説明

固化材振動注入工法及びその装置

【課題】対象地盤に固化材を注入し地盤強化を行う工法において、固化材を地盤中の細かい間隙にまで満遍なく充填する。
【解決手段】固化材振動注入工法であって対象地盤に予め形成された固化材充填用空間にスラリー状の固化材を充填する工程と、充填された固化材中において振動を発生することにより固化材を周囲の対象地盤中へ浸透させる工程とを有する。固化材を充填する工程に先立って固化材充填用空間を形成する工程をさらに有する。固化材を充填する工程と振動を発生する工程を同時に行ってもよい。振動の周波数が10〜20kHzまたは超音波域である。対象地盤として道路の路床、道路の路盤または道路下の地盤を含み固化材充填用空間が道路の側面に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、道路路盤・路床等や宅地・斜面等の地盤に固化材を注入することにより地盤強化を図る工法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路交通により発生する振動が地盤を介して周辺の民家や建築物に伝搬することにより、住民が不快感を感じ健康を損なったり建築物の構造に悪影響を及ぼしたりするなど、種々の問題を生じていた。振動の程度は、道路構造自体や道路下に存在する地盤の強弱にも影響され、軟弱地盤であるほどより大きな振動が沿道に伝搬しやすくなる。
【0003】
このような道路交通振動を低減または抑制するための幾つかの技術が提示されている。
特許文献1は、舗装部分を振動軽減用弾性部材により支持することにより振動を吸収する道路構造を開示している。
特許文献2は、道路側面に掘削した充填穴に固化材を含むソイルモルタルと弾性材との混練物を充填し固化させることにより振動の伝搬を抑制する地中壁を形成する工法を開示している。
特許文献3は、道路側面に沿って地中空隙構造柱を列状に地中に埋設する柱列式地中防振壁の構築方法を開示している。
特許文献4は、道路側面に沿ってケーシングパイプを地盤中に貫入し、その内部にガスクッション体とソイルセメントを充填した振動遮断構造を開示する。
【0004】
上記の特許文献1は、道路交通の振動を道路構造によって抑制するものであり、他にも路盤や路床を強化したり、路面の凹凸による振動を抑制するために路面の剥ぎ取り補修を行ったりする場合がある。上記の特許文献2〜4は、道路交通の振動が地盤を介して周辺へ伝搬することを遮断するために道路側面の地中に構造物を設ける工法である。
【0005】
道路下及びその周囲地盤を強化することも振動対策に有効である。軟弱地盤の改良には、種々の地盤改良工法が知られており、これらを道路交通振動対策のために適用することも有効である。一般的な地盤改良工法としては、地盤中に固化材の薬液を注入し強度を高める工法がある。また、地震の際に液状化し易い砂質土等の軟弱地盤の場合、地盤中に棒状振動体を挿入して土粒子を振動させることにより人為的に液状化を生じさせた上で沈降させ、締め固めを行うバイブロフローテーション工法が知られている(特許文献5等)。
【0006】
なお、土木技術分野での振動発生装置の利用形態としては、振動エネルギーを積極的に利用する場合と、反射波等を検査用に利用する場合とがある。前者には、上記のバイブロフローテーション工法、対象物に振動を与えて影響を調べる振動試験機、振動により杭打ちを行うバイブロハンマ等がある。後者には、探傷用の超音波トランスジューサ等がある。なお、超音波発生技術は広く知られたものである(特許文献6、7等)
【特許文献1】特開2004−92355号公報
【特許文献2】特開2005−9144号公報
【特許文献3】特開2006−45787号公報
【特許文献4】特開2006−118209号公報
【特許文献5】特開平10−159092号公報
【特許文献6】特許第3772601号公報
【特許文献7】特許第3839154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように道路構造自体に振動対策を施す場合は、道路構造が複雑になるために道路施工コストが高くなる。また、既存の道路に振動対策を施す場合や、既存の道路下の地盤を強化する場合は、既存の道路を撤去しなければならず、施工中は道路交通を長期間遮断する必要があり、道路利用者に不便を強いることとなる。
【0008】
