説明

固体ポリマー電解質膜

この発明は、基材ポリマーとイオン導電性素材膜の共処理された混合物を含み、またはさらに好ましくは基材ポリマーとイオン導電性素材の配合物であるポリマーを含む膜を含む、固体ポリマー電解質膜(SPEM)に関する。
本発明のSPEMは、燃料電池を含む電気化学的用途に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(米国政府の権利の表示)この発明はエネルギー省によって与えられた契約番号65112−001−033Dに基づき、政府の援助を受けてなされた。政府はこの発明に一定の権利を有する。
【0002】
この発明は、基材ポリマーとイオン導電性素材の共処理された混合物を含む新規な固体ポリマー電解質膜(SPEM)、およびその電気化学的用途への使用に関する。またこの発明の膜を製造する方法も開示される。
【背景技術】
【0003】
軍事および商業の両分野において、向上した出力密度の、静音で、効率のよいおよび軽量の電源について多大な需要がある。軍事用途としては、例示に限られないが、潜水艦、水上艦、携帯/モバイル用発電ユニットおよび弱電ユニット(すなわち蓄電池の代替物)を含んでいる。例えば、軍隊は蓄電池の代替物として機能できる低電力範囲(数ワットから数キロワット)の電源の開発に強い興味を有している。商業用途としては輸送(すなわち自動車、バス、トラックおよび鉄道)、コミュニケーション、現場でのコージェネ発電および据え置き型発電を含む。
【0004】
このほか、家庭分野の用途、たとえばラジオ、ビデオカメラ、ラップトップコンピューターにも興味が持たれている。クリーンで能率の高い車両を運行することができる大規模電源や高い出力密度の電源にさらなる興味が持たれている。総じて、静音、効率、軽量電源は、据え置き型発電機が必要とされるいずれの分野でも需要がある。
【0005】
加えて、ガソリン燃料の内燃機関の使用は、環境、排気ガスに関連していくつかの問題を惹起してきた。これらの環境問題についての可能な一つの解決は、燃料電池を使用することである。燃料電池は高効率の電気化学的エネルギー転換装置であって、再生可能燃料からもたらされる化学エネルギーを直接、電気エネルギーに転換する。
【0006】
重要な研究開発活動がプロトン交換膜型燃料電池の開発に焦点を当ててきた。プロトン交換膜型燃料電池は陽極(カソード)と陰極(アノード)の間に配置されたポリマー電解質膜を有する。このポリマー電解質膜は、イオン交換樹脂(すなわち、アイオノマー)から構成される。その役割はイオン輸送手段を提供することおよび燃料と酸化剤との分子の形態での混合を防止することである。
【0007】
固体ポリマー電解質燃料電池(SPEFC)は静音で、効率のよいおよび軽量の理想的な電源である。通常の蓄電池はその構造の中に反応剤を含んでおり、この反応剤は最終的に使い尽くされてしまうのに対し、燃料電池は空気と水素を使用し継続的に作動する。燃料効率も高く(45から50パーセント)、騒音を発生せず、広い電力範囲(10ワットから数百ワット)で作動し、デザイン、製造および操作が比較的簡単である。更に、SPEFCsは現在、あらゆる種類の燃料電池で最大の出力密度を有している。加えて、SPEFCはNOxやSOx(典型的な燃焼副生成物)などの環境に有害な排出物を何ら発生しない。
【0008】
伝統的なSPEFCは二つのガス拡散電極、すなわちアノードとカソードの間に配置された固体ポリマーイオン交換膜を含み、該電極はそれぞれ、導電性素材に支持されている金属触媒を通常含んでいる。ガス拡散電極はそれぞれの反応用気体、つまり還元ガスと酸化ガスに暴露されている。電極の1つと、電解質ポリマー膜と、反応用気体が接触するところでは、電気化学反応が二つの接合部(三相の境界)において生起する。
【0009】
SPEFCは応用可能性の広さにもかかわらず、未解決の技術課題と総合コストの高さのために、いまだに商業化されていない。SPEFCの商業化を阻む一つの大きな欠陥は、現在の先端的な膜と電極組み立て技術の固有の限界にある。SPEFCを商業的に(特に自動車用途で)実用化するには、採用する膜は増加した出力密度を提供するために、上昇した温度または高温(>120℃)で操作しなければならず、触媒の燃料不純物に対する感受性を制限しなければならない。これによって、現場コージェネ発電(電力に加え高品質の排熱)などへの応用も可能になる。現在の膜は液体供給直接メタノール型燃料電池において余剰のメタノールがクロスオーバー(交錯)を引き起す(実際の操作条件によるが、通常0.5Vで約50から20mA/cm電流密度ロスに相当する。)。このクロスオーバーにより燃料効率が低下し性能レベルが限定される。
【0010】
いくつかのポリマー電解質膜が何年にも亘って、燃料電池中の固体ポリマー電解質として開発されてきた。しかしながら、これらの膜は液体供給直接メタノール型燃料電池および水素燃料電池に応用されたときに重大な限界を有する。現在、最も進化したSPEFCの膜は、高温での操作に要求されるイオン導電性、機械的強度、脱水素への抵抗、化学的安定性および燃料不透過(すなわちメタノールクロスオーバー)の所望の組み合わせを所有していない。
【0011】
デュポン(DuPont)社はナフィオン(Nafion(登録商標))膜として知られるペルフルオロ化スルホン酸膜の商品系列を開発した。Nafion(登録商標)膜のテクノロジーは先行技術で周知であり、米国特許第3,282,875号および4,330,654号に詳細に記載されている。補強されていないNafion(登録商標)膜は、現在のSPEFC用途においては、ほとんど専らイオン交換膜として使用されている。この膜はテトラフルオロエチレン(TFE)とペルフルオロビニルエーテルスルフォニルフルオリドとのコポリマーから製造される。このビニルエーテルのコモノマーは、TFEと共重合されることにより溶融加工の可能なポリマーを形成する。所望の形状になれば、スルフォニルフルオリドフルオリド基はイオン性スルホン酸塩の基の形に加水分解される。
【0012】
燃料電池の100℃を超す環境においてNafion(登録商標)膜の性能を制限するいくつかのメカニズムが存在する。実際には、これらの現象は80℃を超す温度でさえ始まり得る。該メカニズムは、膜の脱水素、イオン導電性の低下、膜中のラジカル形成(これは固体ポリマー電解質膜を化学的に破壊し得る。)、軟化による機械的強度の損失、および高い燃料透過による寄生的損失の増加を含む。
【0013】
SPEFCのコストを低下させ商業化の可能性に向けて、ポリマー電解質膜燃料電池に使用するために安価に製造できるイオン交換膜もまた調査されてきた。
【0014】
ヘキストAG(Hoechst AG)社により開発されたスルホン化されたポリ(アリールエーテルケトン)は欧州特許第574,891,A2号に記載されている。これらのポリマーは一級または二級アミンにより架橋することができる。しかしながら膜として使用され、ポリマー電解質膜燃料電池中で試験されると、控えめな電池性能が観察されるだけである。
【0015】
スルホン化されたポリ芳香族系のシステム、米国特許第.3,528,858号および3,226,361号などに記載されたものも、やはりSPEFC用の膜素材として調査されている。しかしながら、これらの素材は化学的耐久性および機械的性能に劣る欠点のために、SPEFCへの応用を制限している。
【0016】
スルホン化されたポリ(2,6ジメチル1,4フェニレンオキシド)を単独で、またはポリ(フッ化ビニリデン)と混合して含む固体ポリマー膜もまた調査されてきた。これらの膜はWO97/24777に開示されている。しかしながら、これらの膜はペルオキシドラジカルからの分解に対して特に傷つきやすいことが知られている。
【0017】
固体ポリマー電解質膜を燃料電池などの電気化学用途に、昇温/高温(>100℃)で使用する際の固有の問題と制限は、公知のポリマー電解質膜では解決されていない。具体的に、脱水素やその他の形の分解に対して抵抗して、高いイオン導電性と高い機械的強度を維持することは、特に高い操作温度では問題として残っている。その結果SPEFCの商業化は実現していない。
【0018】
セラニーズヴェンチャーズ(Celanese Ventures)社とプラグパワー(Plug Power)社は低い相対湿度で操作し得る高温膜を商業化しており、これらの膜はリン酸でドープされた基材ポリマー、ポリベンズイミダゾールなどを含む。これらの膜は高温、低い相対湿度の下で良好な性能を示すが、低温と高い相対湿度条件では性能を欠くために制限されている。このように、これらの膜は負荷と温度が繰り返される用途には適さず、その理由の一部は、温度または相対湿度の変動が膜の性能を崩壊させかねない点にある。温度と相対湿度の広い範囲で操作する膜は、まだたどりつけないゴールなのである。
【0019】
イオン導電性素材が微細多孔質基材ポリマー中に分散された複合ポリマー膜が実質的な研究の主題であった。いくつかの膜が米国特許第6,248,469号中に開示されており、ここでイオン導電性膜が、微細多孔質膜の孔部に取り込まれ、剛直ロッド型または伸張ロッド型のリオトロピック液晶ポリマーから構成されている。微細多孔質膜は伝統的に一部重合後のそのままのドープ溶液から調製された。なぜならば、高分子量リオトロピック液晶ポリマーの低濃度ドープ溶液を調製するための方法は、低濃度重合法または高濃度ドープの希釈法のいずれによる方法も、以前に開示されていなかったからである。
