説明

回転電機用端末モジュール及びこれを備えた回転電機

【課題】円弧状の回転電機用端末モジュールを厚さ方向の振動により強い構造とする。
【解決手段】円弧状の本体部32に埋設された第1〜第4バスバー41〜44が本体部32の内周面又は外周面から突出する突出部を有している。そして、本体部32の内周面に着目したとき、本体部32の一方の端部33に最も近い突出部41aと、それ以外のいずれか1以上の突出部である突出部42a,41b,42bとで、本体部32の厚さ方向の突出位置が異なっている。また、本体部32の内周面に着目したとき、本体部32の一方の端部33に最も近い2個の突出部41a,42aが、互いに厚さ方向の突出位置が異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機用端末モジュール及びこれを備えた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機用端末モジュールとして、モータのステータ用のコイルに接続されるバスバーと、バスバーを収容するリング状のバスバー収容体とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この端末モジュールは、周方向に伸びる溝を有するリング状のバスバー収用体と、溝に嵌めあわされるバスバーと、バスバーと外部配線とを接続するコネクタ部とを備えており、コネクタ部に位置決め用の穴を設けることで、バスバー収用体をモールドするモールド樹脂部の型枠の位置決めを容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−120477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、回転電機用端末モジュールの形状を円弧状にしようとすると、従来のリング状のものとは異なり回転電機用端末モジュールが厚さ方向の振動により変形しやすくなるという問題があった。そのため、円弧状の回転電機用端末モジュールについて、より振動に強い構造とすることが望まれている。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、円弧状の回転電機用端末モジュールを厚さ方向の振動により強い構造とすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回転電機用端末モジュールは、
円弧状の本体部と、
前記本体部に埋設され、該本体部から突出してモータのステータコイルの少なくとも1部を構成する導体と接続される突出部を有する複数のバスバーと、
を備えた回転電機用端末モジュールであって、
前記複数の突出部は、それぞれ、前記本体部の内周面又は外周面から突出しており、前記本体部の一方の端部に最も近い該突出部と、それ以外のいずれか1以上の該突出部とで、前記本体部の厚さ方向の突出位置が異なっている、
ものである。
【0007】
この本発明の回転電機用端末モジュールでは、円弧状の本体部に埋設された複数のバスバーが本体部の内周面又は外周面から突出する突出部を有している。そして、この複数の突出部は、本体部の一方の端部に最も近い突出部と、それ以外のいずれか1以上の突出部とで、本体部の厚さ方向の突出位置が異なっている。そのため、本体部の一方の端部に最も近い突出部とそれ以外のいずれか1以上の突出部とで厚さ方向の突出位置が同じであるものと比較して、回転電機用端末モジュールの剛性が高まり、厚さ方向の振動に強い構造とすることができる。ここで、本体部の一方の端部に最も近い突出部とは、本体部の内周面及び外周面のいずれか一方に着目したときに本体部の一方の端部に最も近い突出部としてもよいし、内周面及び外周面の両方に着目したときに本体部の一方の端部に最も近い突出部としてもよい。
【0008】
この本発明の回転電機用端末モジュールにおいて、前記複数の突出部は、前記本体部の一方の端部に最も近いm個(mは2以上の整数)の該突出部が、互いに前記厚さ方向の突出位置が異なっているものとしてもよい。このように本体部の一方の端部に最も近いm個の突出部の厚さ方向の突出位置を互いに異ならせることで、回転電機用端末モジュールのうち、特に一方の端部側をより振動に強い構造とすることができる。回転電機用端末モジュールが厚さ方向に振動する場合、本体部が円弧状であるため、本体部の中央部分に比べて端部の方がより振動による変位が大きくなりやすく、結果として端部が振動に弱くなりやすい。そのため、このように端部側をより振動に強くする意義が高い。