説明

固体高分子型燃料電池用高分子電解質膜、膜−電極接合体及び燃料電池

【課題】経済的で、環境に優しく、成形性及び耐ラジカル性に優れた固体高分子型燃料電池用高分子電解質膜並びにそれを用いた膜−電極接合体及び固体高分子型燃料電池の提供。
【解決手段】α−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物単位を主たる繰返し単位とする重合体ブロック(A)及びフレキシブルな重合体ブロック(B)を構成成分とし、かつ、重合体ブロック(A)にイオン伝導性基を有するブロック共重合体を含有することを特徴とする固体高分子型燃料電池用高分子電解質膜、並びに膜−電極接合体及び固体高分子型燃料電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子型燃料電池用高分子電解質膜、並びに該電解質膜を用いた膜−電極接合体及び固体高分子型燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー・環境問題の抜本的解決策として、さらには将来の水素エネルギー時代の中心的エネルギー変換システムとして、燃料電池技術は、これら新エネルギー技術の柱の1つとして数えられている。特に固体高分子型燃料電池(PEFC;Polymer Electrolyte Fuel Cell)は、小型軽量化などの観点から、電気自動車用の駆動電源や携帯機器用の電源、さらに電気と熱を同時利用する家庭据置き用の電源機器などへの適用が検討されている。
【0003】
固体高分子型燃料電池は、一般に次のように構成される。まず、プロトン伝導性を有する高分子電解質膜の両側に、白金属の金属触媒を担持したカーボン粉末と高分子電解質からなるイオン伝導性バインダーとを含む触媒層がそれぞれ形成される。各触媒層の外側には、燃料ガス及び酸化剤ガスをそれぞれ通気する多孔性材料であるガス拡散層がそれぞれ形成される。ガス拡散層としてはカーボンペーパー、カーボンクロスなどが用いられる。触媒層とガス拡散層を一体化したものはガス拡散電極と呼ばれ、また一対のガス拡散電極をそれぞれ触媒層が電解質膜と向かい合うように電解質膜に接合した構造体は膜−電極接合体(MEA;Membrane Electrode Assembly)と呼ばれている。この膜−電極接合体の両側には、導電性と気密性を備えたセパレータが配置される。電極面に燃料ガス又は酸化剤ガス(例えば空気)を供給するガス流路が膜−電極接合体とセパレータの接触部分又はセパレータ内に形成されている。一方の電極(燃料極)に水素やメタノールなどの燃料ガスを供給し、他方の電極(酸素極)に空気などの酸素を含有する酸化剤ガスを供給して発電する。すなわち、燃料極では燃料がイオン化されてプロトンと電子が生じ、プロトンは電解質膜を通り、電子は両電極をつなぐことによって形成される外部電気回路を移動して酸素極へ送られ、酸化剤と反応することで水が生成する。このようにして、燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換して取り出すことができる。
【0004】
固体高分子型燃料電池用高分子電解質膜としては、化学的に安定であるという理由からパーフルオロスルホン酸系高分子であるナフィオン(Nafion,デュポン社の登録商標。以下同様)が一般的に用いられている。しかし、ナフィオンはフッ素系のポリマーであるため非常に高価である。また、ナフィオンについては、燃料としてメタノールを用いる場合、メタノールが一方の電極側から他方の電極側へ電解質膜を透過してしまう現象(メタノールクロスオーバー)が生じやすいという問題がある。また、含フッ素系ポリマーは、フッ素を含有しており、合成及び廃棄時に環境への配慮が必要となってくる。このような背景から、新規な高分子電解質膜の開発が望まれている。
【0005】
非フッ素系ポリマーをベースとしたイオン伝導性高分子の開発については既にいくつかの取り組みが成されている。例えば、ポリスチレンスルホン酸系高分子電解質膜が、1950年代に米国General Electric社により開発された固体高分子型燃料電池に用いられた例があるが、従来検討されたものでは燃料電池の動作環境下において、十分な安定性が無いため、十分な電池寿命を得るには至らなかった。
【0006】
また、耐熱性芳香族ポリマーであるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)(特許文献1)が開発されている。しかし、一般にスルホン化芳香族ポリマーはイオン伝導性が十分ではないため、燃料電池としての性能は十分なものではない。また、イオン伝導性を高めるためスルホン化量を増やすと膜が脆くなり、取り使いが非常に困難になるということが知られている。
【0007】
一方、スチレンとゴム成分とからなるブロック共重合体のポリスチレンブロックをスルホン化することにより、ポリスチレンブロックをイオン伝導性チャンネルとした構造が提案されている。例えば、特許文献2において、安価で、機械的、化学的に安定な高分子電解質膜として、SEBS(ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体の略)のスルホン化体からなるイオン伝導膜が提案されている。しかしながら、我々が実際に試験した結果、化学的安定性、特に耐ラジカル性が充分でないことが明らかとなった。これは、この膜を燃料電池に使用した際に、運転可能時間が限定されることを示している。
【0008】
また、特許文献3においては、化学的安定性に優れるイソブチレン骨格をゴム成分としたSiBuS(ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレントリブロック共重合体の略)のスルホン化体からなるイオン伝導膜が提案されている。実際に、特許文献3で提案されているスルホン化SEBSに比較して、スルホン化SiBuSの方が耐ラジカル性が高いことが、特許文献3において示されているが、耐ラジカル性の指標であるフェントン反応後のイオン交換量は約1/2に低減しており、その化学的安定性は必ずしも十分とは言えなかったのが実情である。
【0009】
このように、経済的でかつ耐久性の高い、改善された固体高分子型燃料電池用高分子電解質膜は提案されていないのが実情である
【特許文献1】特開平6−93114号公報
【特許文献2】特表平10−503788号公報
【特許文献3】特開2001−210336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、経済的で、環境に優しく、成形性に優れ、かつ、耐ラジカル性ひいては耐久性に優れる固体高分子型燃料電池用高分子電解質膜、並びに該電解質膜を用いた膜−電極接合体及び固体高分子型燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、α−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物単位を繰返し単位とする重合体ブロック及びフレキシブルな重合体ブロック(B)を構成成分とし、かつ、重合体ブロック(A)にイオン伝導性基を有するブロック共重合体が固体高分子型燃料電池用高分子電解質膜として上記目的を満たすことを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、α−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物単位を主たる繰返し単位とする重合体ブロック(A)及びフレキシブルな重合体ブロック(B)を構成成分とし、かつ、重合体ブロック(A)にイオン伝導性基を有するブロック共重合体を含有することを特徴とする固体高分子型燃料電池用高分子電解質膜に関する。
【0013】
上記ブロック共重合体において、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とはミクロ相分離を起こし、重合体ブロック(A)同士と重合体ブロック(B)同士とがそれぞれ集合する性質があり、重合体ブロック(A)はイオン伝導性基を有するので重合体ブロック(A)同士の集合によりイオンチャンネルが形成され、プロトンの通り道となる。また、重合体ブロック(B)の存在により、ブロック共重合体が全体として弾力性を帯びかつ柔軟になり、膜−電極接合体や固体高分子型燃料電池の作製に当たって成形性(組立性、接合性、締付性など)が改善される。フレキシブルな重合体ブロック(B)はアルケン単位や共役ジエン単位などから構成される。α−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物単位はα位の炭素原子に結合した水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基又はフェニル基で置換された芳香族ビニル系化合物単位などを包含する。また、イオン伝導性基は重合体ブロック(A)に結合しているが、このことは耐ラジカル性の向上のため必要である。イオン伝導性基はスルホン酸基及びホスホン酸基並びにそれらの塩を包含する。
本発明はまた、上記電解質膜を用いた膜−電極接合体及び燃料電池に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の高分子電解質膜、膜−電極接合体及び固体高分子型燃料電池は経済的で、環境に優しく、耐ラジカル性ひいては耐久性に優れ、かつ、高温条件下でも十分に機能を発揮する。本発明の高分子電解質膜は、また、成形性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体は、α−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物単位を主たる繰返し単位とし、かつ、少なくとも1つのイオン伝導性基を有する重合体ブロック(A)を構成成分とする。
【0016】
α−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物は、α−炭素原子に結合した水素原子が炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基もしくはtert−ブチル基)、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基(クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロエチル基等)又はフェニル基で置換された芳香族ビニル系化合物であることが好ましい。骨格となる芳香族ビニル系化合物としてはスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン、ビニルピリジン等が挙げられる。これらの芳香族ビニル系化合物の芳香環に結合した水素原子は1〜3個の置換基で置換されていてもよく、置換基としては各独立に炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基もしくはtert−ブチル基)、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基(クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロエチル基等)などが挙げられる。α−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物の好適な具体例としてはα−メチルスチレンが挙げられる。α−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物は各単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。2種以上を重合(共重合)させる場合の形態はランダム共重合でもブロック共重合でもグラフト共重合でもテーパード共重合でもよい。
