説明

回転直動変換機構

【課題】回転直動機構を組立てる際に、複数のローラはホルダに対して互いに傾斜方向が異なっており、一端側をホルダに固定したあとに、他端側に固定することが困難である。
【解決手段】外周面にねじ部を有するロッド10と、ロッド10の外周面に設けられてロッド10に対して相対回転可能かつ相対軸移動可能に設けられたホルダ部材3と、ホルダ部材3に回転可能に支持されて外周面に環状溝を有し、かつロッド10の中心軸に対してねじ部のリード角以上の軸角でねじり配置されたローラ21〜23と、を備えた回転直動変換機構において、ローラ軸は両端がホルダ部材3に固定される構造であり、ホルダ部材3の一端には、ローラ軸の直径よりも大きな直径の穴を設け、ローラ取り付け部材33によりローラ軸を固定する構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転運動と直線運動の間で運動方向を変換する回転直動変換機構に関する。
【背景技術】
【0002】
回転直動変換機構として、外周面にねじ部を有するロッドと、ロッドの外周面に設けられてロッドに対して相対回転可能かつ相対軸移動可能に設けられたホルダ部材と、ホルダ部材に回転可能に支持されて外周面にロッドのねじ部と噛み合う環状溝を有する複数のローラをホルダ中心軸に対して傾斜させて配置し、ローラの回転を噛み合いによりロッドの直線運動へ変換するものがある。
【0003】
しかしながら、組立の際、複数のローラはホルダに対して互いに傾斜方向が異なっており、一端側をホルダに固定したあとに、他端側に固定することが困難であるという課題がある。それに対してローラの端部のみ傾斜をなくした形にするなどの方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US3101623
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の方式では形状が複雑になり、コストが高くなるという課題があった。そこで本発明の目的は組立を容易にできる構造を低コストでできる回転直動機構を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、外周面にねじ部を有するロッドと、ロッドの外周面に設けられてロッドに対して相対回転可能かつ相対軸移動可能に設けられたホルダ部材と、ホルダ部材に回転可能に支持されて外周面にねじ部と噛み合う環状溝を有し、かつロッドの中心軸に対してねじ部のリード角前後の軸角でねじり配置されたローラと、を備えた回転直動変換機構において、ローラは中空のローラ環状溝部とローラの中空部にはローラ軸が環状溝部と相対回転可能に配置され、ローラ軸は両端がホルダ部材に固定される構造であり、ホルダ部材の一端には、前記ローラ軸の端面の直径よりも大きな直径の穴を設け、ローラ取り付け部材により固定される構造とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、組立が容易で、低コストの回転直動変換機構とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態の回転直動変換機構の縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態のローラとホルダ部材のサブアセンブリの側面図であり一部は断面を示した図である。
【図3】本発明の実施の形態のローラの側面図であり,一部は断面を示した図である。
【図4】本発明の実施の形態のローラの一端部とホルダの取り付け部を示した図である。
【図5】本発明の実施の形態のローラの一端部とホルダの取り付け部を示した図である。
【図6】本発明の実施の形態のローラの一端部とホルダの取り付け部を示した図である。
【図7】本発明の実施の形態のローラの一端部とホルダの取り付け部を示した図である。
【図8】本発明の実施の形態の回転直動変換機構の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の回転直動変換機構の第一実施例を図1乃至図8を用いて説明する。
【0010】
図1は本発明の第一実施例の縦断面図、図2はローラとホルダ部材のサブアセンブリの側面図、図3はローラの側面図、図4から図7はローラとホルダの取り付け部分の拡大図、図8は本実施例に係る回転直動変換機構の動作を説明する図である。
【0011】
最初に、本実施例の回転直動変換機構の構成を説明する。図1に示すように本回転直動変換機構1は、主にモータ5,左ケーシング6aと右ケーシング6bから成るケーシング6,複数のローラ21から23,ロッド10などから成り、ローラ21から23はモータ5により発生した力でケーシングに対して回転し、ローラ21から23に設けた環状溝とロッド10のねじ部の噛み合いによりロッドが直動する構成である。
【0012】
つぎに具体的な構成を説明する。ローラ21〜23とホルダ部材3とから構成されるサブアセンブリ30は、左ホルダ端板3bが左ホルダラジアル軸受3fと左ホルダスラスト軸受3eを装着した左ケーシング6aに挿入されており、左ケーシング6aに対して回転可能な状態で固定されている。同様に右ホルダラジアル軸受3gと右ホルダスラスト軸受3hが右ケーシング6bに挿入されており、サブアセンブリ30は右ケーシング6bに対して回転可能な状態で装着されている。左右ケーシングはねじ等により接続され、ケーシング6を形成している。