この場合において、前記複数の突出部は、前記本体部の他方の端部に最も近いn個(nは2以上の整数)の該突出部が、互いに前記厚さ方向の突出位置が異なっているものとしてもよい。こうすれば、回転電機用端末モジュールの両方の端部側をより振動に強い構造とすることができる。なお、nとmとは同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。ここで、本体部の一方の端部に最も近いm個の突出部とは、本体部の内周面及び外周面のいずれか一方に着目したときに本体部の一方の端部に最も近いm個の突出部としてもよいし、内周面及び外周面の両方に着目したときに本体部の一方の端部に最も近いm個の突出部としてもよい。同様に、本体部の他方の端部に最も近いn個の突出部とは、本体部の内周面及び外周面のいずれか一方に着目したときに本体部の他方の端部に最も近いn個の突出部としてもよいし、内周面及び外周面の両方に着目したときに本体部の他方の端部に最も近いn個の突出部としてもよい。
【0009】
本発明の回転電機用端末モジュールにおいて、前記複数の突出部は、前記本体部の一方の端部に最も近いk個(kは2以上の整数)の該突出部と、前記本体部の他方の端部に最も近いk個の該突出部とで、前記厚さ方向の突出位置が対称になっているものとしてもよい。
【0010】
本発明の回転電機は、
上述したいずれかの態様の回転電機用端末モジュール、
を備え、
前記回転電機用端末モジュールの前記バスバーと、該バスバーの前記突出部の1以上と接続された導体と、によりステータコイルが形成されている、
ものである。
【0011】
この本発明の回転電機は、上述したいずれかの態様の本発明の回転電機用端末モジュールを備えるから、本発明の回転電機用端末モジュールの奏する効果、例えば、円弧状の回転電機用端末モジュールを厚さ方向の振動により強い構造とすることができる効果などと同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例としての回転電機10のステータ15の構成の概略を示す構成図である。
【図2】図1のステータ15の上面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】ステータ15のステータコイル20の接続の概略を示す説明図である。
【図5】説明の便宜上、ステータ15が備える回転電機用端末モジュール30のみを示した上面図である。
【図6】説明の便宜上、回転電機用端末モジュール30のみを示した底面図である。
【図7】図5のB視図である。
【図8】図5のC視図である。
【図9】厚さ方向の基準面としての本体部32の底面から突出部41a〜43a,41b〜43bまでの厚さ方向距離を示す説明図である。
【図10】本体部32の底面から突出部44a〜44cまでの厚さ方向距離の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0014】
図1は本発明の一実施例としての回転電機10のステータ15の構成の概略を示す構成図であり、図1(a)はステータ15全体の構成の概略図、図1(b)はステータ15のうち回転電機用端末モジュール30付近を拡大した概略図である。図2は、図1のステータ15の上面図である。図3は、図2のA−A断面図である。図4は、ステータ15のステータコイル20の接続の概略を示す説明図である。図5は、説明の便宜上、ステータ15が備える回転電機用端末モジュール30のみを示した上面図である。図6は、説明の便宜上、回転電機用端末モジュール30のみを示した底面図である。図7は、図5のB視図である。図8は、図5のC視図である。実施例の回転電機10は、例えば永久磁石同期電動機(PMモータ)として構成され、図1に示すステータ15と、図示しないロータとを備えている。ステータ15は、ステータコア17と、ステータコイル20と、回転電機用端末モジュール30と、を備えている。
【0015】
ステータコア17は、無方向性電磁鋼板の打ち抜き加工により形成された環状の電磁鋼板を複数(例えば数十枚など)積層した一体コアとして構成されている。このステータコア17は、図1に示すように、ステータ15の径方向内側に突出したティース部17aが複数形成されており、このティース部17aにステータコイル20が巻回されている。
【0016】
