説明

回転軸装置における転がり軸受の取付け構造

【課題】内輪、外輪の軌道面および転動体の転動面の摩耗を無くすとともに、フレッチングおよびクリープの発生を無くした転がり軸受の取付け構造を提供する。
【解決手段】内輪20の一側端面および外輪11の一側端面の少なくともどちらか一方に当接可能な第1の突出部63、73を、回転軸70およびハウジング61の少なくともどちらか一方に形成し、内輪20の他側端面および外輪11の他側端面の少なくともどちらか一方に当接可能な第2の突出部80、85を、回転軸70およびハウジング61の少なくともどちらか一方に設け、内輪20の一側端面の内縁および外輪11の一側端面の外縁の少なくともどちらか一方に受け面14、24を形成し、第1の突出部63、73および受け面14、24間にゴム製のリング状の弾性部材84、89を介挿するとともにこの弾性部材84、89を回転軸70およびハウジング61の少なくともどちらか一方に当接させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内輪、外輪、転動体とからなる転がり軸受を、回転軸およびハウジングの少なくともどちらか一方に取付けるための回転軸装置における転がり軸受の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図5(特許文献1)に示すように、ハウジング100に対し回転軸110を回転可能に軸支するためには、ハウジング100および回転軸110間に一対の転がり軸受120、130が使用されている。一方の転がり軸受120の外輪121が、ハウジング100の段部101に当接し、他方の転がり軸受130の外輪131が、ハウジング100の段部102に当接し、他方の転がり軸受130の内輪132が回転軸110の段部112に当接し、一方の転がり軸受120の内輪122および回転軸110の段部111間にウェーブワッシャ140を介挿することにより、ハウジング100に対する回転軸110の軸方向の位置を決めている。前記ウェーブワッシャ140は、回転軸110を軸方向に押し付ける役目を持つとともに、ハウジング100および回転軸110の加工誤差を吸収するとともにこれらの熱膨張を吸収する役目を持つ。
【0003】
ウェーブワッシャ140の回転軸110を軸方向に押し付ける力によって、外輪121および段部101間、外輪131および段部102間、内輪122および段部111間、内輪132および段部112間に摩擦力が発生し、ハウジング100に対する回転軸110の半径方向の移動を不能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−103713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハウジング100の内周に外輪121、131が半径方向にごく僅かな隙間を持って嵌合され、回転軸110の外周に内輪122、132が半径方向にごく僅かな隙間を持って嵌合されているため、ハウジング100の内周の軸線に対し回転軸110の軸線が半径方向に若干ずれた位置に取付けられる。この結果、ハウジング100の内周に対し回転軸110が振れ回り回転し、回転軸110の遠心力によって内輪122、132、外輪121、131の軌道面および転動体123、133の転動面が摩耗しやすい。
【0006】
ウェーブワッシャ140および段部111に代えて、回転軸110に係合溝を形成し、この係合溝にCリングを嵌め込んだものは、構造が簡単なため組み付けやすいメリットがある反面、軸方向に隙間があるため、外部からの振動により回転軸110が軸方向に繰り返し移動し、内輪122、132、外輪121、131の段部111、112、101、102側の端面にフレッチングが発生する。また、ハウジング100の内周および外輪121、131間、回転軸110の外周および内輪122、132間にそれぞれ半径方向に隙間があるため、ハウジング100に対し外輪121、131が回転し、内輪122、132に対し回転軸110が回転することによって、クリープが発生する。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、振れ回り回転を無くして内輪、外輪の軌道面および転動体の転動面の摩耗を無くすとともに、フレッチングおよびクリープの発生を無くした回転軸装置における転がり軸受の取付け構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、ハウジングに転がり軸受を介して回転軸を回転可能に軸支した回転軸装置において、内輪、外輪、転動体とからなる前記転がり軸受を、前記回転軸および前記ハウジングの少なくともどちらか一方に取付けるための転がり軸受の取付け構造であって、前記内輪の一側端面および前記外輪の一側端面の少なくともどちらか一方に当接可能な第1の突出部を、前記回転軸および前記ハウジングの少なくともどちらか一方に形成し、前記内輪の他側端面および前記外輪の他側端面の少なくともどちらか一方に当接可能な第2の突出部を、前記回