説明

固体支持体マトリックスとしてのイオン液体再生セルロース複合材

再生セルロース、第一活性物質、第二活性物質およびリンカーを含む複合材を開示する。イオン液体の使用を伴う該複合材の作製方法も開示する。該開示複合材から作製される物品をさらに開示する。本発明は特に、再生セルロースマトリックス、該再生セルロースのマトリックス内に実質的に均一に分布している第一活性物質、リンカーおよび第二活性物質を含み、該リンカーが、該第一および第二活性物質に結合している、セルロース/活性物質複合材を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2005年6月29日に出願された、米国仮特許出願第60/694,902号の優先権を主張する。米国仮特許出願第60/694,902号は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
本明細書に開示する主題は、一般に、セルロース複合材に、およびイオン液体を使用して該複合材を作製する方法に関する。本明細書中で説明するセルロース組成物の使用方法も開示する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
捕捉材料は、ある環境内で自由に移動する(例えば、解離する、溶解するまたは拡散する)能力に何らかの制限がある物質である。捕捉材料の幾つかの例には、マイクロカプセルに封入された生物活性剤、支持体上にコーティングされた活性剤、ビーズに共有結合している酵素、またはゲルもしくは繊維マトリックスに絡まっている高分子がある。制御放出システム、構造修飾剤およびセンサーまたは反応性材料などの幅広い多数の用途を有する捕捉材料およびそれらの作製方法は、重要な研究分野である。
【0004】
一般に、捕捉材料は、膜、コーティングまたはカプセルとして調合される。こうした材料を形成するための現在法としては、乳化重合、界面重合、溶解、乳化、ゲル化、噴霧乾燥、真空コーティング、および多孔質粒子への吸着が挙げられる。これらの方法において使用される一般的な材料としては、ポリマー、親水コロイド、糖、ワックス、脂肪、金属および金属酸化物が挙げられる。
【0005】
捕捉液体材料の制御放出のための膜、コーティング、カプセルなどの使用は、周知である。例えば、制御放出材料は、グラフィックアート材料、医薬、食品および農薬調合物の作製に使用されている。農業において、制御放出技術は、除草薬、殺虫剤、殺真菌剤、殺菌剤および肥料の有効性を向上させた。農業以外の用途としては、カプセル封入された染料、インク、医薬品、着香剤および芳香剤が挙げられる。
【0006】
制御放出材料の最も一般的な形態は、コーティングされた液滴またはマイクロカプセル、コーティングされた固体(多孔質粒子と非多孔質粒子を両方を含む)、およびコーティングされた固体粒子凝集体である。幾つかの事例では、カプセルが水と接触した状態に置かれたとき封入材料を放出する、水溶性封入用フィルムが望まれる。他のコーティングは、カプセルが外力により破裂させられたまたは小塊に砕かれたとき封入材料を放出するように設計される。尚、さらなるコーティングは、実際多孔性であり、それらの気孔を通して拡散することにより遅い速度で捕捉材料を周囲の媒質に放出する。
【0007】
他の材料は、界面活性剤と混合された有機溶媒にその材料を溶解することにより乳化性濃縮物として調合されるか、油性薬剤として調合されている。固体形態の場合、殺虫剤は、水和剤(殺虫剤を微粉鉱物もしくは珪藻土に吸着させる)として、粉剤として、または顆粒として調合されている。
【0008】
酵素およびタンパク質が、捕捉のための人気材料となってきた。例えば、固体支持体上への酵素の捕捉は、タンパク質安定化ならびに反応系からの触媒の分離および回収の簡単な手段として、広範に研究されている(非特許文献1;非特許文献2)。固体支持体上への酵素の捕捉は、pHおよび温度に対する安定性を向上させることができ、ならびに反応混合物からの酵素の分離を助長することができ、センサー用途向けの酵素電極の形成も助長することができる。
【0009】
酵素および他のタンパク質を固定するために利用できる主な方法は4つである:吸着、共有結合、捕捉、および膜への閉じ込め。これらのために使用される代表的な材料としては、シリカ、ポリアニリン、アクリル樹脂、キチン、およびセルロースが挙げられる(非特許文献1;非特許文献3)。ゲルまたは繊維内への酵素の捕捉は、低分子量基質および生成物を伴うプロセスにおいて一般に用いられる。微生物、動物および植物細胞の固定化のためにアルギン酸カルシウムへの捕捉も用いられる。
【0010】
タンパク質および他の生体分子を捕捉するために、親水性であり湿潤性であるセルロースの使用は、相溶性環境を作るのに役立つため、疎水性材料と比較して望ましい場合がある(非特許文献4;非特許文献5)。加えて、セルロースは、頑丈であり、且つ、生理条件下で化学的に不活性であり、且つ、非毒性であり、これらのすべてが、タンパク質の生き残り重要であり、工業的加工に有利である。1つの酵素固定化法は、多糖類活性化を用い、この方法では、セルロースビーズをアルカリ条件下で臭化シアンと反応させる。その後、その生成された中間体を可溶性酵素と共有結合させる。ジクロロメタン中の酵素と酢酸セルロースのエマルジョンの調合、その後の繊維の押出しにより、酢酸セルロース繊維内に酵素を捕捉することもできる。
【0011】
他の例では、セルロースを溶解し、再構成することによって、材料を捕捉することができる。しかし、銅アンモニアおよびザンテートプロセスをはじめとする伝統的なセルロース溶解プロセスは、多くの場合、複雑で非能率的であるか費用がかかり、一般に高いイオン強度を有する普通でない溶媒の使用を必要とし、比較的苛酷な条件下で使用される(非特許文献6)。こうした溶媒としては、二硫化炭素、N−メチルモルホリン−N−オキシド(NMMNO)、N,N−ジメチルアセトアミドと塩化リチウムの混合物(DMAC/LiCl)、ジメチルイミダゾロン/LiCl、濃無機塩水溶液(例えば、ZnCl/HO、Ca(SCN)/HO)、濃無機酸(例えば、HSO/HPO)、または溶融塩水和物(例えば、LiClO・3HO、NaSCN/KSCN/LiSCN/HO)が挙げられる。これらのセルロース溶解プロセスは、セルロースポリマー骨格を破壊し、その結果、1分子当たり約1500以上のグルコース単位という天然の、より大きな数ではなく、1分子当たり平均で約500から約600のグルコース単位を含有する再生産物を生じさせる。加えて、レーヨンの形成に使用されるものなどのプロセスは、ザンテート中間体経由で進み、ならびにザンテート基含有セルロースの場合のように、残存する誘導体化した(置換基が結合した)グルコース残基を多少残す傾向がある。
【0012】
特許文献1には、ポリエチレンイミン(PEI)を含有する再生セルロースを作製するためのセルロースのN−メチルモルホリン−N−オキシド(NMMNO)溶液の使用が開示されている。この特許には、溶解前に酵素セルラーゼでの前処理を用いてセルロースの分子量を減らすべきであると開示されている。加えて、溶解に用いられる温度でNMMNOが分解して、分解産物としてN−メチルモルホリンを生じさせ、それを蒸気蒸留によりセルロース溶液から除去することができたと開示されている。PEIの存在は、NMMNOの分解を減らすと言われている。
【0013】
可溶化セルロースを生じさせることができる他のプロセス、セルロースに結合されたままであるように意図された置換基を形成することによって、例えば、酢酸および酪酸エステルのようなセルロースエステルを作製する、またはカルボキシメチル、メチル、エチル、C〜C 2−ヒドロキシアルキル(ヒドロキシエチルもしくはヒドロキシプロピル)などの基をセルロースポリマーに付加させることによって、そうする。こうした誘導体(置換基)形成は、通常、セルロース重合度の減少ももたらし、そのため、結果として生じる生成物が含有する1分子当たりのグルコース単位は、それを作製したセルロースより少ない。
【0014】
この背景に対して、捕捉材料の多くの調合物が、エマルジョンに使用される有機溶媒に起因する環境汚染、水和剤に由来する微粉に起因する環境汚染、および望ましくない副生成物の除去に付随する費用など、様々な問題を提起している。また、こうした組成物におけるセルロースの使用は、一般に、多数の欠点を伴い、最も顕著なところでは、その表面に生体分子を取り付けるために必要な広範な化学的活性化および官能化の必要を伴う(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9)。セルロースの可溶化を伴う方法は、セルロース骨格の破壊、珍しい溶媒および追加の段階の必要、ならびにセルロースの望ましくない誘導体化を被る。さらに、長期残効性を有するこれらの調合物には、通常の施用の際に用いられるよりはるかに多い量の捕捉材料が必要とされることがあり、この増加量は、環境に影響を及ぼすまたは安全性の問題を生じさせることがある。
【0015】
こうした捕捉材料の作製は、技術的に難しく、環境的に有害であるため、捕捉プロセスを減らすまたは単純にすることができる方法論が、強く求められている。乳剤、界面重合粉末または水和剤に有効に取って代わることができ、且つ、より安全に使用できる、優れた調合物も必要とされている。また、セルロース系材料の利用に対処するプロセスおよび調合物の要求は、長期間にわたって高い有効度を維持する調合物には非常に妥当である。これらおよび他の必要を満たす組成物および方法を、本明細書に開示する。
【特許文献1】米国特許第5,792,399号明細書
【非特許文献1】Gemeiner,In Enzyme Engineering,Gemeiner,Ed.,Ellis Horwood Series in Biochemistry and Biotechnology,Ellis Horwood Limited:West Sussex,England, 1992,pp158−179
【非特許文献2】Mulder,Basic Principles of Membrane Technology,Kluwer Academic Publishers:Dordrecht,1991
【非特許文献3】Krajewska,Enz Microb Technol 2004,35:126−139
【非特許文献4】Tillerら,Biotechnol Appl Biochem 1999,30:155−162
【非特許文献5】Sakai,J Membr Sci 1994,96:91−130
【非特許文献6】Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Edition 1993,Vol.5,p.476−563
【非特許文献7】Klemmら,Comprehensive Cellulose Chemistry,Wiley VCH:Chichester,1998;Vol.2.
【非特許文献8】Chesneyら,Green Chem 2000,2:57−62
【非特許文献9】Stoellnerら,Anal Biochem 2001,304:157−165
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
(概要)
本明細書において具体的に表しおおまかに説明する開示材料、化合物、組成物、物品、装置および方法の目的に従って開示する主題は、1つの態様において、化合物および組成物ならびにそうした化合物および組成物の作製および使用方法に関する。さらなる態様において、開示する主題は、セルロース/活性物質複合材に関する。イオン液体の使用を伴う該開示複合材の製造方法も開示する。尚、さらなる態様において開示する主題は、該開示複合材から作製される物品に関する。
【0017】
さらなる利点は、あとに続く説明の中で一部は述べ、一部はその説明から明らかとなり、または下で説明する態様の実施により知ることができる。下で説明する利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘する要素および組み合わせによって、実現および達成されるであろう。上述の一般的な説明と後続の詳細な説明は、両方とも、例示的なものであり、説明のためのものでしかなく、限定ではないと、解釈しなければならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(詳細な説明)
本明細書において説明する材料、化合物、組成物、物品、装置および方法は、開示する主題の特定の態様およびその中に含まれる実施例についての後続の詳細な説明ならびに図を参照することによって、より容易に理解することができる。
【0019】
本材料、化合物、組成物、物品、装置および方法を開示し、説明する前に、下で説明する態様が、特定の合成方法または特定の試薬に限定されず、それ自体、勿論、変わることがあることを理解しなければならない。本明細書において用いる専門用語が、特定の態様を説明するためだけのものであり、限定するためのものではないことも、理解しなければならない。
【0020】
また、本明細書全体を通して、様々な出版物に言及している。本開示物が属する技術分野の状態をより詳細に説明するために、これらの出版物の開示は、それら全体が参照により本出願に取り入れられている。開示する参照文献は、その参照に依存する文の中で論じている、それらに含まれている材料についても、参照により本明細書に個々におよび特別に取り入れられている。
【0021】
一般定義
本明細書および後続の特許請求の範囲において多数の用語に言及することになるが、それらは、以下の意味を有すると定義することにする。
【0022】
本明細書の説明および特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」という語およびこの語の他の形、例えば、その現在進行形「comprising」および三人称単数形「comprises」は、限定ではなく包含を意味し、例えば、他の添加剤、成分、整数または段階を除外するためのものではない。
【0023】
本説明および添付の特許請求の範囲において用いる場合、単数形「a」、[an」、および「the」は、その文脈に明確に別の指示が無い限り、複数の指示対象を包含する。従って、例えば、「1つの組成物(a composition)」への言及は、2つ以上の組成物の混合物を包含し、「1つの薬剤(an agent)」への言及は、2つ以上のそうした薬剤の混合物を包含し、「その成分(the component)」への言及は、2つ以上のそうした成分の混合物を包含する、等々。
【0024】
「任意の」または「場合によっては」は、後に記載されている事象または状況が、発生することもあり、しないこともあること、ならびにその記載が、その事象または状況が発生する事例およびしない事例を含むことを意味する。例えば、「Lは、任意のリンカーである」という文言は、Lが、その複合材中に存在することもあり、しないこともあること、ならびにLが存在する(例えば、第一活性物質を第二活性物質に連結させる)場合の複合材とLが存在しない場合の複合材(この場合、第一および第二活性物質は、互いに直接結合している)の両方を含むことを意味する。
【0025】
本明細書において、範囲を、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の値までと、表示することがある。こうした範囲が表示されているとき、別の態様は、ある特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、値が、先行する「約」の使用によって近似値として表示されているとき、その特定の値が別の態様を構成すると解釈されよう。さらに、複数の範囲の各々の終点は、他の終点に関して有意でもあり、他の終点とは無関係に有意でもあると解釈されよう。また、本明細書には多数の値が開示されていると解釈し、各値は、その値自体に加えて、「約」その特定の値としても本明細書に開示されていると解釈する。例えば、値「10」が、開示されている場合には、「約10」も開示されている。また、ある値が開示されているときには、当業者が適切に解釈して、その値「より小さいまたは(その値)である」、「その値より大きいか、その値である」およびそれら値の間の可能な範囲も開示されていると解釈する。例えば、値「10」が開示されている場合には、「10より小さいか、10である」ならびに「10より大きいか、10である」も開示されている。また、本出願全体にわたって、データは、多数の異なる形式で提供されていると解釈し、このデータは、終点および出発点、ならびにそれらのデータ点のあらゆる組み合わせの範囲を表すと解釈する。例えば、特定のデータ点「10」および特定のデータ点「15」が開示されている場合、10と15の間はもちろん、10および15より大きい、10および15より大きいか10および15である、10および15より小さい、10および15より小さいか10および15である、ならびに10および15であると開示されていると解釈する。また、2つの特定の単位の間の各々の単位も開示されていると解釈する。例えば、10および15が開示されている場合には、11、12、13および14も開示されている。
【0026】
本明細書および締めくくりの特許請求の範囲における組成物中の特定の元素または成分の重量部への言及は、重量部が表示されている組成物または製品中の元素または成分といずれかの他の元素または成分との重量関係を示す。従って、2重量部の成分Xおよび5重量部の成分Yを含有する化合物において、XおよびYは、2:5の重量比で存在し、追加の成分がその化合物に含まれているかどうかにかかわらず前述の比で存在する。
【0027】
成分の重量パーセント(重量%)は、相反する指定が特になければ、その成分が含まれる調合物または組成物の総重量に基づく。
【0028】
「捕捉された(entrapped)」またはこの語の他の形、例えば現在形「entrap」または名詞形「entrapment」は、分子の自由運動に関する永久的または一時的制限を意味する。これらの用語は、特定の移動制限様式または方法を包含する意味を有さず、例えば、捕捉分子は、ビーズに化学的に結合されているもしくはつなぎ留められていることがあり、マトリックス内に物理的に包み込まれているもしくは絡み付いていることがあり、粒子にイオン的にもしくは静電的に付けられていることがあり、水素結合により捕捉されていることがあり、またはその自由運動範囲が磁気的に制約されていることがある。また、これらの用語は、特定の移動制限度を包含する意味を有さない。例えば、捕捉化合物は、その移動範囲または拡散能がわずかにしか制限されていないことがあり、またはその運動能が実質的に制約されていることがある。本明細書で用いる場合、捕捉されたは、封入された、付けられた、結合された、接着された、吸着された、吸収された、固定化された、閉じ込められた、〜内に分布した、埋め込まれた、および絡み付いたと同義である。
【0029】
化学的定義
本明細書で用いる用語「置換されている」は、有機化合物のすべての許される置換基を包含すると考えられる。広い態様において、許される置換基としては、有機化合物の非環式、環式、分枝状および非分枝状、炭素環式および複素環式、ならびに芳香族および非芳香族置換基が挙げられる。実例となる置換基としては、例えば、下で説明するものが挙げられる。許される置換基は、適切な有機化合物について、1つ以上あることがあり、同じまたは異なることがある。本開示のために、窒素などのヘテロ原子は、そのヘテロ原子の原子価を満たす、水素置換基および/または本明細書に記載する有機化合物の任意の許される置換基を有することがある。本開示は、それらの有機化合物の許される置換基による如何なる様式での制限も受けないと解釈する。また、用語「置換」または「で置換されている」は、そうした置換が、その置換原子および置換基について許される原子価に従う、ならびにその置換が、結果として、安定な化合物、例えば転位、環化、脱離などによる変換を自然には受けない化合物、を生じさせるという、暗黙の条件を含む。
【0030】
「A」、「A」、「A」および「A」は、本明細書では、様々な特定の置換基を表す総称記号として用いる。これらの記号は、本明細書に開示するものに限定されない任意の置換基であり得、ならびに1つの事例において一定の置換基であると定義されているときに、別の事例では、なんらかの他の置換基と定義されていることがある。
【0031】
本明細書で用いる用語「アルキル」は、炭素原子数1から24の分枝状または非分枝状飽和炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどである。アルキル基は、置換されていることもあり、非置換であることもある。このアルキル基は、下で説明するようなアルキル、ハロゲン化アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、スルホニル、スルホン、スルホキシドまたはチオールをはじめとする(しかし、これらに限定されない)1つ以上の基で置換されていることがある。
【0032】
本明細書全体を通して、「アルキル」は、一般に、非置換アルキル基と置換アルキル基の両方を指すために用いられるが、本明細書では、そのアルキル基上の特定の置換基(単数または複数)を特定することにより、置換アルキル基に具体的に言及もする。例えば、用語「ハロゲン化アルキル」は、1つ以上のハロゲン化物、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、で置換されているアルキル基を特に指す。用語「アルコキシアルキル」は、下で説明するような1つ以上のアルコキシ基で置換されているアルキル基を特に指す。用語「アルキルアミノ」は、下で説明するような1つ以上のアミノ基などで置換されているアルキル基を特に指す。「アルキル」が、1つの事例において用いられており、「アルキルアルコール」などの特定用語が別の事例において用いられているとき、これは、その用語「アルキル」が、「アルキルアルコール」などのような特定用語も指すものではないということを含意する意味はない。
【0033】
この慣例は、本明細書において説明する他の基についても用いられる。すなわち、「シクロアルキル」などの用語は、非置換シクロアルキル部分と置換シクロアルキル部分の両方を指すが、加えて、該置換部分は、本明細書において特別に定義されていることがあり、例えば、特定の置換シクロアルキルが、例えば「アルキルシクロアルキル」と呼ばれることもある。同様に、置換アルコキシは、例えば「ハロゲン化アルコキシ」と特別に呼ばれることがあり、特定の置換アルケニル基は、例えば「アルケニルアルコール」などであることもある。再び、「シクロアルキル」などの総称用語および「アルキルシクロアルキル」などの特定用語を用いる慣例は、その総称用語が、その特定用語も含むものではないということを含意する意味はない。
【0034】
本明細書で用いる用語「アルコキシ」は、単一の末端エーテル連結基によって結合されたアルキル基を指し、すなわち、「アルコキシ」基は、−OAと定義することができ、この場合のAは、上で定義したようなアルキルである。
【0035】
本明細書で用いる用語アルコキシアルキルは、アルコキシ置換基を含有するアルキル基であり、−A−O−Aと定義することができ、この場合のAおよびAは、アルキル基である。
【0036】
本明細書で用いる用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する構造式を有する、炭素原子数2から24の炭化水素基である。(A)C=C(A)などの不斉構造は、E異性体とZ異性体の両方を含むと解釈する。これは、不斉アルケンが存在する、またはそれを結合記号C=Cによって明確に示すことができるこの場合の構造式で、推定することができる。このアルケニル基は、下で説明するようなアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、スルホニル、スルホン、スルホキシドまたはチオールをはじめとする(しかし、これらに限定されない)1つ以上の基で置換されていることがある。
【0037】
本明細書で用いる用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含有する構造式を有する、炭素原子数2から24の炭化水素基である。このアルキニル基は、下で説明するようなアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、スルホニル、スルホン、スルホキシドまたはチオールをはじめとする(しかし、これらに限定されない)1つ以上の基で置換されていることがある。
【0038】
本明細書で用いる用語「アリール」は、ベンゼン、ナフタレン、フェニル、ビフェニル、フェノキシベンゼンなどをはじめとする(しかし、これらに限定されない)任意の炭素系芳香族基を含有する基である。芳香族基を含有する基であって、その芳香族基がその環内に組み込まれた少なくとも1個のヘテロ原子を有する基と定義される「ヘテロアリール」も用語「アリール」に包含される。ヘテロ原子の例としては、窒素、酸素、硫黄およびリンが挙げられるが、これらに限定されない。同様に、用語「非ヘテロアリール」も用語「アリール」に包含され、これは、ヘテロ原子を含有しない芳香族基を含有する基と定義される。このアリール基は、置換されていることもあり、非置換であることもある。このアリール基は、本明細書において説明するようなアルキル、ハロゲン化アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、スルホニル、スルホン、スルホキシドまたはチオールをはじめとする(しかし、これらに限定されない)1つ以上の基で置換されていることがある。用語「ビアリール」は、アリール基の1つの特定のタイプであり、アリールの定義に包含される。ビアリールは、ナフタレンの場合のように縮合環構造によって互いに結合している、またはビフェニルのように1つ以上の炭素−炭素結合によって付いている、2つのアリール基を指す。
【0039】
本明細書で用いる用語「シクロアルキル」は、少なくとも3個の炭素原子から成る非芳香族炭素系の環である。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。用語「ヘテロシクロアルキル」は、その環の炭素原子のうちの少なくとも1個が、ヘテロ原子、例えば窒素、酸素、硫黄またはリン(しかし、これらに限定されない)で置換されている、上で定義したようなシクロアルキル基である。このシクロアルキル基およびヘテロシクロアルキル基は、置換されていることもあり、非置換であることもある。このシクロアルキル基およびヘテロシクロアルキル基は、本明細書において説明するようなアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、スルホニル、スルホン、スルホキシドまたはチオールをはじめとする(しかし、これらに限定されない)1つ以上の基で置換されていることがある。
【0040】
本明細書で用いる用語「シクロアルケニル」は、少なくとも3個の炭素原子から成り、少なくとも1つの二重結合、すなわちC=Cを含有する、非芳香族の炭素系の環である。シクロアルケニル基の例としては、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。用語「ヘテロシクロアルケニル」は、上で定義したようなシクロアルケニル基の1つのタイプであり、用語「シクロアルケニル」の意味の中に包含されるが、この場合、その環の炭素原子のうちの少なくとも1個は、ヘテロ原子、例えば窒素、酸素、硫黄、またはリン(しかし、これらに限定されない)で置換されている。このシクロアルケニル基およびヘテロシクロアルケニル基は、置換されていることもあり、非置換であることもある。このシクロアルケニル基およびヘテロシクロアルケニル基は、本明細書において説明するようなアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、スルホニル、スルホン、スルホキシドまたはチオールをはじめとする(しかし、これらに限定されない)1つ以上の基で置換されていることがある。
【0041】
用語「環式の基」は、アリール基、非アリール基(すなわち、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニルおよびヘテロシクロアルケニル基)、または両方を指すために、本明細書では用いる。環式の基は、置換されていることもあり、非置換であることもある、1つ以上の環構造を有する。環式の基は、1つ以上のアリール基、1つ以上の非アリール基、または1つ以上のアリール基、および1つ以上の非アリール基を含有することがある。
【0042】
本明細書で用いる用語「アルデヒド」は、式−C(O)Hによって表される。本明細書全体を通して、「C(O)」は、C=Oの速記表記である。
【0043】
本明細書で用いる用語「アミン」または「アミノ」は、式NAによって表され、この場合のA、AおよびAは、独立して、水素、上で説明したアルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニル基であり得る。
【0044】
