説明

固体酸化物形燃料電池の運転方法

【課題】固体酸化物形燃料電池の起動における定格電流値到達までの負荷上昇時において、発電セルの温度追従を自動で行い、発電セルの劣化および発電性能の低下を防ぐ固体酸化物形燃料電池の運転方法を提供する。
【解決手段】予め固体酸化物形燃料電池5の起動における定格電流値到達までの負荷上昇時の電流値ごとに、燃料利用率および発電セル16の最低温度のしきい値を設定し、上記負荷上昇における各々の上記電流値に到達した際に、発電セル16の温度が各々の上記電流値に対応する上記しきい値に到達していない場合に、上記負荷上昇を停止して一定時間保持し、これにより発電セル16の温度が当該しきい値に到達した場合に、上記負荷上昇を再開し、上記しきい値に到達していない場合に、上記燃料利用率を低下させて一定時間保持し、これにより発電セル16の温度が当該しきい値に到達した場合に、上記負荷上昇を再開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料極層に燃料ガスを、空気極層に空気を供給して発電を行う固体酸化物形燃料電池の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の固体酸化物形燃料電池として、缶体内部に固体酸化物形燃料電池および改質器を設け、この改質器に水蒸気発生器において生成した水蒸気および炭化水素ガスを供給して、当該改質器内において水素リッチな燃料ガスに改質し、その燃料ガスを燃料ガス供給ラインを介して、上記固体酸化物形燃料電池に供給するとともに、空気ブロアから供給された空気を空気供給ラインを介して、上記固体酸化物形燃料電池に供給するものが知られている。
【0003】
この固体酸化物形燃料電池は、固体電解質層の一方の面に燃料極層を、他方の面に空気極層を配置した発電セルを有し、この発電セルの外側の燃料極層側に燃料極集電体および空気極層側に空気極集電体を配置して、これら集電体の外側にセパレータを配置することにより単セルをなし、この単セルを複数積層することにより構成されている。そして、上記燃料ガス供給ラインからの燃料ガスを、上記セパレータを介して上記燃料極層に供給し、上記空気供給ラインからの空気を、上記セパレータを介して上記空気極層に供給することにより発電反応を生じさせるものである。
【0004】
ここで、固体電解質層は、ランタンガレート材料(LSGMC)等によって構成されている。また、燃料極層は、Niのサーメットで構成されている。そして、空気極層は、サマリウムストロンチウムコバルタイト(SSC)によって構成されている。また、燃料極集電体は、Ni基合金などの多孔質焼結板によって構成されている。そして、空気極集電体は、Ag基合金などの多孔質焼結板によって構成されている。
【0005】
一方、水蒸気発生器は、水供給手段から導入された水を、内部に充填された熱伝導性の良好なビーズによって効率的に気化して、上記改質器の改質反応に必要な水蒸気を生成するものである。
【0006】
他方、改質器は、導入された炭化水素ガスおよび水蒸気を、内部に充填された炭化水素用のNi(ニッケル)系、あるいはRu(ルテニウム)系の改質触媒によって、改質して燃料ガスを生成するものである。
【0007】
ところで、このような固体酸化物形燃料電池は、定格電流値において、発電セル自身の発熱反応により熱自立した状態で運転されるが、停止状態から定格電流到達するまでは、電流値に対する燃料利用率を設定して、負荷上昇を行う。この燃料利用率とは、発電セルに供給される燃料ガス量に対する発電反応に浪費される燃料ガス量の割合である。また、発電セルの温度は、負荷上昇前は、550〜600℃程度であるのに対して、定格電流値到達後は、720〜780℃程度の温度域になる。
【0008】
このように、電流値に対する燃料利用率を設定し、負荷上昇を行った場合、電流上昇時の上昇レートは、事前に設定されていることから、時間が経過すれば固体酸化物形燃料電池内の温度追従の有無に関わらず、設定負荷に到達してしまう。このため、未だ低温状態にある発電セルに過度の負荷が加わって、発電セルの劣化や性能低下を生じる可能性が高いという問題がある。
【0009】
そこで、上記固体酸化物形燃料電池を起動させる際には、定格電流に到達して熱自立するまでの間に、上記固体酸化物形燃料電池の状態により、発電セルの温度上昇を早めるため、電流上昇中に燃料利用率を低下させたり、また、一定の電流値に到達したときに、負荷上昇を停止して一定時間保持し、発電セルの温度上昇行う必要があった。
【0010】
