説明

回転軸の軸封装置

【課題】撹拌機などの粉体処理装置における回転軸の軸封装置において、接触型シールの摩耗粉が撹拌容器などの容器に混入することを防ぎ、さらに、容器内の材料粉がシール機構に侵入することを防ぐことができる軸封装置を提供する。
【解決手段】容器1の壁を貫通する回転軸3に対して、容器側から順に、第1のエアシールリング8、第1の空気室9、第2のエアシールリング10、第2の空気室11、オイルシール12を配し、第1の空気室9における気体圧力を容器1および第2の空気室11における気体圧力より高く維持するようにして、第1のエアシールおよび第2のエアシールのシール機能を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の壁を貫通する回転軸の軸封装置に関し、特に減圧下で高速回転する撹拌機などにおける回転軸の軸封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化学、食品、医療医薬、エネルギー等、多様な分野において、粉体材料の混練、乾燥、造粒のために撹拌機が広く用いられている。一般的な撹拌機では、円筒形の撹拌容器に材料を装荷し、底面に備わる撹拌翼を回転軸で回転させることで材料を撹拌する。混練効率や造粒の精度を向上させるため、側面にチョッパー羽根等の副撹拌翼を設けているものも多い。
【0003】
撹拌機には、減圧雰囲気で材料を乾燥させるために減圧装置が接続されたり、溶媒を添加するためにスプレー装置が接続されたりすることもある。高温下で乾燥もしくは溶融造粒するために、加・保温用のジャケットを撹拌容器に装備することもある。
また、酸化しやすい材料を処理する場合、撹拌容器にNガスなどの不活性ガスを充填して処理を行う場合もある。
【0004】
材料を撹拌する撹拌翼やチョッパー羽根は、撹拌容器外部に備わる駆動機構に接続された回転軸により回転駆動される。回転軸が容器の底面や側面を貫通するため、回転軸には撹拌容器の内外を隔絶するシール機構が備わり、材料粉が軸の周囲に噛み込むことを防いでいる。従来、シール機構にはグランドパッキンやオイルシール等の接触型のシール材が用いられている。しかし、高速で回転する回転軸にシール材が接触することで、シール材が摩耗し、摩耗粉が撹拌容器内に混入する問題が発生する。
【0005】
特に、医療医薬分野やファインケミカル分野においてはシール材の摩耗粉によるわずかなコンタミネーションが製品の品質に悪影響を与えるため、摩耗粉の発生は撹拌機の使用において大きな支障になる。装荷した素材が研磨性の粉体などであった場合には、高速で回転する回転軸によってシール材が研磨され、多くの摩耗粉が発生するためコンタミネーションが顕著になる。また、シール材の損耗が早くなり、シール材の交換が頻回になるなどの不経済が生じる。
シール機構にオイルシールを利用した場合は、潤滑のために使用するグリスやオイルが材料に混入するため、潤滑油の素材に制限を受けたり、潤滑油が使用できなかったりすることもある。
【0006】
そこで、回転軸の軸封部に非接触型のエアシールを利用する形態が採用される場合もある。図5は従来型のエアシールを利用した軸封装置の断面図である。撹拌容器内に撹拌翼を備え、撹拌翼が図示しない駆動装置に回転軸で接続されて撹拌機が形成されている。回転軸にはシール機構が備わっている。シール機構では、回転軸の周囲に空気室が設けられ、回転軸と撹拌容器壁の間にわずかな隙間を設けて空気室と撹拌容器が連通させられ、エアシールが形成されている。
【0007】
従来型のエアシールでは、空気室に給気管から圧縮空気を送入することで、空気室からシールの隙間を通して撹拌容器へ吹出する気流を形成し、軸封部へ侵入しようとする材料粉を気流で撹拌容器へ押し戻すことで、材料粉の軸封部への混入を防いでいる。本形態のエアシール構造では、回転軸とシール部が接触していないため、シールの摩耗が起こらず、摩耗粉が撹拌容器に混入することがない。また、グリスやオイルが素材に露出しないため、潤滑油が素材に付着して製品の品質が低下することはない。
【0008】
