説明

固体燃料

【課題】廃木材、古紙および廃熱可塑性樹脂をバランスよく使用して、安定した発熱量を有する固体燃料を提供する。
【解決手段】大きさが1〜25mmの木細片、大きさが1〜25mmの紙細片および熱可塑性樹脂の混合物よりなり、該混合物は該木細片および該紙細片の合計重量85〜95重量部に対して該熱可塑性樹脂5〜15重量部および該木細片:該紙細片の割合が重量で20:80〜90:10よりなりかつ成形されていることを特徴とする固体燃料

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体燃料に関する。さらに詳しくは、廃棄された木材、紙およびプラスチックを有効に利用した固体燃料に関する。より具体的には、木材、紙およびプラスチックの廃棄物を効果的に利用するとともに、燃焼後有害なガスや残渣が可及的に少なくしかも発熱量が大きい固体燃料、殊に発電用燃料に適した固体燃料に関する。
【背景技術】
【0002】
生活の近代化とともに、家庭生活、生産工場および加工工場などから木材屑、紙屑およびプラスチックなどの廃棄物が大量に発生し、その処分が社会問題となっている。これらの廃棄物は、大部分が回収され、焼却されたり土中に埋め込まれている。しかしこれら廃棄物を回収した後、生活用品へ再利用したり或いはエネルギー源へ利用する割合は徐々に増加しているが未だ充分とは云えない。
殊に古い家屋からの廃材や間伐材、古紙の一部などは、回収や区分のための多大の費用を要し、再利用が困難であり、焼却処分されていた。一方廃プラスチックは、ペットボトルの回収は自治体を中心に一部回収され再利用されているものの、他のプラスチックは、樹脂の種類や形状が多く、回収と区分けの費用が過大になり、現実にはその大部分は再利用されず焼却されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明者は、再利用化が困難であった廃木材や古紙を利用し、また区分けが困難であった廃プラスチックを焼却処分することなく、エネルギー源として使用しうる固体燃料の開発のために鋭意研究を進めた。
その結果、廃木材および古紙を一定の大きさに細片化し、廃木材を一定割合使用し、これらに廃プラスチックを一定の少割合混合して加熱成形すると、プラスチックがバインダーとなって一定形状の大きさの固体形状を保持でき、燃料として発熱量も大きくかつ有害ガスや有害残渣の発生も少なく発電用の固体燃料として有効であることが判明した。
かくして本発明によれば、焼却処分以外に利用価値がなかった廃木材、古紙および廃プラスチックのそれぞれを有効に利用して、エネルギー源として活用でき、殊にクリーンエネルギー源としての発電用に使用しうる固体燃料を提供することが可能となった。
特許文献1には、古紙と廃プラスチックを用いた固形燃料が提案されている。この固形燃料は、現実には古紙100重量部に対して廃プラスチック25〜100重量部の組成であり、廃プラスチックが比較的多量(全体として20〜50重量%)使用されている。この特許公開公報は、木質系廃材をさらに配合してもよいことが記載されているが、実施例において配合されている木質系廃材の割合は、全組成当り高々10重量%程度である。前記固形燃料は、廃プラスチックの配合割合が比較的多く、そのためポリ塩化ビニルの混入による燃焼時の併害を少なくするために、得られた固形燃料を熱処理して脱塩素するという操作を必要とする。
【特許文献1】特開平7−82581号公報
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、下記(1)〜(6)の固体燃料が提供される。
(1)大きさが1〜25mmの木細片、大きさが1〜25mmの紙細片および熱可塑性樹脂の混合物よりなり、該混合物は該木細片および該紙細片の合計重量80〜95重量部に対して該熱可塑性樹脂5〜15重量部および該木細片:該紙細片の割合が重量で20:80〜90:10よりなりかつ成形されていることを特徴とする固体燃料。
(2)1個当りの大きさが平均で15〜60cmである前記(1)記載の固体燃料。
(3)円筒状の形状を有する前記(1)記載の固体燃料。
(4)見掛け比重が0.4〜0.5g/cm3である前記(1)記載の固体燃料。
(5)発熱量が20〜30MJ/Kgである前記(1)記載の固体燃料。
(6)火力発電用として使用するための前記(1)記載の固体燃料。
【発明の効果】
【0005】
本発明の固体燃料は廃木材、古紙および廃プラスチックをバランスよく利用して、新しいエネルギー源、殊に発電用エネルギー源として有効に活用しうるものである。本発明の固体燃料は、焼却処分する対象であった木材、紙およびプラスチックの廃棄物を使用して、有害なガスや有害な残渣の発生が少なく、かつ発熱量の大きい新しいタイプの固体燃料となりうるものである。
