説明

固体電解コンデンサおよびその製造方法

【課題】箔巻回型の固体電解コンデンサにおいて、等価直列抵抗(ESR)および等価直列インダクタンス(ESL)を可及的に少なくする。
【解決手段】酸化皮膜が形成された陽極電極箔11と、陰極電極箔12とをセパレータ13を介して巻回したコンデンサ素子に導電性高分子を含む固体電解質を形成してなる固体電解コンデンサにおいて、陽極電極箔11の端部11aをセパレータ13の一端13a側から所定の幅をもってはみ出してコンデンサ素子の一端面側に陽極電極引出部を形成するとともに、陰極電極箔12の端部12bをセパレータ13の他端13b側から所定の幅をもってはみ出してコンデンサ素子の他端面側に陰極電極引出部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子からなる固体電解質を有する固体電解コンデンサおよびその製造方法に関し、さらに詳しく言えば、固体電解コンデンサの低ESR(等価直列抵抗)化および低ESL(等価直列インダクタンス)化をはかる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電解質として固体電解質を用いる固体電解コンデンサは、液状の電解質(電解液)を用いる例えばアルミニウム電解コンデンサで生じやすい電解液の漏れや蒸散と言った問題がほとんどなく、しかも小型でありながら比較的大きな静電容量が得られ、また、低ESR化が容易であることなどからして、近年急速に普及されている。
【0003】
固体電解コンデンサには、タンタルやアルミニウムなどの弁作用金属の粉末を焼結してなる焼結ペレット型と、弁作用金属箔を用いる箔巻回型および箔積層型とがある。
【0004】
箔巻回型および箔積層型の固体電解コンデンサにおいては、その陽極電極箔に誘電体としての酸化皮膜が形成された例えばアルミニウム箔が用いられる。陽極電極箔がアルミニウム箔である場合、陰極電極箔には、陽極電極箔と同じくアルミニウム箔(酸化皮膜なし)が用いられる。
【0005】
そのうちの箔巻回型の固体電解コンデンサを製造方法を、例えば特許文献1に記載される発明について説明すると、まず、酸化皮膜が形成された陽極電極箔と、陰極電極箔(酸化皮膜なし)の各々にタブ端子をかしめもしくは溶接などによって取り付け、陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して渦巻き状に巻回してコンデンサ素子を作成する。
【0006】
次に、コンデンサ素子に所定のモノマー(例えば、チオフェンモノマー)と酸化剤とを含浸し重合して、導電性高分子よりなる固体電解質を形成する。その後、コンデンサ素子を例えば有底筒状のアルミニウム製のケース内に収納し、そのケース開口部を封口ゴムなどの封口部材で封口する。
【0007】
箔巻回型の固体電解コンデンサは、概略上記のようにして製造されるが、通常のアルミニウム電解コンデンサと同じく、陽極電極箔と陰極電極箔とにそれぞれタブ端子を取り付ける構成で、蓄積もしくは放出する電荷がタブ端子の接続箇所に集中するため、どうしてもその接続箇所の等価直列抵抗(ESR)が高くなってしまう。
【0008】
また、各電極箔に取り付けられるタブ端子は、上記のように、それぞれ1本であることから、各電極箔にはタブ端子との間において、巻き数分のコイルに相当するインピーダンス、すなわち等価直列インダクタンス(ESL)が発生する。このインダクタンスが、固体電解コンデンサを使用する際の回路設計上の不安定要素となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−176753号公報(特に、図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、箔巻回型の固体電解コンデンサにおいて、等価直列抵抗(ESR)および等価直列インダクタンス(ESL)を可及的に少なくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の固体電解コンデンサは、酸化皮膜が形成された陽極電極箔と、陰極電極箔とがセパレータを介して巻回されたコンデンサ素子を有し、上記コンデンサ素子に導電性高分子を含む固体電解質が形成されている固体電解コンデンサにおいて、上記陽極電極箔の端部が上記セパレータの一端側から所定の幅をもってはみ出されて上記コンデンサ素子の一端面側に陽極電極引出部が形成されているとともに、上記陰極電極箔の端部が上記セパレータの他端側から所定の幅をもってはみ出されて上記コンデンサ素子の他端面側に陰極電極引出部が形成されていることを特徴としている。
【0012】
