説明

回転陽極型X線管装置

【課題】 製造コストを低減できる回転陽極型X線管装置を提供する。
【解決手段】 回転陽極型X線管装置は、陰極36と、陽極ターゲット35aと、真空外囲器31と、回転体2と、固定体1と、を有したX線管30と、回転体を回転させるステータコイル910と、ハウジング20と、X線遮蔽体80と、冷却液7とを備えている。X線遮蔽体80は、真空外囲器31及びハウジング20の少なくとも一方に固定され、真空外囲器31及びハウジング20間に位置し、真空外囲器31及びハウジング20に隙間を置いて設けられ、X線を透過させるX線透過窓81を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転陽極型X線管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線管装置は、医療診断機器等に用いられている。X線管装置は、ハウジングと、ハウジングに収容されたX線管と、X線管及びハウジング内面の間に満たされた絶縁油とを備えている。X線管から放射されたX線は、ハウジングに設けられたX線放射口から外部に取り出されて利用される。
【0003】
X線管から放射されるX線のうち、この放射口以外の方向に放射されたX線が、もし遮蔽されなければ、ハウジング外部に利用されないX線として放射されてしまい、人体が不要に被曝する危険が生じる。このため、放射口以外の方向に放射されたX線をハウジングの内部で遮蔽する必要がある。一般的に、ハウジングの内面に1mm乃至3mm厚の鉛板を貼り付けることによってX線遮蔽を実現している(例えば、特許文献1参照)。
また、鉛代替のX線遮蔽材を用いた技術も開示されている(例えば、特許文献2乃至4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7006602号明細書
【特許文献2】米国特許第6494618号明細書
【特許文献3】特開2008−73539号公報
【特許文献4】特開2007−212304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ハウジング内面は多くの曲面から構成されている。ハウジング内面に鉛板を隙間なく貼り付けてゆく作業は非常に熟練を要するものである。このため、製造コストを下げてより安価にX線管装置を提供する上で、上記貼り付け作業は最大のネックである。
【0006】
近年、鉛が環境へ与えるリスクを回避するため、鉛代替のX線遮蔽材が普及しつつある。X線遮蔽材は、成型加工を目的とするブラスチック材料にX線不透過材料を混合した材料である。
【0007】
しかし、鉛板の替わりに上記X線遮蔽材を使って型成型することは非常に困難である。なぜならば、1mm乃至3mmの厚みで鉛板と同等のX線遮蔽能を得るためには、X線遮蔽材の80体積%近くをX線不透過材で形成する必要があるためである。この場合、型成型中のX線遮蔽材の流動性が極端に悪化し、さらに、成型されたX線遮蔽材の構造強度が低下してしまう。このため、鉛代替のX線遮蔽材は、比較的小さな部品やシート材料の製造に適用されるに止まっている。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、製造コストを低減できる回転陽極型X線管装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の態様に係る回転陽極型X線管装置は、
電子を放出する陰極と、前記陰極から放出される電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲットと、少なくとも前記陰極及び陽極ターゲットを収納した真空外囲器と、前記陽極ターゲットを固定し前記陽極ターゲットとともに回転可能に設けられた回転体と、前記回転体を回転可能に支持する固定体と、を有したX線管と、
前記回転体を回転させる回転駆動装置と、
少なくとも前記真空外囲器を収納したハウジングと、
前記真空外囲器及びハウジングの少なくとも一方に固定され、前記真空外囲器及びハウジング間に位置し、前記真空外囲器及びハウジングに隙間を置いて設けられ、前記X線を透過させるX線透過窓を有したX線遮蔽体と、
