説明

固体レーザの固定方法とこれを用いたレーザ点火装置

【課題】熱的安定性、耐振性に優れた固体レーザの固定方法とそれを用いたレーザ点火装置を提供することを目的とする。
【課題を解決する手段】ARコーティング201を施され全反射鏡からなる入射鏡200と、励起光の波長を変換して放出するレーザ媒質202と、受動Qスイッチを構成する可飽和吸収体203及び部分反射鏡204とが一体に形成され、角柱状に切り出された固体レーザ20の長手方向の4側面211〜214の内、少なくとも2面211、212が、固体レーザ固定用ホルダ25を構成するホルダ基体250の内側に区画した固体レーザ収容空間255の内周側の2側面(251、252)に対して、それぞれの裏面側(213、214)から固体レーザ固定用弾性体261〜264によって弾性的に押圧して、広い接触面積で当接せしめ、固体レーザ20の中心軸C/Lとホルダ25の中心軸C/Lとが一致した状態で弾性的に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動環境下に耐えられる固体レーザの固定方法と、車両等の振動環境下に晒される内燃機関の点火に用いられるレーザ点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラッシュランプ、半導体レーザ等の励起用光源をQスイッチ式のレーザ媒質に照射し、短いパルス幅でエネルギを集中させて放出するパルスレーザを発振させ、さらにパルスレーザを集光レンズなどの光学系部品を用いて集光して、高いエネルギを集中させることにより、内燃機関の点火を行ったり、金属の加工を行ったりするレーザ装置が種々提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3等参照)。
【0003】
エネルギ密度の高いパルスレーザを燃焼室の内側に集光させて、自動車エンジン等の内燃機関の混合気の点火を行うに際して、高温環境下に置かれるレーザモジュールの経済的な構造として、特許文献1には、ケーシング(110a)を備え、該ケーシング(110a)内に配設されたレーザパルス(300)生成のためのなくとも1つのレーザ装置(120)を有しているレーザモジュール(110)において、前記レーザモジュール(100)が少なくとも1つの第1の密封領域(130a)と、該第1の密封領域(130a)内に少なくとも部分的に設けられる第2の密封領域(130b)とを有し、前記レーザ装置(120)が前記第2の密封領域(130b)内部に配設されるように構成されていることを特徴とするレーザモジュールが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、同種のレーザ点火装置26として、固体レーザ44と、ハウジング33と燃焼室に望む窓部58とからなり、ハウジング38を内側スリーブ62と外側スリーブ54との二重筒構造で構成し、内側スリーブ62と外側スリーブ64との間に、インサート部70を設けて溶接等により密封した構造が示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、レーザビームを光波長変換素子によって第2高調波等に波長変換する光波長変換装置に用いられる光波長変換素子の固定方法として、ホルダを形成する金属の熱膨張係数と最もかけ離れた熱膨張係数を有する光波長変換素子の結晶軸方向の対して垂直な面のみを介して金属ホルダに接着固定する方法が開示されており、−20〜60℃の温度変化に対して、光波長変換素子にクラックや歪みを生じないとされている。
【0006】
非特許文献1には、内燃機関の点火装置に用いられる、小型で高エネルギのNd−YAGレーザが開示されている。
【0007】
レーザ発振装置を自動車エンジン等の内燃機関の点火装置として利用しようとした場合、レーザ装置がエンジンヘッド等の−40〜130℃というような極めて温度変化の大きい環境に晒されることになり、しかも、路面状況の変化や、車両の加速、減速等、運転状態によって様々な振動に晒され、耐振性として30Gという大きな重量加速度に耐え得るものでなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1では、具体的なQスイッチレーザ媒質等の固定方法は必ずしも明確となっていないが、特許文献1に有るように、公知のレーザモジュールを第1の密封領域内に設けた第2の密封領域内に配設して密封構造としたのでは、レーザモジュールが高温環境下に晒されたときに、第2の密封領域を構成する第2のケーシングとその内側に設けたレーザモジュールとの熱膨張係数の差を吸収できずレーザモジュールに歪みを生じることとなる。このようなレーザモジュールに歪みが生じると、光軸のズレによって、点火に必要なエネルギを十分集光させることができなかったり、レーザ共振器の発振の変動によって、所定のタイミングでの着火が困難となったりする虞がある。
【0009】
また、特許文献2にあるレーザ点火装置でも、外乱により、ハウジング38と固体レーザ44との熱膨張率の違いによって固体レーザ44が歪み、安定した着火が実現できない虞がある。さらに、内側スリーブ62と外側スリーブ64との間で固体レーザ44の全周が覆われるように挟持されているため、外部からの振動の逃げ場がなく、固体レーザ44に直接作用し、固体レーザ44にひび割れを生じる虞もある。
