説明

回転電気機器

【課題】回転電気機械の回転子の巻線ヘッドの熱膨張を有効かつ簡単に緩和できる構造を得る。
【解決手段】回転電気機器の1つのT型ハンマー形材17上の前記複数のボルト18がそれぞれ、前記巻線ヘッドリムに対して固定され、前記1つのT型ハンマー形材17が、前記機械軸線の方向に延在し且つ前記巻線ヘッドリムの前記機械軸線の方向に沿う対応する1つのT型スロット内に前記機械軸線の方向に可動式に取り付けられていて、前記巻線ヘッド15の機械軸線方向の膨張を前記T型ハンマー形材17に伝えるための追加の連結手段22,23が備え付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の分野に関する。本発明は、請求項1の上位概念に記載の回転電気機器、特に水力発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、電気機器、例えば揚水式発電所で使用されるような特に水力発電機の、回転子本体を有するこの回転子に関する。当該回転子本体は、成層された複数の金属薄板から構成され且つ機械軸線方向に締め付けるボルトによって一緒に保持される。回転子巻線が、機械軸線方向の複数の巻線スロット内に挿入されていて且つ遠心力の作用に対抗してこれらの巻線スロット内に保持されながら、これらの巻線スロットが、当該回転子本体の外周にわたって配置されている。回転子本体から機械軸線方向に出て且つ巻線ヘッドを形成する巻線バーが、特別な支持手段によって遠心力の影響から保護される。
【0003】
このような電気機器では、回転子上の巻線ヘッドが、極度の機械負荷及び熱負荷を受ける。この場合、遠心力に対する巻線ヘッドの支持が、補強鋼線を堅くて完全な鋼リングと組み合わせることによって実施され得る。しかしながら、回転子の、複雑な適合アシスト、輸送寸法及び重量制限が、限界を招く。大きい寸法を有する水力発電機の回転子に対しては、発電所内の取り付け位置で直接組み立てることが可能であることを必要とする。さらに、大きくて堅い鋼リングが、巻線ヘッドの通風、したがってこの巻線ヘッドの冷却の障害となる。
【0004】
また、ドイツ連邦共和国特許第195 13 457号明細書が、プレスフィンガーを回転子本体の最後の成層上に配置すること及び少なくとも2つのリングから成る支持リングを備え付けることを開示する。これらのリングは、軸線方向に互いに離れて間隔があいている。また、これらのリングは、これらのリングの内周でハブに支持されている。軸線に近い回転子本体の部分内では、これらのリングが、プレスフィンガーと一緒に回転子本体を軸線方向に貫通する第1締付ボルトによって一緒に締め付けられる。軸線からさらに遠い部分内には、第2締付ボルトが備え付けられている。これらの第2締付ボルトは、当該リングだけを軸線方向に貫通してこれらのリングを一緒に軸線方向に締め付ける。また、第3締付ボルトが備え付けられている。これらの第3締付ボルトは、巻線ヘッドを放射状に貫通し、軸線方向にリングを見たときに最も遠い外周に対して少なくとも作用する。
【0005】
軸線方向に延在し、互いに整合された多数の半分閉じられたスロットが、全てのリングの外周にわたって円周方向に分散して備え付けられている。当該第3締付ボルトが、放射状に延在する複数のねじ孔内にねじ締めされることによって、これらのねじ孔を有する1つの直線縁部が、これらのスロットの各々内に挿入される。このことは、容易に実現され得る確実な放射状の支持を提供する。
【0006】
しかしながら、この公知の配置では、発熱中の巻線の軸線方向の熱膨張が、巻線を巻線ヘッドのボルト(第3ボルト)に対して押圧させ、これらのボルトが、望まなく且つ耐えられない湾曲を引き起こしうる。
【0007】
