説明

図面配布システム

【課題】秘密保持が必要な図面情報の漏洩を効果的に防止することができる図面配布システムを提供する。
【解決手段】サーバシステム10とクライアント端末20とを有する図面配布システムである。サーバシステムは、各物件の図面データを記憶する記憶手段と、クライアント端末から利用者の認証情報を受信した際に、その認証情報に基づいて利用者の正当性を判定する認証手段とを備える。このサーバシステムは、認証情報から利用者を特定して、当該利用者が、見積りの依頼を受けた見積依頼業者の担当者である場合に、その見積りの対象となる物件の特定図面の閲覧を許可し、印刷を規制する制御を行う一方で、当該利用者が、契約を交わした契約済み業者の担当者である場合には、その契約の対象となる物件の特定図面の閲覧および印刷を許可する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、秘密保持が必要な設計図等の図面データの閲覧・印刷に用いて好適な図面配布システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
設計図等の図面データを閲覧するためのシステムとして、例えば特許文献1に記載の図面データ配信システムが知られている。この図面データ配信システムにおいては、利用者端末から取得した入力情報(利用者が選択した図面および領域の情報)を基に、それに対応する図面データをサーバが抽出・作成して、利用者端末に送信する構成となっている。この図面データ配信システムによれば、利用者が閲覧を希望する部分の図面データのみを利用者に提供することができるため、利用者端末に送信するデータ量が少なくて済み、このためダウンロードに要する時間を短縮することができるとともに、利用者端末に加わる負荷も軽減することができる。
【0003】
しかしながら、上記図面データ配信システムにおいては、利用者端末に対して図面データを単に送信するのみであったため、図面の閲覧のみならず、図面の印刷や、図面データのコピー或いは持ち出しまでもが比較的容易にできてしまい、秘密保持が必要な図面の場合に、その流出を阻止することが難しいという問題点があった。
【0004】
特に、建築や土木の分野においては、工事の見積りを依頼する際に、複数の業者に依頼するのが一般的であり、それら業者の中には、最終的に契約を交わすこととなる業者だけではなく、契約にまで至らない数多くの業者も含まれることとなるため、秘密保持が必要な図面に関しては、その閲覧や印刷を必要最小限に抑え、その管理を徹底することが求められているが、上記図面データ配信システムでは、上述したように、利用者からの要求に対して図面データを単に配信するのみであったため、かかる要請に応えることは難しく、当該システムのみで図面情報の流出を阻止することは困難であった。
【特許文献1】特開2003−60818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、秘密保持が必要な図面の閲覧や印刷を必要最小限に抑えることができ、これにより図面情報の拡散を防止して、図面情報の漏洩を効果的に防止することができる図面配布システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る図面配布システムは、サーバシステムと、当該サーバシステムにネットワークを介して接続されたクライアント端末とを有する図面配布システムであって、上記サーバシステムは、秘密保持が必要な図面を特定図面として、この特定図面を含む各物件の図面データを記憶する記憶手段と、上記クライアント端末から利用者の認証情報を受信した際に、その認証情報に基づいて利用者の正当性を判定する認証手段と、上記認証情報から利用者を特定し、当該利用者が、見積りの依頼を受けた見積依頼業者の担当者である場合に、その見積りの対象となる物件の特定図面について、閲覧を許可し、印刷を規制する制御を行う一方、当該利用者が、契約を交わした契約済み業者の担当者である場合に、その契約の対象となる物件の特定図面について、閲覧および印刷を許可する制御を行う制御手段と、上記制御手段により閲覧または印刷が許可された特定図面の図面データを上記記憶手段から取得して、上記クライアント端末に対して送信する送信手段とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の図面配布