本発明の固体電解コンデンサにおいて、上記陽極電極箔の端部および上記陰極電極箔の端部が、それぞれ上記コンデンサ素子の全周にわたって上記セパレータの一端側と他端側とからはみ出されていることが好ましい。
【0013】
本発明の固体電解コンデンサには、上記陽極電極引出部と上記陰極電極引出部に、それぞれ電極端子部が取り付けられる態様が含まれる。
【0014】
本発明の固体電解コンデンサにおいて、上記電極端子部が金属板からなり、レーザー溶接、超音波溶接もしくは冷間溶接のいずれかの溶接法によって上記陽極電極引出部と上記陰極電極引出部とに取り付けられてよい。
【0015】
また、別の態様として、上記電極端子部が金属溶射法によって上記陽極電極引出部と上記陰極電極引出部とに直接的に形成されてもよい。
【0016】
さらに別の態様として、上記陽極電極引出部と上記陰極電極引出部のいずれか一方に、上記電極端子部としての金属板がレーザー溶接、超音波溶接もしくは冷間溶接のいずれかの溶接法によって取り付けられ、いずれか他方に、上記電極端子部が金属溶射法によって直接的に形成されてもよい。
【0017】
本発明の固体電解コンデンサにおいて、上記陽極電極箔、上記陰極電極箔および上記電極端子部がともに同種金属材からなることが好ましい。
【0018】
本発明の固体電解コンデンサは、製品形態として、上記各電極端子部にリード端子が接続され、上記コンデンサ素子が所定の外装ケース内に収納され、上記リード端子の先端側が上記外装ケースから引き出される。
【0019】
本発明の固体電解コンデンサは、上記外装ケースが上記コンデンサ素子の周りに形成されたモールド樹脂よりなり、上記リード端子の先端側が上記外装ケースの底面を含む平面に沿って折り曲げられ、面実装可能とされることが好ましい。
【0020】
本発明の固体電解コンデンサは、好ましくは、上記コンデンサ素子が巻き取り軸線と直交する方向から押し潰されて扁平に形成される。
【0021】
また、本発明には、酸化皮膜が形成された陽極電極箔と、陰極電極箔とがセパレータを介して巻回されたコンデンサ素子を有し、上記コンデンサ素子に導電性高分子を含む固体電解質が形成されている固体電解コンデンサの製造方法において、上記陽極電極箔の端部が上記セパレータの一端側からはみ出るとともに、上記陰極電極箔の端部が上記セパレータの他端側からはみ出るように、上記陽極電極箔と上記陰極電極箔とを上記セパレータに対してそれぞれ反対方向ずらした状態で巻き取って、一端面側に上記陽極電極箔の端部よりなる陽極電極引出部を有し、他端面側に上記陰極電極箔の端部よりなる陰極電極引出部を有するコンデンサ素子を作成するコンデンサ素子作成工程と、上記コンデンサ素子を化成液内に浸漬し上記陽極電極箔に給電して、上記陽極電極箔を再化成する再化成工程と、再化成後、上記コンデンサ素子に導電性高分子を含む固体電解質を形成する固体電解質形成工程と、固体電解質形成後、上記陽極電極引出部と上記陰極電極引出部とにそれぞれ電極端子部を形成する電極端子部形成工程と、を行うことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法も含まれる。
【0022】
上記コンデンサ素子作成工程において、上記コンデンサ素子を巻き取り軸線と直交する方向から押し潰して扁平化することが好ましい。
【0023】
本発明の製造方法において、上記コンデンサ素子作成工程の前工程で、上記陽極電極箔にタブ端子を取り付け、上記再化成工程で、上記タブ端子を介して上記陽極電極箔に給電し、再化成後に上記陽極電極箔から上記タブ端子を除去する工程が実施されてよい。
【0024】
また、本発明の製造方法において、好ましくは、上記再化成工程前に上記陽極電極箔の箔切断端面を被覆樹脂材にてコーティングし、上記陽極電極引出部に上記電極端子部を形成する前に上記被覆樹脂材を上記陽極電極箔の箔切断面から除去する工程が実施される。
【0025】
上記陽極電極箔の箔切断端面に対する上記被覆樹脂材のコーティングを上記コンデンサ素子作成工程の前工程で行うことが好ましい。
【0026】
本発明の製造方法の好ましい態様によれば、上記被覆樹脂材に加熱蒸散型樹脂を用い、上記固体電解質形成工程における上記固体電解質の加熱工程時の熱で上記被覆樹脂材を蒸散させて除去する。
【0027】
また、本発明の製造方法の好ましい態様によれば、上記陽極電極箔の箔切断端面を被覆樹脂材にてコーティングする際、上記陰極電極箔の箔切断端面にも上記被覆樹脂材にてコーティングし、上記被覆樹脂材を上記陽極電極箔の箔切断面から除去する際にも、上記陰極電極箔の箔切断端面から上記被覆樹脂材を除去する。
【0028】