国際公開第2010/115481号パンフレットは、これらの問題を回避するために回転子本体とこの回転子本体の隣に軸線方向に且つこの回転子本体に対して同軸に配置されているリング状の巻線ヘッドとこの巻線ヘッド内に放射状に且つこの巻線ヘッドに対して同軸に配置されている支持リングとを有する発電機を提唱する。この巻線ヘッド及びこの支持リングは、回転固定式にこの回転子本体に接続されている。また、この巻線ヘッド及びこの支持リングは、テンションロッドによって放射状方向に互いに締め付けられている。これらのテンションロッドは、この巻線ヘッド内とこの支持リング内との放射状の複数の孔を貫通する。この場合、これらのテンションロッドの放射状の内側の端部が、この支持リングに作用し、当該放射状の外側の端部が、この巻線ヘッドを支持するベアリングブロックに作用する。当該支持本体内の放射状の複数の孔の正幅が、これらのテンションロッドの直径と比べて遥かに大きい寸法を有する。また、この支持リング上のこれらのテンションロッドの放射状の内側の端部とこの巻線ヘッドのこれらのテンションロッドの放射状の外側の端部とのベアリング配置が、放射状方向に向かうこれらのテンションロッドの限定された傾斜運動を可能にする。このことは、特にこれらのテンションロッドの端部のうちの少なくとも幾つかの端部が、球状のベアリング面を有するベアリングブロックによって取り付けられることによって達成される。
【0008】
しかしながら、これらのテンションロッドの全てが、多大な仕様設計と適合の複雑さを引き起こす傾斜運動のために別々に準備されることを必要とする点が、この解決策の1つの欠点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第195 13 457号明細書
【特許文献2】国際公開第2010/115481号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、冒頭で述べた種類の回転電気機器を提供することにある。当該回転電気機器は、遠心力に対する巻線ヘッドの保護に関する公知の電気機器の欠点を回避し、巻線ヘッドの熱膨張を有効に且つ簡単な設計条件で緩和することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1に記載の特徴の全体によって解決される。
【0012】
本発明は、回転子を有する回転電気機器、特に水力発電機に関する。この回転子が、機械軸線の方向に延在する回転子成層スタックと回転子巻線とを有し、この回転子巻線が、この回転子成層スタックの複数の端部の各々で巻線ヘッドを形成し、この巻線ヘッドが、巻線ヘッドリムに固定されていて、複数のボルトを前記巻線ヘッドに放射状に貫通させることによって遠心力を遮断するため、この巻線ヘッドリムが、前記巻線ヘッドの内側に同心円状に配置されていて且つ前記機械軸線の方向に前記回転子成層スタックに接合し、当該固定が、前記巻線ヘッドの機械軸線の方向の膨張を安全に吸収するために設計されている。
【0013】
当該発明は、1つのT型ハンマー形材上の前記複数のボルトがそれぞれ、前記巻線ヘッドリムに対して固定されていて、前記1つのT型ハンマー形材が、機械軸線の方向に延在し且つ前記巻線ヘッドリムの機械軸線の方向に沿う対応する1つのT型の溝内に機械軸線の方向に可動式に取り付けられていて、前記巻線ヘッドの機械軸線方向の膨張を前記T型ハンマー形材に伝えるための追加の連結手段が備え付けられているという事実を特徴とする。
【0014】
本発明による電気機器の1つの構成は、前記追加の連結手段が前記巻線ヘッドと前記T型ハンマー形材との間の固定機械連結部から成るという事実を特徴とする。
【0015】
特に、前記T型ハンマー形材は、放射状部品に係合し、この放射状部品が、前記巻線ヘッドの後で外側に放射状に反るように屈曲されていて且つ機械軸線コネクタによって前記巻線ヘッドに連結されている。
【0016】
本発明による電気機器の別の構成は、前記複数のボルトが、ねじボルトの形であり且つ前記T型ハンマー形材内にねじ締めされているという事実を特徴とする。
【0017】
特に、当該同じ放射状方向に整合されている複数のボルトの全てが、共通の1つの保持要素を通じて外側から前記巻線ヘッドに作用する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態による回転電気機器の回転子の細部の投影図である。