殊に本発明の固体燃料においては、廃木材を特定の大きさの細片としかつ一定の割合使用することにより、比較的少ない樹脂の使用割合であっても、樹脂がバインダーとして有効に機能し、固体燃料として成形することが可能となった。少ない樹脂の使用によって発熱量を制御できしかもポリ塩化ビニルなどの塩素系樹脂の混入割合を可及的に少なくできるので、熱処理などの脱塩素操作を特に必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の固体燃料は、木細片、紙細片および熱可塑性樹脂の混合物を成形して得られた固体物であり、それぞれの原料は廃棄物として処分の対象となったものが利用される。以下それぞれの原料組成比、成形方法について説明する。
【0007】
(a)木細片
木細片の原料としては、古い家具、古い家屋などの建築物を解体して回収された廃材、製材工場からの木屑や端材、間伐材、使用済のパレットなどが使用される。その木の種類は特に制限されない。前途した廃材は、乾燥したものはそのまま、含水したものは乾燥した後、破砕して使用される。製材工場から回収された木屑は、その大きさが後述する範囲であれば、そのまま破砕することなく使用できる。
破砕した木細片の大きさは、1〜25mm、好ましくは2〜20mmの範囲が望ましい。ここで云う大きさとは、木細片の最大径を意味する。具体的に目開きが25mm以下、好ましくは20mm以下の篩を通過したものを原料として使用することができる。破砕された木細片の形状は、特に制限されないが、例えば歯の付いたロータリー型の破砕機にて粉砕したものであればよい。木細片は乾燥したものが好ましく、水分含有量が20重量%以下望ましくは15重量%以下であれば何等支障がない。
【0008】
(b)紙細片
紙細片の原料としては、古本、新聞紙、ダンボール、事務用紙などの再生紙としてリサイクルされる古紙のみならず、再生紙として利用され難いコーティング紙やラミネート紙なども使用することができる。紙原料は裁断もしくは切断することにより1〜25mm、好ましくは2〜20mmの大きさとする。ここで云う大きさとは、目開き25mm以下、好ましくは20mm以下の篩を通過するものを意味する。原料として使用する紙細片は、乾燥されたものであればよいが、通常水分を15重量%以下、好ましくは10重量%含有していてもよい。
【0009】
(c)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂としては、廃プラスチックとして回収されるものが利用され、特に融点が80〜180℃、好ましくは90〜150℃のものが適当である。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ABS、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂およびゴムなどが挙げられるが、これらは廃プラスチックを利用されることから、通常混合物として使用される。ポリ塩化ビニルは、燃焼時に有害ガスを発生するため望ましくないが、本発明の固体燃料では、樹脂の含有割合が比較的少ないので樹脂中に少割合のポリ塩化ビニルの混入は特に問題となることは少ない。
また熱可塑性樹脂中に15重量%以下、好ましくは10重量%以下の熱硬化性樹脂が混入しても成形に支障がない限り何等差支えがない。
熱可塑性樹脂は、木細片および紙細片と混合してバインダーとして機能するものであるから、これら細片と良好にかつ緊密に混合され分散するように、小さく破砕して使用するのが望ましい。具体的には50mm以下、好ましくは40mm以下の径をするものが望ましい。そのために破砕した後、目開きが50mm以下、好ましくは40mm以下の篩を通過したものが使用される。また熱可塑性樹脂としては、廃プラスチックを再溶融して、チップ化またはペレット化して前記の大きさとしたものでもよい。
【0010】
(d)組成化
本発明の固体燃料における木細片:紙細片の割合は、重量で20:80〜90:10の範囲、好ましくは25:75〜85:15の範囲、特に好ましくは30:70〜80:20の範囲である。かかる範囲とすることにより、相対的に少ない樹脂の使用によって固体化し得るとともに廃木材と古紙のバランスのよい再利用が可能となり、発熱量が安定したものとなる。また木細片と紙細片の合計重量85〜95重量部に対し熱可塑性樹脂5〜15重量部であり、好ましくは木細片と紙細片の合計重量87〜93重量部に対し熱可塑性樹脂7〜13重量部である。
【0011】
(e)成形方法
前記した木細片、紙細片および熱可塑性樹脂を前記割合に混合して、混合物を例えば100〜160℃、好ましくは110〜150℃、特に好ましくは120〜140℃に加熱して熱可塑性樹脂が溶融してバインダーとして緊密に分散するように加圧・圧縮することが好ましい。
殊に木細片と紙細片を予め混合しておき、その両者の混合物に熱可塑性樹脂を混合する方法が好ましく、混合および加熱する機械としては一軸または二軸の加熱押出機を利用することができる。