【0017】
重合体ブロック(A)は、本発明の効果を損わない範囲内で1種もしくは複数の他の単量体単位を含んでいてもよい。かかる他の単量体としては、例えば芳香族ビニル系化合物[スチレン、ベンゼン環に結合した水素原子が1〜3個のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基もしくはtert−ブチル基)で置換されたスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン等]、炭素数4〜8の共役ジエン(具体例は後述の重合体ブロック(B)の説明におけると同様)、炭素数2〜8のアルケン(具体例は後述の重合体ブロック(B)の説明におけると同様)、(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等)、ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)、ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等)等が挙げられる。α−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物と上記他の単量体との共重合形態はランダム共重合である必要がある。
【0018】
重合体ブロック(A)中のα−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物単位は、最終的に得られる高分子電解質膜に十分な耐ラジカル性を付与するために、重合体ブロック(A)の50質量%以上を占めることが好ましく、70質量%以上を占めることがより好ましく、90質量%以上を占めることがより一層好ましい。
【0019】
重合体ブロック(A)の分子量は、高分子電解質膜の性状、要求性能、他の重合体成分等によって適宜選択される。分子量が大きい場合、高分子電解質膜の引張強度等の力学特性が高くなる傾向にあり、分子量が小さい場合、高分子電解質膜の電気抵抗が小さくなる傾向にあり、必要性能に応じて分子量を適宜選択することが重要である。ポリスチレン換算の数平均分子量として、通常、100〜1,000,000の間から選択されるのが好ましく、1,000〜100,000の間から選択されるのがより好ましい。
【0020】
本発明の高分子電解質膜で使用するブロック共重合体は、重合体ブロック(A)以外にフレキシブルな重合体ブロック(B)を有する。重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とはミクロ相分離を起こし、重合体ブロック(A)同士と重合体ブロック(B)同士とがそれぞれ集合する性質があり、重合体ブロック(A)はイオン伝導性基を有するので重合体ブロック(A)同士の集合によりイオンチャンネルが形成され、プロトンの通り道となる。かかる重合体ブロック(B)を有することによってブロック共重合体が全体として弾力性を帯びかつ柔軟になり、膜−電極接合体や固体高分子型燃料電池の作製に当たって成形性(組立性、接合性、締付性など)が改善される。ここでいうフレキシブルな重合体ブロック(B)はガラス転移点あるいは軟化点が50℃以下、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下のいわゆるゴム状重合体ブロックである。
【0021】
フレキシブルな重合体ブロック(B)を構成する繰返し単位を構成することかできる単量体としては炭素数2〜8のアルケン、炭素数5〜8のシクロアルケン、炭素数7〜10のビニルシクロアルケン、炭素数4〜8の共役ジエン及び炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン、炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数7〜10のビニルシクロアルケン、炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数4〜8の共役ジエン、炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエステル類、ビニルエーテル類等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。2種以上を重合(共重合)させる場合の形態はランダム共重合でもブロック共重合でもグラフト共重合でもテーパード共重合でもよい。また、(共)重合に供する単量体が炭素−炭素二重結合を2つ有する場合にはそのいずれが重合に用いられてもよく、共役ジエンの場合には1,2−結合であっても1,4−結合であってもよく、またガラス転移点あるいは軟化点が50℃以下であれば、1,2−結合と1,4−結合との割合にも特に制限はない。
【0022】
重合体ブロック(B)を構成する繰返し単位が、ビニルシクロアルケンや共役ジエンや共役シクロアルカジエンである場合のように炭素−炭素二重結合を有している場合には、本発明の高分子電解質膜を用いた膜−電極接合体の発電性能、耐熱劣化性の向上などの観点から、かかる炭素−炭素二重結合はその30モル%以上が水素添加されているのが好ましく、50モル%以上が水素添加されているのがより好ましく、80モル%以上が水素添加されているのがより一層好ましい。炭素−炭素二重結合の水素添加率は、一般に用いられている方法、例えば、ヨウ素価測定法、H−NMR測定等によって算出することができる。
【0023】
重合体ブロック(B)は、得られるブロック共重合体に、弾力性ひいては膜−電極接合体や固体高分子型燃料電池の作製に当たって良好な成形性を与える観点から、炭素数2〜8のアルケン単位、炭素数5〜8のシクロアルケン単位、炭素数7〜10のビニルシクロアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位、炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン単位、炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数7〜10のビニルシクロアルケン単位、炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数4〜8の共役ジエン単位、及び炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン単位から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなる重合体ブロックであることが好ましく、炭素数2〜8のアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位、及び炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数4〜8の共役ジエン単位から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなる重合体ブロックであることがより好ましく、炭素数2〜6のアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位、及び炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数4〜8の共役ジエン単位から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなる重合体ブロックであることがより一層好ましい。上記で、アルケン単位として最も好ましいのはイソブテン単位であり、共役ジエン単位として最も好ましいのは1,3−ブタジエン単位及び/又はイソプレン単位である。
【0024】
上記で炭素数2〜8のアルケンとしてはエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、1−オクテン、2−オクテン等が挙げられ、炭素数5〜8のシクロアルケンとしてはシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン及びシクロオクテンが挙げられ、炭素数7〜10のビニルシクロアルケンとしてはビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプテン、ビニルシクロオクテンなどが挙げられ、炭素数4〜8の共役ジエンとしては1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,4−ヘプタジエン、3,5−ヘプタジエン等が挙げられ、炭素数5〜8の共役シクロアルカジエンとしてはシクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等が挙げられる。
【0025】
また、重合体ブロック(B)は、上記単量体以外に、ブロック共重合体に弾力性を与えるという重合体ブロック(B)の目的を損なわない範囲で他の単量体、例えばスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル系化合物;塩化ビニル等のハロゲン含有ビニル化合物等を含んでいてもよい。この場合上記単量体と他の単量体との共重合形態はランダム共重合であることが必要である。かかる他の単量体の使用量は、上記単量体と他の単量体との合計に対して、50質量%未満であるのが好ましく、30質量%未満であるのがより好ましく、10質量%未満であるのがより一層好ましい。
【0026】
重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とを構成成分とするブロック共重合体の構造は特に限定されないが、例としてA−B−A型トリブロック共重合体、B−A−B型トリブロック共重合体、A−B−A型トリブロック共重合体もしくはB−A−B型トリブロック共重合体とA−B型ジブロック共重合体との混合物、
