軸に近接する領域に毛管チャンネルによって連絡している、請求項1に記載の試験素子。
【請求項4】
前記毛細管活性ゾーンが吸収性多孔質マトリックス、特に紙、メンブレン、またはフリースである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の試験素子。
【請求項5】
前記毛細管活性ゾーン、特に吸収性多孔質マトリックスが、固定化された試薬を含有する1つ以上のゾーンを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の試験素子。
【請求項6】
前記毛細管活性ゾーン、特に吸収性多孔質マトリックスの、前記軸に近接する第2端部が、液体を該毛細管活性ゾーンから受け入れることができる別の吸収性材料(13)または吸収性構造と接触している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の試験素子。
【請求項7】
前記サンプルチャンネルが、異なる寸法および/または異なる機能を有するゾーンを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の試験素子。
【請求項8】
前記サンプルチャンネルが、可溶性試薬を含有するゾーンを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の試験素子。
【請求項9】
前記サンプルチャンネルが、粒子状成分を液体サンプルから分離するゾーンを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の試験素子。
【請求項10】
前記サンプルチャンネルが、幾何学バルブまたは疎水性バリアを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の試験素子。
【請求項11】
前記サンプルチャンネルが、サンプル計量ゾーンを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の試験素子。
【請求項12】
前記サンプルチャンネルが、サンプル液以外の別の液体の入口を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の試験素子。
【請求項13】
前記サンプル注入孔がサンプル計量ゾーン(5)および余剰サンプルゾーン(7)と接触し、そして毛細管停止部(6)が該サンプル計量ゾーンと該余剰サンプルゾーンとの間に設けられている、請求項1〜12のいずれか1項に記載の試験素子。
【請求項14】
サンプル注入孔(4)と、サンプル計量ゾーン(5)と、余剰サンプルゾーン(7)とを備え、かつ該サンプル注入孔が該サンプル計量ゾーンおよび該余剰サンプルゾーンと接触している試験素子(1)であって、毛細管停止部(6)が該サンプル計量ゾーンと該余剰サンプルゾーンとの間に設けられている、上記試験素子。
【請求項15】
液体サンプル中のアナライトを検出する方法であって、
サンプルを、請求項1〜13のいずれか1項に記載の試験素子の前記サンプル注入孔に注入し、
該試験素子を回転させて、該サンプルを前記毛細管活性ゾーン、特に吸収性多孔質マトリックスの前記軸から離れた端部に移送し、
該サンプルまたは該試験素子を通って流れるときに該サンプルから得られる物質が、該毛細管活性ゾーンの、前記軸から離れた端部から前記軸に近接する端部に向かって吸引されるように、該試験素子の回転を遅くするか、または停止させ、かつ
該アナライトを該毛細管活性ゾーンの中で、または該毛細管活性ゾーンの下流のゾーンの中で、視覚的に、または光学的に検出する、
上記方法。
【請求項16】
前記試験素子を回転させた後、別の液体を該試験素子に注入し、該液体は、サンプルの後に続いて、前記毛細管活性ゾーンの、前記軸から離れた端部から前記軸に近接する端部に向かって吸引される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記毛細管活性ゾーンを通る液体サンプルの移動、および/または別の液体の移動を、前記試験素子の回転によって選択的に遅くするか、または停止させる、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記毛細管活性ゾーンを通る液体サンプルの移動の方向、および/または別の液体の移動の方向を、前記試験素子の回転によって反転させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
液体サンプル中のアナライトを測定するシステムであって、請求項1〜13のいずれか1項に記載の試験素子と、測定装置とを備え、
該測定装置は、
該試験素子を回転させる少なくとも1つの駆動機構と、
該試験素子の視覚シグナルまたは光シグナルを計測する計測光学系と、
を備える、上記システム。
【請求項20】
液体サンプル中のアナライトを測定するための請求項1〜14のいずれか1項に記載の試験素子の使用、または請求項18に記載の測定システムの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−505096(P2010−505096A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529607(P2009−529607)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008419
【国際公開番号】WO2008/037469
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】