説明

回転駆動装置

【課題】小形軽量で大きな出力トルクが得られるとともに耐久性に優れ、出力回転速度の制御性が良好で、出力トルクの設計が簡易な回転駆動装置を提供する。
【解決手段】表面の一部に第1対向面(円筒内周面31)を有しかつ回転軸線回りに回転可能な第1部材(ロータ3)と、第1対向面31に離隔して対向する第2対向面(円筒外周面21)を有する第2部材(ステータ2)と、第1対向面31および第2対向面21の中の一方面に立設され、第1部材3の回転方向に対し同方向に傾斜して第1対向面お31よび第2対向面21の中の他方面に圧接し、かつ弾性を有する複数の圧接弾性部材(板ばね4)と、第1部材3を回転軸線AX回りに回転可能に支承し、第2部材2の回転を規制して支持する基台5と、第2部材2と基台5との間に配置され、第2部材2を加振して第1対向面31と第2対向面21との離隔距離Wを繰り返して微小変動させる加振手段6と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトルクを出力する回転駆動装置に関し、より詳細には、圧電体などの加振手段が発生する振動を利用した回転駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力を機械的動力に変換して出力する駆動装置として電磁力を利用するモータが一般的に用いられるが、電子機器や精密機械などに内蔵する駆動装置には特に小形化や位置制御の高精度化が必要とされる。このような小形化、高精度化への要求に応えて、電磁力によらず、超音波振動などを利用した別の駆動方式の駆動装置が実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される超音波モータは、圧電体によって励振されて表面に進行波を発生する固定子と、固定子に当接されて相対的に可動する回転子とを有し、固定子および回転子の少なくとも一方を弾性変形する薄板円板で支持している。そして、圧電体に高周波電圧を印加すると固定子には屈曲振動によって進行波が発生し、加圧接触している回転子が回転するようになっている。
【0004】
また、特許文献2に開示される超音波リニアモータは、胴部から延びる少なくとも2本の脚部を有する振動体と、振動体に設けられて胴部および脚部の少なくとも一方に交差する方向に向けられた振動素子とを備え、振動素子として圧電素子が例示されている。そして、圧電素子に電圧を印加することにより、脚部の先端が楕円状に回転して振動体がレール上を移動するようになっている。これにより、エネルギー変換効率が高く、高速動作をさせることができ、しかも極めてコンパクトに構成することができる、とされている。
【0005】
さらに、特許文献3の超音波リードスクリューモータを含む機構には、ねじ付きシャフトおよびねじ付きナットを含み、ねじ付きナットを超音波振動に供し、それによってねじ付きシャフトを回転させながら軸方向に移動させる光学アセンブリが開示されている。また、超音波振動を発生させる手段として圧電管が開示されている。この発明の目的は、従来技術よりも実質的に高い効率を有し、かつ高い精度、大きな力および速度を提供することとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−77068号公報
【特許文献2】特開平2−266881号公報
【特許文献3】特開2008−510445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の3つの特許文献に開示された技術は、駆動力・推進力に制約が生じる点、および、摩擦面の摩耗による耐久性の低下の点で問題点があった。特許文献1では、固定子と回転子とが対向する面で加圧接触しているが、加圧方向における圧電体の変形力は小さく、したがって小さな駆動力しか得られない。また、加圧接触している面が荒れると、性能が低下してしまう。特許文献2でも同様であり、振動体の脚部先端をレールに押し当てながら駆動するので、面接触による摩擦分だけの推進力しか得られず、脚部先端やレールの摩耗も懸念される。特許文献3では、ねじ付きシャフトおよびねじ付きナットが螺合面で擦れ合い摩擦力によりシャフトが回転するので、摩擦力以上の推進力は得られない。
