説明

回転照射治療装置

【課題】超電導偏向電磁石が設けられたビーム輸送装置を簡易な構成によって設置することにより、小型かつ軽量な回転照射治療装置を提供する。
【解決手段】冷凍機用圧縮機7は、回転フレーム3に、回転フレーム3の第1回転軸Rと平行な自転軸Rの周りで自転可能となるよう取付けられている。そして、回転フレーム3が回転フレーム支持駆動装置25によって第1角速度で回転する間、冷凍機用圧縮機7は、回転フレーム3に対して第1角速度とは大きさが同一で向きが逆である第2角速度で自転する。このため、回転フレーム3が回転している間、冷凍機用圧縮機7の姿勢を常に一定に保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用粒子線を用いた回転照射治療装置に係り、とりわけ、患者の周りを回転することにより任意の角度から患者に対して粒子線を照射する回転照射治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
癌患者を対象とした放射線治療において、近年、粒子線の利用が注目されている。粒子線を利用した放射線治療においては、従来のX線、ガンマ線、電子線及び中性子線等を利用した放射線治療の場合と比べて、体内深部に位置する患部に最も強い線量を集中して与えることができ、このため、身体表面及び患部の周囲に位置する正常細胞に比較的損傷を与えることなく治療を行うことが可能である。粒子線としては主に、高エネルギーまで加速して得られる陽子線や炭素線等の重粒子線が用いられる。
【0003】
従来、このような粒子線を用いた治療装置としては、粒子線照射部を固定し、患者に対して固定の一方向からのみ粒子線を照射する治療装置が主流であった。しかしながら、近年、癌の形状や深さに合わせて最適な線量値及び線量分布になるよう、患者に対して多方向から粒子線を照射することができる治療装置に対する要求が高まっている。このため、患者の周りを回転することにより周方向の任意の角度から患者に対して粒子線を照射する回転照射治療装置が開発されている(例えば特許文献1、2)。
【0004】
粒子線を照射する回転照射治療装置は、一般に、シンクロトロンで高エネルギーまで加速された荷電粒子ビームを患者に対して照射する装置として構成される。例えば、回転照射治療装置は患者の周りで回転可能な回転フレーム(回転ガントリ)を備えており、シンクロトロンで高エネルギーまで加速された荷電粒子ビームは、この回転フレームの回転中心方向に導かれる。回転フレームの回転中心方向に導かれた荷電粒子ビームは、常電導偏向電磁石が設けられたビーム輸送装置により一旦外方向へ曲げられた後、再び内方向へ曲げられて治療室へ導かれる。治療室へ導かれた荷電粒子ビームは、粒子線照射部から患者へ照射される。
【0005】
この場合、荷電粒子ビームが治療室へ導かれるまでのビーム軌道の軌道半径は、主に常電導偏向電磁石で発生する磁場強度に依存している。このため、磁場強度が強ければ強いほど、小さい軌道半径で荷電粒子ビームを偏向させることができる。従って、回転フレームの回転体としての最外径は、常電導偏向電磁石によって発生される磁場強度に大きく依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−47287号公報
【特許文献2】特開平9−192244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
荷電粒子ビームを患者に対して高精度で照射するためには、回転フレーム(回転ガントリ)の回転を高い精度で制御する必要がある。一般に、回転を高い精度で制御することは、回転フレームの最外径が大きくなるほど、また回転フレームおよび回転フレーム内部に設けられた荷電粒子ビームなどの重量が大きくなるほど困難になる。しかしながら、従来の常電導偏向電磁石が設けられたビーム輸送装置が用いられる場合、常電導偏向電磁石により発生される磁場に限界があるため、ビーム軌道の軌道半径が大きくなる。これによって回転フレームの最外径が大きくなり、このことにより回転照射治療装置の重量も大きくなる。このため、回転を高い精度で制御することが困難であり、また回転照射治療装置の費用も大きくなる。さらに、回転照射治療装置が大型化することにより回転照射治療装置を設置するためのスペースも大きくなる。
【0008】
このような問題を解決するため、ビーム輸送装置の常電導偏向電磁石を超電導偏向電磁石に置き換えることが考えられる。常電導偏向電磁石を超電導偏向電磁石に置き換えることにより、発生される磁場が強くなり、このためビーム軌道の軌道半径を小さくすることができる。また、これによって回転フレームの最外径が小さくなるため、回転照射治療装置の重量も小さくなる。
【0009】
しかしながら、超電導偏向電磁石が設けられたビーム輸送装置を用いる場合、超電導偏向電磁石を冷却する冷凍機と、冷凍機へフレキシブルホースを介して冷媒を供給する冷凍機用圧縮機とが必要になる。一般に冷凍機用圧縮機は、常に一定の姿勢が保たれた状態で使用されることを想定して設計されている。従って、回転照射治療装置において超電導偏向電磁石を用いる場合、回転フレームの回転に関係なく冷凍機用圧縮機の姿勢を一定に保つよう冷凍機用圧縮機を配置しなければならない。
【0010】
しかしながら、例えば冷凍機用圧縮機を回転フレームの外部に配置し、これによって回転フレームの回転に関係なく冷凍機用圧縮機の姿勢を保つ場合、回転フレームに固定された冷凍機に冷凍機用圧縮機から冷媒を供給するために、数十メートルから百メートル程の長さのフレキシブルホースによって冷凍機用圧縮機を冷凍機に接続しなければならない。このような長いフレキシブルホースを用いる場合、費用が増大し、かつ冷凍機による冷却効率が劣化することが考えられる。また、回転フレームの回転中にフレキシブルホースが絡まるのを防止するための機構が必要となり、このため回転照射治療装置の構造が複雑になる。