本明細書で用いる用語「カルボン酸」は、式−C(O)OHによって表される。本明細書で用いる「カルボキシレート」は、式−C(O)Oによって表される。
【0045】
本明細書で用いる用語「エステル」は、式−OC(O)Aまたは−C(O)OAによって表され、この場合のAは、上で説明したアルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル基であり得る。
【0046】
本明細書で用いる用語「エーテル」は、式AOAによって表され、この場合のAおよびAは、独立して、上で説明したアルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル基であり得る。
【0047】
本明細書で用いる用語「ケトン」は、式AC(O)Aによって表され、この場合のAおよびAは、独立して、上で説明したアルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル基であり得る。
【0048】
本明細書で用いる用語「ハロゲン化物」は、ハロゲン フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を指す。
【0049】
本明細書で用いる用語「ヒドロキシル」は、式−OHによって表される。
【0050】
本明細書で用いる用語「ニトロ」は、式−NOによって表される。
【0051】
本明細書で用いる用語「シリル」は、式−SiAによって表され、この場合のA、AおよびAは、独立して、水素、上で説明したアルキル、ハロゲン化アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル基であり得る。
【0052】
本明細書で用いる用語「スルホ−オキソ」は式−S(O)A、−S(O)、−OS(O)、またはOS(O)OAによって表され、この場合のAは、水素、上で説明したアルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル基であり得る。本明細書全体を通して、「S(O)」は、S=Oの速記標記である。
【0053】
本明細書で用いる用語「スルホニル」は、式−S(O)によって表されるスルホ−オキソ基を指し、この場合のAは、水素、上で説明したアルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル基であり得る。
【0054】
本明細書で用いる用語「スルホニルアミノ」または「スルホンアミド」は、式−S(O)NH−によって表される。
【0055】
本明細書で用いる用語「スルホン」は、式AS(O)によって表され、この場合のAおよびAは、独立して、上で説明したアルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニルであり得る。
【0056】
本明細書で用いる用語「スルホキシド」は、式AS(O)Aによって表され、この場合のAおよびAは、独立して、上で説明したアルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニルであり得る。
【0057】
本明細書で用いる用語「チオール」は、式−SHによって表される。
【0058】
本明細書で用いる「R」、「R」、「R」、「R」(この場合のnは、整数である)は、独立して、上に列挙した基の1つ以上を有することがある。例えば、Rが、直鎖アルキル基である場合、そのアルキル基の水素原子のうちの1個は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン化物などで場合によっては置換されていることがある。選択される基に依存して、第一の基が、第二の基の中に組み込まれていることがあり、または代替的に、第一の基が、第二の基のペンダントになっている(すなわち、付いている)ことがある。例えば、「アミノ基を含むアルキル基」というフレーズに関して言えば、そのアミノ基は、そのアルキル基の骨格内に組み込まれていることがある。あるいは、そのアミノ基は、そのアルキル基の骨格に付いていることがある。選択される基(単数または複数)の性質によって、第一の基が、第二の基に埋め込まれているのか、付いているのかが決まるであろう。
【0059】
相反する指定がなければ、くさび形としてではなく、破線としてではなく、唯一実線として示されている化学結合を有する式は、可能性のある各異性体、例えば各エナンチオマーおよびジアステレオマー、ならびに異性体の混合物、例えばラセミまたはスケールミック(scalemic)混合物を考慮している。
【0060】
ここで、開示する材料、化合物、組成物、物品および方法の特定の態様に詳細に言及することにする。これらの例は、添付の実施例および図面において例証する。
【0061】
材料および組成物
本明細書において開示する一定の材料、化合物、組成物および成分は、購入することができ、または当業者に一般に知られている技法を用いて容易に合成することができる。例えば、開示する化合物および組成物を作製する際に使用される出発原料および試薬は、市場の供給業者、例えば、Aldrich Chemical Co.(ウィスコンシン州、ミルウォーキー)、Acros Organics(ニュージャージー州、モリス・プレーンズ)、Fisher Scientific(ペンシルバニア州、ピッツバーグ)もしくはSigma(ミズーリ州、セントルイス)から入手することができ、またはFieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,Volumes 1−17(John Wiley and Sons,1991);Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds,Volumes 1−5 and Supplementals(Elsevier Science Publishers,1989);Organic Reactions,Volumes 1−40(John Wiley and Sons,1991);March’s Advanced Organic Chemistry,(John Wiley and Sons,4th Edition);およびLarock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.,1989)などの参照文献に記載されている手順に従って、当業者には公知の方法により作製される。
【0062】
また、開示する方法および組成物、のために使用することができる、と併用することができる、についての作製の際に使用することができる、または、の生成物である、材料、化合物、組成物および成分を本明細書において開示する。これらおよび他の材料を本明細書において開示する。これらの材料の組み合わせ、部分集合、相互作用、基などが開示されているとき、これらの化合物の各々の様々な個々のおよび集合的な組み合わせおよび並べ替えが、明確に開示されていないこともあるが、各々が、本明細書において具体的に考えられており、開示されていると解釈する。例えば、組成物が開示されており、その組成物の多数の成分に対して行うことができる多数の修飾が論じられている場合、相反する指示が特になければ、可能である各々のおよびすべての組み合わせおよび並べ替えが、具体的に考えられる。従って、ある類の成分A、BおよびCならびにある類の成分D、EおよびFと、組成A−Dの例が開示されている場合には、各々が個々に挙げられていなかったとしても、各々が、個々におよび集合的に考えられる。従って、この例では、A、BおよびC;D、EおよびF;ならびに組み合わせ例A−Dの開示から、組み合わせA−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−EおよびC−Fの各々が具体的に考えられ、開示されていると見なさなければならない。同様に、いずれのサブセットまたは組み合わせもまた具体的に考えられ、開示される。従って、例えばA、BおよびC;D、EおよびF;ならびに組み合わせ例A−Dの開示から、例えば、A−E、B−FおよびC−Eのサブグループが具体的に考えられ、開示されていると見なさなければならない。この概念は、開示する組成物の製造および使用方法における段階を含む(しかし、これらに限定されない)本開示のすべての態様にあてはまる。従って、行うことができる様々な追加の段階がある場合、これらの追加の段階の各々を、開示する方法のいずれの特定の態様または態様の組み合わせを用いて行うこともでき、ならびにそうした組み合わせ各々が具体的に考えられ、開示されていると見なさなければならないことは理解される。
【0063】
1つの態様において、再生セルロースマトリックスと、その再生セルロースマトリックス内に実質的に均一に分布している第一活性物質と、リンカーと、第二活性物質とを含むセルロース/活性物質複合材を本明細書において開示する。本開示複合材において、リンカーは、第一および第二活性物質に結合し、従って、それらを互いに連結させることができる。このようにして、第二活性物質は、再生セルロースに付けるまたは再生セルロースと会合させることができる。こうした複合材は、本明細書において開示するような多種多様な用途を有することができる。例えば、個々の活性物質に依存して、本開示複合材は、防護衣、包帯、紙、および官能化セルロースが必要または所望される任意の他の用途において使用することができる。
【0064】
再生セルロース
本開示複合材の再生セルロース成分は、下で説明する方法によって作製することができる。一般に、再生セルロースは、出発セルロースをイオン液体に溶解し、その後、その溶液に液体非溶媒(すなわち、出発セルロースを実質的に溶解しないが、イオン液体と混和する液体)に添加することによって作製することができる。この出発セルロースは、いずれのセルロース系材料であってもよい。適する出発セルロースの例としては、繊維状セルロース、木材パルプ、紙、リンター、綿など(これらの混合物を含む)が挙げられるが、それらに限定されない。これにより再生セルロースが生成され、この再生セルロースは、多くの場合、それを作製した出発セルロースと実質的に同じ分子量を有する。「実質的に同じ分子量」とは、出発セルロースと再生セルロースとの分子量の差が、出発セルロースの分子量の約25%、20%、15%、10%、5%、1%または0%未満であることを意味する。さらに、この再生セルロースには、出発セルロースを基準として置換基の増加量が実質的にない場合がある。「置換基の増加量が実質的にない」とは、一般に置換度または「D.S.」と呼ばれる、再生セルロース上の置換基数(例えば、エステル化またはアルキル化による、セルロース上に存在するヒドロキシル基の官能化)が、その出発セルロースのものより小さいか、その出発セルロースのものと同等であるか、その出発セルロースのものより0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30または35%大きいことを意味する。また、本開示複合材の再生セルロース成分には、捕捉されたイオン液体分解産物が実質的にない場合がある。「捕捉されたイオン液体分解産物が実質的にない」とは、再生セルロースが、その再生セルロースの約25重量%未満、約20重量%未満、約15重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、約3重量%未満、約2重量%未満、約1重量%未満、約0.5重量%未満、または約0%の捕捉されたイオン液体分解産物を含有することがあることを意味する。
【0065】
第一活性物質
本開示セルロース/活性物質複合材の第一活性成分は、その再生セルロースのマトリックス内に実質的に均一に分布させることができる。「実質的に均一に」とは、少なくとも1平方インチの再生セルロースの体積にわたって平均していることを意味し;微視的規模では、その再生セルロースの中に第一活性物質が分布している体積と第一活性物質を有さない他の体積とが存在し得る。再生セルロースのマトリックス内に実質的に均一に第一活性物質を分布させるまたは捕捉するために適する方法を本明細書に記載する。本明細書に記載する第一活性物質の一種類より多くを、本開示複合材および方法において使用できることも考えられる。
【0066】
一般に、第一活性物質は、再生セルロースのマトリックス内に分布させることができる、およびリンカーにカップリングさせる(例えば、結合させるまたは付ける)ことができる、任意の物質であり得、その例を本明細書に記載する。リンカーへの第一活性物質のカップリングは、その第一活性物質とそのリンカーとの結合を形成することができる、任意の反応によって達成することができる。例えば、第一活性物質は、リンカー上の1つ以上の求核性官能基と反応して結合を形成することができる、1つ以上の求電子性官能基を有することがある。あるいは、第一活性物質は、リンカー上の1つ以上の求電子性官能基と反応して結合を形成することができる、1つ以上の求核性官能基を有することがある。「求核性官能基」とは、電子リッチな原子を含有するまたは含有するようにすることができる任意の部分を意味し、求核性官能基の例は、本明細書の中で開示する。「求電子性官能基」とは、電子不足の原子を含有するまたは含有するようにすることができる任意の部分を意味し、求電子性官能基の例も本明細書の中で開示する。第一活性物質、第二活性物質およびリンカーならびにそれらを互いにカップリングさせる方法の具体例は、本明細書の中で開示する。
【0067】
求核性官能基
特定の例では、第一活性物質は、リンカー上の求電子性の基と反応して結合を形成することができる1つ以上の求核性官能基を含む高分子化合物であり得る。求核性官能基を求電子性官能基と反応させると、その求核性官能基は、もはや求核性ではなくなることがあることは理解される。この意味で、本開示複合材は、一部の例において、第一活性物質上に求核性官能基を有さないことがある。すなわち、求核性官能基は、リンカー上の求電子性官能基とカップリングしており、もはや求核性でないか、以前どおり求核性である。しかし、本開示のために、様々な官能基は、結合形成前のそれらに注目して特定される。例えば、本明細書において開示する複合材の場合、その開示複合材における第一活性物質のアミン官能基が、リンカーのアルデヒド官能基と結合を形成してイミンを生じさせたため、存在しない場合であっても、第一活性物質は、アミンを有すると言われることがあり、リンカーは、アルデヒドを有すると言われることがある。この慣例は、活性物質およびリンカーに言及するときにあまねく用いられる。
【0068】
第一活性物質上に存在することができる求核性官能基の例としては、アミン、アミドおよびヒドロキシル基が挙げられるが、これらに限定されない。一部の態様では、1つ以上の異なる求核性官能基が、第一活性物質上に存在することがある。
【0069】
高分子アミン
1つの具体例において、第一活性物質は、高分子アミン(すなわち、1つ以上のアミン基を含むポリマー)であり得る。この事例では、該アミンは、リンカー上の求電子性部分と反応する(例えば、アルデヒドまたはエステルと反応して、それぞれ、イミンまたはアミド結合を形成する)ことができる求核性官能基として作用する。
【0070】
もう1つの例において、前記高分子アミンは、アミノ酸系ポリマーであり得る。本明細書で用いる「アミノ酸」は、ポリペプチドを構成する、一般に出会う20のアミノ酸を意味する。加えて、これは、ホルミルメチオニンおよびセレノシステインなどの(しかし、これらに限定されない)両方とも天然であるあまり一般的でない構成要素、一般に見出されるアミノ酸の天然類似体、およびアミノ酸またはアミノ酸官能基の模倣体をさらに含む。これらおよび他の分子の非限定的な例は、本明細書中で論じる。
【0071】
適するアミノ酸系ポリマーは、「ペプチド」であり、これは、互いに化学結合しているアミノ酸から成る化合物の一類である。一般に、アミノ酸は、アミド結合(CONH)によって互いに化学結合しているが、アミノ酸は、当該技術分野では公知の他の化学結合によって互いに結合していることもある。例えば、アミノ酸は、アミンの連結によって結合していることがある。本明細書で用いる「ペプチド」は、アミノ酸のオリゴマーならびに小さなおよび大きなペプチド(例えば、タンパク質)を包含する。
【0072】
第一活性物質としての使用に適する非常にたくさんのアミノ酸系ポリマーがあることは理解される。例えば、一般に出会うアミノ酸とは異なる官能性置換基を有する、非常に多数のDアミノ酸またはL−アミノ酸がある。天然ペプチドの反対の立体異性体も適し、ならびにペプチド類似体の立体異性体も適する。加えて、第一活性物質は、ペプチドに似ているように製造することができるが、これは、天然のペプチドの連結によって接続されていない。例えば、アミノ酸またはアミノ酸類似体についての連結としては、−CHNH−、−CHS−、−CHCH−、−CH=CH−(シスおよびトランス)、−COCH−、−CH(OH)CH−および−CHSO−を挙げることができる。これらおよび他のものは、Spatola,Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides,and Proteins,B.Weinstein,eds.,Marcel Dekker,NY,p.267,1983;Spatola,Vega Data,Peptide Backbone Modifications Vol.1,Issue 3,1983(一般概説);Morley,Trends Pharm Sci 1980,463−68,;Hudsonら,Int J Pept Prot Res 1979,14:177−185(−CHNH−、−CHCH−);Spatolaら,Life Sci 1986,38:1243−1249(−CHS−);Hann,J Chem Soc Perkin Trans I 1982,307−314(−CH=CH−、シスおよびトランス);Almquistら,J Med Chem 1980,23:1392−1398(−C(O)CH−);Jennings−Whiteら,Tetrahedron Lett 1982,23:2533(−C(O)CH−);Szelkeら,欧州特許出願番号EP 45665 CA(−CH(OH)CH−);Holladayら,Tetrahedron Lett 1983,24:4401−4404(−C(OH)CH−);およびHruby,Life Sci 1982,31:189−199(−CHS−)において見出すことができる。これら各々は、少なくともそれらのアミノ酸類似体についての教示に関して、参照により本明細書に取り入れられている。ペプチド類似体が、結合しているアミンと酸官能基(例えば、ベータ−アラニン、ガンマ−アミノ酪酸など)の間に1個より多くの原子を有することがあることは理解される。こうした類似体は、用語高分子アミンおよびペプチドの意味の範囲内と考えられる。
【0073】
加えて、本開示第一活性物質は、ペプチドの誘導体または変異体であり得る。ペプチド変異体および誘導体は、当業者によく理解されており、アミノ酸配列修飾を伴うことがある。例えば、アミノ酸配列修飾は、一般に、次の3つの類のうちの1つ以上に分類される:置換変異体、挿入変異体および欠失変異体。挿入としては、アミノおよび/またはカルボキシル末端融合、ならびに単数または多数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。欠失は、タンパク質配列からの1つ以上のアミノ酸残基の除去を特徴とする。置換、欠失、挿入、またはこれらの任意の組み合わせを併用して、最終構築物に到達することもある。
【0074】
また、適する第一活性物質は、一定の後修飾誘導体化を有するペプチドであり得る。例えば、N末端アミンのアセチル化またはC末端カルボキシルのアミド化。他の分子に連結した(例えば、コンジュゲートした)ペプチドおよびタンパク質の使用も可能である。例えば、炭水化物(例えば、糖タンパク)をタンパク質またはペプチドに連結させることがある。ペプチドおよびタンパク質のこうした誘導体、変異体および類似体は、本明細書では、用語高分子アミン、アミノ酸系ポリマー、およびペプチドの意味の範囲内と考えられ、すべて、第一活性物質としての使用に適する。
【0075】
第一活性物質としての使用に適するアミノ酸系ポリマーの一部の具体例としては、ポリリシン、タンパク質(例えば、酵素)およびペプチド(これらの混合物を含む)が挙げられるが、それらに限定されない。一部の特定の例としては、ラクターゼ、ハロアミン、アミラーゼ、プロポリス、乳清タンパク質、ジオキシクロル、ラクトフェリンおよびコウスイハッカ(Melissa officinalis)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
こうしたアミノ酸系ポリマー、ペプチドおよびタンパク質の製造方法は、周知である。1つの方法は、タンパク質化学技法により2つ以上のペプチドまたはポリペプチドを互いに連結させる方法である。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)またはBoc(t−ブチルオキシカルボニル)化学を用い、現在利用可能な実験装置を使用して、化学合成することができる。(カルフォルニア州、フォスター・シティーのApplied Biosystems,Inc.)。当業者は、本開示第一活性物質に対応するペプチドまたはポリペプチドを標準的な化学反応によって合成できることを容易に理解することができる。例えば、ペプチドまたはポリペプチドを合成し、その合成樹脂から切断しないことがあるのに対し、ペプチドまたはタンパク質の別のフラグメントを合成し、その後、その樹脂から切断し、それによって、その別のフラグメント上の、官能基によりブロックされている末端基を、露出させることもある。ペプチド縮合反応により、これら2つのフラグメントをそれらのカルボキシ末端およびアミノ末端それぞれでペプチド結合により共有結合させて、抗体またはそのフラグメントを形成することができる。(Grant,Synthetic Peptides:A User Guide.W.H.Freeman and Co.,NY,1992;Bodansky and Trost,Ed.Principles of Peptide Synthesis.Springer−Verlag Inc.,NY,1993。これらは、少なくとも、ペプチド合成に関する材料について、参照により取り入れられている)。あるいは、ペプチドまたはポリペプチド第一活性物質を、インビボで、独立して合成することができる。
【0077】
単離したら、独立したペプチドまたはポリペプチドを、所望される場合には、類似のペプチド縮合反応により連結させて、ペプチドまたはそのフラグメントを形成することができる。例えば、クローン化または合成ペプチドセグメントの酵素的ライゲーションにより、比較的短いペプチドフラグメントを連結させて、より大きなペプチドフラグメント、ポリペプチドまたは全タンパク質ドメインを生じさせることができる(Abrahmsenら,Biochemistry 1991,30:4151。これは、少なくとも、ペプチドおよびタンパク質合成のその教示に関して、参照により本明細書に取り入れられている)。あるいは、合成ペプチドの天然の化学的ライゲーションを利用して、より短いペプチドフラグメントから大きなペプチドまたはポリペプチドを合成構築することができる(例えば、Dawsonら,Science 1994,266:776−9;Baggioliniら,FEBS Lett 1992,307:97−101;Clark−Lewisら,J Biol Chem 1994,269:16075;Clark−Lewisら,Biochemistry 1991,30:3128;Rajarathnamら,Biochemistry 1994,33:6623−6630参照。これらは、すべて、少なくともペプチドおよびタンパク質合成についてのそれらの教示に関して、参照により本明細書に取り入れられている)。あるいは、非保護ペプチドセグメントを化学的に連結することができ、この場合、その化学的ライゲーションの結果としてそれらペプチド間に形成される結合は、非天然(非ペプチド)結合である(Schnolzerら,Science 1992,256:221。これは、少なくともペプチドおよびタンパク質合成についてのその教示に関して、参照により本明細書に取り入れられている)。この技法は、タンパク質ドメインの類似体、ならびに完全な生物活性を有する大量の比較的純粋なタンパク質を合成するために用いられている(deLisle Miltonら,Techniques in Protein Chemistry IV.Academic Press,NY,pp.257−67,1992。これは、少なくともペプチドおよびタンパク質合成についてのその教示に関して、参照により本明細書に取り入れられている)。市販のアミノ酸系ポリマー、ペプチドおよびタンパク質も、本明細書に開示する複合材における第一活性物質としての使用に適する。さらに、様々な系および被験者から単離されたアミノ酸系ポリマーも、使用することができる。
【0078】
高分子アミンの他の適する例は、1つ以上のアミン官能基を含有するオレフィン系ポリマーである。多くのこうしたポリアミンは、購入することができ、または当該技術分野では公知の方法によって作製することができる。本開示セルロース/活性物質複合材において第一活性物質として使用することができるポリアミンの適する例としては、ポリビニルアミンおよびポリアルキレンイミン、例えばポリエチレンイミン、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
高分子アミンの尚、さらなる例は、二酸またはジエステルモノマーとジアミンモノマーとの縮合によって作製されるポリアミドである。こうしたポリアミドは、当該技術分野において周知であり、購入することができる。あるいは、ポリアミドは、アミンおよび酸もしくエステル官能基を含有するモノマーの自己縮合により、またはカプロラクタムなどの環状アミド(すなわち、ラクタム)の開環反応により、作製することができる。ナイロンは、こうしたポリアミドの一般的な例である。
【0080】
適する高分子アミンのさらにもう1つの例は、ポリエーテルアミンである。ポリエーテルアミンは、ポリエーテル骨格の末端に付いている第一アミノ基を含有する。ポリエーテル骨格は、一般に、プロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)または混合EO/POのいずれかに基づく。1つの態様において、ポリエーテルアミンは、ポリオキシアルキレンアミンであり得る。こうしたポリエーテルアミンは、JEFFAMINE(登録商標)の名でHuntsman Performance Products(ユタ州、ソルトレークシティー)から購入することができる。JEFFAMINEは、モノアミン、ジアミンおよびトリアミンを有することがあり、5,000以下の範囲の様々な分子量で入手することができる。
【0081】
他の求核性官能基含有ポリマー
求核性官能基を含む第一活性物質のさらにもう1つの適する例において、第一活性物質は、高分子アルコール(すなわち、1つ以上のヒドロキシル基を含むポリマー)であり得る。こうしたヒドロキシ基をリンカー上の求電子性の基と反応させて(例えば、ハロゲン、アルデヒドまたはエステルと反応させて)結合を形成することができる。適する高分子アルコールは、ポリビニルアルコールであり、これは、市販されており、またはポリ酢酸ビニルの加水分解によって作製することができる。
【0082】
求電子性官能基
本開示セルロース/活性物質複合材のもう1つの態様において、第一活性物質は、リンカー上の求核性の基と反応して結合を形成することができる1つ以上の求電子性官能基を含む高分子化合物であり得る。使用可能な適する求電子性官能基の例としては、エステル、アルデヒド、無水物およびハロゲン基が挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の異なる求電子性の基が、第一活性物質上に存在することもあることが考えられる。
【0083】
求電子性官能基を含む第一活性物質の一例において、第一活性物質は、ポリエステルまたはポリ酸(すなわち、それぞれ、1つ以上のエステルまたは酸基を含むポリマー)であり得る。ポリエステルおよびポリ酸は、周知であり、購入することができ、または当該技術分野において公知の方法により得ることができる。ポリエステルの適する例としては、ポリアルキレンテレフタレートが挙げられるが、これに限定されない。高分子酸の適する例としては、ポリ(メタ)アクリレートおよびポリマレイン酸(これらの混合物およびコポリマーを含む)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0084】
第二活性物質
本開示セルロース/活性物質複合材は、第二活性物質も含む。第二活性物質は、リンカーによって第一活性物質に連結させることができる。あるいは、第二活性物質を第一活性物質に直接連結させることができる。このようにして、本開示複合材は、再生セルロース内に分布している第一活性物質によりその再生セルロースマトリックスと会合しているまたはその再生セルロースマトリックスに付いている第二活性物質を有する。
【0085】