A−B−A−B型テトラブロック共重合体、A−B−A−B−A型ペンタブロック共重合体、B−A−B−A−B型ペンタブロック共重合体、(A−B)nX型星形共重合体(Xはカップリング剤残基を表す)、(B−A)nX型星形共重合体(Xはカップリング剤残基を表す)等が挙げられる。これらのブロック共重合体は、各単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量比は95:5〜5:95であるのが好ましく、90:10〜10:90であるのがより好ましく、50:50〜10:90であるのがより一層好ましい。この質量比が95:5〜5:95である場合には、ミクロ相分離により重合体ブロック(A)の形成するイオンチャンネルがシリンダー状ないし連続相となるのに有利であって、実用上十分なイオン伝導性が発現し、また疎水性である重合体ブロック(B)の割合が適切となって優れた耐水性が発現する。
【0028】
本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体は重合体ブロック(A)や重合体ブロック(B)と異なる他の重合体ブロック(C)を含んでいてもよい。
重合体ブロック(C)は、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)とミクロ相分離する成分であれば特に限定されない。重合体ブロック(C)を構成する単量体としては、例えば芳香族ビニル系化合物[スチレン、ベンゼン環に結合した水素原子が1〜3個のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基もしくはtert−ブチル基)で置換されたスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン等]、炭素数4〜8の共役ジエン(具体例は後述の重合体ブロック(B)の説明におけると同様)、炭素数2〜8のアルケン(具体例は既述の重合体ブロック(B)の説明におけると同様)、(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等)、ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)、ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等)等が挙げられる。
【0029】
重合体ブロック(C)に、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)とミクロ相分離し、実質的にイオン基を含有せず、拘束相として働く機能を持たせる場合には、かかる重合体ブロック(C)を有する本発明の高分子電解質膜は、形態安定性、耐久性、湿潤下での力学特性が優れる傾向にある。この場合の重合体ブロック(C)を構成する単量体の好ましい例としては、上記した芳香族ビニル系化合物が挙げられる。また、重合体ブロック(C)を結晶性にすることによっても上記した機能を持たせることができる。
【0030】
上記した機能を芳香族ビニル系化合物単位に依存する場合、重合体ブロック(C)中の芳香族ビニル系化合物単位は、重合体ブロック(C)の50質量%以上を占めることが好ましく、70質量%以上を占めることがより好ましく、90質量%以上を占めることがより一層好ましい。また、上記と同じ観点から、重合体ブロック(C)中に含まれ得る芳香族ビニル系化合物単位以外の単位はランダム重合していることが望ましい。
【0031】
重合体ブロック(C)を重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)とミクロ相分離させ、かつ拘束相として機能させる観点から特に好適な例としてポリスチレンブロック;ポリp−メチルスチレンブロック、ポリp−(t−ブチル)スチレンブロック等のポリスチレン系ブロック;任意の相互割合の、スチレン、p−メチルスチレン及びp−(t−ブチル)スチレンの2種以上からなる共重合体ブロック;結晶性水添1,4−ポリブタジエンブロック;結晶性ポリエチレンブロック;結晶性ポリプロピレンブロック等が挙げられる。
【0032】
本発明で用いるブロック共重合体が重合体ブロック(C)を含む場合の形態としては、A−B−C型トリブロック共重合体、A−B−C−A型テトラブロック共重合体、A−B−A−C型テトラブロック共重合体、B−A−B−C型テトラブロック共重合体、A−B−C−B型テトラブロック共重合体、C−A−B−A−C型ペンタブロック共重合体、C−B−A−B−C型ペンタブロック共重合体、A−C−B−C−A型ペンタブロック共重合体、A−C−B−A−C型ペンタブロック共重合体、A−B−C−A−B型ペンタブロック共重合体、A−B−C−A−C型ペンタブロック共重合体、A−B−C−B−C型ペンタブロック共重合体、A−B−A−B−C型ペンタブロック共重合体、A−B−A−C−B型ペンタブロック共重合体、B−A−B−A−C型ペンタブロック共重合体、B−A−B−C−A型ペンタブロック共重合体、B−A−B−C−B型ペンタブロック共重合体等が挙げられる。
【0033】
本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体が重合体ブロック(C)を含む場合、ブロック共重合体に占める重合体ブロック(C)の割合は40質量%以下であるのが好ましく、35質量%以下であるのがより好ましく、30質量%以下であるのがより一層好ましい。
【0034】
本発明で用いるブロック共重合体のイオン伝導性基が導入されていない状態での数平均分子量は特に制限されないが、ポリスチレン換算の数平均分子量として、通常、10,000〜2,000,000が好ましく、15,000〜1,000,000がより好ましく、20,000〜500,000がより一層好ましい。
【0035】
本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体は重合体ブロック(A)にイオン伝導性基を有することが必要である。本発明でイオン伝導性に言及する場合のイオンとしてはプロトンなどが挙げられる。イオン伝導性基としては、該高分子電解質膜を用いて作製される膜−電極接合体が十分なイオン伝導度を発現できるような基であれば特に限定されないが、中でも−SOM又は−POHM(式中、Mは水素原子、アンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表す)で表されるスルホン酸基、ホスホン酸基又はそれらの塩が好適に用いられる。イオン伝導性基としては、また、カルボキシル基又はその塩も用いることができる。イオン伝導性基の導入位置を重合体ブロック(A)にするのはブロック共重合体全体の耐ラジカル性を向上させるのに特に有効であるためである。
【0036】
イオン伝導性基の重合体ブロック(A)中への導入位置については特に制限はなく、α−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物単位に導入しても既述の他の単量体単位に導入してもよいが、耐ラジカル性の向上の程度からα−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物単位の芳香族環に導入するのがもっとも好ましい。
【0037】
イオン伝導性基の導入量は、得られるブロック共重合体の要求性能等によって適宜選択されるが、固体高分子型燃料電池用の高分子電解質膜として使用するのに十分なイオン伝導性を発現するためには、通常、ブロック共重合体のイオン交換容量が0.30meq/g以上となるような量であることが好ましく、0.40meq/g以上となるような量であることがより好ましい。ブロック共重合体のイオン交換容量の上限については、イオン交換容量が大きくなりすぎると親水性が高まり耐水性が不十分になる傾向となるので、3.0meq/g以下であるのが好ましい。
【0038】
また、イオン伝導性基が導入された重合体ブロック(A)が、α−炭素原子に結合した水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換された芳香族ビニル系化合物、例えばα−メチルスチレンから構成されている場合は、α−炭素が3級炭素である芳香族ビニル系化合物単位によって構成されている場合に比べ、重合体ブロック(A)の溶解度パラメータが小さくなり、ミクロ相分離により重合体ブロック(A)の形成するイオンチャンネル内の疎水性が向上する。そのため、メタノールを燃料とする燃料電池においては、メタノールが一方の電極側から他方の電極側へ電解質膜を透過してしまう現象(メタノールクロスオーバー)を抑制しやすい傾向になる。α−メチルスチレンよりも溶解度パラメータがさらに小さい他の単量体単位を(共)重合した場合には、メタノールクロスオーバーをさらに抑制しやすい傾向になる。
【0039】
また、イオン伝導性基の重合体ブロック(A)同士を、本発明の効果を損わない範囲内で公知の方法により架橋させてもよい。架橋を導入することにより、膜の形態安定性が増し、更にメタノールクロスオーバーも抑制しやすい傾向になる。
【0040】
本発明で用いられるブロック共重合体の製造法に関しては主に次の2つの方法に大別される。すなわち、(1)まずイオン伝導性基を有さないブロック共重合体を製造した後、イオン伝導性基を結合させる方法、(2)イオン伝導性基を有する単量体を用いてブロック共重合体を製造する方法である。
【0041】
まず第1の製造法について述べる。
重合体ブロック(A)又は(B)を構成する単量体の種類、分子量等によって、重合体ブロック(A)又は(B)の製造法は、ラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、配位重合法等から適宜選択されるが、工業的な容易さから、ラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法が好ましく選択される。特に、分子量、分子量分布、重合体の構造、フレキシブルな成分からなる重合体ブロック(B)又は(A)との結合の容易さ等からいわゆるリビング重合法が好ましく、具体的にはリビングラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法が好ましい。
【0042】
製造法の具体例として、ポリ(α−メチルスチレン)からなる重合体ブロック(A)及び共役ジエンからなる重合体ブロック(B)を成分とするブロック共重合体の製造法、並びにポリ(α−メチルスチレン)からなる重合体ブロック(A)及びイソブテンからなる重合体ブロック(B)を成分とするブロック共重合体の製造法について述べる。この場合、工業的容易さ、分子量、分子量分布、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との結合の容易さ等からリビングアニオン重合法又はリビングカチオン重合法で製造するのが好ましく、次のような具体的な合成例が示される。
【0043】
(1)テトラヒドロフラン溶媒中でジアニオン系開始剤を用いて共役ジエン重合後に、−78℃の温度条件下でα−メチルスチレンを逐次重合させA−B−A型ブロック共重合体を得る方法(Macromolecules,(1969),2(5),453−458)、
(2)α−メチルスチレンをアニオン系開始剤を用いてバルク重合を行った後に、共役ジエンを逐次重合させ、その後テトラクロロシラン等のカップリング剤によりカップリング反応を行い、(A−B)nX型ブロック共重合体を得る方法(Kautsch.