【0011】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、超電導偏向電磁石が設けられたビーム輸送装置を簡易な構成によって設置することにより、小型かつ軽量な回転照射治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、回転自在に設けられた回転フレームと、回転フレームに取付けられ、荷電粒子ビームを照射する粒子線照射部と、回転フレームに取付けられ、粒子線照射部に荷電粒子ビームを導くビーム輸送装置と、回転フレームを回動自在に支持するとともに、第1回転軸回りに回転フレームを回転させる回転フレーム支持駆動装置と、前記ビーム輸送装置および前記回転フレーム支持駆動装置を制御する制御装置とを備え、前記ビーム輸送装置は、前記粒子線照射部に荷電粒子ビームを導くとともに直線部と湾曲部を有する真空ダクトと、真空ダクトの湾曲部の外周に設けられた超電導偏向電磁石とを有し、超電導偏向電磁石を冷却するため冷凍機が設けられるとともに、前記冷凍機へ圧縮冷媒を供給する冷凍機用圧縮機が設けられ、前記冷凍機用圧縮機は、前記回転フレームに、回転フレームの第1回転軸と平行な第2回転軸の周りで、冷凍機用圧縮機の姿勢を一定に保つよう回転可能に取付けられていることを特徴とする回転照射治療装置である。
【0013】
本発明は、前記冷凍機用圧縮機の下方には、冷凍機用圧縮機に作用する加速度に応じて、当該加速度と逆向きに慣性力を発生させる慣性質量体が取り付けられていることを特徴とする回転照射治療装置である。
【0014】
本発明は、前記冷凍機用圧縮機は、回転フレームに、前記第2回転軸を自転軸として圧縮機駆動部により自転可能に取付けられ、前記制御装置は、前記回転フレームが第1角速度で回転するよう前記回転フレーム支持駆動装置を制御するとともに、前記冷凍機用圧縮機が前記回転フレームに対して第1角速度とは大きさが同一で向きが逆である第2角速度で自転するよう前記圧縮機駆動部を制御することを特徴とする回転照射治療装置である。
【0015】
本発明は、前記冷凍機用圧縮機は、前記回転フレームに、回転フレームに固定された環状のガイドレールを介して取付けられていることを特徴とする回転照射治療装置である。
【0016】
本発明は、前記冷凍機用圧縮機は台車フレームに固定され、当該台車フレームは、前記回転フレームに、回転フレームに固定された環状のガイドレールを介して取付けられていることを特徴とする回転照射治療装置である。
【0017】
本発明は、前記ガイドレールは、その内周面に断面凹状の溝部を有し、前記冷凍機用圧縮機に、当該溝部に沿って移動する車輪が取付けられ、この車輪は前記圧縮機駆動部により駆動されることを特徴とする回転照射治療装置である。
【0018】
本発明は、前記ガイドレールは、その側面に断面凹状の溝部を有し、前記冷凍機用圧縮機に、当該溝部に沿って移動する車輪が取付けられ、この車輪は前記圧縮機駆動部により駆動されることを特徴とする回転照射治療装置である。
【0019】
本発明は、前記ガイドレールは、その内周面に断面凹状の溝部を有し、前記台車フレームに、当該溝部に沿って移動する車輪が取付けられ、この車輪は前記圧縮機駆動部により駆動されることを特徴とする回転照射治療装置である。
【0020】
本発明は、前記ガイドレールは、その側面に断面凹状の溝部を有し、前記台車フレームに、当該溝部に沿って移動する車輪が取付けられ、この車輪は前記圧縮機駆動部により駆動されることを特徴とする回転照射治療装置である。
【0021】
本発明は、前記車輪は歯車からなり、前記ガイドレールの溝部に、当該歯車と係合する凹凸部が形成されていることを特徴とする回転照射治療装置である。
【0022】
本発明は、前記冷凍機用圧縮機は、前記環状のガイドレール内を回転する回転駆動体に固定され、環状のガイドレールと回転駆動体との間に、前記圧縮機駆動部により駆動される駆動車輪を介在させたことを特徴とする回転照射治療装置である。
【0023】
本発明は、前記台車フレームは、前記環状のガイドレール内を回転する回転駆動体に固定され、環状のガイドレールと回転駆動体との間に、前記圧縮機駆動部により駆動される駆動車輪を介在させたことを特徴とする回転照射治療装置である。
【0024】
本発明は、前記冷凍機用圧縮機の重心は、前記冷凍機用圧縮機の自転軸から鉛直方向下向きに延びる線上にあることを特徴とする回転照射治療装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、超電導偏向電磁石を冷却する冷凍機へ圧縮冷媒を供給する冷凍機用圧縮機が、回転フレームに、回転フレームの第1回転軸と平行な第2回転軸の周りで回転可能に取付けられている。このため、回転フレームの回転中、冷凍機用圧縮機の姿勢を常に一定に保つことができ、これによって、冷凍機用圧縮機を回転フレームの内部に配置することが可能となる。このことにより、小型かつ軽量な回転照射治療装置を簡易な構成で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態における回転照射治療装置を示す部分破断正面図。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態における冷凍機用圧縮機を示す正面図。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態における冷凍機用圧縮機を示す側面図。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態において、冷凍機用圧縮機が台車フレームに固定される変形例を示す正面図。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態における冷凍機用圧縮機を示す正面図。
