説明

回転電機冷却システム

【課題】回転電機の温度をより好適に測定することである。
【解決手段】回転電機冷却システム10は、冷却油130を用いて冷却される第1モータジェネレータ20、第2モータジェネレータ40と、一方側の表面がコイルエンド204,404の平面部に接触し、他方側の表面が冷却油130に接触する第1温度検知部100、第2温度検知部101と、第1温度検知部100、第2温度検知部101の出力電圧と冷却油130の温度と第1モータジェネレータ20、第2モータジェネレータ40の温度の関係を予め求めて作成された特性マップに基づいて、第1モータジェネレータ20、第2モータジェネレータ40の温度を算出する温度算出部114と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機や動力分割機構といったトランスアクスルを構成する内部要素を冷却するために、循環ポンプを用いて冷却油を汲み上げてトランスアクスルの内部に冷却油を循環させている。そして、循環ポンプによって汲み上げられた当該冷却油が回転電機の上部から下部に流れることで回転電機が冷却されている。
【0003】
本発明に関連する技術として、特許文献1には、車両用駆動装置に組込まれた回転電機の温度を、該回転電機のステータのコイルエンド部に配置された温度センサにより検知する温度検知装置が開示されている。ここでは、温度センサが、コイルエンド部の周方向における他の発熱体に隣接する部位に配置されたことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−086882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、回転電機のステータのコイルエンドに温度センサを配置することで、回転電機の温度を検知することができる。しかし、上記のように、回転電機が冷却油によって冷却されているシステムでは、当該冷却油の温度によって回転電機の温度が変化するため、精度良く温度を検知することができない場合がある。
【0006】
本発明の目的は、回転電機の温度をより好適に測定することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る回転電機冷却システムは、冷却油を用いて冷却される回転電機と、一方側の表面が前記回転電機の温度を検知するための領域である検知対象部に接触し、他方側の表面が前記冷却油に接触する熱電素子と、前記熱電素子の出力電圧と前記冷却油の温度と前記回転電機の温度の関係を予め求めて作成された特性マップに基づいて、前記回転電機の温度を算出する温度算出部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る回転電機冷却システムにおいて、前記検知対象部は、前記回転電機のコイルエンドの平面部であることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る回転電機冷却システムにおいて、前記検知対象部は、前記コイルエンドとインバータとの間を接続する導体部であることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る回転電機冷却システムにおいて、前記導体部は、前記熱電素子を設置するための平面部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱電素子の出力電圧と、冷却油の温度と、回転電機の温度の関係を予め求めて作成された特性マップに基づいて、回転電機の温度を算出することができる。これにより、回転電機の温度をより好適に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施の形態において、回転電機冷却システムの構成を示す図である。
【図2】図1のA−A線断面図において、第1モータジェネレータのコイルエンドに第1温度検知部が取り付けられている様子を示す模式図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、コイルエンドの温度と、第1温度検知部の出力電圧との関係を冷却油の油温に応じて予め測定して求めたマップである。
【図4】本発明に係る実施の形態において、回転電機冷却システムの構成を示す図である。
【図5】図4において、矢印B方向から第1導体部を見た様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0014】
図1は、回転電機冷却システム10の構成を示す図である。回転電機冷却システム10は、第1モータジェネレータ20と、動力分割機構30と、第2モータジェネレータ40と、ケース体50と、循環ポンプ60と、循環パイプ80と、掻揚油路90と、第1温度検知部100と、第2温度検知部101と、油温検知部102と、第1導体部120と、第2導体部122と、第1インバータ回路110と、第2インバータ回路112と、温度算出部114とを備える。なお、以下では、回転電機冷却システム10は、ハイブリッド自動車に搭載されているものとして説明する。
