説明

回転圧入杭の接続部材

【課題】
接続部材の係合手段を簡単な形状とし、容易に係合できるようにして、かつ、回転圧入時における正逆方向の回転に対しても十分な強度を有していて杭同士の接続を長期間に亘って安定的に維持することができる回転圧入杭の接続部材を提供する。
【解決手段】
杭との装着部の反対側の端部において互いに係合する雌雄のジョイント2、3を備え、前記雌ジョイント2は内周面12に半径方向に突出する係合突部13を備え、また前記雄ジョイント3に形成した小径部5の外周面6に、前記雌ジョイントの係合突部を杭の軸方向にガイドする縦溝部7を備え、さらに、雄ジョイントと雌ジョイントを係合した状態で内外を半径方向に連通する少なくとも一対の連通孔14、8を前記係合突部13と前記縦溝部7に設け、前記雌雄のジョイントを連結した状態で連通孔14、8に抜け止め具4を取り付けられるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物や土木構造物の基礎を支持する回転圧入杭を、杭の圧入方向に複数本接続する際に用いる接続部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物や土木構造物の基礎を支持する回転圧入杭は、杭を回転させながら杭頭に荷重を掛けて地中に圧入することにより、杭の外周面と、同杭の外周面と接触する地中の土砂との間で生じる摩擦を増大させ、この摩擦で杭を支持させて建築物等の荷重によって杭が地中に沈み込むのを阻止している。
【0003】
そして、建築物や土木構造物の基礎を支持する回転圧入杭を軟弱な地盤や支持地盤が深い位置にある場所に圧入する場合は、この圧入方向に対し杭を順次複数本接続しながら回転圧入し、杭を十分に支持できる地耐力が大なる値の支持層(支持地盤)まで、あるいは周囲の地盤との間に十分な支持摩擦力が得られるまで圧入している。
【0004】
杭どうしの接続手段としては、杭が鋼管杭である場合、溶接による接続が最もプリミティブな手段であるが、現場での溶接は天候に左右され、しかも熟練技術者による溶接が不可欠であるため、現場での溶接を行わなくても済むよう予め杭の上下両端部に装着した雌雄一対からなる接続部材(例えば、特許文献1参照)を用いて接続する手法が広がってきている。
【0005】
上記接続部材としては、確実な接続強度を安定して得られること、接続作業が容易で熟練技術が不要であることが要求されるのは言うまでもないことであり、上述した従来技術はこのような要求をクリアするものであるが、例えば雌雄のジョイントどうしを螺合するタイプのものでは、回転方向の位置(まわり止まる位置)の誤差が生じやすく、したがって正確な抜け止めが出来ないため、位置調整が必要になるなどの手間がかかっていた。
【0006】
また回転圧入の際には、杭の打設方向に瓦礫、石等の障害物があった場合は杭を正逆回転させて障害物を排除しているので、正方向すなわち杭を圧入する回転方向に対して接続強度を維持できるだけでなく、逆方向の回転に対しても接続強度やその信頼性を十分に担保できるものでなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−371546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的とするところは、前記接続部材に有する簡単な構造ながら杭を確実かつ容易に接続でき、また工場において予め接続部材を杭の両端部にそれぞれ装着しておくことができて現場での煩雑な溶接作業や接続作業が不要であるというメリットを損なうことなく、杭の回転圧入時における正逆方向の回転に対しても十分な強度を有していて杭同士の接続を長期間に亘って安定的に維持することができ、しかも接続部材が杭の外周に突出しないように構成して、地中に回転圧入した杭および接続部材の全部における外周面と地中の土砂との間に安定した摩擦を生じさせることができる回転圧入杭の接続部材を提供できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明に係る回転圧入杭の接続部材は、建築物等の基礎を支持する回転圧入杭を、杭の圧入方向に複数本接続する際に用いる接続部材であって、杭との装着部の反対側の端部において互いに係合する雌雄のジョイントを備え、前記雌ジョイントは内周面に半径方向に突出する係合突部を備え、また前記雄ジョイントに形成した小径部の外周面に、前記雌ジョイントの係合突部を杭の軸方向にガイドする縦溝部を備え、さらに、雄ジョイントと雌ジョイントを係合した状態で内外を半径方向に連通する少なくとも一対の連通孔を前記係合突部と前記縦溝部に設け、前記雌雄のジョイントを連結した状態で連通孔に抜け止め具を取り付けられるように構成したものとしてある。
