説明

固体高分子形燃料電池用膜電極接合体および固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法

【課題】低湿度から高湿度に渡る環境下で高い発電性能を有し、かつ燃料の欠乏が生じた場合においても電極の特性低下が起こりにくい固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を提供する。
【解決手段】アノード触媒とイオン交換樹脂とを含むアノード触媒層11を有するアノード15と、カソード触媒とイオン交換樹脂とを含むカソード触媒層13を有するカソード16と、前記アノード15と前記カソード16との間に配置される高分子電解質膜17とを備え、前記アノード触媒は、カーボン担体に白金または白金合金が担持されたものであり、前記アノード触媒の白金または白金合金の担持量が1〜25質量%であり、前記アノード触媒層11中に、酸化イリジウム、イリジウム、酸化ルテニウム、ルテニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つからなる微粒子を含み、該微粒子の比表面積が2〜50m/gであることを特徴とする固体高分子形燃料電池用膜電極接合体10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体および固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素および酸素を用いる燃料電池は、電極反応による反応生成物が原理的に水のみであることから、環境への悪影響がほとんどない発電システムとして注目されている。なかでも、プロトン導電性のイオン交換膜を電解質膜として用いた固体高分子形燃料電池は、作動温度が低く、出力密度が高く、かつ小型化が可能なため、車載用電源等として有望視されている。
【0003】
固体高分子形燃料電池は、作動温度が低い(50〜120℃)という特徴を有するものの、そのために排熱を補機動力等に有効利用しにくいという問題を有する。該問題を補う意味でも、固体高分子形燃料電池には、水素および酸素の利用率が高いこと、すなわち、高いエネルギー効率および高い出力密度が要求されている。
【0004】
該要求に応えるため、固体高分子形燃料電池の触媒層に含ませる電極触媒として、比表面積の大きな担体カーボン上に、白金、白金合金等の触媒金属微粒子を高分散に担持した電極触媒が用いられている。該電極触媒を用いることにより、電極における反応面積が拡大し、高出力化が可能となる。
【0005】
ところで、燃料電池は、幾つものセルをスタッキングして運転されるが、このような運転条件下においては、急激な出力の変動が生じた場合には、スタッキングされているセルへのガスの供給が遅れる。このような状態になった場合には、アノードへの燃料ガスであるHの供給欠乏状態となり、アノード電位が上昇し、結果的に逆電圧を引き起こすことが知られている。通常の燃料電池のアノード反応は下記式(1)のように、燃料であるHからプロトンが生成する反応である。
→2H + 2e (1)
一方で、燃料不足状況下においては、アノードにおいてプロトンの供給源として下記式2のように水の電気分解反応が進行し、電流の維持が図られる。
2HO→O+4H + 4e (2)
さらに、上記の水の電気分解反応が進行している状況下において、燃料不足の状態が継続した場合には、下記式(3)のようなカーボン腐食反応が進行する。
2HO+C→CO+4H + 4e (3)
逆電圧が長時間続いた場合には、その後の発電が困難となり致命的なダメージとなって観察される。このようなアノードの逆電圧の課題を解決する方法として、例えば、触媒金属の担持率を増加させることや、耐腐食性の高い担体カーボンを使用することにより、カーボン腐食を抑制させる技術が提案されている(特許文献1)。また、上記式(2)の反応に着目し、アノード触媒層中に水の電気分解を促進することができる触媒を添加する技術(特許文献2および特許文献3)などが提案されている。
【0006】
また、固体高分子形燃料電池には、低湿度から高湿度に渡る環境下での高い発電性能が要求される。高湿度ではイオン交換樹脂が膨潤して触媒層の空隙を閉塞する、いわゆるフラッディング現象が発生する問題がある。フラッディング現象が発生すると、触媒層へ供給されるガスの拡散性が低下し、固体高分子形燃料電池の発電性能が大きく低下する。低湿度または無加湿での運転条件においては、過酸化水素または過酸化物ラジカルにより高分子電解質膜の劣化が進行する。
【0007】
従来の技術では、上記のアノードの逆電圧の課題を解決し、かつ低湿度から高湿度に渡る環境下で高い発電性能を有するような固体高分子形燃料電池用膜電極接合体がなく、開発が求められていた。さらに、このような性能を有する固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を複雑な工程を有さず簡便に生産する技術が求められていた。
【0008】
【特許文献1】国際公開第01/15254号パンフレット
【特許文献2】国際公開第01/15247号パンフレット
【特許文献3】国際公開第01/15255号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、低湿度から高湿度に渡る環境下で高い発電性能を有し、かつ燃料の欠乏が生じた場合においても電極の特性低下が起こりにくい固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記のような固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を簡便に製造する固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体は、アノード触媒とイオン交換樹脂とを含む触媒層を有するアノードと、カソード触媒とイオン交換樹脂とを含む触媒層を有するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置される高分子電解質膜とを備え、前記アノード触媒は、カーボン担体に白金または白金合金が担持されたものであり、前記アノード触媒の白金または白金合金の担持量が1〜25質量%であり、前記アノードの触媒層中に、酸化イリジウム、イリジウム、酸化ルテニウム、ルテニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つからなる微粒子を含み、該微粒子の比表面積が2〜50m/gであることを特徴とする。
【0011】
本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法は、アノード触媒とイオン交換樹脂とを含む触媒層を有するアノードと、カソード触媒とイオン交換樹脂とを含む触媒層を有するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置される高分子電解質膜とを備えた固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法において、前記アノードの触媒層は、前記アノード触媒と、微粒子と、イオン交換樹脂と、を混合して調製した塗工液を用いて形成され、前記アノード触媒は、カーボン担体に白金または白金合金が担持されたものであり、前記アノード触媒の白金または白金合金の担持量が1〜25質量%であり、前記微粒子は、酸化イリジウム、イリジウム、酸化ルテニウム、ルテニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つからなり、比表面積が2〜50m/gであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体は、低湿度から高湿度に渡る環境下で高い発電性能を有し、かつ燃料の欠乏が生じた場合においても電極の特性低下が起こりにくい。