【0008】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、小形軽量で大きな出力トルクが得られるとともに耐久性に優れ、出力回転速度の制御性が良好で、出力トルクの設計が簡易な回転駆動装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する請求項1に係る回転駆動装置の発明は、表面の一部に第1対向面を有しかつ回転軸線回りに回転可能な第1部材と、前記第1対向面に離隔して対向する第2対向面を有する第2部材と、前記第1対向面および前記第2対向面の中の一方面に立設され、前記第1部材の回転方向に対し同方向に傾斜して前記第1対向面および前記第2対向面の中の他方面に圧接し、かつ弾性を有する複数の圧接弾性部材と、前記第1部材を前記回転軸線回りに回転可能に支承し、前記第2部材の回転を規制して支持する基台と、前記第1部材と前記基台との間または前記第2部材と前記基台との間に配置され、前記第1部材または前記第2部材を加振して前記第1対向面と前記第2対向面との離隔距離を繰り返して微小変動させる加振手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記第1部材の前記第1対向面および前記第2部材の前記第2対向面の一方は円筒内周面で、他方は円筒外周面であり、前記円筒内周面および前記円筒外周面の中の一方面に立設された前記複数の圧接弾性部材は、前記第1部材の回転方向に対し周方向に同方向に傾斜して前記円筒内周面および前記円筒外周面の中の他方面に圧接し、前記基台は、前記第1部材を前記回転軸線回りに回転可能に支承し、前記第2部材を前記回転軸線と直角な方向に振動可能に回転を規制して支持し、前記加振手段は、前記第2部材と前記基台との間に配置されて前記第2部材を前記回転軸線と直角な方向に加振する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1において、前記第1部材の前記第1対向面および前記第2部材の前記第2対向面は、前記回転軸線に直交配置される円形平面または環形平面であり、前記一方面に立設された前記複数の圧接弾性部材は、前記第1部材の回転方向に対し前記回転軸線方向に同方向に傾斜して前記他方面に圧接し、前記基台は、前記第1部材を前記回転軸線回りに回転可能にかつ回転軸線方向に振動可能に支承し、前記第2部材の回転を規制して支持し、前記加振手段は、前記基台と前記第1部材の間に配置されて前記第1部材を前記軸線方向に加振する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記加振手段は圧電体であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記圧接弾性部材は、前記第1部材の前記回転軸線方向または半径方向に幅を有する板ばねであることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、前記圧接弾性部材は、弾性を有する細線からなる線状ばねであることを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれか一項において、前記圧接弾性部材が前記他方面に圧接する傾斜角度は、前記他方面上の圧接位置における接線に対して45°であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る回転駆動装置の発明では、第1対向面を有する第1部材は回転可能に支承され、第2対向面を有する第2部材は回転を規制して支持される。また、複数の圧接弾性部材は、対向する第1および第2対向面の中の一方面に立設され、第1部材の回転方向に対し同方向に傾斜して他方面に対し圧接し、かつ弾性を有している。このため、加振手段が第1部材または第2部材を加振すると、第1対向面と第2対向面との離隔距離が繰り返して微小変動し、複数の圧接弾性部材も繰り返して微小弾性変形し、他方面を傾斜角度の方向に押圧する駆動力が発生する。この駆動力は、複数の圧接弾性部材で同じ回転方向に揃っているので、第1部材は回転駆動されてトルクを出力する。
【0017】
