説明

回転電機のケース

【課題】回転電機のケースの剛性アップ、面振動防止、コスト低減を図り、冷却流体の流れを制御可能にする。
【解決手段】モータのステータの外周側に配置されたケース1において、ケース1の内部に周方向に沿って設けられ冷却流体が流通可能な冷却通路2a〜2dと、冷却通路2a〜2dに連通する冷却水入口孔4および冷却水出口孔6と、冷却通路2a〜2dの内部に設けられ、内側壁部12と外側壁部13とを周方向に沿って連結し、ケース1の軸方向に互いに離間して配置されたリブ14A〜14Cと、を備え、冷却水入口孔4は、その中心軸をケース1の軸方向と平行に配置して、軸方向一方の端部側に配置された冷却通路2aに連通し、リブ14A〜14Cは、冷却水入口孔4の中心軸延長線上で軸方向一方側から軸方向他方側に貫通する貫通孔19A〜19Cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内転型回転電機のケースに関する。
【背景技術】
【0002】
ケースの内側に円環状のステータが固定され、このステータの内側においてロータが回転する内転型モータが知られている。前記ステータは、ステータコアの複数のスロットにコイルが巻回されて構成されており、前記コイルに例えば三相の電流を流すことで発生させた回転磁界によって、永久磁石を備えたロータを回転させる。
【0003】
ステータのコイルに電流を流すとコイルおよびステータコアが発熱し、ステータコアの温度が上昇する。これに対して、外気への自然放熱だけに頼らず、前記ケースの内部に冷却通路を設け、この冷却通路に冷却流体を流通させることによって、ステータコアの熱をケースを介して冷却流体に放熱し、ステータの温度上昇を積極的に抑制するように構成した回転電機がある。
上述のように内部に冷却通路を備えたケースでは、ケースの剛性を上げるために、冷却通路内に、ケースの内壁と外壁とを連結する円柱状の支柱を分散させて配置されている。また、ケースの外壁の面振動を防止するために、ケースの外壁の外表面にリブが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−41835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、冷却通路内に円柱状の支柱を分散させて配置する構造は、鋳造時の中子型割が複雑となり、中子砂抜きの工数が大きくなって、製造コストが上がる。更に、冷却通路内に円柱状の支柱を分散して配置すると、冷却通路を流れる冷却流体の流れ方向を制御するのが困難となる。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、剛性アップおよび面振動防止を図りつつ、コストを低減でき、冷却流体の流れを制御し易い回転電機のケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用した。
(1)すなわち、本発明の一態様に係る回転電機のケースは、内転型回転電機のステータの外周側に配置された筒状の回転電機のケースであって、このケースの内部に前記ケースの周方向に沿って設けられて冷却流体が流通可能な冷却通路と、前記冷却通路に連通する冷却流体インレットおよび冷却流体アウトレットと、前記冷却通路の内部に設けられ、前記冷却通路の前記ケースの径方向の内側の壁部と前記径方向の外側の壁部とを前記周方向に沿って連結し、前記冷却通路を複数に区画するリブと、を備え、前記冷却流体インレットは、前記リブによって区画された前記冷却通路のうちの前記ケースの軸方向の一方側の端部に配置された前記冷却通路に連通し、前記冷却流体インレットの中心軸は、前記ケースの軸方向の一方側から前記軸方向の他方側に向かって延びるように配置され、前記リブは、前記冷却流体インレットの前記中心軸の延長線上で前記冷却通路における前記中心軸に沿った方向の一方側から前記中心軸に沿った方向の他方側に貫通する第1の開口を有する。
【0008】
(2)上記(1)に記載の回転電機のケースでは、前記第1の開口の開口面積は、前記冷却流体インレットの開口面積よりも小さくてもよい。
【0009】
(3)上記(1)に記載の回転電機のケースでは、前記リブは、前記冷却流体インレットと前記冷却流体アウトレットとの間の前記周方向位置にて、前記冷却通路における前記軸方向の一方側から前記軸方向の他方側に貫通する第2の開口を有し、前記第2の開口に連通するとともに、前記第2の開口から前記径方向の外側に向かって膨出して形成された拡開室が設けられていてもよい。
【0010】
