説明

固体酸化物形燃料電池スタックおよびインターコネクタ

【課題】導電率を向上させることができる固体酸化物形燃料電池スタックおよびインターコネクタを提供する。
【解決手段】燃料ガス供給板121と燃料極接続板122、空気極接続板131と空気供給板132、および、燃料ガス供給板121と空気供給板132との間に、燃料極側金属膜123、空気極側金属膜133またはセル間金属膜21を配設する。これにより、それらの薄板間の接触面積の増大させることができるので、結果として、導電率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関し、具体的には、平板型の固体酸化物形燃料電池セルを積層した固体酸化物形燃料電池スタックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、規模の大小にかかわらず高い効率が得られることから、次世代のコジェネレーションシステムに用いられる発電手段として、燃料電池が注目されている。燃料電池は、酸素などの酸化剤ガスと水素などの燃料ガスとの化学反応を利用した電池であり、空気極と呼ばれる陽極と、燃料極と呼ばれる陰極とで電解質の層を挟んだ単セルを、複数重ね合わせて用いている。一組のセル(単セル)で得られる電気の電圧は、約0.7V程度であるが、複数の単セルを重ね合わせて用いることで、所望とする電圧の供給が可能である。このような燃料電池には、高分子材料を電解質層に用いる固体高分子形や、セラミックスなどの酸化物を電解質層に用いる固体酸化物形がある。
【0003】
固体高分子形燃料電池では、作動温度が高々90℃程度であり、自動車用や家庭用コジェネレーションシステムに適用可能とされている。これに対し、固体酸化物形燃料電池は、作動温度が600℃以上と高温であり、発電効率が45%以上と高いという特徴を備えている。このため、複数の単セルを組み合わせたスタック構造の固体酸化物形燃料電池は、タービン発電などを組み合わせてより高い効率のコジェネレーションシステムが構築できるという利点を有し、発電所としての用途などが期待されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
ところで、固体酸化物形燃料電池において実用的な出力を得るためには、上述したように、複数の単セルを直列または並列に接続する必要がある。このとき、各単セルの燃料極側に供給される燃料ガスと、空気極側に供給される酸化剤ガスとが混合しない状態で、各単セルを電気的に接続するために、セパレータやインターコネクタなどと呼ばれ、ガスが透過せず、電気伝導度が高い材料からなる部材が用いられている。この材料としては従来よりセラミックスが用いられてきたが、近年では作動温度の低下が実現されており、金属材料を用いることが可能となっている。
この金属製のインターコネクタは、セラミックス製のインターコネクタと比較すると、加工性がよく、電気電導度や熱電導度が高いという優れた特性を有する一方、高温酸化雰囲気下において表面に電気電導度が低い酸化被膜が形成されるという特性を有する。
【0005】
そこで、最近では、Crが16〜24%程度含まれたフェライト系の耐熱性ステンレス鋼が用いることが提案されている。この耐熱性ステンレス鋼は、高温酸化雰囲気下においても表面に酸化被膜が形成されにくいので、その耐熱性ステンレス鋼をインターコネクタに使用することにより高い電気電導度を実現することができる。このような耐熱性ステンレス鋼の薄板をプレス加工することにより、低コストでインターコネクタを製造することが可能となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】田川 博章、固体酸化物燃料電池と地球環境、株式会社 アグネ承風社、第1版第1刷、pp25−30 1998年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、インターコネクタを耐熱性ステンレス鋼の薄板で形成した場合、発電温度付近で歪みや反りが生じやすいために、各インターコネクタ間の接触面積の低減により導電率が低下し、期待した発電特性を得ることが困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、導電率を向上させることができる固体酸化物形燃料電池スタックおよびインターコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る固体酸化物形燃料電池スタックは、燃料極と、空気極と、当該燃料極および当該空気極との間に配置された電解質とからなる平板型の単セルと、この単セルの燃料極または空気極と対向配置されるとともに、この対向配置された燃料極または空気極に燃料ガスまたは酸化剤ガスを供給する2つのインターコネクタとからなるセルを複数積層した固体酸化物形燃料電池スタックであって、インターコネクタは、積層された耐熱性ステンレス鋼からなる複数の薄板と、この薄板の間に配設された金属膜とから構成されることを特徴とするものである。