本発明は、特許文献1〜3に例示される駆動側と従動側とが面同士で摩擦接触する従来の駆動方式とは異なり、複数の圧接弾性部材の微小弾性変形の繰り返しによりトルクを得る駆動方式を用いている。したがって、圧接弾性部材の数量や弾性強度を増加させることにより、小形軽量であっても大きな出力トルクを得ることができる。また、装置構成が簡単であること、常時摩擦接触する面がなく荒れなどの影響を受けにくいこと、などから耐久性に優れている。さらに、加振手段の加振周波数の制御により出力回転速度を自在に調整できて制御性が良好である。また、圧接弾性部材の数量や弾性強度を増減することによりトルクの大きさを調整でき、出力トルクの設計が簡易である。加えて、加振手段を駆動する駆動電気信号に複雑な進行波を使用しないので、駆動電源部の小形化、低コスト化が可能となる。
【0018】
請求項2に係る発明では、第1部材の第1対向面および第2部材の第2対向面の一方は円筒内周面で、他方は円筒外周面とされ、円筒内周面および円筒外周面の中の一方面に立設された圧接弾性部材が周方向に傾斜して他方面に圧接している。これにより、駆動側および従動側を同軸の内側および外側に配置した回転駆動装置を構成でき、回転軸線方向の寸法が小さな薄形の装置を実現できる。
【0019】
請求項3に係る発明では、第1部材の第1対向面および第2部材の第2対向面は、回転軸線に直交配置される円形平面または環形平面とされ、一方面に立設された圧接弾性部材は回転軸線方向に傾斜して他方面に圧接している、これにより、駆動側および従動側を回転軸線方向に並べて配置した回転駆動装置を構成できる。
【0020】
請求項4に係る発明では、加振手段を圧電体としている。圧電体では、比較的周波数の低い領域から高い超音波領域までの振動を発生でき、出力回転速度の制御範囲が広い。
【0021】
請求項5に係る発明では、圧接弾性部材を板ばねとしている。また、請求項6に係る発明では、圧接弾性部材を線状ばねとしている。板ばねや線状ばねを用いることで数量や弾性強度の設計変更が容易となって出力トルクの大きさを自在に調整でき、また、一般的な汎用の部材であるためコストも低廉になる。
【0022】
請求項7に係る発明では、圧接弾性部材が他方面に圧接する傾斜角度を45°としている。45°とすることにより、圧接弾性部材が加振の力・変位を回転方向に変換する効率か良くなり、大きな出力トルクが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態の回転駆動装置を模式的に説明する正面図である。
【図2】第1実施形態のロータおよび板ばねの形状を説明する図であり、(1)はロータ、(2)は板ばね、(3)は別の板ばねの各斜視図である。
【図3】第2実施形態のロータおよび板ばねの構造を説明する正面図である。
【図4】第3実施形態の回転駆動装置を模式的に説明する正面図である。
【図5】第4実施形態の回転駆動装置を模式的に説明する側面図である。
【図6】図5中のロータを説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1実施形態の回転駆動装置について、図1および図2を参考にして説明する。図1は、本発明の第1実施形態の回転駆動装置1を模式的に説明する正面図である。図示されるように、回転駆動装置1は、ステータ2、ロータ3、板ばね4、基台5、および加振装置6などにより構成されている。
【0025】
ステータ2は、第2部材に相当する外周側の部材であり、かつ回転駆動装置1の外枠になっている。ステータ2には、第2対向面に相当する内径D1の円筒内周面21が水平方向に形成されている。円筒内周面21の表面は粗面とされ、板ばね4が圧接するときの摩擦が大きくなり、滑らないで押圧力が発生するようになっている。ステータ2の円筒内周面21内に離隔して配置されているロータ3は、第1部材に相当する内周側の部材であり、第1対向面に相当する外径D2の円筒外周面31が水平方向に形成されている。ロータ3の中心部には軸孔が形成され、軸孔には出力軸35が嵌合している。ロータ3と一体に回転する出力軸35には、図略の負荷を結合できる。
【0026】
ステータ2およびロータ3は、水平方向の回転軸線AXを共有して同軸外内に配置されている。したがって、ステータ2の円筒内周面21とロータ3の円筒外周面31との間に円筒状の空間Sが形成され、空間Sの半径方向の幅Wすなわち離隔距離Wは両周面21、31の径差の半分になっている(W=(D1−D2)÷2)。
【0027】