Gummi, Kunstst.,(1984),37(5),377−379; Polym. Bull., (1984),12,71−77)、
(3)非極性溶媒中有機リチウム化合物を開始剤として用い、0.1〜10質量%の濃度の極性化合物の存在下、−30℃〜30℃の温度にて、5〜50質量%の濃度のα−メチルスチレンを重合させ、得られるリビングポリマーに共役ジエンを重合させた後、カップリング剤を添加して、A−B−A型ブロック共重合体を得る方法、
【0044】
(4)非極性溶媒中有機リチウム化合物を開始剤として用い、0.1〜10質量%の濃度の極性化合物の存在下、−30℃〜30℃の温度にて、5〜50質量%の濃度のα−メチルスチレンを重合させ、得られるリビングポリマーに共役ジエンを重合させ、得られるα−メチルスチレン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックからなるブロック共重合体のリビングポリマーに重合体ブロック(C)を構成する単量体を重合させてA−B−C型ブロック共重合体を得る方法、
(5)ハロゲン化炭化水素と炭化水素との混合溶媒中、−78℃で、2官能性有機ハロゲン化合物を用いて、ルイス酸存在下、イソブテンをカチオン重合させた後、ジフェニルエチレンを付加させ、さらにルイス酸を後添加後、α−メチルスチレンを重合させ、A−B−A型ブロック共重合体を得る方法(Macromolecules,(1995),28,4893−4898)、及び
(6)ハロゲン化炭化水素と炭化水素との混合溶媒中、−78℃で、1官能性有機ハロゲン化合物を用いて、ルイス酸存在下、α−メチルスチレンを重合後、さらにルイス酸を後添加し、イソブテンを重合させた後、2、2−ビス−[4−(1−フェニルエテニル)フェニル]プロパン等のカップリング剤によりカップリング反応を行い、A−B−A型ブロック共重合体を得る方法(Polym. Bull.,
(2000),45,121−128)
【0045】
ポリ(α−メチルスチレン)からなる重合体ブロック(A)及び共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(B)を成分とするブロック共重合体を製造する場合、上記ブロック共重合体の具体的製造方法中、(3)及び(4)の方法が好ましく、特に(3)の方法がより好ましい方法として採用される。
ポリ(α−メチルスチレン)からなる重合体ブロック(A)及びイソブテンからなる重合体ブロック(B)を成分とするブロック共重合体を製造する場合、(5)又は(6)に示す方法が採用される。
【0046】
次に、得られたブロック共重合体にイオン伝導性基を結合させる方法について述べる。
まず、得られたブロック共重合体にスルホン酸基を導入する方法について述べる。スルホン化は、公知のスルホン化の方法で行える。このような方法としては、ブロック共重合体の有機溶媒溶液や縣濁液を調製し、スルホン化剤を添加し混合する方法やブロック共重合体に直接ガス状のスルホン化剤を添加する方法等が例示される。
【0047】
使用するスルホン化剤としては、硫酸、硫酸と脂肪族酸無水物との混合物系、クロロスルホン酸、クロロスルホン酸と塩化トリメチルシリルとの混合物系、三酸化硫黄、三酸化硫黄とトリエチルホスフェートとの混合物系、さらに2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸に代表される芳香族有機スルホン酸等が例示される。また、使用する有機溶媒としては、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、ヘキサン等の直鎖式脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類等が例示でき、必要に応じて複数の組合せから、適宜選択して使用してもよい。
【0048】
得られたブロック共重合体にホスホン酸基を導入する方法について述べる。ホスホン化は、公知のホスホン化の方法で行える。具体的には、例えば、ブロック共重合体の有機溶媒溶液や懸濁液を調製し、無水塩化アルミニウムの存在下、該共重合体をクロロメチルエーテル等と反応させ、芳香環にハロメチル基を導入後、これに三塩化リンと無水塩化アルミニウムを加えて反応させ、さらに加水分解反応を行ってホスホン酸基を導入する方法などが挙げられる。あるいは、該共重合体に三塩化リンと無水塩化アルミニウムを加えて反応させ、芳香環にホスフィン酸基を導入後、硝酸によりホスフィン酸基を酸化してホスホン酸基とする方法等が例示できる。
【0049】
スルホン化又はホスホン化の程度としては、すでに述べたごとく、ブロック共重合体のイオン交換容量が0.30meq/g以上、特に0.40meq/g以上になるまで、しかし、3.0meq/g以下であるようにスルホン化またはホスホン化されることが望ましい。これにより実用的なイオン伝導性能が得られる。スルホン化またはホスホン化されたブロック共重合体のイオン交換容量、もしくはブロック共重合体におけるα-メチルスチレンブロック中のスルホン化率又はホスホン化率は、酸価滴定法、赤外分光スペクトル測定、核磁気共鳴スペクトル(H−NMRスペクトル)測定等の分析手段を用いて算出することができる。
【0050】
本発明で用いられるブロック共重合体の、第2の製造法は、イオン伝導性基を有する少なくとも1つの単量体を用いてブロック共重合体を製造する方法である。
イオン伝導性基を有する単量体としては、芳香族系ビニル化合物にイオン伝導性基が結合した単量体が好ましい。具体的には、スチレンスルホン酸、α−アルキル−スチレンスルホン酸、ビニルナフタレンスルホン酸、α−アルキル−ビニルナフタレンスルホン酸、ビニルアントラセンスルホン酸、α−アルキル−ビニルアントラセンスルホン酸、ビニルピレンスルホン酸、α−アルキル−ビニルピレンスルホン酸、スチレンホスホン酸、α−アルキル−スチレンホスホン酸、ビニルナフタレンホスホン酸、α−アルキル−ビニルナフタレンホスホン酸、ビニルアントラセンホスホン酸、α−アルキル−ビニルアントラセンホスホン酸、ビニルピレンホスホン酸、α−アルキル−ビニルピレンホスホン酸等が挙げられる。これらの中では、工業的汎用性、重合の容易さ等から、o−、m−又はp−スチレンスルホン酸、α−アルキル−o−、m−又はp−スチレンスルホン酸が特に好ましい。
【0051】
イオン伝導性基を含有する単量体としては、共役ジエン化合物にイオン伝導性基が結合した単量体も用いることができる。具体的には、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸、1,3−ブタジエン−2−スルホン酸、イソプレンー1−スルホン酸、イソプレン−2−スルホン酸、1,3−ブタジエンー1−ホスホン酸、1,3−ブタジエン−2−ホスホン酸、イソプレン−1−ホスホン酸、イソプレン−2−ホスホン酸等が挙げられる。
【0052】
イオン伝導性基を含有する単量体としてはまた、ビニルスルホン酸、α−アルキル−ビニルスルホン酸、ビニルアルキルスルホン酸、α−アルキル−ビニルアルキルスルホン酸、ビニルホスホン酸、α−アルキル−ビニルホスホン酸、ビニルアルキルホスホン酸、α−アルキル−ビニルアルキルホスホン酸等も用いることができる。これらの中では、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸が好ましい。
イオン伝導性を含有する単量体としては、さらに、イオン伝導性基が結合した(メタ)アクリル系単量体も用いることができる。具体的には、メタクリル酸、アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0053】
イオン伝導性基は、適当な金属イオン(例えばアルカリ金属イオン)あるいは対イオン(例えばアンモニウムイオン)で中和されている塩の形で導入されていてもよい。例えば、o−、m−又はp−スチレンスルホン酸ナトリウム、あるいはα−メチルーo−、m−又はp−スチレンスルホン酸ナトリウムを用いて重合体を製造することで、所望のイオン伝導性基を導入できる。又は、適当な方法でイオン交換することにより、スルホン酸基を塩型にしたブロック共重合体を得ることができる。
【0054】
本発明の高分子電解質膜は、本発明の効果を損なわない限り、軟化剤を含有していてもよい。軟化剤としては、パラフィン系、ナフテン系もしくはアロマ系のプロセスオイル等の石油系軟化剤、パラフィン、植物油系軟化剤、可塑剤等があり、これらは各単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。軟化剤の使用量には、特に制限はないが、ブロック共重合体100質量部に対して、0〜1,000質量部であるのが好ましく、0〜500質量部であるのがより好ましく、0〜300質量部であるのがより一層好ましい。
【0055】
