説明

回転圧入式螺旋翼付き杭の先端部構造

【課題】螺旋翼の側方張出し寸法を大きくして地盤からの支持力を大きなものにすることができ、それでいて、地盤に対し螺旋翼をスムーズに食い込ませ入らせていくことができる、回転圧入式螺旋翼付き杭の先端部構造を提供する。
【解決手段】杭本体6の先端側外周部に側方に張り出す螺旋翼5が備えられ、該螺旋翼5は、その外周位置が杭本体6の先端側から基端側にいくにつれて半径線方向外方に次第に大きく離れていく態様で備えられている。また、杭本体6の先端部はストレート部4aの先端側に先細コーン部4bを備えたものからなり、螺旋翼5は、ストレート部4aの外周部領域から先細コーン部4bの外周部領域に至る範囲において備えられている。更に、螺旋翼5の螺旋方向における傾斜が杭本体6の先端側から基端側にいくにつれて次第に大きくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転圧入式螺旋翼付き杭の先端部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
回転圧入式の杭として、図3(イ)に示すように、杭本体51の先端側外周部に側方に張り出す拡底用の螺旋翼52が一巻き状態に備えられると共に、杭本体51の先端面部に地盤掘削撹乱用の複数の刃部53…が備えられた螺旋翼付き杭54は、従来より提供されている。
【0003】
また、図3(ロ)に示すように、鋼管からなる杭本体61の先端外周部に側方に張り出す拡底用の円板62が備えられると共に、該円板62の周方向の一カ所が開かれ、そこに土砂すくい用の斜板部63と土砂逃がし用の斜板部64とが設けられ、かつ、杭本体61の先端開口部が蓋65で閉じられ、その先端側に該蓋65と直交する方向に向けられた掘削撹乱用のプレート刃66が突出状態に備えられた拡底杭67も提供されている。
【特許文献1】特開平10−219682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の杭54,67では、螺旋翼52や円板62の側方張出し寸法を大きくすればするほど、地盤からの支持力を大きくすることができるけれども、そうすると、螺旋翼52や円板62が地盤内に食い込みにくく入りにくくなり、杭の打込みが困難になっていくという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、螺旋翼を対象とし、螺旋翼の側方張出し寸法を大きくして地盤からの支持力を大きなものにすることができ、それでいて、地盤に対し螺旋翼をスムーズに食い込ませ入らせていくことができる、回転圧入式螺旋翼付き杭の先端部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、杭本体の先端側外周部に側方に張り出す螺旋翼が備えられ、
該螺旋翼は、その外周位置が杭本体の先端側から基端側にいくにつれて半径線方向外方に次第に大きく離れていく態様で備えられていることを特徴とする回転圧入式螺旋翼付き杭の先端部構造(第1発明)によって解決される。
【0007】
この構造では、螺旋翼の外周位置が杭本体の先端側から基端側にいくにつれて半径線方向外方に次第に大きく離れていくようになされているので、地盤に対する螺旋翼の食い込みは、螺旋翼の外周位置が杭本体側に近い側から行われていき、そのため、地盤に対し螺旋翼をスムーズに食い込ませ入らせていくことができる。
【0008】
そして、このように、螺旋翼を地盤にスムーズに食い込ませ入らせていくことができることにより、杭本体の基端側における螺旋翼の外周位置を半径線方向に大きく離すことができて、螺旋翼の側方張出し寸法を大きくし、地盤からの支持力を大きなものにすることができる。
【0009】
第1発明において、杭本体の先端部がストレート部の先端側に先細コーン部を備えたものからなり、
前記螺旋翼は、ストレート部の外周部領域から先細コーン部の外周部領域に至る範囲において備えられているとよい。
【0010】
この場合は、杭本体の先端部が先細コーン状をしていることにより、杭をスムーズに地中に進出させていくことができ、しかも、杭の打込み開始時点において、先細コーン部が地盤面に対して芯保持作用を行い、杭がふらつくのを防ぐことができる。先細コーン部の外周面部の傾斜は、水平面に対し例えば45〜75°の範囲において設定されているとよい。
【0011】
加えて、螺旋翼は、ストレート部の外周部領域から先細コーン部の外周部領域に至る範囲において備えられているので、先細コーン部の外周領域に備えられている螺旋翼部分が土砂を掘削撹乱するように働き、従来のような掘削撹乱用の専用刃を省略することができて、杭先端部における掘削撹乱機構の簡素効率化を図ることができる。