第一活性物質について上で説明したように、第二活性物質は、本明細書中で説明する、リンカーにカップリングさせる(例えば、結合させるまたは付ける)ことができる任意の化合物であり得る。リンカーへの第二活性物質のカップリングは、その第二活性物質とリンカーとの結合を形成することができる任意の反応によって達成することができる。例えば、第二活性物質は、リンカー上の1つ以上の求核性官能基と反応して結合を形成することができる1つ以上の求電子性官能基を有することがある。あるいは、第二活性物質は、リンカー上の1つ以上の求電子性官能基と反応して結合を形成することができる、1つ以上の求核性官能基を有することがある。第一活性物質(および第二活性物質)およびリンカーならびにそれらを互いにカップリングさせる方法の具体例は、本明細書の中で開示する。
【0086】
求核性官能基を有する第二活性物質は、第一活性物質について上で説明したいずれの化合物であってもよい。例えば、第二活性物質は、高分子アミン、アミノ酸系ポリマー、ペプチド、タンパク質、ポリアミド、高分子アルコールなど(これらの混合物を含む)であり得る。こうした分子は、リンカー上の求電子性の基と反応することができる求核性アミンまたはアルコール基を含有する。あるいは、第二活性物質は、第一活性物質について上で説明したような求電子性の基を含むことがある。例えば、第二活性物質は、リンカー上の求核性の基と反応することができるエステルまたはアルデヒドまたはハロゲンを含有することがある。従って、本明細書において開示する第一活性物質のいずれもが、第二活性物質として適する。また、一部の事例において、第二活性物質は、第一活性物質と同じ化合物である。他の事例において、第二活性物質と第一活性物質は、異なる化合物である。
【0087】
さらに、第二活性物質は、その特定の特徴または特性に、本複合材への会合(すなわち、第一活性物質およびリンカーを介する)が望まれる任意の物質であり得る。すべてはないにせよ多くの場合、第二活性物質は、一定の望ましい生物学的または化学的特性を有し、これは、再生セルロースマトリックス内に捕捉された第一活性物質に第二活性物質が連結されている本開示組成物において明らかであり得る。理論による拘束を望まないが、第二活性物質は、リンカーを介して第一活性物質に付いているため、再生セルロースマトリックスからある程度離れている。これにより、第二活性物質はより自由に動くことができ、従って、さらなる物質との相互作用能力が助長される。
【0088】
ある特定の例において、セルロース/活性物質複合材に抗菌特性を有することが望まれる場合には、抗菌性である第二活性物質を使用することができる。もう1つの例において、セルロース/活性物質複合材に抗ウイルス特性を有することが望まれる場合には、抗菌性である第二活性物質を使用することができる。本開示複合材に様々な特性を付与するために種々のタイプ(例えば、2つ以上の種類)の第二活性物質を使用することもできる。この一例は、抗菌性および抗ウイルス性第二活性物質が、本開示複合材中に存在する場合である。また、第一活性物質が、第二活性物質を補足する望ましい特性(例えば、生物学的または化学的特性)を有する場合もあることが考えられる。
【0089】
適する第二活性物質の一部の例としては、抗菌剤、抗ウイルス薬、除草薬、殺虫剤、殺真菌剤、微生物細胞、動物もしくは昆虫の駆除剤、植物成長調節剤、肥料、芳香もしくは臭気組成物、触媒、光活性物質、指示薬、染料およびUV吸収剤、またはこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0090】
1つの特定の例において、第二活性物質は、抗菌剤である。抗菌剤の適する例としては、アセダプソン;アセトスルホンナトリウム;アラメシン;アレキシジン;アムジノシリン;アムジノシリンピボキシル;アミサイクリン;アミフロキサシン;アミフロキサシンメシレート;アミカシン;硫酸アミカシン;アミノサリチル酸;アミノサリチル酸ナトリウム;アモキシリン;アンホマイシン;アンピシリン;アンピシリンナトリウム;アパルシリンナトリウム;アプラマイシン;アスパルトシン;硫酸アストロマイシン;アビラマイシン;アボパルシン;アジスロマイシン;アゾロシリン;アゾロシリンナトリウム;塩酸バカンピリシン;バシトラシン;バシトラシンメチレンジサリチル酸塩;バシトラシン亜鉛;バンベルマイシン;ベンゾイルパスカルシウム;ベリスロマイシン;硫酸ベタマイシン;ビアペネム;ビニラマイシン;塩酸ビフェナミン;ビスピリチオンマグスルフェクス;ブチカシン;硫酸ブチロシン;硫酸カプレオマイシン;カルバドックス;カルベニシリン二ナトリウム;カルベニシリンインダニルナトリウム;カルベニシリンフェニルナトリウム;カルベニシリンカリウム;カルモナムナトリウム;セファクロール;セファドロキシル;セファマンドール;セファマンドールナファート;セファマンドールナトリウム;セファパロール;セファトリジン;セファザフルールナトリウム;セファゾリン;セファゾリンナトリウム;セフブペラゾン;セフジニル;セフェピム;塩酸セフェピム;セフェテコール;セフィキシム;塩酸セフメノキシム;セフメタゾール;セフメタゾールナトリウム;セフォニシド一ナトリウム;セフォニシドナトリウム;セフォペラゾンナトリウム;セフォラニド;セフォタキシムナトリウム;セフォテタン;セフォテタン二ナトリウム;塩酸セフォチアム;セフォキシチン;セフォキシチンナトリウム;セフピミゾール;セフピミゾールナトリウム;セフピラミド;セフピラミドナトリウム;硫酸セフピローム;セフポドキシムプロキセチル;セフプロジル;セフロキサジン;セフスロジンナトリウム;セフタジジム;セフチブテン;セフチゾキシムナトリウム;セフトリアキソンナトリウム;セフロキシム;セフロキシムアクセチル;セフロキシムピボキセチル;セフロキシムナトリウム;セファセトリルナトリウム;セファレキシン;塩酸セファレキシン;セファログリシン;セファロリジン;セファロチンナトリウム;セファピリンナトリウム;セフラジン;塩酸セトサイクリン;セトフェニコール;クロラムフェニコール;パルミチン酸クロラムフェニコール;クロラムフェニコール・パントテン酸塩複合体;コハク酸クロラムフェニコールナトリウム;ホスファニル酸クロルヘキシジン;クロロキシレノール;二硫酸クロルテトラサイクリン;塩酸クロルテトラサイクリン;シノキサシン;シプロフロキサシン;塩酸シプロフロキサシン;シロレマイシン;クラリスロマイシン;塩酸クリナフロキサシン;クリンダマイシン;塩酸クリンダマイシン;塩酸パルミチン酸クリンダマイシン;リン酸クリンダマイシン;クロファジミン;クロキサシリンベンザチン;クロキサシリンナトリウム;クロキシキン;コリメスチンメタナトリウム;硫酸コリスチン;クメルマイシン;クメルマイシンナトリウム;シクラシリン;シクロセリン;ダルホプリスチン;ダプソン;ダプトマイシン;デメクロサイクリン;塩酸デメクロサイクリン;デメサイクリン;デノフンギン;ジアベリジン;ジクロキサシリン;ジクロキサシリンナトリウム;硫酸ジヒドロストレプトマイシン;ジピリチオン;ジリスロマイシン;ドキシサイクリン;ドキシサイクリンカルシウム;ドキシサイクリンホスファテックス;ドキシサイクリンハイクレート;ドロキサシンナトリウム;エノキサシン;エピシリン;塩酸エピテトラサイクリン;エリスロマイシン;エリスロマイシンアシストレート;エリスロマイシンエストレート;エチルコハク酸エリスロマイシン;グルセプト酸エリスロマイシン;ラクトビオン酸エリスロマイシン;プロピオン酸エリスロマイシン;ステアリン酸エリスロマイシン;塩酸エタンブトール;エチオナミド;フレロキサシン;フロキサシリン;フルダラニン;フルメキン;ホスホマイシン;ホスホマイシントロメタミン;フモキシシリン;塩化フラゾリウム;酒石酸フラゾリウム;フシジン酸ナトリウム;フシジン酸;硫酸ゲンタマイシン;グロキシモナム;グラミシジン;ハロプロジン;ヘタシリン;ヘタシリンカリウム;ヘキセジン;イバフロキサシン;イミペネム;イソコナゾール;イセパミシン;イソニアジド;ジョサマイシン;硫酸カナマイシン;キタサマイシン;レボフラルタドン;レボプロピルシリンカリウム;レキシスロマイシン;リンコマイシン;塩酸リンコマイシン;ロメフロキサシン;塩酸ロメフロキサシン;ロメフロキサシンメシレート;ロラカルベフ;マフェナイド;メクロサイクリン;スルホサリチル酸メクロサイクリン;リン酸メガロマイシンカリウム;メキドクス;メロペネム;メタサイクリン;塩酸メタサイクリン;メテナミン;馬尿酸メテナミン;マンデル酸メテナミン;メチシリンナトリウム;メチオプリム;塩酸メトロニダゾール;リン酸メトロニダゾール;メズロシリン;メズロシリンナトリウム;ミノサイクリン;塩酸ミノサイクリン;塩酸ミリンカマイシン;モネンシン;モネンシンナトリウム;ナフシリンナトリウム;ナリジクス酸ナトリウム;ナリジクス酸;ナタマイシン;ネブラマイシン;パルミチン酸ネオマイシン;硫酸ネオマイシン;ウンデシレン酸ネオマイシン;硫酸ネチルマイシン;ニュートラマイシン;ニフイラデン;ニフラルデゾン;ニフラテル;ニフラトロン;ニフルダジル;ニフリミド;ニフィウピリノール;ニフルキナゾール;ニフルチアゾール;ニトロサイクリン;ニトロフラントイン;ニトロミド;ノルフロキサシン;ノボビオシンナトリウム;オフロキサシン;オネトプリム;オキサシリンナトリウム;オキシモナム;オキシモナムナトリウム;オキソリン酸;オキシテトラサイクリン;オキシテトラサイクリンカルシウム;塩酸オキシテトラサイクリン;パルジマイシン;パラクロロフェノール;パウロマイシン;ペフロキサシン;ペフロキサシンメシレート;ペナメシリン;ペニシリンGベンザチン;ペニシリンGカリウム;ペニシリンGプロカイン;ペニシリンGナトリウム;ペニシリンV;ペニシリンVベンザチン;ペニシリンVヒドラバミン;ペニシリンVカリウム;ペンチジドンナトリウム;アミノサリチル酸フェニル;ピペラシリンナトリウム;ピルベニシリンナトリウム;ピリジシリンナトリウム;塩酸ピルリマイシン;塩酸ピバンピシリン;パモ酸ピバンピシリン;ピバンピシリンプロベネート;硫酸ポリミキシンB;ポルフィロマイシン;プロピカシン;ピラジンアミド;ピリチオン亜鉛;酢酸キンデカミン;キヌプリスチン;ラセフェニコール;ラモプラニン;ラニマイシン;レロマイシン;レプロマイシン;リファブチン;リファメタン;リファメキシル;リファミド;リファンピン;リファペンチン;リファキシミン;ロリテトラサイクリン;硝酸ロリテトラサイクリン;ロサラマイシン;酪酸ロサラマイシン;プロピオン酸ロサラマイシン;リン酸ロサラマイシンナトリウム;ステアリン酸ロサラマイシン;ロソキサシン;ロキサルソン;ロキシスロマイシン;サンサイクリン;サンフェトリネンナトリウム;サルモキシシリン;サルピシリン;スコパフンギン;シソマイシン;硫酸シソマイシン;スパルフロキサシン;塩酸スペクチノマイシン;スピラマイシン;塩酸スタリマイシン;ステフィマイシン;硫酸ストレプトマイシン;ストレプトニコジド;スルファベンズ;スルファベンザミド;スルファセトアミド;スルファセトアミドナトリウム;スルファシチン;スルファジアジン;スルファジアジンナトリウム;スルファドキシン;スルファレン;スルファメラジン;スルファメータ;スルファメタジン;スルファメチゾール;スルファメトキサゾール;スルファモノメトキシン;スルファモキソール;スルファニル酸亜鉛;スルファニトラン;スルファサラジン;スルファソミゾール;スルファチアゾール;スルファザメト;スルフィソキサゾール;スルフィソキサゾールアセチル;スルフィソキサゾールジオラミン;スルホミキシン;スロペネム;スルタミシリン;サンシリンナトリウム;塩酸タランピシリン;テイコプラニン;塩酸テマフロキサシン;テモシリン;テトラサイクリン;塩酸テトラサイクリン;テトラサイクリン・リン酸塩複合体;テトロキソプリム;チアンフェニコール;チフェンシリンカリウム;チカルシリンクレシルナトリウム;チカルシリン二ナトリウム;チカルシリン一ナトリウム;チクラトン;塩化チドニウム;トブラマイシン;硫酸トブラマイシン;トスフロキサシン;トリメトプリム;硫酸トリメトプリム;トリスルファピリミジン;トロレアンドマイシン;硫酸トロスペクトマイシン;チロスリシン;バンコマイシン;塩酸バンコマイシン;バージニアマイシン;ゾルバマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
もう1つの特定の例において、第二活性物質は、抗ウイルス薬であり得る。抗ウイルス薬の適する例としては、アセマンナン;アシクロビル;アシクロビルナトリウム;アデフォビル;アロブジン;アルビルセプトスドトックス;塩酸アマンタジン;アラノチン;アリルドン;アテビルジンメシレート;アブリジン;シドフォビル;シパムフィリン;塩酸シタラビン;デラビルジンメシレート;デスシクロビル;ジダノシン;ジソキサリル;エドクスジン;エンビラデン;エンビロキシム;ファムシクロビル;塩酸ファモチン;フィアシタビン;フィアルリジン;フォサリレート;フォスカルネットナトリウム;ホスホネットナトリウム;ガンシクロビル;ガンシクロビルナトリウム;イドクスウリジン;ケトキサール;ラミブジン;ロブカビル;塩酸メモチン;メチサゾン;ネビラピン;ペンシクロビル;ピロダビル;リバビリン;塩酸リマンタジン;サキナルビルメシレート;塩酸ソマンタジン;ソリブジン;スタトロン;スタブジン;塩酸チロロン;トリフルリジン;塩酸バラシクロビル;ビダラビン;リン酸ビダラビン;ビダラビン・リン酸ナトリウム;ビロキシム;ザルシタビン;ジドブジン;およびジンビロキシムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
さらに他の特定の実施形態において、第二活性物質は、化学的にまたは生物学的に特殊な中和剤であり得る。例えば、神経ガスまたはスーパーオキシドラジカルなどの化学薬品と相互作用することができる、該化学薬品を除去することおよび/または中和することができる薬剤が、適している。こうした中和剤の例は、ポリオキソメタレート、スーパーオキシドジスムターゼ、アスコルビン酸、およびグルタチオンである。生物学的薬剤(例えば、炭疽菌)を不活性化することができる薬剤も使用することができる。
【0093】
さらなる例において、第二活性物質は、生体分子であり得る。生体分子の例としては、小分子(例えば、リガンド、薬物、脂質、炭水化物、ステロイド、ホルモン、ビタミンなど)、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、プライマー、プローブ、リボザイムなど)、ペプチド、タンパク質、酵素(例えば、キナーゼ、ホスファターゼ、メチル化剤、プロテアーゼ、トランスクリプターゼ、エンドヌクレアーゼ、リガーゼなど)、または抗体および/もしくはそのフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で用いる「小分子」は、約5kD未満、例えば約4kD未満、の分子量を有する組成物を指すものとする。小分子は、核酸(例えば、DNA、RNA)、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣体、炭水化物、脂質、因子、補因子、ホルモン、ビタミン、ステロイド、微量元素、医薬、または他の有機(炭素含有)もしくは無機分子であり得る。
【0094】
第二活性物質が抗体であるセルロース/活性物質複合材は、例えば、特定の抗原を単離するためのフィルターとして使用することができる。従って、1つの事例において、第二活性物質は、抗体またはそのフラグメントを含むことがある。用語「抗体」は、本明細書では広義で用い、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方を包含する。無傷免疫グロブリン分子に加えて、免疫グロブリン分子のフラグメントおよび免疫グロブリン分子のマルチマー(例えば、当該技術分野において公知であるような、二量体抗体、三量体抗体、二重特異性抗体および三重特異的抗体;例えば、Hudson and Kortt,J Immunol Methods 1999,231:177−189参照)、標準的な分子生物学技術を用いて生産される、抗体または抗体フラグメントを含有する融合タンパク質、1本鎖抗体、ならびに免疫グロブリンまたはそのフラグメントのヒトまたはヒト化バージョンも用語「抗体」に包含される。
【0095】
本開示複合材において有用な抗体は、市場の供給業者、例えばChemicon International(カリフォルニア州、テメキュラ)から購入することができる。抗体は、周知の方法(Harlow and Lane.Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New York,1988参照)を用いて産生させることもできる。完全長抗原またはそれらのフラグメントのいずれかを使用して、本開示複合材での使用に適する抗体を産生させることができることは、当業者には理解されよう。適する抗体を産生させるために使用されるポリペプチドは、天然源から部分的にもしくは完全に精製することができ、または組換DNA法を用いて生産することができる。例えば、ペプチドまたはポリペプチドである抗原については、抗原をコードしているcDNAまたはそのフラグメントを原核細胞(例えば、細菌)または真核細胞(例えば、酵母、昆虫もしくは哺乳動物細胞)において発現させることができ、その後、その組換タンパク質を精製し、使用して、ターゲット抗体に特異的に結合するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体製剤を生じさせることができる。
【0096】
適切な抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を産生させるための抗原性ペプチドの選択方法は、当業者には公知であろう。開示するコンジュゲートおよび方法の抗体を産生させる際に用いるための抗原ペプチドは、親水性であるタンパク質の非らせん領域から選択される。開示するコンジュゲートおよび方法の抗体を産生させるための抗原性ペプチドを選択には、The PredictProtein Server(http://www.embl−heidelberg.de/predictprotein/subunitdef.html)または類似のプログラムを使用することができる。一例では、アミノ酸数約15のペプチドを選択することができ、ペプチド−抗体パッケージは、AnaSpec,Inc.(カリフォルニア州、サンノゼ)などの市場の供給業者から入手することができる。2つ以上の異なるセットのモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の産生が、その所期の用途に求められる特異性および親和性を有する抗体を得る尤度を最大にすることは、当業者には公知であろう。それらの抗体を公知の方法(例えば、ELISAおよび/または免疫細胞化学(しかし、これらに限定されない))によって所望される活性について試験することができる。抗体の産生および試験に関する追加のガイダンスについては、例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1988参照。これは、少なくとも抗体の作製方法に関して、参照により本明細書に取り入れられている。
【0097】
他の態様において、第二活性物質は、核酸系化合物であり得る。従って、本明細書で用いる「核酸」は、例えば、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体または代用ヌクレオチドから成る分子を意味する。これらおよび他の分子の非限定的な例は、本明細書の中で論じる。核酸は、2本鎖であることもあり、1本鎖であることもある。核酸は、オリゴヌクレオチドも包含するものとする。リンカーに結合することができ、従って、第一活性物質および再生セルロースに結合することができる、任意の核酸分子をここで使用することができる。
【0098】
用語「ヌクレオチド」は、塩基部分と糖部部分とリン酸部分とを含有する分子を意味する。ヌクレオチドは、それらのリン酸部分および糖部分によって互いに連結してヌクレオシド間結合を作ることができる。ヌクレオチドの塩基部分は、アデニン−9−イル(A)、シトシン−1−イル(C)、グアニン−9−イル(G)、ウラシル−1−イル(U)、およびチミン−1−イル(T)であり得る。ヌクレオチドの糖部分は、リボースまたはデオキシリボースである。ヌクレオチドのリン酸部分は、5価のリン酸塩である。ヌクレオチドの非限定的な例は、3’−AMP(3’−アデノシン一リン酸)または5’−GMP(5’−グアノシン一リン酸)であろう。本明細書で用いる「ヌクレオチド類似体」は、塩基部分、糖部分またはリン酸部分のいずれかに対する何らかのタイプの修飾を含むヌクレオチドである。ヌクレオチドに対する修飾は、当該技術分野では周知であり、それらとしては、例えば、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、および2−アミノアデニン、ならびに糖部分またはリン酸部分での修飾が挙げられる。本明細書で用いる「代用ヌクレオチド」は、ヌクレオチドと同様の機能的特性を有するが、リン酸部分を含有しない分子、例えば、ペプチド核酸(PNA)である。代用ヌクレオチドは、ワトソン・クリックまたはフーグスティーン様式で核酸を認識するであろうが、リン酸部分以外の部分によって互いに連結している分子である。代用ヌクレオチドは、適切なターゲット核酸と相互作用すると二重らせん型構造になることができる。
【0099】
他のタイプの分子をヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体に連結させて、コンジュゲートを作ることもできる。コンジュゲートは、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体に化学的に連結していることがある。こうしたコンジュゲートとしては、コレステロール部分などの脂質部分が挙げられるが、これらに限定されない(Letsingerら.,Proc Natl Acad Sci USA 1989,86:6553−6。これは、少なくとも核酸コンジュゲートについてのその教示に関して、参照として本明細書に取り入れられている)。本明細書で用いる用語核酸は、核酸のこうしたコンジュゲート、類似体および変異体を包含する。
【0100】
本明細書において説明するものなどの核酸は、標準的な化学合成法を用いて作製することができ、または酵素的方法もしくは任意の他の公知の方法を用いて生産することができる。こうした方法は、標準的な酵素的消化、その後のヌクレオチドフラグメントの単離(例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3d Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2001, Chapters 5,6参照)から、例えば、MilligenまたはBeckman System 1Plus DNA合成装置(例えば、マサチューセッツ州、バーリントンのMilligen−BiosearchのModel 8700自動合成装置、またはABI Model 380B)を使用するシアノエチルホスホロアミダイド法による純粋合成法にまで及び得る。オリゴヌクレオチドの作製に有用な合成方法も、Ikutaら,Ann Rev Biochem 1984,53:323−56(ホスホトリエステル法およびホスファイト−トリエステル法)、およびNarangら,Methods Enzymol 1980,65:610−20(ホスホトリエステル法)に記載されている。タンパク質核酸分子は、Nielsenら,Bioconjug Chem 1994,5:3−7により記載されたものなどの公知の方法を用いて作製することができる。(これらの各参照文献は、少なくとも核酸合成についてのそれらの教示に関して、参照により本明細書に取り入れられている)。
【0101】
「アプタマー」は、ターゲット分子と相互作用することができる核酸分子である。これらも第二活性物質としての使用に適する。代表的なアプタマーは、折り重なって幹−ループまたはG−カルテットなどの被定義二次および三次構造になる、塩基数15〜50にわたる長さの小さな核酸である。アプタマーは、小さな分子、例えばATP(米国特許第5,631,146号)およびテオフィリン(米国特許第5,580,737号)、ならびに大きな分子、例えば逆転写酵素(米国特許第5,786,462号)およびトロンビン(米国特許第5,543,293号)に結合することができる。様々な異なるターゲット分子に結合させるためのアプタマーの製造および使用方法の代表例は、次の非限定的な米国特許リストの中で見つけることができる;5,476,766、5,503,978、5,631,146、5,731,424、5,780,228、5,792,613、5,795,721、5,846,713、5,858,660、5,861,254、5,864,026、5,869,641、5,958,691、6,001,988、6,011,020、6,013,443、6,020,130、6,028,186、6,030,776、および6,051,698(これらは、少なくともアプタマーについてのそれらの教示に関して、参照により本明細書に取り入れられている)。
【0102】
さらなる核酸分子としては、分子内的にまたは分子間的に化学反応を触媒することができる核酸分子である「リボザイム」が挙げられる。従って、リボザイムは、触媒的核酸である。ハンマーヘッドリボザイム(例えば、次の米国特許:5,334,711、5,436,330、5,616,466、5,633,133、5,646,020、5,652,094、5,712,384、5,770,715、5,856,463、5,861,288、5,891,683、5,891,684、5,985,621、5,989,908、5,998,193、5,998,203、LudwigおよびSproatによるWO 9858058、LudwigおよびSproatによるWO 9858057およびLudwigおよびSproatによるWO 9718312(しかし、これらに限定されない))、ヘアピンリボザイム(例えば、次の米国特許:5,631,115、5,646,031、5,683,902、5,712,384、5,856,188、5,866,701、5,869,339、および6,022,962(しかし、これらに限定されない))、およびテトラヒメナリボザイム(例えば、次の米国特許:5,595,873および5,652,107(しかし、これらに限定されない))などの天然の系において見出されるリボザイムに基づく、ヌクレアーゼまたは核酸ポリメラーゼタイプの反応を触媒する多数の異なるタイプのリボザイムがある。天然の系では見いだされないが、新たに特定の反応を触媒するように工学処理されたリボザイムも多数ある(例えば、次の米国特許:5,580,967、5,688,670、5,807,718、および5,910,408(しかし、これらに限定されない))。一般に、リボザイムは、ターゲット基質を認識し、それに結合し、その後、それを切断することにより、核酸基質を切断する。この認識は、主としてカノニカルまたは非カノニカル塩基対相互作用に基づくことが多い。この特性は、リボザイムを、ターゲット特異的核酸切断の特に優良な候補にする。ターゲット基質認識はターゲット基質配列に基づくからである。様々な異なる反応を触媒するためのリボザイムの作製および使用方法の代表例は、次の非限定的米国特許リストの中で見つけることができる:5,646,042、5,693,535、5,731,295、5,811,300、5,837,855、5,869,253、5,877,021、5,877,022、5,972,699、5,972,704、5,989,906、および6,017,756。これらの特許は、すべて、少なくともリボザイムについてのそれらの教示に関して、参照により本明細書に取り入れられている。
【0103】
リンカー
本開示セルロース/活性物質複合材のリンカー成分は、第一および第二活性物質への結合を形成し、それらを互いに連結させることができる、任意の化合物であり得る。従って、リンカーは、一般に、少なくとも2つの官能基、例えば、第一活性物質との結合を形成するために使用することができる1つの官能基、および第二活性物質との結合を形成するために使用することができるもう1つの官能基を含有する。一般に、必須ではないが、第一活性物質との結合を形成するために使用されるリンカー上の官能基は、そのリンカーの少なくとも一方の末端にあり、および第二活性物質との結合を形成するために使用される官能基は、そのリンカーの他方の末端にある。
【0104】
一部の態様において、リンカーは、第一および第二活性物質上の求電子性官能基と反応して結合を形成することができる、求核性官能基を含むことがある。あるいは、リンカーは、第一および第二活性物質上の求核性官能基と反応して結合を形成することができる、求電子性官能基を含むことがある。尚、さらに、リンカーは、第一および第二活性物質上の求電子性および求核性官能基と反応して結合を形成することができる、求核性および求電子性官能基を含むことがある。様々な組み合わせ方を下の表に示す。
【0105】
【化4】