本発明の高分子電解質膜は、さらに、必要に応じて各種添加剤、例えば、フェノール系安定剤、イオウ系安定剤、リン系安定剤、光安定剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、顔料、染料、増白剤、カーボン繊維等を各単独で又は2種以上組み合わせて含有していてもよい。安定剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスチリル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2,−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロジナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のフェノール系安定剤;ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート等のイオウ系安定剤;トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジアステリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系安定剤等が挙げられる。これら安定剤は各単独で用いても、2種以上組み合わせても用いてもよい。
【0056】
本発明の高分子電解質膜は、さらに、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、無機充填剤を添加することができる。かかる無機充填剤の具体例としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、ガラス繊維、マイカ、カオリン、酸化チタン、モンモリロナイト、アルミナ等が挙げられる。
【0057】
本発明の高分子電解質膜は、燃料電池用電解質膜として必要な性能、膜強度、ハンドリング性等の観点から、その膜厚が5〜500μm程度であることが好ましい。膜厚が5μm未満である場合には、膜の機械的強度やガスの遮断性が不充分となる傾向がある。逆に、膜厚が500μmを超えて厚い場合には、膜抵抗が大きくなり、充分なプロトン伝導性が発現しないため、電池の発電特性が低くなる傾向がある。該膜厚はより好ましくは10〜300μmである。
【0058】
本発明の高分子電解質膜の調製方法については、かかる調製のための通常の方法であればいずれの方法も採用でき、例えば、本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体又は該ブロック共重合体及び上記したような添加剤を適当な溶媒と混合して該ブロック共重合体を溶解もしくは懸濁せしめ、ガラス等の板状体にキャストするか又はコーターやアプリケーター等を用いて塗布し、適切な条件で溶媒を除去することによって、所望の厚みを有する電解質膜を得る方法や、熱プレス成形、ロール成形、押し出し成形等の公知の方法を用いて成膜する方法などを用いることができる。
また、得られた電解質膜層の上に、新たに、同じもしくは異なるブロック共重合体溶液を塗布して乾燥することにより積層化させてもよい。また、上記のようにして得られた、同じもしくは異なる電解質膜同士を熱ロール成形等で圧着させて積層化させてもよい。
【0059】
このとき使用する溶媒は、ブロック共重合体の構造を破壊することなく、キャストもしくは塗布が可能な程度の粘度の溶液を調製することが可能なものであれば特に制限されない。具体的には、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン等の直鎖式脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール類、あるいはこれらの混合溶媒等が例示できる。ブロック共重合体の構成、分子量、イオン交換容量等に応じて、上記に例示した溶媒の中から、1種又は2種以上の組合せを適宜選択し、使用することができる。
【0060】
また、溶媒除去の条件は、本発明のブロック共重合体のスルホン基等のイオン伝導性基が脱落する温度以下で、溶媒を完全に除去できる条件であれば任意に選択することが可能である。所望の物性を発現させるため、複数の温度を任意に組み合わせたり、通風気下と真空下等を任意に組み合わせてもよい。具体的には、室温〜60℃程度の真空条件下で、数時間予備乾燥した後、100℃以上の真空条件下、好ましくは100〜120℃で12時間程度の乾燥条件で溶媒を除去する方法等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
次に、本発明の高分子電解質膜を用いた膜−電極接合体について述べる。膜−電極接合体の製造については特に制限はなく、公知の方法を適用することができ、例えば、イオン伝導性バインダーを含む触媒ペーストを印刷法やスプレー法により、ガス拡散層上に塗布し乾燥することで触媒層とガス拡散層との接合体を形成させ、ついで2対の接合体をそれぞれ触媒層を内側にして、高分子電解質膜の両側にホットプレスなどによりと接合させる方法や、上記触媒ペーストを印刷法やスプレー法により高分子電解質膜の両側に塗布し、乾燥して触媒層を形成させ、それぞれの触媒層に、ホットプレスなどによりガス拡散層を圧着させる方法がある。さらに別の製造法として、イオン伝導性バインダーを含む溶液又は懸濁液を、高分子電解質膜の両面及び/又は2対のガス拡散電極の触媒層面に塗布し、電解質膜と触媒層面とを張り合わせ、熱圧着などにより接合させる方法がある。この場合、該溶液又は懸濁液は電解質膜及び触媒層面のいずれか一方に塗付してもよいし、両方に塗付してもよい。さらに他の製造法として、まず、上記触媒ペーストをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製などの基材フィルムに塗布し、乾燥して触媒層を形成させ、ついで、2対のこの基材フィルム上の触媒層を高分子電解質膜の両側に加熱圧着により転写し、基材フィルムを剥離することで電解質膜と触媒層との接合体を得、それぞれの触媒層にホットプレスによりガス拡散層を圧着する方法がある。これらの方法においては、これらの方法をイオン伝導性基をNaなどの金属との塩にした状態で行い、接合後の酸処理によってプロトン型に戻す処理を行ってもよい。
【0062】
上記膜−電極接合体を構成するイオン伝導性バインダーとしては、例えば、「Nafion」(登録商標、デュポン社製)や「Gore−select」(登録商標、ゴア社製)などの既存のパーフルオロスルホン酸系ポリマーからなるイオン伝導性バインダー、スルホン化ポリエーテルスルホンやスルホン化ポリエーテルケトンからなるイオン伝導性バインダー、リン酸や硫酸を含浸したポリベンズイミダゾールからなるイオン伝導性バインダー等を用いることができる。また、本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体からイオン伝導性バインダーを作製してもよい。なお、電解質膜とガス拡散電極との密着性を一層高めるためには、高分子電解質膜と同一材料から形成したイオン伝導性バインダーを用いることが好ましい。
【0063】
上記膜−電極接合体の触媒層の構成材料について、導電材/触媒担体としては特に制限はなく、例えば炭素材料が挙げられる。炭素材料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛などが挙げられ、これら単独であるいは2種以上混合して使用される。触媒金属としては、水素やメタノールなどの燃料の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する金属であればいずれのものでもよく、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、パラジウム等、あるいはそれらの合金、例えば白金−ルテニウム合金が挙げられる。中でも白金や白金合金が多くの場合用いられる。触媒となる金属の粒径は、通常は、10〜300オングストロームである。これら触媒はカーボン等の導電材/触媒担体に担持させた方が触媒使用量は少なくコスト的に有利である。また、触媒層には、必要に応じて撥水剤が含まれていてもよい。撥水剤としては例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリエーテルエーテルケトン等の各種熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0064】
上記膜−電極接合体のガス拡散層は、導電性及びガス透過性を備えた材料から構成され、かかる材料として例えばカーボンペーパーやカーボンクロス等の炭素繊維よりなる多孔性材料が挙げられる。また、かかる材料には、撥水性を向上させるために、撥水化処理を施してもよい。
【0065】
上記のような方法で得られた膜−電極接合体を、極室分離と電極へのガス供給流路の役割を兼ねた導電性のセパレータ材の間に挿入することにより、固体高分子型燃料電池が得られる。本発明の膜−電極接合体は、燃料ガスとして水素を使用した純水素型、メタノールを改質して得られる水素を使用したメタノール改質型、天然ガスを改質して得られる水素を使用した天然ガス改質型、ガソリンを改質して得られる水素を使用したガソリン改質型、メタノールを直接使用する直接メタノール型等の固体高分子型燃料電池用膜−電極接合体として使用可能である。
本発明の高分子電解質膜を用いた燃料電池は、化学的安定性が優れ、経時的な発電特性の低下が少なく、長時間安定して使用できる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0067】
参考例1
ポリα−メチルスチレン(重合体ブロック(A))と水添ポリブタジエン(重合体ブロック(B))とからなるブロック共重合体の製造