前記真空外囲器及びX線遮蔽体間、並びに前記X線遮蔽体及びハウジング間を含む前記X線管及びハウジング間を満たす冷却液と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、製造コストを低減できる回転陽極型X線管装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る回転陽極型X線管装置を示す断面図である。
【図2】上記回転陽極型X線管装置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態に係る回転陽極型X線管装置について詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る回転陽極型のX線管装置10を示す断面図である。
【0012】
図1に示すように、X線管装置10は、両端が閉塞した筒状のハウジング20と、ハウジング20内に収納されたX線管30と、ハウジング20の内部に充填され、X線管30及びハウジング20間を満たす冷却液7と、回転駆動装置としてのステータコイル910とを備えている。ハウジング20は、X線をハウジング20外部に放射する放射窓24を有している。この実施の形態において、ハウジング20の内面に、鉛板は貼り付けられていない。ハウジング20の内面は、冷却液7に接している。
【0013】
X線管30は、真空外囲器31を備えている。真空外囲器31は、真空容器32及び高電圧絶縁部材50等を備えている。この実施の形態において、真空容器32はガラスで形成されている。
【0014】
真空容器32には陽極35が間接的に取り付けられ、高電圧絶縁部材50には陰極36が間接的に取り付けられている。陰極36は、陽極35に照射する電子を放出するものである。陽極35及び陰極36は、真空外囲器31に収納されている。
【0015】
陽極35は、陽極ターゲット35aと、支持体35cとを有している。陽極ターゲット35aは、円盤状に形成されている。陽極ターゲット35aは、この陽極ターゲットの外面の一部に設けられたターゲット層35bを有している。ターゲット層35bは、陰極36から放出される電子が衝突されることによりX線を放出する。支持体35cは、陽極ターゲット35aを支持するものである。支持体35cは、陽極ターゲット35aと一体に形成されている。陽極35は、タングステン合金等の金属で形成されている。陽極35は、管軸を中心に回転可能である。陽極35には相対的に正の電圧が印加される。
【0016】
陰極36には電圧供給端子54が接続されている。電圧供給端子54は、陰極36に相対的に負の電圧を印加するともに陰極36のフィラメント(図示せず)に電流を供給するものである。
【0017】
X線管30は、ロータ920、軸受け930、固定体1及び回転体2を備えている。固定体1は、円柱状に形成され、真空容器32及び高電圧絶縁部材6に固定されている。固定体1は回転体2を回転可能に支持する。回転体2は筒状に形成され、固定体1と同軸的に設けられている。回転体2の外面にロータ920が取り付けられている。回転体2に支持体35cが固定されている。回転体2は、陽極35とともに回転可能に設けられている。
【0018】
固定体1の一部は、真空外囲器31の一部を形成している。高電圧絶縁部材6を貫通した個所の固定体1の先端は、電圧供給端子として機能する。陽極35には、固定体1の先端を介して高電圧が供給される。
【0019】
高電圧絶縁部材6は、一端が円錐形をし、他端が閉塞した管状に形成されている。高電圧絶縁部材6は、固定体1と、ハウジング20及びステータコイル910との間を電気的に絶縁するものである。
【0020】
高電圧絶縁部材50は、真空外囲器31の一部を形成している。高電圧絶縁部材50の内部には、陰極36に接続され、高電圧絶縁部材50の外部端面側へ導出する電圧供給端子54が設けられている。この実施の形態において、電圧供給端子54は高電圧供給端子である。電圧供給端子54は、高電圧絶縁部材50を貫通して設けられ、陰極36に高電圧を供給するものである。電圧供給端子54は低膨張合金であるKOV部材55で支持されている。KOV部材55及び陰極36間、並びにKOV部材55及び高電圧絶縁部材50間は、ろう付けされている。
【0021】
