説明

回転電機の冷却構造

【課題】ゴムキャップが抜け落ちることを抑制する回転電機の冷却構造を提供することである。
【解決手段】回転電機100の冷却構造は、回転電機100を冷却する冷却液を流す冷却パイプ800と、冷却パイプ800の端部に設けられ冷却パイプ800を保持するブラケット840と、ブラケット840より先端に設けられたゴムキャップ830と、を備え、ブラケット840は、冷却パイプ800の径方向の外側に延び、冷却パイプ800の軸方向の上記先端側へ曲がったフランジ形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される電動機や発電機等の回転電機は、ロータと、ロータの周囲に配設され、ステータコイルが巻回されたステータとを備えている。そして、ロータの回転時にステータコイルに電流が流れると、ステータコイル等が発熱する。これらの発熱は、回転電機の運転効率(回転効率、発電効率)を低下させてしまう可能性がある。したがって、回転電機の運転効率を維持するために、回転電機を冷却する必要がある。
【0003】
このような回転電機は、通常、ケースで覆われた形で車両に搭載される。したがって、回転電機の冷却には、冷却液が流れる冷却パイプをケース内に設け、冷却パイプに設けられる吐出口から回転電機に冷却液を滴下して冷却することが考えられている。
【0004】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、筐体と、筐体内に設けられた被冷却物と別体に設けられ、被冷却物の冷却用の液体が流れるパイプと、パイプの一端に設けられ、筐体の内面に当接する支持部と、パイプの他端に設けられ、筐体に圧入される弾性部材とを備えた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−209160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、冷却パイプの先端には、冷却パイプを保護する等のために、ゴムキャップが設けられている。そして、先端部分にゴムキャップが取り付けられた冷却パイプをケースに組み付ける際の作業中等において、ゴムキャップが周囲の物に当たって抜け落ちる可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、ゴムキャップが抜け落ちることを抑制する回転電機の冷却構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回転電機の冷却構造は、回転電機を冷却する冷却液を流すパイプと、前記パイプの端部に設けられ前記パイプを保持するブラケットと、前記ブラケットより先端に設けられた弾性部材と、を備え、前記ブラケットは、前記パイプの径方向の外側に延び、前記パイプの軸方向の前記先端側へ曲がったフランジ形状を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る回転電機の冷却構造において、前記ブラケットは、前記弾性部材の一部を覆うことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、弾性部材が取り付けられたパイプをケースに取り付ける際の作業中等において、周囲の物が弾性部材よりも外径側に設けられるブラケットに当たる。これにより、当該物が弾性部材に当たることを防ぐことができる。したがって、弾性部材が抜け落ちることを抑制する回転電機の冷却構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る回転電機の冷却構造において、当該回転電機の冷却構造が適用される駆動ユニットの模式断面図である。
【図2】図1の駆動ユニットのステータ周辺を示す拡大模式断面図である。
【図3】本実施形態に係る回転電機の冷却構造において、ゴムキャップを冷却パイプの軸方向から見た状態を示す図である。
【図4】本実施形態に係る回転電機の冷却構造において、冷却パイプにブラケットとゴムキャップを取付けた状態を示す拡大図である。
【図5】本実施形態に係る回転電機の冷却構造において、ゴムキャップとブラケットとの関係を示す拡大模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を用いて、本発明の一実施形態に係る実施の形態を詳細に説明する。また、以下では、全ての図面において、同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る回転電機100,200の冷却構造が適用される駆動ユニット1の模式断面図である。図1に示すように、駆動ユニット1は、回転電機100,200と、プラネタリギヤ機構300と、減速機構400と、デファレンシャル機構500と、ドライブシャフト受け部600と、ケーシング700を備えている。回転電機100,200、プラネタリギヤ機構300、減速機構400およびデファレンシャル機構500は、ケーシング700内に設けられる。