【0010】
上記固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、セルの積層方向に貫通し、単セルに供給される燃料ガスまたは酸化剤ガスが流通する複数のマニホールドを備え、金属膜は、マニホールドの周辺部に配設されるようにしてもよい。
【0011】
また、上記固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、燃料極と対向配置されたインターコネクタは、一端がマニホールドに接続された燃料ガス流路を有する第1の薄板と、燃料ガス流路の他端から供給される燃料ガスを燃料極に供給する燃料供給部を有し、第1の薄板上に設けられるとともに燃料極に対向配置された第2の薄板とを備え、空気極と対向配置されたインターコネクタは、当該空気極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給部を有する第3の薄板と、一端がマニホールドに、他端が酸化剤ガス供給部に接続された酸化剤ガス流路を有し、第3の薄膜上に設けられた第4の薄板とを備え、金属膜は、第1の薄板と第2の薄板との間、および、第3の薄板と第4の薄板との間に配設されるようにしてもよい。
【0012】
また、上記固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、金属膜は、厚さが5μm以上50μm以下の銀の薄膜から構成されるようにしてもよい。
【0013】
また、本発明に係るインターコネクタは、燃料極と、空気極と、当該燃料極および当該空気極との間に配置された電解質とからなる平板型の単セルの燃料極または空気極と対向配置されるとともに、この対向配置された燃料極または空気極に燃料ガスまたは酸化剤ガスを供給する固体酸化物形燃料電池用のインターコネクタであって、耐熱性ステンレス鋼からなる複数の薄板と、薄板の間に配設された金属膜とから構成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、薄板の間に金属膜を配設することにより、薄板間の接触面積の増大させることができるので、結果として、導電率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る固体酸化物形燃料電池のセルの構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る固体酸化物形燃料電池スタックの構成を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る固体酸化物形燃料電池における単セルの構成を模式的に示す断面図である。
【図4】図5は、本発明の実施の形態に係る固体酸化物形燃料電池における燃料極側金属膜および空気極側金属膜の構成を模式的に示す平面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係る固体酸化物形燃料電池におけるセル間金属膜の構成を模式的に示す断面図である。
【図6】図6は、発電特性の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
<固体酸化物形燃料電池の構成>
図1に示すように、本実施の形態に係る固体酸化物形燃料電池は、円盤状の単セル11と、この単セル11の後述する燃料極111に対向配置され、その燃料極111に燃料ガスを供給するとともに燃料極111と電気的に接続された円盤状の燃料極インターコネクタ12と、単セル11の後述する空気極113に対向配置され、その空気極に酸化剤ガスを供給するとともに空気極113と電気的に接続された円盤状の空気極インターコネクタ13とを備え、これらを一組としたセル1が構成される。このようなセル1は、実用的な出力を得るために、図2に示すように、そのセル1を複数組重ねた固体酸化物形燃料電池スタック2の一部として機能する。
【0018】