しかしながら、上記従来の電流上昇中に燃料利用率を低下させる方法や、一定の電流値に到達したときに負荷上昇を停止する方法では、作業者が常時上記固体酸化物形燃料電池の状態を確認しながら、上記固体酸化物形燃料電池の状態に応じて、燃料利用率を低下させる操作や負荷上昇を停止する操作を手動により行う必要があるため、手間が掛かるとともに、作業コストが嵩むという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、固体酸化物形燃料電池の起動における定格電流値到達までの負荷上昇時において、発電セルの温度追従を自動で行い、発電セルの劣化および発電性能の低下を防ぐ固体酸化物形燃料電池の運転方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、発電セルの一方の面に形成された燃料極層に燃料ガスを供給するとともに、発電セルの他方の面に形成された空気極層に空気を供給して発電する固体酸化物形燃料電池の運転方法であって、予め上記固体酸化物形燃料電池の起動における定格電流値到達までの負荷上昇時の電流値ごとに、燃料利用率および上記発電セルの最低温度のしきい値を設定し、上記負荷上昇における各々の上記電流値に到達した際に、上記発電セルの温度が各々の上記電流値に対応する上記しきい値に到達していない場合に、上記負荷上昇を停止して一定時間保持し、これにより上記発電セルの温度が当該しきい値に到達した場合に、上記負荷上昇を再開し、上記しきい値に到達していない場合に、上記燃料利用率を低下させて一定時間保持し、これにより上記発電セルの温度が当該しきい値に到達した場合に、上記負荷上昇を再開することを特徴とするものである。
【0013】
そして、請求項2に記載の発明は、請求項1の発明において、上記燃料利用率を低下させて一定時間保持し、これにより上記発電セルの温度が各々の上記電流値に対応する上記しきい値に到達していない場合に、上記発電セルの温度が各々の上記電流値に対応する上記しきい値に到達するまで、上記燃料利用率を段階的に低下させ、上記発電セルの温度が当該しきい値に到達した段階において、上記負荷上昇を再開することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜2に記載の発明によれば、固体酸化物形燃料電池の起動における定格電流値到達までの各々の電流値に到達した際に、発電セルの温度が各々の上記電流値に対応したしきい値に到達していない場合には、負荷上昇を停止して一定時間保持し、さらに、上記負荷上昇を停止して一定時間保持しても、上記発電セルの温度が当該しきい値に到達していない場合には、上記燃料利用率を低下させて一定時間保持することにより、負荷上昇時における電流値ごとに設定された上記発電セルの最低温度に到達させることができる。これにより、劣化や発電性能の低下を防ぐことができるとともに、作業者が常時上記固体酸化物形燃料電池の状態を監視して、上記負荷上昇の停止および上記燃料利用率を低下させる操作を手動で行う手間を省くことができる。
【0015】
また、上記燃料利用率を低下させて一定時間保持しても、上記発電セルの温度が上記しきい値に到達していない場合には、上記発電セルの温度が上記しきい値に到達するまで、上記燃料利用率を段階的に低下させることにより、負荷上昇時における各電流値ごとに設定された発電セルの最低温度に到達させることができる。この結果、各々の上記電流値に対応した上記発電セルの最低温度に、確実に到達させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の固体酸化物形燃料電池の運転方法に用いられる固体酸化物形燃料電池の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1の固体酸化物形燃料電池の単セルを示す縦断面図である。
【図3】本発明の固体酸化物形燃料電池の運転方法の一例の燃料利用率(Uf)と電流値との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の固体酸化物形燃料電池の運転方法の一例の電流値ごとの燃料利用率(Uf)とセル制定温度の設定値を示す表である。
【図5】本発明の固体酸化物形燃料電池の運転方法の一例を示し、電流値が14A到達した時点におけるフローチャートである。
【図6】本発明の固体酸化物形燃料電池の運転方法の一例を示し、電流値が20A到達した時点のすフローチャートである。
【図7】本発明の固体酸化物形燃料電池の運転方法の一例を示し、電流値が25A到達した時点におけるフローチャートである。
【図8】本発明の固体酸化物形燃料電池の運転方法の一例を示し、電流値が30A到達した時点におけるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、本発明の固体酸化物形燃料電池の運転方法に用いられる一実施形態の固体酸化物形燃料電池は、内缶体1と、この内缶体1を断熱材2により覆う外缶体3とからなる缶体4を有し、この缶体4の内部に、固体酸化物形燃料電池5と改質器6とが収納され、当該缶体4の下部に固体酸化物形燃料電池5から排出された排ガスを、缶体4の外部に排出する排出口7が形成されているとともに、この排出口7に水蒸気を供給する水蒸気発生器8が配設され、かつ缶体4の外部に、炭化水素ガスブロア9、水ポンプ10、空気ブロア11、制御装置28およびコンバータ12とが配設されて概略構成されている。