本開示第一および第二活性物質を互いに直接付けることはできる一方で、本明細書において説明するようなリンカーの使用は、第二活性物質と再生セルロースに埋め込まれた第一活性物質との間により多くの距離(従って、より大きな移動の自由)をもたらすことができる。この取り付けは、当該技術分野において公知の反応方法による、共有結合によるものであり得る。第一活性物質と第二活性物質を、リンカーを介して付ける場合、第一活性物質を最初にリンカーにカップリングさせ、その後、それを第二活性物質に付ける。あるいは、リンカーを最初に第二活性物質にカップリングさせ、その後、第一活性物質に付ける。
【0106】
リンカーは、様々な長さ、例えば、原子数1から20の長さのものであり得る。例えば、リンカーは、原子数1から2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の長さのものであり得、これらの指定値のいずれかが、適宜、上の終点および/または下の終点になり得る。述べたように、第二活性物質のほうが、長いリンカー、大きな移動の自由を有することができる。さらに、リンカーは、置換されていることもあり、非置換であることもある。置換されている場合、リンカーは、そのリンカーの骨格に付いている置換基を含有することもあり、またはそのリンカーの骨格に埋め込まれた置換基を含有することもある。例えば、アミン置換リンカーは、そのリンカーの骨格に付いているアミン基を含有することもあり、またはそのリンカーの骨格内に窒素を含有することもある。リンカーに適する部分としては、置換または非置換、分枝状または非分枝状、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基、エーテル、エステル、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアルキレン、ポリアミン、ヘテロ原子置換アルキル、アルケニルまたはアルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基など、およびこれらの誘導体が挙げられるが、それらに限定されない。
【0107】
1つの態様において、リンカーは、C〜C分枝鎖または直鎖アルキル、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチルまたはヘキシルを含むことがある。特定の例において、リンカーは、−(CH−を含むことがあり、この場合のnは、1から5である。もう1つの態様において、リンカーは、C〜C分枝鎖または直鎖アルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシまたはヘキソキシを含むことがある。
【0108】
さらにもう1つの態様において、リンカーは、炭素原子のうちの1個以上が酸素で置換されている(例えば、エーテル)またはアミノ基で置換されている、C〜C分枝鎖または直鎖アルキルを含むことがある。例えば、適するリンカーとしては、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、メチルアミノメチル、メチルアミノエチル、メチルアミノプロピル、メチルアミノブチル、エチルアミノメチル、エチルアミノエチル、エチルアミノプロピル、プロピルアミノメチル、プロピルアミノエチル、メトキシメトキシメチル、エトキシメトキシメチル、メトキシエトキシメチル、メトキシメトキシエチルなどおよびこれらの誘導体を挙げることができるが、それらに限定されない。1つの特定の例において、リンカーは、メトキシメチル(すなわち、−CH−O−CH−)を含むことがある。
【0109】
リンカー部分と第一および第二活性物質との反応は、再生セルロースマトリックス内に埋め込まれているその第一活性物質にその第二活性物質を連結させる化学結合を、結果として生じさせる。前に述べたように、こうした反応は、リンカーと第一および/または第二活性物質との直接求核または求電子相互作用の結果として発生し得る。例えば、求核性官能基を含むリンカーは、第一および/または第二活性物質上の求電子性置換基と直接反応し、そのリンカーをその活性物質に連結させる結合を形成することができる。あるいは、リンカー上の求電子性置換基は、第一および/または第二活性物質上の求核性官能基と直接反応し、そのリンカーをその活性物質に連結させる結合を形成することができる。また、第一および/または第二活性物質は、直接相互作用によってそのリンカーに共有結合させることができ、この場合、試薬が、そのリンカーとその活性物質との反応を開始、媒介または助長する。例えば、リンカーと第一および/または第二活性物質との結合形成反応は、カップリング剤(例えば、カルボジイミド。これは、カルボジイミド媒介カップリングに使用される)または酵素(例えば、グルタミントランスフェラーゼ)の使用によって助長することができる。
【0110】
適するリンカーは、容易に購入することができ、および/または通常の当業者はそれらを合成することができる。そして、通常の当業者は、費用、便宜、入手可能性、様々な反応条件との適合性、リンカーと相互作用することができる第一および/または第二活性物質のタイプなどのような要因に基づき、本開示複合材において使用することができる特定のリンカーを選択することができる。
【0111】
求電子性リンカーおよび求核性活性物質
活性物質を、その活性物質上の求核性置換基と直接または間接的に反応し、化学結合を形成するリンカーに、カップリングさせることができる。求電子性リンカーと反応し、求電子性リンカーへの結合を形成することができるこうした求核性置換基の例としては、求核性もしくは潜在的求核性アミン、カルボキシレートもしくはカルボン酸、アルコールまたはチオール官能基を伴うアミノ酸残基(例えば、システイン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、ヒスチジンおよびリシン)を有する、タンパク質、ペプチドまたは受容体が挙げられるが、これらに限定されない。求核性置換基の他の例としては、求核性もしくは潜在的求核性アミン、カルボキシレート、アルコールまたはチオール官能基を有する、炭水化物、多糖類、脂質、飽和および不飽和脂肪酸、スフィンゴ脂質またはコレステロールが挙げられるが、これらに限定されない。これらおよび他の例は、本明細書の中で開示する。
【0112】
さらに、1つより多くのタイプの求核性置換基が、活性物質上に存在する場合があることが考えられ、従って、それらをリンカーと選択的に反応させることができる。例えば、求核性アミンおよびカルボキシレート官能基の両方を有するペプチド活性物質をアルキル化剤で処理してアミン官能基をブロックし、リンカーとの反応に利用できるカルボキシレート基を放置することができる。逆に、反応条件(例えば、温度および濃度)を制御することにより、反応性の大きなアミン基をリンカー部分と選択的に反応させ、反応性の小さなカルボキシレート基をほぼ未反応で残すことができる。
【0113】
リンカーに付ける活性物質が、上に挙げたものなどの求核性置換基を含む場合、そのリンカーは、求電子性または潜在的求電子性官能基を含むことがある。リンカー上のこうした求電子性官能基の例としては、アルデヒド、アシル誘導体(例えば、アシルアジド、アシルニトリル)、エステルおよび活性化エステル(例えば、スクシンイミジルエステル、スルホスクシンイミジルエステル)、無水物および混合無水物、誘導体化カルボン酸およびカルボキシレート、イミン、イソシアネート、イソチオシアネート、塩化スルホニル、有機ハロゲン化物、ならびにマレイミドが挙げられるが、これらに限定されない。これらの部分は、有機化学の技術分野では周知である。
【0114】
適する求電子性リンカーの一部の特定の例としては、ジアルデヒドおよびジエステルが挙げられる。適するジアルデヒドの例としては、グルタルアルデヒド、グリオキサール、メチルグリオキサール、ジメチル−グリオキサール、マロン酸ジアルデヒド、コハク酸ジアルデヒド、アジピン酸ジアルデヒド、2−ヒドロキシアジピン酸ジアルデヒド、ピメリン酸ジアルデヒド、スベリン酸ジアルデヒド、アゼライン酸ジアルデヒド、セバシン酸ジアルデヒド、マレイン酸アルデヒド、フマル酸アルデヒド、1,3−ベンゼンジアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、1,4−ジホルミルシクロヘキサンなどが挙げられるが、これらに限定されない。ジアルデヒドの代わりに使用することができるジアラルデヒドの等価物としては、2,5−ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,4−ジアルデヒドモノアセタール、1,4−ジアルデヒドジアセタールが挙げられる。ジエステルの例としては、ジアルキルオキシ酸エステル、ジアルキルフマル酸エステル、ジアルキルマロン酸エステル、ジアルキルコハク酸エステル、ジアルキルアジピン酸エステル、ジアルキルアゼライン酸エステル、ジアルキルスベリン酸エステル、ジアルキルセバシン酸エステル、ジアルキルテレフタル酸エステル、ジアルキルイソフタル酸エステル、ジアルキルフタル酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
また、リンカーが、一般には反応性でない場合、それを、より大きな反応性のリンカーに変換することができる。例えば、カルボキシレートまたはカルボン酸基を含有するリンカーは、その条件に依存して、活性物質上の求核性置換基との反応が遅いことがある。しかし、これらのリンカーは、適するアルコール、例えば、4−スルホ−2,3,5,6−トリフルオロフェノール、N−ヒドロキシスクシンイミドまたはN−ヒドロキシスルホスクシンイミドとのカルボジイミドカップリングによって、活性がより大きな活性化エステルに変換することができる。これは、結果として、より反応性が大きい水溶性活性化エステル連結部分を生じさせる。このカップリング反応に使用することができる様々な他の活性化試薬としては、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’−ジイソプロピル−カルボジイミド(DIP)、ヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウム(BOP)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、およびN−メチルモルホリン(NMM)(これらの混合物を含む)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0116】
活性物質が、アミン官能基(例えば、本明細書に開示するような高分子アミン)を含有する場合、それは、求電子性官能基を有するリンカーに対して特に反応性であり得る。こうしたアミン含有活性物質は、リンカーと反応し、例えば、そのリンカーの官能基に依存して、アミン、アミド、カルボキサミド、スルホンアミド、尿素またはチオ尿素結合を形成することができる。活性物質上の求核性官能基が、カルボキシレートを含有する場合、それらは、リンカーと反応し、例えば、そのリンカーの官能基に依存して、エステル、チオエステル、カーボネートまたは混合無水物を形成することができる。活性物質上の求核性官能基が、アルコールまたはチオールを含有する場合、それらは、リンカーの官能基と反応し、例えば、エステル、チオエステル、エーテル、スルフィド、ジスルフィド、カーボネートまたはウレタンを形成することができる。
【0117】
こうした反応の動態は、リンカーと第一および第二活性物質上の求核性官能基の両方の反応性および濃度に依存する。また、アミン官能基を有する活性物質の反応性に影響を及ぼす有意な要因は、そのアミンの類および塩基性である。例えば、多くのタンパク質は、リシン残基を有し、殆どがN末端に遊離アミンを有する。リシンのアミノ基などの脂肪族アミンは、中等度に塩基性であり、殆どの求電子性リンカーと反応性である。しかし、pH8未満である遊離塩基形の脂肪族アミンの濃度は低く、従って、活性物質上の脂肪族アミンと、例えば、イソチオシアネートまたはスクシンイミジルエステルリンカー部分との反応の動態は、強くpH依存性である。8.5から9.5のpHは、求電子性の基を有するリンカーをリシン残基を含有する活性物質に付けるために最も有効であるが、pH7からpH8でも多少反応性はあるだろう。対照的に、タンパク質様活性物質のN末端のアミノ基は、通常、約7のpKaを有し、そのため、時として、ほぼ中性pHでの反応により、それを選択的に修飾することができる。
【0118】
上で述べたように、活性物質上の求核性置換基は、求電子性リンカーと直接または間接的に反応し得る。例えば、求核性置換基は、イソシアネートリンカーと反応することができる。イソシアネートリンカーは、シアルアジドリンカーから容易に誘導することができ、それらは、アミン官能基を含有する活性物質と反応して尿素を形成し、アルコールを含有する活性物質と反応してウレタンを形成し、またチオールを含有する活性物質と反応してチオウレタンを形成する。
【0119】
イソチオシアネートリンカーは、イソチアネートの代替物であり、中等度に活性であるが、水中で相当安定している。イソチオシアネートリンカーは、アミン、アルコールまたはチオール含有細胞表面置換基と反応して、チオ尿素およびチオウレタンを形成するであろう。
【0120】
スクシンイミジルエステルリンカーも、アミン、カルボキシレート、アルコールまたはチオール官能基を含有する活性物質と反応することができる。スクシンイミジルエステルリンカーは、形成される結果としてのアミド結合がペプチドと同じくらい安定である場合、アミンに対して特に反応性である。しかし、一部のスクシンイミジルエステルリンカーは、水溶液に相当不溶性であり得るため、特定の用途には適合することできない。この限界を克服するために、スクシンイミジルエステルリンカーより高い水溶性を一般に有するスルホスクシンイミジルエステルリンカーを使用することができる。一般に、スルホスクシンイミジルエステルリンカーは、N−ヒドロキシスルホスクシンイミドおよび1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを含有する無アミン緩衝液にそのリンカーを溶解することにより、単純なカルボン酸含有リンカーからインサイチューで作製することができる。また、スルホスクシンイミジルエステルリンカーと同じ方法で、4−スルホ−2,3,5,6−テトラフルオロフェノールから4−スルホ−2,3,5,6−テトラフルオロフェノール(STP)エステルリンカーを作製することができる。
【0121】
上で述べたように、カルボン酸含有リンカーは、より高い反応性のリンカーに変換することができる。例えば、カルボン酸含有リンカーを活性化エステルまたは混合無水物に変化し、それを使用して、より反応性の低い芳香族アミンおよびアルコール含有活性物質を修飾することができる。
【0122】
塩化スルホニル含有リンカーは、非常に反応性であるが、これらの試薬は、水中で、特に、一部の芳香族アミンとの反応に必要なより高いpHでは、不安定であり得る。従って、低温で、塩化スルホニル基を有するリンカーを活性物質上の求核性官能基に付けることが最良である。活性物質の求核性官能基がアミンである場合、形成されるスルホアミド結合は、極めて安定である。さらに、塩化スルホニル含有リンカーは、フェノール(チロシンを含む)、脂肪族アルコール(多糖類を含む)、チオール(例えば、システイン)およびイミダゾール(例えば、ヒスチジン)とも反応することができる。
【0123】
アルデヒド含有リンカーは、アミンを含有する求核性置換基と反応してシッフ塩基を形成することができる。
【0124】
有機ハロゲン化物含有リンカーは、ハロゲン化物(例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素)に結合した炭素原子を含有する。これらの部分は、アミン、カルボキシレート、アルコールまたはチオール官能基を含有する活性物質と反応して、例えばアミン、エステル、エーテルまたはスルフィド結合を形成することができる。
【0125】
求核性リンカーおよび求電子性活性物質
もう1つの例において、第一および/または第二活性物質を、その活性物質上の求電子性官能基と反応し、化学結合を形成することができるリンカーと、カップリングさせることができる。リンカーと反応し、リンカーへの結合を形成することができるこうした求電子性官能基の例としては、求電子性または潜在的求電子性原子(例えば、エステルおよび活性化エステル(例えば、スクシンイミジルエステル、スルホスクシンイミジルエステル)、アルデヒド、アシル誘導体(例えば、アシルアジド、アシルニトリル)、無水物および混合無水物もしくカルボキシレートの中に見出されるものなどのカルボニル炭素原子、またはイミン、イソシアネートもしくはイソチオシアネート中の炭素原子、またはハロゲン化炭素原子)を有する、タンパク質、ペプチドまたは受容体が挙げられるが、これらに限定されない。求電子性置換基の他の例としては、上で述べたものなどの求電子性または潜在的求電子性炭素原子を有する、炭水化物、多糖類、脂質、飽和および不飽和脂肪酸またはコレステロールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
また、求電子性官能基が一般には反応性でない場合、それらをより反応性の高い求電子性化学種に変換することができる。例えば、カルボキシレートまたはカルボン酸基を含有する活性物質は、条件に依存して、求核性の基を含むリンカーに対してあまり反応性でないことがある。しかし、これらの求電子性置換基は、適するアルコール、例えば4−スルホ−2,3,5,6−テトラフルオロフェノールまたはN−ヒドロキシスルホスクシンイミド、とのカルボジイミドカプリングによって、より反応性の高い活性化エステルに変換することができる。この結果、活性物質上のより反応性の高い求電子性活性化エステル官能基が得られる。
【0127】
上で論じたものなどの求電子性官能基を有する活性物質にリンカーを付けることができる場合、そのリンカーは、一般には求核性または潜在的求核性である。適する求核性リンカーの例としては、ヒドラジン、アミン、アルコール、カルボキシレートまたはチオールが挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物は、一般に、有機化学の技術分野では周知である。
【0128】
求核性リンカーがアミン官能基を含有する場合、それは、求電子性官能基を含む活性物質に対して特に反応性である。こうしたアミン含有リンカーは、活性物質と反応し、例えば、その活性物質上の求電子性官能基に依存して、アミド、カルボキサミド、スルホンアミド、尿素またはチオ尿素結合を形成することができる。求核性リンカーがカルボキシレートを含有する場合、それらは、活性物質の求電子性官能基と反応し、例えば、エステル、チオエステル、カーボネートまたは混合無水物を形成することができる。求核性リンカーがアルコールまたはチオールを含有する場合、それらは、活性物質の求電子性官能基と反応し、例えば、その置換基に依存して、エステル、チオエステル、エーテル、スルフィド、ジスルフィド、カーボネートまたはウレタンを形成することができる。
【0129】
上で論じた求核性活性物質と求電子性リンカーの相互作用と同じように、活性物質上の求電子性官能基と求核性リンカーの反応の動態は、そのリンカーとその活性物質、両方の反応性および濃度に依存する。活性物質上の求電子性の基と直接または間接的に反応することができる求核性官能基を有する、適するリンカーとしては、ジアミン、ジオール、ジチオール、HN−(CH−NH(この式中、nは、何らかの整数、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12である)、2−ピリジンジスルフィド、アミノアルコール、アミノチオール、ならびにアルコールおよびチオールを含有する化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
カルボジイミド媒介カップリング
さらにもう1つの例では、カルボジイミド媒介カップリングを用いて、リンカーと第一および/または第二活性物質との結合を形成することができる。例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドなどの水溶性カルボジイミドを使用して、ヒドラジンまたはアミン基を有するリンカーを、カルボキシレートまたはカルボン酸官能基を有する活性物質とカップリングさせることができる。カルボキシレートまたはカルボン酸含有活性物質へのカルボジイミド媒介カップリングが可能な適するリンカーは、市販されている。こうしたリンカーの特定の例としては、水溶性カルボジイミド、例えば、塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドおよびメト−p−トルエンスルホン酸1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)−カルボジイミド、アルコールおよび水に可溶性のN−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン、ならびに有機溶媒に可溶性のN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
カルボジイミド媒介カップリングを伴う代替態様では、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドなどの水溶性カルボジイミドを使用して、カルボキシレートまたはカルボン酸基を有するリンカーを、アミン官能基を有する第一および/または第二活性物質にカップリングさせることができる。アミン含有第一および/または第二活性物質へのカルボジイミド媒介カップリングが可能な適するリンカーは、市販されている。
【0132】
例示的組み合わせ
本開示複合材の1つの例において、リンカーと結合させる前の第一活性物質は、求核性官能基を有することがあり、第一および第二活性物質と結合させる前のリンカーは、少なくとも2つの求電子性官能基を有することがあり、ならびにリンカーと結合させる前の第二活性物質は、求核性官能基を有することがある。本開示複合材のもう1つの例において、リンカーと結合させる前の第一活性物質は、求核性官能基を有することがあり、第一および第二活性物質と結合させる前のリンカーは、求電子性および求核性官能基を有することがあり、ならびにリンカーと結合させる前の第二活性物質は、求電子性官能基を有することがある。本開示複合材のさらにもう1つの例において、リンカーと結合させる前の第一活性物質は、求電子性官能基を有することがあり、第一および第二活性物質と結合させる前のリンカーは、求核性および求電子性官能基を有することがあり、ならびにリンカーと結合させる前の第二活性物質は、求核性官能基を有することがある。本開示複合材の尚、さらにもう1つの例において、リンカーと結合させる前の第一活性物質は、求電子性官能基を有することがあり、第一および第二活性物質と結合させる前のリンカーは、少なくとも2つの求核性官能基を有することがあり、ならびにリンカーと結合させる前の第二活性物質は、求電子性官能基を有することがある。
【0133】
本開示複合材の1つの例において、リンカーと結合させる前の第一活性物質は、高分子アミンであり得、第一および第二活性物質と結合させる前のリンカーは、ジアルデヒドまたはジエステルであり得、ならびにリンカーと結合させる前の第二活性物質も高分子アミンであり得る。本開示組成物のもう1つの例において、リンカーと結合させる前の第一活性物質は、ポリアミド、タンパク質またはポリアルキレンイミンであり得、第一および第二活性物質と結合させる前のリンカーは、ジアルデヒドまたはジエステルであり得、ならびにリンカーと結合させる前の第二活性物質は、タンパク質、核酸、抗菌、抗ウイルスまたは中和剤であり得る。本開示複合材のさらにもう1つの例において、リンカーと結合させる前の第一活性物質は、高分子アミン、ポリアルキレンイミン、多価アルコールまたはタンパク質であり得、第一および第二活性物質と結合させる前のリンカーは、アミノアルデヒド、アミノエステル、ヒドロキシアルデヒドまたはヒドロキシエステルであり得、ならびにリンカーと結合させる前の第二活性物質は、タンパク質、抗菌、抗ウイルスまたは中和剤であり得る。本開示複合材のもう1つの例において、リンカーと結合させる前の第一活性物質は、ポリエステルまたはタンパク質であり得、第一および第二活性物質と結合させる前のリンカーは、ジアミン、ジオール、ジチオール、アミノアルコールまたはアミノチオールであり得、ならびにリンカーと結合させる前の第二物質は、ポリエステル、タンパク質、核酸、抗菌、抗ウイルスまたは中和剤であり得る。
【0134】
方法
イオン液体(IL)/セルロース組成物の溶解および再生を含むセルロースマトリックスへの材料の捕捉法を、本明細書において開示する。その中に実質的に均一に分布している第一活性物質を含有することができる前記再生セルロースは、1つ以上の他の第二活性物質で直接官能化することができ、またはリンカーで誘導体化し、その後、他の第二活性物質(単数もしくは複数)で官能化することができる。本開示方法の利点は、第一および/または第二活性物質の連結を、セルロースおよび活性物質(例えば、タンパク質)を可溶化することができるイオン液体中で行うことができることである。他の溶媒系は、それらの活性物質を不活性にすることがある。これらの方法は、紙および衣類のようなセルロース製品への活性(例えば、生物学的または化学的活性)の組み込みに対処することができる。さらに、本開示方法および組成物が、物質をその上にまたは中に捕捉する様々な形態の複合材、例えば、フィルム、ビーズ、粒子、フレーク、繊維、基板、コーティング、カプセル、ゲルなどに適用できることは、当業者には明らかであろう。
【0135】
1つの態様において、再生セルロースマトリクスと第一活性物質とを含む組成物を生じさせること(この場合、該第一活性物質は、該再生セルロースマトリックス内に実質的に均一に分布している);前記第一活性物質をリンカーと接触させること(この場合、該リンカーは、前記第一活性物質に結合する);および第二活性物質を前記リンカーと接触させること(この場合、該リンカーは、第二活性物質に結合する)、これらによって、セルロース−活性物質複合材を生じさせることを含む、セルロース/活性物質の作製方法を、本明細書において開示する。
【0136】
一部の例において、リンカーは、第二活性物質をそのリンカーと接触させる前に、第一活性物質と接触させることができる。あるいは、リンカーは、第一活性物質をそのリンカーと接触させる前に、第二活性物質と接触させることができる。尚、さらに、リンカーは、再生セルロースマトリックスと第一活性物質とを含む組成物を生じさせる前に、第一活性物質と接触させることができる。また、1つの例において、リンカーは、第一および第二活性物質と同時に接触させることができる。
【0137】
本開示方法は、広範な材料(すなわち、「活性物質」)の捕捉を可能にし、その結果、活性物質(単数または複数)が再生セルロースマトリックス全体にわたって実質的に均一に分布している複合材が得られる。再生セルロースマトリックスへの物質の組み込みまたは捕捉に関する1つの方法は、米国特許第6,808,557号に開示されており、これは、その全体が、ならびに再生セルロースおよび再生セルロースへの物質の捕捉についてのその教示に関して、参照により本明細書に取り入れられている。
【0138】
本開示方法では、1つ以上の第一活性物質を再生セルロースマトリックス内に捕捉することができる。例えば、可溶化セルロースを含有する親水性イオン液体への分散または溶解により、1つ以上の第一活性物質をカプセル封入または捕捉することができる。イオン液体には、水、有機溶媒および窒素含有塩基が実質的にない場合もある。固体マトリックスとしてのセルロースのその後の再構成により、再生セルロースマトリックス内に分散している第一活性物質を得ることができる。結果として生じる材料は、再生セルロースマトリックス全体にわたって実質的に均一に分散された第一活性物質を含有し得る。
【0139】
上に開示した第一活性物質と反応することができるリンカーを、次に、その材料に付加させ、その後、そのリンカーに付けることができる(例えば、そのリンカーとの結合を形成することができる)第二活性物質を付加させることができる。あるいは、再生セルロースマトリックス内に捕捉された第一活性物質と結合を形成することができる第二活性物質を、リンカーを必要とすることなく、そのマトリックスに直接付加させることができる。さらにもう1つの態様では、リンカーを第二活性物質に結合させることができ、結果として生じたリンカー−第二活性物質コンジュゲートを、再生セルロースマトリックス中に分布している第一活性物質に付加させることができる。
【0140】
さらなる例において、本開示方法は、セルロースマトリックス内に分子材料、ナノスケール材料および巨視的材料が組み込まれているセルロース/活性物質複合材の作製を含む。例えば、セルロースと活性物質の両方が不溶性であるか、溶解困難(すなわち、実質的に不溶性)である再生用溶液中の固体第一活性物質を含有する親水性イオン液体溶液からセルロースマトリックスを再生させることにより、こうした第一活性物質を封入する方法を開示する。
【0141】
もう1つの例において、本開示方法は、親水性イオン液体に溶解または分散されたセルロースと第一活性物質とを含む複合体の作製を含み、この場合、前記イオン液体溶液には、実質的に水、非イオン性有機溶媒および窒素含有塩基がない。その組成物を、セルロースと第一活性物質の両方が実質的に不溶性である液体非溶媒希釈液と接触させて、液相と、第一活性物質を封入するマトリックスとしての再生固体セルロース相とを形成し、それによって、セルロース封入第一活性物質を含む材料を形成することができる。その後、残留親水性イオン液体を除去することができる。
【0142】
IL/セルロース複合体
本開示方法および組成物において使用することができるイオン性液体は、イオン化した化学種(すなわち、カチオンおよびアニオン)を含有し、通常は約150℃未満の融点を有する。一部の場合、イオン液体は、典型的にはアンモニウム、イミダゾリニウムまたはピリジニウムイオンである1つ以上のカチオンを含有する有機塩であるが、多くの他のタイプが公知であり、本明細書において開示する。
【0143】
イオン液体は、セルロースの溶解に使用することができる(米国特許第6,824,559号およびSwatloskiら,J Am Chem Soc 2002,124:4974−4975参照)。米国特許第1,943,176号において、Graenacherは、液体N−アルキルピリジニウムまたはN−アリールピリジニウム塩化物塩中、特にピリジンなどの窒素含有塩基の存在下でセルロースを加熱することによる、セルロース溶液の作製プロセスを、初めて開示した。しかし、この発見は、その溶融塩系が、同時に多少弾性であったため、実用価値が殆どない新規性として扱われてきたようである。この独創的な研究は、イオン液体が本質的に知られておらず、溶媒の一類としてのイオン液体の用途および価値が理解されていなかった時点では手付かずであった。今では、イオン液体は、十分に確立された類の液体であり、化学的、生物学的および分離プロセスにおいて従来の有機溶媒に代わるものとして用いられている。
【0144】
Linkoおよび共同研究者は、塩化N−エチルピリミジニウム(NEPC)とジメチルホルムアミドの混合物に比較的低分子量のセルロース(DP=880)を溶解し、続いて30℃に冷却し、様々な微生物細胞をその溶液に組み込み、その後、水との混合によりそのセルロースを固体形に再生させたことを報告した(Linkoら,Enzyme Microb Technol 1979,1:26−30)。この研究グループは、NEPCとジメチルスルホキシドの混合物に溶解した1パーセントセルロース溶液への酵母細胞の捕捉、ならびに幾つかの有機溶媒に溶解した7.5から15パーセントの二または三酢酸セルロースを使用する捕捉も報告した。(Weckstromら,in Food Engineering in Food Processing,Vol.2,Applied Science Publishers Ltd.,1979,pp.148−151)。
【0145】
ここで使用する親水性イオン液体溶液には、水、水もしくはアルコール混和性有機溶媒、または窒素含有塩基が実質的になく、可溶性セルロースを含有する。溶体がない考えられる有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、水溶性アルコール、ケトンまたはアルデヒド、例えばエタノール、メタノール、1−もしくは2−プロパノール、t−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、エチレングリコール、プロピレングリコール、C〜Cアルキルおよびアルコキシエチレングリコールならびにプロピレングリコール、例えば2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコールなどのような溶媒が挙げられる。
【0146】
親水性イオン液体のカチオンは、環状であり、構造の点では下に示す式に対応する:
【0147】
【化5】