【0015】
ケース体50は、第1モータジェネレータ20と、動力分割機構30と、第2モータジェネレータ40とが内部に取り付けられるケース部材である。
【0016】
第1モータジェネレータ20は、ロータとステータ202とを含んで構成され、軸部材22を介してエンジン8と動力分割機構30に接続される。第1モータジェネレータ20を構成するロータには永久磁石が埋設された複数の積層板が設けられており、ステータ202にはコイルが巻回されている。ここで、当該コイルのうち、ステータ202の端面から突出している部分がコイルエンド204と呼ばれている。第1モータジェネレータ20は、エンジン8の駆動力によって発電した電力を、ハイブリッド自動車の走行状況に応じて図示しないバッテリに充電したり、第2モータジェネレータ40に供給するようになっており、エンジン8の始動時には、スタータとして機能する。
【0017】
第2モータジェネレータ40は、ロータとステータ402とを含んで構成され、軸部材42を介して動力分割機構30に接続される。第2モータジェネレータ40を構成するロータには永久磁石が埋設された複数の積層板が設けられており、ステータ402にはコイルが巻回されている。ここで、当該コイルのうち、ステータ402の端面から突出している部分がコイルエンド404と呼ばれている。第2モータジェネレータ40は、図示しないバッテリに蓄えられた電力、または第1モータジェネレータ20によって発電された電力により、エンジン8の駆動をアシストしたり、単独でハイブリッド自動車を走行させたりする機能を有する。
【0018】
動力分割機構30は、エンジン8の出力を駆動力と発電とに分割することができる遊星歯車機構であり、サンギアとピニオンギアとリングギアとを含んで構成される。動力分割機構30は、サンギアとピニオンギアとリングギアがそれぞれ回転することで動力を分割するとともに、ケース体50の下部に溜まった冷却油130を各ギアの回転によって掻き揚げる。そして、各ギアによって掻き揚げられた冷却油130は、掻揚油路90を介して第1モータジェネレータ20の上部と第2モータジェネレータ40の上部に供給される。
【0019】
循環パイプ80は、ケース体50の下部に溜まった冷却油130が、第2モータジェネレータ40の上部まで汲み上げられて循環されるように設けられたパイプである。
【0020】
循環ポンプ60は、循環パイプ80の経路の途中に設けられ、ケース体50の下部に溜まった冷却油130を汲み上げるように作動する機能を有する。
【0021】
第1インバータ回路110は、図示しないバッテリからの直流電力を交流電力に変換して第1モータジェネレータ20に出力し、また、第1モータジェネレータ20からの交流電力を直流電力に変換して当該バッテリに出力するための回路である。
【0022】
第2インバータ回路112は、図示しないバッテリからの直流電力を交流電力に変換して第2モータジェネレータ40に出力し、また、第2モータジェネレータ40からの交流電力を直流電力に変換して当該バッテリに出力するための回路である。
【0023】
第1導体部120は、第1インバータ回路110と第1モータジェネレータ20とを電気的に接続するリード線である。第1導体部120は、熱伝導率の高い材料、例えば、銅を用いて構成される。なお、ここでは、第1導体部120は、リード線であるものとして説明したが、平板形状を有するバスバーであってもよい。
【0024】
第2導体部122は、第2インバータ回路112と第2モータジェネレータ40とを電気的に接続するリード線である。第2導体部122は、熱伝導率の高い材料、例えば、銅を用いて構成される。なお、ここでは、第2導体部122は、リード線であるものとして説明したが、平板形状を有するバスバーであってもよい。
【0025】
第1温度検知部100は、平板形状を有するペルチェ素子であり、一方側の表面と、他方側の表面(一方側と反対側の表面)の温度差を電圧値として出力する機能を有する。図2は、図1のA−A線断面図において、第1モータジェネレータ20のコイルエンド204に第1温度検知部100が取り付けられている様子を示す模式図である。また、第1温度検知部100の一方側の表面は、コイルエンド204の平面部に接触するように取り付けられている。そして、第1温度検知部100の他方側の表面は、掻揚油路90を介して供給される冷却油130によって覆われる。これにより、第1温度検知部100の一方側の表面には、コイルエンド204の熱が伝わる。すなわち、第1温度検知部100の一方側の表面の温度は、コイルエンド204の温度と同じ温度となる。また、第1温度検知部100の他方側の表面には、冷却油130の熱が伝わる。すなわち、第1温度検知部100の他方側の表面の温度は、冷却油130の温度と同じ温度なる。したがって、第1温度検知部100からは、コイルエンド204の温度と冷却油130の温度の差に応じた電圧値が出力される。
【0026】