システムにおいて、上記サーバシステムは、見積・契約に関する処理を行う見積契約システムから、各物件の上記見積依頼業者および上記契約済み業者を特定可能な識別情報を取得し、これに基づいて、利用者の属する企業が上記見積依頼業者または上記契約済み業者に該当するか否かを判定することを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の図面配布システムにおいて、上記サーバシステムは、上記制御手段により閲覧または印刷が許可された特定図面の図面データを上記クライアント端末に対して送信する際に、その図面データの配布記録を作成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、見積りの依頼を受けた見積依頼業者の担当者に対して、その見積りの対象となる物件の特定図面の閲覧を許可し、印刷を規制する制御を行う一方で、契約を交わした契約済み業者の担当者に対しては、その契約の対象となる物件の特定図面の閲覧および印刷を許可する制御を行うようにしたので、特定図面の閲覧および印刷をそれぞれ必要最小限に抑えることができ、これにより、図面情報の拡散を防止して、図面情報の漏洩を効果的に防止することができる。
また、特定図面の図面データをクライアント端末に対して送信する際に、その図面データの配布記録を作成するようにしたので、図面情報が万が一流出したとしても、その流出元を容易に特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明に係る図面配布システムの一実施形態を示すブロック図である。
この図面配布システムは、LAN(Local Area Network)やインターネット等のネットワーク30を介して相互に接続されたサーバシステム10と複数のクライアント端末20とにより概略構成されている。クライアント端末20は、例えば、工事全体を統括管理するA社(建設会社)の調達・購買部署、技術系部署、営業系部署、A社から工事の見積り依頼を受けるB社、C社、D社(専門工事業者)など、複数の拠点に設置されている。サーバシステム10には、例えば、ASP(Application Service Provider)のサーバコンピュータが用いられている。
【0011】
サーバシステム10は、CPU(Central Processing Unit )、RAM(Random Access Memory)、記憶装置、入力装置、表示装置および通信装置等を有する複数のコンピュータ(例えば、Webサーバ、アプリケーションサーバ、データベース管理サーバ、ファイヤーウォールなど)によって構成され、各コンピュータはLAN等のネットワークを介して相互に接続されている。
【0012】
このサーバシステム10は、クライアント端末20から利用者の認証情報(例えば、ユーザID、パスワード、ワンタイムパスワードなど)を受信した際に、その認証情報に基づいて利用者の正当性を判定する機能(認証手段)、クライアント端末20からの要求に応じて種々の業務プロセスを実行する機能、その処理結果を所定のデータ形式のファイル(HTMLファイル、PDFファイルなど)に変換してクライアント端末20に対して送信する機能(送信手段)などを備えている。さらに、本実施形態では、上記認証情報から利用者を特定し、当該利用者が、見積りの依頼を受けた見積依頼業者の担当者である場合に、その見積りの対象となる物件の特定図面について、閲覧を許可し、印刷を規制する制御を行う一方で、当該利用者が、契約を交わした契約済み業者の担当者である場合に、その契約の対象となる物件の特定図面について、閲覧および印刷を許可する制御を行う機能(制御手段)を備えている。これら機能は、サーバシステム10のCPUが記憶装置内に格納された各種アプリケーションプログラムを読み込んで実行することにより、得られるものである。
【0013】
また、サーバシステム10の記憶装置(記憶手段)には、CPUにより実行される各種処理プログラムや制御データ等を記憶する記憶領域、各物件の設計図や案内図等の図面データを記憶する記憶領域などを備えている。本実施形態では、各物件の設計図が、特定の利用者のみに閲覧または印刷が許可された特定図面として指定されている。また、上記特定の利用者には、特定の企業(例えば、工事全体を統括管理する建設会社、該当物件の施主、設計会社等)の各担当者が含まれる他、閲覧に関しては、該当物件の見積りの依頼を受けた見積依頼業者の担当者(後述する見積契約システムを利用可能な利用者)が、印刷に関しては、該当物件の契約を交わした契約済み業者の担当者がそれぞれ含まれる。