ステータコイル20は、分布巻でティース部17aに巻回されたU,V,W相の三相コイルからなるものである。具体的には、このステータコイル20は、図1(b)や図2,4に示すように、U相セグメントコイル21,22と、V相セグメントコイル23,24と、W相セグメントコイル25,26と、回転電機用端末モジュール30の一部でもある第1〜第3バスバー41〜43と、からなる。U相セグメントコイル21は、例えば複数本(6本,8本など)の導体を溶接してティース部17aに巻回したものであり、U相セグメントコイル22,V相セグメントコイル23,24,W相セグメントコイル25,26も同様の構成である。そして、U相セグメントコイル21,22の一端であるコイルエンド21a,22aが第1バスバー41を介して接続されることでU相コイルが構成されており、V相セグメントコイル23,24の一端であるコイルエンド23a,24aが第2バスバー42を介して接続されることでV相コイルが構成されており、W相セグメントコイル25,26の一端であるコイルエンド25a,26aが第3バスバー43を介して接続されることでV相コイルが構成されている(図4参照)。また、V相セグメントコイル23,V相セグメントコイル24,W相セグメントコイル26の他端は回転電機用端末モジュール30の一部でもある第4バスバー44と接続されている。
【0017】
回転電機用端末モジュール30は、図1に示すように、ステータ15の軸方向端部側に位置している。この回転電機用端末モジュール30は、図5〜8に示すように、円弧状の本体部32と、本体部32に埋設された第1〜第4バスバー41〜44と、を備えている。本体部32は、例えば樹脂製などの絶縁体である。また、本体部32は、本体部32の円弧の外周面側に突出する支持部35〜37を有しており、この支持部35〜37にはそれぞれ引出線用導体51〜53が取り付けられている。引出線用導体51は、本体部32の上面側が開口したU字状の導体であり、U字の一端である端部51aがU相セグメントコイル21のコイルエンド21bと溶接により接続され、他端である端部51bがU相の引出線61と溶接により接続されている(図2参照)。引出線用導体52は、本体部32の上面側が開口したU字状の導体であり、U字の一端である端部52aがV相セグメントコイル23のコイルエンド23bと溶接により接続され、他端である端部52bがV相の引出線62と溶接により接続されている。引出線用導体53は、本体部32の上面側が開口したU字状の導体であり、U字の一端である端部53aがW相セグメントコイル25のコイルエンド25bと溶接により接続され、他端である端部53bがW相の引出線63と溶接により接続されている。
【0018】
第1〜第4バスバー41〜44は、本体部32内に埋設されており、本体部32を構成する樹脂により互いに本体部32内での絶縁が保たれている。また、第1〜第3バスバー41〜43は、図5〜8に示すように、両端が本体部32の内周面から突出しており、それぞれ一端である突出部41a〜43aと,他端である突出部41b〜43bとを有している。また、第4バスバー44は、両端が本体部32の外周面から突出しており、一端である突出部44aと,他端である突出部44cとを有している。さらに、第4バスバー44は、本体部32に埋設された部分の略中央から本体部32の外周面に突出する突出部44bを有している。第1バスバー41は、図2に示すように、突出部41aがコイルエンド21aと溶接により接続され、突出部41bがコイルエンド22aと溶接により接続されている。第2バスバー42は、突出部42aがコイルエンド23aと溶接により接続され、突出部42bがコイルエンド24aと溶接により接続されている。第3バスバー43は、突出部43aがコイルエンド25aと溶接により接続され、突出部43bがコイルエンド26aと溶接により接続されている。第4バスバー44は、突出部44aがコイルエンド22bと溶接により接続され、突出部44bがコイルエンド24bと溶接により接続され、突出部44cがコイルエンド26bと溶接により接続されている。なお、突出部41a〜44a,41b〜44b,44cは、いずれも本体部32から水平方向(本体部32の径方向)に突出し、且つ屈曲して先端部分が垂直方向(本体部32の上面方向)を向いている。そして、この垂直方向を向いた部分の先端付近で各コイルエンドと溶接により接続されている(図3参照)。なお、図3では突出部44bとコイルエンド24bとの接続、及び突出部41bとコイルエンド22aとの接続の様子を示しているが、他の突出部とコイルエンドとの接続も同様である。
【0019】