【0010】
一方、特許文献3にあるように、レーザ媒質の一面のみを金属製ホルダに接着剤を用いて固定させたのでは、激しい振動や、高温に晒される等の過酷な使用環境に耐えられず、固体レーザ媒質の金属製ホルダからの脱離を招いたり、接着剤成分の蒸発によって集光レンズの汚染を招いたりする虞がある。
【0011】
また、本発明者等の、鋭意試験により、固体レーザの固定方法を工夫することで、極めて簡易な構成により非特許文献1に記載されたレーザ点火装置よりも高い変換効率でパルスレーザを発振して、内燃機関の点火を行うレーザ点火装置を実現できることが判明した。
【0012】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、車両用エンジン等の温度変化が大きく、振動や衝撃等も大きい、過酷な使用環境においても、安定した状態で固体レーザを保持し、安定したパルスレーザの発振を可能とする信頼性に優れた固体レーザの固定方法とそれを用いたレーザ点火装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明では、全反射鏡と部分反射鏡との間に介装されたれーザ媒質の内部で励起光源から発振された励起光を共振させ、エネルギ密度の高いパルスレーザを発振するレーザ共振器に用いられる固体レーザの固定方法であって、短い波長の励起光の入射は許容し、長い波長の蛍光光を全反射する全反射鏡からなる入射鏡と、短い波長の励起光の入射により長い蛍光波長を放出するレーザ媒質と、該レーザ媒質から放射された光エネルギが所定のQ値以下のときには吸収し、所定のQ値以上のときには放出する受動Qスイッチを構成する可飽和吸収体及と部分反射鏡とを一体に形成して、角柱状に加工した固体レーザの長手方向の4側面の内、少なくとも2側面を、固体レーザ固定用ホルダを構成するホルダ基体の内側に区画した固体レーザ収容空間の内周側の2側面に対して、それぞれの裏面側から固体レーザ固定用弾性体によって弾性的に押圧して、広い接触面積で当接せしめ、上記固体レーザの中心軸と上記固体レーザ固定用ホルダの中心軸とが一致した状態で弾性的に保持する。
【0014】
請求項2の発明では、上記固体レーザ固定用弾性体が、上記固体レーザ固定用ホルダと一体的に又は別体で設けられ、上記固体レーザの上端部と下端部とにおいて、上記固体レーザ収容空間の内側に向かって傾倒せしめた舌片状の板バネ部材からなり、上記固体レーザ収容空間の2つの内周面のそれぞれに直交する方向に上記固体レーザを押圧する。
【0015】
請求項3の発明では、角柱状に形成した上記固体レーザの対角方向に分割した略半円柱状で、内側に略V字形の固体レーザ収容空間を区画した一対の固体レーザ固定用ホルダによって上記固体レーザを挟持し、それぞれの収容空間の2側面を対向する上記固体レーザの2側面のそれぞれに当接せしめると共に、上記固体レーザ固定用弾性体によって押圧する。
【0016】
請求項4の発明では、上記固体レーザ固定用弾性体が、略C字型に形成した弾性部材からなるC形止め輪であって、上記一対の固体レーザ固定用ホルダをその外周側から中心方向に向かって押圧する。
【0017】
請求項5の発明では、上記固体レーザ固定用弾性体が、略平板状に形成した弾性部材からなり、上記一対の固体レーザ固定用ホルダの互いに対向する2面間、又は、上記固体レーザと上記固体レーザ固定用ホルダとの間に介挿する。
【0018】
請求項6の発明では、上記固体レーザと上記固体レーザ収容空間との間に空隙が存在する場合に、該空隙内に熱伝導率が高く弾性を有する樹脂部材を充填する。
【0019】
請求項7の発明では、外部に設けた励起光源から励起光集光手段を介して入射された励起光をレーザ共振器の内部で共振増幅したエネルギ密度の高いパルス光とし、該パルス光をパルス光集光手段を介して、内燃機関の燃焼室の内側に集光してエネルギ密度の極めて高いプラズマを発生させて混合気の点火を行うレーザ点火装置であって、上記レーザ共振器が、短い波長の励起光の入射は許容し、長い波長の光を全反射する全反射鏡からなる入射鏡と、短い波長の励起光の入射により長い波長の蛍光を放出するレーザ媒質と、該レーザ媒質から放射された光エネルギが所定のQ値以下のときには吸収し、所定のQ値以上のときには放出する受動Qスイッチを構成する可飽和吸収体及び部分反射鏡とを一体に形成して、角柱状に加工した固体レーザと、これを保持する固体レーザ固定用ホルダとによって構成され、請求項1ないし6のいずれかに記載の固体レーザの固定方法によって上記固体レーザの長手方向側面の内、少なくとも2面を上記固体レーザ固定用ホルダに区画した固体レーザ収容空間の内周壁の内の2面に弾性的に押圧して固定せしめる。
【0020】
請求項8の発明では、上記励起光集光手段と上記共振器と上記パルス光集光手段と光軸を揃えて配設して筒状のハウジングの内側に収容すると共に、上記励起光集光手段と上記共振器とを上記パルス光集光手段との間のいずれかの位置に、高い熱伝導率と伸縮性のある弾性部材を介し挿入する。
【発明の効果】
【0021】