既報の方法(WO 02/40611号)と同様の方法で、ポリα−メチルスチレン−b−ポリブタジエン−b−ポリα−メチルスチレン型トリブロック共重合体(以下mSEBmSと略記する)を合成した。得られたmSEBmSの数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は76000であり、H−NMR測定から求めた1,4−結合量は55%、α−メチルスチレン単位の含有量は30.0質量%であった。また、ポリブタジエンブロック中には、α−メチルスチレンが実質的に共重合されていないことが、H−NMRスペクトル測定による組成分析により判明した。
合成したmSEBmSのシクロヘキサン溶液を調整し、十分に窒素置換を行った耐圧容器に仕込んだ後、Ni/Al系のZiegler系水素添加触媒を用いて、水素雰囲気下において80℃で5時間水素添加反応を行い、ポリα−メチルスチレン−b−水添ポリブタジエン−b−ポリα−メチルスチレン型トリブロック共重合体(以下HmSEBmSと略記する)を得た。得られたHmSEBmSの水素添加率をH−NMRスペクトル測定により算出したところ、99.6%であった。
【0068】
参考例2
ポリα−メチルスチレン(重合体ブロック(A))と水添ポリブタジエン(重合体ブロック(B))とからなるブロック共重合体(HmSEBmS)の製造
参考例1と同様の方法で、数平均分子量51300、1,4−結合量59.2%及びα−メチルスチレン単位の含有量31.3質量%のmSEBmSを合成した。このポリブタジエンブロック中には、α−メチルスチレンが実質的に共重合されていなかった。ついでこのmSEBmSを用いる以外参考例1と同様にして水素添加率99.4%のHmSEBmSを得た。
【0069】
参考例3
ポリα−メチルスチレン(重合体ブロック(A))と水添ポリブタジエン(重合体ブロック(B))とからなるブロック共重合体(HmSEBmS)の製造
参考例1と同様の方法で、数平均分子量74700、1,4−結合量39.5%及びα−メチルスチレン単位の含有量42.0質量%のmSEBmSを合成した。このポリブタジエンブロック中には、α−メチルスチレンが実質的に共重合されていなかった。ついでこのmSEBmSを用いて水素添加反応を50℃で7時間行ったことを除いて参考例1と同様にして水素添加率99.4%のHmSEBmSを得た。
【0070】
参考例4
ポリスチレン(重合体ブロック(A))とポリイソブチレン(重合体ブロック(B))とからなるブロック共重合体の製造
既報の方法(WO 98/14518号)に従い、ポリスチレン−b−ポリイソブチレン−b−ポリスチレントリブロック共重合体(以下SiBuSと略記する)を製造した。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は69000、スチレンの含有量は28.4%であった。
【0071】
実施例1
(1)スルホン化HmSEBmSの合成
参考例1で得られたブロック共重合体(HmSEBmS)100gを、攪拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン1000mlを加え、35℃にて2時間攪拌して溶解させた。溶解後、塩化メチレン41.8ml中、0℃にて無水酢酸21.0mlと硫酸9.34mlとを反応させて得られた硫酸化試薬を、20分かけて徐々に滴下した。35℃にて0.5時間攪拌後、2Lの蒸留水の中に攪拌しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を凝固析出させた。析出した固形分を90℃の蒸留水で30分間洗浄し、ついでろ過した。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥してスルホン化HmSEBmSを得た。得られたスルホン化HmSEBmSのα−メチルスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率はH−NMR分析から20.6mol%、イオン交換容量は0.48meq/gであった。
(2)燃料電池用電解質膜の作製
(1)で得られたスルホン化HmSEBmSの5質量%のTHF/MeOH(質量比8/2)溶液を調製し、ポリテトラフルオロエチレンシート上に約1000μmの厚みでキャストし、室温で十分乾燥させることで、厚さ50μmの膜を得た。
【0072】
実施例2
(1)スルホン化HmSEBmSの合成
実施例1(1)においてスルホン化の反応時間を1時間にする以外は実施例1と同様に操作してスルホン化HmSEBmSを得た。得られたスルホン化HmSEBmSのα−メチルスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率はH−NMR分析から30.1mol%、イオン交換容量は0.69meq/gであった。
(2)燃料電池用電解質膜の作製
上記スルホン化HmSEBmSを用いる以外実施例1(2)と同様の方法で厚さ50μmの膜を得た。
【0073】
(3)固体高分子型燃料電池用単セルの作製
固体高分子型燃料電池用の電極を以下の手順で作製した。Pt−Ru合金触媒担持カーボンに、Nafionの5質量%メタノール溶液を、Pt−Ru合金とNafionとの質量比が2:1になるように添加混合し、均一に分散されたペーストを調製した。このペーストを転写シートに塗布し、24時間乾燥させて、アノード側の触媒シートを作製した。また、Pt触媒担持カーボンに、低級アルコールと水との混合溶媒中へのNafionの5質量%溶液を、Pt触媒とNafionとの質量比が2:1になるように添加混合し、均一に分散されたペーストを調製し、アノード側と同様の方法にてカソード側の触媒シートを作製した。(2)で作製した燃料電池用電解質膜を、上記2種類の触媒シートでそれぞれ膜と触媒面とが向かい合うように挟み、その外側を2枚の耐熱性フィルム及び2枚のステンレス板で順に挟み、ホットプレス(150℃、100kg/cm、10min)により膜と触媒シートとを接合させた。最後に転写シートを剥離させ、耐熱性フィルム及びステンレス板を外して膜−電極接合体を作製した。ついで作製した膜−電極接合体を、2枚のカーボンペーパーで挟み、その外側を2枚のガス供給流路の役割を兼ねた導電性のセパレータで挟み、さらにその外側を2枚の集電板及び2枚の締付板で挟み固体高分子型燃料電池用の評価セルを作製した。
【0074】
実施例3
(2)燃料電池用電解質膜の作製
実施例1(1)で得られたスルホン化HmSEBmSの18質量%のトルエン/イソブチルアルコール(質量比8/2)溶液を調製し、離形処理済みPETフィルム[(株)東洋紡製「東洋紡エステルフィルムK1504」]上に約550μmの厚みでコートし、室温で十分乾燥させることで、厚さ50μmの膜を得た。
【0075】
実施例4
(2)燃料電池用電解質膜の作製
実施例2で得られたスルホン化HmSEBmSの18質量%のシクロヘキサン/イソプロピルアルコール(質量比7/3)溶液を調製し、離形処理済みPETフィルム[(株)東洋紡製「東洋紡エステルフィルムK1504」]上に約550μmの厚みでコートし、室温で十分乾燥させることで、厚さ50μmの膜を得た。
【0076】
実施例5
(1)スルホン化HmSEBmSの合成
実施例1(1)において硫酸化試薬滴下後の反応時間を8時間とする以外は実施例1(1)と同様に操作してスルホン化HmSEBmSを得た。得られたスルホン化HmSEBmSのα−メチルスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率はH−NMR分析から51.0mol%、イオン交換容量は1.12meq/gであった。
(2)燃料電池用電解質膜の作製
(1)で得られたスルホン化HmSEBmSの14質量%のトルエン/イソブチルアルコール(質量比8/2)溶液を調製し、離形処理済みPETフィルム[(株)東洋紡製「東洋紡エステルフィルムK1504」]上に約650μmの厚みでコートし、室温で十分乾燥させることで、厚さ50μmの膜を得た。
【0077】
実施例6
(1)スルホン化HmSEBmSの合成
参考例2で得られたブロック共重合体(HmSEBmS)90gを、攪拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン816mlを加え、35℃にて2時間攪拌して溶解させた。溶解後、塩化メチレン36.5ml中、0℃にて無水酢酸18.3mlと硫酸8.17mlとを反応させて得られた硫酸化試
薬を、20分かけて徐々に滴下した。35℃にて4時間攪拌後、3Lの蒸留水の中に攪拌しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を凝固析出させた。析出した固形分を90℃の蒸留水で30分間洗浄し、ついでろ過した。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥してスルホン化HmSEBmSを得た。得られたスルホン化HmSEBmSのα−メチルスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率はH−NMR分析から30.8mol%、イオン交換容量は0.74meq/gであった。
(2)燃料電池用電解質膜の作製
(1)で得られたスルホン化HmSEBmSの22質量%のトルエン/イソブチルアルコール(質量比8/2)溶液を調製し、離形処理済みPETフィルム[(株)東洋紡製「東洋紡エステルフィルムK1504」] 上に約450μmの厚みでコートし、室温で十分乾燥させることで、厚さ50μmの膜を得た。
【0078】
実施例7
(1)スルホン化HmSEBmSの合成