特許文献2〜4のように道路側面に振動遮断構造を設ける場合は、道路交通を遮断する必要がない点では好ましいが、種々の構造物の打込みや埋設、特殊な材料の充填や固定を必要とするため工程が複雑でコストが高い。また、道路のように相当の距離に亘って施工する場合は長期間を要する。構造物の打込みや埋設には騒音を伴う場合も多い。
【0009】
なお、特許文献1〜4の工法は、専ら道路交通振動の伝搬を遮断することを目的としており、道路下及び道路周辺の地盤を強化するものではない。
【0010】
また、薬液注入による地盤改良工法では、例えば、対象地盤を削孔した後、ロッド状の薬液注入管を挿入し薬液注入管を引き上げつつその先端部から固化材を含む薬液を高圧噴射することにより削孔の周囲に薬液を注入する。薬液の固化後には、ほぼ柱状の均一な地盤改良体が形成される。
【0011】
ここで、図9は、従来の高圧噴射により固化材1を注入された対象地盤の一部を模式的に示した拡大図である。地盤は、通常、土粒子41と水と空気で構成されており、地盤中には様々な大きさの間隙51、52が無数に存在する。固化材1が高圧で注入されると、比較的大きな間隙51には浸透しやすいが、小さな間隙52には浸透し難い。この結果、所望する形状及び強度の地盤改良体が得られないことがある。
【0012】
さらに、高圧の固化材が予期しない間隙から想定外の領域まで固化材1が入り込んだり、地表に噴出したりすることもある。また、高圧噴射装置が必要であるのでシステム規模が大きくなりコンパクトな施工が困難となる。しかしながら、圧力を下げたり圧力を全くかけなければ、所望する地盤領域に固化材を注入することは不可能であった。
【0013】
以上の問題点に鑑み、本発明は、対象地盤に固化材を注入し地盤強化を行う工法において、固化材を地盤中の細かい間隙にまで満遍なく充填することができる工法を提供することを目的とする。さらに、道路交通振動抑制のために道路下及び道路周辺の地盤強化に適用可能であるように、既存道路を維持したまま簡易にかつ低コストで施工可能な固化材注入工法を提供することを目的とする。また、本発明による工法は、道路下及び道路周辺地盤に限らず、宅地や斜面等の軟弱地盤の強化にも適用可能であるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するべく本発明は、以下の構成を有するものである。
請求項1に係る固化材振動注入工法は、対象地盤に予め形成された固化材充填用空間にスラリー状の固化材を充填する工程と、充填された前記固化材中において振動を発生させ該固化材に振動を付与することにより該固化材を周囲の対象地盤中へ浸透させる工程とを有する。
請求項2に係る固化材振動注入工法は、請求項1においてさらに、前記固化材を充填する工程に先立って前記固化材充填用空間を形成する工程を有する。
請求項3に係る固化材振動注入工法は、請求項1または2において、前記固化材を充填する工程と前記振動発生する工程を同時に行うものである。
請求項4に係る固化材振動注入工法は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記固化材充填用空間が鉛直方向、水平方向、斜め上方向または斜め下方向に延在することを特徴とする。
請求項5に係る固化材振動注入工法は、振動発生装置及び固化材移送管を内蔵しかつ外周面上に掘削羽を設けた棒状振動体を、軸周りに回転させつつ対象地盤内に貫入する工程を有し、貫入する長さの全体に渡ってまたは貫入する長さのうち1又は複数の部分において該固化材移送管を介して該棒状振動体の周囲に固化材を充填しつつ該振動発生装置を駆動して該棒状振動体から振動を発生させ、該固化材及び周囲の対象地盤に振動を付与することにより、該固化材を周囲の対象地盤中へ浸透させることを特徴とする。
請求項6に係る固化材振動注入工法は、請求項5において、前記棒状振動体の貫入する方向が鉛直方向、水平方向、斜め上方向または斜め下方向であることを特徴とする。
請求項7に係る固化材振動注入工法は、請求項1〜6のいずれかにおいて、前記振動の周波数が10〜20kHzである。
請求項8に係る固化材振動注入工法は、請求項1〜6のいずれかにおいて、前記振動の周波数が超音波域である。
請求項9に係る固化材振動注入工法は、請求項1〜8のいずれかにおいて、前記対象地盤として道路の路床、道路の路盤または道路下の地盤を含み、前記固化材充填用空間が道路側面、または道路に隣接した所定区域内に位置する。