本発明者の試験により、本発明によれば、上記レーザ共振器の温度が−40〜130℃の範囲で変化した場合であっても、また、上記固体レーザが加速度30G相当の振動場に晒されても、上記固体レーザが上記固体レーザ固定用ホルダからの位置ズレを起こすことがなく、上記固体レーザの一方の端に設けた上記入力鏡と他方の端に設けた上記出力鏡との平行度を33秒以下に保持され、上記励起光光学系と上記レーザ共振器及び上記集光光学系との距離が変動せず、各光学部品の破損、歪み変形が抑制され、安定した出力を維持することができることが判明した。
上記固体レーザ固定用弾性体によって、上記固体レーザと上記固体レーザ固定用ホルダとが広い接触面積で当接し、弾性的に押圧された状態となっているので、外部からの振動や衝撃など、瞬間的に大きな力が作用しても、上記固体レーザの2つの側面と上記固体レーザ固定用ホルダの2つの内周面との間に大きな静止摩擦抵抗が働き、上記固体レーザが上記固体レーザ固定用ホルダ内で位置ズレを起こしたり、脱落したりする虞がない。
さらに、外部環境の温度変化や、上記固体レーザに励起光が入射され、共振したときの発熱等によって上記固体レーザと上記固体レーザ固定用ホルダとの間に生じる熱膨張差は瞬間的な変化ではなく、熱膨張過程か熱収縮過程かを問わず、微視的に見れば、上記固体レーザと上記固体レーザ固定用ホルダとは共に動いている状態で、両者の間には働く力は小さな動摩擦力であるため、両者の間で滑りを生じて熱膨張差が吸収され、上記固体レーザに歪みを生じることがない。
【0022】
また、上記固体レーザと上記固体レーザ固定用ホルダとの接触面積が大きいので上記固体レーザから上記固体レーザ固定用ホルダへの放熱が速やかに行われるため、出力を安定させることができる。
さらに、上記固体レーザと上記固体レーザ固定用ホルダとの間の空隙内に熱伝導率の高い弾性部材を充填することにより、さらなる、耐熱性、耐振性の向上を図ることが可能となる。
【0023】
一方、本発明によらず、上記固体レーザと上記固体レーザ固定用ホルダとの間に空隙が介在する場合には、空隙が断熱層となってレーザ共振器の内部で発生した熱の放熱性が低下し、レーザ媒質の内部の屈折率が変化し、パルス光の発振が不安定となる。
本発明の固体レーザの固定方法をレーザ点火装置に用いれば、上記レーザ発振器から出射されるパルス光の光軸が安定し、また、出力されるエネルギも安定し、車載したエンジン自身の振動および外部からの振動や温度変化の激しい過酷な使用環境においても信頼性の高い点火を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態における固体レーザの固定方法の概要を示し、(a)は、上面図、(b)は、縦断面図、(c)は、下面図。
【図2】図1のA−Aにおける要部断面図。
【図3】本発明の第1の実施形態における固体レーザの固定方法を用いたレーザ点火装置の概要を示す縦断面図。
【図4】本発明の効果を確認するための試験に用いたレーザ共振器の概要を示し、(a−1)は、実施例の縦断面図、(a−2)は、その横断面図、(b−1)は、比較例の縦断面図、(b−2)は、その横断面図。
【図5】レーザ共振器の平行度の測定方法を示す模式図。
【図6】比較例と共に、本発明の総エネルギに対する効果を示す特性図。
【図7】比較例と共に、本発明の光―光変換効率に対する効果を示す特性図。
【図8】本発明の第2の実施形態における固体レーザの固定方法の概要を示し、(a)は、組み付け前の状態を示す要部横断面図、(b)は、組み付け後の状態を示す要部横断面図、(c)は、縦断面図。
【図9】本発明の第2の実施形態における固体レーザの固定方法を用いたレーザ点火装置の概要を示す縦断面図。(a)は、本図(b)中A−Aに沿った断面図、(b)は縦断面図、
【図10】本発明の第3の実施形態における固体レーザの固定方法の概要を示し、(a)は、本図(b)中A−Aに沿った断面図、(b)は、本実施形態における共振器の概要を示す一部切り欠き斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、全反射鏡と部分反射鏡との間に介装されたれーザ媒質の内部で励起光源から発振された励起光を共振させ、エネルギ密度の高いパルスレーザを発振するレーザ共振器に用いられる固体レーザの固定方法、及び、その方法を用いて激しい振動や温度変化に晒される車両エンジン等の内燃機関の点火を行うレーザ点火装置に関し、過酷な環境下でも、歪みを生じさせることなく安定的に固体レーザを保持し、信頼性の高い内燃機関用のレーザ点火装置を提供するものである。
【0026】
図1、図2を参照して、本発明の第1の実施形態における固体レーザ20の固定方法の概要と、その固定方法により保持、固定された固体レーザ20を含むレーザ共振器2の概要について説明する。
図1に示すように、本発明の第1の実施形態におけるレーザ共振器2はARコーティング201が施され、入射光をレーザ媒質202側へ全反射する入力鏡200と、レーザ媒質202とレーザ媒質202から放射された光エネルギが所定のQ値以下のときには吸収し、所定のQ値以上のときには放出する受動Qスイッチを構成する可飽和吸収体203及び部分反射鏡204とが一体化された固体レーザ20を、本発明の要部である固体レーザ固定用ホルダ25(以下、ホルダ25と略す。)の内側に収容して構成されている。
本発明において、固体レーザの種類を特に限定するものではなく、例えば、NdをドーピングしたNd:YAGからなるレーザ媒質とCr+4をドーピングしたCr:YAGからなる受動Qスイッチとを一体とした公知の個体レーザが使用されている。