【0012】
また、第1、第2発明において、螺旋翼は、螺旋方向における傾斜が杭本体の先端側から基端側にいくにつれて次第に大きく及び/又は次第に小さくなっていく態様で備えられているとよい。
【0013】
この場合は、螺旋翼の螺旋方向の傾斜の変化により、螺旋翼周囲の土砂を撹乱する作用が行われ、土質が固結シルトなどの硬質土や、礫質土であるような場合においても杭の打込みを容易にすることができる。
【0014】
特に、第2発明との組み合わせで、先細コーン部の外周部領域における螺旋翼部分の傾斜が杭本体の先端側から基端側にいくにつれて次第に大きく及び/又は次第に小さくなっていくようになされている場合は、杭本体先端部における土砂の掘削撹乱作用をより効果的なものにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上のとおりのものであるから、螺旋翼の側方張出し寸法を大きくして地盤からの支持力を大きなものにすることができ、それでいて、地盤に対し螺旋翼をスムーズに食い込ませ入らせていくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に示す第1実施形態の杭1において、2は杭用鋼管、3は杭先端部品であり、杭先端部品3は、杭芯部4と、杭芯部4の外周部から側方に張り出す螺旋翼5とを一体に備えた鋳鋼品からなっており、杭芯部4の基端部が杭用鋼管2の先端部に溶接W等で取り付けられて杭1を構成し、杭先端部品3の杭芯部4と杭用鋼管2とで杭本体6を構成している。
【0018】
そして、杭先端部品3の杭芯部4は、ストレート部4aの先端側に先細コーン部4bを備えたものからなっていて、螺旋翼5は、ストレート部4aの外周部領域から先細コーン部4bの外周部領域に至る範囲において、その外周位置が、図1(ロ)に補助線A,Aで示すように杭本体6の先端側から基端側にいくにつれて半径線方向外方に次第に大きく離れていく態様で、杭芯部4の回りを複数回周回するようにして備えられている。また、螺旋翼5は、その螺旋方向における傾斜が杭本体6の先端側から基端側にいくにつれて次第に大きくなっていく態様で、即ち、ピッチがp1<…<p5の関係となるように備えられている。
【0019】
また、先細コーン部4bの外周部に備えられている螺旋翼部分5aは、その外周位置がストレート部4aの外周位置よりも内方に位置している螺旋翼部分5bを杭先端側において備えている。
【0020】
また、螺旋翼5の下面側には、外周位置ないしはその近傍位置において、下方に突出して螺旋方向に延びる外周側凸条部7aが備えられると共に、外周位置と内周位置との間の中間位置に、下方に突出して螺旋方向に延びる一条ないしは複数状の中間凸条部7bが備えられ、回転圧入中、螺旋翼の下面側の土砂が螺旋翼5の外周位置よりも外方に拡散していくのが抑制されるようになされている。
【0021】
上記の構造では、螺旋翼5の外周位置が杭本体6の先端側から基端側にいくにつれて半径線方向外方に次第に大きく離れていくようになされているので、地盤に対する螺旋翼5の食い込みは、螺旋翼5の外周位置が杭本体6側に近い側から行われていき、そのため、地盤に対し螺旋翼5をスムーズに食い込ませ入らせていくことができる。そして、このように、螺旋翼5を地盤にスムーズに食い込ませ入らせていくことができることにより、杭本体6の基端側における螺旋翼の外周位置を半径線方向に大きく離すことができて、螺旋翼5の側方張出し寸法を大きくし、地盤からの支持力を大きなものにすることができる。
【0022】
また、螺旋翼5の外周位置が杭本体6の先端側から基端側にいくにつれて半径線方向外方に次第に大きく離れていくようになされていることにより、螺旋翼5が一巻きを越えて螺旋方向に長いものである場合、特に二巻き以上のものである場合には、翼の上下方向における重なり部分において、鉛直方向の上に位置する翼部分の外周側には地盤からの支持力が作用するが、内周側には、地盤からの支持力が鉛直方向の直下の翼部分に作用するため、地盤からの支持力が作用しにくくなり、そのため、鉛直方向の上に位置する翼部分の外周位置を側方に大きく離して杭の支持力を大きくすることができるようになるし、また、翼の薄肉化が可能になって螺旋翼を地盤に食い込みやすいものにすることができる。
【0023】
また、本実施形態では、杭本体6の先端部に先細コーン部4bが備えられていることにより、杭1をスムーズに地中に進出させていくことができ、しかも、杭1の打込み開始時点において、先細コーン部4bが地盤面に対して芯保持作用を行い、杭1がふらつくのを防ぐことができる。