【0018】
ここで、固体酸化物形燃料電池5は、図2に示すように、固体電解質層13の一方の面に燃料極層14が配置されているとともに、他方の面に空気極層15が配置されて発電セル16が構成されている。この発電セル16は、燃料極層14の外側に、燃料極集電体17が配置されているとともに、空気極層15の外側に空気極集電体18が配置されている。さらに、燃料極集電体17および空気極集電体18の外側には、セパレータ19が配置されて、単セル20が構成されている。この単セル20は、図1に示すように、複数積層され、積層方向の一端側と他端側とがフランジ21により挟み込まれている。
【0019】
また、固体電解質層13は、ストロンチウム、マグネシウム、コバルトを添加したランタンガレート材料(LSGMC)によって構成されている。
【0020】
そして、燃料極層14は、Niのサーメットで構成されている。また、空気極層15は、サマリウムストロンチウムコバルタイト(SSC)により構成されている。
【0021】
さらに、燃料極集電体17は、Ni基合金などの多孔質焼結板によって構成されている。また、空気極集電体18は、Ag基合金などの多孔質焼結板によって構成されている。
【0022】
また、セパレータ19は、ステンレス板によって構成されているとともに、燃料極層14に燃料ガスを供給する燃料ガス通路22、および空気極層15に空気を供給する空気通路23が穿設されている。
【0023】
そして、発電セル16を挟持しているセパレータ19同士の間は、Niの多孔質焼結板からなる燃料極集電体17、およびAgの多孔質焼結板からなる空気極集電体18から排出される高温の残余の排ガスを缶体4内に排出可能なシールレス構造になっている。また、発電セル16には、発電セル16の温度を測定する温度計30が設けられている。
【0024】
さらに、複数積層した単セル20を挟持しているフランジ21には、燃料ガスを導入する燃料ガス供給ライン24a、および空気を導入する空気供給ライン27が各々接続されている。
【0025】
また、缶体4の外部に配置されたコンバータ12は、入力側が電力供給ライン29の一端側に配線されているとともに、出力側がインバータ25に配線されている。また、電力供給ライン29の他端側が、発電セル16を挟持しているセパレータ19に配線されている。
【0026】
そして、缶体4の外部に配置された炭化水素ガスブロア9は、その吐出側に炭化水素ガス供給ライン24が接続せれているとともに、この炭化水素ガス供給ライン24の他方側が、缶体4内部に収納された改質器6の導入側に接続されている。
【0027】
さらに、改質器6は、その内部に炭化水素用のNi(ニッケル)系、あるいはRu(ルテニウム)系の改質触媒が充填されている。さらに、改質器6の出口側には、燃料ガス供給ライン24aが接続されているとともに、この燃料ガス供給ライン24aの他方側がフランジ21を介して、セパレータ19に接続されている。
【0028】
また、缶体4の外部に配置された水ポンプ10は、その吐出側に水供給ライン26が接続されているとともに、この水供給ライン26の他方側が水蒸気発生器8の導入側に接続されている。また、水蒸気発生器8の出口側に、水蒸気供給ライン26aの一方側が接続されてているとともに、他方側が燃料ガス供給ライン24aに接続されている。
【0029】
そして、水蒸気発生器8は、缶体4の排出口7を横断して介装されているとともに、燃料極集電体17および空気極集電体18から排出される上記排ガスの熱により、水を効率良く気化させるために、熱伝導性の良好なビーズが充填されている。
【0030】
さらに、缶体4の外部に配設された空気ブロア11は、その吐出側に空気供給ライン27が接続されているとともに、この空気供給ライン27の他方側がフランジ21を介して、セパレータ19に接続されている。
【0031】
また、缶体4の外部に配置された制御装置28は、改質器6に炭化水素ガスを供給する炭化水素ガスブロア9を制御するとともに、固体酸化物形燃料電池5の起動から発電セル16の温度を検出する温度計30からの信号、および固体酸化物形燃料電池5の起動から定格電流値到達までの電流値を検出するコンバータ12内に設けられた電流計からの信号を受信している。
【0032】
以上の構成からなる固体酸化物形燃料電池を用いた運転方法について説明する。
まず、図1に示すように、空気ブロア11、炭化水素ガスブロア9、水ポンプ10を作動させるとともに、外部熱源(図示せず)を利用して、固体酸化物形燃料電池5を昇温させる。これにより、水ポンプからの水が水蒸気発生器8に供給され、水蒸気が生成される。