【図6】図6(a)は、図5に示す冷凍機用圧縮機をA−A方向から見た横断面図、図6(b)は、図5に示す冷凍機用圧縮機をB−B方向から見た縦断面図。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態において、車輪が歯車からなる変形例を示す図。
【図8】図8(a)は、本発明の第3の実施の形態における冷凍機用圧縮機を示す正面図、図8(b)は、本発明の第3の実施の形態における冷凍機用圧縮機を示す側面図。
【図9】図9は、本発明の第4の実施の形態における冷凍機用圧縮機を示す側面図。
【図10】図10(a)は、本発明の第5の実施の形態における回転照射治療装置を示す部分破断正面図、図10(b)は、本発明の第5の実施の形態における冷凍機用圧縮機を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
第1の実施の形態
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。
図1乃至図4は、本発明の第1の実施の形態における回転照射治療装置を示す図である。このうち図1は、本発明の第1の実施の形態における回転照射治療装置を示す部分破断正面図であり、図2は、本発明の第1の実施の形態における冷凍機用圧縮機を示す正面図である。図3は、本発明の第1の実施の形態における冷凍機用圧縮機を示す側面図であり、図4は、本発明の第1の実施の形態において、冷凍機用圧縮機が台車フレームに固定される変形例を示す正面図である。
【0028】
まず図1により、本実施の形態における回転照射治療装置1全体について説明する。
【0029】
図1に示すように、建屋12内に設置された回転照射治療装置1は、回転自在に設けられたトラス状の回転フレーム(回転ガントリ)3と、回転フレーム3に取付けられ、荷電粒子ビームを照射する粒子線照射部2と、回転フレーム3に取付けられ、粒子線照射部3に荷電粒子ビームを導くビーム輸送装置30とを備えている。また回転フレーム3は、第1回転軸R回りに回転するようになっており、この回転フレーム3は、回転フレーム支持駆動装置25により回動自在に支持されている。回転フレーム支持駆動装置25は、回転フレーム3の両端に固定された回転リング10a、10bと、対応する回転リング10a、10bを支持するとともに対応する回転リング10a、10bを回転駆動するサポートロール(回転フレーム支持部)11a、11bとから構成されている。このため、回転フレーム3はサポートロール11a、11bによって回転する。
【0030】
また図1に示すように、回転フレーム3内のうち粒子線照射部2の近傍には、治療用ベッド21を有する治療室20が設けられている。この治療室20は、回転フレーム3が回転してもその姿勢が保持される。
【0031】
次に図1を参照して、ビーム輸送装置30について詳述する。図1に示すように、ビーム輸送装置30は、粒子線照射部2に荷電粒子ビームを導くとともに直線部18aと湾曲部18bを有する真空ダクト18と、真空ダクト18の直線部18aの外周に設けられ、荷電粒子ビームのビームサイズを収束させるための四極電磁石26と、真空ダクト18の湾曲部18bの外周に設けられた超電導偏向電磁石4とを有し、超電導偏向電磁石4を冷却するため冷凍機19が設けられている。この冷凍機19に対して、図1に示す冷凍機用圧縮機7からフレキシブルホース6を介して圧縮冷媒、例えばヘリウムガスが供給される。このようなビーム輸送装置30により、シンクロトン(図示せず)で高エネルギーにまで加速された荷電粒子ビームが、粒子線照射部2へ導かれる。粒子線照射部2に導かれた荷電粒子ビームは、所望の線量分布に調整された後、治療用ベッド21上に横たわる患者の患部へ照射される。
【0032】
次に図1乃至図3を参照して、冷凍機用圧縮機7について詳述する。このうち図2は、図1に示す冷凍機用圧縮機7を拡大して示す図である。図1乃至図3に示すように、冷凍機用圧縮機7は、回転フレーム3に、回転フレーム3の第1回転軸Rと平行な自転軸Rの周りで自転可能となるよう取付けられている。具体的には、冷凍機用圧縮機7は、回転フレーム3に、回転フレーム3に固定された一対の環状のガイドレール5を介して取付けられている。この一対のガイドレール5は、その内周面に断面凹状の溝部5aを有しており、また冷凍機用圧縮機7には、各ガイドレール5の溝部5aに沿って移動する複数の、例えば4個の車輪13が取付けられており、従って冷凍機用圧縮機7は合計8個の車輪13を有する。図2に示すように、各ガイドレール5の溝部5aに沿って移動する4個の車輪13のうち、例えば1個の車輪13には、車輪13を回転駆動する圧縮機駆動部8が連結されており、これによって冷凍機用圧縮機7は、回転フレーム3の第1回転軸Rと平行な自転軸Rの周りで、その姿勢を一定に保つよう自転することができる。
【0033】
なお、圧縮機駆動部8、および前述の回転フレーム支持駆動装置25のサポートロール11a、11bは、それぞれ回転フレーム3近傍において建屋12上に配置された制御装置17により制御されている。この制御装置17は、回転フレーム3が第1角速度で回転するようサポートロール11a、11bを制御するとともに、冷凍機用圧縮機7が回転フレーム3に対して第1角速度とは大きさが同一で向きが逆である第2角速度で自転するよう圧縮機駆動部8を制御する。このため、回転フレーム3が回転する間、冷凍機用圧縮機7の姿勢を常に一定に保つことができる。
【0034】
なお、図1に示すように、回転フレーム3の外縁と第1回転軸Rとの距離はLとなっている。また、第1回転軸Rと自転軸Rとの距離をMで示す。
なお図2に示すように、冷凍機用圧縮機7は、その重心Cが冷凍機用圧縮機7の自転軸Rから鉛直方向下向きに延びる線R上に位置するよう回転フレーム3に取り付けられている。このことにより、冷凍機用圧縮機7の姿勢をより安定に保つことができる。