【0027】
ホルダ25は円柱状のホルダ基体250の内側に、角柱状に形成した固体レーザ20を収容するための固体レーザ収容空間255(以下、収容空間255と略す。)が区画されている。
本実施形態においては、角柱状に切り出され、精度良く加工された固体レーザ20の長手方向の4側面211、212、213、214の内、少なくとも2面211、212が、ホルダ25を構成するホルダ基体250の内側に区画した固体レーザ収容空間255(以下、収容空間255と略す。)の内周側の2側面(251、252)に対して、それぞれの裏面側(213、214)から固体レーザ固定用弾性体261、262、263、264によって弾性的に押圧され、広い接触面積で当接し、固体レーザ20の中心軸C/Lとホルダ25の中心軸C/Lとが一致した状態で弾性的に保持されている。
【0028】
本実施形態においては、固体レーザ固定用弾性体261、262、263、264は、ホルダ25とは別体に形成した舌片状の板バネ部材をホルダ25の固定用弾性体保持部257、258に固定して固体レーザ20の上端部と下端部とにおいて、収容空間255の2つの内周面251、251のそれぞれに直交する方向に固体レーザ20を押圧している。さらに、固体レーザ20と収容空間255との間の空隙内には、熱伝導率が高く、弾性を有する弾性樹脂部材が充填されている。弾性樹脂部材27は、固体レーザ20とホルダ25との間に断熱性の空隙が介在することによって固体レーザ20からの放熱性が低下するのを抑制すると共に、固体レーザ20の2側面211、212がホルダ25内周側の2面251、252に対して弾性的に押圧されるのを補助している。また、弾性樹脂部材27内に高熱電導性のフィラーを分散せしめてさらなる放熱性の向上を図ることもできる。
なお、収容空間255の2つの内周面251、252が互いに直交する角部には、長手軸方向にコーナー溝部256が穿設されており、固体レーザ20の2つの側面211、212が互いに直交する角部とホルダ25の内周壁とが当接することがなく、固体レーザ20をホルダ25に押圧したときに角部に応力集中するのを防いでいる。
【0029】
また、ホルダ25の収容空間255を形成する際に、放電加工などにより、収容空間255の上下の2面の一部を舌片状に切り欠いて、それを内側に向けて傾倒させることにより固定用弾性体261、262、263、264をホルダ25と一体的に形成することもできる。
【0030】
固体レーザ20がホルダ25の内周壁に点で支えられるのではなく、面で保持されているので、外部からの振動や衝撃など、瞬間的に大きな力が作用しても、固体レーザ20の2つの側面211、212とホルダ25の2つの内周面251、252との間に大きな静止摩擦抵抗が働き、固体レーザ20がホルダ25内で位置ズレを起こしたり、脱落したりする虞がない。
一方、ホルダ25には、固体レーザ20の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有する材料が用いられるが、完全に一致させることは困難で、従来のように、固体レーザ20とホルダ25とを接着固定したのでは、熱膨張差によるストレスが固体レーザ20に作用し、固体レーザ20に歪みが生じ、固体レーザ20の劣化を招いたり、固体レーザ20の両端に設けた入射鏡200と出力鏡204との平行度が損なわれて光軸のズレを招いたりする虞がある。
【0031】
しかし、本実施形態においては、固体レーザ20の上端面と下端面とには、固体レーザ20の長手軸方向の膨張と収縮とを妨げるものが存在せず、外部環境の温度変化や、固体レーザ20に励起光が入射され、共振したときの発熱等によって固体レーザ20とホルダ25との間に生じる熱膨張差は瞬間的な変化ではなく、熱膨張過程か熱収縮過程かを問わず、微視的に見れば、固体レーザ20とホルダ25とは共に動いている状態であり、両者の間には働く力は熱膨張差によって生じる小さな動摩擦抵抗だけであるため、両者の間で滑りを生じて、固体レーザ20に歪みを生じることがない。
また、固体レーザ20とホルダ25との接触面積が大きいので固体レーザ20からホルダ25への放熱が速やかに行われるため、出力を安定させることができる。
【0032】
さらに、固体レーザ20の2つの側面211、212とホルダ25の2つの内周壁251、252との間に、インジュウム箔や黒鉛シート等の高い熱伝導性と伸縮性のある平膜部材を介装することによって、密着性と放熱性とを向上させ、さらに耐振性、出力安定性に優れた共振器2を実現することもできる。
【0033】
図3を参照して、本発明の第1の実施形態におけるレーザ点火装置1の概要について説明する。
レーザ点火装置1は、略筒状のハウジング10内に、光ファイバ11、励起光集光手段12、共振器2、パルス光集光手段14、保護カバー15を同軸上に配設し、基端側をキャップ13で封止して構成され、ハウジング10の先端に設けたネジ部103を内燃機関3のシリンダヘッド30に固定し、燃焼室300内に先端側を露出させている。
ハウジング10は、略筒状に形成されたハウジング基体100とその基端側に形成した励起光集光手段収容部101と先端側に形成したパルス光集光手段収容部102と先端側外周に形成したネジ部103によって構成されている。