【0013】
本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法は、低湿度から高湿度に渡る環境下で高い発電性能を有し、かつ燃料の欠乏が生じた場合においても電極の特性低下が起こりにくい固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を簡便に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
【0015】
<固体高分子形燃料電池用膜電極接合体>
図1は、本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体(以下、膜電極接合体と記す。)の一例を示す概略断面図である。膜電極接合体10は、アノード触媒層11およびアノードガス拡散層12を有するアノード15と、カソード触媒層13およびカソードガス拡散層14を有するカソード16と、アノード15とカソード16との間に、アノード触媒層11とカソード触媒層13に接した状態で介在する高分子電解質膜17とを具備する。
【0016】
<アノード触媒層>
アノード触媒層11は、アノード触媒とイオン交換樹脂を含む。アノード触媒は、カーボン担体に白金または白金合金が担持された電極触媒である。本発明においては、アノード触媒(100質量%)のうち白金または白金合金の担持量が1〜25質量%である。アノード触媒(100質量%)のうち白金または白金合金の担持量は、好ましくは1〜21質量%であり、さらに好ましくは、3〜21質量%である。白金または白金合金の担持率としては、1質量%以上になると、水素と十分に反応させることができる。
【0017】
さらに、アノード触媒層11の厚さを抑えて白金または白金合金のアノード触媒層11の厚さ方向での分布を抑えることができ、出力電圧の低下を抑えることができる。25質量%以下とすることで、担持される白金または白金合金の粒子径が小さくなり有効反応面積を大きくすることができる。さらに白金または白金合金の使用量を少なくすることでコストを低減させることができる。
【0018】
白金合金としては、白金を除く白金族の金属(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム)、金、銀、クロム、鉄、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、およびスズからなる群から選ばれる1種以上の金属と白金との合金が好ましい。該白金合金には、白金と合金化される金属と、白金との金属間化合物が含まれていてもよい。
【0019】
本発明では、カーボン担体に白金が担持されたものであることが好ましく、これにより、水素とより十分に反応させることができ、出力電圧をさらに高めることができる。
【0020】
カーボン担体は、[002]面の平均格子面間隔d002が0.335〜0.390nmであり、かつ比表面積が100〜1500m/gであることが好ましい。本発明においては、グラファイト化度の高いカーボン担体あるいはアモルファス性の高いカーボン担体いずれも用いることができるが、特に燃料欠乏時におけるカーボンの腐食耐性が求められるので、d002が0.335〜0.362nmであり、かつ比表面積が100〜300m/gであるグラファイト化度が高いカーボン担体を用いることが好ましい。
【0021】
カーボン担体のd002は、粉末X線回折装置を使って測定することができ、電極触媒粉末をサンプルとしてセットし、その回折パターンからカーボン担体のd002を算出する。カーボン担体の比表面積は、BET比表面積装置によりカーボン表面への窒素吸着により測定することが可能である。
【0022】
アノード触媒層11には、酸化イリジウム、イリジウム、酸化ルテニウム、ルテニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つからなる比表面積が2〜50m/gの微粒子が含まれる。酸化イリジウム、イリジウム、酸化ルテニウム、ルテニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つからなる微粒子の比表面積は、好ましくは2〜40m/gであり、さらに好ましくは、2〜20m/gである。
【0023】
微粒子の比表面積の測定方法としては、一般的にBET吸着測定法が用いることができる。この測定法は、粉体粒子表面に吸着占有面積の判った分子を液体窒素温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法である。最も良く用いられるのが不活性気体の低温低湿物理吸着によるBET法である。気体としては、取り扱いが容易である窒素ガスを用いることが多い。
【0024】
なお、酸化イリジウム、イリジウム、酸化ルテニウム、ルテニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つからなる微粒子は、若干の不純物を含んでいたり、水和物を形成していたりしたとしても本発明の効果を有する。
【0025】
酸化イリジウム、イリジウム、酸化ルテニウム、ルテニウムは、酸化物の場合、表面に−OH基等の官能基が形成されており、非常に水との親和性が高く、また、イリジウム、ルテニウムも同様に金属材料であるため、非常に水との親和性が高い。微粒子の表面積を2m/g以上にすることで、適度な水分を保持しつつ微粒子の水電解触媒作用に寄与する反応面積が確保することができ、高分子電解質膜の劣化を抑えて十分な出力電圧、十分な燃料欠乏耐性を得ることができる。また、微粒子の比表面積を50m/g以下にすることにより、微粒子が水を取り込みすぎないようにしてフラッディング現象の発生を抑えることができ、高湿度時の発電特性を良好にすることができる。
【0026】
本発明は、アノード触媒が、カーボン担体に白金または白金合金が担持されたものであり、アノード触媒の白金または白金合金の担持量が1〜25質量%であることから、従来技術に比べ白金または白金合金に対して担体カーボンの比率が高い。担体カーボンは、上述の酸化イリジウム、イリジウム、酸化ルテニウム、ルテニウムに比べると疎水性であることからフラッディング現象の発生を抑えることができる。
【0027】
本発明の膜電極接合体10は、白金または白金合金の担持量を下げて担体カーボンの比率を高めることによりアノード触媒層11に疎水性をもたせ、比表面積が2〜50m/gの微粒子により適度な親水性と高い水電解触媒作用をもたせることにより、低加湿運転では高分子電解質膜の劣化を抑え、高加湿運転ではフラッディング現象を抑えることで、低加湿運転から高加湿運転において発電特性を高め、さらに、燃料の欠乏が生じた場合においても電極の特性低下が起こりにくいという性能を有する。
【0028】
本発明の膜電極接合体10は、アノード触媒層11の厚さが1〜30μmであり、酸化イリジウム、イリジウム、酸化ルテニウム、ルテニウムから選ばれる少なくとも1つからなる微粒子の金属換算量での金属含有量(M)(mg/cm)が0.01〜0.09mg/cmであることが好ましく、より好ましくは、0.01〜0.05mg/cmである。この範囲にすることで、低湿度から高湿度に渡る環境下で発電性能をより一層高めることができ、さらに、燃料の欠乏が生じた場合においても電極の特性低下をさらに起こりにくくすることができる。すなわち、アノード触媒層11の厚さを1〜30μmとし、微粒子の金属換算量での金属含有量(M)(mg/cm)を0.01mg/cm以上にすることで適度に水分を保持し、燃料欠乏時におけるアノード触媒層11の劣化をより一層抑えることができ、さらに、0.09mg/cm以下にすることで、微粒子の強い水保持性能による水の必要以上の保持を抑えてフラッディングを抑制し、高湿条件での発電性能をさらに向上させることができる。また、本発明で用いる酸化イリジウム、イリジウム、酸化ルテニウム、ルテニウムは、希少であることから、0.09mg/cm以下にすることでコストを低減することもできる。