【0020】
ポリフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)およびポリフェニレンベンゾビスチアゾール(PBZT)などのリオトロピック液晶ポリマーは、繊維に成形でき、ポリマー繊維の中でも最も高い引張強度(>500ksi)を示す。これらのいわゆる「剛直ロッド型」ポリマーは、繊維に紡ぎ、凝固させ乾燥させるとまた、優れた高温性能(最大550℃)を示しおよび有機溶媒と殆んどの酸に対する優れた耐性を示す。これらの素材の紡績用ドープは、ポリリン酸(PPA)中の該ポリマーの高分子量(固有粘度>24dL/g)ネマティック相として供給される。典型的な紡績用ドープは重量にして12−15%のポリマーを含む。
【0021】
これらの素材の高強度の二軸配向薄膜はフォスターミラー(Foster−Miller,Inc.)社に与えられた米国特許第4,963,428号、4,973,442号、および6,132,668号中に列挙されており、ここでこの薄膜は、新規な逆回転環状ダイを使用してシェア配向をネマティック相ポリマーに与える改良されたブローフィルム押出プロセスにより調製される。また、これらの二軸配向フィルムが水中および他の非溶媒中で凝固される場合は、濡れて膨潤した状態で保存された場合、卓越した強度を有する開放膜を形成できることも示されている。溶媒交換テクニックを使用することによって、いくつかの異なる素材、例えばゾルゲルガラス、イオン導電性ポリマーを含むポリマー、および他の素材などをこの膜構造に注入するか吸収させることができることも示されている。液晶ポリマーのネットワークは乾燥されると吸収された素材の回りに縮み(固着し)、吸収された素材の機能的物性を維持した非常に高強度の構造を形成する。
【0022】
米国特許第6,248,469号は、複合膜とこれを作る方法を記載している。この方法において、イオン導電性ポリマー(ICP)は微細多孔質PBO構造中に入れられ、デュポン社のNafion(登録商標)ポリマーをベースとするペルフルオロ化PEMのコストと性能の問題を克服するであろう微細複合プロトン交換膜(PEM)が製造される。Nafion(登録商標)タイプの固体ポリマー電解質膜は、20,000時間以上の長期安定性を示すが、高いコストのためおよび100℃を超す操作温度において機械的強度が酷く低下するために自動車用燃料電池のニーズに合致しない。前記‘469号特許は、比較的低コストの、適切なPBO膜支持構造中に吸収された、スルホン化されたポリエーテルスルホンまたはスルホン化されたスルフィド/スルホンなどのスルホン化芳香族ポリマーを有しする複合膜を記載している。これらのより低コストの芳香族イオン導電体は、PEMのコスト問題を取り扱い、PBOの支持構造は機械的強度の問題を取り扱い、100℃から150℃の間の最適性能温度での燃料電池操作を可能にする。これらのより高い操作温度は、燃料電池の効率を向上させ、比出力を増加させ、膜電極(MEA)上の白金触媒の活性に対するCOのマイナス効果を減少させる。PPA中の、商業的に入手可能な14.6重量%PBO紡績用ドープから調製される複合膜から、優れた機械的性能と増加した電気化学的性能を有する膜支持フィルムを製造することができるが、しかしより大規模の電気化学的出力が依然として望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
高い脱水素耐性、高い機械的強度および少なくとも約100℃、より好ましくは少なくとも約120℃への温度安定性を有する、向上した固体ポリマー電解質膜を開発することが非常に望ましい。広範囲の温度および相対湿度条件で高い導電率を維持する、向上した高導電率固体ポリマー電解質膜を開発することもまた望ましい。
【0024】
また、水素またはメタノール燃料電池膜での使用に適し、現在手に入る複数の膜に対して経済的な選択肢を提供するであろう、前記の特長を有する、膜を開発することが非常に望ましい。このような膜の開発はSPEFCの多種多様な軍事および商業用途への使用を促進するであろうし、工業と環境に利益をもたらすであろう。
【課題を解決するための手段】
【0025】
(発明の要旨)
本発明は当技術分野で知られているものより広範囲の温度と圧力(例、相対湿度)にわたり操作可能な革新的な固体ポリマー電解質膜を提供する。また、そのような膜を製造する方法も提供する。開発された該膜製造技術は低コストでの向上した性能を強調する。
【0026】
ある態様において、本発明は基材ポリマーとイオン導電性素材とが共処理された混合物を含む固体ポリマー電解質膜(SPEM)を提供し、ここで
(i)該基材ポリマーは液晶ポリマーの、または溶媒に溶解性の熱硬化性もしくは熱可塑性芳香族ポリマーの、ホモポリマーまたはコポリマーを含み、および
(ii)該イオン導電性素材はスルホン化された、スルホンイミド化された、ホスホン化またはカルボキシル化されたイオン導電性ポリマーまたはペルフルオロ化アイオノマーの少なくとも一つのホモポリマーまたはコポリマーを含む。
【0027】
本発明のある他の態様において、基材ポリマーとイオン導電性素材の配合物とを含む固体ポリマー電解質膜(SPEM)を提供する。ここで
(i)該基材ポリマーは液晶ポリマーの、または溶媒に溶解性の熱硬化性もしくは熱可塑性芳香族ポリマーの、ホモポリマーまたはコポリマーを含み、および
(ii)該イオン導電性素材はスルホン化された、スルホンイミド化された、ホスホン化されたもしくはカルボキシル化されたイオン導電性ポリマーまたはペルフルオロ化アイオノマーの少なくとも一つのホモポリマーまたはコポリマーを含み、ここで該SPEMは少なくとも約1×10−4(S/cm)の導電性を有する。
【0028】
ある他の態様において、本発明はここで提供される該固体ポリマー電解質膜(SPEM)を製造する方法を提供する。該方法は次の工程を含む:
1. 基材ポリマーとイオン導電性素材との通常の溶媒中の混合物(例えば溶液)を調製する工程;
2. 圧縮し、キャストしまたは押出して、該混合物から膜を形成する工程;
3. 該膜を凝固させて、SPEMを生成させる工程。
【0029】
本発明の膜は、燃料電池、電子装置、膜をベースとした水の電気分解システム、塩素アルカリ電気分解、透析または電気透析、浸透気化またはガス分離を含む多種の電気化学装置に有用である。
【0030】
本発明の前記およびその他の目的、特長および利点は、次の記載および付加された特許請求の範囲を参照することにより、より良く理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(好ましい実施形態を含む発明の詳細な記載)
本発明の膜は、今日の低温固体ポリマー電解質膜(具体的にNafion(登録商標)(およびGore−Select(登録商標)などの他の類似の膜))およびCelanese/Plug Powerメンブレンなどの高温、低RHポリマー電解質膜の現在有する欠点を解決するために設計された。
【0032】
本発明は比較的低コストの、出力密度が向上し、温度および相対湿度の変化に対する操作時の耐性が向上し、水素燃料中の一酸化炭素に対する感受性が減少した固体ポリマー電解質膜(SPEM)を提供する。これはまた、現行のNafion(登録商標)膜ベースの燃料電池の効率を制限する水分管理問題を軽減し得る。
【0033】
本発明の膜は、例示に限られないが、極性ベースの化学分離;電気分解;燃料電池(cell)および蓄電池;浸透気化;逆浸透膜水精製;ガス分離;透析分離;工業電気化学、例えばクロロアルカリ製造およびその他の電気化学用途;廃水溶液からの水分離とそれに引き続く酸とアルカリの回収;超強酸触媒としての使用;例えば酵素固定媒体としての使用;または従来の蓄電池中の電極分離材としての使用を含む、種々の用途において採用し得る。
【0034】
本発明の膜状SPEMは基材ポリマーとイオン導電性素材とが共処理された混合物を含む。該膜の共処理された混合物は基材ポリマーとイオン導電性素材の両方を含む混合物から膜を成形して調製される。理論に束縛されるのは本意でないが、Foster−Miller社は、基材ポリマーとイオン導電性素材と溶媒が共処理された混合物からの膜の形成は基材ポリマーとイオン導電性素材の配合物から構成された膜を提供するものと信じ、またはその代わりにこの膜は基材ポリマーとイオン導電性素材の本質的に一様な混和物から構成されているものと信じている。
【0035】
該基材ポリマーとイオン導電性素材の共処理された混合物は、いずれかの適切な手段を用いて調製し得、またいずれの濃度であってもよい。基材ポリマーとイオン導電性素材の共処理された混合物または配合物を有する膜状SPEMを形成するための、キャストされ、押出され、プレスされ、または他の加工がされ得る、共処理された混合物に関する組成物は、本発明の想定内である。
【0036】
ある好ましい実施形態において、基材ポリマーとイオン導電性素材との共処理された混合物は、基材ポリマーの高濃度ドープ溶液をイオン導電性素材溶液で希釈して、基材ポリマーとイオン導電性素材との両方を含む中間の濃度溶液を提供することにより調製される。該中間の濃度溶液は、通常、約1.5重量%から約12重量%の間の基材ポリマーを含み、ネマティックまたはアイソトロピック相のいずれかであってよい。
【0037】