一方、空気室と撹拌容器はエアシールにより軸封されるが、空気室の気密を維持するために、駆動装置側、すなわち撹拌容器と反対側の軸封部には接触型シールが用いられる。したがって、駆動装置側の軸封部でシール材の摩耗が生じ、摩耗粉が空気室から撹拌容器へ流れる気流に乗って撹拌容器に混入する可能性を排除することはできない。また、接触型シールにオイルシールを使用した場合、高速回転する回転軸から発生する熱や回転エネルギーにより、蒸発、飛散した潤滑油が撹拌容器に混入する可能性もある。
【0009】
さらに、撹拌機を減圧雰囲気で運転している場合、接触型のシール材が磨損しシール性能が低下すると、シール部から大気が流入して負圧が損なわれるおそれがある。酸化しやすい材料を処理するために不活性ガスを充填して運転する場合、シール部から大気が流入すると、撹拌容器に酸素が供給されて材料が発火する可能性があり、大変危険である。
【0010】
この問題を解決するため、特許文献1には、エアシールを使用し、軸封材の欠損や摩耗によって生じる異物の混入を防止する回転軸の軸封装置が開示されている。図6に示すように、特許文献1に記載の回転軸の軸封装置では、回転羽根に連結する回転軸の軸封部に備わるシール機構に空気室を設け、空気室と撹拌容器がわずかな空隙で連絡している。空気室には真空エジェクタを備える排気系統が接続されており、空気室の外側はオイルシールにより軸封されている。
【0011】
特許文献1に記載された従来技術の軸封装置では、撹拌容器とオイルシールの間に存在する空気室を負圧にして、撹拌容器とオイルシールを隔離している。そのため、接触型のオイルシールと回転軸が摩擦することにより発生する摩耗粉やオイル飛沫は、空気室内の空気と共に真空ポンプに吸引されて排気系統に排出され、異物が撹拌容器に混入して材料が汚染されることがない。
【0012】
しかし、撹拌容器と連絡している空気室を真空引きしているため、撹拌容器から空気室に材料粉が吸引され、排気系統から排出される。したがって、材料にロスが生じると共に、排気系統にバグフィルタを具備しなければならず、設備コスト、ランニングコストが増大する。
【0013】
また、撹拌容器から空気室に材料粉が流入するため、例えば材料粉が固着性を有する場合、侵入した粉体が軸封部を閉塞するおそれがある。材料粉が研磨性の素材だった場合、エアシールの空隙部で回転軸や容器壁が摩耗し、シール性能が低下する問題がある。さらに、空隙部に侵入した材料粉が高速回転する回転軸と接触することによる摩擦熱で変質し、それが処理対象物に混入することにより製品の品質が劣化する懸念がある。
これらの問題は、撹拌機に限らず、材料と異物の混入を嫌う反応装置や造粒装置、混練装置など、容器壁を貫通する回転軸を備える各種粉体処理装置において、普遍的に発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−51160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、撹拌機などにおける、容器の壁を貫通する回転軸の軸封装置において、接触型シールの摩耗粉が容器内に混入することを防ぎ、さらに、容器内の材料粉がシール機構に侵入することを防ぐことができる回転軸の軸封装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の回転軸の軸封装置は、容器の壁を貫通する回転軸に対して、容器側から、第1の非接触式シールと、第1の空気室と、第2の非接触式シールと、第2の空気室と、第1の接触式シールとを順に配置したもので、第1の空気室における気体圧力を容器における気体圧力おより第2の空気室における気体圧力より高く維持するようにしたことを特徴とする。
【0017】
本発明の回転軸の軸封装置によれば、第1の空気室を容器及び第2の空気室より高圧に維持することで、第1の非接触シールおよび第2の非接触シールから気体が噴出し、エアシールが形成される。第1の非接触式シールは、容器から軸封部に材料粉が混入することを防止し、第2の非接触シールは、接触式シールから発生する摩耗粉が第1の空気室およびその先にある容器に混入することを防止する。
【0018】
したがって、材料粉が軸封部に侵入することによる原料粉の損失と、接触型シールの摩耗粉が材料に混入することによる製品のコンタミネーションの双方を防ぐことができる。
【0019】