【0029】
アノード触媒層11の厚みを1μm以上とすることで、アノード触媒層11の均一性を高めることができ、反応の均一化をさらに高めることができ、安定した発電性能を得ることができると同時に品質面でも有利である。アノード触媒層11の厚みを30μm以下とすることで、アノード15で生成するHが移動する距離を短くすることができるので、発電性能をさらに向上させることができる。また厚みを抑えることにより、アノード触媒層11にクラックが発生するのを抑え、より長期的に性能の安定した膜電極接合体とすることができる。
【0030】
本発明は、アノード触媒中のカーボン担体の含有量(C)(mg/cm)と前記微粒子の金属換算量での金属含有量(M)(mg/cm)との比(C)/(M)が30/1〜2/1であることが好ましい。(C)/(M)を30/1以上にすることで、微粒子の水電解触媒作用をより一層届きやすくすることができ、燃料欠乏耐性をより一層高めることができる。また、(C)/(M)を2/1以下にすることで、微粒子の強い水保持性能による水の必要以上の保持を抑えて、高湿条件での発電性能をより一層向上させることができる。
【0031】
イオン交換樹脂としては、含フッ素重合体、炭化水素系重合体等が挙げられ、耐久性の点から含フッ素重合体が好ましい。
【0032】
含フッ素重合体としては、パーフルオロカーボン重合体(エーテル性酸素原子を含んでいてもよい。)が好ましく、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位と、スルホン酸基を有するパーフルオロビニルエーテルに基づく繰り返し単位とを含む共重合体が特に好ましい。
【0033】
スルホン酸基を有するパーフルオロビニルエーテルに基づく繰り返し単位を形成するモノマーとしては、化合物(1)が好ましい。
【0034】
CF=CF(OCFCFX)−O−(CF−SOF ・・・(1)。
【0035】
ただし、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0または1であり、XはFまたはCFである。
【0036】
化合物(1)としては、化合物(1−1)〜(1−3)が好ましい。
【0037】
CF=CFO(CFSOF ・・・(1−1)、
CF=CFOCFCF(CF)O(CFSOF ・・・(1−2)、
CF=CF(OCFCF(CF))O(CFSOF ・・・(1−3)。
【0038】
ただし、q、r、sは1〜8の整数であり、tは1〜3の整数である。なお、−SOF基は、重合後に加水分解および酸型化によってスルホン酸基に変換される。
【0039】
スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体の場合、重合後にフッ素化することにより重合体の末端がフッ素化処理されたものであってもよい。重合体の末端がフッ素化されていると、より過酸化水素や過酸化物ラジカルに対する安定性に優れるため、耐久性が向上する。
【0040】
炭化水素系重合体としては、スルホン化ポリアリーレン、スルホン化ポリベンゾオキサゾール、スルホン化ポリベンゾチアゾール、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリフェニレンスルホン、スルホン化ポリフェニレンオキシド、スルホン化ポリフェニレンスルホキシド、スルホン化ポリフェニレンサルファイド、スルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホン、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルケトンケトン、スルホン化ポリイミド等が挙げられる。
【0041】
イオン交換樹脂のイオン交換容量は、導電性およびガス透過性の点から、0.5〜2.0ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、0.8〜1.5ミリ当量/g乾燥樹脂が特に好ましい。
【0042】
<カソード触媒層>
カソード触媒層13は、カソード触媒とイオン交換樹脂を含む。カソード触媒としては、担体カーボンに白金または白金合金が担持されたカソード触媒を使用する。担体カーボンとしては、比表面積が100〜1000m/gであり、一般的なカーボンブラックを用いることができる。
【0043】
白金または白金合金については、アノード触媒層11で用いることができる白金または白金合金を用いることができる。
【0044】
イオン交換樹脂については、アノード触媒層11で用いることができるイオン交換樹脂を用いることができる。
【0045】
また、カソード触媒層13に用いるカソード触媒の触媒金属担持率は、アノード触媒層11に用いるアノード触媒の金属担持率よりも1〜40%高い方が好ましい。カソードの反応は、酸素の還元反応であり、非常に反応が起こりにくく過電圧が大きいので、通常はアノードに用いる触媒である白金使用量よりも多くした方がセル電圧を高くすることができる。このことにより、カソード触媒層13に用いるカソード触媒の金属担持率は、アノード触媒層11に用いるアノード触媒の金属担持率よりも高くすることが好ましい。
【0046】
<ガス拡散層>
アノードガス拡散層12、カソードガス拡散層14としては、カーボンクロス、カーボンペーパー、カーボンフェルト等を用いることができる。アノードガス拡散層12、カソードガス拡散層14は、ポリテトラフルオロエチレン等によって撥水処理されていることが好ましい。
【0047】
<固体高分子電解質膜>
高分子電解質膜17としては、イオン交換樹脂膜が挙げられる。イオン交換樹脂としては、アノード触媒層11、カソード触媒層13で用いることができるイオン交換樹脂を用いることができる。
【0048】
<膜電極接合体の製造方法>
本発明の膜電極接合体の製造方法は、アノード触媒と、酸化イリジウム、イリジウム、酸化ルテニウム、ルテニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つからなる微粒子と、イオン交換樹脂とを含む塗工液を調製し、その塗工液を用いてアノード触媒層11を形成する。酸化イリジウム、イリジウム、酸化ルテニウム、ルテニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つからなる物質をアノード触媒のカーボン担体に担持するのではなく、比表面積が2〜50m/gの微粒子の状態で塗工液に混合させるという方法にすることより、担持工程を省略することができる。これにより膜電極接合体を簡便に製造することができ、低コスト化を図ることができる。
【0049】
アノード触媒層11、カソード触媒層13は、塗工液を基材上に塗工することにより形成することができる。基材としては、ポリマーフィルム、高分子電解質膜17、アノードガス拡散層12、カソードガス拡散層14が用いられる。ポリマーフィルムとしては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等のフィルムシートが挙げられる。
【0050】