複数の板ばね4は、上記の空間Sに配置され、ロータ3の円筒外周面31から半径方向外向きに立設され、ステータ2の円筒内周面21に周方向に同方向に傾斜して圧接し、かつ弾性を有しており、圧接弾性部材に相当する。詳述すると、複数の板ばね4は、回転軸線AX方向(図1の紙面表裏方向)に幅を有し、円筒外周面31から半径方向外向きに垂直に立設されている。板ばね4は、半径方向外向きの途中で図中時計回りの方向に揃って屈折している。この屈折により、板ばね4の先端4Xは、円筒内周面21の圧接位置における接線に対して傾斜角度A=45°で圧接している。板ばね4は、弾性を有する金属や樹脂で形成できる。なお、板ばね4は、図1では周方向に等間隔に28個配置されており、個数や弾性強度は適宜変更できる。
【0028】
基台5は、ステータ2を振動可能にかつ回転を規制して支持し、ロータ3を回転軸線AX回りに回転可能に支承している。詳述すると、基台5は、板状の剛体で構成され、その上面に緩衝材51を介してステータ2を支持している。緩衝材51は、例えば合成ゴムなどで形成して、ステータ2の回転軸線AXと直角な上下方向の振動を許容し回転を規制する。また、基台5には、図略の軸受が設けられており、軸受は出力軸35を回転自在に支承し、出力軸35と一体のロータ3をも支承している。
【0029】
加振装置6は、ステータ2と基台5との間に、緩衝材51と並列に配置されている。加振装置6は駆動源として圧電体を用いた装置であり、圧電体に電圧を印加することによって変形し、ステータ2を上下方向に加振するようになっている。
【0030】
次に、ロータ3に板ばね4を立設する構造について説明する。図2は、ロータ3および板ばね4の形状を説明する図であり、(1)はロータ3、(2)は板ばね41、(3)は別の板ばね42の各斜視図である。図2(1)に示されるように、ロータ3の円筒外周面31には、周方向に等間隔で半径方向内向きかつ回転軸線AX方向の厚さTにわたり延在するスリット32が28箇所形成されている。また、図2(2)に示されるように、板ばね41は、ロータ3の厚さTに相当する幅の弾性金属体の途中が屈折加工して形成されている。板ばね41の根元部41Yをロータ3のスリット32に差し込み接着固定することで、立設することができる。
【0031】
図2(1)には、立設した板ばね41を1個のみ破線で示してあり、全スリット32に板ばね41を立設する。このとき、全ての板ばね41の各先端41Xを結ぶ包絡円筒面の直径D3は、ステータ2の円筒内周面21の内径D1よりもわずかに大きくなっている。したがって、ステータ2にロータ3を組み付けるときには、ロータ3を図1の反時計回りに回転させながら板ばね41を撓ませて挿入する。これにより、板ばね41の各先端41Xが円筒内周面21に傾斜角度A=45°で圧接した状態で組み付けられる。なお、板ばね41は、図2(3)に示される別の板ばね42としてもよい。別の板ばね42は、弾性金属体の途中が屈折ではなく曲げ加工して形成されているものである。
【0032】
さらに、図3に示される第2実施形態のロータ30および板ばね43を用いることもできる。第2実施形態において、ステータ2、基台5、および加振装置6の構成は第1実施形態と同一であり、ロータ30および板ばね43が異なる。図3は、第2実施形態のロータ30および板ばね43の構造を説明する正面図である。図示されるように、第2実施形態では、ロータ30の円筒外周面33には、半径方向内向きに傾斜してスリット34が形成されている。また、板ばね43には、ロータ30の厚さに相当する幅を有して平らな弾性金属体が用いられている。平らな板ばね43を傾斜したスリット34に差し込み接着固定することで、立設することができる。このとき、板ばね43の各先端43Xを結ぶ包絡円筒面の直径D4が、ステータ2の円筒内周面21の内径D1よりもわずかに大きくなっている点は、第1実施形態と同様である。また、ロータ30を回転させながら板ばね43を撓ませてステータ2に挿入する点、および、板ばね43の各先端43Xが円筒内周面21に傾斜角度A=45°で圧接する点も同様である。
【0033】
次に、第1実施形態の回転駆動装置1の動作および作用について説明し、第2実施形態については概ね同様の動作、作用となるので説明は省略する。図1の第1実施形態において、加振装置6の圧電体に交流電圧を印加することにより加振装置6は繰り返して変形し、ステータ2を上下方向に加振する。すると、ステータ2とロータ3との離隔距離Wが繰り返して微小変動し、板ばね4にも微小振動が伝搬する。板ばね4は伸縮して、その先端4Xは瞬間的に円筒内周面21から跳ね上がり、再度円筒内周面21に圧接する。この跳ね上がりと圧接の際に、円筒内周面21を傾斜方向に押圧する駆動力F(図1に1箇所示す)が発生する。この駆動力Fは、すべての板ばね4で同じ回転方向に揃っているので、その反力によりロータ3は図1の反時計回りに回転駆動される。これにより、ロータ3と一体の出力軸35が回転して負荷にトルクを出力する。
