説明

固体撮像素子の有効画素領域の設定方法及び撮像装置の製造方法

【課題】簡易な測定で、固体撮像素子の有効画素領域の中心と対物光学系の光軸とを一致させ、有効画素領域の周辺の光量のばらつきをなくすことができる固体撮像素子の有効画素領域の設定方法を提供する。
【解決手段】白色光を撮像した固体撮像素子の中央の領域に属する画素及び、中心から互いに放射状に位置し、かつ前記白色光が結像している領域及び結像していない領域を含むように位置する4箇所の領域について、前記白色光の撮像結果の評価値を測定する。算出された評価値から前記固体撮像素子の中心と前記白色光が結像している領域とのずれ量を算出し、前記固体撮像素子の中心から前記算出されたずれ量だけ補正した位置を中心として有効画素領域を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体撮像素子の有効画素領域の設定方法に関し、より詳細には領域周辺の光量のバランスを適正化する固体撮像素子の有効画素領域の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等の製造では、CCDやCMOSといった固体撮像素子の有効画素領域の中心と対物光学系の光軸とを一致させ、有効画素領域周辺の光量のばらつきをなくすことが必要不可欠である。固体撮像素子の有効画素領域の中心と対物光学系の光軸との間にずれがあり、有効画素領域周辺の光量がばらついてしまうと、撮影された画像の周辺の明るさ等がアンバランスなものになってしまうためである。
【0003】
従前は、撮像装置の製造工程において、固体撮像素子の設置位置と対物光学系等のレンズユニットの設置位置との関係を、測定器等を使用して調整ながら、その固体撮像素子において予め設定された有効画素領域の中心と対物光学系の光軸が一致するように組み立てを行っていた。しかし、製造する撮像装置一つ一つに対し測定と調整を行いながら組み立てを実施するのは、効率が悪く時間がかかり、さらにはコストアップにもつながってしまう。
【0004】
そこで、事前にいくつかのサンプルに対し、上述のような測定を実施し、それらの測定結果から、そのサンプルと同一の機種に対してある程度信用できる有効画素領域の中心の位置を特定し、製造工程においては対物撮像系等のレンズユニットと固体撮像素子の組み立てを行った後に、特定された中心の位置に基づき有効画素領域を設定していく手法がとられるようになった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記手法のように、サンプルから特定した有効画素領域の中心の位置を全ての固体に適用すると、固体毎に生じる対物光学系や固体撮像素子の設置位置の微妙なずれから、有効画素領域の中心と光軸とがずれてしまい、有効画素領域の周辺光量がばらつく固体が出てきてしまう。従って、いかにして対物光学系と固体撮像素子の組み立てを終えた後であっても、固体毎に適切な有効画素領域を設定するかが問題となる。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、レンズユニットと固体撮像素子を組み立てた後でも、簡易な測定で、固体撮像素子の有効画素領域の中心と対物光学系の光軸とを一致させ、有効画素領域の周辺の光量のばらつきをなくすことができる固体撮像素子の有効画素領域の設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は固体撮像素子(301)が白色光を撮像する工程と、前記固体撮像素子(301)の中央の領域に属する画素について、前記白色光の撮像結果の評価値を算出する工程と、前記固体撮像素子(301)の中心から互いに放射状に位置し、かつ前記白色光が結像している領域(302)及び結像していない領域(303)含むように位置する第一の測定領域(501)、第二の測定領域(502)、第三の測定領域(503)、及び第四の測定領域(504)について前記白色光の撮像結果の評価値を測定する工程と、前記第一及び第二の測定領域の評価値の和と前記第三及び前記第四の評価値の和の差を第一の差分、及び前記第一及び第三の測定領域の評価値の和と前記第二及び第四の測定領域の和の差を第二の差分とを算出する工程と、前記第一の差分及び前記第二の差分を前記中央の領域に属する画素についての評価値で除算し、前記固体撮像素子(301)の中心と前記白色光が結像している領域とのずれ量を算出する工程と、前記固体撮像素子の中心から前記算出されたずれ量だけ補正した位置を中心として有効画素領域を設定する工程とを含むことを特徴とする固体撮像素子の有効画素領域の設定方法を提供する。