【0015】
請求項10に係る固化材振動注入装置は、請求項1〜4のいずれかに記載の固化材振動注入工法に用いるものであって、外管を備えた棒状振動体と、前記棒状振動体の前記外管内に設けた振動発生装置と、前記棒状振動体の前記外管内に内管として設けられ基端側に固化材入口を備え先端側に前記外管の外部に開口する固化材出口を備えた固化材移送管とを有する。
請求項11に係る固化材振動注入装置は、請求項10においてさらに、前記棒状振動体の前記外管の外周面上に設けた掘削羽と、前記棒状振動体を軸周りの双方向に回転可能とする回転駆動手段とを有する。
請求項12に係る固化材振動注入装置は、請求項10または11において、前記振動発生装置の発生する振動の周波数が10〜20kHzである。
請求項13に係る固化材振動注入装置は、請求項10または11において、前記振動発生装置の発生する振動の周波数が超音波域である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の固化材振動注入工法は、対象地盤に予め形成された固化材充填用空間にスラリー状の固化材を充填し、その充填された固化材中において振動を発生させて固化材に振動を付与することにより固化材を周囲の対象地盤中へ浸透させるものである。固化材充填用空間に充填されたスラリー状の固化材中で所定の周波数の振動を発生すると、固化材中の粒子がその周波数で振動させられる。さらに、固化材充填用空間の壁近傍の土粒子もまたその周波数で振動させられ、液状化状態に類似した若干の流動性が付与された状態となる。この結果、壁近傍では土粒子と固化材が自然に混合し合う状態となり、周囲地盤中に固化材が自動的に浸透し拡散していく現象が生じる。この振動を伴う固化材の浸透は、土粒子の非常に細かい間隙にまで及ぶため、結果的に周囲地盤の全方向において均等に固化材が注入されることとなる。
【0017】
従来は、固化材に高圧を付加しなければ周囲地盤へ浸透させることはできず、また、高圧を付加した場合にも大きな間隙に対して集中的に浸入したり、不測の箇所で地表に噴き出したりすることがあり、均等な固化材の注入は実現できなかった。これに対し本発明では、固化材を地盤へ浸透させるために強制的な圧力を付加する必要がないため、大きな間隙にのみ固化材が充填されたり地表へ噴出したりすることがない。
【0018】
また、本発明において既設の固化材充填用空間を利用する場合は、固化材を充填して振動を発生させるのみという簡易な工程であるため、コンパクトなシステムで足り、低コストに施工できる。
【0019】
既設の固化材充填用空間がない場合には、先ず、固化材充填用空間を形成する工程が必要であるが、所望する断面形状及び深度を有する孔や溝を、所望する方向に掘削することは、周知の多様な技術を利用できる。よって、小規模なものから大規模なものまで任意に施工することが可能であり、どのような箇所の対象地盤(例えば、宅地や斜面の軟弱地盤や道路周辺地盤)にも適用可能である。
【0020】
さらに、固化材充填用空間に対し固化材を充填する工程と振動を発生する工程を同時に行う場合は、連続的に施工することができ、また施工時間を短縮できるため効率的である。
【0021】
また、本発明では、振動発生装置及び固化材移送管を内蔵しかつ外周面上に掘削羽を設けた棒状体を、軸周りに回転させて対象地盤内に貫入する工程を有し、貫入する工程において固化材移送管を介して棒状体の周囲に固化材を充填しつつ振動発生装置を駆動して棒状体から振動を発生させ固化材に振動を付与することにより、固化材を周囲の対象地盤中へ浸透させてもよい。この方法は、軟弱地盤に対して適用し易く、固化材充填用空間を予め形成しなくてもよい。また、この方法では、直接、固化材と同時に地盤に振動力を付与することにより、地盤の度粒子が振動していて、かつ固化材が地盤とともに振動することになるため、固化材の振動による浸透拡散を促進し、効率のよい地盤改良が可能となる。この結果、地盤改良する全体積が少なくて済むという利点もある。
【0022】
振動の周波数が10〜20kHzの、低周波域から可聴域に相当する場合は、従来、振動試験機やバイブロハンマ等で用いられてきた種々の振動発生装置の技術を利用することができ、比較的低騒音で施工することができる。
【0023】