基材としてポリマーフィルムを用いた場合、基材上に形成されたアノード触媒層11を高分子電解質膜17にホットプレス等により転写した後、ポリマーフィルムを剥離し、アノード触媒層11とアノードガス拡散層12と貼り合わせる。さらに基材上に形成されたカソード触媒層13を高分子電解質膜17の反対の面にホットプレス等により転写した後、ポリマーフィルムを剥離し、カソード触媒層13とカソードガス拡散層14と貼り合わせることにより、膜電極接合体10が得られる。
【0051】
また、基材上に形成されたアノード触媒層11をアノードガス拡散層12表面にホットプレス等により転写した後、ポリマーフィルムを剥離し、高分子電解質膜17と貼り合わせる。さらに、基材上に形成されたカソード触媒層13をカソードガス拡散層14表面にホットプレス等により転写した後、ポリマーフィルムを剥離し、高分子電解質膜17と貼り合わせることにより、膜電極接合体10が得られる。
【0052】
基材として高分子電解質膜17を用いた場合、高分子電解質膜17上に形成されたアノード触媒層11、カソード触媒層13にアノードガス拡散層12、カソードガス拡散層14を貼り合わせることにより、膜電極接合体10が得られる。
【0053】
基材としてアノードガス拡散層12、カソードガス拡散層14を用いた場合、アノードガス拡散層12上に形成されたアノード触媒層11と、カソードガス拡散層14上に形成されたカソード触媒層13とを高分子電解質膜17とを貼り合わせることにより、膜電極接合体10が得られる。
【0054】
また、ポリマーフィルム上に塗工液を塗工してアノード触媒層11を形成し、その上に高分子電解質膜形成用のポリマー溶液を塗工して高分子電解質膜17を形成し、さらに高分子電解質膜17上に塗工液を塗工してカソード触媒層13を形成し、その後にアノード触媒層11、カソード触媒層13上にアノードガス拡散層12、カソードガス拡散層14を貼り付けることにより、膜電極接合体10が得られる。
【0055】
塗工液の溶媒としては、水、アセトン、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、エチレングリコール、ペンタフルオロエタノール、ヘプタフルオロブタノールなどのアルコール類、またはそれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0056】
塗工液には、電極反応で生成する水の排出性を高めること、触媒層自体の形状安定性を保持すること、塗工時の塗工むらの改善、塗工安定性等を高めることを目的として、必要に応じて撥水剤、造孔剤、増粘剤、希釈溶媒等を添加してもよい。
【0057】
塗工液には、塗工安定性を向上させるために、必要に応じて分散処理を施してもよい。分散処理としては、ボールミル粉砕、ホモジナイザー粉砕、遊星ミル粉砕、超音波粉砕等が挙げられる。
【0058】
塗工方法としては、アプリケータ、バーコータ、ダイコータ等を用いる方法;スクリーン印刷法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗工液を基材上に塗工した後、乾燥させて触媒層を形成する。塗膜の乾燥温度は、60〜100℃が好ましい。
【0059】
このようにして製造された膜電極接合体10の両面に、ガスの流路となる溝が形成されたセパレータを配置することにより、固体高分子形燃料電池が得られる。セパレータとしては、金属製セパレータ、カーボン製セパレータ、黒鉛と樹脂を混合した材料からなるセパレータ等、各種導電性材料からなるセパレータが挙げられる。
【0060】
該固体高分子形燃料電池においては、カソードに酸素を含むガス、アノードに水素を含むガスを供給することにより、発電が行われる。
【0061】
本発明においては、アノード触媒層11、カソード触媒層13中に繊維状炭素が混合されていてもよい。すなわち、カソード16における高電位条件下でカーボン担体の酸化反応が進行してカーボン腐食反応が進行し、白金または白金合金がイオン交換樹脂中に遊離した状態になってしまっても、白金または白金合金と、電子伝導性を有する繊維状炭素との接触が取れているため、電極反応が可能であり、高い電圧を長期間維持できる。また、繊維状炭素は、通常、グラファイト化の度合いが高いため、酸化腐食耐性に非常に優れている。
【0062】
アノード15においても、水素の供給が不充分となった場合、所定の電流密度を維持するため、水素の酸化反応の代わりに、担体カーボンの酸化反応が起こる可能性がある。本発明においては、カソード16と同じように、アノード触媒層11中にも繊維状炭素を混合することにより、上述したカソード16と同じ効果が得られる。
【実施例】
【0063】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。例1、7、12、13は比較例であり、例2〜6、例8〜11、例14〜16は実施例である。
【0064】
〔例1〕
I)膜電極接合体(1)の製造方法
<アノード触媒層(1)の形成>
カーボン担体粉末(d0020.339nm、比表面積210m/g)をイオン交換水中に分散させ、塩化第二白金酸水溶液とホルマリンを加えて−10℃に冷却して撹拌した。−10℃の状態で30分間保持した後、これに40%水酸化ナトリウム水溶液をゆっくりと滴下し、1時間還流撹拌した後、ろ過した。
【0065】
次いで、イオン交換水を用いてろ液のpHが7になるまで洗浄操作を繰り返した。その後、80℃で乾燥し、さらに1晩真空乾燥を行い、カーボンに対して白金が20質量%担持された電極触媒を調製した。この電極触媒を粉末X線回折で測定したところ、白金の粒子径は約2.5nmであった。白金が担持されたアノード触媒(白金担持量20質量%)6.0gを、蒸留水76.6gに添加し、よく撹拌した。さらにエタノール12.0gを添加し、よく撹拌した。これに、酸化イリジウム水和物(IrO・(HO)、Ir金属含有率76.2%)0.62gを添加後、さらに、イオン交換容量1.1ミリ当量/g乾燥樹脂、テトラフルオロエチレンに基づく単位とCF=CFOCF(CF)O(CFSOHに基づく単位とからなる共重合体(共重合体(A))をエタノールに分散させた固形分濃度9質量%の液(以下、共重合体(A)のエタノール分散液と記す。)31.6gを添加し、さらに超音波分散装置を用いて混合、粉砕し、塗工液(a)−1を調製した。
【0066】
塗工液(a)−1に含まれる酸化イリジウム水和物微粒子の比表面積はBET吸着測定法で測定したところ、1.5m/gであった。塗工液(a)−1を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させてアノード触媒層(1)を形成した。
【0067】
アノード触媒層(1)を形成する前の基材フィルムのみの質量と、アノード触媒層(1)を形成した後のアノード触媒層(1)および基材フィルムの質量とを測定することにより、アノード触媒層(1)に含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.1mg/cmであった。アノード触媒層(1)の厚みは8μmであり、アノード触媒層(1)の酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)は0.04mg/cmであった。また、電極触媒の担体カーボン(C)(mg/cm)と酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)との比(C)/(M)は、10/1であった。
【0068】
<カソード触媒層(1)の形成>