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は対物光学系を設置する工程と、固体撮像素子(301)を設置する工程と、固体撮像素子(301)が白色光を撮像する工程と、前記固体撮像素子(301)の中央の領域に属する画素について、前記白色光の撮像結果の評価値を算出する工程と、前記固体撮像素子(301)の中心から互いに放射状に位置し、かつ前記白色光が結像している領域(302)及び結像していない領域(303)含むように位置する第一の測定領域(501)、第二の測定領域(502)、第三の測定領域(503)、及び第四の測定領域(504)について前記白色光の撮像結果の評価値を測定する工程と、前記第一及び第二の測定領域の評価値の和と前記第三及び前記第四の評価値の和の差を第一の差分、及び前記第一及び第三の測定領域の評価値の和と前記第二及び第四の測定領域の和の差を第二の差分とを算出する工程と、前記第一の差分及び前記第二の差分を前記中央の領域に属する画素についての評価値で除算し、前記固体撮像素子(301)の中心と前記白色光が結像している領域とのずれ量を算出する工程と、前記固体撮像素子の中心から前記算出されたずれ量だけ補正した位置を中心として有効画素領域を設定する工程とからことを特徴とする撮像装置の製造方法を提供する。
【0009】
上述の前記固体撮像素子(301)はCMOSセンサであり、前記評価値はGb信号のOB値に基づいてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レンズユニットと固体撮像素子を組み立てた後でも、簡易な測定で、固体撮像素子の有効画素領域の中心と対物光学系の光軸とを一致させ、有効画素領域の周辺の光量のばらつきのない有効画素領域の設定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る固体撮像素子の有効画素領域の設定方法の手順を説明するためのフローチャートである
【図2】本発明の実施形態に係る白色光の照射を説明するための図である。
【図3】白色光が固体撮像素子上で結像した状態を説明するための図である。
【図4】固体撮像素子の中央測定領域の測定を説明するための図である。
【図5】固体撮像素子の所定の4箇所の測定領域について説明するための図である。
【図6】固体撮像素子の所定の4箇所の測定領域の測定を説明するための図である。
【図7】有効画素領域の設定について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る固体撮像素子の有効画素領域の設定方法の手順を説明するためのフローチャートである。
まず対物光学系及び固体撮像素子の組立が完了した撮像装置に対し、白色光を照射する(ステップS101)。白色光の照射は、例えば図2に示すように白色光を照射するライトパネル203の照射面と撮像装置201の対物光学系の光軸202とが垂直になるように、それぞれを設置する。そして、ライトパネル203から均一な白色光を撮像装置201に向けて照射する。
【0014】
ステップS101で白色光を照射すると、その白色光を撮影し、固体撮像素子に結像させる(ステップS102)。各種光学系及び絞り等を通過した白色光は、図3に示すように、固体撮像素子301に結像する。すなわち白色光がいわゆるケラレ円像の形で結像する有効光量領域302(図3中で白塗りでしめした領域)と、白色光の結像しない遮光領域303(図3中でハッチングで示した領域)とが固体撮像素子301上に現れる。
【0015】
ステップS102で固体撮像素子に結像した白色光に関し、固体撮像素子の中央の所定の領域の1画素あたりの評価値を測定する(ステップS103)。図4にこの評価値の測定について説明する図を示す。固体撮像素子301の中心401を中心とした所定の領域402が測定対象領域として予め定められている。以下、この所定の領域402を中央測定領域402という。この中央測定領域402の大きさは、例えば縦辺16画素、横辺16画素の計256画素分と定める。そして、この256画素からなる中央測定領域402について、評価値を測定する。評価値は、例えば固体撮像素子がCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサからなる場合は、中央測定領域401から検出されるR信号、Gr信号、Gb信号、及びB信号のうち、Gr信号のOB(Optical Black)値から評価値を算出する。
【0016】