また、セル1には、この燃料極インターコネクタ12の上面の中央部に配設され、上面に単セル11が配設される円盤状の燃料極側集電体14と、燃料極インターコネクタ12の上面に配設され、中央部に形成された開口に単セル11および燃料極側集電体14を収容することにより単セル11および燃料極側集電体14を所定の位置に配設するリング状のセルホルダ15と、単セル11の後述する電解質32およびセルホルダ15の上面に配設されたリング状のシール部材16と、このシール部材16の上面に配設されたリング状の絶縁部材17と、単セル11の上面に配設され、上面に空気極インターコネクタ13が配設される円盤状の空気極側集電体18とを備えている。
【0019】
このようなセル1には、燃料極インターコネクタ12や空気極インターコネクタ13の平面方向における単セル11の周囲に、燃料極インターコネクタ12、空気極インターコネクタ13、セルホルダ15、シール部材16および絶縁部材17の積層方向に貫通する複数の貫通孔が形成されている。これらの貫通孔は、外部から燃料ガスが供給される燃料ガスマニホールド19、外部から酸化剤ガスが供給される酸化剤ガスマニホールド20、単セル11で酸化されなかった未反応の燃料ガスを外部に排出する排気ガスマニホールド(図示せず)、および、単セル11で未反応の酸化剤ガスを外部に排出する未反応酸化剤ガスマニホールドを構成する。
【0020】
≪単セルの構成≫
単セル11は、図3に示すように、燃料極側集電体14と同等の平面形状を有する燃料極111と、この燃料極111と同等の形状を有し、燃料極111の上面に形成された電解質112と、この電解質112よりも外形が小さな円盤の形状を有し、電解質112の上面に形成された空気極113とから構成される。ここで、空気極113の上面には、空気極113と同等の形状を有する集電層114が設けられている。
【0021】
燃料極111は、例えば、ニッケル添加イットリア安定化ジルコニア(Ni−YSZ)、ニッケル添加サマリア安定化ジルコニア(Ni−SSZ)、ニッケル添加スカンジア安定化ジルコニア(Ni−ScSZ)などの金属Niと電解質112を構成する材料との混合物などから構成される。
【0022】
電解質112は、例えば、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、サマリア安定化ジルコニア(SSZ)、コバルト添加ランタンガレート系酸化物(LSGMC)などから構成される。
【0023】
空気極113は、例えば、ランタンニッケルフェライト(LNF)、ランタンマンガネート(LSM)、ランタンストロンチウムコバルタイト(LSC)、ランタンストロンチウムコバルタイトフェライト(LSCF)、ランタンストロンチウムフェライト(LSF)、サマリウムストロンチウムコバルタイト(SSC)などから構成される。
【0024】
集電層114は、例えば、ランタンニッケルフェライト(LNF)とLaCoO3(LC)の混合物などから構成される。
【0025】
≪燃料極インターコネクタの構成≫
燃料極インターコネクタ12は、燃料ガス供給板121と、この燃料ガス供給板121上に配設された燃料極接続板122と、燃料ガス供給板121と燃料極接続板122との間に設けられた燃料極側金属膜123とを備えている。
【0026】
ここで、燃料ガス供給板121は、耐熱性ステンレス鋼からなる円形の薄板から構成される。この燃料ガス供給板121には、この燃料ガス供給板121の平面方向に延在する管からなり、一端が燃料ガスマニホールド19に接続された燃料流路121aが形成されている。また、燃料ガス供給板121には、この燃料ガス供給板121の平面方向に延在する管からなり、一端が排気ガスマニホールド(図示せず)に接続された排気ガス流路(図示せず)も形成されている。
【0027】
また、燃料極接続板122は、燃料ガス供給板121と同等の平面形状を有する耐熱性ステンレス鋼の薄板から構成される。この燃料極接続板122には、上面の中央部に複数の溝を備え、燃料流路121aの他端が接続された燃料供給部122aが形成されている。具体的には、燃料供給部122aは、燃料が流通する凹部と、燃料極側集電体14と接触する凸部とからなる複数の溝を備えており、その凹部には燃料流路121aから燃料ガスが供給される。このような燃料供給部122aには、上述した排気ガス流路(図示せず)の他端も接続されており、未反応の燃料ガスがその排気ガス流路を介して排気ガスマニホールドから外部に排出される。
【0028】