カーボン担体(d0020.339nm、比表面積210m/g)に白金−コバルト合金(白金−コバルト合金担持量42質量%)が担持された触媒18.0gを、蒸留水94.2gに添加し、よく撹拌した。さらにエタノール12.0gを添加し、よく撹拌した。これに、共重合体(A)のエタノール分散液92.7gを添加し、さらに超音波分散装置を用いて混合、粉砕し、塗工液(b)を調製した。
【0069】
塗工液(b)を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させてカソード触媒層(1)を形成した。カソード触媒層(1)を形成する前の基材フィルムのみの質量と、カソード触媒層(1)を形成した後のカソード触媒層(1)および基材フィルムの質量とを測定することにより、カソード触媒層(1)に含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.4mg/cmであった。カソード触媒層(1)の厚みは16μmであった。
【0070】
<膜電極接合体(1)の製造>
高分子電解質膜として、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなる厚さ30μmのイオン交換膜(イオン交換容量1.1ミリ当量/g乾燥樹脂、テトラフルオロエチレンに基づく単位とCF=CFOCF(CF)O(CFSOHに基づく単位とからなる共重合体)を用意した。
【0071】
高分子電解質膜の片方の面に基材フィルム上に形成されたアノード触媒層(1)が接し、高分子電解質膜のもう片方の面に基材フィルム上に形成されたカソード触媒層(1)が接するように配置した。該積層体をホットプレス法によりプレスし、触媒層を高分子電解質膜に転写した後、各々の基材フィルムを剥離し、電極面積が25cmである、高分子電解質膜とアノード触媒層(1)とカソード触媒層(1)とからなる膜触媒層接合体とし、さらに膜触媒層接合体を、厚さ250μmのカーボンペーパからなるガス拡散層2枚で挟んで膜電極接合体(1)を得た。
【0072】
II)膜電極接合体(1)の性能評価
<初期性能評価>
膜電極接合体(1)を発電用セルに組み込み、常圧にて、水素(利用率70%)/空気(利用率40%)を供給し、セル温度80℃にて、電流密度1.0A/cmにおける初期セル電圧を測定した。ただし、アノード側には露点80℃の水素を供給し、カソード側には露点80℃の空気を供給した。評価結果を表2に示す。
【0073】
さらに、低加湿から高加湿条件でのセル発電特性を評価するため、セル温度は80℃としたまま、セル湿度条件として、アノード側には露点50℃の水素を供給し、カソード側には露点80℃の空気を供給した場合と、アノード側には露点80℃の水素を供給し、カソード側には露点50℃の空気を供給した場合での、電流密度1A/cmにおける初期セル電圧(V)を測定した。評価結果を表2に示す。
【0074】
<燃料欠乏耐性評価>
膜電極接合体(1)を、発電用セルに組み込み、常圧にて、水素(利用率70%)/空気(利用率40%)を供給し、セル温度80℃にて、電流密度1.0A/cmにおける初期セル電圧(初期出力電圧)を測定した。ただし、アノード側には露点80℃の水素を供給し、カソード側には露点80℃の空気を供給した。その後、アノード側のみ供給するガスを水素から窒素に切りかえてアノード側を燃料欠乏状態として30分間保持し、その後、アノード側に供給するガスを窒素から水素に戻して、30分間後に電流密度1.0A/cmにおけるセル電圧(燃料欠乏耐久性試験後電圧)を測定した。初期出力電圧(V)、燃料欠乏耐久性試験後電圧(V)、初期出力電圧と燃料欠乏耐久性試験後電圧との差△V(V)を表3に示す。
【0075】
〔例2〕
I)膜電極接合体(2)の製造方法
酸化イリジウム水和物(IrO・(HO)、Ir金属含有率76.2%)の添加量を0.30gとし、酸化イリジウム水和物微粒子の比表面積が8.0m/gとなるように塗工液を調製した以外は、例1の塗工液(a)−1の製造方法と同様にして、塗工液(a)−2を調製した。
【0076】
塗工液(a)−2を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させてアノード触媒層(2)を形成した。アノード触媒層(2)の厚み、酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)、電極触媒の担体カーボン(C)(mg/cm)と酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)との比率(C)/(M)を表1に示す。
【0077】
アノード触媒層(1)を、アノード触媒層(2)に変更した以外は、例1の膜電極接合体(1)と同様の製造方法で膜電極接合体(2)を得た。
【0078】
II)膜電極接合体(2)の性能評価
膜電極接合体(2)の加湿条件を変えたときの初期性能評価、膜電極接合体の燃料欠乏耐性評価を例1と同様の方法で行った。評価結果を表2、表3に示す。
【0079】
〔例3〕
I)膜電極接合体(3)の製造方法
酸化イリジウム水和物微粒子の比表面積が10m/gとなるように塗工液を調製した以外は、例1の塗工液(a)−1の製造方法と同様にして、塗工液(a)−3を調製した。
【0080】
塗工液(a)−3を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させてアノード触媒層(3)を形成した。アノード触媒層(3)の厚み、酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)、電極触媒の担体カーボン(C)(mg/cm)と酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)との比率(C)/(M)を、表1に示す。
【0081】
アノード触媒層(1)を、アノード触媒層(3)に変更した以外は、例1の膜電極接合体(1)と同様の製造方法で膜電極接合体(3)を得た。
【0082】
II)膜電極接合体(3)の性能評価
膜電極接合体(3)の加湿条件を変えたときの初期性能評価、膜電極接合体の燃料欠乏耐性評価を例1と同様の方法で行った。評価結果を表2、表3に示す。
【0083】
〔例4〕
I)膜電極接合体(4)の製造方法
酸化イリジウム水和物(IrO・(HO)、Ir金属含有率76.2%)の添加量を0.31gとし、酸化イリジウム水和物微粒子の比表面積が10m/gとなるように塗工液を調製した以外は、例1の塗工液(a)−1の製造方法と同様にして、塗工液(a)−4を調製した。
【0084】
塗工液(a)−4を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させてアノード触媒層(4)を形成した。
【0085】
アノード触媒層(4)の厚み、酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)、電極触媒の担体カーボン(C)(mg/cm)と酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)との比率(C)/(M)を、表1に示す。
【0086】
アノード触媒層(1)を、アノード触媒層(4)に変更した以外は、例1の膜電極接合体(1)と同様の製造方法で膜電極接合体(4)を得た。
【0087】
II)膜電極接合体(4)の性能評価
膜電極接合体(4)の加湿条件を変えたときの初期性能評価、膜電極接合体の燃料欠乏耐性評価を例1と同様の方法で行った。評価結果を表2、表3に示す。
【0088】
〔例5〕
I)膜電極接合体(5)の製造方法
酸化イリジウム水和物(IrO・(HO)、Ir金属含有率76.2%)の添加量を1.24gとし、酸化イリジウム水和物微粒子の比表面積が10m/gとなるように塗工液を調製した以外は、例1の塗工液(a)−1の製造方法と同様にして、塗工液(a)−5を調製した。