転軸および前記ハウジングの少なくともどちらか一方に設け、前記内輪の一側端面の内縁および前記外輪の一側端面の外縁の少なくともどちらか一方に受け面を形成し、前記第1の突出部および前記受け面間にゴム製のリング状の弾性部材を介挿するとともにこの弾性部材を回転軸およびハウジングの少なくともどちらか一方に当接させたものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記受け面として、C面取りを形成したものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記受け面として、R面取りを形成したものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記受け面は、周面に対し径方向に凹んだ段付き受け面であり、この段付き受け面は、円筒状の第2被嵌合面と、リング状の第2端面とからなるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハウジングの内周の軸線に対し回転軸の軸線が同軸に配置されることにより、回転軸の振れ回りが無くなり、内輪、外輪の軌道面および転動体の転動面の摩耗が無くなる。さらに、ハウジングに対して外輪が軸方向および半径方向に移動不能に固定されるか、内輪に対して回転軸が軸方向および半径方向に移動不能に固定されることにより、フレッチングおよびクリープの発生を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態における転がり軸受の取付け構造を示す縦断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における転がり軸受の取付け構造を示す図1のA矢視図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における転がり軸受の取付け構造を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態における転がり軸受の取付け構造を示す縦断面図である。
【図5】従来における転がり軸受の取付け構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の実施形態について、図1および図2を参酌しつつ説明する。図1は転がり軸受の取付け構造を示す縦断面図であり、図2は図1のA矢視図である。
【0015】
回転軸装置60は、ハウジング61と、このハウジング61に取り付けられる転がり軸受10と、この転がり軸受10を介して回転可能に軸支される回転軸70とからなっている。転がり軸受は、転動体として玉を使った玉軸受10である。玉軸受10は、リング状の外輪11と、外輪11の内周側に配置されるリング状の内輪20と、外輪11と内輪20間に配置されるリング状の保持器30と、保持器30に保持される複数の玉40とからなっている。
【0016】
前記外輪11の内周には、断面円弧状の外輪側軌道面12が形成され、外輪11の外周には、円筒状の被嵌合面13が形成され、被嵌合面13の軸方向の両端の外縁には、一対のC面取り14が形成されている。前記内輪20の外周には、断面円弧状の内輪側軌道面22が形成され、内輪20の内周には、円筒状の被嵌合面23が形成され、被嵌合面23の軸方向の両端の内縁には、一対のC面取り24が形成されている。
【0017】
前記保持器30は円周方向に複数のポケット部31を有し、各ポケット部31に玉40が回転可能に保持されている。前記玉40は、金属製で、球形状を有し、外面が転動面となる。
【0018】
前記ハウジング61には、回転軸70の回転軸線と同軸に円筒状の内周面62が形成され、この内周面62は、外輪11の被嵌合面13が径方向に僅かな隙間を持って嵌合できるような内径を有する。内周面62には玉軸受10側へ突出した第1の突出部63が形成され、この第1の突出部63は外輪11の一側端面と対向する第1の内側端面64を有する。また内周面62には、外輪11の他側端面に対応する位置に係合溝65が形成され、この係合溝65にはCリング80が嵌め込まれている。Cリング80は外輪11の他側端面に当接する第2の内側端面81を有する。Cリング80は、図1の状態よりもさらに外径方向に拡張しようとする弾性力を有し、円周上1箇所に切欠き83を有する。
【0019】
前記回転軸70には、これの回転軸線と同軸に円筒状の外周面72が形成され、この外周面72は、内輪20の被嵌合面23が径方向に僅かな隙間を持って嵌合できるような外径を有する。外周面72には玉軸受10側へ突出した第1の突出部73が形成され、この第1の突出部73は内輪20の一側端面と対向する第1の内側端面74を有する。また外周面72には、内輪20の他側端面に対応する位置に係合溝75が形成され、この係合溝75には、Cリング85が嵌め込まれている。Cリング85は内輪20の他側端面に当接する第2の内側端面86を有する。Cリング85は、図1の状態よりもさらに内径方向に縮小しようとする弾性力を有し、円周上1箇所に切欠き88を有する。