上記電極端子部形成工程には、上記電極端子部に金属板を用い、上記金属板をレーザー溶接、超音波溶接もしくは冷間溶接のいずれかの溶接法によって上記陽極電極引出部と上記陰極電極引出部とに溶接する態様が含まれる。
【0029】
また、上記電極端子部形成工程には、上記電極端子部を金属溶射法によって上記陽極電極引出部と上記陰極電極引出部とに直接的に形成する態様も含まれる。
【0030】
また、上記電極端子部形成工程には、上記陽極電極引出部と上記陰極電極引出部のいずれか一方に、上記電極端子部としての金属板をレーザー溶接、超音波溶接もしくは冷間溶接のいずれかの溶接法によって溶接し、いずれか他方に、上記電極端子部を金属溶射法によって直接的に形成する態様も含まれる。
【0031】
本発明の製造方法には、上記電極端子部形成工程後に、上記各電極端子部にリード端子を接続して上記コンデンサ素子を所定の外装ケース内に収納し、上記リード端子の先端側を上記外装ケースから引き出す外装ケース収納工程がさらに含まれる。
【0032】
上記外装ケース収納工程において、上記外装ケースを上記コンデンサ素子の周りに形成されたモールド樹脂とし、上記リード端子の先端側を上記外装ケースの底面を含む平面に沿って折り曲げることにより、面実装可能とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、コンデンサ素子の一端面側に、陽極電極箔のはみ出し部分からなる陽極電極引出部が形成されており、コンデンサ素子の他端面側に、陰極電極箔のはみ出し部分からなる陰極電極引出部が形成されているため、上記陽極電極引出部および上記陰極電極引出部を覆うように電極端子部を取り付けることにより、等価直列抵抗(ESR)および等価直列インダクタンス(ESL)を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明において、箔巻き取り時の陽極電極箔、陰極電極箔およびセパレータの位置関係を示す(a)模式的な斜視図、(b)その平面展開図。
【図2】本発明におけるコンデンサ素子、電極端子部およびリード端子を示す模式的な分解斜視図。
【図3】コンデンサ素子にモールド樹脂外装を施してチップ化した状態を示す断面図。
【図4】本発明の製造方法を説明するための工程図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、図1ないし図4を参照して、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
図1(a),(b)に示すように、例えば陰極電極箔12,セパレータ13(第1セパレータ131),陽極電極箔11,セパレータ13(第2セパレータ132)を順次重ねて渦巻き状に巻き取ることにより、コンデンサ素子が作成されるが、本発明では、各セパレータ13に対して陽極電極箔11と陰極電極箔12とを逆方向にずらして巻き取ることにより、図2に示すコンデンサ素子10を作成する。
【0037】
なお、図1(a)において、陽極電極箔11と陰極電極箔12の右側の各端部を一方の端部11a,12aとし、左側の各端部を他方の端部11b,12bとし、セパレータ13についても同様に、右側を一端13a,左側を他端13bとする。また、この実施形態において、陽極電極箔11,陰極電極箔12および各セパレータ13は、それぞれほぼ同幅であるとする。
【0038】
各箔を巻き取るにあたって、陽極電極箔11については、一方の端部11aがセパレータ13の一端13aから所定の幅をもってはみ出すように、セパレータ13に対し図1(a)において右側(図1(b)では下側)にずらして配置する。
【0039】
これに対して、陰極電極箔12については、他方の端部12bがセパレータ13の他端13bから所定の幅をもってはみ出すように、セパレータ13に対し図1(a)において左側(図1(b)では上側)にずらして配置する。はみ出し幅は、陽極電極箔11,陰極電極箔12ともに同一幅であることが好ましく、一例として1mm程度であってよい。
【0040】
このようにして、箔を巻き取ることにより、図2に示すように、コンデンサ素子10の一端面側に陽極電極箔11の端部11aよりなる渦巻き状の陽極電極引出部10aが作成され、他端面側に陰極電極箔12の端部12bよりなる渦巻き状の陰極電極引出部10bが作成される。
【0041】
なお、変形実施形態として、陽極電極箔11,陰極電極箔12の各幅をセパレータ13の幅よりも大きくして、例えば陽極電極箔11の他方の端部11bをセパレータ13の他端13bに揃えたとしても、一方の端部11aがセパレータ13からはみ出し、陰極電極箔12の一方の端部12aをセパレータ13の一端13aに揃えたとしても、他方の端部12bがセパレータ13からはみ出すようにしてもよい。