【0034】
ここで、板ばね4が円筒内周面21に圧接する傾斜角度A=45°であるので、大きな駆動力Fが得られ、効率的にトルクを出力できる。圧電体に印加する電圧を大きくすれば加振装置6の変形量も大きくなり、ステータ2や板ばね4の振動も大きくなってロータ3の出力回転速度や出力トルクが大きくなる。また、電圧の周波数を大きくすれば加振装置6の変形回数が増加し、ステータ2や板ばね4、41、42の振動回数も増加して、ロータ3の出力回転速度が大きくなる。
【0035】
第1および第2実施形態では、駆動側と従動側とが面同士で摩擦接触する従来の駆動方式とは異なり、板ばね4、41、42、43の微小弾性変形の繰り返しによりトルクを得る駆動方式を用いている。したがって、板ばね4、41、42、43の数量や弾性強度を増加させることにより、小形軽量であっても大きな出力トルクを得ることができる。特に、ロータ3の厚さTを小さくした薄形の装置を実現できる。また、装置構成が簡単であること、常時摩擦接触する面がなく荒れなどの影響を受けにくいこと、などから耐久性に優れている。
【0036】
さらに、加振装置6の圧電体に印加する電圧周波数の制御により回転速度を自在に調整できるので、出力回転速度の制御性が良好である。また、板ばね4の数量や弾性強度を増減することによりトルクの大きさを調整でき、出力トルクの設計が簡易である。また、圧電体では、比較的周波数の低い領域から高い超音波領域までの振動を発生でき、出力回転速度の制御範囲が広い。さらに、、板ばね4、41、42、43は一般的な汎用の部材であるためコストも低廉になる。加えて、加振装置6を駆動する交流電圧は一般的な矩形波や正弦波などでよく複雑な進行波を使用しないので、駆動電源部の小形化、低コスト化が可能となる。
【0037】
なお、第1および第2実施形態において、圧接弾性部材である板ばね4、41、42、43は内周側のロータ3、30に立設されているが、これに限定されない。すなわち、外周側のステータ2の円筒内周面21から半径方向内向きに立設され、ロータ3の円筒外周面31に周方向に同方向に傾斜して圧接し、かつ弾性を有する板ばねとすることができる。また、板ばね4、41、42、43は、弾性を有する細線からなる金属製や樹脂製などの線状ばねに置き換えることもできる。いずれの態様においても、動作および作用は第1実施形態と同様になる。
【0038】
また、外周側の第2部材と内周側の第1部材とは、ロータおよびステータの役割を交換することができる。つまり、第1および第2実施形態とは逆に、外周側に第1部材をロータとして回転可能に支承し、内周側に第2部材をステータとして振動可能に回転を規制して支持し、内周側の第2部材を加振して外周側の第1部材からトルクを出力するように構成できる。
【0039】
次に、ステータの構造が異なる第3実施形態の回転駆動装置10について、図4を参考にして説明する。図4は、第3実施形態の回転駆動装置10を模式的に説明する正面図である。図示されるように、第3実施形態では、ステータ20は断面円弧状の上部内周面22および下部内周面23をロータ3の上下に配置して構成されており、他の構成は第1実施形態と同じである。このように第2対向面が円筒内周面の一部となっている構成でも、ステータ20の上下動により板ばね4が接離するので、第1実施形態と同様の効果が生じる。
【0040】
次に、第4実施形態の回転駆動装置11について、図5および図6を参考にして説明する。図5は、第4実施形態の回転駆動装置11を模式的に説明する側面図である。図示されるように、回転駆動装置11は、ロータ7、板ばね45、ケース8、および加振装置60などにより構成されている。また、図6は、図4中のロータ7を説明する斜視図である。
【0041】