【0033】
そして、水蒸気発生器8において生成した水蒸気と、炭化水素ガスブロア9から供給された炭化水素ガスとが改質器6に導入され、この改質器6内において水素リッチな燃料ガスに改質される。そして、改質された燃料ガスが燃料ガス供給ライン24aを介して、固体酸化物形燃料電池5に導入されるとともに、空気ブロア11から供給された空気が空気供給ライン27を介して、固体酸化物形燃料電池5に導入される。
【0034】
これにより、固体酸化物形燃料電池5は、図2に示すように、燃料ガス供給ライン24aからの燃料ガスが、セパレータ19の燃料ガス通路22を介して燃料極層14に導入されるとともに、空気供給ライン27からの空気が、セパレータ19の空気通路23を介して空気極層15に導入されることにより発電反応が生じる。
【0035】
この発電反応により、図3に示すように、グラフ内のUf−基準値のように、各電流値において設定された燃料利用率(Uf)にしたがって、負荷上昇が開始されるとともに、発電セル16の温度が上昇し、電流が定格電流値に到達すると固体酸化物形燃料電池5は、熱自立した状態になり、固体酸化物形燃料電池5の運転が開始される。なお、上記負荷上昇が開始される際に、発電セル16の温度は、上記外部熱源により550〜600℃まで昇温されている。
【0036】
次いで、図3のグラフ内に示すUf−基準値に沿って負荷上昇する際に、各電流値ごとに設定された発電セル16の最低温度のしきい値に、発電セル16の温度が到達していない場合の運転方法について説明する。なお、本実施形態において挙げた数値は、あくまでも一例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
【0037】
まず、図4に示すように、負荷上昇する際の電流値ごとに、燃料利用率(Uf)と発電セル16の最低温度のしきい値を、制御装置28のプログラムに設定する。なお、この図4において、0A〜7Aまでの間の電池値における発電セル16の最低温度のしきい値は、既に発電セル16が、上記外部熱源により昇温されているため設定されない。
【0038】
そして、図3に示すように、固体酸化物形燃料電池5において、負荷上昇が開始されると、各電流値の燃料利用率(Uf)に従って、時間とともに電流値が上昇する。そして、図5に示すように、電流値が14Aに到達すると、コンバータ12内に設けられた電流計から検出信号が制御装置28に送信される。
【0039】
そして、制御装置28は、この検出信号を受信するとともに、固体酸化物形燃料電池5の発電セル16に設けた温度計30からの温度を検出し、この検出信号により、14Aの電流値に対応した発電セル16の最低温度のしきい値である650℃に到達しているかが判断される。この判断により、発電セル16の温度が650℃に到達していた場合には、負荷上昇が開始される。
【0040】
また、発電セル16の温度が650℃に到達していない場合には、制御装置28の制御信号により、負荷上昇が停止されて、電流値14Aのまま3時間保持される。そして、3時間経過した時点において、再び制御装置28が発電セル16に設けられた温度計30からの温度を検出し、この検出信号により、発電セル16の温度が650℃に到達しているかが判断される。この判断により、発電セル16の温度が650℃に到達していた場合には、制御装置28の制御信号により、負荷上昇が開始される。
【0041】
そして、発電セル16の温度が650℃に到達していない場合には、制御装置28の制御信号により、電流湯14Aに対応する燃料利用率(Uf)55.0%が1割低下され、49.5%の燃料利用率(Uf)により、電流値14Aのまま3時間保持される。そして、3時間経過した時点において、再び制御装置28が発電セル16に設けられた温度計30からの温度を検出し、この検出信号により、発電セル16の温度が650℃に到達しているかが判断される。この判断により、発電セル16の温度が650℃に到達していた場合には、制御装置28の制御信号により、負荷上昇が開始される。
なお、図3中のUf−変更値(1)および(2)に示すように、燃料利用率(Uf)を低下させた後に、負荷上昇を再開始する場合、負荷上昇を再開始する時点の燃料利用率(Uf)は、変更した燃料利用率(Uf)が適用される。
【0042】
また、上記燃料利用率(Uf)を49.5%に低下させて、3時間保持しても、発電セル16の温度が650℃に到達していない場合には、さらに制御装置28の制御信号により、変更した上記燃料利用率(Uf)49.5%が1割低下され、44.55%の燃料利用率(Uf)により、電流値14Aのまま3時間保持される。そして、3時間経過した時点において、再び制御装置28が発電セル16に設けられた温度計30からの温度を検出し、この検出信号により、発電セル16の最低温度が650℃に到達しているかが判断される。この判断により、発電セル16の温度が650℃に到達していた場合には、制御装置28の制御信号により、負荷上昇が開始される。
