説明

回転炉床炉の原料前処理システム及び方法

【課題】原料の種類や性状が変化したとしても、安定した状態の原料成型体を得ることができる回転炉床炉の原料前処理システム及び方法を提供すること。
【解決手段】原料貯蔵槽1a〜1cから原料を切り出し、混練装置3で混練した後に、成型装置5で成型し、得られた原料成型体を回転炉床炉6に供給する回転炉床炉の原料前処理システムにおいて、原料貯蔵槽1a〜1cと混練装置3との間に原料を分配する分配装置2を設け、この分配装置2の分配先の一方を混練装置3とし、分配先の他方をバッファ槽4とし、バッファ槽4内の原料を分配装置2又は混練装置3に原料搬送経路4cによって供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として製鉄廃棄物等の酸化鉄を含有する原料から還元鉄を製造する回転炉床炉に供給する原料を調製する原料前処理システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転炉床炉を用いて製鉄廃棄物を還元し有害成分を除去して還元鉄とし、これを製鉄原料に使用したり、製鉄廃棄物に含まれる有用な金属を抽出・回収するプロセスが実用化されている。
【0003】
この回転炉床炉を用いたプロセスにおいて、製鉄廃棄物等の原料は、回転炉床炉内で還元されやすく、また一定の形状を保持できるようにするために、成型装置で所定の形状に成型された後、原料成型体として回転炉床炉内に供給される。
【0004】
ところが、とくに製鉄廃棄物には数多くの種類がある上に製鉄設備の状況や原料条件変動等によりその性状が日々変化するのが実情である。その一方、回転炉床炉を用いたプロセスで採用されている成型装置は急激な原料性状の変化に弱いという欠点を有している。そのため、還元に重要な要素である原料成型体の状態が安定せず、よって回転炉床炉での還元状況が安定せず、操業が難しいという問題が生じている。
【0005】
これに対して、特許文献1には、それぞれ種類の異なる原料を貯蔵する複数の原料貯蔵槽を備え、これらの原料貯蔵槽から原料混合比率を決めて複数の原料を切り出し混練装置で混練した後に成型する技術が開示されている。しかし、単に複数の原料を混練装置で混練するだけでは、それぞれの原料の性状変化に対応することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−206119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、原料の種類や性状が変化したとしても、安定した状態の原料成型体を得ることができる回転炉床炉の原料前処理システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の回転炉床炉の原料前処理システムは、原料貯蔵槽から原料を切り出し、混練装置で混練した後に、成型装置で成型し、得られた原料成型体を回転炉床炉に供給する回転炉床炉の原料前処理システムにおいて、原料貯蔵槽と混練装置との間に原料を分配する分配装置を設け、この分配装置の分配先の一方を混練装置とし、分配先の他方をバッファ槽とし、バッファ槽内の原料を分配装置又は混練装置に搬送する原料搬送経路を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の回転炉床炉の原料前処理方法は、原料貯蔵槽から原料を切り出し、混練装置で混練した後に、成型装置で成型し、得られた原料成型体を回転炉床炉に供給する回転炉床炉の原料前処理方法において、原料貯蔵槽と混練装置との間に原料を分配する分配装置を設け、この分配装置の分配先の一方を混練装置とし、分配先の他方をバッファ槽とし、バッファ槽内の原料を分配装置又は混練装置に供給することを特徴とするものである。
【0010】
このように本発明では、原料貯蔵槽から切り出した原料を分配装置で混練装置とバッファ槽に分配し、バッファ槽内の原料を分配装置又は混練装置に供給し、その後成型装置で成型するようにしている。これによって、原料貯蔵槽から切り出される原料の種類や性状が変化したとしても、その変化前の原料がバッファ槽から分配装置又は混練装置に供給され変化後の原料と混合されるので、種類や性状の変化が平準化される。したがって、成型装置が原料の種類や性状の変化に容易に対応できるようになり、安定した状態の原料成型体を得ることができる。