【0014】
また、サーバシステム10の記憶装置には、認証情報DB(社内認証DB、社外認証DB)や工事情報DB、利用者情報DBを始めとする各種データベースが格納されている。認証情報DBには、利用者の認証情報(例えば、ユーザID、パスワードなど)が格納され、工事情報DBには、各工事の詳細情報(名称、住所、所長、工期等)や共有ファイルに関する情報などが格納されている。また、利用者情報DBには、利用者の氏名、所属企業、立場、担当工事、利用者がアクセス可能な業務システムに関する情報などが、利用者の識別情報(ユーザID)と対応付けられた状態で格納されている。また、上記業務システムには複数のシステムが存在し、その一つとして、企業間で取り交わされる見積書、注文書、注文請書などの調達関連文書を電子データで遣り取りして、その承認手続きを電子的に行うための見積契約システム(図8)が含まれている。本実施形態では、この見積契約システムから、見積りの依頼を受けた企業(見積依頼業者)や、契約を交わした企業(契約済み業者)の識別情報を適宜取得し、これに基づいて、利用者の属する企業が上記見積依頼業者または上記契約済み業者に該当するか否かを判定するようになっている。
【0015】
クライアント端末20は、CPU、RAM、記憶装置、入力装置、表示装置、通信装置および印刷装置等を有する周知のコンピュータにより構成されている。
このクライアント端末20の記憶装置には、CPUにより実行される各種処理プログラム(例えば、WebブラウザやCADソフトウェアなど)や制御データ等を記憶する記憶領域、サーバシステム10から受信した図面データ等を記憶する記憶領域などを備えている。
【0016】
また、クライアント端末20のCPUは、上記記憶装置に格納された各種処理プログラムを読み込んで実行することにより、入力装置より入力した入力データをサーバシステム10に対して送信したり、或いはサーバシステム10から送られてくる表示データ(HTMLファイルなど)に基づいてポータルサイトの認証画面(ログイン画面)や各種表示画面等を表示装置に表示したりする処理を実行する。
【0017】
次に、上記構成からなる図面配布システムによって行われる図面データの閲覧・印刷処理について、図2〜図7に基づいて説明する。
【0018】
サーバシステム10の記憶装置内の図面データを閲覧または印刷する際には、先ず、利用者が、クライアント端末20においてWebブラウザを起動して、サーバシステム10のログイン画面のURL等を指定する入力操作を行う。この入力操作に基づいて、クライアント端末20は、上記URLのパス名を送信する処理を行い、これを受信したサーバシステム10は、クライアント端末20に対してログイン画面の表示データ(HTMLファイル)を送信して、クライアント端末20の利用者の認証情報(ユーザID、パスワードなど)を要求する処理を行う。これを受けて、クライアント端末20は、利用者に認証情報の入力を促すログイン画面を表示装置に表示する処理を行う。
【0019】
その後、上記ログイン画面において利用者の認証情報が入力されると、クライアント端末20は、利用者の認証情報をサーバシステム10に対して送信する。
サーバシステム10は、クライアント端末20から利用者の認証情報を受信すると、受信した認証情報と、認証情報DBに予め格納された認証情報との比較・照合により、利用者の正当性を判定する。
【0020】
上記判定の結果、受信した認証情報が記憶データと一致せず、利用者が正当でないと判定される場合には、認証に失敗したことを示すステータスコードを、認証要求のあったクライアント端末20に対して送信して、そのクライアント端末20からのアクセスを拒否する。一方、両者が一致して、利用者が正当であると判定される場合には、利用者情報DBを参照して認証情報から利用者を特定した後、その利用者に応じたトップページの表示データ(HTMLファイル等)を作成する。例えば、上記利用者の所属企業が、工事全体を統括管理する建設会社(例えば、図1のA社)である場合には、その企業の社内ポータルサイトのトップページの表示データを作成し、専門工事業者(例えば、図1のB社、C社またはD社)である場合には、専門工事業者向けのポータルサイトのトップページの表示データを作成する。クライアント端末20は、サーバシステム10から上記表示データを受信すると、その表示データに基づいて、上記ポータルサイトのトップページを表示装置に表示する処理を行う。