これらの式中、RおよびRは、独立して、C〜Cアルキル基またはC〜Cアルコキシアルキル基であり、R、R、R、R、R、RおよびR(R〜R)は、存在するとき、独立して、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシアルキル基、またはC〜Cアルコキシ基である。他の例において、RおよびR基は、両方とも、C〜Cアルキルであるが、一方はメチルであり、ならびにR〜Rは、存在するとき、Hである。例示的C〜Cアルキル基およびC〜Cアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、2−エチルブチル、2−メチルペンチルなどが挙げられる。対応するC〜Cアルコキシ基は、カチオン環にも結合している酸素原子に結合した上記C〜Cアルキル基を含有する。アルコキシアルキル基は、アルキル基に結合したエーテル基を含有し、この場合、合計で6個以下の炭素原子を含有する。2つの異性体1,2,3−トリアゾールがあることに注意なければならない。一部の例では、カチオン形成に必要とされないすべてのR基がHであることもある。
【0148】
「存在するとき」というフレーズは、すべてのカチオンがすべての上記番号付きR基を含有するとは限らないため、置換基R基に関して本明細書で用いられることが多い。すべての考えられるカチオンは、少なくとも4つのR基(これは、Hである場合もある)を含有するが、すべてのカチオンにRが存在する必要はない。
【0149】
「実質的に不在」および「実質的にない」というフレーズは、例えば、約5重量パーセント未満の水が存在するという意味と同義で用いられる。一部の例では、約1パーセント未満の水が組成物中に存在する。窒素含有塩基の存在に関しても同じ意味に解釈する。
【0150】
考えられるイオン液体カチオンに対するアニオンは、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素またはヨウ素)アニオン、過塩素酸アニオン、擬ハロゲンアニオン、例えばチオシアン酸アニオンおよびシアン酸アニオン、またはC〜Cカルボン酸アニオンである。擬ハロゲン化物は、一価であり、ならびにハロゲン化物のものと同様の特性を有する(Schriverら,Inorganic Chemistry,W.H.Freeman & Co.,New York,1990,406−407)。擬ハロゲン化物としては、シアン化物アニオン(CN)、チオシアン酸アニオン(SCN)、シアン酸アニオン(OCN)、雷酸アニオン(CNO)およびアジ化物アニオン(N)が挙げられる。1〜6個の炭素原子を含有するカルボン酸アニオン(C〜Cカルボン酸アニオン)は、ギ酸アニオン、酢酸アニオン、プロピオン酸アニオン、酪酸アニオン、ヘキサン酸アニオン、マレイン酸アニオン、フマル酸アニオン、シュウ酸アニオン、乳酸アニオン、ピルビン酸アニオンなどによって示される。本開示組成物中に存在することができるアニオンのさらに他の例としては、硫酸アニオン、亜硫酸アニオン、リン酸アニオン、亜リン酸アニオン、硝酸アニオン、亜硝酸アニオン、次亜塩素酸アニオン、亜塩素酸アニオン、過塩素酸アニオン、重炭酸アニオンなど(これらの混合物を含む)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0151】
ここで使用される考えられるイオン液体は、親水性であり、従って、米国特許第5,827,602号に記載されている疎水性イオン液体、またはトリフルオロメタンスルホン酸アニオンもしくはトリフルオロ酢酸アニオンの場合のように炭素原子に共有結合した1つ以上のフッ素原子を含有する米国特許第5,683,832号のものとは異なる。
【0152】
イオン液体の一部の追加例としては、次の第四アンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない:BuNOH、BuN(HPO)、MeNOH、MeNCl、EtNPF、およびEtNCl。
【0153】
考えられる溶媒は、2つ以上の考えられるイオン液体の混合物も包含し得る。
【0154】
1つの例において、カチオン形成に必要とされないすべてのR基、すなわち、上に示したイミダゾリウム、ピラゾリウムおよびトリアゾリウムカチオン以外の化合物についてのRおよびR以外のものは、Hである。従って、上に示したカチオンは、下に示す構造(これらの構造において、RおよびRは、前に説明したとおりである)に対応する構造を有することがある。
【0155】
【化6】