ロータ7は、第1部材に相当する部材であり、図6に示されるように円板状の部材で形成されている。ロータ7の中心部には回転軸線AY方向に軸孔71が形成され、軸孔71には一体に回転する出力軸79が嵌合される。ロータ7の表面のうち回転軸線AYと直交する一方の環形平面72は第1対向面に相当し、この環形平面72に複数(図6の例では12枚)の板ばね45が立設されている。複数の板ばね45は、ロータ7の環形平面72の半径方向に幅を有して立設され、回転軸線AY方向に同方向に傾斜角度B=45°で傾斜している。複数の板ばね45は弾性を有しており、圧接弾性部材に相当する。板ばね45は、例えばステンレス鋼で形成でき、その個数や弾性強度は適宜変更できる。
【0042】
ケース8は基台に相当し、回転駆動装置11の外枠である。図5に示されるように、ケース8の内側の天井面81の略中央には固定座82が設けられ、固定座82の下方に緩衝ばね83が下向きに固定されている。さらに、緩衝ばね83の下端に加振装置60が固定されている。加振装置60は、円板状の上板61および下板62と、上板61および下板62の間に配設された積層圧電体63とにより形成されている。上板61は前記の緩衝ばね83に固定され、下板62はロータ7に接する。加振装置60の積層圧電体63は、電圧を印加することによって厚さが変化し、上板61と下板62の間の距離D5が増減変化するようになっている。
【0043】
ケース8の底面84の略中央には出力孔85が穿設されている。ケース8の底面84と加振装置60との間に、板ばね45を下方に向けたロータ7が配設される。ロータ7の出力軸79は、出力孔85からケース8の外側に突出し、図略の負荷を結合できるようになっている。一方、ロータ7の板ばね45が立設されていない他方の環形平面73は上側を向き、加振装置60の下板62に接している。ロータ7の他方の環形平面73と加振装置60の下板62との間にはベアリング部材74が環状に配設され、ロータ7は回転自在となっている。つまり、ロータ7は、ケース7により回転軸線AY回りに回転可能に支承されている。なお、前述の緩衝ばね83は、加振装置60を介してロータ7を上下方向の振動を許容しつつ下方に付勢しており、板ばね45がケース8の底面84に確実に圧接するようになっている。
【0044】
図5に示されるように、ロータ7の板ばね45は、ケース8の底面84に対し傾斜角度C=45°で傾斜して圧接している。ケース8の底面84は、回転を規制して支持される第2部材の第2対向面として作用する。
【0045】
次に、第4実施形態の回転駆動装置11の動作および作用について説明する。図5において、加振装置60の積層圧電体63に交流電圧を印加することにより加振装置60の上板61と下板62の間の距離D5が増減変化して、ロータ7を上下方向に加振する。すると、ロータ7の一方の環形平面72(第1対向面)とケース8の底面83(第2対向面)との離隔距離W2が繰り返して微小変動し、板ばね45にも微小振動が伝搬する。板ばね45は伸縮して、その先端45Xは瞬間的に底面84から跳ね上がり、再度底面84に圧接する。この跳ね上がりと圧接の際に、底面84を傾斜方向に押圧する駆動力F2(図4に1箇所示す)が発生する。この駆動力F2は、すべての板ばね45で同じ回転方向に揃っているので、その反力によりロータ7は回転駆動される。これにより、ロータ7と一体の出力軸79が回転して負荷にトルクを出力する。
【0046】
ここで、板ばね45が底面84に圧接する傾斜角度C=45°であるので、大きな駆動力F2が得られ、効率的にトルクを出力できる。積層圧電体62に印加する電圧を大きくすれば加振装置60の変形量も大きくなり、ロータ7の上下振動も大きくなって出力回転速度や出力トルクが大きくなる。また、電圧の周波数を大きくすれば加振装置60の変形回数が増加し、ロータ7の振動回数も増加して出力回転速度が大きくなる。さらに、積層圧電体62は多数の圧電素子を直列に積層しているので、大きな変形量を得るのが容易である。
【0047】
したがって、第1〜第3実施形態と同様、小形軽量であっても大きな出力トルクを得ることができる。また、装置構成が簡単であること、常時摩擦接触する面がなく荒れなどの影響を受けにくいこと、などから耐久性に優れている。さらに、出力回転速度の制御性が良好である点、出力トルクの設計が簡易である点、コストが低廉である点も同様である。
【0048】
なお、第1および第2対向面の形状は、第1〜第4実施形態の形状に限定されず、例えば円錐状の面にすることも可能である。また、加振装置6、60の駆動源として圧電体の他に、電流を流すことで歪みが生じる磁歪体や、電圧を印加すると内部電子が移動して歪みが発生する高分子樹脂などを用いることができる。本発明は、その他様々な応用が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1、10、11:回転駆動装置