【0013】
さらに、右ケーシング6bはステータ5bが圧入されており、また、ホルダ部材3にはロータ5aがステータ5bと対抗する位置に配置されており、ステータ5bとロータ5aでモータ5が形成される。
【0014】
つぎに、ローラ21から23とホルダ部材3から構成されるサブアセンブリ30について図2,図3を用いて説明する。なお、ローラ21から23はローラ21と同様の構成であり、ローラ21で以下説明する。ローラ21は中心軸部に貫通穴をもち、外周面に環状溝をもつローラ環状部21aとその貫通穴部に配置され、ホルダ部材3に固定配置されるローラ軸21bとから構成される。ローラ環状部21aの右側にはラジアル軸受21eとスラスト軸受21fを配置し、ローラ軸21bに対してローラ環状部21aは回転自由に接続される。またローラ軸21bの右側には右ホルダ端板3cがローラロックナット36により固定される。このときローラ21と、ホルダ3の中心軸とはロッド10のねじり角前後の軸角で傾斜させて配置する。
【0015】
したがってホルダ部材3に対してローラ環状部21aは回転自由に固定される。左ホルダ端板3bにはこのローラ軸21bが挿入できるようにローラ軸21bの端面の直径よりも適度に大きな直径の貫通穴35をローラ軸21bと平行に設ける。そして左ローララジアル軸受21gを嵌合したあと、貫通穴35を埋め、ローラ軸21bの左側に挿入して左ホルダ部材3bに固定するローラ取り付け部材33が埋め込まれ、さらにボルト34等により左ホルダ部材3bとローラ軸21bとが固定配置される。
【0016】
このような組立方法により、右ホルダ端板3bに対して異なる方向に傾斜している複数のローラ21から23を左ホルダ端板3bに通すことが容易になる。
【0017】
このとき、ローラ軸21bの左側は最左端の直径が小さくなるようにテーパ状に形成するとよい。
【0018】
このようにすることで貫通穴35の直径を小さくすることが可能であり、ホルダ全体を小さくすることが可能であり、また穴の直径を小さくできるため強度を増すことも可能である。
【0019】
また、図4から図6にローラ軸21bの左ホルダ端板3bへの挿入手順および必要な直径について示す。図4に示すように軸角をθとし、ローラ軸21bの一端側に設けたテーパの中心軸となす角をαとし、ローラ軸21bの端面の直系をDとする。
【0020】
まず、θ≧αの場合について考える。ローラ軸21bは図の右側が上方へ傾斜させるものとした場合を考える。貫通穴はローラ軸21bに平行に設けるものとする。図4に示すようにローラ軸21bの左端面で、図の下側の点をA点としたとき、A点が貫通穴の右側最下部に重なるように挿入する。つぎに、図5に示すように、ローラ軸21bの中心軸を左ホルダ端板3bへの挿入深さXだけ挿入する。このとき、ローラ軸21bの上端と貫通穴のB点が接触するような大きさに貫通穴の直径Hを決めるとよい。このあと、図6に示すように、ローラ軸21bの中心軸と貫通穴35の中心軸が一致するように左ホルダ端板3bを回転させる。
【0021】
ここでHの大きさについて説明する。
【0022】
図5の状態で貫通穴35をローラ軸21bの中心軸を境に上側をH2、下側をH1とに分離して考える。
【0023】
このとき
H1=(D/2)+X1×sin(θ) …(1)
となる。ここでX1はローラ軸21bの左下端部の左ホルダ端板3bへの挿入深さである。
【0024】
またH2は
H2=(D/2)+X2×sin(α)/cos(θ+α) …(2)
である。ここでX2はローラ軸21bの左上端部の左ホルダ端板3bへの挿入深さである。
【0025】
X1=X−D×sin(θ)/2 …(3)
X2=X+D×sin(θ)/2 …(4)
であることから、H(=H1+H2)は
H=D+(X−D/2×sin(θ))×sin(θ)
+(X+D/2×sin(θ))×sin(α)/cos(θ+α) …(5)
となる。
【0026】
つぎに、θ<αの場合を考える。
【0027】
図7の状態で図5と同様に貫通穴35をローラ軸21bの中心軸を境に上側をH2、下側をH1とに分離して考える。
【0028】
このとき
H1=(D/2)+X1×sin(α)/cos(α−θ) …(6)
となる。ここでX1はローラ軸21bの左端面の下端部の左ホルダ端板3bへの挿入深さである。
【0029】
H2=(D/2)+X2×sin(α)/cos(θ+α) …(7)
である。ここでX2はローラ軸21bの左端面の状端部の左ホルダ端板3bへの挿入深さである。
【0030】
X1=X−D×sin(θ)/2 …(8)
X2=X+D×sin(θ)/2 …(9)
であることから、H(=H1+H2)は
H=D+(X−D×sin(θ)/2)×sin(α)/cos(α−θ)
+(X+D/2×sin(θ))×sin(α)/cos(θ+α) …(10)
これにより貫通穴35の直径を最小限にすることが可能となる。
【0031】
