説明

回転検出センサ

【課題】ケース体の部品コストを低減すると共に、回転に伴って発生する静電気が回転検出に影響を及ぼさない回転検出センサを提供する。
【解決手段】ケース体1に回転軸に追従して回転する回転体2と、回転体2の回転角度を検出する角度検出部3とを納めてなるものであって、ケース体1は上方開放状で周縁部に耳部14を有した下ケース体10と、下ケース体10の上面を覆うカバー体11とからなり、下ケース体10の耳部14には貫通孔15が形成されると共に、貫通孔15にはその内周面に略適合する金属カラー4が挿入され、カバー体11は金属材からなると共に、耳部14の貫通孔15に挿入された金属カラー4の上面を含めて下ケース体10の上面を覆ってなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の回転角度の検出を行う回転検出センサに関し、特に回転体及び角度検出部をケース体内に納めてなる回転検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転軸の回転角度の検出を行う回転検出センサが知られている。回転検出センサは、自動車のステアリング装置等において用いられ、回転軸に固定されその回転に追従して回転する回転体と、回転体の回転を検出する角度検出部とを有して構成される。このような回転検出センサとしては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【特許文献1】特開2001−165698号公報
【0003】
また、回転検出センサを構成する回転体や角度検出部は、樹脂からなるケース体に納めるようにしており、ケース体は上下二部材からなると共に、それらが端面で付き合わされて一体化される。ケース体の周縁部には、回転検出センサを固定するための貫通孔を有した耳部が形成され、貫通孔にはネジ止めを強固になすために金属カラーが設けられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転軸の回転に伴う回転体の回転は、ギア係合部等を介して角度検出部に伝達される。この際、回転体とケース体との摩擦及びギア係合部等の駆動部分において静電気が発生することがあり、これが角度検出部に影響を及ぼし誤動作を生じる場合があった。また、ケース体の上下二部材を樹脂材により形成していたことにより、ケース体自体のコストが高くなると共に、ケース体を形成する金型も二部材にそれぞれ対応して必要であるために、これも高コスト化の原因となっていた。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、ケース体の部品コストを低減すると共に、回転に伴って発生する静電気が回転検出に影響を及ぼさない回転検出センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る回転検出センサは、ケース体に回転軸に追従して回転する回転体と、該回転体の回転角度を検出する角度検出部とを納めてなる回転検出センサにおいて、
前記ケース体は上方開放状で周縁部に耳部を有した下ケース体と、該下ケース体の上面を覆うカバー体とからなり、
前記下ケース体の耳部には貫通孔が形成されると共に、該貫通孔にはその内周面に略適合する金属カラーが挿入され、
前記カバー体は金属材からなると共に、前記耳部の貫通孔に挿入された金属カラーの上面を含めて前記下ケース体の上面を覆うことを特徴として構成されている。
【0007】
また、本発明に係る回転検出センサは、前記カバー体は前記金属カラーを介して接地されていることを特徴として構成されている。
【0008】
さらに、本発明に係る回転検出センサは、前記金属カラーは上面に鍔部を有し、該鍔部が前記下ケース体の耳部の上面と重合することを特徴として構成されている。
【0009】
さらにまた、本発明に係る回転検出センサは、前記カバー体は前記下ケース体に対して弾性係合する係合片を周縁部に有してなることを特徴として構成されている。
【0010】
そして、本発明に係る回転検出センサは、前記角度検出部は下ケースから外方に突出するコネクタ部に接続され、前記カバー体は前記コネクタ部を押圧固定する弾性係合部を有してなることを特徴として構成されている。
【0011】
また、本発明に係る回転検出センサは、前記カバー体は段差部を有して前記回転体の上面と近接することを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る回転検出センサによれば、ケース体は上方開放状で周縁部に耳部を有した下ケース体と、下ケース体の上面を覆うカバー体とからなり、下ケース体の耳部には貫通孔が形成されると共に、貫通孔にはその内周面に略適合する金属カラーが挿入され、カバー体は金属材からなると共に、耳部の貫通孔に挿入された金属カラーの上面を含めて下ケース体の上面を覆うことにより、ケース体の上面を簡易な金属材で構成でき、コストを低減することができる。また、簡易な構成の金属カラーを下ケース体とカバー体とで挟持しネジ止め固定することができるので、金属カラーを容易に取付けることができる。
【0013】
また、本発明に係る回転検出センサによれば、カバー体は金属カラーを介して接地されていることにより、回転体で発生する静電気をカバー体から金属カラーを介して流すことができるので、角度検出部に静電気の影響を及ぼさないようにすることができる。
【0014】
さらに、本発明に係る回転検出センサによれば、金属カラーは上面に鍔部を有し、鍔部が下ケース体の耳部の上面と重合することにより、金属カラーを下ケース体に容易に取付けることができ、またカバー体と確実に接触するようにすることができる。