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の回転電機のケースでは、前記リブを複数備え、これらリブのそれぞれに設けられた前記第1の開口は、前記冷却流体インレットの前記中心軸の前記延長線を中心として配置され、前記第1の開口の開口面積が、前記軸方向の一方側に配置された前記リブの前記第1の開口から前記軸方向の他方側に配置された前記リブの前記第1の開口に進むにしたがって小さくなっていてもよい。
【0011】
(5)上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の回転電機のケースでは、前記リブを複数備え、これらリブのそれぞれに設けられた前記第1の開口の中心が、前記軸方向の一方側に配置された前記リブの前記第1の開口から前記軸方向の他方側に配置された前記リブの前記第1の開口に進むにしたがって徐々に前記周方向にずれていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記(1)に記載の回転電機のケースでは、冷却通路の径方向内側の壁部と径方向外側の壁部とがリブによって周方向に沿って連結されている。そのため、ケースの剛性が向上し、ケースの外周部の面振動を抑制できる。また、冷却通路の内部に、周方向に沿ってリブを設けるだけの構造であるので、冷却通路の形状が簡素化し、鋳造時の中子型割及び中子の砂抜きも容易にでき、砂残り量を大幅に低減できる。その結果、砂抜き工数を減らすことができ、生産コストを低減できる。
更に、リブを周方向に沿って設けたことにより、リブの冷却水伝熱面積が増大する。加えて、リブをケースの軸方向に互いに離間して配置することで冷却通路を複数に区画しているので、冷却流体が周方向に流れ易くなって圧力損失が低減し、その結果、冷却能力が向上する。
その上、リブには、冷却流体インレットの中心軸延長線上に開口が設けられているので、冷却流体インレットから流入した冷却流体はこの開口を通過することによって、中心軸方向にも分配され、さらに周方向に分配される。したがって冷却流体をリブによって区画された各冷却通路に分配できる。
また、リブの高さを低くすることにより、冷却流体の流速を上げ、冷却能力を高めることが可能である。また、リブの高さを低くすることにより、ケースの小型・軽量化を図ることができ、ひいては回転電機の小型・軽量化を図ることができる。
【0013】
上記(2)に記載の回転電機のケースでは、冷却流体インレットから流入した冷却流体を、中心軸方向に均一に分配可能となる。
【0014】
上記(3)に記載の回転電機のケースでは、冷却通路を流れる冷却流体が拡開室に流入し乱流となるので、拡開室付近の冷却を促進できる。
【0015】
上記(4)に記載の回転電機のケースでは、冷却流体インレットから流入した冷却流体を、中心軸方向に均一に分配可能となる。
【0016】
上記(5)に記載の回転電機のケースでは、冷却流体インレットから流入した冷却流体の周方向への流量調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一の実施形態に係る回転電機のステータおよびケースの外観斜視図である。
【図2】第一の実施形態に係る回転電機のステータおよびケースの断面図である。
【図3】第一の実施形態に係る回転電機のケースを軸方向に対して直交する方向に切った全体断面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】第一の実施形態に係る回転電機のケースにおいて、冷却流体インレットおよび冷却流体アウトレットを含む位置において直径方向に切った場合の斜視図である。
【図6】図3のB−B断面図である。
【図7】第一の実施形態に係る回転電機のケース内の冷却通路の形状を示す斜視図である。
【図8】第二の実施形態に係る回転電機のケースにおいて、図6に対応する断面図である。
【図9】図8のC−C断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る回転電機のケースを図1から図9の図面を参照して説明する。この実施形態における回転電機はモータとしての態様であり、特に走行用駆動源として車両に搭載されるモータとしての態様である。
初めに、この第一の実施形態に係る回転電機のケースを図1から図7の図面を参照して説明する。
図1において符号1は、内転型モータ(回転電機)のケースである。符号50は前記モータのステータであって、ステータ50はケース1の内側に固定されている。つまり、ケース1はステータ50の外側に配置されている。
【0019】