最後にローラ取り付け部材33によりローラ軸21bを固定する。ここで左ホルダ端板3bへの穴を貫通穴としたが必ずしも貫通する必要はなく、貫通しない挿入穴としてもよい。貫通穴とした場合には、取り付け部材を貫通穴の反ローラ環状溝部側から挿入可能な構造とすることができ、組立が容易になる。
【0032】
次に、本実施形態の動作について、図8を用いて動作を説明する。図8は、動作原理を説明するため、ロッド10の外周面を展開して示した図である。今、モータが、図8において、上から下へ回転する場合に限定して考える。ホルダ部材3がロッド軸を中心に回転し、これに保持されている3本のローラもモータと同一回転を行う。よって、図8では、ローラは上(A位置)から下(B位置)へ垂直に移動する。図8の太線は、ローラがA位置にある場合の右ロッドねじ山フランクを示す。そして、このA位置から、ローラがδラジアン(rad)だけ公転してロッド10の円周上をδ・(ロッド軸半径)だけ動いてB位置に到達した場合を考える。
【0033】
このとき、右ローラ環状溝面の位置は、ロッド軸方向には移動せず、展開図上では上下方向にのみ移動する。よって、ロッドが軸方向(展開図上では左右方向)に、δ・(ロッド軸半径)・tan(ロッドねじリード角)だけ動いた場合、右ロッドねじ山フランクが左に動いて破線の位置となり、ローラ環状溝とロッドねじ山の噛み合いを保つ。このようにして回転直動変換が生じる。
【0034】
また、モータの1回転あたりのロッド移動量Mは、δを2πとして、M=2π・(ロッド軸半径)・tan(ロッドねじリード角)となる。この式から明らかなように、ロッドねじリード角を小さくすることにより、減速割合を増大できることが分かる。また、噛み合い箇所は、ローラ側の環状溝面とロッド側のねじ山フランクであり、曲率の小さい面同士の噛み合いとなる。よって、噛み合い時の弾性変形によって広範囲で接触が起きるため、発生する応力の最大値(ヘルツ応力)が抑制される。このために、本実施形態の回転直動変換機構では、噛み合い一箇所あたりの負荷荷重が増大し、コンパクトながら、大きな推力が発生可能になるという効果がある。
【符号の説明】
【0035】
1 回転直動変換機構
3 ホルダ
3b 左ホルダ端板
3c 右ホルダ端板
5 モータ
6 ケーシング
10 ロッド
21〜23 ローラ
21a ローラ環状部
21b ローラ軸
33 ローラ取り付け部材
35 貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にねじ部を有するロッドと、前記ロッドの外周側に設けられて前記ロッドに対して相対回転可能かつ相対軸移動可能に設けられたホルダ部材と、前記ホルダ部材に回転可能に支持されて外周面に前記ねじ部と噛み合う環状溝を有し、かつ前記ロッドの中心軸に対して前記ねじ部のリード角前後の軸角でねじり配置されたローラと、を備えた回転直動変換機構において、
前記ローラは中空のローラ環状溝部とローラ軸からなり、前記ローラ軸は前記ローラ環状溝部の中空部に前記環状溝部と相対回転可能に配置され、前記ローラ軸は両端がホルダ部材に固定される構造であり、前記ホルダ部材の一端には、前記ローラ軸の直径よりも大きな直径のホルダ挿入穴を設け、前記ホルダ挿入穴の内周面と前記ローラ軸の外周面の間を埋めるローラ取り付け部材により固定されたことを特徴とする回転直動変換機構。
【請求項2】
請求項1に記載の回転直動変換機構において、前記ホルダ挿入穴を前記ホルダ部材の一端を貫通する貫通穴とし、前記取り付け部材を前記貫通穴の反ローラ環状溝部側から挿入可能な構造とすることを特徴とする回転直動変換機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転直動変換機構において、前記ローラ軸の一端側がテーパ状に形成されたことを特徴とする回転直動変換機構。
【請求項4】
請求項3に記載の回転直動変換機構において、前記軸角をθ、前記ローラ軸の端面の直径をD、前記ローラ軸の中心軸におけるホルダへの挿入深さをx、前記ローラ軸の一端側に設けたテーパ部の中心軸となす角度をαとしたとき、前記軸角θが前記ローラ軸の一端側に設けたテーパ部の中心軸となす角度αよりも大きく、前記ホルダ挿入穴の直径がH=D+(x−D/2×sin(θ))×sin(θ)+(x+D/2×sin(θ))×sin(θ)/cos(θ+α)より大としたことを特徴とする回転直動変換機構。
【請求項5】
請求項2に記載の回転直動変換機構において、前記軸角をθ、前記ローラ軸の端面の直径をD、前記ローラ軸の中心軸におけるホルダへの挿入深さをx、前記ローラ軸の一端側に設けたテーパ部の中心軸となす角度をαとしたとき、前記軸角θが前記ローラ軸の一端側に設けたテーパ部の中心軸となす角度αよりも小さく、前記ホルダ挿入穴の直径がH=D+(x−D/2×sin(θ))×sin(θ)/cos(α−θ)+(x+D/2×sin(θ))×sin(θ)/cos(θ+α)より大としたことを特徴とする回転直動変換機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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