光ファイバ11は、ハウジング10の基端側に、キャップ13を用いて固定され、外部に設けた図略の半導体レーザLD等の公知の励起光源から発振された励起光LZRPMPを伝送する。
【0034】
励起光集光手段12は、ハウジング10の励起光集光手段収容部101内に収容され、第1の励起レンズ121、第2の励起レンズ122によって構成され、光ファイバ11から出光された励起光LZRPMPを共振器2の基端側の中心に集光して入射する。
共振器2内に入射された励起光LZRPMPは、全反射鏡200と部分反射鏡204との間で共振器2内に入射された励起光LZRPMP(例えば、808.5nm)は、レーザ媒質202を蛍光させ励起光よりも長い波長(例えば、1064nm)のパルス光LZRPLSを誘導放出する。
【0035】
共振器2の入射面からの励起光の入射は許容し、レーザ媒質202内で発生した励起光よりも長い波長の光を全反射するARコーティング201を施した全反射鏡200から、レーザ媒質202、可飽和吸収体203、部分反射鏡204の間においてレーザ媒質202内で発生した励起光LSRPMPよりも長い波長の光が共振し、可飽和吸収体203の固有の閾値を超えるまで増幅される。
共振増幅されたレーザ光が閾値を超えると可飽和吸収体203が受動Qスイッチとして作用し、瞬間的にエネルギ密度の高いパルス光LZRPLSが出射される。
共振器2は、上述のごとく、固体レーザ20の少なくとも2側面211、212をホルダ25の内周壁251、252に弾性的に押圧して固定されている。
共振器2から出射されたパルス光LSRPLSは、ビームエキスパンダ140によって所定のビーム径に調整され、集光レンズ141によって燃焼室300内の所定位置FPに集光してエネルギ密度の極めて高いプラズマを発生させ、燃焼室300内の混合気を点火する。
保護カバー150は、燃焼室300内の高い圧力と、煤などの汚れから集光レンズ141を保護している。
【0036】
ビームエキスパンダ140と共振器2との間には、弾性体142が介装されており、温度変化によるホルダ250の伸縮を吸収し、ビームエキスパンダ140からパルス光集光レンズ141までの各光学部品に割れや歪が発生しないようにしてある。
なお、弾性体142は、レーザ共振器2から凹レンズ140、スペーサ142、パルス光集光レンズ141までのいずれかの間に設ければ良い。
また、弾性体142には、板バネや、耐熱性ゴム、等を用いることができる。
スペーサ143は、略筒状に形成され、基端側に配設したビームエキスパンダ140と先端側に配設したパルス光集光レンズ141までの距離を一定に保ち、パルス光集光レンズ141によって集光される集光点FPの位置が変動するのを防いでいる。
【0037】
図4、表1を参照して本発明の効果を確認するための試験について説明する。
なお、本試験において、固体レーザ20は、3mm×3mm×10mmの角柱状に形成され、4側面と両端面とは平面研磨加工により精度良く仕上げられている。
図4(a−1)は、本発明の第1の実施形態における共振器の長手軸方向に沿った断面図、(a―2)は、横断面図、比較例として、固体レーザ20の長手方向の4側面に対してそれぞれ2点ずつの計8点を固定ネジ26zによって保持した構成を用い、(b−1)はその長手軸方向に沿った断面図、(b−2)は、その横断面図である。
本図(a―1)、(a―2)に示すように、本発明の実施例においては。ホルダ25の内周面の内2面251、252が、固体レーザ20の2側面211、212と密接し、総接触面積が60mmとなっており、本図(b−1)、(b−2)に示すように、8点の総接触面積は8mmとなっている。
このように固体レーザ20をホルダ26、26zのそれぞれに保持した共振器2、2zに長手軸方向に対して30Gの加速度に相当する力を加えたときに固体レーザ20がホルダ26、26zからズレない最大加重を耐震性の評価とし、そのときの長手軸に垂直な方向の固体レーザ2の単位断面積当たりの最大荷重を固定応力として評価し、共振器2、2を−40〜130℃の温度環境に晒したときの固体レーザ20の両端面(全反射鏡200、出力鏡204)の平行度を耐熱性の評価とした。
【0038】
具体的には、図5に示すような平行度測定装置(キャノン製:ZYGO)を用い、実施例及び比較例における固定応力、耐振性、接触面積の理論値に対して設定した荷重を負荷した固定方法でレーザ共振器2を固定治具に固定し、全反射鏡200、出力鏡204の平行度を計測した。
(1)先ず、レーザ共振器2(YAG)の全反射鏡200の平面度を平行度計測装置で計測する。
(2)平行度計測装置と角度分解能1秒の回転ステージの組合せでYAG先端の平面度が出るまで位値調整を行う。
回転ステージで図の矢印の方向に回しながら左右を調整する。
回転ステージに設けられた傾斜台を使って上下方向の角度(位値)調整する。
(3)YAGをインデックスで180°回転して固定する。
(4)出力鏡204の傾きを平行度計測装置で計測する。
(5)(4)で計測した傾きを全反射鏡200、出力鏡204の平行度とした。
【0039】
耐振性については、例えば、固体レーザ20が0.5gのとき、15gの荷重を光軸方向に作用させたとき、固体レーザ20がホルダ25、25zからずれなければ、30Gの加速度に対して耐久性を有することになる。