【0035】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0036】
はじめに制御装置17は、所望の角度で治療用ベッド21上の患者に対して荷電粒子ビームを照射するよう、回転フレーム支持駆動装置25を制御する。すなわち、回転フレーム支持駆動装置25のサポートロール11a、11bは、回転フレーム3の両端に設けられた回転リング10a、10bを回転駆動し、これによって、回転フレーム3が回転する。この結果、回転フレーム3に取付けられた粒子線照射部2は、患者に対して所望の角度をもつことができる。このとき、回転フレーム3の角速度(第1角速度)は、例えば360度/分となっている。
【0037】
この間、回転フレーム3に固定された一対の環状のガイドレール5もまた、回転フレーム3と同期して回転フレーム3の第1回転軸Rの周りを公転する。一方、制御装置17は、冷凍機用圧縮機7が回転フレーム3に対して第1角速度とは大きさが同一で向きが逆である角速度(第2角速度)、すなわち−360度/分で自転するよう圧縮機駆動部8を制御する。すなわち圧縮機駆動部8は、冷凍機用圧縮機7に取り付けられた車輪13を回転駆動し、これによって車輪13を各ガイドレール5の溝部5aに沿って移動させる。この結果、冷凍機用圧縮機7は、回転フレーム3に固定された一対の環状のガイドレール5に対して第2角速度で自転する。このことにより、回転フレーム3が第1角速度で回転する間、冷凍機用圧縮機7は第2角速度で回転するため、冷凍機用圧縮機7の姿勢を常に一定に保つことができる。
【0038】
このように本実施の形態によれば、超電導偏向電磁石4を冷却する冷凍機19へ圧縮冷媒を供給する冷凍機用圧縮機7は、回転フレーム3に、回転フレーム3の第1回転軸Rと平行な自転軸Rの周りで圧縮機駆動部8により自転可能に取付けられている。この冷凍機用圧縮機7は、回転フレーム3が第1角速度で回転するとき、回転フレーム3に対して第1角速度とは大きさが同一で向きが逆である第2角速度で自転するよう圧縮機駆動部8により駆動される。このことにより、回転フレーム3が回転する間、冷凍機用圧縮機7の姿勢を常に一定に保つことができる。
【0039】
また本実施の形態によれば、冷凍機用圧縮機7は、その重心Cが冷凍機用圧縮機7の自転軸Rから鉛直方向下向きに延びる線R上に位置するよう回転フレーム3に取り付けられている。このことにより、冷凍機用圧縮機7の姿勢をより安定に保つことができる。
【0040】
なお本実施の形態において、制御装置17により圧縮機駆動部8、および回転フレーム支持駆動装置25のサポートロール11a、11bが制御され、この場合、制御装置17は回転フレーム3近傍において建屋12上に配置されている。しかしながら、これに限られることはなく、制御装置17を、回転フレーム3内部に設けてもよい。
【0041】
また本実施の形態において、冷凍機用圧縮機7が、回転フレーム3に、回転フレーム3に固定された一対の環状のガイドレール5を介して取り付けられている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図4に示すように、冷凍機用圧縮機7を台車フレーム9に固定するとともに、台車フレーム9を一対の環状のガイドレール5を介して回転フレーム3に取り付けてもよい。この場合、台車フレーム9には、各ガイドレール5の溝部5aに沿って移動する複数の、例えば4個の車輪13が取付けられており、従って台車フレーム9は合計8個の車輪13を有する。また、各ガイドレール5の溝部5aに沿って移動する4個の車輪13のうち、例えば1個の車輪13には、車輪13を回転駆動する圧縮機駆動部8が連結されており、これによって台車フレーム9は、回転フレーム3の第1回転軸Rと平行な自転軸Rの周りで自転することができる。このことにより、回転フレーム3が回転する間、台車フレーム9に固定された冷凍機用圧縮機7の姿勢を常に一定に保つことができる。
【0042】
第2の実施の形態
次に、図5乃至図7を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。ここで、図5は、本発明の第2の実施の形態における冷凍機用圧縮機を示す正面図である。図6(a)は、図5に示す冷凍機用圧縮機をA−A方向から見た横断面図であり、図6(b)は、図5に示す冷凍機用圧縮機をB−B方向から見た縦断面図である。図7は、本発明の第2の実施の形態において、車輪が歯車からなる変形例を示す図である。
【0043】
図5乃至図7に示す第2の実施の形態は、各ガイドレールがその側面に断面凹状の溝部を有し、当該溝部に沿って冷凍機用圧縮機に取り付けられた車輪が移動する点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至4に示す第1の実施の形態と略同一である。図5乃至図7に示す第2の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0044】
図5および図6に示すように、一対のガイドレール5は、その側面に断面凹状の溝部5bを有しており、また冷凍機用圧縮機7には、各ガイドレール5の溝部5bに沿って移動する複数の、例えば4個の車輪13が取付けられており、従って冷凍機用圧縮機7は合計8個の車輪13を有する。各ガイドレール5の溝部5bに沿って移動する4個の車輪13のうち、例えば1個の車輪13には、車輪13を回転駆動する圧縮機駆動部8が連結されている。この圧縮機駆動部8は、回転フレーム3が第1角速度で回転する間、冷凍機用圧縮機7が回転フレーム3に対して第1角速度とは大きさが同一で向きが逆である第2角速度で自転するよう、制御装置17により制御される。これによって、回転フレーム3が回転する間、冷凍機用圧縮機7の姿勢を常に一定に保つことができる。
【0045】