【0021】
例えば、専門工事業者向けのポータルサイトのトップページ(図2)において、工事を検索する入力操作が行われると、クライアント端末20は、その入力情報をサーバシステム10に対して送信し、これを受信したサーバシステム10は、検索条件に該当する工事に関する情報を工事情報DBより抽出し、その一覧の表示データを作成する。その際に、サーバシステム10は、利用者が見積契約システムを利用可能な利用者(予め設定登録された利用者)であるか否かを判定し、見積契約システムを利用可能な利用者である場合には、さらに、上記検索条件に該当する工事の中に、利用者の所属企業が見積りの依頼を受けている物件が存在するか否かを判定し、かかる物件が存在する場合には、その物件を他の物件と識別できるように(例えば、互いに異なる色彩で表示する、或いは所定のマークを付加するなどの処理をして)、工事一覧の表示データを作成する。
クライアント端末20は、サーバシステム10から上記表示データを受信すると、その表示データに基づいて、図3に示すように、表示装置に工事の一覧表示画面(検索結果)を表示する処理を行う。
【0022】
この工事の一覧表示画面(図3)において、その何れかを選択する入力操作が行われると、その入力情報がクライアント端末20からサーバシステム10に送られて、サーバシステム10において、選択した工事に関する詳細情報の表示データを作成する処理が行われる。
クライアント端末20は、サーバシステム10から上記表示データを受信すると、その表示データに基づいて、選択した工事の詳細情報表示画面を表示装置に表示する処理を行う。この詳細情報表示画面には、図4に示すように、工事の詳細情報や、利用可能な設計図書の一覧等が表示される。ここで、クライアント端末20の利用者が見積契約システムを利用可能な利用者で、且つ、利用者の所属企業がその工事に係る物件の見積りの依頼を受けている場合には、上記設計図書として、案内図、設計図および工程表のフォルダがそれぞれ表示され、クライアント端末20の利用者が見積契約システムを利用できない利用者である場合、若しくはその利用者の所属企業がその工事に係る物件の見積りの依頼を受けていない場合には、設計図(特定図面)のフォルダは表示されずに、案内図と工程表のフォルダのみが表示される。すなわち、クライアント端末20の利用者が、見積りの依頼を受けた見積依頼業者の担当者である場合に限り、設計図(特定図面)のフォルダが表示される。この場合の設計図(特定図面)フォルダに関しては、表示形式がファイル名のリスト表示に限定され、それ以外のフォルダに関しては、リスト表示だけでなく、サムネイル表示も可能となっている。
【0023】
この詳細情報表示画面(図4)において、設計図の何れかを選択して「ダウンロード」ボタンを押圧する入力操作が行われると、クライアント端末20は、その入力情報をサーバシステム10に対して送信し、これを受信したサーバシステム10は、選択された設計図の図面データを記憶装置から読み込んで、クライアント端末20に対して送信する処理を行うとともに、その図面データの配布記録を作成・更新する処理を行う。その際に、サーバシステム10は、図面データに開封用のパスワードを設定するとともに、印刷禁止の指定をして、図面データ(例えば、PDFファイルまたはその圧縮ファイル)をクライアント端末20に対して送信する。
【0024】
クライアント端末20は、サーバシステム10から上記図面データを受信すると、これを記憶装置の所定記憶領域に格納する処理を行う。クライアント端末20は、上記図面データを開く際に、パスワードの入力を利用者に求めるダイアログを表示し、このダイアログに正しいパスワードが入力された場合にのみ、図面を表示装置に表示する。したがって、例えばファイル交換ソフト等により、万が一、特定図面の図面データが第三者に渡ったとしても、その内容が外部に漏洩するのを阻止することができる。また、上述したように、ダウンロードした図面データには印刷禁止の設定がなされているため、その図面データをクライアント端末20等から印刷しようとしても、印刷することはできない。すなわち、見積依頼業者の担当者に対して、上記図面データの閲覧のみを許可する制御を行うようになっている。