その結果を、表1に示す。表1に示すように、本発明の実施例においては、固定応力が、67g/mm、耐振性191G、平行度は、33秒であった。
一方、比較例においては、固定応力が186kg/mm、耐振性が558G、平行度が60秒であった。
【表1】

【0040】
レーザ共振器2の温度が−40〜130℃の範囲で変化しても、また、加速度30Gの衝撃に晒されても、光ファイバ11の出光部から第2の励起光レンズ121までの励起光学系とレーザ共振器2との間の距離が変化せず、ビームエキスパンダ140からパルス光集光レンズ141までの各光学部品の割れ、歪が発生することがない。
【0041】
図6、図7を参照して本発明の効果について説明する。図6において、励起光源として用いたLD駆動周波数を横軸とし、総エネルギ量を縦軸とし、上述の第1の実施形態として示した構成と上述の比較例についてLD駆動周波数の変化に対する総エネルギの変化を示す。
なお、LD駆動周波数は、対応するエンジン回転数に応じて増減され、また、固体レーザ20(レーザ媒質202)の温度は、LD駆動周波数に略比例しており、LD駆動周波数が高いほど発熱温度は高くなる。
比較例においては、エネルギの損失が大きいため、LD駆動周波数、即ち、固体レーザ20の温度に拘わらず。ほぼ一定の総エネルギ量となる。これは、比較例においては、固体レーザ20とホルダ26との間に空隙が存在し、その空隙が断熱層として作用して、LD駆動周波数が低いときでも充分な放熱が行われないためであると思料する。
本実施例では、LD駆動周波数の増加、即ち、固体レーザ20の温度上昇に伴い、総エネルギ量は徐々に減少するが、いずれのLD駆動周波数においても比較例よりも遙かに高い総エネルギ量のパルスレーザを発振することができる。
なお、総エネルギ量とは、本発明のレーザは1回の点火サイクル中に複数回のパルスレーザが発振されるが、前記複数回のパルスエネルギの総量を示す。
【0042】
図7に、光―光変換効率(%)を縦軸とし、LD駆動発振周波数(Hz)を横軸とし、本発明の実施例と比較例の測定結果を示す。
本図に示すように、比較例においては、光―光変換効率は、LD駆動周波数のよらず、略一定であるが、本実施例においては、LD駆動周波数の増加、即ち、固体レーザ20の温度上昇に伴い、光―光変換効率は徐々に減少するが、いずれのLD駆動周波数においても比較例よりも遙かに高い光―光変換効率でパルスレーザを発振することができる。
なお、光―光変換効率とは、励起光からパルス光に変換したときの変換効率を示し、パルス光エネルギ/励起光エネルギによって算出される値である。
【0043】
例えば、、従来のエンジン搭載を目指して開発したレーザ点火装置の特性では、非特許文献1の第3頁、表1に示すように、可飽和吸収体を入れない場合の光―光変換効率は、43%で、可飽和吸収体を入れた時の光−光変換効率は8%であり、レーザ共振器の電気−光変換効率は4%である。
このように、従来のレーザ共振器の変換効率が本発明のレーザ共振器に比べて低い理由は、
(1)1点火サイクル中に1パルスしか発振しないため励起光の損失が大きいこと、
(2)レーザ共振器が一体化されていないため光軸が歪んでいる可能性があること、
(3)側面励起方式であるため励起光の散乱、透過損失が大きいこと等によるものと推察される。
【0044】
可飽和吸収体を使ったレーザにおいて、変換効率を上げるには、
(1)励起光の立ち上がりを早くして矩形状に励起光をレーザ共振器に入射すること、
(2)励起光の集光強度を高くして発振間隔を短くすること、
(3)レーザ共振器冷却することで熱レンズ効果による共振モードの変化の防止と蛍光光のバンド幅の広がりを防止することがあげられる。
また、レーザ点火装置の場合、プラズマを発生するために必要なレーザ出力は1パルス当たり、3MW/cmであり、1パルス当たりの出力を低くすればパルスの発振間隔が短くなるのでその分効率が上がる。
一方、可飽和吸収体を使わないで、AOQswなどの別方式のQSWを使うと効率は上がる、AOQSWを制御するのに数キロボルトを発生する電源が必要でエンジンへの搭載が困難となる上に、AOQSW自体も体格が大きく小型化が困難である。
したがって、本発明によれば、極めて簡易な構成で、過剰な負荷を共振器2に与えることなく、光軸を歪ませることなく点火装置内に保持することが可能で、しかも、高いエネルギ変換効率を維持してパルスレーザを発振し、内燃機関のの点火に用いることが可能となる。
【0045】
図8、図9を参照して、本発明の第2の実施形態におけるレーザ媒質固定方法により固定されたレーザ共振器2aとこれを用いたレーザ点火装置1aについて説明する。
なお、上記実施形態と同様な構成については、同じ符号を付したので説明を省略し、相違点並びに本実施形態の効果について説明する。
【0046】
上記実施形態においては、ホルダ25の内周面のうち2面251、252に固体レーザ20の2側面211、212を弾性的に押圧して固定する方法を示したが、本実施形態においては、共振器2aとして、角柱状に形成した固体レーザ20の対角方向に分割した略半円柱状で、内側に略V字形の固体レーザ収容空間255A、250Bを区画した一対のホルダ25Aとホルダ25Bとで固体レーザ20を挟持し、それぞれの収容空間255Aの2側面251A、252Aと収容空間255Bの2側面253B、254Bとを対向する固体レーザ20の側面211、212、213、214のそれぞれに当接せしめると共に、ホルダ25A、ホルダ25Bの基端側と先端側とにおいて外周側に設けた溝部257A、257B、258A、258B内に略C字型に形成した弾性部材からなるC形止め輪(いわゆる軸用スナップリング)261a、262aを介装して中心方向に向かって押圧するようにして弾性的に保持せしめた点が相違する。