なお本実施の形態において、冷凍機用圧縮機7が、回転フレーム3に、回転フレーム3に固定された一対の環状のガイドレール5を介して取付けられている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図5において二点鎖線で示すように、冷凍機用圧縮機7を台車フレーム9に固定するとともに、台車フレーム9を一対の環状のガイドレール5を介して回転フレーム3に取り付けてもよい。この場合、台車フレーム9には、各ガイドレール5の溝部5bに沿って移動する複数の、例えば4個の車輪13が取付けられており、従って台車フレーム9は合計8個の車輪13を有する。また、各ガイドレール5の溝部5bに沿って移動する4個の車輪13のうち、例えば1個の車輪13には、車輪13を回転駆動する圧縮機駆動部8が連結されており、これによって台車フレーム9は、回転フレーム3の第1回転軸Rと平行な自転軸Rの周りで自転することができる。このことにより、回転フレーム3が回転する間、台車フレーム9に固定された冷凍機用圧縮機7の姿勢を常に一定に保つことができる。
【0046】
また本実施の形態および前述の第1の実施の形態において、ガイドレール5の内周面に設けられた溝部5aまたはガイドレール5の側面に設けられた溝部5bに沿って移動する車輪13が、冷凍機用圧縮機7または台車フレーム9に取り付けられている例を示した。この場合、図7に示すように、車輪13は歯車13aからなり、ガイドレール5の溝部5aまたは溝部5bに、この歯車13aと係合する凹凸部5cを形成してもよい。これによって、歯車13aをガイドレール5の溝部5aまたは溝部5bに沿ってより確実に移動させることができる。
【0047】
また本実施の形態および前述の第1の実施の形態において、冷凍機用圧縮機7は、回転フレーム3に、回転フレーム3の第1回転軸Rと平行な自転軸Rの周りで自転可能に取付けられており、また冷凍機用圧縮機7は、回転フレーム3が第1角速度で回転する間、回転フレーム3に対して第1角速度とは大きさが同一で向きが逆である第2角速度で自転するよう圧縮機駆動部8により駆動される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、冷凍機用圧縮機7に働く重力が、冷凍機用圧縮機7が車輪13を介してガイドレール5から受ける摩擦力よりも十分大きい場合、圧縮機駆動部8は、回転フレーム3が回転を始めた直後と回転を終えた直後のみ、冷凍機用圧縮機7がその姿勢を一定に保つよう冷凍機用圧縮機7の車輪13を駆動してもよい。この場合、回転フレーム3の回転中、圧縮機駆動部8は、冷凍機用圧縮機7の車輪13がガイドレール5に対して自由に回転するよう車輪13を支持する。車輪13がガイドレール5に対して自由に回転することにより、回転フレーム3の回転中、冷凍機用圧縮機7は重力によりその姿勢を一定に保つことができる。このようにして、より少ない駆動力により、冷凍機用圧縮機7の姿勢を常に一定に保つことができる。
【0048】
第3の実施の形態
次に、図8を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。ここで、図8(a)は、本発明の第3の実施の形態における冷凍機用圧縮機を示す正面図であり、図8(b)は、本発明の第3の実施の形態における冷凍機用圧縮機を示す側面図である。
【0049】
図8に示す第3の実施の形態は、冷凍機用圧縮機が、環状のガイドレール内を回転する回転駆動体に固定され、環状のガイドレールと回転駆動体との間に、圧縮機駆動部により駆動される駆動車輪が介在されている点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至4に示す第1の実施の形態と略同一である。図8に示す第3の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0050】
図8(a)に示すように、冷凍機用圧縮機7は、一対の環状のガイドレール5内を回転する一対の回転駆動体23の内側において、支持機構24により固定されている。この回転駆動体23は、冷凍機用圧縮機7を支持する内周部23aと、環状のガイドレール5と向かい合う外周部23bとからなる。そして図8(a)(b)に示すように、各回転駆動体23とガイドレール5との間には、ガイドレール5により回動自在に支持される駆動車輪14が介在されている。この駆動車輪14は、圧縮機駆動部8により駆動される。また各回転駆動体23とガイドレール5との間には、ガイドレール5により回動自在に支持されるサポート車輪15も介在されている。このサポート車輪15は、回転駆動体23を支持するとともに、回転駆動体23が回転するのを補助する。
【0051】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0052】
はじめに制御装置17は、所望の角度で治療用ベッド21上の患者に対して荷電粒子ビームを照射するよう、回転フレーム支持駆動装置25を制御する。この場合の回転フレーム支持駆動装置25の作用は、図1乃至図4に示す第1の実施の形態の場合と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0053】
この間、制御装置17は、冷凍機用圧縮機7が回転フレーム3に対して第1角速度とは大きさが同一で向きが逆である角速度(第2角速度)、すなわち−360度/分で自転するよう圧縮機駆動部8を制御する。すなわち圧縮機駆動部8は、各ガイドレール5に設けられた駆動車輪14を回転駆動し、これによって、各ガイドレール5内に設けられた回転駆動体23が回転(自転)する。この結果、回転駆動体23に固定された冷凍機用圧縮機7は、回転フレーム3に固定された一対の環状のガイドレール5に対して第2角速度で自転する。このことにより、回転フレーム3が第1角速度で回転する間、冷凍機用圧縮機7は第2角速度で回転するため、冷凍機用圧縮機7の姿勢を常に一定に保つことができる。
【0054】