【0011】
また、本発明においてバッファ槽内の原料は循環混合経路によって循環させることが好ましい。これによって、バッファ槽内の原料の混合が促されて原料の性状が安定すると共に、バッファ槽内の原料の固化も防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明よれば、原料の種類や性状が変化したとしても、安定した状態の原料成型体を得ることができる。したがって、回転炉床炉での還元状況が安定し、操業も安定して、還元性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施例を示すシステム構成図である。
【図2】原料の種類と適正な成型圧力との関係を示す概念図である。
【図3】本発明の第2実施例を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の第1実施例を示すシステム構成図である。図1に示す原料前処理システムは、それぞれ性状の異なる原料a〜cを貯蔵する3つの原料貯蔵槽1a〜1cを備える。原料貯蔵槽1a〜1cから順次原料が切り出される。切り出された原料は、分配装置2に搬送される。この分配装置2の分配先の一方は混練装置3であり、分配先の他方はバッファ槽4である。すなわち、分配装置2に搬送された原料は分配装置2の一方の分配口2aから混練装置3側に分配されると共に、他方の分配口2bからバッファ槽4側に分配される。各分配口2a,2bには開閉弁2cが設けられており、必要に応じて各分配口2a,2bを開閉可能としている。
【0016】
混練装置3側に分配された原料は混練装置3で混練され、成型装置5で成型される。得られた原料成型体は回転炉床炉6に供給され還元される。
【0017】
一方、バッファ槽4側に分配された原料は、一旦バッファ槽4に貯留される。バッファ槽4はその底部に切り出し装置4aを備えている。切り出し装置4aから切り出された原料は、その一部が循環混合経路4bによってバッファ槽4に戻されて循環し、残りは原料搬送経路4cによって分配装置2に搬送される。なお、循環混合経路4b及び原料搬送経路4cには開閉弁4dが設けられており、必要に応じて循環混合経路4b及び原料搬送経路4cを開閉可能としている。
【0018】
以上の構成において、原料貯蔵槽1a〜1cから3種類の原料a〜cが順次切り出される。原料貯蔵槽の切り替えにより原料の種類が変化した場合、従来の原料前処理システムでは、その変化に成型装置の成型条件の変更が追従できず、原料成型体の状態が安定しなくなる。
【0019】
これに対して本実施例では、原料貯蔵槽から切り出した原料を分配装置2で混練装置3とバッファ槽4に分配し、バッファ槽4内の原料を再度分配装置2に搬送し、分配装置2から混練装置3側に分配された原料を成型装置5で成型するようにしている。これによって、原料貯蔵槽の切り替えにより原料の種類が変化したとしても、その変化前の原料がバッファ槽4から分配装置2に供給され変化後の原料と混合されるので、原料の種類の変化が平準化される。したがって、成型装置5が原料の種類の変化に容易に対応できるようになり、安定した状態の原料成型体を得ることができる。
【0020】
このことを、図2を参照して説明する。図2は、原料の種類と成型装置5における適正な成型圧力との関係を示す概念図である。図2に示すように、原料の種類によって成型装置5における適正な成型圧力が異なる。したがって、例えば原料の種類がaからcに変化した場合、成型圧力をP1からP3に変化させる必要があるが、成型装置5においてその成型圧力をP1からP3に急激に変化させることはできない。このため、従来は原料の種類の変化時に原料成型体の状態が安定しなかった。
【0021】