他の環構造との縮合がない単一の5員環を含有するカチオンが、ここでの使用に適する。これらのカチオンから成るイオン液体を使用するセルロース溶解法も考えられる。この方法は、実質的に水が不在の状態でこれらの5員環カチオンおよびアニオンから成る親水性イオン液体とセルロースを混合して、混合物を形成することを含む。溶解が達成されるまで、この混合物を攪拌する。例示的カチオンを下に示す(この場合、R、R、およびR〜R(存在するとき)は、前に定義したとおりである)。
【0156】
【化7】

他の環構造との縮合がない単一の5員環を含有するカチオンのうち、構造の点で式Aに対応するイミダゾリウムカチオンも適する(この式中、R、RおよびR〜Rは、前に定義したとおりである)。
【0157】
【化8】

さらなる例では、N,N−1,3−ジ−(C〜Cアルキル)置換イミダゾリウムイオン、すなわち、式AのR〜Rが、各々Hであり、RおよびRが、独立して、各々、C〜Cアルキル基またはC〜Cアルコキシアルキル基であるイミダゾリウムカチオン、を使用することができる。さらに他の例では、1−(C〜C−アルキル)−3−(メチル)イミダゾリウム[C−mim(この場合、n=1〜6)]カチオンおよびハロゲンアニオンを使用することができる。さらにもう1つの例では、構造の点で下の式Bに対応する化合物によって示されるカチオン(この場合、式AのR〜Rは、各々、ヒドリドであり、Rは、C〜C−アルキル基またはC〜Cアルコキシアルキル基である)。
【0158】
【化9】

開示するイオン液体は、約150℃の温度またはそれ未満で、例えば約100℃の温度またはそれ未満で、且つ、マイナス100℃の温度またはそれより上で、液体であり得る。例えば、N−アルキルイソキノリニウムおよびN−アルキルキノリニウムハロゲン化物塩は、約150℃未満の融点を有する。塩化N−メチルイソキノリニウムの融点は、183℃であり、ヨウ化N−エチルキノリニウムは、158℃の融点を有する。他の例において、考えられるイオン液体は、約120℃の温度またはそれ未満で、且つ、約マイナス44℃の温度より上で液体である(溶融している)。一部の例において、適するイオン液体は、約マイナス10℃から約100℃の温度で液体である(溶融している)ことができる。
【0159】
超音波浴において約100℃に加熱することにより(例えば、約80℃まで加熱する)、最も有効には、家庭用電子レンジを使用するサンプルのマイクロ波加熱を用いることにより、誘導体化を伴わずイオン液体に高濃度でセルロースを溶解することができる。マイクロ波加熱装置を使用して、親水性イオン液体とセルロースの混合物を約100℃から約150℃の温度に加熱することができる。
【0160】
本明細書において開示するイオン液体は、極めて低い蒸気圧を有することができ、一般に、沸騰前に分解する。RおよびRのうちの一方がメチルである、実例となるN,N−1,3−ジ−C〜C−アルキルイミダゾリウムイオン含有イオン液体についての、例示的液化温度(すなわち、融点(MP)およびガラス転移温度(T))および分解温度を下の表1に示す。
【0161】
【化10】