図1、図2に示すように、ステータ50は、円環状のステータコア51において径方向内側に突出するようにして形成された複数のティース54と、隣接するティース54,54間に形成された複数のスロット52と、複数のスロット52に巻回される複数のコイル53とから構成されている。このステータ50の内側には、図示しないロータが配置され、コイル53に三相の電流を流すことで回転磁界が発生し、前記ロータが回転する。
【0020】
ケース1は、アルミニウム製で、アルミダイキャスト加工、またはグラビティ鋳造等により製造される。ケース1は、ステータ50の外周を包囲するようにリング状をなし、ケース1の軸方向長さはステータコア51の軸方向長さよりも長い。本実施形態において、ケース1の軸方向は、前記ロータの軸方向(ステータ50の軸方向)と一致する。
【0021】
図2、図3に示すように、ケース1の内部には、冷却水(冷却流体)が流通可能な冷却通路2が形成されている。また、ケース1の軸方向一端側の端面3には、冷却水を導入するための冷却水入口孔(冷却流体インレット)4がその中心軸をケース1の軸方向と平行に配置して設けられている。ケース1の外周面5の軸方向略中央であって冷却水入口孔4から周方向に約180度離間した部位には、冷却水を排出するための冷却水出口孔(冷却流体アウトレット)6が、その中心軸をケース1の軸方向と直角に配置して設けられている。冷却水入口孔4と冷却水出口孔6は冷却通路2に連通している。
【0022】
冷却通路2は、ケース1を鋳造する際に金型内にセットされた砂型中子を取り除くことによって形成される。ケース1の外周面5には、前記中子を前記金型内にて径方向に位置決め支持するための3つの中子支え孔7a,7b,7c(以下、区別する必要がない場合は「中子支え孔7」と記す)が、周方向90度間隔に設けられている。3つの中子支え孔7a,7b,7cのうち周方向中央に配置された中子支え孔7bは、冷却水入口孔4から周方向に約30度離間して配置されている。他の中子支え孔7a,7cはそれぞれ冷却水出口孔6または冷却水入口孔4から周方向に約60度離間して配置されている。中子支え孔7は冷却通路2に連通しており、鋳造後に中子の砂を排出するための砂排出孔を兼ねている。図1、図2に示すように、中子支え孔7は、完成品としてのステータ50とするときに、キャップ60によって塞がれる。
【0023】
図3から図6を参照して、冷却通路2について詳述する。図3はケース1を軸方向に対して直交する方向に切った全体断面図である。図4は図3のA−A断面図である。図5はケース1の冷却水入口孔4および冷却水出口孔6を含む位置において直径方向に切った場合の斜視図である。図6は図3のB−B断面図である。
【0024】
図2、図4に示すように、ケース1は、軸方向中央部にステータ取付部10が形成され、ステータ取付部10よりも軸方向両側に連結端部11,11が設けられている。冷却通路2は、ステータ取付部10の内部に形成されており、冷却通路2よりも径方向内側に形成された内側壁部12と、径方向外側に形成された外側壁部13と、軸方向両側の連結端部11,11によって囲まれて形成され、リング状をなしている。
冷却通路2の厚み、すなわち内側壁部12と外側壁部13との間隔は、図3、図5に示すように、冷却水入口孔4と冷却水出口孔6の近傍において周方向のその他の位置よりも大きくなっている。冷却水入口孔4と冷却水出口孔6の近傍以外の部分では周方向においても軸方向においても同一寸法となっている。
【0025】
ステータ取付部10において内側壁部12の内径は連結端部11の内径よりも若干小径とされている。この内側壁部12にステータ50が焼き嵌め等の方法によって嵌合固定され、内側壁部12の内周面とステータコア51の外周面とが面接触するように形成されている。内側壁部12の内周面とステータコア51の外周面とを面接触させることにより、ステータコア51とケース1との間の熱伝導性が向上する。その結果、ステータコア51の熱がケース1を介して冷却水あるいは空気に放熱し易くなり、冷却性能が向上する。
【0026】
図2、図4、図5に示すように、冷却通路2は、ケース1の軸方向に互いに離間して配置された3つのリブ14A,14B,14C(以下、区別する必要がない場合は「リブ14」と記す)によって、軸方向に対して4分割されている。以下、説明上、必要がある場合には、冷却通路2a,2b,2c,2dと区別する。リブ14は内側壁部12と外側壁部13とを周方向に沿って連結している。隣接するリブ14同士は、平行となるように配置されている。
【0027】