【0020】
ハウジング61の内周面62にはゴム製でリング状のOリング84が嵌め込まれ、Oリング84は第1の内側端面64、C面取り14および内周面62に当接する。Oリング84の弾性力によって、外輪11の他側端面がCリング80の第2の内側端面81に当接し、外輪11の一側端面および第1の突出部63の第1の内側端面64間に隙間が形成される。また、Oリング84の弾性力およびC面取り14によって、外輪11はハウジング61の内周面62と同軸になるよう配置され、外輪11の被嵌合面13およびハウジング61の内周面62間に隙間が形成される。
【0021】
回転軸70の外周面72にはゴム製でリング状のOリング89が嵌め込まれ、Oリング89は第1の内側端面74、C面取り24および外周面72に当接する。Oリング89の弾性力によって、内輪20の他側端面がCリング85の第2の内側端面86に当接し、内輪20の一側端面および第1の突出部73の第1の内側端面74間に隙間が形成される。また、Oリング89の弾性力およびC面取り24によって、内輪20は回転軸70の外周面72と同軸になるよう配置され、内輪20の被嵌合面23および回転軸70の外周面72間に隙間が形成される。
【0022】
続いて、回転軸装置60へ玉軸受10を取付ける動作について説明する。
【0023】
まず回転軸70の外周面72に、Oリング89を第1の突出部73の第1の内側端面74に当接する位置まで嵌め込み、続いて玉軸受10の被嵌合面23を嵌め込み、Oリング89に玉軸受10の一対のC面取り24の一方を面接触させる。回転軸70の外周面72にCリング85を嵌め込み、内輪20の他側端面にCリング85の第2の内側端面86を押し付ける。Oリング89が圧縮され、Cリング85が係合溝75に対応する位置まで来ると、係合溝75にCリング85が嵌め込まれる。内輪20の他側端面にCリング85の第2の内側端面86を押し付ける力を解除すると、Oリング89の弾性力によって、内輪20およびCリング85が押し戻され、係合溝75の他側端面にCリング85が接触し、内輪20およびCリング85のこれ以上の押し戻しが阻止される。この結果、内輪20の一側端面および第1の突出部73の第1の内側端面74間に隙間が形成される。また、Oリング89の弾性力およびC面取り24によって、内輪20は回転軸70の外周面72と同軸になるよう配置され、内輪20の被嵌合面23および回転軸70の外周面72間に隙間が形成される。
【0024】
続いてハウジング61の内周面62に、Oリング84を第1の突出部63の第1の内側端面64に当接する位置まで嵌め込み、続いて玉軸受10の被嵌合面13を嵌め込み、Oリング84に玉軸受10の一対のC面取り14の一方を面接触させる。ハウジング61の内周面62にCリング80を嵌め込み、外輪11の他側端面にCリング80の第2の内側端面81を押し付ける。Oリング84が圧縮され、Cリング80が係合溝65に対応する位置まで来ると、係合溝65にCリング80が嵌め込まれる。外輪11の他側端面にCリング80の第2の内側端面81を押し付ける力を解除すると、Oリング84の弾性力によって、外輪11およびCリング80が押し戻され、係合溝65の他側端面にCリング80が接触し、外輪11およびCリング80のこれ以上の押し戻しが阻止される。この結果、外輪11の一側端面および第1の突出部63の第1の内側端面64間に隙間が形成される。また、Oリング84の弾性力およびC面取り14によって、外輪11はハウジング61の内周面62と同軸になるよう配置され、外輪11の被嵌合面13およびハウジング61の内周面62間に隙間が形成される。
【0025】
このようにして取付けられた回転軸70を回転させると、ハウジング61の内周面62の軸線に対し、回転軸70の軸線が同軸となっているため、回転軸70の振れ回りが無く、外輪11の外輪側軌道面12、内輪20の内輪側軌道面22、および玉40の転動面の摩耗が無い。また外部から回転軸装置60に振動が作用しても、Oリング84、92はゴム製を使用しているので摩擦係数が高く、Oリング84、92およびC面取り14、24間の摩擦力によりハウジング61に対して外輪11が、軸方向および半径方向に移動不能に固定され、内輪20に対して回転軸70が、軸方向および半径方向に移動不能に固定されているので、フレッチングおよびクリープの発生が無い。またゴム製のOリング84、92を使用しているので、外部から回転軸装置60に作用する振動により回転軸70が軸方向に振動しても、この振動を吸収し、フレッチングの発生を抑えることができる。
【0026】
上述した第1の実施形態は、一つの玉軸受10でハウジング61に対する回転軸70の軸方向位置を拘束した例について述べた。この場合、玉軸受10と共に図略の針状ころ軸受が使用され、この針状ころ軸受と共に玉軸受10によりハウジング61に対し回転軸70を回転可能に軸支するのが一般的である。
【0027】