陽極用のレセプタクル100は、有底筒状のハウジング101と、端子102とを有している。ハウジング101は、ハウジング20に気密に取付けられている。ハウジング101は、絶縁性の材料として、例えば樹脂で形成されている。端子102は、ハウジング101内に設けられている。端子102は、ケーブルにより固定体1と電気的に接続されている。
【0022】
レセプタクル100及び図示しないプラグは、着脱可能に形成されている。プラグをレセプタクル100に連結した状態で、レセプタクル100は、固定体1に高電圧(例えば、+70〜80kV)を供給するものである。
【0023】
陰極用のレセプタクル200は、有底筒状のハウジング201と、端子202とを有している。ハウジング201は、ハウジング20に気密に取付けられている。ハウジング201は、絶縁性の材料として、例えば樹脂で形成されている。端子202は、ハウジング201内に設けられている。端子202は、ケーブルにより電圧供給端子54と電気的に接続されている。
【0024】
レセプタクル200及び図示しない他のプラグは、着脱可能に形成されている。プラグをレセプタクル200に連結した状態で、レセプタクル200は、電圧供給端子54に高電圧(例えば、−70〜80kV)を供給するものである。
【0025】
ターゲット層35bと対向したハウジング20の一端側に、空盆5が設けられている。空盆5は、ベローズ21と、ハウジング20の一端間隔を置いて位置した蓋部22とを有している。陽極35の回転軸に垂直な方向において、蓋部22はハウジング20に気密に取付けられている。蓋部22は、冷却液7が出入りする開口部22aを有している。なお、ハウジング20の一端には、雰囲気としての空気が出入りする通気孔20aが形成されている。
【0026】
ベローズ21は、ハウジング20及び蓋部22で囲まれた領域を開口部22aと繋がった第1領域及び通気孔20aと繋がった第2領域に区域する。ベローズ21は変形するように形成されている。ベローズ21は、第1領域及び第2領域の広狭を変化させることが可能な状態となるため、空盆5は、冷却液7の膨張及び収縮を吸収することができる。
【0027】
また、ターゲット層35bと対向したハウジング20の一端側にX線遮蔽部90が設けられている。X線遮蔽部90は、ターゲット層35bから放射されるX線を遮蔽するものである。X線遮蔽部90は、X線不透過材を含む材料で形成されている。X線遮蔽部90は、第1遮蔽部91、第2遮蔽部92及び第3遮蔽部93を有している。
【0028】
第1遮蔽部91は、円盤状に形成され、蓋部22に貼り付けられている。第1遮蔽部91は、蓋部22全体を覆っている。第1遮蔽部91は、開口部22aと対向した個所が開口して形成され、開口部22aによる冷却液7の出入りを維持している。
【0029】
第2遮蔽部92は、筒状に形成されている。第2遮蔽部92は、第1遮蔽部91上に形成されている。第3遮蔽部93は、第1遮蔽部91上に設けられている。第3遮蔽部93は、開口部22a付近から出射する恐れのあるX線を遮蔽するものである。
【0030】
防護体70は、真空外囲器31及びハウジング20の少なくとも一方に固定されている。ここでは、防護体70は、真空外囲器31に固定され、ハウジング20に間接的に固定されている。防護体70は、それぞれ真空容器32及びハウジング20に隙間を置いて設けられている。防護体70は、真空容器32及びハウジング20間に位置している。防護体70は、陽極ターゲット35aの回転軸に垂直な方向において、少なくとも陽極ターゲット35aと対向して位置している。
【0031】
防護体70はステンレス板のような延性材料からなる筒状で形成されている。防護体70は、X線を透過させるX線透過窓71を有している。X線透過窓71は放射窓24と対向している。ここでは、X線透過窓71は、防護体70の一部を開口した開口部である。
【0032】
防護体70は、陽極ターゲット35aが高速回転中に破損した場合、高い運動エネルギを有した状態で飛散する陽極ターゲット35aの破片のハウジング20への衝突を防護するものである。
【0033】
防護体70に陽極ターゲット35aの破片が衝突しても、防護体70は十分な変形を起こすことにより運動エネルギを吸収することができる。防護体70及びハウジング20は、隙間を置いて位置しているため、防護体70に変形が生じてもハウジング20自体の変形を防止できる。これにより、ハウジング20に生じる恐れのあった亀裂を防止することができる。