各リブ14は周方向に複数に分割されている。図3を参照して詳述すると、各リブ14には、中子支え孔7a,7b,7cが配置されている位置においてそれぞれ開口(第2の開口)15が形成され、冷却水出口孔6が配置されている位置において開口16が形成され、開口15,15間に開口17が形成され、開口15と開口16の間に開口18が形成されている。これら6つの開口15,16,17,18は各リブ14を軸方向に貫通しており、これにより各リブ14は周方向に6つに分割されている。
【0028】
各リブ14A,14B,14Cには、冷却水入口孔4の中心軸延長線上に冷却水分配用の円形の貫通孔(開口)19A,19B,19C(以下、区別する必要がない場合は「貫通孔19」と記す)が、中心軸方向に貫通して形成されている。各貫通孔19の中心は冷却水入口孔4の中心軸延長線上に位置している。
図5、図6に示すように、これら貫通孔19A,19B,19Cの開口面積を比較すると、冷却水入口孔4に一番近い側に配置されたリブ14Aの貫通孔19Aの開口面積が一番大きい。中心軸方向の中間に配置されたリブ14Bの貫通孔19Bの開口面積は貫通孔19Aの開口面積より小さく、冷却水入口孔4から一番離れて配置されたリブ14Cの貫通孔19Cの開口面積は貫通孔19Bの開口面積よりも小さい。すなわち、冷却水入口孔4から遠ざかるにしたがって貫通孔19の開口面積が小さくなっている。この各貫通孔の開口面積比は自由に設定可能である。
例えば、軸方向に4分割された冷却通路2a,2b,2c,2dに均一(同一流量)に冷却水を流したい場合には、冷却水入口孔4の開口面積をSとしたときに、貫通孔19Aの開口面積を(3/4)Sとし、貫通孔19Bの開口面積を(1/2)Sとし、貫通孔19Cの開口面積を(1/4)Sとすればよい。
【0029】
図7は、冷却通路2のみを表した斜視図である。図7を参照してケース1における冷却水の流れを説明する。
冷却水入口孔4から流入した冷却水は、冷却水入口孔4に一番近い第1冷却通路2aに流入する。第1冷却通路2aに流入した冷却水の一部が第1冷却通路2aの周方向に沿って左右二手に分かれ、冷却水出口孔6に向かって流れる。第1冷却通路2aの周方向に流れていかなかった冷却水は、リブ14Aの貫通孔19Aを通って第2冷却通路2bに流入する。第2冷却通路2bに流入した冷却水の一部が第2冷却通路2bの周方向に沿って左右二手に分かれ、冷却水出口孔6に向かって流れる。第2冷却通路2bの周方向に流れていかなかった冷却水は、リブ14Bの貫通孔19Bを通って第3冷却通路2cに流入する。第3冷却通路2cに流入した冷却水の一部が第3冷却通路2cの周方向に沿って左右二手に分かれ、冷却水出口孔6に向かって流れる。第3冷却通路2cの周方向に流れていかなかった冷却水は、リブ14Cの貫通孔19Cを通って第4冷却通路2dに流入し、第4冷却通路2dの周方向に沿って左右二手に分かれ、冷却水出口孔6に向かって流れる。
つまり、リブ14A,14B,14Cには冷却水入口孔4の中心軸延長線上に貫通孔19A,19B,19Cが設けられているので、冷却水入口孔4から流入した冷却水は、貫通孔19A,19B,19Cを通過することによって中心軸方向に分配できる。さらに、リブ14A,14B,14Cがケース1の周方向に沿ってほぼ全周に設けられているので、冷却水を周方向に分配できる。
【0030】
中子支え孔7a,7b,7cが配置されている周方向位置では、開口15によって冷却通路2b,2cが連通している。中子支え孔7a,7b,7cにキャップ60を取り付けた状態であっても、中子支え孔7a,7b,7cに対応する部分が拡開室として径方向外側に膨出しているので、図7に示すように、冷却通路2b,2cを流れる冷却水がこの中子支え孔7a,7b,7cに流入して乱流が生じる。その結果、この拡開室(中子支え孔7a,7b,7c)において冷却効果が大きくなることを、出願人は解析の結果より明らかにしている。
【0031】
上述のように構成されたモータのケース1によれば、冷却通路2が形成されているステータ取付部10において内側壁部12と外側壁部13とがリブ14A,14B,14Cによって周方向に沿ってほぼ全周で連結されているので、ケース1の剛性が向上し、ケース1の外周部の面振動を抑制できる。
また、冷却通路2の内部に、周方向に沿ってリブ14A,14B,14Cを設けるだけの構造であるので、冷却通路2の形状が簡素化し、鋳造時の中子型割も容易となり、中子の砂抜きも容易にでき、砂残り量が低減する。その結果、砂抜き工数を減らすことができるとともに、生産コストを低減できる。
【0032】
また、リブ14A,14B,14Cを周方向に沿ってほぼ全周に設けたことにより、リブ14A,14B,14Cの冷却水伝熱面積が増大する。加えて、リブ14A,14B,14Cをケース1の軸方向に互いに離間して配置することで冷却通路2を4つの冷却通路2a,2b,2c,2dに区画しているので、冷却水が周方向に流れ易くなり、圧力損失が低減する。その結果、冷却能力が向上する。
