説明

回転貫入可能な木製支持杭及びその支持杭を用いた地盤補強工法

【課題】環境への影響が少ない木製杭を用い、回転貫入が可能で木製杭本体の座屈強度を上げることができる支持杭の提供及び、その支持杭を用いた地盤補強工法を提供すること。
【解決手段】木製杭と、前記木製杭に付設した貫入補助具とを具備した支持杭であって、前記木製杭は先端に向けてテーパを有し、前記貫入補助具は、前記木製杭の軸方向所定位置に嵌合掛止可能に構成した嵌合輪体と、前記嵌合輪体の外周に付設される螺旋羽根と、を有する支持杭を用い、前記支持杭を回転させることにより、排土の発生を抑制しつつ木製杭を貫入補助具によって締め付けて拘束しながら貫入することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転貫入を可能とした支持杭に関し、特に松杭などの木製杭に貫入補助具を付設した支持杭及びその支持杭を用いた地盤補強工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、小規模住宅における地盤改良はめざましい発展を遂げている。そのなかでも今日の住宅事情を反映して、立地条件の不良な軟弱層における支持杭タイプの需要が目立ってきている。
【0003】
支持杭の種類は多種多様であるが、特に木製杭(生松丸太杭)は、鋼管杭やコンクリートパイルと比較してコストが非常に安いほか、自然材であることから環境にも優しく周辺の支持力も大きいことから需要が高い。
【0004】
従来、木製杭の施工は先行掘りを行った後、重錘により貫入するものが一般的である。先行掘りは、排土が発生するほか、貫入時にも騒音、振動が発生することが問題点としてあげられている。
一方で鋼管杭は無振動施工が可能で騒音や振動の問題は少ないがコストが高いという問題があった。
近年は、低排土で、低騒音、低振動を実現する回転貫入が可能な木製杭が求められていた。
【0005】
なお、特許文献1には鋼管の外周に翼部材を設けた翼ユニットを、杭本体の外側に単数あるいは複数とりつけた翼付き杭と、前記翼付き杭において、翼ユニットと杭本体の取り付けにボルトを用いることを特徴とする翼付き杭が開示されている。
【特許文献1】特開2001−317049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示す翼付き杭には、以下のような問題があった。
<1>有機物である鋼管杭を用いる場合、環境面の影響が大きいほか、工費も高いため、簡易に実施できない。
<2>翼ユニットを杭本体に取り付ける際に、ボルト接合や、溶接によって固定するため、取り付けに時間がかかるほか、手間が大きい。
【0007】
従って、本発明の目的は、環境への影響が少ない木製杭を用い、回転貫入が可能で木製杭本体の座屈強度を上げることができる支持杭の提供及び、その支持杭を用いた地盤補強工法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、木製杭と、前記木製杭に付設した貫入補助具とを具備した支持杭であって、前記木製杭は先端に向けてテーパを有し、前記貫入補助具は、前記木製杭の軸方向所定位置に嵌合掛止可能に構成した嵌合輪体と、前記嵌合輪体の外周に付設される螺旋羽根と、を有することを特徴とする、支持杭を提供するものである。
【0009】
また、本願の第2発明は、前記嵌合輪体はテーパを有する筒形状を呈することを特徴とする、本願の第1発明に記載の支持杭を提供するものである。
【0010】
また、本願の第3発明は、前記嵌合輪体は直筒形状を呈することを特徴とする、本願の第1発明に記載の支持杭を提供するものである。
【0011】
また、本願の第4発明は、前記螺旋羽根が前記嵌合輪体の外周に間欠的に形成されていることを特徴とする、本願の第1発明乃至第3発明の何れかに記載の支持杭を提供するものである。
【0012】
また、本願の第5発明は、前記螺旋羽根が前記嵌合輪体の外周の全面に連続的に形成されていることを特徴とする、本願の第1発明乃至第3発明の何れかに記載の支持杭を提供するものである。
【0013】
また、本願の第6発明は、支持杭を貫入して地盤の補強を行う地盤補強工法であって、木製杭の軸方向所定位置に嵌合掛止可能に構成した嵌合輪体と、該嵌合輪体の外周に付設され木製杭の軸方向に対して螺旋形状を呈する螺旋羽根とを有する貫入補助具を、木製杭に付設して支持杭を形成し、前記支持杭を回転させ、排土の発生を抑制しつつ木製杭を貫入補助具によって締め付けて拘束しながら貫入することを特徴とする、地盤補強工法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
<1>従来重錘により貫入していた木製杭の回転貫入を可能とし、先行掘りが不要となり、排土の発生をなくすことができる。
<2>木製杭特有のテーパを利用することにより、貫入の推進力によって貫入補助具の嵌合輪体が木製杭を締め付け、支持杭本体の座屈強度が向上する。
<3>従来、螺旋鋼管杭を用いていた現場に、本発明の支持杭を利用することができ、環境への影響を軽減することができるほか、コストの軽減を図ることができる。
<4>鋼管と比較して比重が小さいため、浮力による支持力の向上を図ることができる。
<5>木製杭に貫入補助具を取り付けないバラバラの状態で搬送することができるため、搬送が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0016】
<1>全体構成
図1に本発明の支持杭の平面図を示す。
本発明の支持杭1は、木製杭2と、前記木製杭2に付設した貫入補助具3とを具備して構成される。
以下に各構成部品を説明する。
【0017】
<2>木製杭2
木製杭2は、本発明を実施するにあたって特別な加工を要しないため、従来の松杭をそのまま流用することができる。
地質などの諸条件によっては、支持杭1の回転貫入における初期貫入を補助する目的で木製杭2の先端に従来知られる先端チップ21を取り付けておいてもよい。