【図2】本発明の1つの実施の形態による巻線ヘッドとT型ハンマー形材との間の固定機械連結部の異なる2つの方向から見た図である。1つの図は、上から見た図(図2a)であり、1つの図は、横から見た図(図2b)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面に関連する実施の形態を参照して本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の実施の形態による回転電気機器10の回転子の細部の投影図である。回転子11が、機械軸線20に沿って延在し且つ図示された端部で回転子本体つまり回転子成層スタック12に接合する巻線ヘッドリム13付きの当該回転子本体つまり回転子成層スタック12を有する。
【0020】
回転子巻線(図示せず)を収容する機械軸線の方向の巻線スロットが、回転子成層スタック12の外周上に配置されている。回転子の巻線スタック12から出る剥き出しの巻線バー(図2中の15a,b)が、巻線ヘッド(図2中の15)を形成する。この巻線ヘッドは、回転電気機器の稼働中に発生する遠心力に対して支持される必要がある。
【0021】
このため、放射状に指向された複数のボルト18が、巻線ヘッド15の領域内に備え付けられている。これらのボルトが、巻線ヘッド15に達し且つ巻線ヘッドリム13に固定されている。巻線ヘッド15の機械軸線の方向の自由な膨張とこの巻線ヘッド15の固定とを可能にするため、この巻線ヘッド全体の当該固定が、回転子巻線の熱膨張に対して調整される必要がある。当該提唱された解決策では、この解決策は、巻線ヘッドの固定部分が機械軸線の方向に移動され得るという事実によって達成される。各ボルト18を機械軸線の方向に放射状に等しく一直線に連続させるため、当該一直線に連続したボルトごとに、機械軸線の方向に延在する1つの共通のT型ハンマー形材17が備え付けられている。巻線ヘッド15用のボルト18が、このT型ハンマー形材17に固定されている。このため、このT型ハンマー形材17が、同様に間隔をあけた複数のねじ孔を備える。ねじ溝付きボルトとしてのボルト18の内側の端部が、当該ねじ孔内にねじ締めされる。複数のT型ハンマー形材17が、巻線ヘッドリム13の機械軸線の方向に指向された一致するT型スロット16内に誘導されている。複数のボルト18の頭部が、外側の、機械軸線の方向に延在する共通の1つの保持要素24上で支持されている。また、この保持要素は、巻線ヘッド15に対して圧力をかける。
【0022】
巻線ヘッド15の説明した仕様と巻線ヘッドリム13上へのこの巻線ヘッド15の固定とのために、第一には、稼働中に発生する巻線ヘッド15に対する遠心力が、遮断されて巻線ヘッドリム13に伝達され、第二には、当該複数のボルトの全体が、機械軸線の方向にT型スロット16に沿って摺動するT型ハンマー形材17によって、図1中に示された機械軸線に沿った移動方向19に、巻線ヘッドリム13に対して完全に固定されているので、巻線の熱膨張が、これらのボルト18で任意の分圧を増大させない。
【0023】
本発明によるさらなる構成は、同じ放射状方向に整合されている複数のボルトがそれぞれ、前記機械軸線の方向に前後して配置されていること、及び、当該同じ放射状方向に整合されている複数のボルトの全てが、共通の1つのT型ハンマー形材上に固定されているか又は共通の1つのT型ハンマー形材内にねじ締めされているという事実を特徴とする。
【0024】
巻線の熱膨張をT型ハンマー形材17に直接伝えるため、本発明によれば、追加の連結手段が、巻線ヘッド15とT型ハンマー形材17との間に備え付けられている。巻線又は巻線ヘッド15に対するT型ハンマー形材17の当該連結は、放射状部品22と巻線ヘッド15との間の中間片材である機械軸線コネクタ23を介して実現される。この放射状部品22が、T型ハンマー形材17の外側の端部で外側に放射状に反るように屈曲されている。この機械軸線コネクタ23が、巻線ヘッド15の半田突出部21と放射状部品22又はT型ハンマー形材17の肩部との間に遊びなしに差し込まれている。また、図2b中に示されたように、反るように屈曲されていて且つ巻線ヘッド15の下に係合している当該機械軸線コネクタ23が、(外側の)巻線ヘッドボルト18によって放射状方向に位置決めされて保持されている。
【0025】