このように本実施の形態によれば、冷凍機用圧縮機7は、一対の環状のガイドレール5内を回転する一対の回転駆動体23に、支持機構24により固定されている。この回転駆動体23は、回転フレーム3が第1角速度で回転するとき、回転フレーム3に対して第1角速度とは大きさが同一で向きが逆である第2角速度で自転するよう圧縮機駆動部8により駆動される。このことにより、回転フレーム3が回転する間、回転駆動体23に固定された冷凍機用圧縮機7の姿勢を常に一定に保つことができる。
【0055】
なお本実施の形態において、冷凍機用圧縮機7が、一対の環状のガイドレール5内を回転する一対の回転駆動体23の内側に固定されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図8(b)において二点鎖線で示すように、冷凍機用圧縮機7を台車フレーム9に固定するとともに、台車フレーム9を一対の環状のガイドレール5内を回転する一対の回転駆動体23の内側に固定してもよい。
【0056】
また本実施の形態において、各回転駆動体23とガイドレール5との間に、回転駆動体23を回転駆動する駆動車輪14と、回転駆動体23を支持するサポート車輪15とが介在されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、サポート車輪15を駆動車輪14に置き換えてもよい。これによって、回転駆動体23を回転駆動する力をより大きくすることができる。また、図8(b)において二点差線で示すように、各回転駆動体23とガイドレール5との間に、駆動車輪14またはサポート車輪15を複数設けてもよい。
【0057】
また本実施の形態において、前述の第1または第2の実施の形態の場合と同様に、駆動車輪14およびサポート車輪15は歯車(図示せず)から形成され、回転駆動体23の外周部23bに、この歯車と係合する凹凸部(図示せず)が形成されていてもよい。これによって、回転駆動体23をより確実に回転させることができる。
【0058】
第4の実施の形態
次に、図9を参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。ここで、図9は、本発明の第4の実施の形態における冷凍機用圧縮機を示す側面図である。
【0059】
図9に示す第4の実施の形態において、冷凍機用圧縮機の下方に、各ガイドレールの溝部に沿って移動する複数の車輪と、冷凍機用圧縮機に作用する加速度に応じて慣性力を発生させる慣性質量体とが取り付けられている。図9に示す第4の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0060】
図9に示すように、冷凍機用圧縮機7は、回転フレーム3に、回転フレーム3の回転軸Rと平行な第2回転軸R’の周りで回転可能となるよう取付けられている。具体的には、回転フレーム3に一対の環状のガイドレール5が取り付けられ、冷凍機用圧縮機7は、この一対の環状のガイドレール5内に回転可能に取り付けられている。この一対のガイドレール5は、その内周面に断面凹状の溝部5aを有しており、また冷凍機用圧縮機7の下方には、各ガイドレール5の溝部5aに沿って移動する複数、例えば2個の車輪13が取付けられている。従って冷凍機用圧縮機7は合計4個の車輪13を有する。
【0061】
また冷凍機用圧縮機7の底面には一対の支持板31が固定され、この一対の支持板31に、冷凍機用圧縮機7に作用する加速度に応じて、当該加速度と逆向きに慣性力を発生させるおもり(慣性質量体)33が、一対の支持板31に固定されたバネ32を介して取り付けられている。後述するように、冷凍機用圧縮機7に所定の加速度が作用するとき、おもり33がこの加速度と逆向きの慣性力を発生させ、これによって、冷凍機用圧縮機7の姿勢を安定に保つことができる。
【0062】
また図1乃至図4に示す第1の実施の形態の場合と同様に、冷凍機用圧縮機7は、その重心Cが冷凍機用圧縮機7の第2回転軸R’から鉛直方向下向きに延びる線R上に位置するよう回転フレーム3に取り付けられている(図9参照)。このことにより、冷凍機用圧縮機7の姿勢をより安定に保つことができる。
【0063】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0064】
はじめに制御装置17は、所望の角度で治療用ベッド21上の患者に対して荷電粒子ビームを照射するよう、回転フレーム支持駆動装置25を制御する。この場合の回転フレーム支持駆動装置25の作用は、図1乃至図4に示す第1の実施の形態の場合と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0065】
この間、図9に示すように、回転フレーム3に固定された一対の環状のガイドレール5もまた、回転フレーム3と同期して回転フレーム3の第1回転軸Rの周りを公転する。この場合、例えば図9に示すように、ガイドレール5は矢印aで示す向きに回転している。ところで上述のように、冷凍機用圧縮機7は、ガイドレール5に、ガイドレール5の溝部5aに沿って移動する2個の車輪13を介して取り付けられている。この場合、冷凍機用圧縮機7は、冷凍機用圧縮機7に作用する重力によって、冷凍機用圧縮機7の姿勢をほぼ一定に保つように、ガイドレール5に対して第2回転軸R’の周りで回転する。この間、冷凍機用圧縮機7の重心Cは、第2回転軸R’ から鉛直方向下向きに延びる線R上に常に位置している。
【0066】
ところで、冷凍機用圧縮機7がガイドレール5に対して第2回転軸R’の周りで回転する間、ガイドレール5の溝部5aと冷凍機用圧縮機7の車輪13との間には、図9に示すように摩擦力b、bが生じる。この摩擦力b、bのため、冷凍機用圧縮機7に、冷凍機用圧縮機7の姿勢を傾けるよう加速度bが作用する。このとき、冷凍機用圧縮機7の下方に取り付けられたおもり33は、冷凍機用圧縮機7に作用する加速度bに応じて、当該加速度bと逆向きに慣性力cを発生させる。このことにより、摩擦力b、bによって加速度bが作用して冷凍機用圧縮機7の姿勢が傾けられたとしても、慣性力cが加速度bを打ち消すことにより、その傾きをより小さくすることができる。