また、振動の周波数が超音波域に相当する場合は、従来の超音波発生装置の技術を利用することができる。超音波は、振幅は小さいが高い音圧とエネルギー密度を有するため、固化材粒子及び土粒子を効果的に振動させることができる。また、人間の聴覚では聞こえないため騒音がない。
【0024】
本発明を適用する対象地盤としては、道路の路床、道路の路盤または道路下の地盤が特に効果的である。さらに、固化材充填用空間が道路側面に予め形成されている場合、または固化材充填用空間を道路側面に新たに形成する場合のいずれにおいても、既設道路を撤去することなく施工可能である。固化材充填用空間は、道路側面以外の道路に隣接した所定区画内に設けてもよい。所定区画とは、例えば、道路中央分離帯の空間、道路工事中の安全柵等で仕切られた空間である。従って、道路交通を遮断することがなく道路交通振動対策を行うことができ、道路利用者に不便をかけることもない。また、道路側面に固化材充填用空間を形成して道路交通振動対策工を行った場合、道路下に施工する場合に比べて施工箇所を管理し易いという利点がある。さらにまた、本発明は、低騒音または無騒音であるので道路周辺住民にも負担が少ない。
【0025】
本発明による固化材振動注入装置は、外管を備えた棒状振動体と、この棒状振動体の外管内に設けた振動発生装置と、棒状振動体の外管内に内管として設けられ基端側に固化材入口を備え先端側に外管の外部に開口する固化材出口を備えているた固化材移送管とを有する。本装置は、上記の固化材振動注入工法を実施するに好適である。例えば、予め固化材充填用空間が形成されている場合、本装置を固化材充填用空間に挿入し、固化材移送管の固化材入口にスラリー状の固化材を供給して固化材出口から送出させ固化材充填用空間内に固化材を充填させる。所定量の固化材が充填されたならば、振動発生装置により所定の周波数の振動を発生させる。これにより固化材粒子及び壁近傍の土粒子が振動させられ、固化材が周囲地盤へ浸透し、小さな間隙にまで満遍なく注入されていくことができる。
【0026】
また、固化材振動注入装置が、棒状振動体の前記外管の外周面上に設けた掘削羽と、棒状振動体を軸周りの双方向に回転可能とする回転駆動手段とをさらに有する。固化材振動注入装置が掘削機能を備えることにより、対象地盤の所望する箇所に固化材充填用空間を形成することができる。加えて、掘削に続いて固化材の充填と振動の発生を連続的に行うことができ、効率的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、実施例を示した図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明による固化材振動注入工法を、道路交通振動対策に適用した実施例の模式的な断面構成図である。既設の道路3は層状構造を有しており、一般的に上層から下層へ舗装3a、路盤3b及び路床3cが配置され、道路下には本来の地盤4が存在する。車両5の通過による道路交通振動は、舗装3a、路盤3b及び路床3cから地盤4を介して、沿道の住宅6等へ伝搬する。地盤4が軟弱であるほど道路交通振動は抑制されず、それだけ沿道の建築物や住民に悪影響を及ぼすことになる。
【0028】
図1では、既設道路の側面に沿って従来の防振溝等が既に構築されている場合に、その防振溝等の既存の内部構造を撤去して本工法を実施した状態を示している。先ず、溝の既存の内部構造を撤去し空洞としたものを固化材充填用空間2とする。本工法開始前の固化材充填用空間2の壁面は、対象地盤が露出した状態となっている。この固化材充填用空間2にセメントミルク等のスラリー状の固化材1を充填した後、充填されたスラリー状の固化材1中で振動発生装置を用いて所定の振動を発生する。これにより、固化材に含まれる粒子及び媒体に対し振動エネルギーを付与することができる。さらに、固化材粒子と共振可能な周波数で振動発生させることにより、固化材粒子に対しより大きな振動エネルギーを付与することができる。固化材粒子及び媒体が振動させられることにより固化材の浸透力(浸透圧)が高められ、固化材充填用空間2の壁面を透過して周囲地盤の土粒子の間隙に浸透していく。
【0029】
さらに、振動エネルギーは、固化材充填用空間2の壁近傍の土を構成する土粒子、水及び空気にも付与される。土粒子等が振動させられる結果、局部的に液状化状態に類似した若干の流動性が生じる(但し、土の構造が破壊されるほどの液状化は生じない程度である)。それにより、固化材とその周囲の土粒子との混合が容易となり、固化材が土粒子の間隙に浸入しやすくなる。この土粒子等の振動は、浸入した固化材がさらに遠方に拡散していくことを促進する。