また、リブ14の高さを低くすることにより、冷却水の流速を上げ、冷却能力を高めることが可能である。また、リブ14の高さを低くすることにより、ケース1の小型・軽量化を図ることができ、ひいてはモータの小型・軽量化を図ることができる。
また、リブ14には、冷却水入口孔4の中心軸延長線上に貫通孔19が設けられているので、冷却水入口孔4から流入した冷却水はこの貫通孔19を通過することによって、中心軸方向に分配され、さらに周方向に分配される。したがって冷却水をリブ14によって区画された冷却通路2a,2b,2c,2dに分配できる。
【0033】
前述したように、貫通孔19A,19B,19Cの開口面積比は、流量分配の仕方に応じて自由に設定可能である。例えば、第一の実施形態に係る回転電機のケースにおいて中央の貫通孔19Bの開口面積を一番大きくして、冷却通路2a,2bよりも冷却通路2b,2cに冷却水を多く流れるようにすることも可能である。つまり、リブ14に設ける貫通孔19の大きさによって、軸方向に冷却水を分配する際の流量調整が容易にできる。
また、前述したように、拡開室(中子支え孔7a,7b,7c)において冷却効果を大きくできる。
【0034】
次に、第二の実施形態に係る回転電機のケース1を図8、図9の図面を参照して説明する。
第二の実施形態に係る回転電機のケース1が第一の実施形態に係る回転電機のケースと異なる点は、リブ14A,14B,14Cに設けた貫通孔19A,19B,19Cの形態である。それ以外の構成については第一の実施形態に係る回転電機のケースと同じであるので説明を省略する。相違点だけを図8、図9を参照して説明する。
図8は、第一の実施形態に係る回転電機のケースにおける図6に対応する断面図である。図9は図8のC−C断面を模式的に示した図である。
【0035】
第二の実施形態に係る回転電機のケースにおいては、冷却水入口孔4とリブ14A,14B,14Cに形成された貫通孔19A,19B,19Cの内径が全て同一径である点が第一の実施形態に係る回転電機のケースと相違する。また、貫通孔19A,19B,19Cは、冷却水入口孔4の中心軸延長線を包含して中心軸方向に重複して配置されているが、各孔4,19A,19B,19Cの中心が周方向同一方向に徐々にずれて配置されている点が、第一の実施形態に係る回転電機のケースと相違する。
【0036】
上記のように貫通孔19A,19B,19Cを形成すると、各貫通孔19A,19B,19Cの実質的な開口は図9において実線矢印R1,R2,R3で示すように狭まる。そのため、貫通孔19Aの実質的な開口面積を冷却水入口孔4の開口面積よりも小さくできる。貫通孔19Bの実質的な開口面積を貫通孔19Aの実質的な開口面積よりも小さくでき、貫通孔19Cの実質的な開口面積を貫通孔19Bの実質的な開口面積よりも小さくきる。すなわち、第二の実施形態に係る回転電機のケースの場合も第一の実施形態に係る回転電機のケースの場合と同様に、冷却水を軸方向に所定の流量比(均等も含む)で分配できる。
【0037】
冷却水は冷却水入口孔4から冷却通路2aに流入した際に、リブ14Aにおいて冷却水入口孔4よりも周方向に突き出ている突出部W1に衝突する。そのため、この突出部W1を有する側へ周方向に延びる冷却通路2aへ流れる冷却水流量Q1は、周方向反対側へ延びる冷却通路2aに流れる冷却水流量Q2よりも多くなる。
リブ14Bにおいて貫通孔19Aよりも周方向に突き出ている突出部W2、および、リブ14Cにおいて貫通孔19Bよりも周方向に突き出ている突出部W3も同様の作用がある。すなわち、突出部W2,W3を有する側へ周方向に延びる冷却通路2b,2cへ流れる冷却水流量Q1は、周方向反対側へ延びる冷却通路2b,2cに流れる冷却水流量Q2よりも多くなる。
【0038】
図9は、冷却水をケース1の軸方向に均等に分配した場合を示している。図9において、ケース1の軸方向は車軸の延びる方向と一致しており、ケース1の径方向の一方側が車体前方(Fr)、他方側が車体後方(Rr)に配置された場合を示している。この場合、ケース1において車体後方側に配置された部分での冷却能力が、車体前方側に配置された部分の冷却能力よりも大きくなる。つまり、リブ14A,14B,14Cに突出部W1,W2,W3を設けることで、車体前方側の周方向と車体後方側の周方向に対する流量調整が可能となり、冷却能力をケース1の車体前後側で変えることができる。
第二の実施形態に係る回転電機のケースにおいても、第一の実施形態に係る回転電機のケースと同様に、貫通孔19A,19B,19Cの内径を変えて開口面積比による流量調整を行うことも可能である。
