説明

固体酸化物形燃料電池セル及びその製造方法

【課題】固体酸化物形燃料電池の固体電解質の粉末化を抑制する。
【解決手段】Mnを含むペロブスカイト型酸化物である空気極と、前記空気極に配置される空気極触媒層と、前記空気極触媒層に配置される固体電解質と、前記固体電解質に配置される燃料極と、を備え、前記空気極触媒層は少なくともMnを含むペロブスカイト型酸化物を有し、前記固体電解質は少なくともYSZを含有する固体酸化物形燃料電池セルであって、前記固体電解質は前記燃料極が配置されていない露出部を備え、前記露出部にはScSZが含有され、前記露出部のYSZはリートベルト法で測定し、格子定数が0.512488nmを超える部分を備えることを特徴とすることで、固体電解質の粉末化を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池セル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池に用いる固体電解質としては、高い酸素イオン伝導性や高い強度とともに、長時間、少なくとも40000時間までその高い酸素イオン伝導性及び高強度を安定に維持することが重要である。
【0003】
従来、固体酸化物形燃料電池の固体電解質として、安定化ジルコニアやランタンガレート、セリア含有酸化物が一般的に使用されている。例えば特許文献1では、Y及びScを固溶させた安定化ジルコニアを用いることにより、ガス透過性がなく、かつ酸素イオン伝導性の高い固体電解質を得ている。
【特許文献1】特開2004−87490
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし本発明者らの実験により、燃料極が配置されていない露出部にある固体電解質が長期の発電において粉末化することが分かった。本発明では、固体電解質の粉末化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の態様においては、Mnを含むペロブスカイト型酸化物である空気極と、前記空気極に配置される空気極触媒層と、前記空気極触媒層に配置される固体電解質と、前記固体電解質に配置される燃料極と、を備え、前記空気極触媒層は少なくともMnを含むペロブスカイト型酸化物を有し、前記固体電解質は少なくともYSZを含有する固体酸化物形燃料電池セルであって、前記固体電解質は前記燃料極が配置されていない露出部を備え、前記露出部にはYSZが含有され、前記露出部のYSZはリートベルト法で測定し、格子定数が0.512488nmを超える部分を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、長期の発電において燃料極が配置されていない露出部にある固体電解質が粉末化を生じず、それによって発電性能及び耐久性の高い固体酸化物形燃料電池を提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0008】
本発明では、Mnを含むペロブスカイト型酸化物である空気極と、前記空気極に配置される空気極触媒層と、前記空気極触媒層に配置される固体電解質と、前記固体電解質に配置される燃料極と、を備え、前記空気極触媒層は少なくともMnを含むペロブスカイト型酸化物を有し、前記固体電解質は少なくともYSZを含有する固体酸化物形燃料電池セルであって、前記固体電解質は前記燃料極が配置されていない露出部を備え、前記露出部にはYSZが含有され、前記露出部のYSZはリートベルト法で測定し、格子定数が0.512488nmを超える部分を備えることを特徴とする。
【0009】
ジルコニアは室温では蛍石型面心立方晶が歪んだ単斜晶の構造をもつが、約1170℃で正方晶に、約2370℃で立方晶に相変態し、相変態に伴って体積が変化するため、固体酸化物形燃料電池に用いる場合、サーマルサイクルによって固体電解質にクラックが生じるおそれがある。そこで固体酸化物形燃料電池の固体電解質には、価数が2+の金属あるいは価数が3+をとりうる金属の酸化物を固溶させて正方晶や立方晶を室温まで安定に存在させたものを用いている。酸化物の固溶量によって、正方晶や立方晶、菱面体などの結晶構造をもつ安定化ジルコニアが得られる。一般的にはYを固溶させたジルコニアや、Scを固溶させたジルコニアが用いられる。
【0010】