第1の空気室には、外周に開放されたリング状の溝を持ち内周壁に複数の孔が設けられたランタンリングを介して、気体を供給するようにするとよい。ランタンリングは給気系統から供給される気体を回転軸の周囲に均等に分配する機能を有する。ランタンリングを介すことで、給気系統の吹出口近辺に気流が集中して吹出口から離れた部分に気流が配分されないことによりエアシールの機能を損ねるおそれを回避することができる。
【0020】
また、減圧下で運転する粉体処理装置に対しては、第2の空気室が容器の圧力以上の圧力になるように運転されることが好ましい。なお、容器に第1の真空装置が接続され、第2の空気室に第2の真空装置が接続されて、容器と第2の空気室がそれぞれ独立に減圧されるようにしてもよい。
【0021】
撹拌機などの粉体処理装置において、容器に真空装置を接続して減圧雰囲気で粉体を処理する場合、第1の空気室に給気した気体のほとんどが圧力差に従って容器に流出し、第2の空気室に流れ込む気体量が不足する可能性がある。そうすると、第2の非接触シールが機能を失い、接触シールから放出される摩耗粉が第2の非接触シールを通過して容器に混入するおそれがある。
【0022】
したがって、粉体処理装置を減圧雰囲気で運転する場合においても、容器側に位置する第1の非接触シールの機能を低下させないために、第2の空気室の気体圧力を第1の空気室より適当に低くすると共に容器の気体圧力より低くならないように運転することが好ましい。この場合、容器を減圧する真空装置に第2の空気室の排気系統を接続し、排気系統中に絞りもしくはリリーフ弁を挿入して、第2の空気室の気体圧力が容器の圧力より低くならないよう調整すると、気体圧力を管理する制御装置を備える必要がないため、便利である。
【0023】
なお、第2の空気室に、容器を減圧する第1の真空装置と異なる第2の真空装置を接続して、容器と第2の空気室の気体圧力を互いに独立に調整するようにしてもよい。
容器内圧力は、原料の蒸発量、バグフィルタの目詰まりによる圧力損失、真空装置などの周辺機器の状態、などにより変化するので、独立に設けた第2の真空装置により第2の空気室の圧力を制御する方が、安定したシール性能を確保することができる。
【0024】
さらに、第1の非接触式シールと第1の空気室と第2の非接触シールをユニット化し、一体として取り外せるように形成すると、材料の切り替え時にユニットを取り外して洗浄することで変更前後の材料の混合を防ぐができるため、従来のように軸受部分全体を解体して洗浄する必要がなくなり、機器洗浄の手間が非常に軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の1実施例におけるシステムフロー図である。
【図2】本実施例の軸封装置の拡大断面図である。
【図3】パッキンの平面図である。
【図4】本発明の他の実施例における撹拌機の軸封装置の断面図である。
【図5】従来型のエアシールを利用した軸封装置の断面図である。
【図6】別の従来技術による回転軸の軸封装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る回転軸の軸封装置について、図面を参照しながら詳しく説明する。
【0027】
図1は本発明の1実施例におけるシステムフロー図である。本実施例は、本発明に係る回転軸の軸封装置を、高速撹拌機に適用したものである。撹拌機の容器1の底面に撹拌翼2が備わっており、撹拌翼2は回転軸3により駆動装置4に連結されている。容器1の上部には圧力計5およびバグフィルタ6が備わっている。また、真空ポンプ7などの真空装置に接続された真空配管36がバグフィルタ6を介して接続されていている。
【0028】
回転軸3の周囲には、容器1側から順に、第1エアシールリング8を用いた第1エアシール、第1空気室9、第2エアシールリング10を用いた第2エアシール、第2空気室11、オイルシール12が配されている。第1空気室9には給気系統34が接続されており、給気系統34には流量計13、圧力調整弁14、圧力計15が組み込まれている。給気系統34は圧空源に接続されている。
【0029】
第2空気室11には排気系統35が接続されており、排気系統35には圧力計16、流量計17、絞り弁18、逆止弁19、仕切弁20、仕切弁21が組み込まれている。排気系統35は仕切弁20を介して真空配管36に連結され、真空ポンプ7により減圧される。
【0030】