特に二軸のスクリュー押出機の使用が望ましい。押出機より圧縮押出された組成物は、具体的には円形状のノズルが排出し、適当な長さに切断することにより、円筒状の形状した成形物となる。
この際、円形状のノズルの直径を25〜50mm、好ましくは30〜40mmとすること、切断長さを20〜70mm、好ましくは25〜65mmとすることにより、固体燃料として望ましい大きさのものとすることができる。
【0012】
(f)固体燃料の特性
本発明の固体燃料は前記した成形方法で製造することが工業的に好ましいので、形状は円筒形乃至角柱形が望ましいが、特に円筒形が有利である。また大きさとしては、一個当たりの容積として平均で15〜60cm、好ましくは20〜55cmが望ましい。
また固体燃料の見掛け比重が0.4〜0.5g/cm、好ましくは0.42〜0.48g/cmの範囲が望ましい。
固体燃料は木細片および紙細片の組成比のバランスが良くかつ熱可塑性樹脂の割合が相対的に少ないことから発熱量が安定しておりその発熱量は20〜30MJ/kg、好ましくは22〜28MJ/kgである。従って本発明の固体燃料は廃木材、古紙および廃プラスチックをバランスよく利用したものであり、また発熱量も高く安定していることから火力発電用の燃料として有利に使用される。
【実施例】
【0013】
以下実施例を示して本発明を具体的に説明する。
なお以下の実施例中使用した木細片、紙細片および熱可塑性樹脂は下記のものを使用した。
(イ)木細片;
建設系廃材および製材系端材などからなる廃木材の破砕したもの(大きさ25mm以下)。
(ロ)紙細片;
各種包装用紙廃材および保護フィルム付紙廃材からなるものを破砕したもの(大きさ25mm以下)。
(ハ)熱可塑性樹脂
ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)およびポリアクリレート樹脂(PA)の混合物の粉砕物(大きさ40mm以下)。
【0014】
実施例1
木細片80重量部および紙細片10重量部の混合物に熱可塑性樹脂10重量部を混合し、130℃に加熱した二軸スクリュー押出機にて押出し直径約35mmの円筒状固体燃料を得た(長さ65mm)。この固体燃料の見掛け比重(嵩比重)発熱量および塩素含有量を表1に示した。
【0015】
実施例2
木細片、紙細片および熱可塑性樹脂の混合割合をそれぞれ45重量部、45重量部および10重量部とし、加熱温度を125℃とする他は実施例1と同様にして円筒状固体燃料を得た(長さ60mm)。この固体燃料の見掛け比重(嵩比重)、発熱量および塩素含有量を表1に示した。
【0016】
実施例3
木細片、紙細片および熱可塑性樹脂の混合割合をそれぞれ50重量部、40重量部および10重量部とし、加熱温度を125℃とする他は実施例1と同様にして円筒状固体燃料を得た(長さ60mm)。この固体燃料の見掛け比重、発熱量および塩素含有量を表1に示した。
【0017】
実施例4
木細片、紙細片および熱可塑性樹脂の混合割合をそれぞれ50重量部、45重量部および5重量部とし、加熱温度を120℃とする他は実施例1と同様にして円筒状固体燃料を得た(長さ10mm)。
この固体燃料の見掛け比重、発熱量および塩素含有量を表1に示した。
【0018】
実施例5
木細片、紙細片および熱可塑性樹脂の混合割合をそれぞれ45重量部、40重量部および15重量部とし、加熱温度を125℃とする他は実施例1と同様にして円筒状固体燃料を得た(長さ70mm)。
この固体燃料の見掛け比重、発熱量および塩素含有量を表1に示した。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
大きさが1〜25mmの木細片、大きさが1〜25mmの紙細片および熱可塑性樹脂の混合物よりなり、該混合物は該木細片および該紙細片の合計重量85〜95重量部に対して該熱可塑性樹脂5〜15重量部および該木細片:該紙細片の割合が重量で20:80〜90:10よりなりかつ成形されていることを特徴とする固体燃料。
【請求項2】
1個当りの大きさが平均で15〜60cmである請求項1記載の固体燃料。
【請求項3】
円筒状の形状を有する請求項1記載の固体燃料。
【請求項4】
見掛け比重が0.4〜0.5g/cm3である請求項1記載の固体燃料。
【請求項5】
発熱量が20〜30MJ/Kgである請求項1記載の固体燃料。
【請求項6】
火力発電用として使用するための請求項1記載の固体燃料。

【公開番号】特開2010−18725(P2010−18725A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181132(P2008−181132)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(504276244)株式会社クリエイティブ (6)
【Fターム(参考)】