【0089】
塗工液(a)−5を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させてアノード触媒層(5)を形成した。
【0090】
アノード触媒層(5)の厚み、酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)、電極触媒の担体カーボン(C)(mg/cm)と酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)との比率(C)/(M)を、表1に示す。
アノード触媒層(1)を、アノード触媒層(5)に変更した以外は、例1の膜電極接合体(1)と同様の製造方法で膜電極接合体(5)を得た。
【0091】
II)膜電極接合体(5)の性能評価
膜電極接合体(5)の加湿条件を変えたときの初期性能評価、膜電極接合体の燃料欠乏耐性評価を例1と同様の方法で行った。評価結果を表2、表3に示す。
【0092】
〔例6〕
I)膜電極接合体(6)の製造方法
酸化イリジウム水和物(IrO・(HO)、Ir金属含有率76.2%)の添加量を0.97gとし、酸化イリジウム水和物微粒子の比表面積が10m/gとなるように塗工液を調製した以外は、例1の塗工液(a)−1の製造方法と同様にして、塗工液(a)−6を調製した。
【0093】
塗工液(a)−6を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させてアノード触媒層(6)を形成した。
【0094】
アノード触媒層(6)の厚み、酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)、電極触媒の担体カーボン(C)(mg/cm)と酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)との比率(C)/(M)を、表1に示す。
【0095】
アノード触媒層(1)を、アノード触媒層(6)に変更した以外は、例1の膜電極接合体(1)と同様の製造方法で膜電極接合体(6)を得た。
【0096】
II)膜電極接合体(6)の性能評価
膜電極接合体(6)の加湿条件を変えたときの初期性能評価、膜電極接合体の燃料欠乏耐性評価を例1と同様の方法で行った。評価結果を表2、表3に示す。
【0097】
〔例7〕
I)膜電極接合体(7)の製造方法
酸化イリジウム水和物微粒子の比表面積が55m/gとなるように塗工液を調製した以外は、例1の塗工液(a)−1の製造方法と同様にして、塗工液(a)−7を調製した。
【0098】
塗工液(a)−7を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させてアノード触媒層(7)を形成した。
【0099】
アノード触媒層(7)の厚み、酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)、電極触媒の担体カーボン(C)(mg/cm)と酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)との比率(C)/(M)を、表1に示す。
【0100】
アノード触媒層(1)を、アノード触媒層(7)に変更した以外は、例1の膜電極接合体(1)と同様の製造方法で膜電極接合体(7)を得た。
【0101】
II)膜電極接合体(7)の性能評価
膜電極接合体(7)の加湿条件を変えたときの初期性能評価、膜電極接合体の燃料欠乏耐性評価を例1と同様の方法で行った。評価結果を表2、表3に示す。
【0102】
〔例8〕
I)膜電極接合体(8)の製造方法
酸化イリジウム水和物微粒子の比表面積が3m/gとなるように塗工液を調製した以外は、例1の塗工液(a)−1の製造方法と同様にして、塗工液(a)−8を調製した。
【0103】
塗工液(a)−3を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させてアノード触媒層(8)を形成した。
【0104】
アノード触媒層(8)の厚み、酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)、電極触媒の担体カーボン(C)(mg/cm)と酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)との比率(C)/(M)を、表1に示す。
【0105】
アノード触媒層(1)を、アノード触媒層(8)に変更した以外は、例1の膜電極接合体(1)と同様の製造方法で膜電極接合体(8)を得た。
【0106】
II)膜電極接合体(8)の性能評価
膜電極接合体(8)の加湿条件を変えたときの初期性能評価、膜電極接合体の燃料欠乏耐性評価を例1と同様の方法で行った。評価結果を表2、表3に示す。
【0107】
〔例9〕
I)膜電極接合体(9)の製造方法
酸化イリジウム水和物微粒子の比表面積が48m/gとなるように塗工液を調製した以外は、例1の塗工液(a)−1の製造方法と同様にして、塗工液(a)−9を調製した。
【0108】
塗工液(a)−9を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させてアノード触媒層(9)を形成した。
【0109】
アノード触媒層(9)の厚み、酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)、電極触媒の担体カーボン(C)(mg/cm)と酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)との比率(C)/(M)を、表1に示す。
【0110】
アノード触媒層(1)を、アノード触媒層(9)に変更した以外は、例1の膜電極接合体(1)同様の製造方法で膜電極接合体(9)を得た。
【0111】
II)膜電極接合体(9)の性能評価
膜電極接合体(9)の加湿条件を変えたときの初期性能評価、膜電極接合体の燃料欠乏耐性評価を例1と同様の方法で行った。評価結果を表2、表3に示す。
【0112】
〔例10〕
I)膜電極接合体(10)の製造方法
例1の白金担持の電極触媒の調製法と同じ方法で、加える塩化第二白金酸水溶液の量を変えることにより、カーボン担体(d0020.339nm、比表面積210m/g)に対して白金が5質量%担持された電極触媒を調製した。この電極触媒を粉末X線回折で測定したところ、白金の粒子径は約2.5nmであった。
【0113】
カーボン担体(d0020.339nm、比表面積210m/g)に白金(白金担持量5質量%)が担持された触媒5.1gを用い、酸化イリジウム水和物微粒子の比表面積が10m/gとなるように塗工液を調製した以外は、例1の塗工液(a)−1の製造方法と同様にして、塗工液(a)−10を調製した。
【0114】
塗工液(a)−10を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させてアノード触媒層(10)を形成した。
【0115】
アノード触媒層(10)の厚み、酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)、電極触媒の担体カーボン(C)(mg/cm)と酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)との比率(C)/(M)を、表1に示す。
【0116】
アノード触媒層(1)を、アノード触媒層(10)に変更した以外は、例1の膜電極接合体(1)と同様の製造方法で膜電極接合体(10)を得た。
【0117】
II)膜電極接合体(10)の性能評価