【0047】
本実施形態によれば、固体レーザ20の長手方向側面の4面211、212、213、214の全てが、ホルダ25A、25Bの内周面251A、252A、253B、254Bに弾性的に当接しているため極めて放熱性に優れており、さらに安定した出力を得ることができる。
特に、ホルダをホルダ25A、25Bの2つに分割しているので、ホルダ基体250A、250Bのそれぞれに略V字型の収容空間を加工する際に、鏡面研磨によって固体レーザ20の4側面211、212、213、214のそれぞれに当接する内周壁側面251A、252A、253B、254Bを精度良く加工できるため、極めて均一な力でホルダ25Aとホルダ25Bとが固体レーザ20を拘束、保持することができる。
【0048】
図8に示すような、本実施形態における固体レーザ20の固定方法を用いて一対のホルダ25A、25Bに挟持せしめて構成したレーザ共振器2aを、図9に示すように、上述の第1の実施形態におけるレーザ点火装置1と同様に、光ファイバ11、励起光集光手段12、パルス光集光手段14(140、141、142)、保護カバー15と共に同軸上に並べて配設し、略筒状のハウジング10内に収容して、本実施形態におけるレーザ点火装置1aを得る。
本実施形態によれば、上記実施形態と同様の効果に加え、ホルダ25A、25Bと固体レーザ20との接触面積が倍増するので、極めて良好な放熱性が得られる。
その結果、さらに温度変化や振動に対して耐久性の高い優れたレーザ点火装置が実現できる。
【0049】
図10を参照して本発明の第3の実施形態における固体レーザ20の固定方法を用いたレーザ共振器2bについて、説明する。
ホルダを一対のホルダ25Cとホルダ25Dとの2つに分けて、これらによって、固体レーザ20を挟持して、V字形溝の内周面251C、252C、253D、254Dを固体レーザ20の4側面211、212、213、214に弾性的に当接させる点は第2の実施形態と類似しているが、固定手段として、スナップリングのような弾性部材を用いるのではなく、本実施形態においては、一対のホルダ25Cとホルダ25Dとの対向する2面間に、略平板状に形成したインジュウム箔や黒鉛シート等の高い熱伝導性と伸縮性のある平板状弾性部材262bを介挿し、ホルダ25Cとホルダ25Dとを互いにボルト28を用いて螺結している点が相違する。
本実施形態においては、一対のホルダ25Ctoホルダ25Dとの間に平板状弾性部材262bが介在することによって、V字形溝の内周面251C、252C、253D、254Dが、固体レーザ20の4側面211、212、213、214を弾性的に押圧することになるので、上述の第2の実施形態と同様の効果が発揮される。
【0050】
本実施形態における固体レーザ20を一対のホルダ25C、25Dによって弾性的に挟持する方法を用いて構成されたレーザ共振器2bを上記実施形態と同様、光ファイバ11、励起光集光手段12、パルス光集光手段14(140、141、142)、保護カバー15と共に同軸上に並べて配設し、略筒状のハウジング10内に収容して、温度変化や振動に対して耐久性の高い優れたレーザ点火装置が実現できる。
なお、本実施形態において、平板状弾性部材262bを一対のホルダ24Cとホルダ25Dとの合わせ面に介挿した例を示したが、弾性部材をホルダ25C、25Dに設けたV字形溝の内周面251C、252C、253D、254Dと固体レーザ20の4側面211、212、213、214との間に介挿しても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 レーザ点火装置
10 ハウジング(共振器収容部)
101 励起光集光手段収容部
102 パルス光集光手段収容部
103 ネジ部
11 光ファイバ
12 励起光調整手段
120 励起光レンズ1
121 励起光レンズ2
13 キャップ(基端側固定部材)
14 パルス光集光手段
140 凹レンズ(ビームエキスパンダ)
141 パルス光集光レンズ
142 弾性部材
143 スペーサ
15 保護カバー
2 レーザ共振器
20 固体レーザ
200 入力鏡(全反射鏡)
201 ARコーティング膜
202 レーザ媒質
203 可飽和吸収体
204 出力鏡(部分反射鏡)
25 固体レーザホルダ(固体レーザ固定手段)
250 ホルダ基体
251 第1の支持面
252 第2の支持面
253、254 内壁面
255 固体レーザ収容空間
256 コーナー溝部
257、258 固定用弾性体保持部
261、262、263、264 固体レーザ固定用弾性体(固定用リブ)
27 弾性樹脂部材
3 内燃機関
30 シリンダヘッド
300 燃焼室
LZRPMP 励起光
LZRPLS パルス光
FP 集光点
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特表2011−501402号公報