参考例2で得られたブロック共重合体(HmSEBmS)106gを、攪拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン900mlを加え、35℃にて2時間攪拌して溶解させた。溶解後、塩化メチレン58.6ml中、0℃にて無水酢酸29.3mlと硫酸13.1mlとを反応させて得られた硫酸化試薬を、20分かけて徐々に滴下した。35℃にて9時間攪拌後、3Lの蒸留水の中に攪拌しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を凝固析出させた。析出した固形分を90℃の蒸留水で30分間洗浄し、ついでろ過した。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥してスルホン化HmSEBmSを得た。得られたスルホン化HmSEBmSのα−メチルスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率はH−NMR分析から52.7mol%、イオン交換容量は1.21meq/gであった。
(2)燃料電池用電解質膜の作製
(1)で得られたスルホン化HmSEBmSを実施例6(2)と同様に処理して厚さ50μmの膜を得た。
【0079】
実施例8
(1)スルホン化HmSEBmSの合成
参考例3で得られたブロック共重合体(HmSEBmS)30gを、攪拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン381mlを加え、35℃にて2時間攪拌して溶解させた。溶解後、塩化メチレン13.1ml中、0℃にて無水酢酸6.55mlと硫酸2.93mlとを反応させて得られた硫酸化試薬を、20分かけて徐々に滴下した。35℃にて4時間攪拌後、1Lの蒸留水の中に攪拌しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を凝固析出させた。析出した固形分を90℃の蒸留水で30分間洗浄し、ついでろ過した。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥してスルホン化HmSEBmSを得た。得られたスルホン化HmSEBmSのα−メチルスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率はH−NMR分析から28.5mol%、イオン交換容量は0.95meq/gであった。
(2)燃料電池用電解質膜の作製
(1)で得られたスルホン化HmSEBmSを実施例6(2)と同様に処理して厚さ50μmの膜を得た。
【0080】
比較例1
(1)スルホン化SEBSの合成
塩化メチレン34.2ml中、0℃にて無水酢酸17.1mlと硫酸7.64mlとを反応させて硫酸化試薬を調製した。一方、SEBS(スチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレン)ブロック共重合体[(株)クラレ製「セプトン8007」]100gを、攪拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン1000mlを加え、35℃にて4時間攪拌して溶解させた。溶解後、硫酸化試薬を20分かけて徐々に滴下した。35℃にて5時間攪拌後、2Lの蒸留水の中に攪拌しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を凝固析出させた。析出した固形分は、90℃の蒸留水で30分間洗浄し、ついでろ過した。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥してスルホン化SEBSを得た。得られたスルホン化SEBSのスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率はH−NMR分析から19.3mol%、イオン交換容量は0.51meq/gであった
(2)燃料電池用電解質膜の作製
上記スルホン化SEBSを用いる以外実施例1(2)と同様の方法にて厚さ50μmの膜を得た。
【0081】
比較例2
(1)スルホン化SEBSの合成
比較例1(1)においてスルホン化の反応時間を12時間にする以外は比較例1(1)と同様に操作してスルホン化HmSEBmSを得た。得られたスルホン化SEBSのスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率はH−NMR分析から29.0mol%、イオン交換容量は0.75meq/gであった。
(2)燃料電池用電解質膜の作製
上記スルホン化SEBSを用いる以外実施例1(2)と同様の方法にて厚さ50μmの膜を得た。
(3)固体高分子型燃料電池用単セルの作製
上記膜を用いる以外は実施例2(3)と同様の方法にて単セルを作製した。
【0082】
比較例3
(2)燃料電池用電解質膜の作製
比較例2(1)で得られたスルホン化SEBSの18質量%のトルエン/イソブチルアルコール(質量比8/2)溶液を調製し、離形処理済みPETフィルム[(株)東洋紡製「東洋紡エステルフィルムK1504」] 上に約550μmの厚みでコートし、室温で十分乾燥させることで、厚さ50μmの膜を得た。
【0083】
比較例4
(1)スルホン化SiBuSの合成
塩化メチレン18.2ml中、0℃にて無水酢酸11.6mlと硫酸5.17mlとを反応させて硫酸化試薬を調製した。一方、参考例2で得られたブロック共重合体(SiBuS)100gを、攪拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン1000mlを加え、35℃にて2時間攪拌して溶解させた。溶解後、硫酸化試薬を、20分かけて徐々に滴下した。35℃にて2時間攪拌後、2Lの蒸留水の中に攪拌しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を凝固析出させた。析出した固形分は、90℃の蒸留水で30分間洗浄し、ついでろ過した。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥してスルホン化SiBuSを得た。得られたスルホン化SiBuSのスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率はH−NMR分析から19.1mol%、イオン交換容量は0.50meq/gであった。
(2)製膜
上記スルホン化SiBuSを用いる以外実施例1(2)と同様の方法にて厚さ80μmの膜を得た。
【0084】
比較例5
(1)スルホン化SiBuSの合成
比較例4(1)においてスルホン化の反応時間を10.5時間にする以外は比較例4(1)と同様に操作してスルホン化SiBuSを得た。得られたスルホン化SiBuSのスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率はH−NMR分析から28.1mol%、イオン交換容量は0.72meq/gであった。
(2)燃料電池用電解質膜の作製
上記スルホン化SiBuSを用いる以外実施例1(2)と同様の方法にて厚さ50μmの膜を得た。
(3)固体高分子型燃料電池用単セルの作製
上記膜を用いる以外は実施例2(3)と同様の方法にて単セルを作製した。
【0085】
比較例6
パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子電解質として、DuPont社ナフィオンフィルム(Nafion112)を選択した。該フィルムの厚みは約50μm、イオン交換容量は0.91meq/gであった。
上記フィルムを燃料電池用電解質膜に代えて用いる以外は実施例2(3)と同様の方法にて固体高分子型燃料電池用単セルを作製した。
【0086】
実施例及び比較例の高分子膜の固体高分子型燃料電池用電解質膜としての性能試験
以下の1)〜4)の試験において試料としては各実施例又は比較例で得られたスルホン化ブロック共重合体から調製した膜又はナフィオンフィルムを使用した。
1)イオン交換容量の測定
試料を密閉できるガラス容器中に秤量(a(g))し、そこに過剰量の塩化ナトリウム飽和水溶液を添加して一晩攪拌した。系内に発生した塩化水素を、フェノールフタレイン液を指示薬とし、0.01NのNaOH標準水溶液(力価f)にて滴定(b(ml))した。イオン交換容量は、次式により求めた。
イオン交換容量=(0.01×b×f)/a
【0087】
2)プロトン伝導率測定
1cm×4cmの試料を一対の白金電極で挟み、開放系セルに装着した。測定セルを温度60℃、相対湿度90%に調節した恒温恒湿器内に設置し、交流インピーダンス法によりプロトン伝導率を測定した。
【0088】
3)膜強度測定
試料をダンベル状に成形して、引張速度500mm/minの条件において破断強度を測定した。
【0089】
4)ラジカル安定性試験
3質量%の過酸化水素水溶液にD−グルコース及び塩化鉄(II)・4水和物を溶解させ、ラジカル反応試薬を調製した。ラジカル反応試薬の温度が60℃で一定になったことを確認して、試料を添加し、4時間及び8時間反応させた。ついで試料を蒸留水で十分に洗浄した。
【0090】
5)燃料電池用単セルの出力性能評価
実施例2並びに比較例2、5及び6で作成した固体高分子型燃料電池用単セルについて、出力性能を評価した。燃料には1M
MeOH水溶液を用い、酸化剤には空気を用いた。MeOH:5cc/min、空気:500cc/minの条件下、セル温度80℃にて試験した。