上述した第1の実施形態は、外輪11の被嵌合面13の軸方向の両端の外縁に、一対のC面取り14を形成し、内輪20の被嵌合面23の軸方向の両端の内縁には、一対のC面取り24を形成した例について述べた。第2の実施形態として、図3に示すように、外輪11の被嵌合面13の軸方向の両端の外縁に、一対の段付き受け面18を形成し、内輪20の被嵌合面23の軸方向の両端の内縁には、一対の段付き受け面28を形成しても良い。
【0028】
前記段付き受け面18は、被嵌合面13に対して内径側で平行な面を有する円筒状の第2被嵌合面18aと、外輪11の軸線に対して垂直な面を有するリング状の第2端面18bとからなっている。同じように、前記段付き受け面28は、被嵌合面23に対して内径側で平行な面を有する円筒状の第2被嵌合面28aと、内輪20の軸線に対して垂直な面を有するリング状の第2端面28bとからなっている。
【0029】
ハウジング61の内周面62にはゴム製でリング状のOリング84が嵌め込まれ、Oリング84は第1の内側端面64、段付き受け面18および内周面62に当接する。Oリング84の弾性力のうち、軸方向の分力が第2端面18bを介して外輪11に伝えられるので、外輪11の他側端面がCリング80の第2の内側端面81に当接し、外輪11の一側端面および第1の突出部63の第1の内側端面64間に隙間が形成される。また、Oリング84の弾性力のうち、半径方向の分力が第2被嵌合面18aを介して外輪11に伝えられるので、外輪11はハウジング61の内周面62と同軸になるよう配置され、外輪11の被嵌合面13およびハウジング61の内周面62間に隙間が形成される。
【0030】
回転軸70の外周面72にはゴム製でリング状のOリング89が嵌め込まれ、Oリング89は第1の内側端面74、段付き受け面28よび外周面72に当接する。Oリング89の弾性力のうち、軸方向の分力が第2端面28bを介して内輪20に伝えられるので、内輪20の他側端面がCリング85の第2の内側端面86に当接し、内輪20の一側端面および第1の突出部73の第1の内側端面74間に隙間が形成される。また、Oリング89の弾性力のうち、半径方向の分力が第2被嵌合面18aを介して内輪20に伝えられるので、内輪20は回転軸70の外周面72と同軸になるよう配置され、内輪20の被嵌合面23および回転軸70の外周面72間に隙間が形成される。
【0031】
C面取り14、24に代えて段付き受け面18、28を形成した点以外は、全て同じであるので、同一の部品について、同一の番号を付与し、説明を省略する。
【0032】
このようにして取付けられた回転軸70を回転させると、ハウジング61の内周面62の軸線に対し、回転軸70の軸線が同軸となっているため、回転軸70の振れ回りが無く、外輪11の外輪側軌道面12、内輪20の内輪側軌道面22、および玉40の転動面の摩耗が無い。また外部から回転軸装置60に振動が作用しても、Oリング84、92はゴム製を使用しているので摩擦係数が高く、Oリング84、92および段付き受け面18、28間の摩擦力によりハウジング61に対して外輪11が、軸方向および半径方向に移動不能に固定され、内輪20に対して回転軸70が、軸方向および半径方向に移動不能に固定されているので、フレッチングおよびクリープの発生が無い。またゴム製のOリング84、92を使用しているので、外部から回転軸装置60に作用する振動により回転軸70が軸方向に振動しても、この振動を吸収し、フレッチングの発生を抑えることができる。
【0033】
次に第3の実施形態として、図4に示すように、一対の玉軸受50、55でハウジング90に対する回転軸95の軸方向位置を拘束する例について述べる。
【0034】
玉軸受50、55は、リング状の外輪51、56と、外輪51、56の内周側に配置されるリング状の内輪52、57と、外輪51、56と内輪52、57間に配置されるリング状の保持器53、58と、保持器53、58に保持される複数の玉54、59とからなっている。外輪51の外周には、軸方向の両端の外縁で一対のC面取り51aが形成されている。保持器53、58は円周方向に複数のポケット部を有し、各ポケット部に玉54、59が回転可能に保持されている。前記玉54、59は、金属製で、球形状を有し、外面が転動面となる。
【0035】
前記ハウジング90には、回転軸95の回転軸線と同軸に円筒状の内周面91が形成され、この内周面91は、外輪51が径方向に僅かな隙間を持って嵌合できるような内径を有する。内周面91には玉軸受50の一側端面へ突出した第1の突出部92が形成され、この第1の突出部92は外輪51の一側端面と対向する第1の内側端面92aを有する。また内周面91には、玉軸受55の他側端面に対応する位置に係合溝93が形成され、この係合溝93にはCリング94が嵌め込まれている。Cリング94は外輪56の他側端面に当接する第2の内側端面94aを有する。Cリング94は、図3の状態よりもさらに外径方向に拡張しようとする弾性力を有する。
【0036】
前記回転軸95には、これの回転軸線と同軸に円筒状の外周面96が形成され、この外周面96は、内輪52が径方向に僅かな隙間を持って嵌合できるような外径を有する。外周面96には玉軸受50の他側端面へ突出した第2の突出部97が形成され、この第2の突出部97は内輪52の他側端面と接触する第2の内側端面97aを有する。また外周面96には玉軸受51の一側端面へ突出した第1の突出部98が形成され、この第1の突出部98は内輪57の一側端面と接触する第1の内側端面98aを有する。