他のある実施形態において、基材ポリマーとイオン導電性素材の共処理された混合物は基材ポリマーとイオン導電性素材を通常の溶媒に溶解することで調製される。かわりに、基材ポリマーとイオン導電性素材の混合物を提供するために、前もって調製された基材ポリマーとイオン導電性素材の溶液を組み合わせてもよい。成分を溶媒に溶解して調製した基材ポリマーとイオン導電性素材との共処理された混合物は通常、アイソトロピック相であって約1.5重量%未満の基材ポリマー濃度を有する。
【0038】
本発明のSPEMを調製する方法は特に限定されていない。しかしながらポリベンザゾール(PBZ)またはポリアラミド(PAR)基材ポリマーの処理に関する挑戦のおかげで、共処理されたSPEMを形成するある好ましい方法は、(a)基材ポリマーおよびイオン導電性膜を通常の溶媒に溶解して調製される低濃度溶液を処理すること、および(b)基材ポリマーの高濃度ドープ溶液をイオン導電性素材の溶液で希釈して調製された中間濃度溶液を押出し、プレスしまたはキャストにかけて製膜すること、を含む。
【0039】
該基材ポリマーは、イオン導電性素材例えばポリマーに対して、機械的に、熱的に、化学的におよび酸化性的に耐久性のある支持体として働く。非常に高いイオン交換容量(好ましくは、IEC>0.5meq/g、さらに好ましくは、IEC>1.5meq/gまたは>2.5meq/g;または1.5−11.0meq/gの間または2.5−11.0meq/gの間のIECを有するICM)のイオン導電性ポリマー(ICP)を本発明のSPEMに使用することができる。ICPの強度性能は膜の機械的完全性のために必須ではないからである。
【0040】
理論に束縛されるのは本意でないが、基材ポリマーとポリマー性イオン導電性膜との共処理が望ましいモルフォロジーを有する膜を提供することが明らかになった。この望ましいモルフォロジーでは基材ポリマーとイオン導電性素材が、従来の固体ポリマー電解質膜よりも、膜全体に一様に分布し、または基材ポリマーとイオン導電性素材が膜中に分子レベルで分散してい可能性がある。さらに、基材ポリマーの塩基性機能基とイオン導電性ポリマーの酸性機能基とがより緊密に混合されていると考えられ、これにより、膜を通過するプロトン輸送が、膜が水和されているとき(高い相対湿度)は水ホッピングメカニズム、または隣接脱プロトン酸基からのプロトンホッピングのいずれかにより、機能を果たすことができると考えられる。この時点で正確なメカニズムは知られていないが、本発明の共処理された膜はNafion(登録商標)ベース膜または微細多孔質複合膜に比較して広範囲の温度と相対湿度操作条件で増加した導電率を提供する。
【0041】
本発明の膜を製造するために、好ましくは熱的安定な全面的な芳香族化ポリマーが使用されるが、一般に次の要請を満たす任意の素材(の組合せ)を使用し得る:低コスト、高いイオン導電率、電気絶縁性、燃料電池用途における高温高圧力下での燃料(Hまたはメタノール)および酸化剤(0)不透過性、酸とフリーラジカル類に対する化学的耐性を有すること、高温高圧時操作における穴あきおよび破裂耐性、および昇温/高温操作におけるイオン導電率の維持。
【0042】
本発明のSPEMのために適切な基材ポリマーおよびイオン導電性素材の選択基準は以下に詳細に記載される。好ましい基材ポリマーおよびイオン導電性ポリマーの構造はU.S.Patent6,248,469号の表4から7に示されており、この文献を参照によりここに取り込む。
【0043】
好ましい基材ポリマーは商業的に入手可能な安価な原料ポリマーから、膜厚が薄い(好ましくは未満約1ミル)時でも高い強度、優れたシワ/ひび割れ耐性および高い引裂強度を有する薄い本質的に欠陥のないポリマーフィルムへ容易に合成される。好ましい基材ポリマーは酸、フリーラジカル類および溶媒(すなわちメタノール)に対して本質的に化学的耐性があり、約50℃から300℃の温度において熱および加水分解に安定である。好ましい基材ポリマーは卓越した機械的性能(約2500psiをはるかに超す引張強度、約100%よりはるかに小さい引張破断伸び)、寸法安定性、高温高圧下の遮蔽性能(メタノール、水蒸気、酸素および水素に対して)および卓越したゲージ均等性(プラスマイナス0.2ミルが好ましい)を有する。好ましい実施形態において、該基材ポリマーは少なくとも約100℃までの温度で熱および加水分解に安定である。
【0044】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、SPEMの基材ポリマーは、ポリベンザゾール(PBZ)またはポリアラミド(PARまたはケブラー(商品名、Kevlar))ポリマーなどのリオトロピック液晶ポリマーを含む。好ましいポリベンザゾールポリマー(PBZ)はポリベンズオキサゾール(PBO)、ポリベンゾチアゾール(PBZT)およびポリベンズイミダゾール(PBI)ポリマーを含む。好ましいポリアラミドポリマーはポリパラ−フェニレンテレフタルアミド(PPTA)ポリマーを含む。上記ポリマーの構造は表1に列記されている。ある好ましいポリベンザゾール基材ポリマーは、場合によって置換されていてよいフェニルまたはナフチル基およびベンゾオキサゾール、ベンズチアゾール、ジイミダゾ−ピリジンおよびベンズイミダゾールから選ばれる繰り返し単位を含む交互構造を含む。
【0045】
他の好ましい実施形態において、SPEMの基材ポリマーは熱可塑性または熱硬化性芳香族ポリマーを含む。これら芳香族ポリマーの好ましい群には次のものが含まれる:ポリスルホン(PSU)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルホキシド(PPSO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルフィドスルホン(PPS/SO)、ポリパラフェニレン(PPP)、ポリフェニルキノキサリン(PPQ)、ポリアリールケトン(PK)およびポリエーテルケトン(PEK)ポリマー。
【0046】
好ましいポリスルホンポリマーはポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、ポリアリールスルホン、ポリアリールエーテルスルホン(PAS)、ポリフェニルスルホン(PPSU)およびポリフェニレンスルホン(PPSO)ポリマーを含む。好ましいポリイミドポリマーはポリエーテルイミドポリマーおよびフッ素化ポリイミドを含む。好ましいポリエーテルケトンポリマーはポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン−ケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン−ケトン(PEEKK)およびポリエーテルケトンエーテルケトン−ケトン(PEKEKK)ポリマーを含む。上記ポリマーの構造はU.S.Patent6,248,469号の表5から6に列記されており、この文献を参照によりここに取り込む。
【0047】
さらに好ましくは、基材ポリマーはリオトロピック液晶ポリマーを含む。もっとも好ましくは、基材ポリマーはPBO、PBT、またはPBIなどのリオトロピック液晶ポリ(ビスベンズオキサゾール)ポリマー(PBZ)を含む。
【0048】
PBZポリマーは定序性ポリマーとしてまとめて参照されるポリマー系素材群のメンバーである。この剛直ロッド型の分子構造の結果として、PBZポリマーは液晶質溶液を形成し、この溶液からは非常に強く、硬い繊維やフィルムが加工されてきた。PBZポリマーが乾燥(全体が崩壊した)形態の場合、これらは次のような性質を持つ:高い強度および寸法安定性、優れた遮蔽(ガス)性、優れたシワ/ひび割れ耐性および高い引裂強度、および優れた熱および加水分解温度安定性(>300℃)。
【0049】
本発明に使用されるある好ましいイオン導電性ポリマーは商業的に入手可能な低コストな原料ポリマーから、容易にスルホン化または合成され、そして膨潤させることができるが、より長い期間、沸騰水(100℃)または水性メタノール(>50%)に極めて難溶性である。本発明で使用されるある他の好ましいイオン導電性ポリマーは商業的に入手可能な低コストのスルホン化モノマー群から容易にスルホン化または合成され、室温(例、約10−20℃)から沸騰(例、少なくとも100℃)の間の温度で水に溶解可能である。
【0050】
これらの好ましいイオン導電性ポリマーは高温高圧下でさえ限定的なメタノール透過性(限定的なメタノール拡散性および溶解度)を有し、酸およびフリーラジカル類に対して本質的に化学的に安定であり、そして少なくとも約100℃までの温度で熱/加水分解に安定である。これらと同じ好ましいイオン導電性ポリマーは>0.5meq/乾燥膜gまたは1.5meq/gを超す(好ましくは、1.5meq/gから11meq/gの間)イオン交換容量(IEC)を有しそして高度にイオン導電性(好ましくは、約0.01から約0.5S/cm、さらに好ましくは、約0.1S/cmを超し、または<10Ωcmの抵抗性)である。好ましいイオン導電性ポリマーは通常の媒体中で基材ポリマーと混和性配合物を形成する。このようなフィルムは耐久性があり、本質的に欠陥がなく、および少なくとも約100℃を超す温度でさえ寸法安定性(湿潤から乾燥において寸法変化が約20%未満)を有する。好ましいイオン導電性ポリマーは燃料電池(すなわち、H/0、メタノール)中の操作で少なくとも約5000時間(例、自動車関連用途)存続する能力を有する。