【0043】
さらに、上記燃料利用率(Uf)を44.55%に低下させて、3時間保持しても、発電セル16の温度が650℃に到達されていない場合には、制御装置28が発電セル16などに不具合があると判断して、緊急停止される。
【0044】
そして、電流値14Aにおいて、発電セル16の最低温度のしきい値に到達し、負荷上昇が再開され、図6に示すように、電流値が20Aに到達した時点において、電流値14Aに到達した時と同様に、コンバータ12の内部に設けられた電流計から検出信号が、制御装置28に送信される。
【0045】
次いで、制御装置28が、この検出信号を受信するとともに、固体酸化物形燃料電池5の発電セル16に設けられた温度計30からの温度が検出され、この検出信号により、20Aの電流値に対応した発電セル16の最低温度である660℃に到達しているかが判断される。この判断により、発電セル16の温度が660℃に到達していた場合には、制御装置28の制御信号により、負荷上昇が開始される。
【0046】
また、発電セル16の温度が660℃に到達していない場合には、制御装置28の制御信号により、負荷上昇が停止されて、電流値20Aのまま3時間保持される。そして、3時間経過した時点において、再び制御装置28が発電セル16に設けられた温度計30からの温度を検出し、この検出信号により、発電セル16の温度が660℃に到達しているかが判断される。この判断により、発電セル16の温度が660℃に到達していた場合には、制御装置28の制御信号により、負荷上昇が開始される。
【0047】
そして、発電セル16の温度が660℃に到達していない場合には、制御装置28の制御信号により、電流湯14Aに対応する燃料利用率(Uf)66.0%が1割低下され、59.4%の燃料利用率(Uf)により、電流値20Aのまま3時間保持される。そして、3時間経過した時点において、再び制御装置28が発電セル16に設けられた温度計30からの温度を検出し、この検出信号により、発電セル16の温度が660℃に到達しているかが判断される。この判断により、発電セル16の温度が660℃に到達していた場合には、制御装置28の制御信号により、負荷上昇が開始される。
【0048】
また、上記燃料利用率(Uf)を59.4%に低下させて、3時間保持しても、発電セル16の温度が660℃に到達していない場合には、さらに制御装置28の制御信号により、変更した上記燃料利用率(Uf)59.4%が1割低下され、53.46%の燃料利用率(Uf)により、電流値20Aのまま3時間保持される。そして、3時間経過した時点において、再び制御装置28が発電セル16に設けられた温度計30からの温度を検出し、この検出信号により、発電セル16の最低温度が660℃に到達しているかが判断される。この判断により、発電セル16の温度が660℃に到達していた場合には、制御装置28の制御信号により、負荷上昇が開始される。
【0049】
さらに、上記燃料利用率(Uf)を53.46%に低下させて、3時間保持しても、発電セル16の温度が660℃に到達されていない場合には、制御装置28が発電セル16などに不具合があると判断して、緊急停止される。
【0050】
そして、電流値20Aにおいて、発電セル16の最低温度のしきい値に到達し、負荷上昇が再開され、図7に示すように、電流値が25Aに到達した時点において、電流値14Aおよび電流値20Aに到達した時と同様に、コンバータ12の内部に設けられた電流計から検出信号が、制御装置28に送信される。
【0051】
この電流値25Aに到達した時点においても、電流値14Aおよび電流値20Aに到達したときと同様に、電流値25Aに対応した発電セル16の最低温度のしきい値である670℃に到達するまで、負荷上昇の停止と3時間の保持が行われ、その時点において発電セル16の温度が670℃に到達されていない場合には、燃料利用率(Uf)71.0%の1割低下と3時間の保持が行われ、発電セル16の温度が670℃に到達するまで、燃料利用率(Uf)の低下が2段階行われる。そして、この燃料利用率(Uf)の低下が2段階行われても、発電セルの温度が670℃に到達されていない場合には、制御装置28が発電セル16などに不具合があると判断して、緊急停止される。
【0052】
また、図8に示すように、電流値が30Aに到達した時点においても、電流値14A、電流値20Aおよび電流値25Aに到達したときと同様に作用され、電流値30Aに対応した発電セルの最低温度のしきい値である680℃に到達した場合に、制御装置28の制御信号により、負荷上昇が開始され、定格電流値まで負荷上昇される。