これに対して本実施例では、上述のとおり原料の切り替え当初はバッファ槽4からの変化前の原料aが分配装置2において変化後の原料cに供給されつつ、その後漸次原料cに切り替わっていく。すなわち、図2で言えば、原料aから原料cに例えば一点鎖線のような経路をたどって漸次切り替わる。したがって、成型装置5の成型圧力をもP1からP3に漸次変化させれば良く、成型装置5が原料の種類の変化に容易に対応できるようになり、安定した状態の原料成型体を得ることができる。
【0022】
なお、以上の実施例では、原料貯蔵槽1a〜1cから3種類の原料a〜cを順次切り出すようにし、原料の種類の変化時における作用を説明したが、原料貯蔵槽1a〜1cから原料混合比率を決めて原料a〜cを切り出す場合において、各原料a〜cの性状が変化したときも同様に原料の性状の変化を平準化し漸次変化させることがでるので、安定した状態の原料成型体を得ることができる。
【0023】
さらに、本実施例では原料の種類ごとに原料貯蔵槽を設けたが、本発明では上述のように原料の種類や性状の変化を平準化できるので、一つの原料貯蔵槽に複数種類の原料を貯蔵するようにしても安定した状態の原料成型体を得ることができる。この場合、原料貯蔵槽が一つだけで済むので、原料前処理システムを小型化できる。
【0024】
また、バッファ槽4は原料の種類や性状の変化を平準化する機能を果たすだけでなく、原料貯蔵槽1a〜1c内の原料が一時的に枯渇した場合であっても回転炉床炉6の運転を可能するための予備的な原料貯蔵槽としての機能も果たす。本実施例ではバッファ槽4の容量は回転炉床炉6の約5日分の処理量以上としている。回転炉床炉6の昇温(立ち上げ)及び降温(休止)に通常約5日間を要することから、バッファ槽4の容量が回転炉床炉6の約5日分の処理量以上であれば、バッファ槽4を回転炉床炉の立ち上げあるいは休止のための一時的な原料貯蔵槽として活用できる。
【実施例2】
【0025】
図3は、本発明の第2実施例を示すシステム構成図である。図1で説明した第1実施例では、バッファ槽4内の原料を原料搬送経路4cによって分配装置2に搬送するようにしたが、本実施例では、中間ホッパ7及びその底部に設けた切り出し装置7aを介して混練装置5に搬送するようにしている。
【0026】
本実施例であっても、混練装置5において種類や性状が変化する前の原料と変化後の原料が混合されてその変化が平準化されるので、成型装置5が原料の種類や性状の変化に容易に対応できるようになり、安定した状態の原料成型体を得ることができる。
【符号の説明】
【0027】
1a〜1c 原料貯蔵槽
2 分配装置
2a、2b 分配口
2c 開閉弁
3 混練装置
4 バッファ槽
4a 切り出し装置
4b 循環混合経路
4c 原料搬送経路
4d 開閉弁
5 成型装置
6 回転炉床炉
7 中間ホッパ
7a 切り出し装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料貯蔵槽から原料を切り出し、混練装置で混練した後に、成型装置で成型し、得られた原料成型体を回転炉床炉に供給する回転炉床炉の原料前処理システムにおいて、
原料貯蔵槽と混練装置との間に原料を分配する分配装置を設け、この分配装置の分配先の一方を混練装置とし、分配先の他方をバッファ槽とし、
バッファ槽内の原料を分配装置又は混練装置に搬送する原料搬送経路を設けたことを特徴とする回転炉床炉の原料前処理システム。
【請求項2】
バッファ槽内の原料を循環させる循環混合経路を設けた請求項1に記載の回転炉床炉の原料前処理システム。
【請求項3】
原料貯蔵槽から原料を切り出し、混練装置で混練した後に、成型装置で成型し、得られた原料成型体を回転炉床炉に供給する回転炉床炉の原料前処理方法において、
原料貯蔵槽と混練装置との間に原料を分配する分配装置を設け、この分配装置の分配先の一方を混練装置とし、分配先の他方をバッファ槽とし、
バッファ槽内の原料を分配装置又は混練装置に供給することを特徴とする回転炉床炉の原料前処理方法。
【請求項4】
バッファ槽内の原料を循環混合経路によって循環させる請求項3に記載の回転炉床炉の原料前処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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