そして、中央測定領域402全体の評価値をその領域に含まれる全画素数で除算し、1画素当たりの評価値として算出する。ここで、初めに所定の領域について測定及び評価値の算出を行ったのは、画素毎の測定及び評価値の算出を行うと、測定する画素毎のばらつきを考慮できないためである。所定の領域の評価値から画素毎の評価値の平均値を算出することで、前記ばらつきを排除した評価を行うことができる。
【0017】
ステップS103で、固体撮像素子の中央測定領域を測定すると、次に固体撮像素子上の所定の4箇所の測定領域の評価値を測定する(ステップS104)。図5に、4箇所の測定領域について説明する概念図を示す。4つの測定領域501、502、503、及び504の大きさは、ステップS103で使用した中央測定領域と等しいものとする。また各測定領域は、固体撮像素子の中心401を中心として放射上に広がるように位置しており、かつ各測定領域有効光量領域302と遮光領域303の両領域が含まれる位置となるように予め定められている。
【0018】
図6に、4箇所の測定領域の評価値の測定について説明するための図を示す。上述の通り対物光学系及び固体撮像素子の組み立て時に生じる微妙なずれから、光軸、すなわち有効光量領域の中心601と固体撮像素子の中心401とは正確に一致しない。また、各測定領域501、502、503及び504に含まれる有効光量領域と遮光領域との面積の比も、それぞれの領域によって異なったものとなる。
【0019】
そこで、まず4箇所の測定領域それぞれについて、ステップS103で中央測定領域の評価値を測定したのと同様の方法で、評価値を測定する。すなわち例えば固体撮像素子がCMOSセンサであった場合は、各領域から検出されるR信号、Gr信号、Gb信号、及びB信号のうち、Gr信号のOB(Optical Black)値から評価値を算出する。
【0020】
ステップS104で4箇所の測定領域の評価値が算出されると、各領域の評価値から、有効光量領域の中心と固体撮像素子の中心との水平方向のずれを検出する(ステップS105)。このずれの検出は、具体的には次のようにして行われる。
【0021】
測定領域501の評価値をAD1、測定領域502の評価値をAD2、測定領域の評価値をAD3、及び測定領域504の評価値をAD4とした場合、以下の式(1)及び式(2)から水平方向の評価値ADH1及びADH2を算出する。
【0022】
ADH1=AD1+AD2 ・・・(1)
【0023】
ADH2=AD3+AD4 ・・・(2)
【0024】
そして、ADH1とADH2の差から水平方向の評価値の差分を算出する。この差分が算出された場合は、固体撮像素子の中心と光軸との水平方向のずれが検出されたものとする。
【0025】
ステップS105で、固体撮像素子の中心と光軸との水平方向のずれが検出された場合(ステップS105でYES)、この水平方向のずれから有効画素領域の中心の水平位置の特定を行う(ステップS106)。具体的には、ステップS105で算出された水平方向の評価値の差分を、ステップS103で算出した中央測定領域の1画素当たりの評価値で除算し、水平方向のずれの量を画素数で算出する。そして固体撮像素子の中心から算出されたずれ量だけずれた位置を、有効画素領域の中心の水平位置と特定する。
【0026】
ステップS106で有効画素領域の中心の水平位置を特定すると、或はステップS105で固体撮像素子の中心と光軸との間に水平方向のずれが検出されなかった場合は(ステップS105でNO)、各領域の評価値から、有効光量領域の中心と固体撮像素子の中心との垂直方向のずれを検出する(ステップS107)。このずれの検出は、具体的には次のようにして行われる。
【0027】
ステップS105と同様に各測定領域の評価値を使用し、以下の式(3)及び式(4)から垂直方向の評価値ADV1及びADV2を算出する。
【0028】
ADV1=AD1+AD3 ・・・(3)
【0029】
ADV2=AD2+AD4 ・・・(4)
【0030】
そして、ADV1とADV2の差から垂直方向の評価値の差分を算出する。この差分が算出された場合は、固体撮像素子の中心と光軸との水平方向のずれが検出されたものとする。
【0031】
ステップS107で、固体撮像素子の中心と光軸との垂直方向のずれが検出された場合(ステップS107でYES)、この垂直方向のずれから有効画素領域の中心の垂直位置の特定を行う(ステップS108)。具体的には、ステップS107で算出された垂直方向の評価値の差分を、ステップS103で算出した中央測定領域の1画素当たりの評価値で除算し、垂直方向のずれの量を画素数で算出する。そして固体撮像素子の中心から算出されたずれ量だけずれた位置を、有効画素領域の中心の垂直位置と特定する。