第2温度検知部101は、平板形状を有するペルチェ素子であり、一方側の表面と、他方側の表面(一方側と反対側の表面)の温度差を電圧値として出力する機能を有する。また、第2温度検知部101の一方側の表面は、第1温度検知部100と同様に、コイルエンド404の平面部に接触するように取り付けられている。そして、第2温度検知部101の他方側の表面は、掻揚油路90及び循環パイプ80を介して供給される冷却油130によって覆われる。これにより、第2温度検知部101の一方側の表面には、コイルエンド404の熱が伝わる。すなわち、第2温度検知部101の一方側の表面の温度は、コイルエンド404の温度と同じ温度となる。また、第2温度検知部101の他方側の表面には、冷却油130の熱が伝わる。すなわち、第2温度検知部101の他方側の表面の温度は、冷却油130の温度と同じ温度なる。したがって、第2温度検知部101からは、コイルエンド404の温度と冷却油130の温度の差に応じた電圧値が出力される。
【0027】
油温検知部102は、掻揚油路90の途中に設けられ、冷却油130の温度を検知する温度センサである。
【0028】
温度算出部114は、第1温度検知部100の出力電圧と、油温検知部102によって検知された冷却油130の温度と、第1モータジェネレータ20の温度との関係を予め測定することにより求めた特性マップ140を記録している。具体的には、特性マップ140は、図3(a)に示されるように、コイルエンド204の温度と、第1温度検知部100の出力電圧との関係を、冷却油130の油温に応じて予め測定して求めた複数個のマップを有している。ここで、コイルエンド204の温度は、第1モータジェネレータ20の温度を意味する。
【0029】
そして、温度算出部114は、第2温度検知部101の出力電圧と、油温検知部102によって検知された冷却油130の温度と、第2モータジェネレータ40の温度との関係を予め測定することにより求めた特性マップ142を記録している。具体的には、特性マップ142は、図3(b)に示されるように、コイルエンド404の温度と、第2温度検知部101の出力電圧との関係を、冷却油130の油温に応じて予め測定して求めた複数個のマップを有している。ここで、コイルエンド404の温度は、第2モータジェネレータ40の温度を意味する。
【0030】
また、温度算出部114は、第1温度検知部100の出力電圧と、冷却油130の温度を取得し、これらの情報と、予め用意された特性マップ140を用いて、第1モータジェネレータ20の温度を算出する機能を有する。そして、温度算出部114は、第2温度検知部101の出力電圧と、冷却油130の温度を取得し、これらの情報と、予め用意された特性マップ142を用いて、第2モータジェネレータ40の温度を算出する機能を有する。
【0031】
続いて、上記回転電機冷却システム10の作用について説明する。回転電機冷却システム10において、第1モータジェネレータ20及び第2モータジェネレータ40が作動する際に発熱するが、これらは冷却油130によって冷却される。具体的には、動力分配機構30の各ギアによって掻き揚げられた冷却油130が掻揚油路90を介して第1モータジェネレータ20及び第2モータジェネレータ40の表面に供給される。また、循環ポンプ60によって汲み上げられた冷却油130が循環パイプ80を介して第2モータジェネレータ40の表面に供給される。このように、冷却油130を循環させることにより、第1モータジェネレータ20及び第2モータジェネレータ40を冷却している。
【0032】
そして、回転電機冷却システム10において、第1モータジェネレータ20及び第2モータジェネレータ40の温度は、温度算出部114によって算出される。具体的には、温度算出部114は、油温検知部102によって検知された冷却油130の温度と、第1温度検知部100の出力電圧とを取得し、これらの情報と、予め用意された特性マップ140に基づいて第1モータジェネレータ20の温度を算出する。また、温度算出部114は、油温検知部102によって検知された冷却油130の温度と、第2温度検知部101の出力電圧とを取得し、これらの情報と、予め容易された特性マップ142に基づいて第2モータジェネレータ40の温度を算出する。
【0033】
上記のように、回転電機冷却システム10によれば、特性マップ140,142において、第1モータジェネレータ20及び第2モータジェネレータ40の温度と、第1温度検知部100及び第2温度検知部101の出力電圧との関係が、冷却油130の油温に応じて複数個用意されている。したがって、冷却油130の温度が変化した場合であっても、各油温に応じたマップを用いているため、精度よく第1モータジェネレータ20及び第2モータジェネレータ40の温度を求めることができる。
【0034】
次に、回転電機冷却システム10の変形例である回転電機冷却システム11について説明する。図4は、回転電機冷却システム11の構成を示す図である。回転電機冷却システム11と回転電機冷却システム10の相違点は、第1温度検知部100及び第2温度検知部101の取り付け位置と、第1導体部121及び第2導体部123の形状であるため、その相違点について説明する。
【0035】