図2は本実施例の軸封装置の拡大断面図である。回転軸3の周囲に、回転翼2側から順に第1エアシールリング8で形成される第1エアシール、第1空気室9、第2エアシールリング10で形成される第2エアシールがエアシールケーシング22に装填されリング状のエアシール押え23に挟持される形で配備されており、さらに下方にオイルシールケーシング24に把持されたオイルシール12が配されている。
エアシールケーシング22とオイルシールケーシング24の間にはリング状のパッキン25が挿入され、これらと回転軸3で仕切った第2空気室11が形成されている。
【0031】
第1空気室9には、ランタンリング26および給気孔27を介して給気系統34から加圧気体が供給される。給気孔27はエアシールケーシング22、エアシール押え23、オイルシールケーシング24、パッキン25それぞれに掘設され、連通している。
【0032】
ランタンリング26は、外周にリング状の溝を持ち内周壁に複数の吹出孔がほぼ均等な間隔で設けられた金属環であり、外周部の溝の位置に給気孔27の吹出口が開口していて、第1空気室9の全周に亘って均等に加圧気体を供給できるようになっている。
【0033】
第2空気室11には排気管28が開口し、排気管28の他端は排気系統35に連結している。軸封装置部分は、軸受ケーシング29および、軸受ケーシング29に固定ボルト30で固着された軸受押え31により固定されている。
【0034】
第1エアシールリング8と第2エアシールリング10は、フッ素樹脂で形成され、0.2〜1.0mm程度の隙間を挟んで回転軸3を囲繞している。オイルシール12は合成ゴム、フッ素ゴム、フッ素樹脂等で形成され、回転軸3との接触部に潤滑油が塗布されている。
【0035】
図3は、第2空気室の空間を確保する機能を有するパッキンの平面図である。パッキン25には、給気孔27の位置に貫通孔が設けられ、また排気管28の位置に対応して内周まで達する切り欠き部分が設けられ、第2空気室11の内容積を確保すると共に、排気管28に第2空気室11の気体を排出する通路を形成している。
また、パッキン25には、固定ボルト32を通すボルト穴33が備わっている。
【0036】
ボルト穴はエアシールケーシング22とエアシール押え23にも備わっており、従来技術の図5に示したものと同様に、容器1側から固定ボルト32を通してエアシールケーシング22、エアシール押え23、パッキン25を貫通させて、オイルシールケーシング24に設けられたナットに螺合させて、エアシール部を着脱可能に固定するようになっている。
【0037】
本実施例の回転軸の軸封装置では、給気系統34から第1空気室9に容器1および第2空気室11内の圧力より高い圧力の気体を供給し、第1空気室9から容器1および第2空気室11に高圧気体が流出することで第1エアシールリング8および第2エアシールリング10の軸封を維持する。供給する気体には、通常は圧縮空気を用いるが、容器1を不活性ガス雰囲気で運転する場合はNガス等を用いることができる。
【0038】
回転軸3と第1エアシールリング8の隙間には、常に第1空気室9から容器1に向かって気流が生じるため、容器1内から第1エアシールリング8に近づいた粉体は、気流によって容器1に押し戻され、第1エアシールリング8の隙間に侵入できない。同様に、回転軸3と第2エアシールリング10の隙間には、第1空気室9から第2空気室11に向かって気流が生じているため、オイルシール12から発生する潤滑油の飛沫や摩擦粉が第1空気室9に侵入することがない。発生した飛沫や摩擦粉は、給気された圧縮空気と共に排気管28から排気系統35に流出する。
【0039】
このように、本実施例の回転軸の軸封装置によれば、材料粉と摩擦粉が確実に隔離され、相互に混和することがない。したがって、医療・ファインケミカル分野など、材料のコンタミネーションを厳密に管理しなければならない場合でも、確実に製品の品質を維持することができる。
【0040】
また、本実施例の軸封装置では、仮にオイルシール12が損耗して外部から大気が流入した場合でも、流入した大気は排気系統35から排出されるため、容器1の雰囲気に影響を与えることがない。そのため、容器1を減圧で運転する場合や、不活性ガスを充填している場合でも、オイルシール12の損耗が直ちに運転状態や製品の品質に影響を及ぼすことはない。
【0041】