【0042】
図1に示す実施形態を含めて、陽極電極箔11および陰極12電極箔のはみ出し部分を例えば櫛歯状に形成し、陽極電極引出部10aおよび陰極電極引出部10bを不連続な舌片を含む形態としてもよい。
【0043】
コンデンサ素子10に、後述する方法によって導電性高分子からなる固体電解質を形成したのち、陽極電極引出部10aおよび陰極電極引出部10bの各々に電極端子部20を設ける。
【0044】
この実施形態では、電極端子部20として、陽極電極引出部10a,陰極電極引出部10bともに金属板21a,21bを用いる。異種金属による電蝕等を防止するうえで、金属板21a,21bは電極箔11,12と同種金属材であることが好ましい。例えば、電極箔11,12がアルミニウム材であれば、金属板21a,21bもアルミニウム材とする。
【0045】
本発明の好ましい態様によれば、金属板21a,21bは、陽極電極引出部10a,陰極電極引出部10bの全面を覆う円板状に形成され、溶接によって陽極電極引出部10aと陰極電極引出部10bとに取り付けられる。溶接はレーザー溶接が好ましいが、超音波溶接もしくは冷間溶接が採用されてもよい。
【0046】
これにより、陽極側の金属板21aと陰極側の金属板21bは、それぞれ陽極電極引出部10aと陰極電極引出部10bとに対して、より広い面(従来のタブ端子による接触面よりもかなり広い面)で電気的に接続される。
【0047】
したがって、本発明によれば、コンデンサ素子10の等価直列抵抗(ESR)を大幅に低減することができる。また、箔巻回体でありながら、コイル成分もほどんとなくなるため、等価直列インダクタンス(ESL)も併せて大幅に低減することができる。
【0048】
この実施形態では、コンデンサ素子10を面実装可能なチップ化部品とするため、陽極側の金属板21aに陽極リード端子22aを接続するとともに、陰極側の金属板21bに陰極リード端子22bを接続する。
【0049】
リード端子22a,22bには、金属板21a,21bと同種の金属材である例えばアルミニウム線材を用いることが好ましい。接続は溶接法が用いられてよい。また、リード端子22a,22bは、同軸として金属板21a,21bに接続されることが好ましい。
【0050】
リード端子22a,22bの接続後、コンデンサ素子10を図示しない成形金型に入れて、図3に示すように、コンデンサ素子10の周りにモールド樹脂により例えば6面体の四角柱状の樹脂外装体30を形成する。
【0051】
その後、樹脂外装体30から引き出されているリード端子22a,22bの先端部分を樹脂外装体30の底面を含む平面に沿って折り曲げる。この実施形態では、リード端子22a,22bの先端部分を樹脂外装体30の底面に潜り込むように折り曲げているが、これとは反対方向に折り曲げてもよい。また、実装時の安定性を高めるため、リード端子22a,22bの先端部分をプレス等で扁平に押し潰すことが好ましい。
【0052】
上記実施形態では、陽極電極引出部10a,陰極電極引出部10bの電極端子部20として、金属板21a,21bを用いているが、例えばアルミニウム粉末の金属溶射法によって陽極電極引出部10aと陰極電極引出部10bとに直接的に電極端子部20を形成することもできる。
【0053】
また、上記実施形態では、コンデンサ素子10をチップ化するにあたって、モールド樹脂により樹脂外装体30を形成するようにしているが、箱状に形成された外装ケース内にコンデンサ素子10を収納してチップ化する態様も本発明に含まれる。
【0054】
また、コンデンサ素子10を、その巻き取り軸線と直交する方向から押し潰して扁平にすることにより、その分、チップ部品の低背化をはかることができる。
【0055】
次に、図4に示す工程図を併せて参照して、本発明の製造方法の実施形態について説明する。
【0056】
この実施形態では、陽極電極箔11には、エッチング処理により表面が粗面化され、その後に例えば陽極酸化法にて誘電体である酸化皮膜が形成されたアルミニウム箔を用い、陰極電極箔12には、エッチング処理により表面が粗面化されただけのアルミニウム箔を用いる。
【0057】
まず、第1工程40として、陽極電極箔11の箔切断端面(マザー箔から切り出す際の切り口面)に被覆樹脂材をコーティングする。これは、後述する陽極電極箔11の再化成時に、その箔切断端面に酸化皮膜が形成されないようにするためと、後述する固体電解質形成時に、その箔切断端面に固体電解質が形成されないようにするためである。
【0058】