【0015】
さらにまた、本発明に係る回転検出センサによれば、カバー体は下ケース体に対して弾性係合する係合片を周縁部に有してなることにより、カバー体と下ケース体との固定を容易になすことができる。
【0016】
そして、本発明に係る回転検出センサによれば、カバー体はコネクタ部を押圧固定する弾性係合部を有してなることにより、金属材からなるカバー体によってコネクタ部を強固に固定することができる。
【0017】
また、本発明に係る回転検出センサによれば、カバー体は段差部を有して回転体の上面と近接することにより、回転体で発生する静電気を確実にカバー体に導き、角度検出部に影響を及ぼさないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には、本実施形態における回転検出センサの斜視図を示している。この図に示すように本実施形態における回転検出センサは、ケース体1内に回転体2が回転自在に保持されると共に、ケース体1からは出力を取り出すコネクタ部5が突出してなるものである。また、ケース体1内には回転体2の回転を検出する角度検出部3も納められている。
【0019】
ケース体1は、側面及び下面を構成する下ケース体10と、上面を構成するカバー体11の二部材から構成されている。また、ケース体1は、回転体2を納める略円盤形状の回転体収容部12と、角度検出部3を納める略箱形形状の検出部収容部13とからなっており、下ケース体10とカバー体11がそれぞれ各部の形状に適合するように形成されている。
【0020】
また、ケース体1の周縁部には回転体収容部12の直径方向に突出する耳部14が2箇所に形成されており、各耳部14にはそれぞれ貫通孔15が形成されている。貫通孔15は、回転検出センサを車両等の所定位置にネジ止め固定するために用いられる。
【0021】
ケース体1を構成するカバー体11には、中央部に開口部50が形成されて、回転体2の中央部が露出するようにしている。また、回転体2にも中央部には開口部20が形成され、また開口部20の周縁部2箇所には内側に向かって突出する係止部21が形成されている。回転検出センサは、回転角度を検出したい回転軸(図示しない)が回転体2の開口部20を貫通するように取付けられ、回転体2の係止部21が回転軸に係止することによって、回転軸の回転に追従して回転体2が回転できるように固定される。
【0022】
図2には、回転検出センサのカバー体11を取り外した状態の分解斜視図を示している。この図に示すように、下ケース体10は上方開放状に形成されており、その上面を覆うように板状のカバー体11が取付けられる。また、下ケース体10には前述のように回転体2及び角度検出部3が納められている。
【0023】
回転体2は、外形状を略円形状に形成され、外周面には歯車状のギア部22が形成されている。ギア部22はさらに角度検出部3側に配置されるギア係合部(図示しない)を介して角度検出部3と連係する。ここでは、回転体2の回転に伴って回転する回転ドラム(図示しない)が設けられ、その外周には複数の磁極からなる磁気コードが形成され、回転ドラムの外周側には所定のギャップを設けて磁気検出センサ(図示しない)が配設される。回転ドラムが回転体2の回転に伴って回転すると、複数の磁極の磁力変化を磁気検出センサが検出し、これによって回転体2の回転角度を検出できるように構成されている。ただし、角度検出の方式はこれには限られず、どのような方式を用いてもよい。
【0024】
下ケース体10には回転体2の他、角度検出部3が納められている。下ケース体10の検出部収容部13には、その後端側側面に開口部16が形成されており、この開口部16からコネクタ部5が突出する。開口部16は上方が開放状とされており、後述するようにカバー体11のコネクタ係合部55が係合する。
【0025】
下ケース体10の耳部14に形成された貫通孔15には、金属カラー4が挿入される。金属カラー4は、その全体が金属材により形成されている。図3には、金属カラー4の側面図を示している。この図に示すように金属カラー4は、貫通孔15の内周面に略適合する径を有した円筒状の挿入部30と、挿入部30の上端部全周に形成される鍔部31とからなっている。鍔部31は挿入部30の周面と直角をなし外周方向に向かって広がるように形成されている。図2に示すように挿入部30は、下ケース体10の貫通孔15に挿入され、鍔部31はその下面が下ケース体10の耳部14上面に当接し重合する。
【0026】
ケース体1を構成するカバー体11は、板状の金属材からなり、回転体収容部12を構成する部分は、中央部に開口部50を有して回転体2の中央部を露出させ、周縁部は下ケース体10を上方から覆うように形成されている。また、下ケース体10の耳部14についても、金属カラー4が取付けられた状態で上方から覆うカバー体耳部51を有している。カバー体耳部51には、カバー体貫通孔52が形成されており、これが下ケース体10の貫通孔15と金属カラー4を介して連通する。これによって、耳部14にネジを挿通させることができ、回転検出センサをネジ止め固定することができる。なお、図2には表されていないが、下ケース体10の奥側の耳部14に対しても、金属カラー4が挿入され、その上面をカバー体11のカバー体耳部51が覆うようにしている。
【0027】
カバー体11は、周縁部に複数の係合片54を有している。係合片54はカバー体11の上面に対して弾性を有するように形成されている。一方、下ケース体10の内周面には、係合片54に対応して被係合部17が形成されており、カバー体11の係合片54を係合させることで下ケース体10とカバー体11とを固定することができる。また、被係合部17は下ケース体10の外周面に形成されても良い。