回転電機用端末モジュール30は、この突出部41a〜44a,41b〜44b,44cが各コイルエンド21a〜26a,22b,24b,26bと溶接により接続され、引出線用導体51〜53の端部51a〜53aが各コイルエンド21b,23b,25bと溶接により接続されている。また、回転電機用端末モジュール30は、この各コイルエンド以外のU相セグメントコイル21,22、V相セグメントコイル23,24、W相セグメントコイル25,26とは接触しないように配置されている。これにより、回転電機用端末モジュール30は、本体部32が各コイルエンド以外のU相セグメントコイル21,22、V相セグメントコイル23,24、W相セグメントコイル25,26からステータ15の軸方向に離れた状態で支持されている。
【0020】
続いて、第1〜第4バスバー41〜44の位置関係について詳細に説明する。まず、本体部32の周方向の位置関係について説明する。図5に示すように、本体部32の内周面に着目すると、本体部32の一方の端部33(図5における左端)から他方の端部34(図5における右端)に向かって、突出部41a,42a,43a,41b,42b,43bがこの順で本体部32から突出している。また、本体部32の外周面に着目すると、端部33から端部34に向かって、突出部44a,44b,44cがこの順で本体部32から突出している。また、本体部32の内周面及び外周面の両方に着目すると、端部33から端部34に向かって、突出部41a,44a,42a,43a,44b,41b,42b,44c,突出部43bがこの順で本体部32から突出している。
【0021】
次に、本体部32の厚さ方向(図7,8の上下方向)における第1〜第4バスバー41〜44の位置関係について説明する。図9は、図7と同様に図5のB視図であり、厚さ方向の基準面としての本体部32の底面から突出部41a〜43a,41b〜43bまでの厚さ方向距離を示す説明図である。図10は、図8と同様に図5のC視図であり、本体部32の底面から突出部44a〜44cまでの厚さ方向距離の説明図である。本実施例では、本体部32の底面から各突出部41a〜43a,41b〜43b,44a〜44cまでの厚さ方向距離が、距離L1,L2,L3,L4(L1<L2<L3<L4)のいずれかとなっている。具体的には、図9に示すように、第1バスバー41の突出部41aは本体部32の底面からの厚さ方向距離が距離L1であり、突出部41bは本体部32の底面からの厚さ方向距離が距離L3である。第2バスバー42の突出部42a,42bは本体部32の底面からの厚さ方向距離が距離L4である。第2バスバー42は、本体部32に埋設された部分も、本体部32の底面からの厚さ方向距離が距離L4で一定となっている。第3バスバー43の突出部43a,43bは本体部32の底面からの厚さ方向距離が距離L1である。第3バスバー43は、本体部32に埋設された部分も、本体部32の底面からの厚さ方向距離が距離L1で一定となっている。第4バスバー44の突出部44a〜44cは本体部32の底面からの厚さ方向距離が距離L2である。第4バスバー44は、本体部32に埋設された部分も、本体部32の底面からの厚さ方向距離が距離L2で一定となっている。また、図5,6に示すように、第1バスバー41及び第3バスバー43は、第2バスバー42,第4バスバー44と比べて本体部32の内周側に埋設されている。第1バスバー41は、図7に示すように本体部32の内部において突出部43aよりも端部33側で厚さ方向に屈曲しており、屈曲部を境に端部33側が突出部41aと同じく厚さ方向距離が距離L1となり、屈曲部より端部34側が突出部41bと同じく厚さ方向距離が距離L3となっている。第1バスバー41はこのように屈曲することで本体部32内で第3バスバー43を厚さ方向に避けるように埋設されている。第2バスバー42と第4バスバー44とは、厚さ方向距離が異なるため、本体部32内で厚さ方向に重なるように埋設されている。
【0022】
第1〜第4バスバー41〜44がこのように配置されることで、本体部32の内周面に着目したとき、本体部32の端部33に最も近い突出部41aと、他の突出部42a,41b,42bとで、本体部32の底面からの厚さ方向距離が異なっている。すなわち、本体部32の厚さ方向の突出位置が異なっている。また、本体部32の内周面と外周面との両方に着目したとき、本体部32の端部33に最も近い突出部41aと、他の突出部42a,41b,42b,44a〜44cとで、本体部32の厚さ方向の突出位置が異なっている。さらに、本体部32の内周面に着目したとき、本体部32の端部34に最も近い突出部43bと、他の突出部42a,41b,42bとで、本体部の厚さ方向の突出位置が異なっている。