同様に、陰極電極箔12の箔切断端面にも、上記固体電解質形成時に、その箔切断端面に固体電解質が形成されないようにするため被覆樹脂材をコーティングする。被覆樹脂材は、例えば上記固体電解質形成時に加えられる熱によって蒸散する加熱蒸散型樹脂であることが好ましい。
【0059】
第2工程41で、図1(a)に示すように、陽極電極箔11に、陽極電極箔11の再化成時に給電用端子として使用するタブ端子14を取り付ける。タブ端子14には、アルミニウムの丸棒線の一端側をプレスして羽子板状とした端子本体と、端子本体の他端側に残されている丸棒線の端部にCP線(ハンダメッキ銅被覆鋼線)を溶接したタブ端子が用いられてよい。
【0060】
第3工程42で、図1(a),(b)に示し先に説明したように、セパレータ13に対して陽極電極箔11と陰極電極箔12とを逆方向にずらして巻き取る。
【0061】
第4工程43では、複数個のコンデンサ素子10をバッチ処理するため、各コンデンサ素子10のタブ端子14に図示いない保持用リード端子を溶接し、その保持用リード端子を介して複数個のコンデンサ素子10を図示しないフープ材に溶接して吊り下げる。
【0062】
そして、第5工程44において、各コンデンサ素子10を例えばアジピン酸アンモンを主成分とする化成液に浸漬し、上記フープ材から上記保持用リード端子およびタブ端子14を介して陽極電極箔11に所定の電圧を印加して、陽極電極箔11を再化成する。これにより、箔巻回時に生じた陽極電極箔11の酸化皮膜の欠損箇所を修復する。
【0063】
その後の第6工程45では、コンデンサ素子10に所定のモノマー(例えば、チオフェンモノマー(3,4−エチレンジオキシチオフェン))と酸化剤を含浸し、化学重合させて導電性高分子からなる固体電解質を形成する。
【0064】
この固体電解質形成時に加えられる熱によって上記被覆樹脂材を蒸散して箔切断端面から除去する。これにより、陽極電極箔11,陰極電極箔12のなにも付着していない箔切断端面が露出される。なお、上記被覆樹脂材を機械的もしくは化学的に除去してもよい。
【0065】
続く第7工程46で、タブ端子14を陽極電極箔11から切り離す。この場合、タブ端子14を陽極電極箔11の最外周側に取り付けておき、その最外周側の箔を切断して箔ごとタブ端子14を除去するとよい。
【0066】
そして、コンデンサ素子10の一方の端面側の陽極電極引出部10aと、他方の端面側の陰極電極引出部10bとに、それぞれ電極端子部20を形成する。これには、第8a工工程47と、第8b工程48と、第8c工程49のいずれかが選択される。
【0067】
第8a工程47では、図2に示すように、電極端子部20としての陽極側の金属板21aと陰極側の金属板21bとを、陽極電極引出部10aと陰極電極引出部10bとにそれぞれ溶接したのち、陽極側の金属板21aと陰極側の金属板21bとに、陽極側のリード端子22a,陰極側のリード端子22bを接続したのち、図3に例示したように、コンデンサ素子10に樹脂外装体30を形成し、所定時間エージングを行ってから、リード端子22a,22bをフォーミングする。
【0068】
別の第8b工程48では、電極端子部20を例えばアルミニウム粉末の金属溶射法によって陽極電極引出部10aと陰極電極引出部10bとに直接的に形成したのち、上記第8a工程47と同様に、陽極側の電極端子部20と陰極側の電極端子部20とに、陽極側のリード端子22a,陰極側のリード端子22bを接続したのち、図3に例示したように、コンデンサ素子10に樹脂外装体30を形成し、所定時間エージングを行ってから、リード端子22a,22bをフォーミングする。
【0069】
さらに別の第8c工程49では、例えば陽極電極引出部10aには、金属板21aよりなる電極端子部20を接続し、陰極電極引出部10bには、例えばアルミニウム粉末の金属溶射法によって直接的に電極端子部20を形成したのち、上記第8a工程47と同様に、陽極側の電極端子部20と陰極側の電極端子部20とに、陽極側のリード端子22a,陰極側のリード端子22bを接続したのち、図3に例示したように、コンデンサ素子10に樹脂外装体30を形成し、所定時間エージングを行ってから、リード端子22a,22bをフォーミングする。
【0070】
上記したいずれの方法によっても、コンデンサ素子10の等価直列抵抗(ESR)を大幅に低減することができ、また、箔巻回体でありながら、コイル成分もほどんとなくなるため、等価直列インダクタンス(ESL)も併せて大幅に低減することができる。
【符号の説明】
【0071】
10 コンデンサ素子
10a 陽極電極引出部
10b 陰極電極引出部
11 陽極電極箔
11a 陽極電極箔の端部
12b 陰極電極箔の端部
12 陰極電極箔
13 セパレータ
14 タブ端子