【0028】
このように、カバー体11のカバー体耳部51が、金属カラー4が取付けられた下ケース体10の耳部14を覆うように構成したので、カバー体11が金属カラー4の上面を含めて下ケース体10の上面を覆うこととなり、耳部14にネジを挿通して回転検出センサを固定することによって、下ケース体10とカバー体11とを強固に固定することができる。さらには、この構成により金属カラー4も下ケース体10に対して強固に固定することができ、金属カラー4を下ケース体10の貫通孔15に挿入自在となるように形成しておけばよいので、金属カラー4を簡素な構造とし、またその取付けも容易にすることができる。さらに、カバー体11は金属カラー4及び貫通孔15に取付けられるネジを介して接地されることになるので、回転検出センサ内、特に回転体2の回転動作に伴い発生する静電気を確実に逃がすことができて、回転検出におけるノイズ等の発生を抑えることができる。
【0029】
カバー体11の後端側縁部には、下ケース体10の開口部16に対応してコネクタ係合部55が形成されている。コネクタ係合部55は、開口部16の上部に挿入されコネクタ部5の根元部40に対して弾性係合する。これによって、コネクタ部5をケース体1に対して強固に押圧固定しておくことができる。
【0030】
また、カバー体11には、回転体収容部12と検出部収容部13との間に段差部53が形成されている。図4には、回転検出センサの分解側面図を示している。この図に示すように、カバー体11には段差部53が形成され、検出部収容部13を構成する部分よりも回転体収容部12を構成する部分の方が下側となるように折り曲げられている。
【0031】
これに対応して、下ケース体10も、回転体収容部12を構成する部分よりも検出部収容部13を構成する部分の上面の方が高い位置となるように形成されている。下ケース体10には、前述のように回転体2が収容されており、カバー体11は回転体収容部12を構成する部分において回転体2の上面と近接するように配置される。これによって、回転体2の回転に伴い発生した静電気を近接するカバー体11に確実に導くことができ、さらにカバー体11は金属カラー4及び貫通孔15に取付けられるネジを介して電気的に接地されることにより、回転体2において発生した静電気が角度検出部3に影響しないようにすることができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用はこれら実施形態に限られるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。例えば、ケース体1に形成される耳部14と金属カラー4の配置及び数については、本実施形態のものには限られない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態における回転検出センサの斜視図である。
【図2】回転検出センサの分解斜視図である。
【図3】金属カラーの側面図である。
【図4】回転検出センサの分解側面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 ケース体
2 回転体
3 角度検出部
4 金属カラー
5 コネクタ部
10 下ケース体
11 カバー体
14 耳部
15 貫通孔
20 開口部
21 係止部
22 ギア部
30 挿入部
31 鍔部
50 開口部
51 カバー体耳部
52 カバー体貫通孔
53 段差部
54 係合部
55 コネクタ係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース体に回転軸に追従して回転する回転体と、該回転体の回転角度を検出する角度検出部とを納めてなる回転検出センサにおいて、
前記ケース体は上方開放状で周縁部に耳部を有した下ケース体と、該下ケース体の上面を覆うカバー体とからなり、
前記下ケース体の耳部には貫通孔が形成されると共に、該貫通孔にはその内周面に略適合する金属カラーが挿入され、
前記カバー体は金属材からなると共に、前記耳部の貫通孔に挿入された金属カラーの上面を含めて前記下ケース体の上面を覆うことを特徴とする回転検出センサ。
【請求項2】
前記カバー体は前記金属カラーを介して接地されていることを特徴とする請求項1記載の回転検出センサ。
【請求項3】
前記金属カラーは上面に鍔部を有し、該鍔部が前記下ケース体の耳部の上面と重合することを特徴とする請求項1または2記載の回転検出センサ。
【請求項4】
前記カバー体は前記下ケース体に対して弾性係合する係合片を周縁部に有してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転検出センサ。
【請求項5】
前記角度検出部は下ケースから外方に突出するコネクタ部に接続され、前記カバー体は前記コネクタ部を押圧固定する弾性係合部を有してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転検出センサ。
【請求項6】
前記カバー体は段差部を有して前記回転体の上面と近接することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転検出センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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