本発明でいうYSZとは、xY(1−x)ZrOで表される、Yを固溶させた安定化ジルコニアである。YSZは特に焼結性が高く、よって高い気密性を得ることができるため、特に信頼性の高い固体酸化物形燃料電池を提供することが可能になる。
【0011】
露出部の固体電解質に粉末化が生じると固体電解質の膜厚が減少し、気密性が低下する。格子定数が0.512488nmを超えるYSZを露出部の固体電解質に用いることにより粉末化を抑制することができるので、気密性を長期間保つことが可能になり、耐久性の高い固体酸化物形燃料電池セルを提供することができる。なお、露出部全域の固体電解質の格子定数が0.512488nmを超えることが好ましい。
【0012】
おそらく、空気極触媒層の焼成中に空気極から空気極触媒層にMnが拡散し、固体電解質及び燃料極及びインターコネクターの焼成中に、空気極触媒層から固体電解質にMnが拡散するため、露出部の固体電解質のYSZの格子定数が小さくなると考えられる。固体電解質へのMn拡散によって、YSZの価数のバランスが崩れ結晶安定性が低下する、また固体電解質に電子伝導性が生じる、ことによって粉末化が促進されると推測される。
【0013】
また、露出部の固体電解質のYSZの格子定数が0.515794nm以下であれば、粉末化を抑制することができるので、気密性を長期間保つことが可能になり、耐久性の高い固体酸化物形燃料電池セルを提供することができる。
【0014】
さらに、露出部の固体電解質のYSZの格子定数は0.515386nm以下であることが好ましい。なぜなら、Yの固溶量が12モル%を超えると、立方晶のほかに菱面体晶が生成し導電率が低下する恐れがあるためである。YはZrに比べてイオン半径が大きいため、固溶量の増加とともに格子定数が増加する。
【0015】
本発明で利用できる固体酸化物形燃料電池について、以下に説明する。
【0016】
固体酸化物形燃料電池である、円筒縦縞型の固体酸化物形燃料電池を図1に示す。空気極1上に固体電解質3、さらに固体電解質3の上にインターコネクター2と接触しないように燃料極4が構成されている。固体電解質は、燃料極が配置されていない露出部5を備える。発電に際して、空気極と固体電解質の界面で、空気極内部を流れてきた電子と外部の酸素が反応し、式(1)に示すように酸素イオンを生じる。この酸素イオンが固体電解質を通って燃料極に達し、燃料中の水素や一酸化炭素と酸素イオンが反応して水あるいは二酸化炭素と電子を生成する。これらの反応は(2)、(3)式で示される。
+4e → 2O2− …(1)
+O2− → HO+2e …(2)
CO+O2− → CO+2e …(3)
【0017】
本発明で利用できる固体酸化物形燃料電池とは、円筒縦縞型に限らない。円筒横縞型や扁平円筒型などを挙げることができる。
【0018】
本発明でいうMnを含むペロブスカイト型酸化物である空気極とは、例えば(La1−xSrMnOや(La1−xCaMnO挙げることができる。空気極は、ガス透過性が高く、電子伝導性が高く、固体電解質との反応性が低いことが好ましく、一般的に(La1−xMnO(A=SrまたはCa)が使われている。
【0019】
本発明でいう少なくともMnを含むペロブスカイト型酸化物を含む空気極触媒層は、例えば(La1−xMnO(A=SrまたはCa)/Scを固溶させたZrO(ScSZ)、(La1−xMnO(A=SrまたはCa)/YSZ、(La1−xMnO(A=SrまたはCa)/セリウム含有酸化物、(La1−xMnO(A=SrまたはCa)/ScSZ/セリウム含有酸化物、(La1−xMnO(A=SrまたはCa)/YSZ/セリウム含有酸化物、(La1−xMnO(A=SrまたはCa)/ランタンガレートなどを用いることができる。本発明における空気極触媒層の役割は、固体酸化物形燃料電池の空気雰囲気下で(1)の反応を効率良く行うことである。このためには、空気極触媒層としては、少なくとも酸素ガスをイオン化する触媒を含み、固体電解質材料との熱膨張係数が近く、固体電解質及び空気極との反応性が低い材料であり、連通した気孔を有することが好ましい。反応効率を向上させるためには、細孔径が小さく、空隙率が大きいことが好ましい。
【0020】
本発明で利用できる固体電解質は、酸素イオン伝導性が高いこと、気密性に優れること、機械的強度に優れること、材料安定性に優れることが好ましい。固体電解質は複数の層から形成されていてもかまわない。例えば、ScSZとYSZなどの2層構造とすることによって、高い気密性と高い酸素イオン伝導性を得ることができる。
【0021】