【0030】
図1に示すように、固化材1は、本来の地盤4はもちろんのこと、道路3の各層にも浸透拡散する。道路3の各層もまた所定の粒子から構成されており、その間隙に固化材1が浸透することができるためである。このように、固化材1は、固化材充填用空間2を中心とする全方向に拡散し、注入される。固化材1の固化によって地盤4及び道路3はともに強化され、道路交通振動に対する揺れが低減されるため沿道へ伝搬する道路交通振動が抑制される。
【0031】
ここで、本工法における「対象地盤」は自然の地盤のみに限定されず広く解するものとし、スラリー状の固化材が浸透可能であれば道路やその他の地中構造物等の人工物も含めるものとする。
【0032】
図2は、本発明の固化材振動注入工法により固化材1を注入された対象地盤の一部を模式的に示した拡大図であり、前述の従来工法による図9に対応する図である。本工法によれば、固化材1が、比較的大きな間隙51だけでなく小さな間隙52にも満遍なく注入される。この結果、所望する形状及び強度の地盤改良体が確実に得られる。
【0033】
固化材の浸透力は、地盤を構成する土の構造(密度、間隙比、含水比、土粒子の粒径等)によって異なる。例えば、地盤を構成する土粒子の粒径は、数μm程度の粘土から数十μmの砂、砂礫まで様々でありその構造も多様である。本工法では、その土質に適した振動エネルギー(周波数、振幅、振動加速度により設定)をもつ振動を発生することにより、効果的に固化材を注入することが可能である。例えば、地盤を構成する土質のうち優勢的な土質に適合するように振動エネルギーを調整する。例えば、開削工により固化材充填用空間が形成される場合は、ラジオアイソトープによる現位置での密度の測定、目視による土質の確認が容易である。
【0034】
本工法で用いる固化材の好適例は、セメントと水を混合したセメントミルクであり、その成分割合によって比重を調整することができる。本工法では、固化材の比重に適した振動エネルギー(周波数、振幅、振動加速度により設定)をもつ振動を発生することにより、固化材の浸透力を高め、効果的に固化材を浸透拡散させることが可能である。なお、必要に応じてセメントミルクに対し、さらに適宜の添加剤を混合した固化材を用いてもよい。例えば、焼却灰、粘着剤、混和剤等である。
【0035】
発生する振動エネルギーの大きさは、例えば次のように調整する。基準周波数域(例えば10〜1kHz)から所定の周波数を設定し、振幅及び振動加速度を可変とする。振動方向は、水平振動、鉛直振動、円振動のいずれでもよい。振幅をA、振動角速度をω、周波数をf、円周率をπとしたときの振動速度及び振動加速度は次の通りである。
振動速度 v=A・ω=A・2πf (mm/s)
振動加速度a=A・ω=A・(2πf)(mm/s
【0036】
図3は、本工法の一実施例の各工程を概略的に示す断面構成図である。図3の実施例では、対象地盤4に固化材充填用空間2が予め形成されているものとする。固化材充填用空間2は、例えば図1に示した道路側面における既設の防振溝であり、溝の長手方向は紙面奥行き方向に延びている。
【0037】
図3(A)では、先ず、固化材振動注入装置10を、空洞状態の固化材充填用空間2の底部近傍まで挿入する。固化材振動注入装置10は、本工法に好適な装置であり、固化材充填機能と振動発生機能を備えている。固化材振動注入装置10はロッド状の外管としての棒状振動体11を有し、その内部に振動発生装置15が設けられている。振動発生装置15は、好適には棒状振動体11の先端近傍に設けられているため先端部分を中心に大きな振動加速度で振動する。
【0038】
振動体について補足すると、振動体が緩衝装置(防振装置)を備えていない場合、内蔵された振動発生装置が振動することにより棒状体全体が振動する。通常、振動体は剛体であるが所定の弾性を備えているがため、振動発生装置から遠ざかるにつれて振動が減衰する。
本装置の場合、一例として棒状振動体11の下部に振動発生装置15を配置しているが、下部以外の場所(中央部または上部)に配置してもよく、いずれの場合も基本的に棒状振動体全体が振動する。但し、本装置をクレーン等で吊り下げる場合には、棒状振動体の上部に緩衝装置を介在させることにより、吊りワイヤーを通してクレーン側に振動力が伝搬しないようにすることが一般的である。これにより、緩衝装置を含む棒状振動体上部は振動せず、緩衝装置より下側の棒状振動体全体が振動することとなる。従って、棒状振動体に接する固化材は振動するが、緩衝材より上部に固化材が接する場合は振動しない。