燃料極側金属膜123は、図1および図4に示すように、円形の銀の薄膜からなり、燃料ガス供給板121上面の中央部に配設される第1の燃料極側薄膜123aと、輪状の銀の薄膜からなり、燃料ガス供給板121上面の外縁部に配設される第2の燃料極側薄膜123bとから構成される。ここで、第1の燃料極側薄膜123aの中央部には、燃料流路121aの他端部を構成する第1の開口123a−1が形成されている。また、第2の燃料極側薄膜123bの所定の箇所には、燃料ガスマニホールド19、酸化剤ガスマニホールド20、排気ガスマニホールドおよび未反応酸化剤ガスマニホールドの一部を構成する複数の第2の開口123b−1が形成されている。本実施の形態において、第1の燃料極側薄膜123aおよび第2の燃料極側薄膜123bは、5μm以上50μm以下の厚さに形成されている。
【0029】
≪空気極インターコネクタの構成≫
空気極インターコネクタ13は、空気極接続板131と、この空気極接続板131上に配設された空気供給板132と、空気極接続板131と空気供給板132との間に設けられた空気極側金属膜133とを備えている。
【0030】
空気極接続板131は、耐熱性ステンレス鋼からなる円形の薄板から構成される。この空気極接続板131には、下面の中央部に形成された複数の溝からなる酸化剤ガス供給部131aが形成されている。具体的には、酸化剤ガス供給部131aは、空気等の酸化剤ガスが流通する凹部と、空気極側集電体18と接触する凸部とからなる複数の溝を備えており、その凹部には酸化剤ガス流路132aから酸化剤ガスが供給される。
【0031】
空気供給板132は、空気極接続板131と同等の平面形状を有する耐熱性ステンレス鋼の薄板から構成される。この空気供給板132には、この空気供給板132の平面方向に延在する管からなり、一端が酸化剤ガスマニホールド20、他端が酸化剤ガス供給部131aに接続された酸化剤ガス流路132aが形成されている。また、空気供給板132には、この空気供給板132の平面方向に延在する管等からなり、一端が外部に接続された未反応空気流路(図示せず)が形成されるようにしてもよい。
【0032】
空気極側金属膜133は、図1および図4に示すように、円形の銀の薄膜からなり、空気極接続板131上面の中央部に配設される第1の空気極側薄膜133aと、輪状の銀の薄膜からなり、空気極接続板131上面の外縁部に配設される第2の空気極側薄膜133bとから構成される。ここで、第1の空気極側薄膜133aの中央部には、酸化剤ガス流路132aの他端部を構成する第1の開口133a−1が形成されている。また、第2の空気極側薄膜133bの所定の箇所には、燃料ガスマニホールド19、酸化剤ガスマニホールド20、排気ガスマニホールドおよび未反応酸化剤ガスマニホールドの一部を構成する複数の第2の開口133b−1が形成されている。本実施の形態において、第1の空気極側薄膜133aおよび第2の空気極側薄膜133bは、5μm以上50μm以下の厚さに形成されている。
【0033】
さらに、図1,図2および図5に示すように、セル1を複数組重ねた固体酸化物形燃料電池スタック2とする場合、最上部のセル1を除く空気供給板132の上面には、セル間金属膜21が配設される。このセル間金属膜21は、円形の銀の薄膜からなり、空気供給板132上面の中央部に配設される第1のセル間薄膜211aと、輪状の銀の薄膜からなり、空気供給板132上面の外縁部に配設される第2のセル間薄膜211bとから構成される。ここで、第2のセル間薄膜211bの所定の箇所には、燃料ガスマニホールド19、酸化剤ガスマニホールド20、排気ガスマニホールドおよび未反応酸化剤ガスマニホールドの一部を構成する複数の第2の開口211b−1が形成されている。本実施の形態において、第1のセル間薄膜211aおよび第2のセル間薄膜211bは、5μm以上50μm以下の厚さに形成されている。
【0034】
≪その他の部材の構成≫
燃料極側集電体14は、白金、銀、金、パラジウム、イリジウム、ロジウム等の金属、フェライト系耐熱合金の細線からなるメッシュや不織布、エキスパンドメタル、発泡金属など、電子伝導性が高く、600〜1000℃で化学的に安定な材料から構成される。
【0035】
セルホルダ15は、例えば、クロムが16〜25%程度含まれているフェライト系の耐熱合金から構成されている。セルホルダ15の内部には、燃料極側集電体14ならびに単セル11の燃料極111および電解質112が収容され、これらの周面とセルホルダ15の内面との隙間には、シール部材16と同等の材料からなる隙間部材15aが設けられている。
【0036】
シール部材16は、例えば、ホウ珪酸ガラスなどの軟化点が動作温度付近のガラス材料から構成されている。