【0067】
このように本実施の形態によれば、冷凍機用圧縮機7は、回転フレーム3に固定されたガイドレール5に、ガイドレール5の溝部5aに沿って移動する2個の車輪13を介して取り付けられている。この場合、冷凍機用圧縮機7は、冷凍機用圧縮機7に作用する重力によって、冷凍機用圧縮機7の姿勢をほぼ一定に保つように、ガイドレール5に対して第2回転軸R’の周りで回転する。このことにより、回転フレーム3が回転する間、冷凍機用圧縮機7の姿勢をほぼ一定に保つことができる。
【0068】
また本実施の形態によれば、冷凍機用圧縮機7の下方には、冷凍機用圧縮機7に作用する加速度に応じて慣性力を発生させるおもり33が取り付けられている。このため、ガイドレール5の溝部5aと冷凍機用圧縮機7の車輪13との間に生じる摩擦力によって冷凍機用圧縮機7の姿勢が傾けられたとしても、その傾きをより小さくすることができる。
【0069】
なお本実施の形態において、冷凍機用圧縮機7が、回転フレーム3に、回転フレーム3に固定された一対の環状のガイドレール5を介して取り付けられている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図1乃至図4に示す第1の実施の形態の場合と同様に、冷凍機用圧縮機7を台車フレーム9に固定するとともに、台車フレーム9を一対の環状のガイドレール5を介して回転フレーム3に取り付けてもよい。
【0070】
第5の実施の形態
次に、図10を参照して、本発明の第5の実施の形態について説明する。ここで、図10(a)は、本発明の第5の実施の形態における回転照射治療装置を示す部分破断正面図であり、図10(b)は、本発明の第5の実施の形態における冷凍機用圧縮機を示す側面図である。
【0071】
図10に示す第5の実施の形態において、冷凍機用圧縮機7が、回転フレーム3に、回転フレーム3の第1回転軸Rと平行な第2回転軸R’の周りで吊設手段34により回転可能となるよう取付けられている。図10に示す第5の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0072】
図10(a)に示すように、冷凍機用圧縮機7は、回転フレーム3に、回転フレーム3の第1回転軸Rと平行な第2回転軸R’の周りで回転可能となるよう取付けられている。具体的には、冷凍機用圧縮機7は、吊設手段34により回転フレーム3に吊り下げられている。図10(b)に示すように、この吊設手段34は、回転フレーム3の第1回転軸Rと平行な第2回転軸R’の周りで回転可能となるよう回転フレーム3に取付けられた取付具34aを有しており、冷凍機用圧縮機7は、この取付具34aを第2回転軸R’として回転フレーム3に対して回転することができる。また冷凍機用圧縮機7の下方には、図9に示す第4の実施の形態の場合と同様に、冷凍機用圧縮機7に作用する加速度に応じて、当該加速度と逆向きに慣性力を発生させるおもり33が取り付けられている。
【0073】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0074】
はじめに制御装置17は、所望の角度で治療用ベッド21上の患者に対して荷電粒子ビームを照射するよう、回転フレーム支持駆動装置25を制御する。この場合の回転フレーム支持駆動装置25の作用は、図1乃至図4に示す第1の実施の形態の場合と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0075】
この間、図10に示すように、冷凍機用圧縮機7は、冷凍機用圧縮機7に作用する重力によって、冷凍機用圧縮機7の姿勢をほぼ一定に保つように、回転フレーム3に対して第2回転軸R’の周りで回転する。この間、冷凍機用圧縮機7の重心Cは、第2回転軸R’ から鉛直方向下向きに延びる線R上に常に位置している。
【0076】
ところで、冷凍機用圧縮機7が回転フレーム3に対して第2回転軸R’の周りで回転する間、取付具34aと回転フレーム3との間には摩擦力が生じる。この摩擦力のため、冷凍機用圧縮機7に、冷凍機用圧縮機7の姿勢を傾けるよう加速度が作用する。このとき、冷凍機用圧縮機7の下方に取り付けられたおもり33は、冷凍機用圧縮機7に作用する加速度に応じて、当該加速度と逆向きに慣性力を発生させる。このことにより、摩擦力によって加速度が作用して冷凍機用圧縮機7の姿勢が傾けられたとしても、慣性力が加速度を打ち消すことにより、その傾きをより小さくすることができる。
【0077】
このように本実施の形態によれば、冷凍機用圧縮機7は、回転フレーム3に、回転フレーム3の第1回転軸Rと平行な第2回転軸R’の周りで吊設手段34により回転可能となるよう取付けられている。この場合、冷凍機用圧縮機7は、冷凍機用圧縮機7に作用する重力によって、冷凍機用圧縮機7の姿勢をほぼ一定に保つように、回転フレーム3に対して第2回転軸R’の周りで回転する。このことにより、回転フレーム3が回転する間、冷凍機用圧縮機7の姿勢をほぼ一定に保つことができる。
【0078】
また本実施の形態によれば、冷凍機用圧縮機7の下方には、冷凍機用圧縮機7に作用する加速度に応じて慣性力を発生させるおもり33が取り付けられている。このため、取付具34aと回転フレーム3との間に生じる摩擦力によって冷凍機用圧縮機7の姿勢が傾けられたとしても、その傾きをより小さくすることができる。
【0079】
なお本実施の形態において、吊設手段34の取付具34aが冷凍機用圧縮機7の上方に設けられている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図10(b)において二点鎖線で示すように、取付具34aを、冷凍機用圧縮機7の上面に隣接して設けてもよい。また、取付具34aを、冷凍機用圧縮機7を貫通するよう設けてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 回転照射治療装置