図3の工法例では、深さが有限である固化材充填用空間2の底部近傍まで挿入するため、棒状振動体11の先端近傍に振動発生装置15を設けることが好適である。
【0039】
さらに、外管内には、内管としての固化材移送管12が挿通しており、その基端側には固化材入口13が設けられ、スイベル等のジョイントに取り付けた移送ホースを介して地表に設置された固化材吐出ポンプ及び固化材混合槽(図示せず)へ連結される。固化材移送管12の先端側には外管11の外部に開口する固化材出口14が設けられ適宜のノズルが取り付けられている。なお、図示の例では、固化材出口14が振動発生装置15より上方に設けられているが、下方に設けてもよい。また、固化材出口14は、外管11の周面上ではなく先端面上に開口してもよい。
【0040】
固化材振動注入装置10を固化材充填用空間2に挿入した後、固化材1を供給し、固化材出口14から送出し、固化材充填用空間2内に充填する。なお、地表に設置した固化材吐出ポンプの圧力は、固化材1を固化材出口14から押し出せる程度であればよく、従来工法における固化材を地盤に圧力注入するための圧力に比べれば遙かに低圧(例えば1〜5MPa程度)である。充填されただけでは、固化材1は周囲地盤へは浸透しない。
【0041】
次に、固化材1が適宜の量(例えば、固化材1の液面が振動発生装置15の位置より上となる量)まで充填されたならば、振動発生装置15を駆動し振動を発生させる。これにより、固化材1及び近傍の土粒子が振動させられ、固化材が周囲地盤へ浸透拡散していく。模式的であるが、図3(A)では振動の伝搬を波線で示し、固化材の浸透拡散方向を白矢印で示している。
【0042】
図3(B)は、固化材振動注入装置10を引き上げつつ、固化材充填用空間2内への固化材1の充填及び振動発生を継続している施工途中の状態を示している。このように、固化材振動注入装置10を引き上げつつ施工することにより、固化材1の拡散領域は上方に延びていく。なお、固化材充填用空間2内における固化材1の液面が常に振動発生装置15の位置より上にあるように、すなわち振動発生装置15が常に固化材1中に没しているように、固化材1の供給量を調整し、固化材振動注入装置10の引き上げ速度を調整する。
【0043】
なお、固化材振動注入装置10の引き上げと、固化材1の充填と、振動発生とを全て同時に行ってもよいが、段階的に行ってもよい。すなわち、固化材振動注入装置10の引き上げを停止した状態で固化材1を所定の深度まで充填し、次に装置10を所定の深度まで引き上げて停止させ、その位置で振動発生を行う、という一連の工程を繰り返してもよい。
【0044】
図3(C)は、施工完了した状態を示す。固化材振動注入装置10の先端は、地表より上に引き上げられている。図示の例では、地表近傍まで固化材1の注入領域が柱状に形成され、地表に達する直前に固化材1の充填を終了し、地表近傍部分2aには通常の土を埋め戻しているが、これは任意である。もちろん、地表まで完全に固化材1を充填拡散させてもよい。固化材1の固化によりほぼ固化材充填用空間2の形状に沿った地盤改良体が形成され、対象地盤が強化される。
【0045】
図3の例では、固化材1の注入領域が鉛直方向において連続しているが、鉛直方向において固化材1の浸透拡散領域を断続的に形成してもよい。固化材1の浸透拡散を行わない領域を形成するには、その領域で振動発生装置を停止させればよい。
【0046】
図4は、固化材振動注入装置10の先端部における振動発生装置15の設置例を概略的に示す一部切り欠き断面図である。
図4(A)は、振動発生装置の一例である。固化材振動注入装置10の先端部において棒状振動体11内にモータ15aが固定され、モータ15aから先端側に延びる回転シャフト15bに偏心重錘15cが取り付けられている。モータ15aはモータ駆動源15dから動力が供給される。電動モータの場合は電力が供給され、油圧モータの場合は流体圧力が供給されることによりモータが回転し、回転シャフト15bと共に偏心重錘15cが回転する。偏心重錘15cの回転により起振力が発生し、棒状振動体11全体が振動する。この場合、回転振動となり、振動周波数は、数十Hz程度の範囲である。
【0047】