【0162】
【化11】

実例となる1−アルキル−3−メチル−イミダゾリウムイオン液体[C−nim]X(この場合、n=4および6、X=Cl、Br、SCN、(PF、(BF)を調製した。周囲条件下、約100℃への加熱で、超音波でおよびマイクロ波加熱でのこれらの実例となるイオン液体へのセルロース(ウィスコンシン州、ミルウォーキーのAldrich Chemical Co.からの繊維状セルロース)の溶解を試験した。マイクロ波加熱を用いることにより、溶解を増進させた。セルロース溶液は、非常に短時間で調製することができ、これは、エネルギー効率がよく、付随する経済的恩恵を提供する。
【0163】
イオン液体中のセルロースの1つの考えられる溶液は、その溶液の約5から約35重量%、約5から約25重量%、約5から約20重量%、約5から約15重量%、約10から約35重量%、約10から約25重量%、約15から約35重量%、または約15から約25重量%の量のセルロースを含有することができる。他の例において、イオン液体は、その溶液の約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35重量%の量のセルロースを含有することができ、これらの指定値のいずれかが、適宜、上の終点または下の終点になり得る。さらに、イオン液体中のセルロースの1つの考えられる溶液は、その溶液の約5から約35重量部、約5から約25重量部、約5から約20重量部、約5から約15重量部、約10から約35重量部、約10から約25重量部、約15から約35重量部、または約15から約25重量部の量のセルロースを含有することができる。他の例において、イオン液体は、その溶液の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35重量部の量のセルロースを含有することができ、これらの指定値のいずれかが、適宜、上の終点または下の終点になり得る。また、セルロースは、本開示イオン液体への高い溶解度を示す。粘稠な複屈折液晶溶液が、例えば約10から約25重量%または約10から約25重量部の、高濃度で得られる。
【0164】
活性物質が封入された再生セルロースマトリックスの作製には、水または窒素含有塩基が実質的にない溶融イオン液体溶媒中のセルロースから成る溶液が考えられる。従って、そうした液体または溶液は、約1パーセント以下の水または窒素含有塩基を含有する。それ故、溶液を調製するとき、水または窒素含有塩基が不在の状態でイオン液体とセルロースを混合して混合物を作ることによりそれを調製する。
【0165】
上で述べたように、イオン液体は、カチオンおよびアニオンから成る。1つの例において、前記溶液は、親水性液体に溶解したセルロースから成るものであり得、この親水性液体のカチオンは、前に論じたように、他の環構造との縮合がない単一の5員環を含有する。この溶液は、セルロース上でさらなる反応、例えばアシル化、を行って酢酸もしくは酪酸セルロースを形成するため、または再生のために、そのまま使用することができる。
【0166】
さらに、非誘導体化セルロースの溶解および再生のための溶媒としての、塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム([Cmim]Cl)などのイオン液体の使用は、記載されている(PCT公開第WO03/029329 A2;Swatloskiら,J Am Chem Soc 2002,124:4974−4975;Swatloskiら,「Ionic Liquids for the Dissolution and Regeneration of Cellulose」,In Molten Salts XIII:Proceedings of the International Symposium,Truloveら,Eds.,The Electrochemical Society:Pennington,NJ,2002,Vol.2002−19,pp.155−164。これらは、少なくともIL/セルロースの溶解および再生方法についてのそれらの教示に関して、参照により本明細書に取り入れられている)。
【0167】
また、Wuら(Biomacromolecules 2004,5:266−268)は、塩化1−アルキル−3−アリルイミダゾリウムILを如何にしてセルロースの均一誘導体化のための溶媒として使用することができるかを開示しており、ならびにHeinzeら(Liebert and Heinze,Biomacromolecules 2005,6:333−340)は、セルロースの同様の誘導体化のためのフッ化アルキルアンモニウム/ジメチルスルホキシド溶媒系の使用を記載している。対照的に、本明細書に開示する方法は、ILの溶解特性をセルロースに用いて、再生セルロースフィルムへのRhus vernificeraラッカーゼ(E.C.#1.10.3.2)などの高分子の物理的封入を可能にし、ならびに本開示方法は、酵素などの生体分子のIL−セルロース環境と適合性(Turnerら,Biomacromolecules 2004,5:1379−1384;米国特許第6,808,557号)を実証する。酵素活性膜を作製したが、捕捉されたラッカーゼの活性について、水性環境でのその酵素と比較して有意な喪失が観察された。
【0168】
再生
本開示方法において、セルロースは、第一活性物質の存在下でイオン液体から再生される。適する第一活性物質の例は、本明細書の中で開示している。また、本開示方法は、水不溶性金属抽出剤、水不溶性染料および約5マイクロメートルの直径(ほぼ球形でない場合には、最も長い寸法)の磁性粒子を含む、活性物質に特に有用であり、これらは、懸濁液もしくはコロイドを作るために物理的に、またはIL溶媒にそれらの成分を溶解し、その後、複合材料を再生させることにより、IL溶液に分散させることができる。
【0169】
再生時、第一活性物質の分布は、再生セルロースのマトリックス内に実質的に均一であり得る。多くの事例において、再生される固体セルロースは、それを作製する元のセルロースとほぼ同じ分子量を有することができ、ならびに一般に、約1200以上の重合度数(DP)を有することができる。また、再生セルロースには、出発セルロースおよび捕捉イオン液体分解産物を基準として置換基の増加量が実質的にない場合もある。
【0170】
少量のセルロース加水分解が、溶解および再生中に発生することがある。しかし、再生後のセルロースの重量平均分子量は、溶解および再生前のセルロースの約90%であり得る。例えば、セルロースの分子量パーセントは、約90%から約100%、約92%から約98%、約94%から約96%、約90%から約95%、約95%から約100%であり得る。他の例において、セルロースの分子量パーセントは、溶解または再生前のそのセルロースの約90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%であり得、これらの指定値のいずれかが、適宜、上または下の終点になり得る。この結果は、出発セルロースをNMMNOの存在下、セルラーゼで処理して溶解を行う米国特許第5,792,399号のものとは相容れない。
【0171】
再生セルロースには実質的にない置換基は、ILに溶解させたセルロース中に存在しなかったものである。従って、例えば、天然セルロースのヒドロキシル基は酸化されてオキソ(C=O結合を有する置換基)官能基、例えば、ケトン、アルデヒドまたはカルボン酸を形成することがあり、天然セルロースは、一定量のこうした官能基を含有することがある。1つの態様において、ここで用いる溶解/再生プロセスは、元々存在したものと比べて数パーセントより多くの基の形成を生じない。Regenerated Oxidized Cellulose U.S.P.(ROC)の場合のような高レベルのオキソ官能基を含有する酸化セルロースを出発原料として使用する場合もまた、再生セルロースは、溶解および再生後、それらの段階を行う前の存在したものとほぼ同じ量の官能基(例えば、ROCについての約18から約24パーセントのカルボキシル基)を含有する。
【0172】
再生セルロースには実質的にないことがある置換基の別の群は、セルロースを溶解するために他のプロセスで使用される置換基、例えば、ザンテート基、C〜C 2−ヒドロキシアルキル(例えば、2−ヒドロキシエチルおよび2−ヒドロキシプロプル)基、ならびにカルボキシル基、例えばアセチルおよびブチリルである。
【0173】
溶融組成物中のセルロースの第一活性物質に対する重量比は、相当多様であり得る。これは、活性物質のタイプ、所望される活性物質捕捉量などのような要因に依存しうる。例えば、重量で約1000:1から約1:2のセルロース対活性物質の範囲が考えられる。考えられるさらに通常の重量比は、約100:1から約1:1、約75:1から約5:1、約50:1から約10:1、約75:1から約25:1、約100:1から約50:1、約50:1から約1:2、および約10:1から約1:2である。一部の例において、セルロースの活性物質に対する比は、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、21:1、22:1、23:1、24:1、25:1、26:1、27:1、28:1、29:1、30:1、31:1、32:1、33:1、34:1、35:1、36:1、37:1、38:1、39:1、40:1、41:1、42:1、43:1、44:1、45:1、46:1、47:1、48:1、49:1、50:1、51:1、52:1、53:1、54:1、55:1、56:1、57:1、58:1、59:1、60:1、61:1、62:1、63:1、64:1、65:1、66:1、67:1、68:1、69:1、70:1、71:1、72:1、73:1、74:1、75:1、76:1、77:1、78:1、79:1、80:1、81:1、82:1、83:1、84:1、85:1、86:1、87:1、88:1、89:1、90:1、91:1、92:1、93:1、94:1、95:1、96:1、97:1、98:1、99:1、または100:1であり得、これらの範囲のいずれかが、適宜、上または下の終点になり得る。これらの重量比は、再生セルロース製品にも反映される。また、複合材中の再生セルロースの第二活性物質に対する比は、これらの指定値のいずれかであってもよい。
【0174】
塩化物アニオンを含有するイオン液体は、第一活性物質がその中に分布している再生セルロースの作製に最も有効であるように見える。しかし、イオン液体がチオシアン酸アニオン、過塩素酸アニオンおよび臭化物アニオンを含有したときにも妥当な溶解性が観察されたため、塩化物アニオンは、必須ではない。テトラフルオロホウ酸アニオンおよびヘキサフルオロリン酸アニオンを含有するイオン液体については溶解性が観察されなかった。
【0175】
通常の実施では、セルロースをILに溶解して、均一なまたは液晶性異方性溶液を形成する。その後、第一活性物質をそのIL溶液に導入し、媒質(例えば、ナノ粒子または巨視的ビーズ)に溶解または分散させる。その後、そのIL溶液と非溶媒希釈液の接触による再生によってセルロースマトリックスを形成し、結果として、添加剤を同伴する再生セルロース材料(加工に依存して、例えば、フロック、フィルム、膜、繊維またはモノリス)を形成する。
【0176】
IL溶媒にそれらの成分を添加する順序は、この再生および封入プロセスにとって重要ではなく、加工条件下での個々の成分の安定性などの非本質的理由に依存する。セルロースを最初に溶解してIL中の溶液を形成し、続いて第一活性物質を分散させ、再生してもよい。または、第一活性物質をILに分散させ、続いてセルロースを溶解し、その後、セルロースを再生してもよい。
【0177】
再生用流体または非溶媒希釈剤は、活性物質およびセルロースにとって非溶媒である。すなわち、再生用流体は、大量のセルロースおよび第一活性物質を溶解せず、そのため、両方の成分がその再生用流体に実質的に不溶性である。従って、第一活性物質およびセルロースは、独立して、その再生用流体に、約5重量%未満(例えば、1%未満)の程度まで可溶である。イオン液体は、再生用流体と混和性であり、再生用流体とIL相の接触は、活性物質を封入するマトリックスである固体セルロースポリマーの再生を誘導する。
セルロースおよび添加剤のイオン液体溶液のダイを通しての押出しが考えられる場合、その押出しは、周知である多数の様式で達成することができる。例えば、一部の態様において、その溶液が押出される1つ以上のオリフィスを有するダイの表面は、その再生用流体の表面より下にある。他の態様において、その溶液は、再生用流体と接触する前に、ダイオリフィスから空気または別のガス、例えば窒素もしくはアルゴンの中を通って進む。
【0178】
液体非溶媒が、水と混和性である場合もある。例示的液体非溶媒としては、水、アルコール、例えばメタノールまたはエタノール、アセトニトリル、エーテル、例えばフランまたはジオキサン、およびケトン、例えばアセトンが挙げられる。水の利点は、そのプロセスが揮発性有機化合物(VOC)の使用を回避する点である。再生は、揮発性有機溶媒の使用を必要としない。イオン液体は、再生後、乾燥させるか、別様に液体非溶媒を除き、再使用することができる。
【0179】
本明細書で説明する概念は、添加されるIL可溶性化学物質の付加、続いて、セルロースと第一活性物質の両方が全くまたはあまり可溶性でない非溶媒希釈剤を使用する再生を可能ならしめる。粘稠IL媒質内に最初に分散されるセルロースマトリックスへのナノ粒子、および巨視的粒子の組み込みにより、再生セルロースマトリックス内への実質的に均一な分散が生じて、ナノ分散複合材が形成される。その後、そのナノ粒子第一活性物質を、適するリンカーを介して第二活性物質に連結させることができる。
【0180】
開示するこれらの方法は、再生セルロースマトリックス内に封入することが望ましい多数の固体活性物質を含有する複合材の形成に有利であり、特に、水または他の一般的な溶媒に可溶性でない活性物質、例えばナノ粒子または巨視的材料、の組み込みに有利である。
【0181】
このプロセスによって形成されるマトリックスは、その外皮を通した周囲媒質への拡散により、水などの液体媒質への膨潤により、セルロースマトリックスのゆっくりとした制御分解により、またはそのマトリックス内からの活性物質のゆっくりとした溶解により、封入材料の遅速放出を行うことができる。
【0182】
本開示複合材の形態学的最終形は、その再生プロセスに、およびその材料の所望の用途に依存する。例えば、濾過または分離用途のために高表面積ビーズ、シリンダーまたはフロックを製造することができ、これに対して、膜およびセンサー用に薄膜を作製することができる。
【0183】
連結
述べたように、再生セルロースマトリックス内に埋め込まれる第一活性物質は、リンカーおよび第二活性物質にカップリングさせることができる。第一および第二活性物質をリンカーにカップリングさせるための方法を本明細書において開示する。第一および第二活性物質をリンカーにカップリングさせるための他の方法は、当該技術分野において公知の反応である。個々の方法は、その特定の第一活性物質、第二活性物質およびリンカーに依存する。一般に、その中に分布している第一活性物質を含む再生セルロースマトリックスを、その第一活性物質との結合を形成することができるリンカーで処理することができる。あるいは、リンカーおよび第二活性物質を、再生セルロースマトリックス内に捕捉された第一活性物質と接触させる前およびさせた後、カップリングさせることができる。さらなる態様では、第一活性物質をリンカーとカップリングさせ、その後、セルロースIL溶液と接触させることができる。その後、セルロースの再生により、リンカーとカップリングした第一活性物質をその再生セルロース内に実質的に均一に分布させることができる。
【0184】
用途
記載するセルロース/活性物質複合材は、多種多様な用途を有し得る。例えば、再生セルロース/ポリアミン複合材フィルムおよびビーズの作製は、その再生セルロースマトリックスの表面への第一アミンの高い負荷をもたらし、それによって第二活性化学種の直接一段階コンジュゲーションが可能となる。ILに基づく再生プロセスの使用により、フィルムおよびビーズ構造を作製し、タンパク質、核酸、生体分子などのための固定化支持体として使用することができる。
【0185】
こうしたセルロース/活性物質複合材の有用な用途としては、膜/フィルター、燃料電池、分離装置、電解膜、難燃剤、殺菌フィルター、センサー、金属抽出剤、酵素用支持体、濾過用抽出剤材料、金属イオン、生体分子およびガス分子の分離および抽出、膜/抽出剤処理用の磁性粒子、セルロースコーティング用材料改質剤、生物活性剤(制御放出、検知、分解)、金属錯体(検知、制御放出、抽出剤ならびにフィルター用の結合および分離剤)、セルロース着色用の水不溶性染料、検知および指示薬、フォトレジスト、光学的物質またはUVスクリーンとしてのナノ粒子の組み込み、磁気反応性ビーズ用の磁性粒子、濾過および反応床、ナノ粒子触媒、クレーおよび他の難燃材料の分散物、酵素支持体、ポリマー支持電解質、ナノ多孔質材料製造のための空隙形成用ピラー/足場が挙げられるが、これらに限定されない。
【0186】
一部の特定の例において、本開示セルロース/活性物質複合材を使用して、布または紙製品などの物品を形成することができる。1つの例では、活性物質が抗菌剤、抗ウイルス薬および/または中和剤を含むセルロース/活性物質複合材から布を作製することができる。結果として生じる布は、保護衣服、例えば、手術衣、手袋、マスク、包帯などとして使用することができる。これらの布は、ユニフォーム(例えば、ファースト・レスポンダーのユニフォームまたは軍服)に使用することもできる。複合材が抗菌剤、抗ウイルス薬、凝固剤を含む物品は、縫合糸または糸を作製するために使用することができる。
【0187】
本開示複合材は、ポリフェノール、芳香族アミンおよびアミノフェノールをはじめとする様々な化合物を検出するための検知物質として、または酵素を触媒とする変換のための固体支持材料として使用することもできる。さらに、本開示複合材は、分離プロセス(例えば、クロマトグラフィー)および/または一定流量型反応装置において使用することができる。
【実施例】
【0188】
以下の実施例は、開示する主題による方法および結果を説明するために下に示すものである。これらの実施例は、本明細書において開示する主題のすべての態様を包含ためのものではなく、むしろ、代表的な方法および結果を説明するためのものである。これらの実施例は、当業者には明らかである本発明の等価物および変形を除外するためのものではない。
【0189】
数(例えば、量、温度など)に関しては確実に正確であるように努力したが、多少の誤差およびずれは考慮すべきであろう。別の指示がなければ、部は、重量部であり、温度は、℃での温度あるか、周囲温度であり、ならびに圧力は、大気圧またはほぼ大気圧である。反応条件、例えば、成分濃度、温度、圧力ならびに説明するプロセスから得られる製品の純度および収率を最適にするために用いることができる他の反応範囲および条件には、非常に多数の変形および組み合わせがある。こうしたプロセス条件の最適化には、妥当で慣例的な実験しか必要ないであろう。
【0190】
使用するすべての化学物質は、Sigma−Aldrich(ウィスコンシン州、ミルウォーキー)から購入した分析グレードのものであり、別の注記がなければさらに精製せずに使用した。
【0191】
実施例1:官能化IL再生セルロースフィルムの作製
以前に記載された(PCT公開番号WO03/029329 A2;Swatloskiら,J Am Chem Soc 2002,124:4974−4975;Swatloskiら,「Ionic Liquids for the Dissolution and Regeneration of Cellulose」In Molten Salts XIII:Proceedings of the International Symposium,Truloveら,Eds.,The Electrochemical Society:Pennington,NJ,2002;Vol.2002−19,pp.155−164)ようにマイクロ波パルス加熱を用いて、非誘導体化微結晶性セルロース(ウィスコンシン州、ミルウォーキーのAldrich Chemical Co.)をIL、塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム([Cmim]Cl)に溶解して、5重量パーセント(重量%)溶液を作った。約120から150℃で完全に溶解して粘稠透明溶液にした後、その混合物を放置して約60℃に冷却して過冷液体を作った。次に、第二ポリマー(表2参照)をそのセルロース溶液にセルロース成分を基準として約20重量%の濃度で添加し、その混合物を手で均一化し(完全な相互拡散を確保し)、その後、塗工用ロッド(ニューヨーク州、ウィーバーのR&D Specialties)を使用してガラスプレート上でフィルム(1mm厚)としてキャストした。それらのフィルムを再構成し、脱イオン(DI)HOでそれらのフィルムからIL溶媒を浸出させた。完全に再構成した後、フィルムを浴内に配置し、少なくとも24時間、DI HOに浸漬して、フィルムから残留[Cmim]Clを浸出させた。
【0192】
実施例2:X線電子分光法(XPS)
官能化セルロースフィルムの化学構造に関する修飾を、Kratos Analytical Analysis 165 Multitechnique Spectrometerを使用し、10−9トル未満のベース圧力で作動させて測定した。Al Kα放射線の光子源(1486.6電子ボルト(eV))を使用し、固定分析モードで動作する8のチャンネルトロン検出装置を装備した165mm平均半径同心半球型分析装置で放射光電子を分析した。検査スキャンは、160eVのパスエネルギーを用いてとったが、高分解能スキャンは、80eVで収集した。上で説明したようにサンプルを作製し、周囲条件下で空気乾燥させた。
【0193】
実施例3:官能化IL再生セルロースビーズの作製
マイクロ波パルス加熱を用いて、[Cmim]Cl(50.0g)中の微結晶性セルロース(4.8g)の約10重量%溶液を作製した(PCT公開番号WO03/029329 A2;Swatloskiら,J Am Chem Soc,124:4974−4975,2002;Swatloskiら,「Ionic Liquids for the Dissolution and Regeneration of Cellulose」In Molten Salts XIII:Proceedings of the International Symposium,Truloveら,Eds.,The Electrochemical Society:Pennington,NJ,2002;Vol.2002−19,pp.155−164)。その後、その溶液を少し冷却し、1.0gのBSA(ウィスコンシン州、ミルウォーキーのSigma)を添加し、攪拌棒を使用して均質化して、1:5重量比のBSA:セルロースを含有する混合物を調製した。オーバーヘッド超高トルク攪拌機(オンタリオ州、WiartonのCaframo Limited)を850rpmで使用して、急速攪拌高温(100℃)プロピレングリコール(PPG 425)浴内でその溶液を分散させることにより、ビーズを作製した。そのセルロース/[Cmim]Cl/BSA混合物をその高温PPGにゆっくりと添加して分散させて、小さなビーズを形成し、30分間攪拌した。攪拌中、PPG浴の温度を約40℃に降下させて、分散したセルロース/[Cmim]Cl/BSAビーズを硬化させ、後の凝集を防止した。攪拌装置から溶液を取り出し、エタノールをゆっくりと添加して、セルロース複合ビーズの再構成を開始した。それらのビーズをエタノールで5回洗浄し、続いてDI HOで5回洗浄し、その後、1セットのメッシュフィルターを使用して濾過した。0.25〜1.00mmの間の直径を有する主画分を回収し、分画前にDI HO下で保存した。
【0194】
実施例4:官能化セルロース支持体への生体分子の取り付け
再構成されたセルロース複合材料をそれらのDI HO浴から取り出し、18mLの25重量%グルタルアルデヒド(ウィスコンシン州、ミルウォーキーのSigma)および23mLの0.1M リン酸緩衝液(pH7.0)の溶液に添加し、12時間、室温で攪拌した。結果として生じたイミン結合を、2時間、室温で、50mLのシアノ水素化ホウ素カップリング緩衝液(Sigma)、pH7.5を使用して還元した。最後に、それらの材料を大量のDI HOおよびリン酸緩衝液で洗浄して、酵素取り付けの準備を整えた。表面に取り付けるために、7.5mgのRhus vernificeraラッカーゼ(E.C.#1.10.3.2)または100.0mgのリパーゼ(E.C.#3.1.1.3;L−9518)(両方とも、Sigmaから購入)を含有する水溶液に、活性化した支持材料を2時間、室温で入れておいた。その後、材料を0.1%Tween 20、続いてDI HOで洗浄して、静電的に表面に結合した酵素を除去した。使用するまで、材料をDI HO浴中、4℃で保存した。
【0195】
実施例5:ラッカーゼ触媒シリングアルダジン酸化アッセイ
官能化フィルムの表面に結合したラッカーゼの活性を判定するために、UV/Vis分光法を用いてシリングアルダジンの比色酸化をモニターした。各フィルムのサンプルを円形ディスク(d=1.60cm、A=2.01cm)に切断し、2.8mLの20mMリン酸緩衝液(pH7.13)および0.054mgの還元シリングアルダジンを含有する溶液に浸漬した。それらのサンプルを180分間、27℃でインキュベートし、その後、DI HOで洗浄した。各サンプルを、個々に、UV/Vis分光測定用の顕微鏡スライドガラス上に、垂直に載せた。サンプルを、Varian Cary 3C UV−可視分光光度計(カリフォルニア州、パロアルト)で300〜700nm、スキャンした。酸化したシリングアルダジンについての吸光係数(ε=65,000)(Harkin and Obst,Science 1973,180:296−298)および1mmの路長(フィルム厚)を用いてラッカーゼの比活性を計算した。すべての反応を三重反復で行った。
【0196】
実施例6:ブタノールでの酪酸エチルのリパーゼ触媒エステル交換
0.06Mの酪酸エチル(0.016mL)、0.12Mのn−ブタノール(0.022mL)および内標準としての0.06Mの1,3−ジメトキシベンゼン(0.016mL)を2mLのt−ブタノールに添加した。119mgまたは166mgの酵素(それぞれ、ノボザイム435(乾燥)およびB−固定化リバーゼ(湿潤))をその反応溶液に添加し、40℃および150rpmで24時間、反応を進行させた。反応溶液の50μLアリコートを100μLの65:35 MeOH:酢酸緩衝液(pH4.5)で希釈し、1.0mL/分の流量で溶離剤として65:35 MeOH:酢酸緩衝液を使用するC−18 Jordi Gelカラム、150mm×4.6mm(イリノイ州、ディアフィールドのAlltech)を装着したShimadzu HPLC(メリーランド州、コロンビア)に注入した。Shimadzu 屈折率測定検出装置(RID−10A)を使用して、反応生成物、酪酸ブチルの形成を検出し、モニターした。すべての反応は、三重反復で行った(Lauら,Green Chem 2004,6:483−487)。
【0197】
結果および考察
これらの実施例は、IL、塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム([Cmim]Cl)を利用するセルロースの溶解および再生プロセス(PCT公開番号WO03/029329 A2;Swatloskiら,J Am Chem Soc 2002,124:4974−4975;Swatloskiら,「Ionic Liquids for the Dissolution and Regeneration of Cellulose」In Molten Salts XIII:Proceedings of the International Symposium,Truloveら,Eds.,The Electrochemical Society:Pennington,NJ,2002;Vol.2002−19,pp.155−164)を用いて、セルロース−ポリアミン複合材を薄膜としておよびビーズとして作製する単純一段階プロセスを助長することができることを明示している(表2)。複合材に組み込まれた、表面の利用可能なアミノ基は、従来のグルタルアルデヒドバイオコンジュゲーション法(Illanesら,「Immobilization of lactase and invertase on crosslinked chitin」.In Bioreactor immobilized enzymes and cells,Moo−Young,Ed.,Elsevier Applied Science:London,1998,pp.233−249)によって酵素を取り付けるためのアンカー点として使用することができ、これは、バイオアッセイおよび支持反応手段において用いるための表面固定化酵素を作製する直接的方法となる。
【0198】
【化12】

【0199】
【化13】

最初に、高MWタンパク質、ウシ血清アルブミン(BSA)を、透明複合フィルムの形成に導く二次ポリマーとして使用した。280nmでのUV/Visスペクトルの特徴的吸収サインの観察は、バルクセルロースマトリックス内に捕捉されて残存するタンパク質の存在を示していた。これは、膜の表面に第一アミン含有リシン残基が存在し、利用できる可能性を示唆していた(図1に模式図で示す)。これは、グルタルアルデヒドの活性化およびその後の官能化を可能にし、固定化生体触媒反応における固体支持体としての使用に適する材料の製造につながるであろう。このために、X線電子分光法(XPS)を用いてこれらの複合材の表面を分析して、利用可能な表面アミン官能基の存在を確認および定量した(Boraら,J Membr Sci 2005,250:215−222)。パススキャンを行って、各サンプルの表面原子組成を判定し、「天然」セルロース(非再構成)中の0.0原子%、IL再構成セルロース中の0.4原子%、およびBSAを含有するIL再構成セルロース複合材中の5.6原子%である窒素の存在を明らかにした。さらに、N1スペクトルのピークフィット分析(図2)を用いて、両方のIL再構成サンプル上に存在する様々な表面窒素含有基の相対濃度を定量した。IL再構成セルロースの表面上の0.4原子%の窒素については、NOxの相対濃度が58.8%を占め、残りの42.1%が第一アミン基の相対濃度であった。ここでのNOの存在は、単に、表面吸着層を構成する残存イミダゾリウム帰するものであり得る。加えて、NHの存在は、加熱により形成された不純物として存在することがあったイオン液体のカチオン部分からの分解材料に帰する可能性が高い。IL再構成セルロース複合材料の相対表面窒素組成(5.6原子%)は、76.1%NHおよび23.9%NOに帰するものであった。このセルロース複合材上の表面第一アミン基の濃度についての「純粋な」IL再構成セルロースと比較して顕著な増加は、この材料のさらなるコンジュゲーションの可能性を明示している。
【0200】
BSA中のリシン残基のアンカー部位として使用は、そのポリマーの総重量の約6%しか利用せず、これらの潜在的反応部位の有意な数が、そのマトリックスのバルク内に接近不能に埋まったまま残る。酵素取り付け増加を助長するために、より高濃度の第一アミンを含有する一連の他のポリマーを、セルロースフィルムに配合する添加剤として調査した。試験したポリマー(表2)としては、ポリリシン臭化水素酸塩、一定範囲の分子量およびアミン濃度を有する幾つかのJEFFAMINE(登録商標)ポリマー(ユタ州、ソルトレークシティーのHuntsman)、および2つの可変的ポリエチレンイミン(PEI)ポリマーが挙げられる。その後、上で説明したように、それらの複合材フィルムの、結果として生じたアミン官能基を活性化し、官能化した。生体触媒取り付け後、シリンジアルダジンのラッカーゼ触媒酸化を行って、結合した酵素の活性を判定した(表2)。
【0201】
生成した複合フィルムから試験ストリップを作製することにより、生物学的アッセイ用の支持体として使用するためのこれらの材料の適性を、先ず、判定した。作製した材料を、透過式UV/Vis分光法を用いてスクリーニングした。これは、フィルムが光学的に透明であることを必要とし、従って、不透明である(これは、2つのポリマー成分のバルク不混和性およびポリマーマイクロドメイン(例えば、セルロース/分岐ポリエチレンイミン混合物H(表2))の形成を表す)と証明された作製サンプルは、この段階で排除した。
【0202】
グルタルアルデヒド連結方法論を用いてフィルムにラッカーゼを結合させ、標準的なシリングアルダジン酸化アッセイ(Harkin and Obst,Science 1973,180:296−298)を用いてその活性を判定し、それらの結果(表3)を、天然酵素、および以前に報告された封入ラッカーゼを含有するセルロースフィルムからの結果、両方と比較した。全体的に見て、ラッカーゼ活性は、捕捉された酵素のものと等価であるか、それより高かった。各材料に付いているラッカーゼの比活性を計算し、その結果、0.030から0.189にわたる値を得た。これらの値により、Cに付いているラッカーゼの活性のほぼ50%増加が説明された。活性の増加は、酵素の改善された柔軟性、ならびにグルタルアルデヒドとタンパク質の間の安定な結合の形成(Abdulkareemら,Process Biotechnol 2002,37:1387−1394)に起因する可能性が高い。シリンジアルダジンアッセイから得られた結果に基づき、複合材料BおよびCは、この用途に最も適する材料であり、これに対して、二次ポリマーとして線状ポリエチレンイミンを含有する材料Gの動作が最も不良であるように見える。これらの結果は、二次ポリマーの第一アミン濃度と結果として生じるラッカーゼ活性との間に相関関係がないことを示しており、これは、一部の二次ポリマーの[Cmim]Cl IL/セルロース混合物への不良な溶解性および該混合物中での不良な均一性を反映する可能性が高い。
【0203】
走査電子顕微鏡(SEM)撮像法を用いて、セルロース複合材料の均一性およびレオロジーを調査した(図3)。図3Aは、フィルム中いたるところに結晶質物質の異質な領域を示しており、これは、ポリ−リシン臭化水素酸塩の不溶性が、離散した表面反応性「パッチ」を生じさせることを明示している。実際、これらの「パッチ」は、比色ラッカーゼ触媒アッセイ中に顕著になった。BSAおよびJEFFAMINE(登録商標)D−230を含有する均一材料、図3B〜3Cは、それぞれ、最高測定酵素活性を有する材料を表す。それらの均一性および高い比活性に基づき、これらの材料は、タンパク質取り付け部位数増加に備える、より高濃度の表面第一アミン基を有するように見える。画像3D、E、FおよびHa〜bは、分子量の高いJEFFAMIN(登録商標)およびPEIほど減少する、[Cmim]Cl IL−セルロース混合物への溶解性に、材料の均一性が対応し得ることを裏付ける。さらに、より低い活性は、フィルム全体にわたるこれらのコポリマーの不均等な分布に帰する、より低い酵素取り付けレベルに関係付けられるように見える。
【0204】
【化14】