【0051】
本発明はある態様において、基材ポリマーとイオン導電性素材とが共処理された混合物を含む固体ポリマー電解質膜(SPEM)を提供し、ここで
(i)該基材ポリマーは液晶質ポリマーの、または溶媒に溶解性の熱硬化性もしくは熱可塑性芳香族ポリマーの、ホモポリマーまたはコポリマーを含み、および
(ii)該イオン導電性素材はスルホン化された、スルホンイミド化された、ホスホン化されたまたはカルボキシル化されたイオン導電性ポリマーまたはペルフルオロ化アイオノマーの少なくとも一つのホモポリマーまたはコポリマーを含む。
【0052】
本発明のある他の態様において、基材ポリマーとイオン導電性素材との配合物を含む固体ポリマー電解質膜(SPEM)を提供する、ここで、
(i)該基材ポリマーは液晶質ポリマーの、または溶媒に溶解性の熱硬化性もしくは熱可塑性芳香族ポリマーの少なくとも一つのホモポリマーまたはコポリマーを含み、
(ii)該イオン導電性素材はスルホン化された、スルホンイミド化された、ホスホン化された、またはカルボキシル化されたイオン導電性ポリマーもしくはペルフルオロ化アイオノマーの少なくとも一つのホモポリマーまたはコポリマーを含み、ここで該SPEMが少なくとも約1×10−4(S/cm)の導電性を有する。
【0053】
ある好ましい固体ポリマー電解質膜(SPEM)は少なくとも約1×10−4(S/cm)(またはさらに好ましくは少なくとも5×10−4(S/cm)、1×10−3(S/cm)、5×10−3(S/cm)またはそれ以上)の導電率を有する。さらに好ましくは、本発明で提供されるSPEMは約60℃から約200℃の間の温度および約0%から約100%の間の相対湿度のいかなる組み合わせにおいても少なくとも約1×10−4(S/cm)の導電率を有する。
【0054】
本発明で提供されるある他の好ましいSPEMは約60℃を超す温度および約25%から100%の間の相対湿度において少なくとも約1×10−3(S/cm)(またはさらに好ましくは少なくとも5×10−3(S/cm))の導電性を有する一群のSPEMを含む。さらに好ましくは、該SPEMは約80℃を超す温度および25から100%の間の相対湿度において少なくとも約1×10−3(S/cm)(またはさらに好ましくは少なくとも5×10−3(S/cm))の導電率を有する。
【0055】
本発明のある他の好ましいSPEMは60℃を超す温度および任意の相対湿度において少なくとも約1×10−4(S/cm)(またはさらに好ましくは少なくとも5×10−3(S/cm))の導電率を有するSPEM群を含む。さらに本発明の他の好ましいSPEMは約80℃から約200℃の間の温度および0%から100%の間の相対湿度の任意の組み合わせにおいて少なくとも約1×10−4(S/cm)(またはさらに好ましくは少なくとも5×10−3(S/cm))の導電率を有するSPEM群を含む。
【0056】
本発明で提供されるある他の好ましいSPEMは95℃未満の温度および少なくとも約50%の相対湿度において少なくとも1×10−4(S/cm)(またはさらに好ましくは少なくとも5×10−3(S/cm))の導電率を有する。本発明で提供されるさらに他の好ましいSPEMは110℃を超す温度および50%未満の相対湿度において1×10−4(S/cm)(またはさらに好ましくは少なくとも5×10−3(S/cm))の導電率を有する。さらに好ましくは、本発明で提供されるSPEMは高温/低相対湿度および低温/高相対湿度の両方において向上した導電率を有する。すなわち、本発明のある好ましいSPEMは95℃未満の温度および少なくとも約50%の相対湿度で少なくとも1×10−3(S/cm)(またはさらに好ましくは少なくとも5×10−3(S/cm))の導電率を有する;および該SPEMは110℃を超す温度および50%未満相対湿度で約1×10−4(S/cm)(またはさらに好ましくは少なくとも5×10−3(S/cm))の導電率を有する。
【0057】
さらに他の好ましい本発明のSPEMは150℃および200℃の間の温度ならびに大気圧下において少なくとも1×10−4(S/cm)(またはさらに好ましくは少なくとも5×10−3(S/cm))の導電率を有する。
【0058】
複数の塩基残基を含む基材ポリマーおよび複数の酸残基を含むイオン導電性素材が共処理された混合物または配合物を有するSPEMにおいて、酸残基の塩基残基に対する割合は約10:1から約1:10の間である。さらに好ましくは酸残基の塩基残基に対する割合は約8:1から1:8の間、約6:1から1:6の間、約4:1から1:4の間、約3:1から1:3の間または約2:1から約1:2の間である。本明細書のある好ましいSPEMにおいて酸残基の塩基残基に対する割合は約3:1から約1:1の間である。
【0059】
本発明のさらに他の好ましいSPEMは少なくとも約60℃から少なくとも約200℃で安定であり、または少なくとも約80℃から少なくとも約175℃で安定である。さらに他の好ましい本発明のSPEMは少なくとも約100℃から少なくとも約175℃で安定である。
【0060】
本明細書で提供されるSPEMの形成方法は特段限定されておらず、キャスト、スピンコーティング、押出しプレスおよび他の膜形成技術を含む。本発明のSPEMに適した好ましい製膜技術はキャスト、押出し、およびプレスを含む。ある好ましい本発明のSPEMは、基材ポリマーを含むドープ溶液とイオン導電性膜を高圧下でプレスしてフィルムを形成させ、該フィルムを凝固させてSPEMを形成させることにより形成される。ある好ましい実施形態において、該SPEMは基材ポリマー、イオン導電性素材および少なくとも一つの溶媒を含む共処理された混合物から調製される。膜プレスに適した通常好ましい圧力は約200psiから約2000psiの間、またはさらに好ましくは約500psiから約1500psiの間である。通常好ましい圧力は約500psi、約750psi、約1000psi、約1250psiおよび約1500psiである。
【0061】
本発明のある他の好ましいSPEMは、基材ポリマー、イオン導電性素材およびフィルムを形成するための少なくとも一つの溶媒を含む混合物を、キャストし、高圧プレスし、または押出することにより、および該フィルムを凝固させることにより形成された膜を含むSPEMを含む。
【0062】
ある好ましい実施形態において、本発明のSPEMは少なくとも一つの置換または非置換のポリベンザゾールポリマーのホモポリマーまたはコポリマーから選択される基材ポリマー、およびポリスルホン(PSU)、ポリフェニレンスルホキシド(PPSO)およびポリフェニレンスルフィドスルホン(PPS/SO)ポリマーのスルホン化された少なくとも一つのホモポリマーまたはコポリマーから選択されるイオン導電性素材を含む。
【0063】
好ましいポリスルホンイオン導電性素材はポリエーテルスルホン(PES)およびポリフェニルスルホン(PPSU)ポリマーの少なくとも一つを含み、またはさらに好ましくは(4,4’−ジハロフェニル)スルホン、スルホン化された(4,4’−ジハロフェニル)スルホンまたはこれらの混合物を、それぞれ場合によりスルホン化されていてもよい4,4’−ビスフェノールビフェノール、または4,4’−ビフェニルビフェニル−ジチオール、1,4−ヒドロキノン、1,4−ベンゼンジチオールまたはこれらの混合物と縮合させることにより製造されるポリスルホンポリマーを含む。縮合によって調製されたある好ましいポリスルホンは、(4,4’−ジハロフェニル)スルホンモノマーの少なくとも50%が一つまたはそれ以上の3および3’位においてスルホン化されているポリマーを含む。さらに好ましくは少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または本質的にすべての(4,4’−ジハロフェニル)スルホンモノマーが一つまたはそれ以上の3および3’位においてスルホン化されている。
【0064】
本発明で提供されるある特別に好ましいSPEMにおいて、該イオン導電性素材は次式:
【0065】
【化3】

[式中、
Ar、Ar、およびArはそれぞれの出現ごとに独立に、6から18の間の環炭素原子数および1から3の間の環数を持つ炭素環芳香族基から選択され;および
Ar、Ar、およびAr基の少なくとも一部がスルホン酸残基により置換され、;
およびEがO、S、およびSOからなる群からそれぞれの出現ごとに独立に選択され;
mは1に等しくまたは1より大きく;
nは0から約10の間の整数であり;および
pは2から約10,000の間の整数である。]
のポリスルホンポリマーである。
【0066】
本発明のSPEMに使用されるある他の好ましいイオン導電性素材は次式:
【0067】
【化4】

[式中、
x、y、およびzは0から4の間の整数であり、x、yまたはzはそれぞれ出現ごとに独立に選択され、x、yおよびzの出現のうち少なくとも一部はゼロでなく(またはさらに好ましくはzはゼロでありxおよびyの出現のうち少なくとも約80%はゼロでない。);
およびEは、O、S、およびSOからなる群からそれぞれの出現ごとに独立に選択され;
mは1に等しくまたは1より大きく;
nは0から約10の間の整数であり;
pは1から約1000の間の整数(またはさらに好ましくはpが約5から約500の間の整数)であり、および
qは1、2、または3である。]のポリスルホンポリマーを含む。
【0068】