膜電極接合体(10)の加湿条件を変えたときの初期性能評価、膜電極接合体の燃料欠乏耐性評価を例1と同様の方法で行った。評価結果を表2、表3に示す。
【0118】
〔例11〕
I)膜電極接合体(11)の製造方法
例1の白金担持カーボン触媒の調製法と同じ方法で、加える塩化第二白金酸水溶液の量を変えることにより、カーボン担体(d0020.339nm、比表面積210m/g)に対して白金が10質量%担持された電極触媒を調製した。この電極触媒を粉末X線回折で測定したところ、白金の粒子径は約2.3nmであった。
【0119】
カーボン担体(d0020.339nm、比表面積210m/g)に白金(白金担持量10質量%)が担持された触媒5.4gを用い、酸化イリジウム水和物微粒子の比表面積が10m/gとなるように塗工液を調製した以外は、例1の塗工液(a)−1の製造方法と同様にして、塗工液(a)−11を調製した。
【0120】
塗工液(a)−11を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させてアノード触媒層(11)を形成した。
【0121】
アノード触媒層(11)の厚み、酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)、電極触媒の担体カーボン(C)(mg/cm)と酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)との比率(C)/(M)を、表1に示す。
【0122】
アノード触媒層(1)を、アノード触媒層(11)に変更した以外は、例1の膜電極接合体(1)同様の製造方法で膜電極接合体(11)を得た。
【0123】
II)膜電極接合体(11)の性能評価
膜電極接合体(11)の加湿条件を変えたときの初期性能評価、膜電極接合体の燃料欠乏耐性評価を例1と同様の方法で行った。評価結果を表2、表3に示す。
【0124】
〔例12〕
I)膜電極接合体(12)の製造方法
例1の白金担持カーボン触媒の調製法と同じ方法で、加える塩化第二白金酸水溶液の量を変えることにより、カーボン担体(d0020.339nm、比表面積210m/g)に対して白金が30質量%担持された電極触媒を調製した。この電極触媒を粉末X線回折で測定したところ、白金の粒子径は約2.7nmであった。
【0125】
カーボン担体(d0020.339nm、比表面積210m/g)に白金(白金担持量30質量%)が担持された触媒6.0gを用い、酸化イリジウム水和物微粒子の比表面積が10m/gとなるように塗工液を調製した以外は、例1の塗工液(a)−1の製造方法と同様にして、塗工液(a)−12を調製した。
【0126】
塗工液(a)−12を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させてアノード触媒層(12)を形成した。
【0127】
アノード触媒層(12)の厚み、酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)、電極触媒の担体カーボン(C)(mg/cm)と酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)との比率(C)/(M)を、表1に示す。
【0128】
アノード触媒層(1)を、アノード触媒層(12)に変更した以外は、例1の膜電極接合体(1)と同様の製造方法で膜電極接合体(12)を得た。
【0129】
II)膜電極接合体(12)の性能評価
膜電極接合体(12)の加湿条件を変えたときの初期性能評価、膜電極接合体の燃料欠乏耐性評価を例1と同様の方法で行った。評価結果を表2、表3に示す。
【0130】
〔例13〕
I)膜電極接合体(13)の製造方法
例1の白金担持カーボン触媒の調製法と同じ方法で、加える塩化第二白金酸水溶液の量を変えることにより、カーボン担体(d0020.339nm、比表面積210m/g)に対して白金が0.5質量%担持された電極触媒を調製した。この電極触媒を粉末X線回折で測定したところ、白金の粒子径は約2.1nmであった。
【0131】
カーボン担体(d0020.339nm、比表面積210m/g)に白金(白金担持量0.5質量%)が担持された触媒4.9gを用い、酸化イリジウム水和物微粒子の比表面積が10m/gとなるように塗工液を調製した以外は、例1の塗工液(a)−1の製造方法と同様にして、塗工液(a)−13を調製した。
【0132】
塗工液(a)−13を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させてアノード触媒層(13)を形成した。
【0133】
アノード触媒層(13)の厚み、酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)、電極触媒の担体カーボン(C)(mg/cm)と酸化イリジウム水和物中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)との比率(C)/(M)を、表1に示す。
【0134】
アノード触媒層(1)を、アノード触媒層(13)に変更した以外は、例1の膜電極接合体(1)と同様の製造方法で膜電極接合体(13)を得た。
【0135】
II)膜電極接合体(13)の性能評価
膜電極接合体(13)の加湿条件を変えたときの初期性能評価、膜電極接合体の燃料欠乏耐性評価を例1と同様の方法で行った。評価結果を表2、表3に示す。
【0136】
〔例14〕
I)膜電極接合体(14)の製造方法
酸化イリジウム水和物(IrO・(HO)、Ir金属含有率76.2%)0.62gを酸化ルテニウム(RuO、Ru金属含有率76.0%)0.62gに変更し、酸化ルテニウム微粒子の比表面積が10m/gとなるように塗工液を調製した以外は、例1の塗工液(a)−1の製造方法と同様にして、塗工液(a)−14を調製した。
【0137】
塗工液(a)−14を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させてアノード触媒層(14)を形成した。
【0138】
アノード触媒層(14)の厚み、酸化ルテニウム中のルテニウム金属量(M)(mg/cm)、電極触媒の担体カーボン(C)(mg/cm)と酸化ルテニウム中のルテニウム金属量(M)(mg/cm)との比率(C)/(M)を、表1に示す。
【0139】
アノード触媒層(1)を、アノード触媒層(14)に変更した以外は、例1の膜電極接合体(1)と同様の製造方法で膜電極接合体(14)を得た。
【0140】
II)膜電極接合体(14)の性能評価
膜電極接合体(14)の加湿条件を変えたときの初期性能評価、膜電極接合体の燃料欠乏耐性評価を例1と同様の方法で行った。評価結果を表2、表3に示す。
【0141】
〔例15〕
I)膜電極接合体(15)の製造方法
酸化イリジウム水和物(IrO・(HO)、Ir金属含有率76.2%)0.62gをイリジウム微粒子粉末0.47gに変更し、イリジウム微粒子の比表面積が10m/gとなるように塗工液を調製した以外は、例1の塗工液(a)−1の製造方法と同様にして、塗工液(a)−15を調製した。
【0142】
塗工液(a)−15を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させてアノード触媒層(15)を形成した。
【0143】
アノード触媒層(15)の厚み、イリジウム微粒子中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)、電極触媒の担体カーボン(C)(mg/cm)とイリジウム微粒子中のイリジウム金属量(M)(mg/cm)との比率(C)/(M)を、表1に示す。