【0010】
また、前記雄ジョイントの連通孔に雌ねじを形成し、また、前記抜け止め具を連結ねじで構成したものとしてある。
【0011】
また、前記雌ジョイントの外径を、接続しようとする回転圧入杭の外径と等しくなるように構成したものとしてある。
【0012】
また、前記雄ジョイントの小径部を、端部に向かって小径となるテーパ状に形成したものとしてある。
【0013】
また、前記雌雄のジョイントを、鋳造品で構成したものとしてある。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る回転圧入杭の接続部材によれば、雌雄のジョイントにおける係合手段を簡単な形状とし、かつ同係合手段たる雌ジョイントの係合突部とこの係合突部と係合させる雄ジョイントの縦溝部を、雌ジョイントの係合突部は内周面に、雄ジョイントの縦溝部は外周面に設けている。
【0015】
これにより、雄ジョイントを雌ジョイントに挿入して雄ジョイントの縦溝部と雌ジョイントの係合突部を合わせて係合する際も、これらを容易に合わせることができるとともに、スムースに係合することができる。
【0016】
また、雌ジョイントの係合突部が内周面に配設され、この係合突部と係合する雄ジョイントの外周面に配設する係合手段が縦溝になっているので、雌雄のジョイントを装着した状態で回転圧入杭を保管や運搬する際にもジョイントの外周面より突出するものがないので同外周面が損傷するリスクを低減できて、現場において雄ジョイントと雌ジョイントの係合ができないといった作業に直接影響が生じる致命的な不具合をゼロに等しくすることができる。
【0017】
そして、係合手段が簡単な形状であるので雌ジョイントの外径を接続しようとする杭の外径に容易に合わせることができ、したがって、杭同士を接続した際にも杭の外周面から突出する部分がゼロに等しくなり、地中に回転圧入した杭および接続部材の全部における外周面と地中の土砂との間に安定した摩擦を生じさせることができ、しかも地盤の途中に硬い層や瓦礫などの障害があっても、接続部材が引っ掛かって杭の圧入を妨げる恐れがまずなく、効率のよい杭の打設を行うことができる。
【0018】
さらには、雄ジョイントの小径部を先細りのテーパ状に形成したものでは、雌雄のジョイントの接続をより容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る回転圧入杭の接続部材における構成を示す斜視図。
【図2】雄ジョイントを雌ジョイントとの接続側から見た底面図。
【図3】雌ジョイントを雄ジョイントとの接続側から見た平面図。
【図4】接続部材を溶接した状態の回転圧入杭における上下端部を示す斜視図。
【図5】接続部材における溶接部付近の拡大図。
【図6】回転圧入杭同士の接続前の状態の斜視図。
【図7】係合した接続部材の縦断面図。
【図8】本発明に係る接続部材で接続した回転圧入杭の使用状態を示す図。
【図9】本発明に係る回転圧入杭の接続部材における他の構成を示す斜視図。
【図10】図9の接続部材の雄ジョイントを雌ジョイントとの接続側から見た底面図。
【図11】図9の接続部材の雌ジョイントを雄ジョイントとの接続側から見た平面図。
【図12】図9の接続部材を溶接した状態の回転圧入杭における上下端部を示す斜視図。
【図13】図9の接続部材において回転圧入杭同士の接続前の状態の斜視図。
【図14】図9の接続部材の係合状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る回転圧入杭の接続部材を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