2、20:ステータ(第2部材) 21:円筒内周面(第2対向面)
22:上部内周面 23:下部内周面
3、30:ロータ(第1部材) 31、33:円筒外周面(第1対向面)
32、34:スリット 35:出力軸
4、41、42、43、45:板ばね(圧接弾性部材)
4X、41X、43X,45X:先端
41Y:根元部
5:基台 51:緩衝材
6、60:加振装置(加振手段) 61:上板 62:下板 63:積層圧電体
7:ロータ(第1部材) 71:軸孔 72:一方の環形平面(第1対向面)
73:他方の環形平面 74:ベアリング部材 79:出力軸
8:ケース(基台) 81:天井面 82:固定座 83:緩衝ばね
84:底面(第2部材の第2対向面) 85:出力孔
AX、AY:回転軸線 A、B、C:傾斜角度 F、F2:駆動力
W、W2:離隔距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の一部に第1対向面を有しかつ回転軸線回りに回転可能な第1部材と、
前記第1対向面に離隔して対向する第2対向面を有する第2部材と、
前記第1対向面および前記第2対向面の中の一方面に立設され、前記第1部材の回転方向に対し同方向に傾斜して前記第1対向面および前記第2対向面の中の他方面に圧接し、かつ弾性を有する複数の圧接弾性部材と、
前記第1部材を前記回転軸線回りに回転可能に支承し、前記第2部材の回転を規制して支持する基台と、
前記第1部材と前記基台との間または前記第2部材と前記基台との間に配置され、前記第1部材または前記第2部材を加振して前記第1対向面と前記第2対向面との離隔距離を繰り返して微小変動させる加振手段と、
を備えたことを特徴とする回転駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第1部材の前記第1対向面および前記第2部材の前記第2対向面の一方は円筒内周面で、他方は円筒外周面であり、
前記円筒内周面および前記円筒外周面の中の一方面に立設された前記複数の圧接弾性部材は、前記第1部材の回転方向に対し周方向に同方向に傾斜して前記円筒内周面および前記円筒外周面の中の他方面に圧接し、
前記基台は、前記第1部材を前記回転軸線回りに回転可能に支承し、前記第2部材を前記回転軸線と直角な方向に振動可能に回転を規制して支持し、
前記加振手段は、前記第2部材と前記基台との間に配置されて前記第2部材を前記回転軸線と直角な方向に加振する、
ことを特徴とする回転駆動装置。
【請求項3】
請求項1において、前記第1部材の前記第1対向面および前記第2部材の前記第2対向面は、前記回転軸線に直交配置される円形平面または環形平面であり、
前記一方面に立設された前記複数の圧接弾性部材は、前記第1部材の回転方向に対し前記回転軸線方向に同方向に傾斜して前記他方面に圧接し、
前記基台は、前記第1部材を前記回転軸線回りに回転可能にかつ回転軸線方向に振動可能に支承し、前記第2部材の回転を規制して支持し、
前記加振手段は、前記基台と前記第1部材の間に配置されて前記第1部材を前記軸線方向に加振する、
ことを特徴とする回転駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、前記加振手段は圧電体であることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、前記圧接弾性部材は、前記第1部材の前記回転軸線方向または半径方向に幅を有する板ばねであることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項において、前記圧接弾性部材は、弾性を有する細線からなる線状ばねであることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、前記圧接弾性部材が前記他方面に圧接する傾斜角度は、前記他方面上の圧接位置における接線に対して45°であることを特徴とする回転駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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