本発明の一つの好ましい実施形態において、該SPEMのイオン導電性素材はスルホン化(SOH)、ホスホン化(PO(OH))、スルホンイミド化(SON(H)SOCF)、またはカルボキシル化(COOH)された芳香族ポリマーを含む。ホスホン化の例として、Solid State Ionics,97(1997),177−186を参照。カルボキシル化固体ポリマー電解質の例として、Solid State Ionics,40:41(1990),624−627を参照。スルホンイミドに基づいた固体ポリマー電解質の例については、Electrochemical and Solid State Letters,2(9):(1999),434−436を参照。例えば、該イオン導電性素材は上に列挙された熱硬化性または熱可塑性芳香族ポリマーの少なくとも一つのスルホン化された誘導体を含んでよい。またポリベンザゾールまたはポリアラミドポリマーのスルホン化された誘導体を含んでよい。
【0069】
スルホン化されたポリマーは工業的に容易に入手可能ではないが、このようなポリマーの合成は当業者に周知で、多くの特許および出版物中に見ることができる。例えば、米国特許第4,413,106号、5,013,765号、4,273,903号および5,438,082号、Linkousら.J.Polym.Sci.,Vol.86:1197−1199(1998)、およびWangら,J.Memb.Sci.,Vol.197:231−242(2002)を参照。
【0070】
別の実施形態において、本発明のSPEMのイオン導電性素材はペルフルオロ化アイオノマーなどの非芳香族ポリマーを含む。好ましいアイオノマーはカルボン酸、リン酸、スルホンイミド酸またはスルホン酸で置換されたペルフルオロ化ビニルエーテルを含む。
【0071】
本発明で使用される他の好ましいイオン導電性素材はポリスチレンスルホン酸(PSSA)、ポリトリフルオロスチレンスルホン酸、ポリビニルホスホン酸(PVPA)、ポリビニルカルボン酸(PVCA)およびポリビニルスルホン酸(PVSA)ポリマーならびにこれらの金属塩を含む。
【0072】
さらに好ましくは、該イオン導電性素材はポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンスルホキシド(PPSO)およびポリフェニレンスルフィド−スルホン(PPS/SO)のスルホン化された誘導体を含む。これらポリマーおよび追加の好ましいポリマーは米国特許第6,248,469号の表7に例示され、これら文献をここに参照により組み入れる。
【0073】
本発明の膜の製造において相溶性改善剤を採用してもよい。ここでいう「相溶性改善剤」は、それがない場合は配合に対して抵抗がある2種またはそれ以上のポリマーの、配合性を助ける薬剤を指す。例としてはそれぞれの成分に結合するセグメントを含むブロックコポリマーを含む。これらは可能性のある基材および/またはイオン導電性ポリマー成分の両者を含む。
【0074】
ある応用において、SPEMの共処理された膜に一つまたはそれ以上の添加剤が組み込まれることが望ましいであろう。通常好ましい添加剤は、強化剤、硬化剤、可塑剤、導電性素材、光学修飾剤、および類似のものを含むが、これらに限定されない。通常添加剤は膜の調製に先立って、基材ポリマー溶液およびイオン導電性膜の溶液に溶解または分散される。
【0075】
本発明のSPEMと方法は基材ポリマーとイオン導電性ポリマーの具体的な組み合わせにより説明される。しかしながら、本発明は特定の基材ポリマーまたはイオン導電性素材のいずれかへの使用に限られると解釈されてはならない。むしろ、本明細書の教示は、ここに規定した判定基準に合致するすべての基材ポリマーおよびイオン導電性素材に適するものである。
【0076】
(実施例)
本発明の膜および方法に従って調製されるサンプルの製造と試験のために、次の手順が採用された。
【0077】
高剪断混合機(二軸押出し機、Banbury混合機、パドル型共回転プロセッサー、またはシェア発生混合機など)を使用したPPA中のPBOの14.6%溶液の希釈に関する記載は、添付の図面に示された模式的な図を参照して記載され、本明細書中で類似の参照数字はいくつかの図を通して類似の部品を指す。本発明の原理に従う図1を参照して、本発明の希釈方法に使用されるのに適したポリマードープ混合システム100が、模式的な代表図で説明されている。該システムはハイシェア混合機1、真空ポンプ2、熱交換器3、窒素ガス供給部4、水流ポンプ5、多種の容器6A、6B、および6Cを含み、これらはピストン7A、7B、および7C、および加熱カバー8A、8B、8C、および8Dを備えている。
【0078】
高剪断混合機1はBunbury混合機またはロータリーパドルタイプなどの静的バッチタイプの混合機であってよいし、混合機または二軸押出し機または連続ロータリーパドルタイプの混合機などの連続供給混合機であってよい。
【0079】
真空ポンプ2はドープ中に気体が封入される可能性を最小にするために、混合機の内部を非常に低圧−最低で約100ミリトール−に維持するのに十分な吸引力を提供する適切な高負荷に耐える真空ホースを使用して混合機1に接続される。
【0080】
窒素ガス源4もまたシステムに接続され、混合サイクルの終わりに混合機がポリマードープを排出する際、大気圧に移行する時に、混合機の上部空間を不活性ガスで満たすことができる。
【0081】
完全な混合を達成するために必要な時間を最小化するために、混合条件を適切に調節するには、混合機の加熱および冷却の両方が必要である。これは鉱物油または水のような熱媒液を使用し、この液体を熱交換器3から混合機を包み込んでいる加熱/冷却カバーまで循環させることによって最も容易に達成される。
【0082】
次のセクションにおいて2つの好ましい実施形態を記載する:一番目は重合時の計算上の濃度としてPPA中14.6重量%のPBOポリマーの濃度を有するPBOドープの、PPA中8.0重量%のPBO濃度への希釈である。この濃度においてPBOポリマーはまだネマティック(秩序相)である。二番目は重合時の計算上の濃度としてPPA中14.6重量%のPBOポリマー濃度を有するPBOドープの、PPA中3.0重量%のPBO濃度への希釈である。この低濃度においてPBOポリマーはアイソトロピック(無秩序相)である。ある実施形態においてネマティックまたはアイソトロピック相である共処理された混合物により調製された本発明の膜状SPEMを使用することが好ましいことがある。他のある実施形態においてネマティックまたはアイソトロピック相のいずれかで調製される膜状SPEMが交換可能に使われてよい。
【実施例1】
【0083】
14.6%PBO/PPAドープの8.0%PBO/PPAドープへの希釈
図1を参照して、PBOポリマードープは東洋紡株式会社(東京、日本)から、約10ポンドのポリマードープの入ったステンレス容器6A中にPPA混合物中14.6重量%のPBO混合物として供給された。該容器6Aは一端に1インチNPTねじ山および容器本体部内に気密シールを形成するために2つの“O”リング型シーリングを備えた5インチドーム型ピストン7Aを有する。この化学プラントにおいて約120℃の温度のポリマードープは、加圧下に直接気密重合プロセスから容器6Aの1インチ直径の供給/排出端に、容器が完全に満たされるまでピストン7Aを引き込ませて送られた(ピストン7Aは容器6Aの最上部/それ以上動かなくなるまで押し上げられる。)。容器6Aが完全に満たされたとき、容器6Aはついで供給/排出端で1インチ直径のパイプキャップでキャップされ気密シールされる。14.6%PBO/PPAドープの室温での粘度は固体状、またはレンガに非常に近い状態である。この非常に粘稠な素材を容器6Aから排出するためには、水圧ポンプ9Aに動作する水圧水流ポンプ5からの水圧を用いて、ピストン7Aによって容器6Aから押し出すことができる点まで粘度を減らすため、まず、電熱カバー8Aにより120℃の温度まで加熱しなければならない。1500psiの圧力はドープを容器から真空下にある混合機1に流し出すのに十分である。該ドープの入った容器6Aは、ポリマードープが120℃の一様な温度になることを確実にするため、混合の始まる約6時間前から電熱カバー#8Aにより予熱される。
【0084】
該希釈剤は容器6B中に調製される。希釈剤として使用されるポリリン酸は、清浄な空の容器6B中に、最大移動幅まで引き出されたピストン7Bを用いて注がれる。PPAは容器6Bに注入された後、混合プロセスに使用される前にガス抜きされるが、この理由の一部はPPAがしばしば、かなりの量の空気を封入しているからである。ガス抜きは容器6Bを電熱カバー8Aにより100℃まで加熱し、一部が満たされた容器の上部空間を真空吸引することにより達成される。約4時間後、容器6Bには本質的にガスが含まれない、室温で本質的に水あめ(Karo syrup)状の粘稠度を有するPPAが入っている。いったん室温まで冷却すると、ピストン7Bは希釈剤の液面が容器6Bの1インチ直径の供給/排出パイプを完全に満たすまで手動で押し上げられる。閉じた位置にある1インチ直径メス型ステンレスボールバルブ10が希釈剤容器6B上に気密シールを形成するために供給/排出パイプに取り付けられる。
【0085】