【0037】
絶縁部材17は、例えばアルミナなどの高温でも絶縁性のあるセラミックスや、マイカなどの絶縁材料から構成される。
【0038】
空気極側集電体18は、白金、銀、金、パラジウム、イリジウム、ロジウム等の金属、フェライト系耐熱合金の細線からなるメッシュや不織布、エキスパンドメタル、発泡金属、それらの材料を含むペースト材料など、電子伝導性が高く、600〜1000℃で化学的に安定な材料から構成される。
【0039】
<固体酸化物形燃料電池の組立方法>
次に、本実施の形態に係る固体酸化物形燃料電池の組立方法の一例について説明する。
【0040】
はじめに、耐熱合金からなる台座の上に、燃料極インターコネクタ12を配設する。具体的には、台座の上に、燃料流路121aおよび排気ガス流路が形成された燃料ガス供給板121を載置した後、この燃料ガス供給板121上面の中央部に第1の燃料極側薄膜123a、燃料ガス供給板121上面の外縁部に第2の燃料極側薄膜123bを載置する。このようにして燃料極側金属膜123が載置された燃料ガス供給板121の上面に、燃料供給部122aが形成された燃料極接続板122の下面を載置する。これにより、台座の上には、燃料ガス供給板121と燃料極接続板122との間に燃料極側金属膜123が挟み込まれた燃料極インターコネクタ12が配設されることとなる。
【0041】
燃料極インターコネクタ12を配設すると、燃料極接続板122の燃料供給部122aが形成されている面上に、燃料極側集電体14を配設した後、この燃料極側集電体14上に燃料極111が位置するように、単セル11を燃料極側集電体14上に配設する。このように燃料極側集電体14を設けることにより、燃料極インターコネクタ12と単セル11の燃料極111との電気的接続を良くすることができる。
【0042】
単セル11を配設すると、セルホルダ15を、その内側に単セル11および燃料極側集電体14が位置するように、燃料極インターコネクタ12上に配設する。
【0043】
セルホルダ15を配設すると、単セル11の電解質112の上面からセルホルダ15の上面にかけてホウ珪酸ガラスなどの軟化点が動作温度付近のガラス材料をシール部材16を配設する。このとき、燃料極側集電体14ならびに単セル11の燃料極111および電解質112の周面とセルホルダ15の内面との隙間にも、シール部材16と同等の材料からなる隙間部材15aを配設する。また、シール部材16の上に絶縁部材17を配設する。このように、シール部材16や隙間部材15aを設けることにより、燃料極インターコネクタ12と単セル11との周辺部の隙間から燃料ガスや未反応ガスが漏れるのを防ぐことができる。また、絶縁部材17を設けることにより、燃料極インターコネクタ12と空気極インターコネクタ13との短絡を防止することができる。
【0044】
絶縁部材17を配設すると、単セル11の集電層114の上に、ペースト材料からなる空気極側集電体18を配設する。このように、空気極側集電体18を設けることにより、単セル11の集電層114と空気極インターコネクタ13との電気的接続を良くすることができる。なお、空気極側集電体18を構成するペースト材料は、初回動作前に予め集電層114の上に塗布し、その上に空気極インターコネクタ13を配置することで、初回動作時の昇温過程でより良好な電気的接続を実現することができる。
【0045】
空気極側集電体18を配設すると、絶縁部材17および空気極側集電体18の上に、空気極インターコネクタ13を配設する。具体的には、絶縁部材17および空気極側集電体18の上に、酸化剤ガス供給部131aが形成された空気極接続板131を載置した後、この空気極接続板131上面の中央部に第1の空気極側薄膜133a、空気極接続板131上面の外縁部に第2の空気極側薄膜133bを載置する。このようにして空気極側金属膜133が載置された空気極接続板131の上面に、酸化剤ガス流路132aが形成された空気供給板132の下面を載置する。これにより、絶縁部材17および空気極側集電体18の上には、空気極接続板131と空気供給板132との間に空気極側金属膜133が挟み込まれた空気極インターコネクタ13が配設されることとなる。
【0046】
空気極インターコネクタ13を配設すると、空気極インターコネクタ13から燃料極インターコネクタ12に向けて荷重をかける。これにより、燃料極側集電体14が燃料極接続板122および単セル11の燃料極111に圧接されるので、燃料極接続板122と燃料極111との電気的接続が良好となる。同様に、空気極側集電体18が空気極接続板131および単セル11の集電層114に圧接されるので、空気極接続板131と集電層114との電気的接続が良好となる。