シリンジアルダジンのラッカーゼ触媒酸化に基づき、複合材BおよびCを固体支持体材料として使用できることは明らかである。実施条件下でのそれらの安定性を市販のビーズ固定化酵素との比較によりアッセイした。本発明者らは、n−ブタノールでの酪酸エチルの単純なエステル交換(Lauら,Green Chem 2004,6:483−487)を選択し、ビーズ形に作製したB上に固定されたCandida antarticaリパーゼB(CaLB)と、Sigma(ウィスコンシン州、ミルウォーキー)を通して入手できる市販のノボザイム435(マクロ孔質アクリル樹脂固定化Candida antarcticaリパーゼ)ビーズと比較した。0.25から1.0mmの範囲の直径を有するセルロース複合ビーズは、超高トルク攪拌機を使用して容易に作製することができ、市販製品に匹敵するサイズおよび形状を有した(図4)。
【0205】
エステル交換は、0.06Mの酪酸ブチルと、0.12Mのn−ブタノールと、0.06Mの1,3−ジメトキシベンゼン(内標準として)と、120から150mgの固定化リパーゼとを含有するt−ブタノール(5.0mL)中で行った。その反応混合物を24時間、40℃および150rpmでインキュベートし、その後、屈折率検出装置を使用する逆相HPLCによる分析のために65:35のMeOH:酢酸緩衝液(pH4.5)で希釈した。試験の結果は、市販のノボザイム435は、酪酸エチルの100%相対転化を触媒し、一方、複合材B−固定化CaLBは、87%相対転化の責任を負ったことを示している。これらの材料は、固定化生体内変換に対する材料の適正を判定する手段としてここで比較したが、市販の製品は、完全な特性付けおよび最適化手順後に正確な寸法に加工されたことに留意しなければならない。こうした最適化手順は、本明細書に開示する材料にも用いることができる。
【0206】
上の実施例において、セルロースについてのILの溶解特性は、再生セルロースフィルムへのRhus vernificeraラッカーゼ(E.C.#1.10.3.2)などの高分子の物理的封入を可能にする。これらの方法は、酵素などの生体分子とIL−セルロース環境の適合性(Turnerら,Biomacromolecules 2004,5:1379−1384;米国特許第6,808,557号)を明示している。さらに、本明細書に開示するとおり酵素活性膜を作製したが、水生環境にある酵素と比較して、捕捉されたラッカーゼの活性の減損が観察された。
【0207】
遊離酵素に対するこの活性減損は、支持体マトリックス内に拘束されたときの配座柔軟性低下に帰することもあり、またはセルロースフィルムへのおよびからの基質および生成物の輸送についての拡散限界低減に帰することもある。これらの問題を多少とも解決し、活性を強化するためには、バルク封入ではなく表面固定化が、望ましい固定化アプローチであり得る(Illanes,Elec J Biotechnol 1999,2:1−9)。支持体材料への触媒の物理的および化学的、両方の取り付けが可能であり、これらは広範に実証されている(Gemeiner,In Enzyme Engineering, Gemeiner,Ed.,Ellis Horwood Series in Biochemistry and Biotechnology,Ellis Horwood Limited:West Sussex,England,1992,pp.158−179;Froehner and Eriksson,Acta Chem Scand B 1975,29:691)。物理的取り付けは、酵素と支持体材料の表面との単純な吸着または弱いイオン相互作用によって達成されるが、このタイプの取り付けは、容易に逆行し得、一般に、酵素浸出を随伴する。一方、共有結合による化学的取り付けは、一般に、より安定で非可逆的な結合をもたらし、その安定性増加のため、この用途に好ましいメカニズムである。
【0208】
生体分子の親和性および取り付け結合の安定性を増す手段として、支持体材料上の表面活性基が望ましいことがある。1つの態様において、一段階溶解および再生手順(PCT公開第WO03/029329 A2;Swatloskiら,J Am Chem Soc 124:4974−4975,2002;Swatloskiら,「Ionic Liquids for the Dissolution and Regeneration of Cellulose」In Molten Salts XIII:Proceedings of the International Symposium,Truloveら,Eds.,The Electrochemical Society:Pennington,NJ,2002,Vol.2002−19,pp.155−164)を用いて、ペンダント第一アミン官能基を含有する透明薄膜とビーズの両方として形成されたセルロース系複合材料を得、それによってバイオコンジュゲーションに必要な反応性表面コーティングを生じさせるプロセスを、本明細書において開示する。固定化材料としてのこうした複合材の使用を、モデル系としてラッカーゼ触媒酸化反応を用いて証明した。
【0209】
明白である、および本発明に固有である他の利点は、当業者には明らかであろう。一定の特徴および副次的組み合わせが、他の特徴および副次的組み合わせと関係なく有用であり、利用できることは、理解されるであろう。これは、本特許請求の範囲に包含され、本特許請求の範囲内である。多くの可能な実施形態を、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができるため、本明細書に記載するまたは添付の図面に示すすべてのことを、実例として解釈すべきであり、且つ、限定の意味はないと解釈すべきであることは、理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0210】
本明細書の一部に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、下で説明する幾つかの態様の例証となる。
【図1】図1は、突出第一アミンを有するセルロース−ポリアミンフィルムの略図である。
【図2】図2は、B(上)およびイオン液体(IL)再構成セルロース(下)のXPSスペクトルからのN1ピークのPeakfit分析の1対のグラフである。各パネル中の青色ピークは、NOX(またはイミダゾリウム)基を表し、赤色ピークは、NH3基を表し、緑色ピークは、各フィルムの表面に存在するNH2基を表す。
【図3】図3は、セルロース複合材料のSEM画像の一群である。パネルA:セルロース−ポリ−リシン臭化水素酸塩;B:セルロース−BSA;C:セルロース−JEFFAMINE(登録商標)D−230;セルロース−JEFFAMINE(登録商標)T−403;E:セルロース−JEFFAMINE(登録商標)D−2000;F:セルロース−JEFFAMINE(登録商標)T−5000;G:セルロース−PEI(線状);Ha:セルロース−PEI(分枝状)、平滑部分;Hb:セルロース−PEI(分枝状)、織られた部分。
【図4】図4は、市販のノボザイム435(左)およびB−固定化リパーゼビーズ(右)の一対の顕微鏡画像である。両方の写真におけるスケールは、300μmに相当する。
【図5】図5は、突出第一アミンを有するセルロース−ポリアミンおよび捕捉された酵素(ラッカーゼと示す)の略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生セルロースマトリックス、該再生セルロースのマトリックス内に実質的に均一に分布している第一活性物質、リンカーおよび第二活性物質を含み、該リンカーが、該第一および第二活性物質に結合している、セルロース/活性物質複合材。
【請求項2】
前記再生セルロースが、該再生セルロースを調製する出発セルロースと実質的に同じ分子量を有し、該再生セルロースには、該出発セルロースと比較して置換基の増加量が実質的になく、そして該再生セルロースには、捕捉されたイオン液体分解産物が実質的にない、請求項1に記載の複合材。
【請求項3】
前記再生セルロースの前記第一活性物質に対する重量比が、約1000:1から約1:2である、請求項1〜2のいずれかに記載の複合材。
【請求項4】
前記リンカーに結合される前の前記第一活性物質が、求核性官能基を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の複合材。
【請求項5】
前記リンカーに結合される前の前記第一活性物質が、高分子アミンを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の複合材。
【請求項6】
前記高分子アミンが、タンパク質またはペプチドを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の複合材。
【請求項7】
前記高分子アミンが、ウシ血清アルブミンを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の複合材。
【請求項8】
前記高分子アミンが、ポリリシン、ポリアミンまたはポリアルキレンイミンを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の複合材。
【請求項9】
前記高分子アミンが、ポリエーテルアミンを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の複合材。
【請求項10】
前記リンカーに結合される前の前記第一活性物質が、求電子性官能基を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の複合材。
【請求項11】
前記第一および第二活性物質に結合される前の前記リンカーが、少なくとも2つの求電子性官能基を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の複合材。
【請求項12】
前記第一および第二活性物質に結合される前の前記リンカーが、ジエステルを含む、請求項1〜11のいずれかに記載の複合材。
【請求項13】
前記第一および第二活性物質に結合される前の前記リンカーが、ジアルデヒドを含む、請求項1〜12のいずれかに記載の複合材。
【請求項14】
前記第一および第二活性物質に結合される前の前記リンカーが、グルタルアルデヒドを含む、請求項1〜13のいずれかに記載の複合材。
【請求項15】
前記第一および第二活性物質に結合される前の前記リンカーが、少なくとも1つの求核性官能基および少なくとも1つの求電子性官能基を含む、請求項1〜14のいずれかに記載の複合材。
【請求項16】
前記リンカーが、少なくとも2つの求核性官能基を含む、請求項1〜15のいずれかに記載の複合材。
【請求項17】
前記再生セルロースの前記第二活性物質に対する重量比が、約1000:1から約1:2である、請求項1〜16のいずれかに記載の複合材。
【請求項18】
前記第二活性物質が、求核性官能基を含む、請求項1〜17のいずれかに記載の複合材。
【請求項19】
前記第二活性物質が、求電子性官能基を含む、請求項1〜19のいずれかに記載の複合材。
【請求項20】
前記第二活性物質が、微生物細胞、除草薬、殺虫剤、殺真菌剤、微生物細胞、動物もしくは昆虫の駆除剤、植物成長調節剤、肥料、芳香もしくは臭気組成物、触媒、光活性物質、指示薬、染料、UV吸収剤、またはこれらの混合物を含む、請求項1〜19のいずれかに記載の複合材。
【請求項21】
前記第二活性物質が、抗菌剤を含む、請求項1〜20のいずれかに記載の複合材。
【請求項22】
前記第二活性物質が、抗ウイルス薬を含む、請求項1〜21のいずれかに記載の複合材。
【請求項23】
前記第二活性物質が、生体分子を含む、請求項1〜22のいずれかに記載の複合材。
【請求項24】
前記第二活性物質が、ペプチド、タンパク質、酵素または抗体を含む、請求項1〜23のいずれかに記載の複合材。
【請求項25】
前記第二活性物質が、核酸、アプタマーまたはリボザイムを含む、請求項1〜24のいずれかに記載の複合材。
【請求項26】
a.再生セルロースマトリックスと第一活性物質とを含み、該第一活性物質が該再生セルロースマトリックス内に実質的に均一に分布している組成物を提供すること;
b.該第一活性物質をリンカーと接触させて、該リンカーを該第一活性物質に結合させること;および
c.第二活性物質を該リンカーと接触させて、該リンカーを該第二活性物質に結合させること、
を含み、それによってセルロース/活性物質複合材を提供する、セルロース/活性物質複合材の作製方法。
【請求項27】
前記リンカーに前記第二活性物質を接触させる前に該リンカーを前記第一活性物質に接触させる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記再生セルロース組成物を生じさせる前に前記リンカーを前記第一活性物質に接触させる、請求項26〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記リンカーに前記第一活性物質を接触させる前に該リンカーを前記第二活性物質に接触させる、請求項26〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記再生セルロース組成物を生じさせる前に、前記リンカーを前記第一活性物質と接触させ、その後、前記第二活性物質に接触させる、請求項26〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
再生セルロースマトリックスと第一活性物質とを含む組成物を提供する、請求項26〜30のいずれかに記載の方法であって、該方法は、
a.出発セルロースと該第一活性物質と親水性イオン液体とを含む組成物を提供する段階であって、ここで、該出発セルロースは、該イオン液体中に溶解され、該イオン液体は、水、有機溶媒および窒素含有塩基を実質的に含まない、段階;ならびに
b.段階(a)の組成物を、セルロースに対する液体非溶媒と混合する段階であって、ここで、該非溶媒は、該イオン液体と混和性であり、該第一活性物質は、該非溶媒に実質的に不溶性である、段階
を含み、再生セルロースマトリックスおよびイオン液体相を含む組成物が提供される、方法。
【請求項32】
前記再生セルロースが、該再生セルロースを調製する出発セルロースと実質的に同じ分子量を有し、該再生セルロースには、該出発セルロースと比較して置換基の増加量が実質的になく、そして該再生セルロースには、捕捉されたイオン液体分解産物が実質的にない、請求項26〜31に記載の方法。
【請求項33】
前記混合段階が、段階(a)組成物をダイを通して前記非溶媒に押出すことにより行われる、請求項26〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記再生セルロースマトリックスを回収することをさらに含む、請求項26〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記出発セルロースが、繊維状セルロース、木材パルプ、リンター、綿または紙を含む、請求項26〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記イオン液体が、約150℃未満の温度で溶融される、請求項26〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記イオン液体が、約−44℃から約120℃の温度で溶融される、請求項26〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記イオン液体が、1つ以上のカチオンおよび1つ以上のアニオンを含み、該1つ以上のカチオンが、式:
【化1】

(式中、RおよびRは、独立して、C〜Cアルキル基またはC〜Cアルコキシアルキル基であり、ならびにR、R、R、R、R、RおよびRは、独立して、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシアルキル基またはC〜Cアルコキシ基である)
を有する1つ以上の化合物を含み、該1つ以上のアニオンが、ハロゲン、パークロレート、擬ハロゲン、またはC〜Cカルボキシレートのうちの1つ以上を含む、請求項26〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記イオン液体が、1つ以上のカチオンおよび1つ以上のアニオンを含み、該1つ以上のカチオンが、式:
【化2】

(式中、RおよびRは、独立して、C〜Cアルキル基またはC〜Cアルコキシアルキル基であり、R、RおよびRは、独立して、H、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシアルキル基またはC〜Cアルコキシ基である)
を有する1つ以上の化合物を含み、該1つ以上のアニオンが、ハロゲンまたは擬ハロゲンのうちの1つ以上を含む、請求項26〜38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記1つ以上のカチオンが、式:
【化3】

(式中、RおよびRは、C1〜6アルキルである)
を有するイミダゾリウムイオンを含む、請求項26〜39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
またはRが、メチルである、請求項26〜40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
が、C〜C−アルキルであり、Rが、メチルである、請求項26〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
、RおよびRの各々が、Hである、請求項26〜42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
イオン液体が、1つ以上のカチオンおよび1つ以上のアニオンを含み、該1つ以上のアニオンが、ハロゲン、パークロレート、擬ハロゲン、またはC〜Cカルボキシレートのうちの1つ以上を含む、請求項26〜43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記1つ以上のアニオンが、塩化物である、請求項26〜44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記非溶媒が、水と混和性である、請求項26〜45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記非溶媒が、水、アルコールまたはケトンである、請求項26〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記非溶媒が、水である、請求項26〜47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記出発セルロースが、最初、段階(a)の組成物中に該段階(a)の組成物の約10から約25重量パーセントの量で存在する、請求項26〜48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
前記第一活性物質が、求核性官能基を含む、請求項26〜49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
前記第一活性物質が、高分子アミンを含む、請求項26〜50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記高分子アミンが、タンパク質またはペプチドを含む、請求項26〜51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記高分子アミンが、ウシ血清アルブミンを含む、請求項26〜52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
前記高分子アミンが、ポリリシン、ポリアミンまたはポリアルキレンイミンを含む、請求項26〜53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
前記高分子アミンが、ポリエーテルアミンを含む、請求項26〜54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
前記第一活性物質が、求電子性官能基を含む、請求項26〜55のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
前記リンカーが、少なくとも2つの求電子性官能基を含む、請求項26〜56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
前記リンカーが、ジエステルを含む、請求項26〜57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
前記リンカーが、ジアルデヒドを含む、請求項26〜58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
前記リンカーが、グルタルアルデヒドを含む、請求項26〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
前記リンカーが、少なくとも2つの求核性官能基を含む、請求項26〜60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
前記リンカーが、少なくとも1つの求核性官能基および少なくとも1つの求電子性官能基を含む、請求項26〜61のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
前記第二活性物質が、求核性官能基を含む、請求項26〜62のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
前記第二活性物質が、求電子性官能基を含む、請求項26〜63のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
前記第二活性物質が、微生物細胞、除草薬、殺虫剤、殺真菌剤、微生物細胞、動物もしくは昆虫の駆除剤、植物成長調節剤、肥料、芳香もしくは臭気組成物、触媒、光活性物質、指示薬、染料、UV吸収剤、またはこれらの混合物を含む、請求項26〜64のいずれかに記載の方法。
【請求項66】
前記第二活性物質が、抗菌剤を含む、請求項26〜65のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
前記第二活性物質が、抗ウイルス薬を含む、請求項26〜66のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
前記第二活性物質が、生体分子を含む、請求項26〜67のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
前記第二活性物質が、ペプチド、タンパク質、酵素または抗体を含む、請求項26〜68のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
前記第二活性物質が、核酸、アプタマーまたはリボザイムを含む、請求項26〜69のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
前記第一活性物質が、前記親水性イオン液体に溶解または分散される前に疎水性イオン液体で被覆され、該疎水性イオン液体が、前記非溶媒と混和性でない、請求項26〜70のいずれかに記載の方法。
【請求項72】
請求項26〜71に記載の方法によって作製される、セルロース/活性物質複合材。
【請求項73】
請求項1〜25および72のいずれかに記載の複合材を含む、物品。
【請求項74】
紙を含む、請求項73に記載の物品。
【請求項75】
布を含む、請求項73〜74のいずれかに記載の物品。
【請求項76】
防護衣を含む、請求項73〜75のいずれかに記載の物品。
【請求項77】
前記衣類が、手術衣、手袋、マスクまたは包帯を含む、請求項73〜76のいずれかに記載の物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2009−500016(P2009−500016A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519464(P2008−519464)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/024863
【国際公開番号】WO2007/005388
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(508001741)ザ ユニバーシティ オブ アラバマ (1)
【Fターム(参考)】