また、本体部32の内周面と外周面との両方に着目したとき、本体部32の端部34に最も近い突出部43bと、他の突出部42a,41b,42b,44a〜44cとで、本体部32の厚さ方向の突出位置が異なっている。さらにまた、本体部32の内周面に着目したとき、本体部32の端部33に最も近い2個の突出部41a,42aが、互いに厚さ方向の突出位置が異なっている。また、本体部32の内周面と外周面との両方に着目したとき、本体部32の端部33に最も近い3個の突出部41a,44a,42aが、互いに厚さ方向の突出位置が異なっている。そしてまた、本体部32の内周面に着目したとき、本体部32の端部34に最も近い3個の突出部43b,42b,41bが、互いに厚さ方向の突出位置が異なっている。また、本体部32の内周面と外周面との両方に着目したとき、本体部32の端部34に最も近い4個の突出部43b,44c,42b,41bが、互いに厚さ方向の突出位置が異なっている。そしてまた、本体部32の内周面に着目したとき、本体部32の端部33に最も近い2個の突出部41a,42aと、本体部32の端部34に最も近い2個の突出部43b,42bとは、いずれも本体部32の端部から中央に向かって突出部の厚さ方向距離が距離L1,L4の順になっており、厚さ方向の突出位置が対称になっている。また、本体部32の内周面及び外周面の両方に着目したとき、本体部32の端部33に最も近い3個の突出部41a,44a,42aと、本体部32の端部34に最も近い3個の突出部43b,44c,42bとは、いずれも本体部32の端部から中央に向かって突出部の厚さ方向距離が距離L1,L2,L4の順になっており、厚さ方向の突出位置が対称になっている。
【0023】
こうして構成された回転電機10は、例えば電気自動車やハイブリッド車に搭載され、引出線61〜63が図示しないインバータを介してバッテリに接続されることで、バッテリから電力を入力してモータとして動作したり、バッテリに電力を出力する発電機として動作したりする。このとき、回転電機10が軸方向すなわち回転電機用端末モジュール30の厚さ方向に振動する場合がある。この場合において、突出部41a〜43a,41b〜43b,44a〜44cの厚さ方向の突出位置が上述したように異ならせてあることにより、突出部41a〜43a,41b〜43b,44a〜44cの厚さ方向の突出位置が同じである場合と比較して、回転電機用端末モジュール30の剛性が高まり、厚さ方向の振動に強い構造となっている。そのため、振動時の回転電機用端末モジュール30の変形がより抑制される。これにより、例えば突出部41a〜43a,41b〜43b,44a〜44cの溶接部分や引出線用導体51〜53の端部51a〜53aの溶接部分のいずれかに応力が集中して、溶接部分が破断することをより抑制できる。
【0024】
以上説明した実施例の回転電機10によれば、円弧状の本体部32に埋設された第1〜第4バスバー41〜44が本体部32の内周面又は外周面から突出する突出部41a〜43a,41b〜43b,44a〜44cを有している。そして、本体部32の内周面に着目したとき、本体部32の一方の端部33に最も近い突出部41aと、それ以外のいずれか1以上の突出部である突出部42a,41b,42bとで、本体部32の厚さ方向の突出位置が異なっている。そのため、回転電機用端末モジュール30の剛性が高まり、厚さ方向の振動に強い構造とすることができる。また、本体部32の内周面と外周面との両方に着目したとき、本体部32の端部33に最も近い突出部41aと、他の突出部42a,41b,42b,44a〜44cとで、本体部32の厚さ方向の突出位置が異なっているため、これによっても回転電機用端末モジュール30を厚さ方向の振動に強い構造とすることができる。さらに、本体部32の内周面に着目したとき、本体部32の端部34に最も近い突出部43bと、他の突出部42a,41b,42bとで、本体部の厚さ方向の突出位置が異なっているため、これによっても回転電機用端末モジュール30を厚さ方向の振動に強い構造とすることができる。さらにまた、本体部32の内周面と外周面との両方に着目したとき、本体部32の端部34に最も近い突出部43bと、他の突出部42a,41b,42b,44a〜44cとで、本体部32の厚さ方向の突出位置が異なっているため、これによっても回転電機用端末モジュール30を厚さ方向の振動に強い構造とすることができる。
【0025】