【0039】
〔他の実施形態〕
この発明は前述した実施形態に限られるものではない。
例えば、リブ14の本数、リブ14間の離間寸法(すなわちリブ間隔)、軸方向および周方向の冷却流体の流量配分は、ケース1の温度分布に応じて適宜設定可能である。
回転電機はモータに限るものではなく、発電機(ジェネレータ)であってもよいし、モータジェネレータであってもよい。
冷却流体は冷却水に限るものではなく、冷却液あるいは冷却ガスであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、剛性アップおよび面振動防止を図りつつ、コストを低減でき、冷却流体の流れを制御し易い、回転電機のケースが得られる。
【符号の説明】
【0041】
1 ケース
2 冷却通路
4 冷却水入口孔(冷却流体インレット)
6 冷却水出口孔(冷却流体アウトレット)
7,7a,7b,7c 中子支え孔(拡開室)
12 内側壁部(冷却通路の径方向内側の壁部)
13 外側壁部(冷却通路の径方向外側の壁部)
14,14A,14B,14C リブ
15 開口(第2の開口)
19,19A,19B,19C 貫通孔(第1の開口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内転型回転電機のステータの外周側に配置された筒状の回転電機のケースであって、
このケースの内部に前記ケースの周方向に沿って設けられて冷却流体が流通可能な冷却通路と、
前記冷却通路に連通する冷却流体インレットおよび冷却流体アウトレットと、
前記冷却通路の内部に設けられ、前記冷却通路の前記ケースの径方向の内側の壁部と前記径方向の外側の壁部とを前記周方向に沿って連結し、前記冷却通路を複数に区画するリブと、
を備え、
前記冷却流体インレットは、前記リブによって区画された前記冷却通路のうちの前記ケースの軸方向の一方側の端部に配置された前記冷却通路に連通し、前記冷却流体インレットの中心軸は、前記ケースの軸方向の一方側から前記軸方向の他方側に向かって延びるように配置され、
前記リブは、前記冷却流体インレットの前記中心軸の延長線上で前記冷却通路における前記中心軸に沿った方向の一方側から前記中心軸に沿った方向の他方側に貫通する第1の開口を有する、
ことを特徴とする回転電機のケース。
【請求項2】
前記第1の開口の開口面積は、前記冷却流体インレットの開口面積よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の回転電機のケース。
【請求項3】
前記リブは、前記冷却流体インレットと前記冷却流体アウトレットとの間の前記周方向位置にて、前記冷却通路における前記軸方向の一方側から前記軸方向の他方側に貫通する第2の開口を有し、
前記第2の開口に連通するとともに、前記第2の開口から前記径方向の外側に向かって膨出して形成された拡開室が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転電機のケース。
【請求項4】
前記リブを複数備え、これらリブのそれぞれに設けられた前記第1の開口は、前記冷却流体インレットの前記中心軸の前記延長線を中心として配置され、前記第1の開口の開口面積が、前記軸方向の一方側に配置された前記リブの前記第1の開口から前記軸方向の他方側に配置された前記リブの前記第1の開口に進むにしたがって小さくなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転電機のケース。
【請求項5】
前記リブを複数備え、これらリブのそれぞれに設けられた前記第1の開口の中心が、前記軸方向の一方側に配置された前記リブの前記第1の開口から前記軸方向の他方側に配置された前記リブの前記第1の開口に進むにしたがって徐々に前記周方向にずれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転電機のケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−9597(P2013−9597A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225921(P2012−225921)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【分割の表示】特願2012−533415(P2012−533415)の分割
【原出願日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】