2 粒子線照射部
3 回転フレーム
4 超電導偏向電磁石
5 ガイドレール
5a ガイドレール内周面の溝部
5b ガイドレール側面の溝部
5c 溝部の凹凸部
6 フレキシブルホース
7 冷凍機用圧縮機
8 圧縮機駆動部
9 台車フレーム
10a 一側の回転リング
10b 他側の回転リング
11a 一側のサポートロール
11b 他側のサポートロール
12 建屋
13 車輪
13a 歯車
14 駆動車輪
15 サポート車輪
17 制御装置
18 真空ダクト
18a 真空ダクトの直線部
18b 真空ダクトの湾曲部
19 冷凍機
20 治療室
21 治療用ベッド
23 回転駆動体
23a 回転駆動体の内周部
23b 回転駆動体の外周部
24 支持機構
25 回転フレーム支持駆動装置
26 四極電磁石
30 ビーム輸送装置
31 支持板
32 バネ
33 おもり
34 吊設手段
34a 取付具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に設けられた回転フレームと、
回転フレームに取付けられ、荷電粒子ビームを照射する粒子線照射部と、
回転フレームに取付けられ、粒子線照射部に荷電粒子ビームを導くビーム輸送装置と、
回転フレームを回動自在に支持するとともに、第1回転軸回りに回転フレームを回転させる回転フレーム支持駆動装置と、
前記ビーム輸送装置および前記回転フレーム支持駆動装置を制御する制御装置と、を備え、
前記ビーム輸送装置は、前記粒子線照射部に荷電粒子ビームを導くとともに直線部と湾曲部を有する真空ダクトと、真空ダクトの湾曲部の外周に設けられた超電導偏向電磁石とを有し、超電導偏向電磁石を冷却するため冷凍機が設けられるとともに、前記冷凍機へ圧縮冷媒を供給する冷凍機用圧縮機が設けられ、
前記冷凍機用圧縮機は、前記回転フレームに、回転フレームの第1回転軸と平行な第2回転軸の周りで、冷凍機用圧縮機の姿勢を一定に保つよう回転可能に取付けられていることを特徴とする回転照射治療装置。
【請求項2】
前記冷凍機用圧縮機の下方には、冷凍機用圧縮機に作用する加速度に応じて、当該加速度と逆向きに慣性力を発生させる慣性質量体が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転照射治療装置。
【請求項3】
前記冷凍機用圧縮機は、回転フレームに、前記第2回転軸を自転軸として圧縮機駆動部により自転可能に取付けられ、
前記制御装置は、前記回転フレームが第1角速度で回転するよう前記回転フレーム支持駆動装置を制御するとともに、前記冷凍機用圧縮機が前記回転フレームに対して第1角速度とは大きさが同一で向きが逆である第2角速度で自転するよう前記圧縮機駆動部を制御することを特徴とする請求項1に記載の回転照射治療装置。
【請求項4】
前記冷凍機用圧縮機は、前記回転フレームに、回転フレームに固定された環状のガイドレールを介して取付けられていることを特徴とする請求項3に記載の回転照射治療装置。
【請求項5】
前記冷凍機用圧縮機は台車フレームに固定され、
当該台車フレームは、前記回転フレームに、回転フレームに固定された環状のガイドレールを介して取付けられていることを特徴とする請求項3に記載の回転照射治療装置。
【請求項6】
前記ガイドレールは、その内周面に断面凹状の溝部を有し、
前記冷凍機用圧縮機に、当該溝部に沿って移動する車輪が取付けられ、この車輪は前記圧縮機駆動部により駆動されることを特徴とする請求項4に記載の回転照射治療装置。
【請求項7】
前記ガイドレールは、その側面に断面凹状の溝部を有し、
前記冷凍機用圧縮機に、当該溝部に沿って移動する車輪が取付けられ、この車輪は前記圧縮機駆動部により駆動されることを特徴とする請求項4に記載の回転照射治療装置。
【請求項8】
前記ガイドレールは、その内周面に断面凹状の溝部を有し、
前記台車フレームに、当該溝部に沿って移動する車輪が取付けられ、この車輪は前記圧縮機駆動部により駆動されることを特徴とする請求項5に記載の回転照射治療装置。
【請求項9】
前記ガイドレールは、その側面に断面凹状の溝部を有し、
前記台車フレームに、当該溝部に沿って移動する車輪が取付けられ、この車輪は前記圧縮機駆動部により駆動されることを特徴とする請求項5に記載の回転照射治療装置。
【請求項10】
前記車輪は歯車からなり、
前記ガイドレールの溝部に、当該歯車と係合する凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項6乃至9に記載の回転照射治療装置。
【請求項11】
前記冷凍機用圧縮機は、前記環状のガイドレール内を回転する回転駆動体に固定され、
環状のガイドレールと回転駆動体との間に、前記圧縮機駆動部により駆動される駆動車輪を介在させたことを特徴とする請求項4に記載の回転照射治療装置。
【請求項12】
前記台車フレームは、前記環状のガイドレール内を回転する回転駆動体に固定され、
環状のガイドレールと回転駆動体との間に、前記圧縮機駆動部により駆動される駆動車輪を介在させたことを特徴とする請求項5に記載の回転照射治療装置。
【請求項13】
前記冷凍機用圧縮機の重心は、前記冷凍機用圧縮機の自転軸から鉛直方向下向きに延びる線上にあることを特徴とする請求項3に記載の回転照射治療装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−213921(P2010−213921A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64618(P2009−64618)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】