【0047】
これにより、台座上にセル1が設けられることとなる。このようなセル1を複数組重ねた固体酸化物形燃料電池スタック2を設ける場合、セル1の最上部に設けられた空気供給板132の上面に、セル間金属膜21を配設する。具体的には、空気供給板132上面の中央部に第1のセル間薄膜211a、空気供給板132上面の外縁部に第2のセル間薄膜211bを配設する。このようにセル間金属膜21を設けると、この上面に上述した方法によりセル1を積層することにより、固体酸化物形燃料電池スタック2が生成される。
【0048】
なお、このようなセルを複数積層したスタックでは、燃料極インターコネクタ12と空気極インターコネクタ13とは、それぞれ上下に隣接するセルの空気極インターコネクタ13または燃料極インターコネクタ12に電気的に接続されている。したがって、固体酸化物形燃料電池スタックの上端の空気極インターコネクタ13と下端の燃料極インターコネクタ12とを端子として負荷回路に接続することにより、電力を取り出すことができることとなる。
【0049】
<固体酸化物形燃料電池の発電動作>
次に、上述したような手順で組み立てられる固体酸化物形燃料電池の発電動作について説明する。
【0050】
まず、ドライ水素等の燃料ガスは、燃料ガスマニホールド19から燃料極インターコネクタ12の燃料流路121aおよび燃料供給部122aを通り、燃料極側集電体14を経由して、単セル11の燃料極111に供給される。一方、空気等の酸化剤ガスは、酸化剤ガスマニホールド20から空気極インターコネクタ13の酸化剤ガス流路132aおよび酸化剤ガス供給部131aを通り、空気極側集電体18を経由して、単セル11の集電層114から空気極113に供給される。このように燃料ガスおよび酸化剤ガスが所定の温度下において単セル11に供給されると、燃料極111と空気極113とにおいて電気化学反応が発生する。
【0051】
このような状態で、固体酸化物形燃料電池スタックの上端の空気極インターコネクタ13と下端の燃料極インターコネクタ12とを端子として負荷回路に接続すると、電力を取り出すことができる。
【0052】
本実施の形態では、上述したように、燃料極インターコネクタ12を構成する燃料ガス供給板121と燃料極接続板122との間に、燃料極側金属膜123が設けられている。同様に、空気極インターコネクタ13を構成する空気極接続板131と空気供給板132との間に、空気極側金属膜133が設けられている。さらに、隣り合うセル1間の燃料ガス供給板121と空気供給板132との間に、セル間金属膜21が設けられている。これにより、燃料ガス供給板121と燃料極接続板122、空気極接続板131と空気供給板132、および、燃料ガス供給板121と空気供給板132が、燃料極側金属膜123、空気極側金属膜133またはセル間金属膜21により密着するので、それらの間の接触面積が増大して隙間が生じにくくなる。具体的には、発電時には、各構成部材の熱膨張によりそれぞれ耐熱性ステンレス鋼の薄板からなる燃料ガス供給板121と燃料極接続板122、空気極接続板131と空気供給板132、および、燃料ガス供給板121と空気供給板132の間には圧縮力が働くが、その薄板の形状や薄板内での温度分布により圧縮力は薄板の面内で必ずしも均一ではなく、薄板にひずみが発生することで薄板間の接触が局所的になることがある。このような状態でそれらの薄板間に、比較手柔らかな金属である銀の薄膜からなる燃料極側金属膜123、空気極側金属膜133、セル間金属膜21を配設すると、圧縮力の強い領域では薄板間の銀の薄膜は圧延されたような状態で薄板の平面方向に押し出され、圧縮力の弱い領域では圧縮力の強い領域から押し出された銀の薄膜が薄板間に溜まるので、圧力の弱い領域においても薄板間の面的な導通が確保され、結果として、期待した発電特性を得ることができる。また、プレス加工では比較的単純な形状しか成形できないため、インターコネクタのような複雑な形状の品物を作製するには複数の部材を組み合わせる必要があり、実際的ではなかった。しかしながら、本実施の形態では、燃料極側金属膜123、空気極側金属膜133およびセル間金属膜21を設けることにより、量産性が高く加工コストが安いプレス加工を用いても電気抵抗の小さなインターコネクタを製造することができる。
【0053】
