説明

回転式草刈り刃取付け装置

【課題】摩耗による草刈り刃の反転作業において、反転作業時間を大幅に削減できる草刈り刃取付け装置を提供する。
【解決手段】円筒形のパイプの両端を軸支され、その円筒形パイプの円周上に、貫通孔a(24)を有する円筒形のハウジング(21)が溶着されたローター(19)において、ハウジング(21)内部にスプリング(25)を装入し更にボス(23)を嵌め込む。ボス(23)のハウジング(21)内に位置する部位には、貫通孔b(26)を有し、ピン(22)にてハウジング(21)内で直動可能且つ回動可能に係止されている。またボス(23)のハウジング(21)への装着側と反対に位置する部位には、端部に貫通孔c(32)を有する二枚のプレートが一定の間隔を保持した状態で突設されたホルダーB(31)を有し、草刈り刃(15)を揺動可能に取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草等を刈り払う作業と、細かく粉砕する作業とができる自走式草刈り機の回転式草刈り刃取付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
草刈り作業において、自走式の機体に左右を軸支され、且つ地面と平行に配置されたローターへ複数本装着された草刈り刃によって、草等を刈り払うと同時に細かく粉砕する自走式の草刈り機(特許文献1)が知られている。
【0003】
従来技術の草刈り刃取付け方法は、左右を軸支された円筒形のパイプに、端部に貫通孔を有するU字形状のホルダーが、複数個溶着されているローターの前記ホルダーの一つ一つに草刈り刃二枚が背中合わせで重ねられ、ローターピンを利用し前記ホルダーの間に前記草刈り刃を装着し割りピンで脱落防止の措置を行う技術や、ボルトを通してナットで螺合する措置、更には緊定クリップを用いて脱落を防止する(特許文献2)といった技術が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−125625号公報
【特許文献2】実開昭58−100529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
草刈り機械にて長時間の草刈り作業を行えば、長時間の使用により草刈り刃が摩耗し、切れ味が落ち作業性が著しく低下する。
【0006】
前記草刈り刃が装着されたローターは、同じ回転方向で回転している為に、回転方向側の前記草刈り刃の刃部が摩耗し、使用するに従い切れ味が徐々に低下し、草刈り刃の交換が必要となるが、前記草刈り刃は両刃となっている為に左右を反転させることで、使用されていない刃側で再度草刈り作業を行うことが可能となっている。
【0007】
切れ味の低下により、一つのホルダーに装着されている前記草刈り刃を左右反転させ、新たな刃で再度草刈り作業を行っていくことになるが、前記ローターには複数のホルダーが溶着されている為に、脱落防止措置の曲げられた割りピンを伸ばす作業や、ボルト及びナットを外す作業が大変に煩わしい。
【0008】
取付け方法の考案自体はされているが、現在でも主流はボルト及びナットによる螺合にて行われているのが現状である。
【0009】
本発明はこのような状況を鑑み、簡素な構造でありながらも草刈り刃の左右の反転作業に要する時間を短縮した、草刈り刃取付け装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
両端部を軸支され且つ地面と平行に配置された円筒形のパイプに、貫通孔a(24)を有する円筒形のハウジング(21)が、前記円筒形のパイプの円周上に対しハウジング(21)の軸心が垂直となるよう複数個溶着されたローター(19)のハウジング(21)内部に、スプリング(25)材を装入した状態で、常にハウジング(21)内部から加圧された状態になるように円形のボス(23)を嵌め込む。
【0011】
ボス(23)のハウジング(21)内部に嵌め込まれる部位には、ハウジング(21)内に係止される為に必要なピン(22)を通す貫通孔b(26)を有し、ハウジング(21)の貫通孔a(24)からピン(22)を差込み、ボス(23)の貫通孔b(26)へ差し通す。
【0012】
ハウジング(21)内部は段状に構成されており、貫通孔a(24)によってハウジング(21)内部の段部に現れる半円状の凹み(36)ができる。ボス(23)は、ハウジング(21)に対しスプリング(25)材により加圧されており、矢印B(33)方向に直動可能であり更にハウジング(21)の軸心に対し回動可能にピン(22)によって係止され半円状の凹み(36)にピンが嵌まることで位置が決定する。
【0013】
更にボス(23)のハウジング(21)内部への装着側とは反対に位置する側は、端部に貫通孔(32)を有する二枚のプレートをボス(23)に突設したホルダーB(31)として構成され、背中合せにした二枚の草刈り刃(15)を揺動可能にボルト(16)及びナット(17)を用いてホルダーB(31)に螺合することができる。
【0014】
数個所に溶着されている他のハウジング(21)にも、ハウジング(21)内部にスプリング(25)材を装入した状態で同様にボス(23)を嵌め込みピン(22)により係止し、草刈り刃(15)をボルト(16)及びナット(17)を用いてホルダーB(31)に揺動可能に螺合する。
【0015】