20 電極端子部
21a,21b 金属板
22a,22b リード端子
30 樹脂外装体(外装ケース)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化皮膜が形成された陽極電極箔と、陰極電極箔とがセパレータを介して巻回されたコンデンサ素子を有し、上記コンデンサ素子に導電性高分子を含む固体電解質が形成されている固体電解コンデンサにおいて、
上記陽極電極箔の端部が上記セパレータの一端側から所定の幅をもってはみ出されて上記コンデンサ素子の一端面側に陽極電極引出部が形成されているとともに、上記陰極電極箔の端部が上記セパレータの他端側から所定の幅をもってはみ出されて上記コンデンサ素子の他端面側に陰極電極引出部が形成されていることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項2】
上記陽極電極箔の端部および上記陰極電極箔の端部が、それぞれ上記コンデンサ素子の全周にわたって上記セパレータの一端側と他端側とからはみ出されていることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
上記陽極電極引出部と上記陰極電極引出部に、それぞれ電極端子部が取り付けられることを特徴とする請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
上記電極端子部が金属板からなり、レーザー溶接、超音波溶接もしくは冷間溶接のいずれかの溶接法によって上記陽極電極引出部と上記陰極電極引出部とに取り付けられることを特徴とする請求項3に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
上記電極端子部が金属溶射法によって上記陽極電極引出部と上記陰極電極引出部とに直接的に形成されることを特徴とする請求項3に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
上記陽極電極引出部と上記陰極電極引出部のいずれか一方に、上記電極端子部としての金属板がレーザー溶接、超音波溶接もしくは冷間溶接のいずれかの溶接法によって取り付けられ、いずれか他方に、上記電極端子部が金属溶射法によって直接的に形成されることを特徴とする請求項3に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項7】
上記陽極電極箔、上記陰極電極箔および上記電極端子部がともに同種金属材からなることを特徴とする請求項3ないし6のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項8】
上記各電極端子部にリード端子が接続され、上記コンデンサ素子が所定の外装ケース内に収納され、上記リード端子の先端側が上記外装ケースから引き出されることを特徴とする請求項3ないし7のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項9】
上記外装ケースが上記コンデンサ素子の周りに形成されたモールド樹脂よりなり、上記リード端子の先端側が上記外装ケースの底面を含む平面に沿って折り曲げられ、面実装可能とされていることを特徴とする請求項8に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項10】
上記コンデンサ素子が巻き取り軸線と直交する方向から押し潰されて扁平に形成されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項11】
酸化皮膜が形成された陽極電極箔と、陰極電極箔とがセパレータを介して巻回されたコンデンサ素子を有し、上記コンデンサ素子に導電性高分子を含む固体電解質が形成されている固体電解コンデンサの製造方法において、
上記陽極電極箔の端部が上記セパレータの一端側からはみ出るとともに、上記陰極電極箔の端部が上記セパレータの他端側からはみ出るように、上記陽極電極箔と上記陰極電極箔とを上記セパレータに対してそれぞれ反対方向ずらした状態で巻き取って、一端面側に上記陽極電極箔の端部よりなる陽極電極引出部を有し、他端面側に上記陰極電極箔の端部よりなる陰極電極引出部を有するコンデンサ素子を作成するコンデンサ素子作成工程と、
上記コンデンサ素子を化成液内に浸漬し上記陽極電極箔に給電して、上記陽極電極箔を再化成する再化成工程と、
再化成後、上記コンデンサ素子に導電性高分子を含む固体電解質を形成する固体電解質形成工程と、
固体電解質形成後、上記陽極電極引出部と上記陰極電極引出部とにそれぞれ電極端子部を形成する電極端子部形成工程と、