本発明で利用できる燃料極は、ガス透過性が高く、電子伝導性が高いものが好ましい。この観点からNi合金やCo合金、Ni−Co合金、Ni/YSZ、Ni/ScSZ、Ni/カルシア安定化ジルコニア、Ni/セリウム含有酸化物などが用いられる。また、燃料極は複数の層から形成されてもかまわない。例えば、Ni/YSZなどのコンポジット材料の割合を傾斜させたものを挙げることができる。燃料極を傾斜構造とすることにより、より高い発電性能を得ることができる。
【0022】
本発明で利用できるインターコネクターは、空気極と電気的に接続されており、酸化雰囲気と還元雰囲気どちらにおいても安定であり、電子伝導性が高く、気密性に優れているものが好ましい。この観点からランタンクロマイトが好ましい。ランタンクロマイトは難焼結性であるため固体酸化物形燃料電池セルの焼成温度でガス透過性のないインターコネクターを作製することが難しい。焼結性を向上させるためにCa、Sr、Mgを固溶させて用いることが好ましい。焼結性が最も高く、固体酸化物形燃料電池の他材料と同程度の温度でガス透過性のない膜を作製できるという点からCaを固溶させたものが最も好ましい。Caの固溶量については特に限定はない。Ca固溶量が多いほど電子伝導性が高くなるが、材料の安定性が低下することからCaの固溶量としては10〜40mol%程度が好ましい。
【0023】
本発明で利用できる固体電解質は、焼成法で作製することができる。焼成法はCVD法や溶射法に比べ製造コストが安い利点がある。焼成により空気極及び空気極触媒層からMnが拡散したYSZを含む固体電解質の露出部が得られる。
【0024】
露出部の固体電解質が粉末化することによって、固体電解質が薄膜化したり、孔が形成されて気密性や強度が低下する。気密性が低下した結果、空気極と燃料ガスが反応して空気極が還元膨張をおこし、最悪の場合固体酸化物形燃料電池セルが破損する。本発明者らの実験では、固体電解質の膜厚が10μm以下になると固体酸化物形燃料電池セルが破損する状況が観察された。走査型電子顕微鏡(SEM)観察による分析を行ったところ空気極の微構造が変化しており、還元膨張が起こったことが分かった。さらに、粉末化によって酸素イオン伝導性が低下し、固体酸化物形燃料電池セルの出力が低下することが推測される。
【0025】
ここでいう膜厚とは、固体酸化物形燃料電池セルの破断面を走査型電子顕微鏡日立ハイテクノロジーズ製S−4100によって観察したものである。
【実施例】
【0026】
以下に本発明の実施例を説明する。なお、当然のことであるが本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下の実施例1、2、3、4及び比較例1において、焼成温度は、熱履歴センサ((財)ファインセラミックセンター製リファサーモ)の値である。
(実施例1)
【0027】
(1)空気極の作製:
空気極は、La0.75Sr0.25MnO組成で表されるSrを固溶させたランタンマンガナイトで、共沈法で作製後熱処理して空気極原料粉末を得た。押出成形法によって円筒状成形体を作製した。さらに、1500℃で焼結を行い、空気極とした。
【0028】
(2)空気極触媒層の作製:
空気極触媒層としては、LaAMnO/YSZとし、該組成及びその重量比率としては、La0.75Sr0.25MnO/90mol%ZrO-10mol%Y=50/50を用いた。La、Sr、Mn、Zr、Yの各々の硝酸塩水溶液を用いて、前記組成になるように調合した後、シュウ酸を加え沈殿させた。該沈殿物と上澄み液を乾燥し、さらに熱処理し、粒子径を制御した後原料粉末を得た。該空気極触媒層粉末40重量部と溶媒(エタノール)100重量部、バインダー(エチルセルロース)2重量部、分散剤(ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル)1重量部、消泡剤(ソルビタンセスキオレート)1重量部とを混合した後、十分撹拌してスラリーを調整した。前記スラリーを、空気極上にスラリーコート法で成膜した後に1300℃で焼結させた。厚さは20μmであった。
【0029】
(3)固体電解質のスラリー作製:
固体電解質の材料はYSZとし、該組成は90mol%ZrO-10mol%Yとした。ZrOを100℃で加熱した3N以上の濃硝酸に溶解させ、蒸留水で希釈した後、硝酸塩水溶液を得た。Yについても同様の方法から硝酸塩水溶液を得た。各々の硝酸塩水溶液を前記組成になるように調合し、シュウ酸水溶液を加え、共沈させた。共沈して得られた沈殿物と上澄み液を200℃程度で乾燥し、500℃で熱分解、さらに800℃で10時間熱処理をして原料粉末を得た。該粉末の粒子径を、SEM写真を用いてインターセプト法で測定した。具体的には、視野に粒子が100個以上存在する倍率でSEM観察及び写真撮影を行い、サンプル数が10以上、好ましくは20以上となるように数枚のSEM写真より一定長さの直線上にある粒子径を測定し、その平均を算出した。原料粉末の平均粒子径は0.2μmであった。該粉末40重量部を溶媒(エタノール)100重量部、バインダー(エチルセルロース)2重量部、分散剤(ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル)1重量部、消泡剤(ソルビタンセスキオレート)1重量部とを混合した後、十分攪拌してスラリーを調整した。
【0030】
(4)固体電解質の作製
前記空気触媒上に、固体電解質をスラリーコート法で成膜した。その後、1300℃で焼結させた。得られた固体電解質の膜厚は、30μmであった。なお、後工程でインターコネクターを成膜する部分についてはマスキングを施し、膜が塗布されないようにしておいた。
【0031】
(5)燃料極のスラリー作製:
燃料極の材料はNiO/YSZとし、該組成は、NiO/90mol%ZrO-10mol%Yとした。Ni、Zr及びY各々の硝酸塩水溶液を用いて、前記組成になるように調合した後、シュウ酸を加え沈殿させた。該沈殿物と上澄み液を乾燥した後、さらに熱処理を施し、粒子径を制御した後原料を得た。組成及びその重量比率はNiO/90mol%ZrO-10mol%Y=70/30とした。該粉末100重量部と有機溶媒(エタノール)500重量部、バインダー(エチルセルロース)20重量部、分散剤(ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル)5重量部、消泡剤(ソルビタンセスオキオレート)1重量部、可塑剤(DBP)5重量部を混合した後、十分撹拌してスラリーを調整した。
【0032】
(6)燃料極の作製 :
固体電解質上に燃料極をスラリーコート法により成膜した。膜厚(焼結後)は90μmとした。なお、インターコネクターを成膜する部分と、インターコネクターを成膜する部分の両側4mmずつにマスキングを施し、膜が塗布されないようにしておいた。インターコネクターを成膜する部分の両側4mmずつに成膜しなかったのはインターコネクターと燃料極が短絡しない構造にするためであり、この部分は電解質の露出部となる。さらに、燃料極を1300℃で焼結させた。
【0033】
(7)インターコネクターの作製:
インターコネクターをLa0.80Ca0.20CrOで表されるCaを固溶させたランタンクロマイトとした。噴霧熱分解法で作製後、熱処理を施して原料粉末を得た。該粉末40重量部と溶媒(エタノール)100重量部、バインダー(エチルセルロース)2重量部、分散剤(ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル)1重量部、消泡剤(ソルビタンセスキオレート)1重量部とを混合した後、十分撹拌してスラリーを調整した。スラリーコート法によりインターコネクターを成膜し、1300℃で焼結させた。焼結後の厚みは40μmであった。
【0034】
(実施例2)
固体電解質の焼成温度を1400℃としたこと以外、実施例1と同様にした。
【0035】
(実施例3)
固体電解質の組成を88mol%ZrO-12mol%Yとしたこと以外、実施例1と同様にした。
【0036】
(実施例4)
固体電解質の組成を87mol%ZrO-13mol%Yとしたこと以外、実施例1と同様にした。
【0037】
(比較例1)
空気極触媒層の焼成温度を1400℃とし、固体電解質の焼成温度を1500℃とし、燃料極の焼成温度を1400℃とし、インターコネクターの焼成温度を1400℃としたこと以外、実施例1と同様にした。
【0038】
(格子定数測定)
実施例1、2、3、4及び比較例1で得られた固体酸化物形燃料電池セルの、燃料極が配置されていない露出部にある固体電解質の格子定数及び結晶相をリートベルト法により求めた。X線回折(XRD)測定は、X線回折装置X’Pert PRO MPD(PANalytical製)を用い、露出部の固体電解質の任意の5点について、測定範囲:1mm×1mm角、2θ=20〜80°、ステップ幅:0.05°、各ステップでの測定時間:424秒の条件で測定し、平均と標準偏差を求めた。またリートベルト法は、プログラムRietan−2000を用い、実施例1、2、3、4及び比較例1のXRDパターンにおいて、立方晶の各ピークのカウント数が最大となる2θの値を用いて格子定数を決定した。