容器6Aおよび6Bが、図1に見られるように混合機1の液と接触するようにバルブ10Aおよび10Bに取り付けられる。高圧水圧ホースにより水流ポンプ5と接続された水圧ポンプ9Aおよび9Bがついで容器6Aおよび6Bのフランジ上に装着されてピストン7Aおよび7Bを動かし、混合機1へのポリマードープおよび希釈剤の供給を補助する。
【0086】
該希釈方法で使用される混合機1は約100ミリトールの圧を形成するように、まず真空ポンプ2のスイッチを入れ、混合機のチャンバーで真空引きすることによって調製される。同時に、加熱カバー8Dが混合機1を120℃まで加熱する。この実施形態で使用されるバッチ混合機の回転子は30RPMの速度で回転される。温度、真空度および混合子回転速度がいったん安定化すると、ポリマー供給容器6A上の水圧ポンプ9Aに水流ポンプ5により1500psiの圧力をかけ、供給バルブ10Aを開放しポリマードープが混合機1中に流れ込むことを可能にした。重合後のそのままのドープ溶液(14.6%PBO/PPA、2.81キログラム)が混合機1中に導入された26分後、重合後のそのままのドープ溶液のすべてが混合機に添加された。ついで供給バルブ10Aを閉じ、ポンプ5から水圧ポンプ9Aへの水圧を中止した。重合後のそのままのドープの添加が完了した後、混合機の回転軸にかかるトルクを約66.9Nm/リットルに増加し、軸の回転速度を30rpmから18rpmに低下した。さらに14分の混合の後、粘稠な14.6%ポリマードープ溶液は実質的に「開放」され、低粘度希釈剤との混合が十分可能になった。
【0087】
ピストン7Bは重合後のそのままのドープ溶液の混合機1への添加が開始された後、水流ポンプ5による水圧ポンプ9Bにより40分間圧力がかけられた。わずか300psigでの容器7Bの加圧は比較的低粘度希釈剤(例、PPA)を移送するには十分であった。バルブ10Bを開放し、ついでニードルバルブ10B1を開放して、希釈剤が混合機1に流れ込むことを可能にした。この希釈剤の混合機への添加速度は114g/分であった。20分後、すべての希釈剤を混合機(2.27kgの希釈剤(PPA))に導入し、ニードルバルブ10B1を閉鎖し、次にオン/オフバルブ10Bを閉鎖し、水圧ポンプ9Bを介したピストン7B上の水圧を停止した。PPA供給の最後に、回転子のスピードは最初のセット値である30rpmまで回復し、特定されたトルクは58.3Nm/リットルに低下した。混合機中でさらに1.5時間の後、該素材は混合機から排出ポートバルブ10Cを通過し、60℃に加熱された受け止め容器6Cへ排出された。混合機から回収された均質の希釈PBO溶液は3.13kgの重量でありPPAに対して約7.7重量%のPBOを有していた。
【0088】
固有粘度測定により受け止められたままのドープの最初の固有粘度23.0dL/gと比較して、希釈ドープが21.3dL/gの固有粘度を有することが認められ、分子量低下は1%未満であることを示した。次に行なった、この低濃度ドープから製造されたポリマーフィルムの機械的試験で、引張強度が14.6%ドープから製造したフィルムにほぼ等しく測定されたことによって、これが裏付けられた。14.6%および7.7%の両ドープから同様の工程条件で押出された二軸延伸フィルムの機械的性能を下記表1に示す。
【0089】
【表1】

【実施例2】
【0090】
14.6%PBO/PPAドープの3.0%PBO/PPAドープへの希釈
PPA中に3重量%のPBOを有するアイソトロピックPBOドープを、実施例1に列記しまた図1でも模式図的に示した希釈方法および装置を用いて、14.6%ネマティック相PBOドープから調製した。
【0091】
試薬の量と処理時間を次のとおり変更した:14.6%ドープ(1.06kg)を15分で導入し、希釈剤の添加に先立ち、ドープの開放を完了させるため追加で10分混合した。ポリリン酸(PPA;2.27kg)を114g/分の速度で添加し、希釈されたドープをPPAの添加終了後から1.5時間混合した。
【0092】
希釈されたドープはアイソトロピック相であり、PPA中で3.19重量%のPBOを有した。測定された固有粘度は18.5であり、これは希釈プロセスにおける分子量低下が5%未満であることを示した。
【実施例3】
【0093】
PBOとPVPAの共処理された混合物を含むSPEM
リオトロピック液晶質ポリマー溶液とイオン導電性ポリマーの低濃度メタンスルホン酸溶液を共混合することによりSPEM膜を製造した。このようにして、ポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)のメタンスルホン酸(MSA)溶液を、ポリビスベンゾオキサゾール(PBO)のやはりMSA溶液とともに混合し、低濃度溶液を形成する。PBO:PVPAの繰り返し単位の比は1:4から1:10の範囲である。該溶液はついでキャスト法でフィルム化され、フィルムを水またはアセトン中で凝固する。得られたフィルムを窒素下175℃で乾燥する。ついで該フィルムについて乾燥条件(低相対湿度;加圧なし)下、150℃で4点法導電率測定により導電率を試験した。乾燥フィルム中のPBO:酸の比を決定するため元素分析も行った。
【実施例4】
【0094】
PBOおよびPSSAの共処理された混合物を含むSPEM
別法として、リオトロピック液晶質ポリマー溶液とイオン導電性ポリマーの通常の溶媒溶液の共混合によって膜を製造することができる。この共混合溶液は膜に形成可能であり、ついで溶媒除去のため凝固させる。この例ではリオトロピック液晶質ポリマーとイオン導電性ポリマー(ICP)を共混合する2つの方法を記載する。
【0095】
ポリ(スチレンスルホン酸)(PSSA)とPBOのポリリン酸溶液を実施例1および2に列記した希釈技法で調製する。ここでPPA希釈剤はPSSAのPPA溶液で置き換えられる。このようにして、PSSA溶液をポリリン酸(PPA)中で調製した。ついでこの溶液をハイシェア混合機を使用してPPA中の14.6%PBO溶液と混合し、7%溶液を形成した。得られたPSSAとPBOの希釈溶液を油圧プレスの高圧を適用することによりフィルムに成形した。該フィルムを凝固し、窒素下175℃で乾燥する。導電率試験と元素分析は実施例3で詳細に記載されたとおりに行った。
【0096】
(比較例1)
PBOとPVPAの多孔質膜
PEMを吸収プロセスで調製した。このプロセス中、多孔質で固定されていないPBO膜をPVPAの溶液中に浸漬した。PVPAを吸収するため、PBO膜をまずステンレスの輪に張った。ついで、該フィルムを水と20重量%PVPAの溶液に一晩80℃で浸漬した。これにより、膜の孔中のICP濃度がバルク溶液濃度と平衡に達するようにした。該フィルムを吸収溶液から引き出し、過剰の表面ICPはいずれも取り除いた。その後、すべての所望の任意の表面処理を行った。表面処理は2%Nafion(登録商標)/DMAc溶液へPEMを液浸することによるNafion(登録商標)薄層の適用を含むことができた。サンプルを昇温と浸漬を繰り返すことにより175℃まで乾燥した(以下を参照のこと)。
【0097】
PEM乾燥サイクル:
1. 75℃まで昇温(1度/分)し60分浸漬
2. 100℃まで昇温(1度/分)し60分浸漬
3. 150℃まで昇温(1度/分)し60分浸漬
4. 175℃まで昇温(1度/分)し60分浸漬
完全に高密度化したPEMには乾燥時の構造崩壊が発生した。
【0098】
(比較例2)
PBOおよびPSSAの微細多孔質膜
PBOおよびPSSAの微細多孔質複合体で構成された微細多孔質SPEMは、PSSAでPVPAを置き換えた比較例1の方法に従って調製した。
【0099】
導電率試験と元素分析は上述のように行った。
【0100】
下表に実施例3および4ならびに比較例1および2で調製したフィルムの化学および電気化学的データを示す。
【0101】
【表2】

【0102】
前表の電気化学データに示すように、高温度/低相対湿度における共処理された膜を有するSPEMの導電率は、実施例3および4で調製したSPEM中のイオン導電性ポリマー担持量が低いにもかかわらず、吸収された複合膜を有するSPEMよりも1から2桁高い。異なる酸性度のイオン導電性ポリマー(実施例3−弱酸(PVPA)に比較して実施例4−強酸(PSSA))について、また低濃度先駆体溶液(メタンスルホン酸中PBO/PVPA)または高濃度先駆体溶液(ポリリン酸中PBO/PSSA)から調製し共処理した膜について、導電率の増加が観察された。
【0103】
本発明について、これら好ましい実施形態を含め、具体的な用語を用いて詳細に記載したが、これらの詳細な記載はただ説明の目的のためだけのものであり、次の特許請求の範囲中で規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、変化および変形が、当業者によって行い得ることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は剛直ロッド型と伸張ロッド型のポリマーの重合後のそのままの溶液を均一希釈するのに適した装置の概要図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材ポリマーとイオン導電性素材とが共処理された混合物を含み、
(i)該基材ポリマーは液晶質ポリマーの、または溶媒に溶解性の熱硬化性もしくは熱可塑性芳香族ポリマーの、ホモポリマーまたはコポリマーを含み、および
(ii)該イオン導電性素材はスルホン化された、スルホンイミド化された、ホスホン化されたもしくはカルボキシル化されたイオン導電性ポリマーまたはフルオロペルフルオロ化アイオノマーの少なくとも一つのホモポリマーまたはコポリマーを含む