さらに、本実施例の軸封装置では、第1エアシールリング8、第1空気室9、第2エアシールリング10、エアシールケーシング22、エアシール押え23、パッキン25で構成されるエアシール部がユニット化されて、軸封装置から簡単に取り外せるようになっている。エアシール部を取り外した残りの機構に汚染源となりうる粉体が残っていても、運転中に容器1側に流入する心配がない。
したがって、従来は容器1で処理する原料を変更するたびに、回転軸3から軸封装置を取り外して機構全体を洗浄する必要があったが、本実施例の軸封装置では、エアシール部のみを取り出して洗浄すれば済むことになる。そのため、機器の洗浄の手間が大きく軽減される。
【0042】
本実施例の回転軸の軸封装置では、容器1を大気圧で運転する場合、給気系統34から供給する空気などの気体の圧力を圧力調整弁14により0.03MPaG程度とし、第2空気室11および排気系統35の圧力を絞り弁18により0〜0.01MPaG程度に調整すればよい。シール効果を担保するため、給気圧力と、容器1および第2空気室11の圧力の差を0.01MPa以上確保することが望ましい。
【0043】
第2空気室11のエア圧力が容器1の圧力より低くなった場合、第1空気室9に供給された空気などの気体の大部分が第2空気室11に流出してしまい、容器1側に噴出する気流が減少して、本来のシール効果が十分に得られなくなる可能性がある。したがって、第2空気室11の気体圧力は、容器1の圧力と等しいかわずかに高くすることが好ましい。
【0044】
容器1を減圧雰囲気で運転する場合、例えば、容器1の内圧が−0.09MPaGに設定されている時には、供給気体の圧力を0.02MPaG、排気の圧力を−0.08MPaG等とすればよい。
【0045】
図1に示した本実施例の軸封装置では、容器1に接続された真空配管36と、排気系統35が共に1基の真空ポンプ7に接続されている。そのため、容器1の圧力より第2空気室11の圧力が高く調整されるように、排気系統35に絞り弁18を挿入してある。真空配管36と排気系統35には真空ポンプ7から等しく吸引力が掛けられるが、絞り弁18を挿入することで第2空気室11から吸引する気体の量を減少させ、容器1より圧力が低下しないようにしている。
【0046】
運転時は、容器1に備わる圧力計5と排気系統35に備わる圧力計16を比較しながら、絞り弁18の絞りを調整し、第2空気室11の圧力を制御するとよい。なお、排気系統35に絞り弁18の代わりにリリーフ弁を備え、流量計17を使って気体の流量による制御を行ってもよい。
【0047】
本実施例の軸封装置を実機に適用して効果を確認した。
容器容量25リッター、主軸径60mm、撹拌羽根回転数100〜500rpmの高速攪拌機に対して、加圧空気の圧力を0.03MPaGに調整し、流量計を見ながら排気系に設けた絞り弁を調整して、空気供給量84Nl/min、空気排気量17Nl/minに調整し、乾燥粉体原料8kgを容器に仕込んで、撹拌羽根回転数300rpmで10分間撹拌試験を実施した後に、軸封装置を分解して検査したところ、軸封部に粉体原料の侵入がないことを確認した。
【0048】
また、接触型シールの摩耗を模擬して、オイルシール付近に疑似粉を付着させておいたが、容器内部に疑似粉が侵入していないことを確認することができた。
排気空気量は、少ないとエアシール効果が劣り、多いと空気消費量が増大するので、10〜40Nl/min程度であることが好ましい。
なお、圧力調整により軸封装置を作動させることもできる。
容器内の圧力を0MPaGとして、加圧空気系の供給圧力を圧力調整弁により0.03MPaGに調整して、排気圧力を排気系に設けたリリーフ弁によって0〜0.01MPaGに調整して、上記と同様の試験運転をしたところ、軸封部に粉体原料の侵入がないことが確認できた。
【0049】
また、減圧下で運転を行う場合として、容器内圧が−0.09MPaG、供給空気圧が0.02MPaG、排気空気圧が−0.08MPaGの条件で撹拌機運転を行ったところ、軸封部への粉体原料の侵入は観察できなかった。
加圧空気の供給圧力と排気圧力の差は、小さすぎると加圧空気が容器内に逃げて第2空気室との間の軸封効果が低減するので、0.01MPa以上あることが好ましい。
なお、加圧空気の流量や圧力は、高速攪拌機の型式、処理原料の種類や量、その他の運転条件などにより最適値が変化するので、最適条件に適合するように調整できることが望ましい。