また、本体部32の内周面に着目したとき、本体部32の一方の端部33に最も近い2個の突出部41a,42aが、互いに厚さ方向の突出位置が異なっている。これにより、回転電機用端末モジュール30のうち端部33側をより振動に強い構造とすることができる。回転電機用端末モジュール30が厚さ方向に振動する場合、本体部32が円弧状であるため、本体部の中央部分に比べて端部33の方がより振動による変位が大きくなりやすく、結果として端部33が振動に弱くなりやすい。そのため、このように端部33側をより振動に強くする意義が高い。また、本体部32の内周面と外周面との両方に着目したとき、本体部32の端部33に最も近い3個の突出部41a,44a,42aが、互いに厚さ方向の突出位置が異なっているため、これによっても端部33をより振動に強い構造とすることができる。
【0026】
さらに、本体部32の内周面に着目したとき、本体部32の他方の端部34に最も近い3個の突出部43b,42b,41bが、互いに厚さ方向の突出位置が異なっている。そのため、回転電機用端末モジュール30の端部33側と端部34側との両方をより振動に強い構造とすることができる。また、本体部32の内周面と外周面との両方に着目したとき、本体部32の端部34に最も近い4個の突出部43b,44c,42b,41bが、互いに厚さ方向の突出位置が異なっているため、これによっても端部34側をより振動に強い構造とすることができる。
【0027】
実施例の回転電機用端末モジュール30では、本体部32の内周面に着目したとき、本体部32の端部33に最も近い2個の突出部と、本体部32の端部34に最も近い2個の突出部とで、厚さ方向の突出位置が対称になっているものとしたが、3個以上の突出部が対称になっていてもよい。また、対称になっていないものとしてもよい。同様に、本体部32の内周面及び外周面の両方に着目したとき、本体部32の端部33に最も近い3個の突出部と、本体部32の端部34に最も近い3個の突出部とで、厚さ方向の突出位置が対称になっているものとしたが、2個の突出部のみが対称であってもよいし、4個以上の突出部が対称であってもよい。また、対称になっていないものとしてもよい。なお、本体部32の外周面に着目したとき、本体部32の端部33に最も近いk個(kは2以上の整数)の突出部と、本体部32の端部34に最も近いk個の突出部とで、厚さ方向の突出位置が対称になっているものとしてもよい。例えば、突出部41a及び突出部41cの厚さ方向の突出位置を同じとし、突出部41bの厚さ方向の突出位置を突出部41a,41cとは異ならせてもよい。
【0028】
実施例の回転電機用端末モジュール30では、本体部32の内周面に着目したとき、本体部32の一方の端部33に最も近い2個の突出部が、互いに厚さ方向の突出位置が異なっており、且つ本体部32の他方の端部34に最も近い3個の突出部が、互いに厚さ方向の突出位置が異なっているものとしたが、これに限られない。本体部32の内周面に着目したとき、本体部32の一方の端部33に最も近いn個(nは2以上の整数)の突出部が、互いに厚さ方向の突出位置が異なっており、且つ本体部32の他方の端部34に最も近いm個(mは2以上の整数)の突出部が、互いに厚さ方向の突出位置が異なっているものであればよい。こうしても、回転電機用端末モジュール30の両方の端部側をより振動に強い構造とすることができる。なお、本実施例では、本体部32の内周面に着目した場合、及び本体部32の内周面と外周面の両方に着目した場合において、本体部32の一方の端部33に最も近いn個(nは2以上の整数)の突出部が互いに厚さ方向の突出位置が異なり、且つ本体部32の他方の端部34に最も近いm個(mは2以上の整数)の突出部が互いに厚さ方向の突出位置が異なるようになっているものとしたが、内周面に着目した場合、外周面に着目した場合、内周面及び外周面の両方に着目した場合、のいずれかの場合において、突出位置が異なっていればよい。また、本体部32の一方の端部33に最も近いn個の突出部が、互いに厚さ方向の突出位置が異なっていれば、回転電機用端末モジュール30のうち端部33側をより振動に強い構造とする効果は得られる。同様に、本体部32の他方の端部34に最も近いm個(mは2以上の整数)の突出部が、互いに厚さ方向の突出位置が異なっているものとすれば、回転電機用端末モジュール30のうち端部34側をより振動に強い構造とする効果は得られる。さらにまた、本体部32の一方の端部に最も近い突出部と、それ以外のいずれか1以上の突出部とで、本体部の厚さ方向の突出位置が異なっているものであれば、回転電機用端末モジュール30を厚さ方向の振動により強い構造とする効果は得られる。
【0029】