固体ポリマー電解質膜(SPEM)。
【請求項2】
該SPEMが少なくとも約1×10−4(S/cm)の導電率を有している請求項1に記載のSPEM。
【請求項3】
該SPEMが約60℃から約200℃の間の温度および約0%から約100%の間の相対湿度のいかなる組み合わせにおいても少なくとも約1×10−4(S/cm)の導電率を有している請求項1に記載のSPEM。
【請求項4】
基材ポリマーとイオン導電性素材との配合物を含み、
(i)該基材ポリマーは液晶質ポリマーの、または溶媒に溶解性の熱硬化性または熱可塑性芳香族ポリマーの、ホモポリマーまたはコポリマーを含み、および
(ii)該イオン導電性素材はスルホン化された、スルホンイミド化された、ホスホン化されたもしくはカルボキシル化されたイオン導電性ポリマーまたはフルオロペルフルオロ化アイオノマーの少なくとも一つのホモポリマーまたはコポリマーを含み、
少なくとも約1×10−4(S/cm)の導電性を有する
固体ポリマー電解質膜(SPEM)。
【請求項5】
該SPEMが約60℃を超す温度および約25%から100%の間の相対湿度において少なくとも約1×10−3(S/cm)の導電性を有している請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項6】
該SPEMが約80℃を超す温度および25から100%の間の相対湿度において少なくとも約1×10−3(S/cm)の導電率を有している請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項7】
該SPEMが95℃未満の温度および少なくとも約50%の相対湿度において少なくとも1×10−4(S/cm)の導電率を有している請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項8】
該SPEMが110℃を超す温度および50%未満の相対湿度において1×10−4(S/cm)の導電率を有している請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項9】
該SPEMが95℃未満の温度および少なくとも約50%の相対湿度において少なくとも1×10−3(S/cm)の導電率を有し、110℃を超す温度および50%未満の相対湿度において1×10−4(S/cm)の導電率を有している請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項10】
該SPEMが60℃を超す温度およびいかなる相対湿度においても少なくとも約1×10−4(S/cm)の導電率を有している請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項11】
該SPEMが約80℃から約200℃の間の温度および0%から100%の間の相対湿度のいかなる組み合わせにおいても少なくとも約1×10−4(S/cm)の導電率を有している請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項12】
該SPEMが大気圧下150℃から200℃の間の温度において少なくとも約1×10−4(S/cm)の導電率を有している請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項13】
該SPEMが塩基残基を含む基材ポリマーの配合物を含み、基材ポリマーの塩基残基の、イオン導電性ポリマーの酸残基に対するモル比が約10:1から約1:10の間である請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項14】
基材ポリマーの塩基残基の、イオン導電性ポリマーの酸残基に対するモル比が、約3:1から約1:3の間である請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項15】
該SPEMが少なくとも約60℃から少なくとも約200℃までで安定である請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項16】
該SPEMが少なくとも約80℃から少なくとも約175℃までで安定である請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項17】
該SPEMが少なくとも約100℃から少なくとも約175℃までで安定である請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項18】
該SPEMが、該基材ポリマーと該イオン導電性素材との混合物を、高圧下でプレスしてフィルムを形成することおよび該フィルムを凝固させてSPEMを形成することにより形成された膜を含む請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項19】
該共処理された混合物が該基材ポリマー、該イオン導電性素材および少なくとも一つの溶媒を含む請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項20】
該SPEMが、膜を形成するための基材ポリマー、イオン導電性素材および少なくとも一つの溶媒を含む混合物を、キャストし、高圧プレスしまたは押出し、該フィルムを凝固させることにより形成された膜を含む請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項21】
該液晶質基材ポリマーがリオトロピック液晶質ポリマーを含む請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項22】
該リオトロピック液晶質基材ポリマーがポリベンザゾール(PBZ)およびポリアラミド(PAR)ポリマーの少なくとも一つを含む請求項21に記載のSPEM。
【請求項23】
該ポリベンザゾール基材ポリマーが少なくとも1つのポリベンズオキサゾール(PBO)、ポリベンゾチアゾール(PBZT)およびポリベンズイミダゾール(PBI)ポリマーのホモポリマーまたはコポリマーを含み、ならびに該ポリアラミドポリマーがポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)ポリマーのホモポリマーまたはコポリマーを含む請求項22に記載のSPEM。
【請求項24】
該熱硬化性または熱可塑性芳香族基材ポリマーが、ポリスルホン(PSU)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルホキシド(PPSO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルフィドスルホン(PPS/SO)、ポリパラフェニレン(PPP)、ポリフェニルキノキサリン(PPQ)、ポリアリールケトン(PK)およびポリエーテルケトン(PEK)ポリマーの少なくとも一つを含む請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項25】
該ポリスルホン基材ポリマーがポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、ポリアリールエーテルスルホン(PAS)、ポリフェニルスルホン(PPSU)およびポリフェニレンスルホン(PPSO)ポリマーの少なくとも一つを含み、該ポリイミド(PI)ポリマーがポリエーテルイミド(PEI)ポリマーを含み、該ポリエーテルケトン(PEK)ポリマーがポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン−ケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン−ケトン(PEEKK)およびポリエーテルケトンエーテルケトン−ケトン(PEKEKK)ポリマーの少なくとも一つを含み、および該ポリフェニレンオキシド(PPO)ポリマーが2,6−ジフェニルPPOまたは2,6ジメチルPPOポリマーを含む請求項24に記載のSPEM。
【請求項26】
該イオン導電性素材が該基材ポリマー中に均一に分散されている請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項27】
該イオン導電性素材および該基材ポリマーが分子レベルで散在している請求項26に記載のSPEM。
【請求項28】
該イオン導電性素材が約0.01S/cmを超すイオン導電率を有している請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項29】
該イオン導電性素材が約0.1S/cmを超すイオン導電率を有している請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項30】
該イオン導電性素材が約0.01S/cmから約1.0S/cmの間のイオン導電率を有している請求項28に記載のSPEM。
【請求項31】
該イオン導電性素材が約0.5ミリ当量/gを超すイオン交換容量を有している請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項32】