本発明は、以上の構成よりなる草刈り刃(15)の摩耗による左右の反転作業を容易に行うことができ、反転作業の煩わしさを解消した草刈り刃取付け装置である。
【発明の効果】
【0016】
従来技術の草刈り刃取付け状態は、ホルダーA(18)の貫通孔d(34)に対しピンを差込み割りピンにて脱落防止を行う方法や、ボルト(16)及びナット(17)にて螺合する方法である為、ローター(19)に溶着されているホルダーA(18)全ての草刈り刃(15)を、片側の刃の摩耗後に反転の付替え作業を行うのは大変煩わしい作業となる。
【0017】
しかし本発明は、前述のように構成したことで、草刈り刃(15)はボルト(16)及びナット(17)にてボス(23)のホルダーB(31)に螺合されてはいるが、ボス(23)はハウジング(21)内において、スプリング(25)材にて加圧されながら直動可能更には回動可能になるようピン(22)にて係止されていることから、ハウジング(21)内にて矢印B(33)方向へ押し込みながら回動すれば、ボス(23)は容易に回転することになる。
【0018】
つまり、ボス(23)のホルダーB(31)に対し、ボルト(16)及びナット(17)にて螺合された草刈り刃(15)を容易に反転することが可能になるのである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の草刈り刃取付け装置を実施したローター正面図。
【図2】図1の簡略した側面図。
【図3】本発明の草刈り刃取付け装置の分解斜視図。
【図4】本発明の草刈り刃取付け装置の一部を断面化した拡大正面図。
【図5】図4の振替時の加圧状態を示す拡大正面図。
【図6】従来技術の草刈り刃取付け装置を実施したローター正面図。
【図7】図6の簡略した側面図。
【図8】図6の一部を拡大し断面化した拡大正面図。
【図9】本発明の草刈り刃取付け装置の別の実施形態の一部を拡大し断面化した正面図。
【図10】図9を側面視し一部を断面化した側面図。
【図11】本発明の草刈り刃取付け装置を実施した走行機体の簡略した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
円筒形のパイプで構成されるローター(19)に、両端には支持される為の軸(14)と、円周上には貫通孔a(24)を有する円筒形のハウジング(21)を、ハウジング(21)の軸心が円周上に垂直となるよう数箇所溶着する。
【0021】
円筒形のハウジング(21)の内部にスプリング(25)を装入し、更にスプリング(25)を押し込む形で円形のボス(23)を嵌め込む。
【0022】
ボス(23)のハウジング(21)内部に嵌め込まれる部位には、貫通孔b(26)を有し、ハウジング(21)への装着側と反対に位置する部位は、端部に貫通孔c(32)を有する二枚のプレートが一定の間隔を保持した状態でボス(23)に突設されたホルダーB(31)構造となっている。
【0023】
ボス(23)をハウジング(21)内部にて、直動可能更には回動可能に係止する為、ピン(22)を用いて、ハウジング(21)の貫通孔a(24)からピン(22)を差し通し、ハウジング(21)の内部でボス(23)の貫通孔b(26)へ差し通す。
【0024】
図3に示すように、ハウジング(21)の内部は段状に構成されており、貫通孔a(24)として空けられた孔の内部に位置する部分は、半円状の凹み(36)として現れ、凹み(36)にピン(22)が収まる形となっている。
【0025】
差し通されたピン(22)は、ハウジング(21)内に嵌め込まれているボス(23)のみに差し込まれており、スプリング(25)に加圧された状態で、ハウジング(21)内の凹み(36)に係止されている。
【0026】
ボス(23)の二枚のプレートで構成されているホルダーB(31)には、貫通孔c(32)を有している為、草刈り刃(15)を二枚背中合せにした状態で、揺動可能にボルト(16)及びナット(17)にて螺合することが可能となっている。
【0027】
以上のように構成したことで、左右を軸支されたローター(19)は、軸(14)に伝達される動力によって図2に示す矢印B(30)方向へ回転し、その回転により草刈り刃(15)が、矢印A(29)方向に起立し、その状態を保持したまま草等を刈り払い細かく粉砕することが可能になる。
【実施例】
【0028】
本機エンジン(1)からの動力を、プーリA(2)とベルトa(3)を利用し、ミッション(5)に装着してあるプーリB(4)へ伝達させる。
【0029】
エンジン(1)の動力は、ミッション(5)により変速等が行われ、プーリC(6)とベルトb(8)を利用し、シャフト(7)に装着してあるプーリD(9)へ伝達され、シャフト(7)を回転させる。
【0030】
プーリD(9)によりシャフト(7)へ伝達した動力は、シャフト(7)に装着されているプーリD(9)と反対側に装着されているプーリE(10)とベルトc(11)を通じて、ローター(19)と連結しているプーリF(12)へ伝達される。
【0031】
連結されているローター(19)の構成は、左右の両端に軸(14)を持つ円筒形のパイプであり、該パイプの円周上には、貫通孔a(24)を有する円筒形のハウジング(21)が、ハウジング(21)の軸心が円周上に対し垂直となるよう複数個所に溶着されており、ハウジング(21)の内部にスプリング(25)を装入した状態でボス(23)が嵌め込まれている。
【0032】