【0144】
アノード触媒層(1)を、アノード触媒層(15)に変更した以外は、例1の膜電極接合体(1)と同様の製造方法で膜電極接合体(15)を得た。
【0145】
II)膜電極接合体(15)の性能評価
膜電極接合体(15)の加湿条件を変えたときの初期性能評価、膜電極接合体の燃料欠乏耐性評価を例1と同様の方法で行った。評価結果を表2、表3に示す。
【0146】
〔例16〕
I)膜電極接合体(16)の製造方法
酸化イリジウム水和物(IrO・(HO)、Ir金属含有率76.2%)0.62gをルテニウム微粒子粉末0.46gに変更し、ルテニウム微粒子の比表面積が10m/gとなるように塗工液を調製した以外は、例1の塗工液(a)−1の製造方法と同様にして、塗工液(a)−16を調製した。
【0147】
塗工液(a)−16を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させてアノード触媒層(16)を形成した。
【0148】
アノード触媒層(16)の厚み、ルテニウム微粒子中のルテニウム金属量(M)(mg/cm)、電極触媒の担体カーボン(C)(mg/cm)とルテニウム微粒子中のルテニウム金属量(M)(mg/cm)との比率(C)/(M)を、表1に示す。
【0149】
アノード触媒層(1)を、アノード触媒層(16)に変更した以外は、例1の膜電極接合体(1)と同様の製造方法で膜電極接合体(16)を得た。
【0150】
II)膜電極接合体(16)の性能評価
膜電極接合体(16)の加湿条件を変えたときの初期性能評価、膜電極接合体の燃料欠乏耐性評価を例1と同様の方法で行った。評価結果を表2、表3に示す。
【0151】
【表1】

【0152】
【表2】

【0153】
【表3】

【0154】
表2の評価結果から、本発明の膜電極接合体は、低加湿から高加湿まで幅広い湿度範囲で電圧も高く安定した発電ができていることがわかる。
【0155】
表3の評価結果から、本発明の膜電極接合体は、燃料の欠乏が生じた場合においても電極の特性低下を起こしがたいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を用いることにより、低湿度から高湿度に渡る環境下で高い発電性能を有し、かつ燃料の欠乏が生じた場合においても電極の特性低下が起こりにくい固体高分子形燃料電池が得られることから、さまざまな環境下で使用され高い発電性能が要求される車載用電源等に適する。
【0157】
また、本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法により、低湿度から高湿度に渡る環境下で高い発電性能を有し、かつ燃料の欠乏が生じた場合においても電極の特性低下が起こりにくくなる固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を簡便に製造することができ、コスト的にも有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】本発明の膜電極接合体の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0159】
10:膜電極接合体
11:アノード触媒層
12:アノードガス拡散層
13:カソード触媒層
14:カソードガス拡散層
15:アノード
16:カソード
17:固体高分子電解質膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード触媒とイオン交換樹脂とを含むアノード触媒層を有するアノードと、カソード触媒とイオン交換樹脂とを含むカソード触媒層を有するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置される高分子電解質膜とを備え、
前記アノード触媒は、カーボン担体に白金または白金合金が担持されたものであり、前記アノード触媒の白金または白金合金の担持量が1〜25質量%であり、
前記アノード触媒層中に、酸化イリジウム、イリジウム、酸化ルテニウム、ルテニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つからなる微粒子を含み、該微粒子の比表面積が2〜50m/gであることを特徴とする固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
【請求項2】
前記アノード触媒層の厚さが1〜30μmであり、前記微粒子の金属換算量での含有量(M)(mg/cm)が0.01〜0.09mg/cmであることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
【請求項3】
前記アノード触媒中のカーボン担体の含有量(C)(mg/cm)と前記微粒子の金属換算量での金属含有量(M)(mg/cm)との比(C)/(M)が30/1〜2/1であることを特徴とする請求項1または2に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
【請求項4】
前記アノード触媒は、カーボン担体に白金が担持されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
【請求項5】
アノード触媒とイオン交換樹脂とを含むアノード触媒層を有するアノードと、カソード触媒とイオン交換樹脂とを含むカソード触媒層を有するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置される高分子電解質膜とを備えた固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法において、
前記アノード触媒層は、前記アノード触媒と、微粒子と、イオン交換樹脂と、を含む塗工液を調製し、該塗工液を用いて形成し、
前記アノード触媒は、カーボン担体に白金または白金合金が担持されたものであり、前記アノード触媒の白金または白金合金の担持量が1〜25質量%であり、
前記微粒子は、酸化イリジウム、イリジウム、酸化ルテニウム、ルテニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つからなり、比表面積が2〜50m/gである、ことを特徴とする固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
【請求項6】
前記アノード触媒層を、厚さが1〜30μm、前記微粒子の金属換算量での含有量(M)が0.01〜0.09mg/cmになるように形成することを特徴とする請求項5に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
【請求項7】
前記アノード触媒層は、前記アノード触媒中のカーボン担体の含有量(C)(mg/cm)と前記微粒子の金属換算量での金属含有量(M)(mg/cm)との比(C)/(M)が30/1〜2/1となるように形成することを特徴とする請求項5または6に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
【請求項8】
前記アノード触媒は、カーボン担体に白金が担持されたものであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−152143(P2009−152143A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330890(P2007−330890)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】