本発明の接続部材1は、図1に示すように、杭の一端に装着する雌ジョイント2と、杭の他端に装着する雄ジョイント3と、これら雌雄のジョイント2、3を連結するための抜け止め具である連結ねじ4で構成している。
【0022】
そして、雄ジョイント3には、小径部5の外周面6に半径方向に窪む縦溝部7と、この縦溝部7内に内外を半径方向に連通する連通孔8を設け、この連通孔8に雌ねじを形成している。
なお、図中の符号9は、杭の端部への装着部を示している。
【0023】
また、縦溝部7の内周面10は厚肉(厚肉部11)に形成してあって、前記連結ねじ4による雌雄のジョイント2、3の連結を確実にできるように構成してあるが、内周面10全体を厚肉に形成する場合もある。
【0024】
また、小径部5は端部に向かって径が小となる先細りのテーパ状に構成してあって、雌雄のジョイント2、3の係合をより容易とするように構成してあるが、ストレートな円柱状のものとする場合もある。
【0025】
そして、雌ジョイント2には、内周面12に半径方向に突出する係合突部13と、この係合突部13上に内外を半径方向に連通する連通孔14を設けている。
なお、図中の符号15は、杭の端部への装着部を示している。
【0026】
また、前記雄ジョイント3の連通孔8、雌ジョイント2の連通孔14は、雌雄のジョイントを係合した状態で内外を連通するように一対で形成されている。
【0027】
以下、上述のように構成した本発明に係る回転圧入杭の接続部材の作用について説明する。
【0028】
接続部材1における雌ジョイント2と雄ジョイント3は、図4に示すように、杭の圧入方向に対して杭本体16の端開口部(図示は省略)に雌ジョイント2を、また杭本体16の他端開口部(図示は省略)に雄ジョイント3をそれぞれ溶接している。
なお、図中の符号17は、溶接部位を示している。
【0029】
また、溶接部位17は図5に示すように、杭本体16の端部と、同端部開口にそれぞれ装着したジョイントとの間に断面三角状の溶接代を形成できるように構成している。
【0030】
溶接の際は、雌雄のジョイント2、3における装着部15、9たる小径部を、杭本体16における両端部の開口にそれぞれ嵌合し位置決めしていて、そして溶接は、回転圧入を行う現場ではなく予め工場内の安定した環境下において十分な接続強度が得られるようにして行っている。
【0031】
そして杭同士を接続するには、図6に示すように、接続する側の杭に装着している雄ジョイント3を、接続される側の杭に装着している雌ジョイント2の開口18内に挿入し、雄ジョイント3の縦溝部7と雌ジョイント2の係合突部13を係合させるとともに同係合突部13を縦溝部7内に入り込ませる。
これにより、図7に示すように、雄ジョイント3の縦溝部7と雌ジョイント2の係合突部13が係合する。
【0032】
また、縦溝部7と係合突部13が係合したら、同図7に示したように、連結ねじ4を雌ジョイント2の連通孔14より挿入するとともに雄ジョイント3の連通孔8に螺入し締め付け、雌ジョイント2と雄ジョイント3を固定すると杭同士が接続される。
【0033】
以上のことより、係合突部13が、縦溝部7により囲まれて三方向への動きが規制されるとともに、連結ねじ4により、係合突部13が縦溝部7の端部方向への動きが規制され、これにより、雌ジョイント2は雄ジョイント3に対し杭の円周方向へ回動することもなく、また杭の軸方向へ抜けることもない。
【0034】
したがって、係合突部13生じる杭の圧入に関わる非常に大なる力、すなわち回転圧入方向への杭の回転、障害物対処のために行う杭の逆回転、回転圧入の際に掛ける鉛直下向きの杭への荷重を、雌ジョイント2と同じ強度を有する素材で形成している雄ジョイント3の縦溝部7の三方各部がしっかりと受けるので、杭の回転圧入に関わる非常に大なる力を安定して受けることができる。
【0035】
また、縦溝部7と係合突部13は、端部に向かって幅が小となる先細りのテーパ状に構成し、縦溝部7と係合突部13の係合をより容易とするように構成する場合がある。
【0036】
図8は、杭を本発明に係る接続部材1により複数本接続しながら地表19から地中20に向けて回転圧入した状態を示していて、同図8から分かるように、接続部材1(雌ジョイント2、雄ジョイント3)の外周面と杭(杭本体16)の外周面が段差なく接続されるので、地中20に回転圧入された複数本の杭および接続部材1の外周面は地中20の土砂と接触し、これにより、地中20に回転圧入した杭および接続部材1の外周面と地中20の土砂との間に安定した摩擦が生じる。