ボス(23)のハウジング(21)内部に位置する部位は貫通孔b(26)を有しており、ピン(22)をハウジング(21)の貫通孔a(24)からボス(23)の貫通孔b(26)に差し通すことで、ハウジング(21)内部で係止され、ハウジング(21)内部に装着される側の反対に位置する部位には、端部に貫通孔c(32)を有する二枚のプレートが一定の間隔を保持した状態で突設されたホルダーB(31)となっており、草刈り刃(15)をボルト(16)及びナット(17)により揺動可能に取り付けることが可能となっている。
【0033】
この時、草刈り刃(15)の取付け方法は、草刈り刃(15)の装着後の状態が、揺動可能状態に維持できる方法であれば、どのような脱落防止措置でも構わない。
【0034】
ハウジング(21)内部は段状に構成されており、貫通孔a(24)として空けられた孔の内部は、半円状の凹み(36)として現れ、凹み(36)にピン(22)が収まることで、スプリング(25)により加圧された状態のボス(23)の動きが抑止される構造となっている。
【0035】
本発明の別の実施形態として図9並びに図10に示すように、円周に一定の深さの溝(37)が切られ且つ貫通孔b(26)を有する円形のボス(23)が円筒形のパイプに溶着されたローター(19)で、スプリング(25)を、貫通孔a(24)を有するハウジング(21)内部に装入し、ハウジング(21)をボス(23)に嵌め込み、ピン(22)にて直動可能且つ回動可能に係止され、ハウジング(21)には、端部に貫通孔c()を持つ二枚のプレートが突設されたホルダー(31)を有し、草刈り刃(15)を揺動可能にボルト(16)及びナット(17)にて螺合されており、ハウジング(21)をスプリング(25)の圧縮方向に押し込み、ボス(23)の溝(37)内を回動でき、貫通孔b(26)の外縁に位置する箇所には、半円状の凹み(36)を有している為、凹み(36)位置にて係止される構造としても構わない。
【0036】
エンジン(1)の動力を伝達させることで、本発明の構成を実施したローター(19)が回転し、ホルダーB(31)に装着されている草刈り刃(15)が矢印(29)方向に起立した状態になる。
【0037】
作業回転径(35)内で矢印B(30)方向に回転している草刈り刃(15)は、刃部a(27)が草等に達した時、勢い良く切り込み刈り払う。
【0038】
長時間の作業を行えば、草刈り刃(15)の刃部a(27)が摩耗し、草を刈り取る能力が著しく低下してしまう為、草刈り刃(15)を反転させ刃部b(28)を回転方向に位置するように付け替える必要がある。
【0039】
その際本発明の構成では、図4に示すようにハウジング(21)内のスプリング(25)にて加圧された状態のボス(23)を図5に示す形でローター中心(20)に向かって押し込み、ハウジング(21)内部の凹み(36)高さを超えた状態で回動することが可能となっている為、回動させ草刈り刃(15)を反転させる。
【0040】
そうしたことで、草刈り刃(15)の回転方向側の刃部a(27)が摩耗した場合に反転させ刃部b(28)を回転方向に付け替える反転作業に要する時間を、大幅に改善することができるのである。
【符号の説明】
【0041】
1 エンジン
2 プーリA
3 ベルトa
4 プーリB
5 ミッション
6 プーリC
7 シャフト
8 ベルトb
9 プーリD
10 プーリE
11 ベルトc
12 プーリF
13 ローターカバー
14 軸
15 草刈り刃
16 ボルト
17 ナット
18 ホルダーA
19 ローター
20 ローター中心
21 ハウジング
22 ピン
23 ボス
24 貫通孔a
25 スプリング
26 貫通孔b
27 刃部a
28 刃部b
29 矢印A
30 矢印B
31 ホルダーB
32 貫通孔c
33 矢印C
34 貫通孔d
35 作業回転径
36 凹み
37 溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部を軸支され且つ地面と平行に配置された円筒形のパイプに、貫通孔を有する円筒形のハウジングが、前記円筒形のパイプの円周上に対し前記ハウジングの軸心が垂直となるよう数箇所溶着され、スプリング材を前記ハウジング内部に装入した状態で、常に前記ハウジング内部からスプリング材により加圧された状態になるよう円形のボスを嵌め込み、前記ボスが、前記ハウジング内部を直動可能、更に前記ハウジングの軸心に対し回動可能になるよう、前記ハウジング内部の段状となっている部位の半円状の凹みにてピンにより係止されており、前記ボスの前記ハウジングへの装着側と反対に位置する側は、端部に貫通孔を有する二枚のプレートが所定の間隔で前記ボスに突設され、草刈り刃を揺動可能に取付けることのできる、草刈り機械の草刈り刃取付け装置。






























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−63027(P2013−63027A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202415(P2011−202415)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(390038977)株式会社ササオカ (9)
【Fターム(参考)】