【0024】
加えて、螺旋翼5は、ストレート部4aの外周部領域から先細コーン部4bの外周部領域に至る範囲において備えられているので、先細コーン部4bの外周領域に備えられている螺旋翼部分5aが土砂を掘削撹乱するように働き、従来のような掘削撹乱用の専用刃を省略することができて、杭先端部における掘削撹乱機構の簡素効率化を図ることができる。特に、先細コーン部4bの外周部には、螺旋翼部分の外周位置がストレート部4aの外周位置よりも内方に位置している螺旋翼部分5bが備えているので、この螺旋翼部分5bが地盤を効果的に掘削していくことができる。
【0025】
更に、螺旋翼5は、その螺旋ピッチp1〜p5が杭の基端側に向けて大きくなっていくように備えられているので、その作用で、打込み中、螺旋翼周囲の土砂が撹乱され、土質が固結シルトなどの硬質土や、礫質土であるような場合においても杭の打込みを容易にすることができる。特に、先細コーン部4bの外周部領域における螺旋翼部分5aの傾斜が杭本体6の先端側から基端側にいくにつれて次第に大きくなっていくようになされている場合は、杭本体先端部における土砂の掘削撹乱作用をより効果的なものにすることができる。
【0026】
図2に示す第2実施形態の構造は、螺旋翼5の螺旋方向における傾斜が杭本体6の先端側から基端側にいくにつれて次第に小さくなっていく態様で、即ち、ピッチがp1>…>p5の関係となるように備えられている。この場合も、打込み中に螺旋翼周囲の土砂が撹乱され、土質が固結シルトなどの硬質土や、礫質土であるような場合においても杭の打込みを容易にすることができる。
【0027】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、螺旋翼の周回回数に制限はなく、例えば2回以上の一巻きを越えるものであるのが好ましいが、一巻きないしはそれを下回るものであってもよい。
【0028】
また、上記の実施形態では、杭本体6の先端部に先細コーン部4bが備えられ、螺旋翼5が先細コーン部4bの領域にも備えられている場合を示したが、螺旋翼を先細コーン部から省略しストレート部にのみ備えさせるようにしてもよいし、また、先細コーン部4bを省略するようにしてもよい。
【0029】
また、上記の実施形態では、螺旋翼5の螺旋方向における傾斜が杭本体の先端側から基端側にいくにつれて次第に大きくなっていくようになされている場合と、小さくなっていくようになされている場合の2つについて示しているが、螺旋翼の螺旋方向における傾斜が杭本体の先端側から基端側にいくにつれて次第に小さくなったり大きくなったりするようになされていてもよいし、また、螺旋翼の螺旋方向における傾斜は、杭本体の先端側から基端側にわたって一定であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態の杭先端部構造を示すもので、図(イ)は斜視図、図(ロ)は正面図である。
【図2】第2実施形態の杭先端部構造を示すもので、図(イ)は斜視図、図(ロ)は正面図である。
【図3】図(イ)及び図(ロ)はそれぞれ、従来の杭先端部構造を示す正面図である。
【符号の説明】
【0031】
4a…ストレート部
4b…先細コーン部
5…螺旋翼
6…杭本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭本体の先端側外周部に側方に張り出す螺旋翼が備えられ、
該螺旋翼は、その外周位置が杭本体の先端側から基端側にいくにつれて半径線方向外方に次第に大きく離れていく態様で備えられていることを特徴とする回転圧入式螺旋翼付き杭の先端部構造。
【請求項2】
前記杭本体の先端部がストレート部の先端側に先細コーン部を備えたものからなり、
前記螺旋翼は、ストレート部の外周部領域から先細コーン部の外周部領域に至る範囲において備えられている請求項1に記載の回転圧入式螺旋翼付き杭の先端部構造。
【請求項3】
前記螺旋翼は、螺旋方向における傾斜が杭本体の先端側から基端側にいくにつれて次第に大きく及び/又は次第に小さくなっていく態様で備えられている請求項1又は2に記載の回転圧入式螺旋翼付き杭の先端部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−283424(P2006−283424A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105709(P2005−105709)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【出願人】(599123418)富士商事株式会社 (5)
【Fターム(参考)】