【0039】
結晶相は、実施例1、2、3及び比較例1は立方晶であり、実施例4は立方晶の他に菱面体が存在した。格子定数の平均値は、実施例1は0.514794nm、実施例2は0.513869nm、実施例3は0.515327nm、実施例4は0.515718nm、比較例1は0.512404nmであった。標準偏差は、実施例1は0.000015、実施例2は0.000094、実施例3は0.000059、実施例4は0.000076、比較例1は0.000084であった。測定誤差は全ての実施例、全ての比較例で9×10−9nm以下であった。
【表1】

【0040】
(粉末化の評価)
実施例1、2、3、4及び比較例1で得られた固体酸化物形燃料電池セルを用いて、温度:900℃、燃料:H+3%HO、酸化剤:空気、電流密度:0.2A/cmの条件で200時間の発電試験を行った。発電試験後の固体酸化物形燃料電池セルの、燃料極が配置されていない露出部にある固体電解質の外観を室内で目視観察することによって、粉末化の評価を行った。実施例1、2、3、4では粉末化が見られなかった。比較例1は、露出部にある固体電解質の全域で粉末化が見られた。
【0041】
すなわち、露出部の固体電解質の格子定数が、比較例1における平均値に標準偏差を足した値である0.512488nmを超える場合は粉末化が見られなかった。また、実施例1、2、3、4のうち実施例4の露出部の固体電解質の格子定数が最大であり、実施例4における平均値に標準偏差を足した値である0.515794nm以下の場合に粉末化が見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】円筒縦縞型の固体酸化物形燃料電池の断面を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1…空気極
2…インターコネクター
3…固体電解質
4…燃料極
5…固体電解質の露出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mnを含むペロブスカイト型酸化物である空気極と、
前記空気極に配置される空気極触媒層と、
前記空気極触媒層に配置される固体電解質と、
前記固体電解質に配置される燃料極と、を備え、
前記空気極触媒層は少なくともMnを含むペロブスカイト型酸化物を有し、
前記固体電解質は少なくともYSZを含有する固体酸化物形燃料電池セルであって、
前記固体電解質は前記燃料極が配置されていない露出部を備え、
前記露出部にはYSZが含有され、
前記露出部のYSZはリートベルト法で測定し、格子定数が0.512488nmを超える部分を備えることを特徴とする
固体酸化物形燃料電池セル。
【請求項2】
前記露出部のYSZの格子定数が0.515794nm以下である部分を備えることを特徴とする、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池セル。
【請求項3】
前記空気極触媒層はYSZを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池セル。
【請求項4】
Mnを含むペロブスカイト型酸化物である空気極を得る工程と、
前記空気極に、少なくともMnを含むペロブスカイト型酸化物を有する空気極触媒層を適用して焼成する工程と、
焼成後の前記空気極触媒に、少なくともYSZを含有する固体電解質を適用して焼成する工程と、
焼成後の前記固体電解質に、燃料極が配置されていない固体電解質の露出部を備えるように燃料極を適用して焼成する工程と、
前記露出部にはYSZが含有され、
前記露出部のYSZはリートベルト法で測定し、格子定数が0.512488nmを超える部分を備えることを特徴とする
固体酸化物形燃料電池セルの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−97767(P2010−97767A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266472(P2008−266472)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】