【0053】
そして、電流値が定格電流値まで到達すると、熱自立により固体酸化物形燃料電池5が運転され、固体酸化物形燃料電池5によって得られた電力が、セパレータ19に配線された電力供給ライン29を介して、コンバータ12に供給される。このコンバータ12に供給された電力は、入力電圧を希望値の出力電圧に変換され、さらにコンバータ12の出力側に配線されたインバータ25を介して、外部に出力される。
【0054】
上述の実施の形態による固体酸化物形燃料電池の運転方法によれば、固体酸化物形燃料電池5の起動における定格電流値到達までの各々の電流値に到達した際に、発電セル16の温度が各々の上記電流値に対応したしきい値に到達していない場合には、負荷上昇を停止して一定時間保持し、さらに、上記負荷上昇を停止して一定時間保持しても、発電セル16の温度が当該しきい値に到達していない場合には、燃料利用率(Uf)を低下させて一定時間保持することにより、負荷上昇時における電流値ごとに設定された発電セル16の最低温度に到達させることができる。これにより、発電セル16の劣化や発電性能の低下を防ぐことができるとともに、作業者が常時固体酸化物形燃料電池5の状態を監視して、上記負荷上昇の停止および上記燃料利用率(Uf)を低下させる操作を手動で行う手間を省くことができる。
【0055】
また、上記燃料利用率(Uf)を低下させて一定時間保持しても、発電セル16の温度が上記しきい値に到達していない場合には、発電セル16の温度が上記しきい値に到達するまで、上記燃料利用率(Uf)を段階的に低下させることにより、負荷上昇時における各電流値ごとに設定された発電セルの最低温度に到達させることができる。この結果、各々の上記電流値に対応した上記発電セルの最低温度に、確実に到達させることができる。
【0056】
なお、上記実施の形態において、空気ブロア11から空気供給ライン27を介して、空気を空気極層15に供給する場合のみ説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、空気ブロア11と空気を空気極層15との間に、空気ブロア11から空気極層15に供給される空気の圧力を安定させる空気バッファタンクを介装しても対応可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
固体酸化物形燃料電池に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 内缶体
2 断熱材
3 外缶体
4 缶体
5 固体酸化物形燃料電池
6 改質器
7 排出口
8 水蒸気発生器
9 炭化水素ガスブロア
10 水ポンプ
11 空気ブロア
12 コンバータ
13 固体電解質層
14 燃料極層
15 空気極層
16 発電セル
17 燃料極集電体
18 空気極集電体
19 セパレータ
20 単セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電セルの一方の面に形成された燃料極層に燃料ガスを供給するとともに、発電セルの他方の面に形成された空気極層に空気を供給して発電する固体酸化物形燃料電池の運転方法であって、
予め上記固体酸化物形燃料電池の起動における定格電流値到達までの負荷上昇時の電流値ごとに、燃料利用率および上記発電セルの最低温度のしきい値を設定し、
上記負荷上昇における各々の上記電流値に到達した際に、上記発電セルの温度が各々の上記電流値に対応する上記しきい値に到達していない場合に、上記負荷上昇を停止して一定時間保持し、これにより上記発電セルの温度が当該しきい値に到達した場合に、上記負荷上昇を再開し、
上記しきい値に到達していない場合に、上記燃料利用率を低下させて一定時間保持し、これにより上記発電セルの温度が当該しきい値に到達した場合に、上記負荷上昇を再開することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転方法。
【請求項2】
上記燃料利用率を低下させて一定時間保持し、これにより上記発電セルの温度が各々の上記電流値に対応する上記しきい値に到達していない場合に、上記発電セルの温度が各々の上記電流値に対応する上記しきい値に到達するまで、上記燃料利用率を段階的に低下させ、上記発電セルの温度が当該しきい値に到達した段階において、上記負荷上昇を再開することを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−216369(P2012−216369A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80010(P2011−80010)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】