【0034】
X線遮蔽体80は、真空外囲器31及びハウジング20の少なくとも一方に固定されている。ここでは、X線遮蔽体80はハウジング20に固定され、真空外囲器31に間接的に固定されている。X線遮蔽体80は真空容器32及びハウジング20間に位置している。X線遮蔽体80はそれぞれ真空容器32及びハウジング20に隙間を置いて設けられている。
【0035】
X線遮蔽体80は、X線不透過材を含む材料で形成されている。X線不透過材は、少なくとも、タングステン、タンタル、モリブデン、バリウム、ビスマス、希土類金属及び鉛の何れか1つからなる金属、又はタングステン、タンタル、モリブデン、バリウム、ビスマス、希土類金属及び鉛の化合物の少なくとも1つを主材料として含有している。
【0036】
X線遮蔽体80は、筒状で形成されている。この実施の形態において、X線遮蔽体80は、鉛円筒で形成されている。鉛円筒の表面は、防食保護のため、錫、銀、銅、ニッケルなどの金属メッキや樹脂コーティングを形成している。
【0037】
この実施の形態において、防護体70及びX線遮蔽体80は、一体に形成されている。X線遮蔽体80は、防護体70及びハウジング20間に位置している。X線遮蔽体80は、防護体70の外面に鉛板を貼り付けることにより形成されている。
【0038】
X線遮蔽体80は、X線を透過させるX線透過窓81を有している。X線透過窓81は放射窓24及びX線透過窓71と対向している。ここでは、X線透過窓81は、X線遮蔽体80の一部を開口した開口部である。
X線遮蔽体80は、X線透過窓81以外の方向に放射されたX線を遮蔽するものである。X線遮蔽体80の一端部は、第1遮蔽部91及び第2遮蔽部92に近接している。このため、X線遮蔽体80及びX線遮蔽部90間の隙間から出射する恐れのあるX線を遮蔽することができる。
【0039】
防護体70及びX線遮蔽体80は、レセプタクル200が通る開口部を有している。X線遮蔽体80は、レセプタクル200の外周を囲んだ筒部82を有している。筒部82は、レセプタクル200を透過して外部に出射する恐れのあるX線を遮蔽することができる。
【0040】
防護体70の厚みは、0.5乃至3mmである。この実施の形態において、防護体70の厚みは、1mmである。X線遮蔽体80の厚みは、1乃至3mmである。この実施の形態において、X線遮蔽体80の厚みは、2.5mmである。陽極ターゲット35aの回転軸に垂直な方向において、真空容器32及びハウジング20間の隙間は、3乃至12mmである。この実施の形態において、真空容器32及びハウジング20間の隙間は、8mmである。
【0041】
防護体70(X線遮蔽体80)は、絶縁部材8により真空外囲器31に固定されている。X線遮蔽体80(防護体70)は、絶縁部材9によりハウジング20に固定されている。
【0042】
冷却液7は、ハウジング20内に充填され、X線管30及びハウジング20間を満たしている。冷却液7は、真空外囲器31及び防護体70間、並びにX線遮蔽体80及びハウジング20間を含む領域も満たしている。
冷却液7としては、絶縁油を用いることができる。
【0043】
このように構成されたX線管装置10では、ステータコイル910に所定の電流を印加することでロータ920が回転し、陽極ターゲット35a(陽極35)が回転する。次に、レセプタクル100、200に所定の高電圧を印加する。
【0044】
レセプタクル100に印加された高電圧は、固定体1、軸受け930及び回転体2を介して陽極35の陽極ターゲット35aに供給される。レセプタクル200に印加された高電圧は、電圧供給端子54を介して陰極36に供給される。
【0045】
これにより、陰極36から陽極ターゲット35aのターゲット層35bに電子ビームが放射され、陽極ターゲット35aからX線が放射され、X線は、真空容器32、X線透過窓71、81及び放射窓24を透過して外部へ放射される。
【0046】
上記のように構成された回転陽極型X線管装置によれば、回転陽極型X線管装置は、陰極36と、陽極ターゲット35aと、真空外囲器31と、回転体2と、固定体1とを有したX線管30と、ステータコイル910と、ハウジング20と、X線遮蔽体80と、X線管30及びハウジング20間を満たす冷却液7と、を備えている。