【0037】
また、実施例では示していないが、杭が地中20に有する硬い層を通過する場合でも接続部材1の外周面と杭の外周面が段差なく接続されているので、杭が硬い層に有する土砂や石に引っ掛かることなく地中20の硬い層を通過できる。
【0038】
また、実施例では、雌雄のジョイント2、3における係合手段たる雄ジョイント3の縦溝部7および雌ジョイント2の係合突部13をそれぞれ120度の角度を成す3箇所に配設しているが、装着する杭の直径などによって縦溝部7とおよび係合突部13を2箇所、または4箇所以上に配設する場合がある。
【0039】
実施例における図8中の符号21は、杭(杭本体16)先端に配設している切削刃である。
【0040】
上述した実施例のものは、係合突部13と縦溝部7のそれぞれに連通孔14、8を設けて、すなわち、係合突部13と縦溝部7を有孔のものとして、これら連通孔の位置を一致させて抜け止め具たる連結ねじ4を装着できるように構成してあるが、連通孔のない、すなわち無孔の係合突部と縦溝部をペアにして設ける場合もあり、その具体例を図9乃至14に示す。
【0041】
図9に示すように、雌ジョイント2には、無孔の係合突部22と有孔の係合突部24を、雄ジョイント3には、無孔の縦溝部23と有孔の縦溝部26を形成している。
【0042】
なお、接続部材1の杭への装着方法と雌雄ジョイント2、3どうしの係合方法は、前述の実施例のものと同様であるので、説明は省略する。
【0043】
そして、無孔と有孔の係合突部あるいは縦溝部を組み合わせて備えるものは、構造が複雑にはなるが、強度が増し、また、孔がないだけでもさらに強度が増すので、杭の回転圧入に関わる応力を安定して受けることができる。
【0044】
また、本実施例では、無孔と有孔の係合突部あるいは縦溝部を交互に配置しているが、所望の強度が得られれば、必ずしも交互に設ける必要はない。
【0045】
本発明に係る接続部材は、鋳造品であって、例えばSCW400の鋳物素材を用いるのが好ましい。
【符号の説明】
【0046】
1 接続部材
2 雌ジョイント
3 雄ジョイント
4 連結ねじ
5 小径部
6 外周面
7 縦溝部
8 連通孔
9 装着部
10 内周面
11 厚肉部
12 内周面
13 係合突部
14 連通孔
15 装着部
16 杭本体
17 溶接部位
18 開口
19 地表
20 地中
21 掘削刃
22 係合突部
23 縦溝部
24 係合突部
25 連通孔
26 縦溝部
27 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物等の基礎を支持する回転圧入杭を、杭の圧入方向に複数本接続する際に用いる接続部材であって、杭との装着部の反対側の端部において互いに係合する雌雄のジョイントを備え、前記雌ジョイントは内周面に半径方向に突出する係合突部を備え、また前記雄ジョイントに形成した小径部の外周面に、前記雌ジョイントの係合突部を杭の軸方向にガイドする縦溝部を備え、さらに、雄ジョイントと雌ジョイントを係合した状態で内外を半径方向に連通する少なくとも一対の連通孔を前記係合突部と前記縦溝部に設け、前記雌雄のジョイントを連結した状態で連通孔に抜け止め具を取り付けられるように構成してなる回転圧入杭の接続部材。
【請求項2】
前記雄ジョイントの連通孔に雌ねじを形成し、また、前記抜け止め具を連結ねじで構成してなる請求項1に記載の回転圧入杭の接続部材。
【請求項3】
前記雌ジョイントの外径を、接続しようとする回転圧入杭の外径と等しくなるように構成してなる請求項1に記載の回転圧入杭の接続部材。
【請求項4】
前記雄ジョイントの小径部を、端部に向かって小径となるテーパ状に形成してなる請求項1に記載の回転圧入杭の接続部材。
【請求項5】
前記雌雄のジョイントを、鋳造品で構成してなる請求項1に記載の回転圧入杭の接続部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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