第1導体部121は、第1インバータ回路110と第1モータジェネレータ20とを電気的に接続するリード線である。第1導体部121は、熱伝導率の高い材料、例えば、銅を用いて構成される。図5は、図4において、矢印B方向から第1導体部121を見た様子を示す図である。第1導体部121は、図5に示されるように、第1温度検知部100を配置できる程度の大きさの平面部121aを有している。
【0036】
第2導体部123は、第2インバータ回路112と第2モータジェネレータ40とを電気的に接続するリード線である。第2導体部123は、熱伝導率の高い材料、例えば、銅を用いて構成される。第2導体部123は、第1導体部121と同様に、第2温度検知部101を配置できる程度の大きさの平面部を有している。
【0037】
第1温度検知部100の一方側の表面は、第1導体部121の平面部121aに接触するように取り付けられている。ここで、第1導体部121は、熱伝導率の高い材料で構成されているため、コイルエンド204の温度とほぼ同じ温度となる。そして、掻揚油路90を介して第1モータジェネレータ20側に供給される冷却油130が第1導体部121にも伝わるため、第1温度検知部100の他方側の表面は、冷却油130によって覆われる。したがって、第1温度検知部100においても、コイルエンド204の温度と冷却油130の温度の差に応じた電圧値が出力される。
【0038】
第2温度検知部101の一方側の表面は、第2導体部123の平面部に接触するように取り付けられている。ここで、第2導体部123は、熱伝導率の高い材料で構成されているため、コイルエンド404の温度とほぼ同じ温度となる。そして、掻揚油路90及び循環パイプ80を介して第2モータジェネレータ40側に供給される冷却油130が第2導体部123にも伝わるため、第2温度検知部101の他方側の表面は、冷却油130によって覆われる。したがって、第2温度検知部101においても、コイルエンド404の温度と冷却油130の温度の差に応じた電圧値が出力される。
【0039】
上記のように、回転電機冷却システム11と回転電機冷却システム10の主な相違点は、第1温度検知部101及び第2油温検知部102の取り付け位置である。したがって、回転電機冷却システム11によっても、回転電機冷却システム10と同様に、冷却油130の温度変化にかかわらず、精度よく第1モータジェネレータ20及び第2モータジェネレータ40の温度を求めることができる。
【0040】
なお、ここでは、第1導体部121及び第2導体部123は、リード線であるものとして説明したが、平板形状を有するバスバーであってもよい。第1導体部121及び第2導体部123がバスバーである場合は、平板形状の部分を利用して第1温度検知部100及び第2温度検知部101を取り付けることができる。
【符号の説明】
【0041】
8 エンジン、10,11 回転電機冷却システム、20 第1モータジェネレータ、22 軸部材、30 動力分割機構、40 第2モータジェネレータ、42 軸部材、50 ケース体、60 循環ポンプ、80 循環パイプ、90 掻揚油路、100 第1温度検知部、101 第2温度検知部、102 油温検知部、110 第1インバータ回路、112 第2インバータ回路、114 温度算出部、120,121 第1導体部、121a 平面部、122,123 第2導体部、130 冷却油、140,142 特性マップ、202,402 ステータ、204,404 コイルエンド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却油を用いて冷却される回転電機と、
一方側の表面が前記回転電機の温度を検知するための領域である検知対象部に接触し、他方側の表面が前記冷却油に接触する熱電素子と、
前記熱電素子の出力電圧と前記冷却油の温度と前記回転電機の温度の関係を予め求めて作成された特性マップに基づいて、前記回転電機の温度を算出する温度算出部と、
を備えることを特徴とする回転電機冷却システム。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機冷却システムにおいて、
前記検知対象部は、前記回転電機のコイルエンドの平面部であることを特徴とする回転電機冷却システム。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機冷却システムにおいて、
前記検知対象部は、前記コイルエンドとインバータとの間を接続する導体部であることを特徴とする回転電機冷却システム。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機冷却システムにおいて、
前記導体部は、
前記熱電素子を設置するための平面部を有することを特徴とする回転電機冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−231642(P2012−231642A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99572(P2011−99572)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】