【0050】
図4は、本発明の別の実施例における撹拌機の軸封装置の断面図である。本実施例の軸封装置では、エアシールとして金属製のラビリンスシールを利用している。ラビリンスシールは、原理的には回転部の凹凸と固定部の凹凸が咬合うよう形成され、凹部と凸部を多段に重ねることにより軸封効果を得ている。
回転軸3に接続された撹拌翼2の軸受部の底面と第1空気室9との間に第1ラビリンスシール40が備わり、第1空気室9と第2空気室11との間に第2ラビリンスシール41が備わっている。第1ラビリンスシール40と第2ラビリンスシール41は共に微少な隙間を挟んで回転体と対向している。
本実施例の軸封装置も、図2に示した実施例の軸封装置と同等の作用効果を呈する。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る回転軸の軸封装置は、容器に装荷した材料粉が軸封部に侵入するのを防ぐと共に、接触型シールで発生する摩擦粉や潤滑油飛沫が容器に混入するのを防ぐことができる。そのため、医療分野やファインケミカル分野など、コンタミネーションを厳密に管理しなければならない各種分野において、材料の純度を保って撹拌機などの粉体処理装置を運転することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 容器
2 撹拌翼
3 回転軸
4 駆動装置
5 圧力計
6 バグフィルタ
7 真空ポンプ
8 第1エアシールリング
9 第1空気室
10 第2エアシールリング
11 第2空気室
12 オイルシール
13 流量計
14 圧力調整弁
15 圧力計
16 圧力計
17 流量計
18 絞り弁
19 逆止弁
20 仕切弁
21 仕切弁
22 エアシールケーシング
23 エアシール押え
24 オイルシールケーシング
25 パッキン
26 ランタンリング
27 給気孔
28 排気管
29 軸受ケーシング
30 固定ボルト
31 軸受押え
32 固定ボルト
33 ボルト穴
34 給気系統
35 排気系統
36 真空配管
40 第1ラビリンスシール
41 第2ラビリンスシール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の壁を貫通する回転軸に対して、該容器の内部側から、第1の非接触式シールと、第1の空気室と、第2の非接触式シールと、第2の空気室と、第1の接触式シールとを順に配置し、前記第1の空気室における気体圧力を前記容器における気体圧力および前記第2の空気室における気体圧力より高く維持することを特徴とする回転軸の軸封装置。
【請求項2】
前記第1の空気室は、リング状で内周部に複数の孔が設けられたランタンリングを介して気体が供給されることを特徴とする請求項1に記載の回転軸の軸封装置。
【請求項3】
前記容器が減圧下で運転する粉体処理装置の容器であって、前記第2の空気室が該容器の圧力以上の圧力になるように運転されることを特徴とする前記請求項1または2記載の回転軸の軸封装置。
【請求項4】
前記容器を減圧する第1の真空装置と前記第2の空気室を減圧する第2の真空装置とを備えることを特徴とする請求項3に記載の回転軸の軸封装置。
【請求項5】
前記第2の空気室に接続する排気系統に絞りもしくはリリーフ弁を設けて、前記第2の空気室の圧力が前記容器の圧力より低くならないよう調整されることを特徴とする請求項3または4に記載の回転軸の軸封装置。
【請求項6】
前記第1の非接触式シールと、前記第1の空気室と、前記第2の非接触式シールとが一体として取り外し可能に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の回転軸の軸封装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−61057(P2013−61057A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201605(P2011−201605)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(503245465)株式会社アーステクニカ (54)
【Fターム(参考)】