【0091】
高分子電解質膜としての性能試験の結果
実施例1〜8並びに比較例2、5及び6で作製した膜のプロトン伝導率の測定結果を表1に示す。表1における実施例1と実施例2との比較及び実施例3〜5の比較により、スルホン化率の増加に伴いプロトン伝導率が向上することが明確となった。また、実施例2と比較例2と比較例5との比較から、ポリマー骨格が異なっても同程度のプロトン伝導率が発現することが明確となった。
【0092】
実施例1〜8並びに比較例2、5及び6で作製した膜の膜強度の結果を表1に示した。
実施例1、2、3、4及び6で作製した比較的スルホン化率の低い膜では、Nafion112以上の膜強度を示した。一方、イオン伝導性基量を多くした膜では、実施例3及び4に対する実施例5や実施例6に対する実施例7に見られるように、膜強度が低下する傾向が見られた。これは、イオン伝導性基に吸着された水分子が可塑剤的に作用するためと考えられる。
また、実施例2、比較例2及び比較例5のポリマー骨格による比較(イオン伝導性基量はほぼ一定)では、スルホン化HmSEBmSが最も優れた膜強度を有することが判明した。
【0093】
実施例1及び2並びに比較例1、2、4、5及び6で作製した膜のラジカル安定性試験を実施した。4時間及び8時間反応後の質量保持率及びイオン交換容量保持率を測定した結果を表2に示す。
表2において、比較例1及び2で作製した膜は、4時間試験後に各辺とも長さが約1.3倍に膨潤し、かつ、白濁、皺が激しかった。8時間試験後の膜は、各辺とも1.5倍以上膨潤し、白濁、激しい皺が認められた。比較例4及び5で作製した膜は、4時間試験後に形状を保持していたが、皺が激しく、また、一部に白濁が見られた。8時間反応後では、比較例4で作製した膜は、形状を保持していたが、膜全体に皺、白化が激しく、比較例5で作製した膜は形状を保持できず反応溶液中に微小粉となって分散した。
また、比較例1、2及び4で作製した膜は、質量保持率が8時間試験後ではかなり低下し、イオン交換容量は4時間試験後で大幅に低下し、8時間試験後でさらに一層低下した。
【0094】
一方、実施例1及び2で作製した膜は、8時間試験後でも膜の外観変化は認められず、質量は98%以上、イオン交換容量は92%以上を保持し優れたラジカル安定性を示した。
表2の結果から、本発明のα−メチルスチレン系ブロック共重合体からなる燃料電池用電解質膜は、ラジカル安定性試験におけるイオン交換容量保持率が、SEBS及びSiBuSのスルホン化体よりも著しく高く、イオンチャネル部分に耐ラジカル性を有することが明らかとなった。
一方、比較例6のNafion112については、スルホン化HmSEBmSと同様に膜の外観変化は認められなかったが、イオン交換容量は経時的に変化し、8時間反応後では79.0%まで低下した。質量変化はほとんど認められなかったことから、主鎖の分解反応による劣化ではなく、スルホン酸基の脱離による劣化が進行したと考えられる。
【0095】
実施例2並びに比較例2、5及び6で得られた固体高分子型燃料電池用単セルの発電特性として、電流密度に対する電圧の変化を測定した。結果を図1〜4に示した。実施例2で作製した単セルの開放電圧は0.62V、最高出力密度は58.2mW/cmであって、比較例6のNafion112の開放電圧0.61V、最高出力密度57.0mW/cmと同レベルであり、燃料電池用単セルとして十分使用可能であった。一方、比較例2及び比較例5で作製した単セルについては、開放電圧はそれぞれ0.34V、0.37V、最高出力密度はそれぞれ15.0mW/cm、21.1mW/cmであり低い特性であった。これについては、比較例2(2)及び比較例5(2)で得られた膜においては、膜強度が低いために、膜−電極接合体を作製する際のホットプレスにより膜にピンホールなどの欠陥が生じた可能性が高く、これらの欠陥により低い性能しか得られなかったものと考えられる。
燃料電池単セルの発電特性の結果から、本発明の実施例2(3)で作製した固体高分子型燃料電池用単セルは、高い発電特性を発揮することが明らかとなった。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】固体高分子型燃料電池用単セルの電流密度―出力電圧を示す図である(実施例2(3))。
【図2】固体高分子型燃料電池用単セルの電流密度―出力電圧を示す図である(比較例2(3))。
【図3】固体高分子型燃料電池用単セルの電流密度―出力電圧を示す図である(比較例5(3))。
【図4】固体高分子型燃料電池用単セルの電流密度―出力電圧を示す図である(比較例6)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物単位を主たる繰返し単位とする重合体ブロック(A)及びフレキシブルな重合体ブロック(B)を構成成分とし、かつ、重合体ブロック(A)にイオン伝導性基を有するブロック共重合体を含有することを特徴とする固体高分子型燃料電池用高分子電解質膜。
【請求項2】
重合体ブロック(A)に占めるα−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物単位の割合が50質量%以上である請求項1記載の電解質膜。
【請求項3】
重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量比が95:5〜5:95である請求項1又は2に記載の電解質膜。
【請求項4】
α−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物単位が、α−炭素原子に結合した水素原子が炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基又はフェニル基で置換された芳香族ビニル系化合物単位である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解質膜。
【請求項5】
フレキシブルな重合体ブロック(B)が炭素数2〜8のアルケン単位、炭素数5〜8のシクロアルケン単位、炭素数7〜10のビニルシクロアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位及び炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン単位、並びに炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数7〜10のビニルシクロアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位及び炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなる重合体ブロックである請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解質膜。
【請求項6】
フレキシブルな重合体ブロック(B)が炭素数2〜8のアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位、及び炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数4〜8の共役ジエン単位から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなる重合体ブロックである請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解質膜。
【請求項7】
α−炭素が4級炭素である芳香族ビニル化合物単位がα−メチルスチレン単位であり、フレキシブルな重合体ブロック(B)が炭素数4〜8の共役ジエン単位及び炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数4〜8の共役ジエン単位から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位である請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解質膜。
【請求項8】
イオン伝導性基が−SOM又は−POHM(式中、Mは水素原子、アンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表す)で表される基である請求項1〜7のいずれか1項に記載の電解質膜。
【請求項9】
ブロック共重合体のイオン交換容量が、0.30meq/g以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載の電解質膜。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の電解質膜を使用した膜−電極接合体。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の電解質膜を使用した固体高分子型燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−210326(P2006−210326A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351357(P2005−351357)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】