を行うことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項12】
上記コンデンサ素子作成工程において、上記コンデンサ素子を巻き取り軸線と直交する方向から押し潰して扁平化することを特徴とする請求項10に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項13】
上記コンデンサ素子作成工程の前工程で、上記陽極電極箔にタブ端子を取り付け、上記再化成工程で、上記タブ端子を介して上記陽極電極箔に給電し、再化成後に上記陽極電極箔から上記タブ端子を除去することを特徴とする請求項11または12に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項14】
上記再化成工程前に上記陽極電極箔の箔切断端面を被覆樹脂材にてコーティングし、上記陽極電極引出部に上記電極端子部を形成する前に上記被覆樹脂材を上記陽極電極箔の箔切断面から除去することを特徴とする請求項11ないし13のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項15】
上記陽極電極箔の箔切断端面に対する上記被覆樹脂材のコーティングを上記コンデンサ素子作成工程の前工程で行うことを特徴とする請求項14に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項16】
上記被覆樹脂材に加熱蒸散型樹脂を用い、上記固体電解質形成工程における上記固体電解質の加熱工程時の熱で上記被覆樹脂材を蒸散させて除去することを特徴とする請求項14または15に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項17】
上記陽極電極箔の箔切断端面を被覆樹脂材にてコーティングする際、上記陰極電極箔の箔切断端面にも上記被覆樹脂材にてコーティングし、上記被覆樹脂材を上記陽極電極箔の箔切断面から除去する際にも、上記陰極電極箔の箔切断端面から上記被覆樹脂材を除去することを特徴とする請求項14ないし16のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項18】
上記電極端子部形成工程において、上記電極端子部に金属板を用い、上記金属板をレーザー溶接、超音波溶接もしくは冷間溶接のいずれかの溶接法によって上記陽極電極引出部と上記陰極電極引出部とに溶接することを特徴とする請求項11ないし17のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項19】
上記電極端子部形成工程において、上記電極端子部を金属溶射法によって上記陽極電極引出部と上記陰極電極引出部とに直接的に形成することを特徴とする請求項11ないし17のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項20】
上記電極端子部形成工程において、上記陽極電極引出部と上記陰極電極引出部のいずれか一方に、上記電極端子部としての金属板をレーザー溶接、超音波溶接もしくは冷間溶接のいずれかの溶接法によって溶接し、いずれか他方に、上記電極端子部を金属溶射法によって直接的に形成することを特徴とする請求項11ないし17のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項21】
上記電極端子部形成工程後に、上記各電極端子部にリード端子を接続して上記コンデンサ素子を所定の外装ケース内に収納し、上記リード端子の先端側を上記外装ケースから引き出す外装ケース収納工程をさらに含むことを特徴とする請求項11ないし20のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項22】
上記外装ケース収納工程において、上記外装ケースを上記コンデンサ素子の周りに形成されたモールド樹脂とし、上記リード端子の先端側を上記外装ケースの底面を含む平面に沿って折り曲げることにより、面実装可能とすることを特徴とする請求項21に記載の固体電解コンデンサの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−251435(P2010−251435A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97568(P2009−97568)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000103220)エルナー株式会社 (48)