【0032】
ステップS108で有効画素領域の中心の垂直位置を特定すると、或はステップS107で固体撮像素子の中心と光軸との間に水平方向のずれが検出されなかった場合は(ステップS107でNO)、有効画素領域の設定を行う(ステップS109)。図7にこの有効画素領域の設定処理を説明するための図を示す。
【0033】
上述の各ステップを通して特定された有効画素領域の中心の水平位置及び垂直位置は、有効光量領域の中心601と一致することとなる。そしてこの有効画素領域の中心とする予め定められた大きさを有する領域を、その撮像装置の有効画素領域701として設定する。
【0034】
以上のようにして固体撮像素子の有効画素領域を設定することで、レンズユニットと固体撮像素子を組み立てた後でも、簡易な測定で、固体撮像素子の有効画素領域の中心と対物光学系の光軸とが一致した撮像装置を製造することができる。
【0035】
なお、上記実施例では、有効画素領域の中心の特定を水平位置及び垂直位置の順に実施したが、垂直位置及び水平位置の順に実施しても、或は水平位置及び垂直位置の特定を同時に実施しても本発明の目的を達成できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
301 固体撮像素子
302 有効光量領域
303 遮光領域
401 固体撮像素子の中心
601 有効光量領域の中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体撮像素子が白色光を撮像する工程と、
前記固体撮像素子の中央の領域に属する画素について、前記白色光の撮像結果の評価値を算出する工程と、
前記固体撮像素子の中心から互いに放射状に位置し、かつ前記白色光が結像している領域及び結像していない領域含むように位置する第一の測定領域、第二の測定領域、第三の測定領域、及び第四の測定領域について前記白色光の撮像結果の評価値を測定する工程と、
前記第一及び第二の測定領域の評価値の和と前記第三及び前記第四の評価値の和の差を第一の差分、及び前記第一及び第三の測定領域の評価値の和と前記第二及び第四の測定領域の和の差を第二の差分とを算出する工程と、
前記第一の差分及び前記第二の差分を前記中央の領域に属する画素についての評価値で除算し、前記固体撮像素子の中心と前記白色光が結像している領域とのずれ量を算出する工程と、
前記固体撮像素子の中心から前記算出されたずれ量だけ補正した位置を中心として有効画素領域を設定する工程とを含むことを特徴とする固体撮像素子の有効画素領域の設定方法。
【請求項2】
対物光学系を設置する工程と、
固体撮像素子を設置する工程と、
前記固体撮像素子が白色光を撮像する工程と、
前記固体撮像素子の中央の領域に属する画素について、前記白色光の撮像結果の評価値を算出する工程と、
前記固体撮像素子の中心から互いに放射状に位置し、かつ前記白色光が結像している領域及び結像していない領域含むように位置する第一の測定領域、第二の測定領域、第三の測定領域、及び第四の測定領域について前記白色光の撮像結果の評価値を測定する工程と、
前記第一及び第二の測定領域の評価値の和と前記第三及び前記第四の評価値の和の差を第一の差分、及び前記第一及び第三の測定領域の評価値の和と前記第二及び第四の測定領域の和の差を第二の差分とを算出する工程と、
前記第一の差分及び前記第二の差分を前記中央の領域に属する画素についての評価値で除算し、前記固体撮像素子の中心と前記白色光が結像している領域とのずれ量を算出する工程と、
前記固体撮像素子の中心から前記算出されたずれ量だけ補正した位置を中心として有効画素領域を設定する工程とを含むことを特徴とする撮像装置の製造方法。
【請求項3】
前記固体撮像素子はCMOSセンサであり、
前記評価値はGb信号のOB値に基づくことを特徴とする請求項1に記載の固体撮像素子の有効画素領域の設定方法。
【請求項4】
前記固体撮像素子はCMOSセンサであり、
前記評価値はGb信号のOB値に基づくことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−165206(P2012−165206A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24398(P2011−24398)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】