【0025】
一方、上記詳細情報表示画面(図4)において、設計図の何れかを選択して「印刷注文」ボタン(図示省略)を押圧する入力操作が行われると、クライアント端末20は、その入力情報を図面印刷システムに送信し、これを受信した図面印刷システムは、選択された図面データの印刷イメージ上に隠し文字(複写物に現れる文字列:例えば、利用者の識別情報、印刷日時、シリアルナンバーなどのトレースコード)を背景として重ね合わせて印刷する処理を行う。印刷したトレースコード付きの図面は追って宅配便等により利用者に送付される。
【0026】
また、前述した専門工事業者向けのポータルサイトのトップページ(図2)、或いはA社の社内ポータルサイトのトップページ(図示省略)において、各作業所毎に設けられた関係者専用のポータルサイト(以下、関係者サイトと称する。)のリンクを選択する入力操作が行われると、その入力情報がクライアント端末20からサーバシステム10に送られて、サーバシステム10において、関係者サイトのトップページの表示データを作成する処理が行われる。この際に、サーバシステム10は、利用者情報DBを参照して利用者の識別情報から、利用者の氏名、所属企業、立場、担当工事、利用可能な業務システムに関する情報などを取得し、それら情報に基づいて、その利用者に応じたトップページの表示データを作成し、これをクライアント端末20に対して送信する。
【0027】
クライアント端末20は、サーバシステム10から関係者サイトのトップページの表示データを受信すると、その表示データに基づいて、関係者サイトのトップページを表示装置に表示する。図5は専門工事業者向けの関係者サイトのトップページ、図6は社内向けの関係者サイトのトップページであり、それらトップページにおいては、利用者がアクセス可能な工事の一覧(例えば、専門工事業者向けのトップページの場合には、利用者の所属企業が契約済み業者となっている工事の中で、利用者が担当者として割り当てられている工事の一覧、社内向けのトップページの場合には、利用者の業務に関連する工事の一覧)がプルダウンメニュー形式でそれぞれ表示される。その一覧の中から所望の工事を選択した後、設計図のフォルダを選択する入力操作を行えば、その入力情報がクライアント端末20からサーバシステム10に送られて、サーバシステム10において、選択した工事の設計図の一覧表示画面(図7)の表示データを作成する処理が行われる。
【0028】
クライアント端末20は、サーバシステム10から上記表示データを受信すると、その表示データに基づいて、選択した工事の設計図の一覧表示画面を表示装置に表示する。
この一覧表示画面(図7)において、設計図の何れかを選択して「ダウンロード」ボタンを押圧する入力操作が行われると、クライアント端末20は、その入力情報をサーバシステム10に対して送信し、これを受信したサーバシステム10は、選択された設計図の図面データを記憶装置から読み込んで、これを所定のファイル形式(例えば、PDFファイル或いはその圧縮ファイル)に変換してクライアント端末20に対して送信する処理を行うとともに、その図面データの配布記録を作成・更新する処理を行う。この場合、前述したようなパスワードの設定や印刷禁止の指定をせずに、図面データをクライアント端末20に対して送信する。
【0029】
クライアント端末20は、サーバシステム10から上記図面データを受信すると、これを記憶装置の所定記憶領域に格納する処理を行う。こうしてダウンロードした図面データは、パスワードの設定や印刷禁止の指定がなされていないため、パスワードを入力しなくともファイルを開くことができ、またクライアント端末20で自由に印刷を行うことができる。すなわち、クライアント端末20の利用者が、契約を交わした契約済み業者の担当者であれば、その契約の対象となる物件の設計図(特定図面)の閲覧および印刷を自由に行うことができる。なお、クライアント端末20の利用者が、工事の統括管理を行う建設会社の社員である場合にも、社内向けの関係者サイトのトップページ(図6)から、同様にして、担当物件の設計図の閲覧および印刷を自由に行うことができる。
【0030】
以上のように、本実施形態によれば、見積りの依頼を受けた見積依頼業者の担当者に対して、その見積りの対象となる物件の設計図(特定図面)の閲覧を許可し、印刷を規制する制御を行う一方で、契約を交わした契約済み業者の担当者に対しては、その契約の対象となる物件の設計図の閲覧および印刷を許可する制御を行うようにしたので、秘密保持が必要な設計図の閲覧および印刷をそれぞれ必要最小限に抑えることができ、これにより、図面情報の拡散を防止して、図面情報の漏洩を効果的に防止することができる。