本実施の形態における効果を検証するために、セル1の構成において、本実施の形態すなわち燃料極側金属膜123および空気極側金属膜133を設けた場合(条件1)、第1の燃料極側薄膜123aおよび第1の空気極側薄膜133aを設けた場合(条件2)、ならびに、燃料極側金属膜123および空気極側金属膜133を設けない場合(条件3)において発電を行った。この結果を図6に示す。なお、図6に示す発電結果は、発電温度を800[℃]、燃料ガスとしてドライ水素(電流密度が0.3[A/cm2]で燃料利用率が80[%]となるガス流量を供給)、酸化剤ガスとして空気(電流密度が0.3[A/cm2]で燃料利用率が80[%]となるガス流量を供給)を用いた。
【0054】
この図4からわかるように、本実施の形態(条件1)や第1の燃料極側薄膜123aおよび第1の空気極側薄膜133aを設けた場合(条件2)は、燃料極側金属膜123および空気極側金属膜133を設けない場合(条件3)と比べて、OCV(Open circuit voltage:開路電圧)および0.3[A/cm2]の電流密度における電圧のいずれにおいても高い発電特性を示している。
特に、本実施の形態のように燃料極側金属膜123および空気極側金属膜133を設ける、すなわち、燃料ガス供給板121と燃料極接続板122の中央部および外縁部ならびに空気極接続板131と空気供給板132の中央部および外縁部に銀の薄膜を設けると、高いOCVを示していることから、ガスシール性も向上したものと考えられる。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態によれば、燃料ガス供給板121と燃料極接続板122、空気極接続板131と空気供給板132、および、燃料ガス供給板121と空気供給板132との間に、燃料極側金属膜123、空気極側金属膜133またはセル間金属膜21を配設することにより、それらの薄板間の接触面積の増大させることができるので、結果として、導電率を向上させることができる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、燃料ガスマニホールド19や酸化剤ガスマニホールド20の周辺部に第2の燃料極側薄膜123b、第2の空気極側薄膜133bおよび第2のセル間薄膜211bを設けることにより、これらの薄膜が各薄板間においてガスケットのように働き、燃料ガスマニホールド19や酸化剤ガスマニホールド20を流れる酸化剤ガスや燃料ガスが薄板間を経由して外部に漏洩することを防ぐことができる。
【0057】
また、本実施の形態によれば、燃料極インターコネクタ12および空気極インターコネクタ13が合計4枚の耐熱性ステンレス鋼の薄板から構成する場合であっても、薄板間で面的な接触を確保でき、一組のインターコネクタとしての電気抵抗を低減することができる。
【0058】
また、本実施の形態では、燃料極インターコネクタ12および空気極インターコネクタ13が合計4枚の耐熱性ステンレス鋼の薄板から構成される場合を例に説明したが、その薄板の枚数は4枚に限定されず、適宜自由に設定することができる。また、燃料極インターコネクタ12と空気極インターコネクタ13とで薄板の枚数が同一ではなく異なるようにしてもよい。さらに、燃料極インターコネクタ12と空気極インターコネクタ13の一方のみが薄板から構成されるようにしてもよい。
【0059】
さらに、本実施の形態によれば、燃料極側金属膜123、空気極側金属膜133およびセル間金属膜21の厚さを5μm以上50μm以下とすることにより、薄板間の良好な導通が得ることができきる。すなわち、それらの金属膜の厚さが5μm未満ではその厚さが耐熱性ステンレス鋼の面精度以下になってしまい、耐熱性ステンレス鋼表面の凹部に金属膜を構成する銀が入り込んでしまうので、薄板間の接触に銀が関与できない可能性がある。一方、金属膜の厚さを50μmを超える厚さとすると、薄板間に圧力が掛かった際に圧延された銀が薄板の端部から外部に押し出されてしまう可能性がある。押し出された銀が他の部品と接触するとそこに導通が発生し、場合によってはスタックがショートしてしまう恐れがある。