【0018】
<3>貫入補助具3
図2に貫入補助具3の斜視図を示す。貫入補助具3は、前記木製杭2に嵌合して取り付け可能に構成した嵌合輪体31と、前記嵌合輪体31の外周に付設される螺旋羽根32と、からなる。
【0019】
<4>嵌合輪体31
嵌合輪体31は、筒型形状を呈してあり、材質は特に限定されるものではないが、望ましくは、環境への影響が少ない有機製の材質、例えば杭本体と同様に木製であることが好ましい。
嵌合輪体31の内側は、木製杭2の外径及びテーパに対応し、木製杭2の先端から嵌合して取り付け可能に構成する。
より具体的には、嵌合輪体31の内径は、木製杭2が有する外径の最大値より小さく、嵌合時に木製杭2の途上で掛止されるように形成する。
なお、嵌合輪体31に筒型形状を開放可能とするようにヒンジ部を設け、木製杭に締着することによって取り付けてもよい。
【0020】
また、嵌合輪体31の内径を木製杭2の外径の範囲内で予め調節することにより、木製杭2の任意の軸方向位置に取り付けることができ、一本の木製杭2に複数個の貫入補助具を設置するように構成してもよい。
嵌合輪体31の内側のテーパ角度は、木製杭2のテーパ角度と対応させることによって、木製杭2と嵌合輪体31との嵌合を円滑にすることができる。
なお、嵌合輪体31を木製杭2の外径の範囲内の内径を有する直円形状に形成することも可能である。
【0021】
<5>螺旋羽根32
螺旋羽根32は、図1に示すように、螺旋形状の羽根であってもよいし、半円形や矩形の羽根を互いに交差させる形状など、多種多様な形状が挙げられる。すなわち、回転貫入が可能な形状であればよく特に限定されるものではない。
また螺旋羽根32は、嵌合輪体31の外周全面に連続的に設けてもよいし、間欠的に設けてもよい。
【0022】
次に、本発明に係る貫入補助具を用いた地盤補強工法とその作用・効果について説明する。
【0023】
<1>支持杭の貫入
本発明に係る支持杭1は、貫入前に予め貫入補助具3を木製杭2に嵌合しておいても良いし、複数の貫入補助具3を順番に地面に積み重ねておき、貫入補助具3の内側から木製杭2を地盤にセットして、貫入作業時に自動的に任意の位置に掛止されるようにして支持杭1を形成してもよい。
【0024】
支持杭1の先端を地盤にあてて回転させると、従来の螺旋鋼管杭のスパイラル効果と同様に掘進効果を発揮し、排土の発生を抑制する。より詳しくは、ねじの作用により木製杭2が地盤に貫入され、螺旋羽根32の上面は地盤から下方への反力(推進力)を受けて貫入作業を促進させる。
螺旋羽根32の下方にあった土砂は螺旋羽根32の間隙を通過して上方に送られる。上方に送られた土砂は、支持杭1の体積分だけ圧縮され、密度の高い土になり、地盤の安定化に寄与する。
【0025】
<2>貫入補助具による木製杭の拘束効果
図3に示すように、前記貫入補助具3の嵌合輪体31は地盤に貫入されるにしたがって、杭本体の推進力と周囲の土砂との摩擦力によって杭本体の上方へと移動するように働き、杭本体を締め付けて拘束するように作用する。
従来の木製杭2のみの場合と異なり、上記の貫入補助具3を付設した支持杭を用いることによって、木製杭2本体の座屈強度が向上し、地盤支持力の向上に寄与することができる。
【0026】
また、木製杭は鋼管杭と比較して比重が小さいため、浮力によって支持力が向上するという効果も有する。
【0027】
したがって、従来、回転貫入が必要な支持杭を必要であるため、やむなく鋼管杭を使用していた現場において本発明による支持杭を採用することでき、環境保護の観点から有益であるだけでなく、木製杭の座屈強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の支持杭の平面図。
【図2】本発明の支持杭の貫入補助具の斜視図。
【図3】本発明の支持杭の拘束効果を示す概略図。
【符号の説明】
【0029】
1・・・支持杭
2・・・木製杭
21・・先端チップ
3・・・貫入補助具
31・・嵌合輪体
32・・螺旋羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製杭と、前記木製杭に付設した貫入補助具とを具備した支持杭であって、
前記木製杭は先端に向けてテーパを有し、
前記貫入補助具は、前記木製杭の軸方向所定位置に嵌合掛止可能に構成した嵌合輪体と、
前記嵌合輪体の外周に付設される螺旋羽根と、を有することを特徴とする、
支持杭。
【請求項2】
前記嵌合輪体はテーパを有する筒形状を呈することを特徴とする、請求項1に記載の支持杭。
【請求項3】
前記嵌合輪体は直筒形状を呈することを特徴とする、請求項1に記載の支持杭。
【請求項4】
前記螺旋羽根が前記嵌合輪体の外周に間欠的に形成されていることを特徴とする、請求項1乃至3の何れかに記載の支持杭。
【請求項5】
前記螺旋羽根が前記嵌合輪体の外周の全面に連続的に形成されていることを特徴とする、請求項1乃至3の何れかに記載の支持杭。
【請求項6】
支持杭を貫入して地盤の補強を行う地盤補強工法であって、
木製杭の軸方向所定位置に嵌合掛止可能に構成した嵌合輪体と、該嵌合輪体の外周に付設され木製杭の軸方向に対して螺旋形状を呈する螺旋羽根とを有する貫入補助具を、木製杭に付設して支持杭を形成し、
前記支持杭を回転させ、排土の発生を抑制しつつ木製杭を貫入補助具によって締め付けて拘束しながら貫入することを特徴とする、
地盤補強工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−32018(P2007−32018A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214477(P2005−214477)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(591226586)兼松日産農林株式会社 (23)
【Fターム(参考)】