また、設計図の図面データをクライアント端末20に対して送信する際に、その図面データの配布記録を作成するようにしたので、図面情報が万が一流出したとしても、その流出元を容易に特定することができる。
【0031】
また、本実施形態においては、図8に示すように、見積契約システムを用いて見積りを依頼した際に、その依頼を受けた企業(見積依頼業者)の識別情報を図面配布システムに伝えて、その見積りの対象となる物件の特定図面(設計図)のアクセス権(閲覧する権限)を見積依頼業者の担当者に対して付与するとともに、見積契約システムを用いて工事請負契約を交わした際に、その契約を交わした企業(契約済み業者)の識別情報を図面配布システムに伝えて、その契約の対象となる物件の特定図面(設計図)のアクセス権(閲覧・印刷する権限)を契約済み業者の担当者に対して付与するようにしたので、見積りと契約の各段階において、適切なアクセス権を見積依頼業者または契約済み業者の各担当者に速やかに付与することができる。したがって、工事の統括管理を行う建設会社の社員によるアクセス権付与の手間を削減できると共に、アクセス権付与遅延による図面配布遅延を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る図面配布システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】専門工事業者向けのポータルサイトのトップページの一例を示す図である。
【図3】工事の一覧表示画面の一例を示す図である。
【図4】工事の詳細情報表示画面の一例を示す図である。
【図5】専門工事業者向けの関係者サイトのトップページの一例を示す図である。
【図6】社内向けの関係者サイトのトップページの一例を示す図である。
【図7】設計図の一覧表示画面の一例を示す図である。
【図8】各利用者に対して付与されるアクセス権を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0033】
10 サーバシステム
20 クライアント端末
30 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバシステムと、当該サーバシステムにネットワークを介して接続されたクライアント端末とを有する図面配布システムであって、
上記サーバシステムは、
秘密保持が必要な図面を特定図面として、この特定図面を含む各物件の図面データを記憶する記憶手段と、
上記クライアント端末から利用者の認証情報を受信した際に、その認証情報に基づいて利用者の正当性を判定する認証手段と、
上記認証情報から利用者を特定し、当該利用者が、見積りの依頼を受けた見積依頼業者の担当者である場合に、その見積りの対象となる物件の特定図面について、閲覧を許可し、印刷を規制する制御を行う一方、当該利用者が、契約を交わした契約済み業者の担当者である場合に、その契約の対象となる物件の特定図面について、閲覧および印刷を許可する制御を行う制御手段と、
上記制御手段により閲覧または印刷が許可された特定図面の図面データを上記記憶手段から取得して、上記クライアント端末に対して送信する送信手段とを備えることを特徴とする図面配布システム。
【請求項2】
上記サーバシステムは、見積・契約に関する処理を行う見積契約システムから、各物件の上記見積依頼業者および上記契約済み業者を特定可能な識別情報を取得し、これに基づいて、利用者の属する企業が上記見積依頼業者または上記契約済み業者に該当するか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の図面配布システム。
【請求項3】
上記サーバシステムは、上記制御手段により閲覧または印刷が許可された特定図面の図面データを上記クライアント端末に対して送信する際に、その図面データの配布記録を作成することを特徴とする請求項1または2に記載の図面配布システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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