【0014】
回転電機100,200は、それぞれ、軸受け120,220を介してケーシング700に回転可能に取り付けられた回転シャフト110,210と、回転シャフト110,210に取り付けられたロータ130,230と、ステータ140,240とを有する。
【0015】
ロータ130,230は、ぞれぞれ、ロータコアと、ロータコアに埋設された磁石とを有する。ロータコアは、例えば鉄又は鉄合金などの板状の磁性体を積層することにより構成される。磁石は、例えば、ロータコアの外周近傍にほぼ等間隔を隔てて配置される。
【0016】
ステータ140,240は、それぞれ、リング上のステータコア141,241と、ステータコア141,241に巻回されるステータコイル142,242と、を有する。ステータコイル142,242は、それぞれ、ケーブルを介してバッテリ(不図示)と電気的に接続されている。
【0017】
ステータコア141,241は、鉄または鉄合金などの板状の磁性体を積層することにより構成される。ステータコア141,241の内周面上には複数のティース部(不図示)およびティース部間に形成される凹部としてのスロット部(不図示)が形成されている。スロット部は、ステータコア141,241の周側に開口するように設けられる。
【0018】
駆動ユニット1の動作時において、エンジン(不図示)から出力された動力は、シャフト2に伝達され、プラネタリギヤ機構300により2経路に分割される。
【0019】
上記2経路のうちの一方は、減速機構400から、デファレンシャル機構500を介してドライブシャフト受け部600に伝達される経路である。ドライブシャフト受け部600に伝達された駆動力は、ドライブシャフト(不図示)を介して車輪(不図示)に回転力として伝達される。
【0020】
もう一方は、回転電機100を駆動させて発電する経路である。回転電機100は、プラネタリギヤ機構300により分配されたエンジン(不図示)の動力により発電する。回転電機100により発電された電力は、車両の走行状態や、バッテリの状態に応じて使い分けられる。例えば、車両の通常走行時および急加速時においては、回転電機100により発電された電力はそのまま回転電機200を駆動させる電力となる。一方、バッテリにおいて定められた条件の下では、回転電機100により発電された電力は、不図示のインバータおよびコンバータを介してバッテリに蓄えられる。
【0021】
回転電機200は、バッテリに蓄えられた電力および回転電機100により発電された電力のうちの少なくとも一方の電力により駆動する。回転電機200の駆動力は、減速機構400からデファレンシャル機構500を介してドライブシャフト受け部600に伝達される。このようにすることで、回転電機200からの駆動力によりエンジンの駆動力をアシストしたり、回転電機200からの駆動力のみにより車両を走行させたりすることができる。
【0022】
一方、ハイブリッド車両の回生制動時には、車輪は車体の慣性力により回転させられる。車輪からの回転力によりドライブシャフト受け部600、デファレンシャル機構500および減速機構400を介して回転電機200が駆動される。このとき、回転電機200が発電機として作動する。このように、回転電機200は、制動エネルギーを電力に変換する回生ブレーキとして作用する。回転電機200により発電された電力は、インバータを介してバッテリに蓄えられる。なお、回転電機100,200の用途は、ハイブリッド車に限定されず、他の電動車両(例えば、燃料電池車や電動自動車)に搭載されてもよい。
【0023】
上記のように構成される駆動ユニット1において、回転電機100,200のステータコイル142,242は、駆動力の発生時、および発電時に発熱する。そして、冷却ポンプ等を用いて、後述するようにケーシング700内に固定された冷却パイプに、冷却液(オイル)を流入させて、冷却パイプに設けられた吐出口から冷却液を回転電機100、特にステータコイル等に向かって滴下し、回転電機100を冷却する。以下に本実施形態に係る回転電機100の冷却構造の詳細について説明する。
【0024】
図2は、図1の駆動ユニット1のステータ周辺を示す拡大模式断面図である。本実施形態に係る回転電機100の冷却構造は、筐体としてのケーシング700内に設けられ、被冷却物である回転電機100を冷却する冷却液が流れる冷却パイプ800と、冷却パイプ800の端部に設けられ冷却パイプ800を保持するブラケット840(図3参照)と、冷却パイプ800の一端に設けられる弾性部材としてのゴムキャップ830と、を備える。冷却パイプ800の側面には、冷却液を吐出する吐出口810が設けられている。なお、本実施形態では、回転電機100の外周側に冷却パイプ800を設ける例について説明するが、冷却パイプ800は回転電機200の外周側に設けられてもよい。