該イオン導電性素材が約2.5ミリ当量/gを超すイオン交換容量を有している請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項33】
該イオン導電性素材が約1.5から約11ミリ当量/gの間のイオン交換容量を有している請求項32に記載のSPEM。
【請求項34】
該イオン導電性素材が約2.5から約11ミリ当量/gの間のイオン交換容量を有している請求項32に記載のSPEM。
【請求項35】
該SPEMが面積比抵抗約0.02から約20Ω・cmを有している請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項36】
該SPEMが約0.2Ω・cm未満の面積比抵抗を有している請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項37】
該イオン導電性芳香族ポリマーが全面的な芳香族イオン導電性ポリマーを含んでいる請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項38】
該イオン導電性芳香族ポリマーがスルホン化された、スルホンイミド化された、ホスホン化されたまたはカルボキシル化されたポリイミドポリマーを含むことを特徴とする請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項39】
該スルホン化された全面的な芳香族イオン導電性ポリマーが、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルホキシド(PPSO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン(PPSO)、ポリフェニレンスルフィドスルホン(PPS/SO)、ポリパラフェニレン(PPP)、ポリフェニルキノキサリン(PPQ)、ポリアリールケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリベンザゾール(PBZ)およびポリアラミド(PAR)ポリマーの少なくとも一つのスルホン化された誘導体を含む請求項37に記載のSPEM。
【請求項40】
(i)該ポリスルホンポリマーがポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、ポリアリールスルホン、ポリアリールエーテルスルホン(PAS)、ポリフェニルスルホン(PPSU)およびポリフェニレンスルホン(PPSO)ポリマーの少なくとも一つを含み、
(ii)該ポリベンザゾール(PBZ)ポリマーが、ポリベンゾオキサゾール(PBO)ポリマーまたはポリベンゾチアゾール(PBZT)ポリマーを含み、
(iii)該ポリエーテルケトン(PEK)ポリマーがポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン−ケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン−ケトン(PEEKK)およびポリエーテルケトンエーテルケトン−ケトン(PEKEKK)ポリマーの少なくとも一つを含み、および
(iv)該ポリフェニレンオキシド(PPO)ポリマーが2,6−ジフェニルPPO、2,6−ジメチルPPOおよび1,4−ポリフェニレンオキシドポリマーの少なくとも一つを含む請求項39に記載のSPEM。
【請求項41】
該イオン導電性素材がポリスチレンスルホン酸(PSSA)、ポリ(トリフルオロスチレン)スルホン酸、ポリビニルホスホン酸(PVPA)、ポリアクリル酸およびポリビニルスルホン酸(PVSA)ポリマーの少なくとも一つを含む請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項42】
該基材ポリマーが、少なくとも1つの置換されたまたは置換されていないポリベンザゾールポリマーのホモポリマーまたはコポリマーを含み、およびイオン導電性素材が少なくとも1つのポリスルホン(PSU)、ポリフェニレンスルホキシド(PPSO)およびポリフェニレンスルフィドスルホン(PPS/SO)ポリマーのホモポリマーまたはコポリマーのスルホン化された誘導体を含む請求項1または請求項4に記載のSPEM。
【請求項43】
該ポリスルホンポリマーがポリエーテルスルホン(PES)およびポリフェニルスルホン(PPSU)ポリマーの少なくとも一つを含む請求項42に記載のSPEM。
【請求項44】
該ポリスルホンポリマーが(4,4’−ジハロフェニル)スルホン、スルホン化された(4,4’−ジハロフェニル)スルホンまたはこれらの混合物を、それぞれ場合によってはスルホン化されていてもいい4,4’−ビスフェノールビフェノール、または4,4−ビフェニルビフェニル−ジチオール、1,4−ヒドロキノン、1,4−ベンゼンジチオールおよびこれらの混合物と縮合させることにより製造される請求項43に記載のSPEM。
【請求項45】
該(4,4’−ジハロフェニル)スルホンモノマーの少なくとも50%が一つまたはそれ以上の3,3’位においてスルホン化されている請求項44に記載のSPEM。
【請求項46】
該(4,4’−ジハロフェニル)スルホンモノマーの少なくとも75%が一つまたはそれ以上の3,3’位においてスルホン化されている請求項44に記載のSPEM。
【請求項47】
該(4,4’−ジハロフェニル)スルホンモノマーの少なくとも90%が一つまたはそれ以上の3,3’位においてスルホン化されている請求項44に記載のSPEM。
【請求項48】
該(4,4’−ジハロフェニル)スルホンモノマーが本質的に全ての3,3’位においてスルホン化されている請求項44に記載のSPEM。
【請求項49】
該ポリスルホンポリマーが次式
【化1】

[ここで、Ar1、Ar2およびAr3は、それぞれの出現ごとに6から18の間の環炭素原子数および1から3の間の環数を持つ炭素環芳香族基から独立に選択され、
Ar1、Ar2、およびAr3基の少なくとも一部はスルホン酸残基により置換され、
E1およびE2はO、SおよびSOからなる群からそれぞれ出現ごとに独立に選択され、
mは1に等しくまたは1より大きく、
nは0から約10の間の整数であり、および
pは2から約10,000の間の整数である。]の化合物である請求項44に記載のSPEM。
【請求項50】
該ポリスルホンポリマーが次式、
【化2】

[式中、x、y、およびzは0から4の間の整数であり、x、yまたはzはそれぞれ出現ごとに独立に選択され、x、yおよびzの出現のうち少なくとも一部はゼロではなく、
E1およびE2はO、S、およびSOからなる群から出現ごとに独立に選択され、
mは1に等しくまたは1より大きく、
nは0から約10の間の整数であり;
pは2から約10,00の間の整数であり、および
qは1、2、または3である。]の化合物である請求項49に記載のSPEM。
【請求項51】
pが約5から約500の間の整数である請求項50に記載のSPEM。
【請求項52】
zはゼロであり、xおよびyの出現のうち少なくとも約80%はゼロでない請求項50に記載のSPEM。
【請求項53】
基材ポリマーとイオン導電性素材との通常の溶媒中の混合物を調製する工程、
該混合物を圧縮し、キャストし、または押出しすることにより膜を形成する工程、および
該複合膜を凝固させてSPEMを生成させる工程
を含む、請求項1から52のいずれか1つに記載の固体ポリマー電解質膜(SPEM)を製造する方法。
【請求項54】
該基材ポリマーとイオン導電性素材との通常の溶媒中の混合物が基材ポリマーの高濃度ドープ溶液をイオン導電性素材溶液で希釈することにより調製される請求項53に記載の方法。
【請求項55】
該基材ポリマーとイオン導電性素材との通常の溶媒中の混合物が基材ポリマーとイオン導電性素材とを通常の溶媒中に溶解することにより調製される低濃度溶液であることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項56】
請求項1または請求項4に記載の複合した固体ポリマー電解質膜を含むデバイス。
【請求項57】
該デバイスが燃料電池である請求項56に記載のデバイス。
【請求項58】
該燃料電池が直接メタノール燃料電池または水素燃料電池である請求項57に記載のデバイス。
【請求項59】
該直接メタノール燃料電池が、0.5Vにおいて約50mA/cm未満の等価電流密度に相当するメタノール透過率を有する請求項58に記載のデバイス。
【請求項60】
該燃料電池が電子装置への給電に使用される請求項57に記載のデバイス。
【請求項61】
該燃料電池が電気モーターへの給電に使用される請求項57に記載のデバイス。

【図1】
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【公表番号】特表2008−500701(P2008−500701A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515208(P2007−515208)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/017847
【国際公開番号】WO2006/076031
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(598170408)フオスター・ミラー・インコーポレイテツド (1)
【Fターム(参考)】