【0037】
ハウジング90の内周面91にはゴム製でリング状のOリング99が嵌め込まれ、Oリング99は第1の内側端面92a、C面取り51aおよび内周面91に当接する。Oリング99の弾性力によって、内輪52の他側端面が第2の突出部97の第2の内側端面97aに当接し、第1の突出部98の第1の内側端面98aが内輪57の一側端面に当接し、外輪56の他側端面がCリング94の第2の内側端面94aに当接し、外輪51の一側端面および第1の突出部92の第1の内側端面92a間に隙間が形成される。また、Oリング99の弾性力およびC面取り51aによって、外輪51はハウジング90の内周面91と同軸になるよう配置され、外輪51の外周面およびハウジング90の内周面91間に隙間が形成される。
【0038】
外輪51、玉54を介して内輪52が、ハウジング90の内周面91に対し同軸に配置されるので、外輪51、内輪52の軌道面、玉54の転動面の摩耗が少ない。しかし、内輪52に対し回転軸95が同軸に配置されないがため、回転軸95の振れ回りによる外輪51、内輪52の軌道面、玉54の転動面への摩耗の影響が少なからず存在する。Oリング99はゴム製を使用しているので摩擦係数が高く、Oリング99およびC面取り51a間の摩擦力によりハウジング90に対して外輪51が、軸方向および半径方向に移動不能に固定され、内輪52に対して回転軸95が、軸方向および半径方向に移動不能に固定されているので、フレッチングおよびクリープの発生が無い。またゴム製のOリング99を使用しているので、外部から回転軸装置に作用する振動により回転軸95が軸方向に振動しても、この振動を吸収し、フレッチングの発生を抑えることができる。
【0039】
本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0040】
第1の実施形態および第2の実施形態は、外輪11および内輪20の両方にOリング84、92を用いた例について述べた。他の実施形態として、内輪20のみOリング89を用いても良いし、外輪11のみOリング84を用いても良い。
【0041】
第1の実施形態は、外輪11および内輪20の両方にテーパ状のC面取り14、24を形成した例について述べた。第4の実施形態として、外輪11および内輪20の両方にR形状のR面取りを形成しても良い。
【0042】
上述した実施形態は、玉軸受10に上述した取付け構造を適用した。他の実施形態として、円すいころ軸受、円筒ころ軸受等の他の軸受にも、上述した取付け構造を適用しても良い。
【符号の説明】
【0043】
10:玉軸受(転がり軸受)、11:外輪、14:C面取り(受け面)、20:内輪、24:C面取り(受け面)、40:玉(転動体)、60:回転軸装置、61:ハウジング、63:第1の突出部、65:係合溝、70:回転軸、73:第1の突出部、75:係合溝、80:Cリング(第2の突出部)、84:Oリング(弾性部材)、85:Cリング(第2の突出部)、89:Oリング(弾性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに転がり軸受を介して回転軸を回転可能に軸支した回転軸装置において、内輪、外輪、転動体とからなる前記転がり軸受を、前記回転軸および前記ハウジングの少なくともどちらか一方に取付けるための転がり軸受の取付け構造であって、前記内輪の一側端面および前記外輪の一側端面の少なくともどちらか一方に当接可能な第1の突出部を、前記回転軸および前記ハウジングの少なくともどちらか一方に形成し、前記内輪の他側端面および前記外輪の他側端面の少なくともどちらか一方に当接可能な第2の突出部を、前記回転軸および前記ハウジングの少なくともどちらか一方に設け、前記内輪の一側端面の内縁および前記外輪の一側端面の外縁の少なくともどちらか一方に受け面を形成し、前記第1の突出部および前記受け面間にゴム製のリング状の弾性部材を介挿するとともにこの弾性部材を回転軸およびハウジングの少なくともどちらか一方に当接させたことを特徴とする回転軸装置における転がり軸受の取付け構造。
【請求項2】
前記受け面は、C面取りであることを特徴とする請求項1に記載の回転軸装置における転がり軸受の取付け構造。
【請求項3】
前記受け面は、R面取りであることを特徴とする請求項1に記載の回転軸装置における転がり軸受の取付け構造。
【請求項4】
前記受け面は、周面に対し径方向に凹んだ段付き受け面であり、この段付き受け面は、円筒状の第2被嵌合面と、リング状の第2端面とからなることを特徴とする請求項1に記載の回転軸装置における転がり軸受の取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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