【0025】
冷却パイプ800の一端には支持リング820が取付けられ、当該端部は、ケーシング700に設けられた挿入孔710に挿入される。そして、冷却パイプ800の他端は、ゴムキャップ830を介してケーシング700の一部であるカバー720に支持される。
【0026】
ここで、ケーシング700に冷却パイプ800を組付けるために、冷却パイプ800に支持リング820とゴムキャップ830とが取付けられている。そして、冷却パイプ800の支持リング820が取付けられた側の端部が、ケーシング700の挿入孔710に挿入される。そして、ゴムキャップ830上からカバー720が組付けられる。この際、ゴムキャップ830は、カバー720に設けられた穴部に圧入され、カバー組付けの圧力により変形する。この変形に伴なう弾性力により、冷却パイプ800が強固に固定される。
【0027】
図3は、ゴムキャップ830を冷却パイプ800の軸方向から見た状態を示す図である。また、図4は、冷却パイプ800にブラケット840とゴムキャップ830を取付けた状態を示す拡大図である。図5は、ゴムキャップ830とブラケット840との関係を示す拡大模式斜視図である。図3〜図5を参照して、冷却パイプ800には該パイプの側面から突出するブラケット840が設けられている。具体的には、ブラケット840は、冷却パイプ800の軸方向の外側、すなわち、軸の中心から放射状に伸びて、冷却パイプ800の軸方向に沿いながらゴムキャップ830が取り付けられている側に伸びるフランジ形状を有している。すなわち、ブラケット840は、フランジ形状を形成する部分によってゴムキャップ830のうち下部側を覆っている。また、別の見方をすれば、ブラケット840は、図5に示されるように、ゴムキャップ830の底面よりも大きい面積を有し、ゴムキャップ830から突出した部分を有する底面840aと、当該底面に立設する立設部840bとを有している。ここで、立設部840bの高さは、特に限定はないが、ゴムキャップ830の高さの50%〜70%の高さであることが好ましい。
【0028】
続いて、本実施形態における回転電機100の冷却構造の作用について説明する。
【0029】
従来技術では、ゴムキャップ830が先端部に取り付けられた冷却パイプ800には、フランジ形状を有するブラケット840を備えていないため、ゴムキャップ830は、完全に露出した状態となっている。このため、ゴムキャップ830が先端部に取り付けられた冷却パイプ800をケーシング700に組み付ける際、例えば、冷却パイプ800の搬送中に、周囲の物にゴムキャップ830が当たって、ゴムキャップ830が抜け落ちる可能性がある。これが本発明によって解決しようとする課題である。
【0030】
しかし、本実施形態の回転電機100の冷却構造によれば、ブラケット840は、フランジ形状を有する部分によってゴムキャップ830の下部を覆っている。これにより、ゴムキャップ830が先端部に取り付けられた冷却パイプ800をケーシング700に組み付ける等の際に、周囲の物がゴムキャップ830の周りを覆うブラケット840に当たることで、当該物がゴムキャップ830に当たることを防止することができる。これにより、ゴムキャップ830が抜け落ちることを防止することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 駆動ユニット、2 シャフト、100,200 回転電機、110,210 回転シャフト、130,230 ロータ、140,240 ステータ、141,241 ステータコア、142,242 ステータコイル、300 プラネタリギヤ機構、400 減速機構、500 デファレンシャル機構、600 ドライブシャフト受け部、700 ケーシング、710 挿入孔、720 カバー、800 冷却パイプ、810 吐出口、820 支持リング、830 ゴムキャップ、840 ブラケット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機を冷却する冷却液を流すパイプと、
前記パイプの端部に設けられ前記パイプを保持するブラケットと、
前記ブラケットより先端に設けられた弾性部材と、
を備え、
前記ブラケットは、前記パイプの径方向の外側に延び、前記パイプの軸方向の前記先端側へ曲がったフランジ形状を有することを特徴とする回転電機の冷却構造。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機の冷却構造において、
前記ブラケットは、前記弾性部材の一部を覆うことを特徴とする回転電機の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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