巻線が熱で膨張し、これに応じて半田突出部21が機械軸線方向に移動すると、T型ハンマー形材17も、この半田突出部21に対して平行に押される。このため、巻線ヘッドボルト18が、引っ張られるだけで、どんな曲がりも起こらない。
【符号の説明】
【0026】
10 回転電気機器(特に、水力発電機)
11 回転子
12 回転子成層スタック
13 巻線ヘッドリム
14 巻線スロット
15 巻線ヘッド
15a,b 巻線バー
16 T型スロット
17 T型ハンマー形材
18 ボルト(巻線ヘッド)
19 移動方向
20 機械軸線
21 半田突出部
22 放射状部品
23 機械軸線コネクタ
24 保持要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子(11)を有する回転電気機器(10)、特に水力発電機であって、この回転子(11)が、機械軸線(20)の方向に延在する回転子成層スタック(12)と回転子巻線(15a,b)とを有し、この回転子巻線(15a,b)が、この回転子成層スタック(12)の複数の端部の各々で巻線ヘッド(15)を形成し、この巻線ヘッド(15)が、巻線ヘッドリム(13)に固定されていて、複数のボルト(18)を前記巻線ヘッド(15)に放射状に貫通させることによって遠心力を遮断するため、この巻線ヘッドリム(13)が、前記巻線ヘッド(15)の内側に同心円状に配置されていて且つ前記機械軸線の方向に前記回転子成層スタック(12)に接合し、当該固定(16,17,18,21)が、前記巻線ヘッドの前記機械軸線の方向の膨張を安全に吸収するために設計されている、当該回転電気機器において、
1つのT型ハンマー形材(17)上の前記複数のボルト(18)がそれぞれ、前記巻線ヘッドリム(13)に対して固定されていて、前記1つのT型ハンマー形材(17)が、前記機械軸線の方向に延在し且つ前記巻線ヘッドリム(13)の前記機械軸線の方向に沿う対応する1つのT型スロット内に前記機械軸線の方向に可動式に取り付けられていて、前記巻線ヘッド(15)の機械軸線方向の膨張を前記T型ハンマー形材(17)に伝えるための追加の連結手段(22,23)が備え付けられている、ことを特徴とする回転電気機器。
【請求項2】
前記追加の連結手段(22,23)は、前記巻線ヘッド(15)と前記T型ハンマー形材(17)との間の固定機械連結部(22,23)から成る、請求項1に記載の回転電気機器。
【請求項3】
前記T型ハンマー形材(17)は、放射状部品(22)に係合し、この放射状部品(22)が、前記巻線ヘッド(15)の後で外側に放射状に反るように屈曲されていて且つ機械軸線コネクタ(23)によって前記巻線ヘッド(15)に連結されている、請求項2に記載の回転電気機器。
【請求項4】
前記複数のボルト(18)は、ねじボルトの形であり且つ前記T型ハンマー形材(17)内にねじ締めされている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転電気機器。
【請求項5】
同じ放射状方向に整合されている複数のボルト(18)がそれぞれ、前記機械軸線の方向に前後して配置されていること、及び、当該同じ放射状方向に整合されている複数のボルト(18)の全てが、共通の1つのT型ハンマー形材(17)上に固定されているか又は共通の1つのT型ハンマー形材(17)内にねじ締めされている、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転電気機器。
【請求項6】
当該同じ放射状方向に整合されている複数のボルト(18)の全てが、共通の1つの保持要素(24)を通じて外側から前記巻線ヘッド(15)に作用する、ことを特徴とする請求項5に記載の回転電気機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−42654(P2013−42654A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−177769(P2012−177769)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【出願人】(508307012)アルストム・ハイドロ・フランス (6)
【Fターム(参考)】