実施例の回転電機用端末モジュール30では、第1〜第3バスバー41〜43の突出部41a〜43a,41b〜43bが本体部32の内周面側に突出し、第4バスバー44の突出部が本体部32の外周面側に突出するものとしたが、これに限らず、複数の突出部のそれぞれが本体部32の内周面又は外周面から突出していればよい。例えば、第1〜第3バスバー41〜43の突出部41a〜43a,41b〜43bのうち1以上を本体部32の外周面側に突出させてもよいし、第4バスバー44の突出部41a〜44cのうち1以上を本体部32の内周面側に突出させてもよい。
【0030】
実施例の回転電機用端末モジュール30では、突出部41a〜44a,41b〜44b,44cは、いずれも本体部32から水平方向(本体部32の径方向)に突出し、且つ屈曲して先端部分が垂直方向(本体部32の上面方向)を向いているものとしたが、これに限られない。例えば、突出部が水平方向に突出していなくともよい。また、突出部が屈曲していないものとしたり、屈曲して本体部32の底面方向を向いているものとしてもよい。
【0031】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、本体部32が「本体部」に相当し、U相セグメントコイル21,22,V相セグメントコイル23,24,W相セグメントコイル25,26が「導体」に相当し、第1〜第4バスバー41〜44が「バスバー」に相当する。また、回転電機用端末モジュール30が「回転電機用端末モジュール」に相当し、、ステータコイル20が「ステータコイル」に相当し、回転電機10が「回転電機」に相当する。
【0032】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0033】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、回転電機用端末モジュールやこれを備えた回転電機の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
10 回転電機、15 ステータ、17 ステータコア、17a ティース部、20 ステータコイル、21,22 U相セグメントコイル、23,24 V相セグメントコイル、25,26 W相セグメントコイル、21a〜26a,21b〜26b コイルエンド、30 回転電機用端末モジュール、32 本体部、33,34 端部、35〜37 支持部、41〜44 第1〜第4バスバー、41a〜44a,41b〜44b,44c 突出部、51〜53 引出線用導体、51a〜53a,51b〜53b 端部、61〜63 引出線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状の本体部と、
前記本体部に埋設され、該本体部から突出してモータのステータコイルの少なくとも1部を構成する導体と接続される突出部を有する複数のバスバーと、
を備えた回転電機用端末モジュールであって、
前記複数の突出部は、それぞれ、前記本体部の内周面又は外周面から突出しており、前記本体部の一方の端部に最も近い該突出部と、それ以外のいずれか1以上の該突出部とで、前記本体部の厚さ方向の突出位置が異なっている、
回転電機用端末モジュール。
【請求項2】
前記複数の突出部は、前記本体部の一方の端部に最も近いm個(mは2以上の整数)の該突出部が、互いに前記厚さ方向の突出位置が異なっている、
請求項1に記載の回転電機用端末モジュール。
【請求項3】
前記複数の突出部は、前記本体部の他方の端部に最も近いn個(nは2以上の整数)の該突出部が、互いに前記厚さ方向の突出位置が異なっている、
請求項2に記載の回転電機用端末モジュール。
【請求項4】
前記複数の突出部は、前記本体部の一方の端部に最も近いk個(kは2以上の整数)の該突出部と、前記本体部の他方の端部に最も近いk個の該突出部とで、前記厚さ方向の突出位置が対称になっている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転電機用端末モジュール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転電機用端末モジュール、
を備え、
前記回転電機用端末モジュールの前記バスバーと、該バスバーの前記突出部の1以上と接続された導体と、によりステータコイルが形成されている、
回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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