【0047】
X線遮蔽体80は、X線不透過材を含む材料で形成されている。X線遮蔽体80は、X線透過窓81以外の方向へのX線を遮蔽することができるため、例えば、X線管装置を医療診断機器に搭載した場合、人体への不要な放射(被曝)を防止することができる。
【0048】
X線遮蔽体80は、真空外囲器31及びハウジング20の少なくとも一方に固定されている。X線遮蔽体80は、真空外囲器31及びハウジング20に隙間を置いて設けられている。X線遮蔽体80は、真空外囲器31及びハウジング20間に位置している。ここでは、X線遮蔽体80は、防護体70の外面に鉛板を貼り付けることにより形成されている。X線遮蔽体80は、防護体70とともにハウジング20に固定されている。
ハウジング20の内面に鉛板を貼り付けたり、鉛板を鉛代替のX線遮蔽材に置き換える必要はないため、製造コストを低減することができる。
【0049】
防護体70は、真空外囲器31及びハウジング20の少なくとも一方に固定されている。防護体70は、真空外囲器31及びハウジング20に隙間を置いて設けられている。防護体70は、真空外囲器31及びハウジング20間に位置している。
【0050】
防護体70は、陽極ターゲット35aが高速回転中に破損した場合、高い運動エネルギを有した状態で飛散する陽極ターゲット35aの破片のハウジング20への衝突を防護するものである。防護体70に陽極ターゲット35aの破片が衝突しても、防護体70は十分な変形を起こすことにより運動エネルギを吸収することができる。
【0051】
これにより、ハウジング20に生じる恐れのあった亀裂を防止することができる。例えば、回転陽極型X線管装置を医療診断機器に搭載した場合、被検査体(例えば人体)に高温の冷却液7がかかってしまう危険性を排除することができる。
【0052】
上記したことから、製造コストを低減できる回転陽極型X線管装置を得ることができる。さらには、ハウジング20の破損を防止することができる回転陽極型X線管装置を得ることができる。
【0053】
防護体70は、ステンレスに限らず、その他金属、樹脂又はセラミクス等で形成することもできる。防護体70は、高圧電位との絶縁性を有することが最良であるので、樹脂やセラミクス等の絶縁性の材料で形成した方が好ましい。
【0054】
図2に示すように、X線遮蔽体80は、固体の樹脂材を主成分とし、X線不透過材を含む材料で形成されていても良い。この場合、防護体70無しにX線管装置を形成することができる。
【0055】
上記X線不透過材は、少なくとも、タングステン、タンタル、モリブデン、バリウム、ビスマス、希土類金属及び鉛の何れか1つからなる金属微粒子、又はタングステン、タンタル、モリブデン、バリウム、ビスマス、希土類金属及び鉛の化合物微粒子の少なくとも1つを主材料として含有していれば良い。
【0056】
固体の樹脂材は、少なくとも熱硬化性エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、芳香族ナイロン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、液晶ポリマー、及びメチルペンテンポリマー樹脂の何れか1つを含んでいれば良い。
【0057】
この場合、X線遮蔽部90は、防護体70と同一の材料で形成されていても良い。
【0058】
陽極35をモリブデンやモリブデン合金で形成した場合、陽極35はX線を遮蔽することができる。この場合、レセプタクル100の位置したハウジング20の他端側にX線遮蔽部を設けなくとも良い。陽極35がX線を透過させる場合、ハウジング20の他端側にもX線遮蔽部を設ければよい。
【0059】
防護体70を樹脂材で形成する場合、上記X線不透過材とともに、又は上記X線不透過材に代えて、補強繊維を含んでいると強度が増すため、より好ましい。補強繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維などを選択することができる。
【0060】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0061】