したがって、金属薄板の厚さは5μm以上50μm以下であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、固体酸化物形燃料電池など、耐熱性ステンレス鋼の薄板を複数枚積層した構成を有する各種装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1…セル、2…固体酸化物形燃料電池スタック、11…単セル、12…燃料極側インターコネクタ、13…空気極インターコネクタ、14…燃料極側集電体、15…セルホルダ、15a…隙間部材、16…シール部材、17…絶縁部材、18…空気極側集電体、19…燃料ガスマニホールド、20…酸化剤ガスマニホールド、21…セル間金属膜、111…燃料極、112…電解質、113…空気極、114…集電層、121…燃料ガス供給板、121a…燃料流路、122…燃料極接続板、122a…燃料供給部、123…燃料極側金属膜、123a…第1の燃料極側薄膜、123a−1…第1の開口、123b…第2の燃料極側薄膜、123b−1…第2の開口、131…空気極接続板、131a…酸化剤ガス供給部、132…空気供給板、132a…酸化剤ガス流路、133…空気極側金属膜、133a…第1の空気極側薄膜、133a−1…第1の開口、133b…第2の空気極側薄膜、133b−1…第2の開口、211a…第1のセル間薄膜、211b…第2のセル間薄膜、211b−1…第2の開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料極と、空気極と、当該燃料極および当該空気極との間に配置された電解質とからなる平板型の単セルと、この単セルの前記燃料極または前記空気極と対向配置されるとともに、この対向配置された前記燃料極または前記空気極に燃料ガスまたは酸化剤ガスを供給する2つのインターコネクタとからなるセルを複数積層した固体酸化物形燃料電池スタックであって、
前記インターコネクタは、
積層された耐熱性ステンレス鋼からなる複数の薄板と、
この薄板の間に配設された金属膜と
から構成される
ことを特徴とする固体酸化物形燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1記載の固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、
前記セルの積層方向に貫通し、前記単セルに供給される燃料ガスまたは酸化剤ガスが流通する複数のマニホールドを備え、
前記金属膜は、前記マニホールドの周辺部に配設される
ことを特徴とする固体酸化物形燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項1または2記載の固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、
前記燃料極と対向配置されたインターコネクタは、
一端が前記マニホールドに接続された燃料ガス流路を有する第1の薄板と、
前記燃料ガス流路の他端から供給される前記燃料ガスを前記燃料極に供給する燃料供給部を有し、前記第1の薄板上に設けられるとともに前記燃料極に対向配置された第2の薄板と
を備え、
前記空気極と対向配置されたインターコネクタは、当該空気極に前記酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給部を有する第3の薄板と、
一端が前記マニホールドに、他端が前記酸化剤ガス供給部に接続された酸化剤ガス流路を有し、前記第3の薄膜上に設けられた第4の薄板と
を備え、
前記金属膜は、前記第1の薄板と前記第2の薄板との間、および、前記第3の薄板と前記第4の薄板との間に配設される
ことを特徴とする固体酸化物形燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1項に記載の固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、
前記金属膜は、厚さが5μm以上50μm以下の銀の薄膜から構成される
ことを特徴とする固体酸化物形燃料電池スタック。
【請求項5】
燃料極と、空気極と、当該燃料極および当該空気極との間に配置された電解質とからなる平板型の単セルの前記燃料極または前記空気極と対向配置されるとともに、この対向配置された前記燃料極または前記空気極に燃料ガスまたは酸化剤ガスを供給する固体酸化物形燃料電池用のインターコネクタであって、
耐熱性ステンレス鋼からなる複数の薄板と、
前記薄板の間に配設された金属膜と
から構成されることを特徴とするインターコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−54954(P2013−54954A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192999(P2011−192999)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】