【特許文献2】国際公開2010/086287
【特許文献3】特開平6−308553号公報
【非特許文献】
【0053】
【非特許文献1】G.Kroupa、 G.Franzz、 E.Winkeihofer、「Novel miniaturized high-energy Nd―YAG laser for spark ignition in internal combustion engines」、Optical Engineering 48(1)、014202−1−014202−5、 (January 20009)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全反射鏡と部分反射鏡との間に介装されたれーザ媒質の内部で励起光源から発振された励起光を共振させ、エネルギ密度の高いパルスレーザを発振するレーザ共振器に用いられる固体レーザの固定方法であって、
短い波長の励起光の入射は許容し、長い波長の光を全反射する全反射鏡からなる入射鏡と、短い波長の励起光の入射により長い波長の蛍光を放出するレーザ媒質と、該レーザ媒質から放射された光エネルギが所定のQ値以下のときには吸収し、所定のQ値以上のときには放出する受動Qスイッチを構成する可飽和吸収体及び部分反射鏡とを一体に形成して、角柱状に加工した固体レーザの長手方向の4側面の内、少なくとも2側面を、固体レーザ固定用ホルダを構成するホルダ基体の内側に区画した固体レーザ収容空間の内周側の2側面に対して、それぞれの裏面側から固体レーザ固定用弾性体によって弾性的に押圧して、広い接触面積で当接せしめ、上記固体レーザの中心軸と上記固体レーザ固定用ホルダの中心軸とが一致した状態で弾性的に保持することを特徴とする固体レーザの固定方法。
【請求項2】
上記固体レーザ固定用弾性体が、上記固体レーザ固定用ホルダと一体的に又は別体で設けられ、上記固体レーザの上端部と下端部とにおいて、上記固体レーザ収容空間の内側に向かって傾倒せしめた舌片状の板バネ部材からなり、上記固体レーザ収容空間の2つの内周面のそれぞれに直交する方向に上記固体レーザを押圧する請求項1に記載の固体レーザの固定方法。
【請求項3】
角柱状に形成した上記固体レーザの対角方向に分割した略半円柱状で、内側に略V字形の固体レーザ収容空間を区画した一対の固体レーザ固定用ホルダによって上記固体レーザを挟持し、それぞれの収容空間の2側面を対向する上記固体レーザの2側面のそれぞれに当接せしめると共に、上記固体レーザ固定用弾性体によって押圧する請求項1に記載の固体レーザの固定方法。
【請求項4】
上記固体レーザ固定用弾性体が、略C字型に形成した弾性部材からなるC形止め輪であって、上記一対の固体レーザ固定用ホルダをその外周側から中心方向に向かって押圧する請求項3に記載の固体レーザの固定方法。
【請求項5】
上記固体レーザ固定用弾性体が、略平板状に形成した弾性部材からなり、上記一対の固体レーザ固定用ホルダの互いに対向する2面間、又は、上記固体レーザと上記固体レーザ固定用ホルダとの間に介挿する請求項3又は4に記載の固体レーザの固定方法。
【請求項6】
上記固体レーザと上記固体レーザ収容空間との間に空隙が存在する場合に、該空隙内に熱伝導率が高く弾性を有する樹脂部材を充填したことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の固体レーザの固定方法。
【請求項7】
外部に設けた励起光源から励起光集光手段を介して入射された励起光をレーザ共振器の内部で共振増幅したエネルギ密度の高いパルス光とし、該パルス光をパルス光集光手段を介して、内燃機関の燃焼室の内側に集光してエネルギ密度の極めて高いプラズマを発生させて混合気の点火を行うレーザ点火装置であって、
上記レーザ共振器が、短い波長の励起光の入射は許容し、長い波長の光を全反射する全反射鏡からなる入射鏡と、短い波長の励起光の入射により長い波長の蛍光を放出するレーザ媒質と、該レーザ媒質から放射された光エネルギが所定のQ値以下のときには吸収し、所定のQ値以上のときには放出する受動Qスイッチを構成する可飽和吸収体及び部分反射鏡とを一体に形成して、角柱状に加工した固体レーザと、これを保持する固体レーザ固定用ホルダとによって構成され、請求項1ないし5のいずれかに記載の固体レーザの固定方法によって上記固体レーザの長手方向側面の内、少なくとも2面を上記固体レーザ固定用ホルダに区画した固体レーザ収容空間の内周壁の内の2面に弾性的に押圧して固定せしめたことを特徴とするレーザ点火装置。
【請求項8】
上記励起光集光手段と上記共振器と上記パルス光集光手段とを光軸を揃えて配設して筒状のハウジングの内側に収容する共に、の上記励起光集光手段と上記共振器と上記パルス光集光手段との間のいずれかの位置に、高い熱伝導率と伸縮性のある弾性部材を介挿した請求項7に記載のレーザ点火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−16678(P2013−16678A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148938(P2011−148938)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】