真空容器32はガラスで形成されているが、これに限らず各種材料にて形成することができる。例えば、真空容器32の少なくとも陽極ターゲットの回転軸に垂直な方向において、前記陽極ターゲットと対向して位置している部分を金属等の延性の材料で形成しても良い。この場合、回転陽極型X線管装置は、防護体70無しに形成することができる。またはX線遮蔽体を、防護体よりもより厚みが薄い材料からなる筒状部品と一体にして製作することができる。
【0062】
防護体70は、X線遮蔽体80及びハウジング20間に位置していても良い。
【0063】
この場合、X線遮蔽体80は、防護体70の内面に鉛板を貼り付ける等して形成されていれば良い。
この発明は、上記回転陽極型X線管装置に限らず、各種回転陽極型X線管装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…固定体、2…回転体、7…冷却液、10…X線管装置、20…ハウジング、30…X線管、31…真空外囲器、32…真空容器、35…陽極、35a…陽極ターゲット、35b…ターゲット層、35c…支持体、36…陰極、70…防護体、71…X線透過窓、80…X線遮蔽体、81…X線透過窓、910…ステータコイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を放出する陰極と、前記陰極から放出される電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲットと、少なくとも前記陰極及び陽極ターゲットを収納した真空外囲器と、前記陽極ターゲットを固定し前記陽極ターゲットとともに回転可能に設けられた回転体と、前記回転体を回転可能に支持する固定体と、を有したX線管と、
前記回転体を回転させる回転駆動装置と、
少なくとも前記真空外囲器を収納したハウジングと、
前記真空外囲器及びハウジングの少なくとも一方に固定され、前記真空外囲器及びハウジング間に位置し、前記真空外囲器及びハウジングに隙間を置いて設けられ、前記X線を透過させるX線透過窓を有したX線遮蔽体と、
前記真空外囲器及びX線遮蔽体間、並びに前記X線遮蔽体及びハウジング間を含む前記X線管及びハウジング間を満たす冷却液と、を備えている回転陽極型X線管装置。
【請求項2】
前記X線遮蔽体は、タングステン、タンタル、モリブデン、バリウム、ビスマス、希土類金属及び鉛の何れか1つからなる金属、又はこれらの化合物の少なくとも1つを主材料として含有している請求項1に記載の回転陽極型X線管装置。
【請求項3】
前記X線遮蔽体は、筒状に形成されている請求項1又は2に記載の回転陽極型X線管装置。
【請求項4】
前記X線遮蔽体は、絶縁材を主成分とする材料で形成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転陽極型X線管装置。
【請求項5】
前記真空外囲器は、ガラスで形成され、
前記X線遮蔽体は、前記陽極ターゲットの破片の運動エネルギを吸収可能である請求項1に記載の回転陽極型X線管装置。
【請求項6】
前記真空外囲器及びハウジングの少なくとも一方に固定され、前記真空外囲器及びハウジング間に位置し、前記真空外囲器及びハウジングに隙間を置いて設けられ、前記X線を透過させるX線透過窓を有し、前記陽極ターゲットの破片の運動エネルギを吸収可能な防護体をさらに備え、
前記防護体のX線透過窓及びX線遮蔽体のX線透過窓は、対向して位置し、
前記真空外囲器は、ガラスで形成されている請求項1に記載の回転陽極型X線管装置。
【請求項7】
前記防護体は、前記陽極ターゲットの回転軸に垂直な方向において、前記陽極ターゲットと対向して位置している請求項6に記載の回転陽極型X線管装置。
【請求項8】
前記防護体は、延性材料で形成されている請求項6又は7に記載の回転陽極型X線管装置。
【請求項9】
前記防護体は、筒状に形成されている請求項6乃至8の何れか1項に記載の回転陽極型X線管装置。
【請求項10】
前記防護体は、前記真空外囲器及X線遮蔽体間に位置している請求項6乃至9の何れか1項に記載の回転陽極型X線管装置。

【図1】
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【図2】
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