図示しないが、別の振動発生装置としては、油圧ピストンを高速往復動させて一軸方向の振動を発生させる油圧式があり、大振幅の振動を得ることができ振動周波数は1kHz程度までである。さらに別の振動発生装置としては、磁界内でコイルに交流電流を供給して発生する電磁力により振動を得る動電式があり、10kHz程度までの振動周波数が得られる。その他に、空気流を振動バルブにより変調して圧力変動を発生する強音響式があり、全方向への振動が得られる。
【0048】
図4(B)は、振動発生装置の一種といえる超音波発生装置の一例である。超音波は、人間の聴覚で認知できない20kHzを超える振動であり、例えば、圧電体の振動子の両端電極に高周波電圧を印加することにより発生できる。超音波を発生する振動子は圧電体以外にも磁歪振動子等がある。図4(B)に示すように、固化材振動注入装置10の先端部において棒状振動体11の内周面上に複数の振動子15fを設置し、高周波発振源15gから交流電圧を供給する。一般的に数十kHz〜数十MHzの振動周波数が得られる。なお、超音波振動子のみでは振動振幅が小さいため、ホーンや共振子と組み合わせることにより振動を増幅して用いることが好適である。
【0049】
本発明の固化材振動注入工法では、公知の多様な振動発生装置により発生可能な周波数であればいずれも利用することができる。低周波から可聴域である10〜20kHzの領域、並びに20kHz以上の超音波領域の振動が利用可能である。
【0050】
図5は、図3に示した固化材振動注入工法の一実施例において、固化材振動注入装置10の実際の操作例を示した図である。固化材充填用空間2が、例えば道路側面の溝である場合、単なる孔と異なり溝長さ方向には相当の距離がある。図5は、このような溝長さ方向の断面を示している。一方向に長い溝形状の場合、固化材振動注入装置10を一箇所で鉛直方向に移動させるだけではなく、溝長さ方向すなわち水平方向に移動させる必要がある。図5(A)及び(B)中の黒矢印付きの折れ線R1、R2は、固化材振動注入装置10の先端部の移動軌跡を示している。図5(A)では、溝2に固化材を充填しつつ振動発生装置を駆動させて固化材振注入装置10を移動させている。また、図5(B)では、先ず溝2のほぼ全体に固化材を充填した後、振動発生装置を駆動させて固化材振動注入装置10を軌跡のように移動させている。このようにして、長さ方向に距離のある溝の周囲地盤に対して均一に固化材を注入することができる。
【0051】
図6は、本工法の別の実施例の各工程を概略的に示す断面構成図である。図6では、図3と異なり、対象地盤に固化材充填用空間が予め形成されていない。固化材振動注入装置10Aは、固化材充填機能及び振動発生機能に加えて、掘削機能を備えている。すなわち、棒状振動体11である外管の外周上に螺旋状の掘削羽16が設けられ、さらに棒状振動体11を軸周りの双方向に回転可能とする回転駆動手段を設けている。
【0052】
図6(A)では、対象地盤に対し所定の固化材充填用空間を穿設する直前の状態を示している。掘削羽16により掘削可能な方向に固化材振動注入装置10Aを回転駆動しつつ自重によりまたは下方への押圧力により削孔する。このような削孔においては、掘削された土は下方及び周囲に押され圧密化されるため無排土施工が可能である。
【0053】
図6(B)は、所定の深度まで固化材充填用空間21の削孔を完了した状態を示す。棒状振動体11の内部には固化材移送管12が挿通している。基端部の固化材入口13から固化材の供給を開始し、先端部に開口する固化材出口14から固化材充填用空間21内に固化材を充填し始める。
【0054】
図6(C)は、固化材の充填と振動発生装置15の駆動を行いつつ固化材振動注入装置10Aを引き上げる状態を示す。この工程における固化材充填と振動発生並びに周囲地盤への固化材浸透拡散については、上述の図3(B)で説明した通りである。引き上げ時には、削孔時とは逆方向に固化材振動注入装置10Aを回転させることにより円滑な引き上げが可能である。
【0055】
図6(D)は、施工完了時の状態を示しており、固化材充填用空間21の周囲に柱状の固化材注入領域が形成されている。図6の例では、図3の例と異なり地表まで固化材を浸透させている。固化材の固化後に地盤改良体が得られる。
【0056】
なお、図6に示した固化材振動注入装置10Aは、掘削羽16及び回転駆動手段を備えているが、図3に示した実施例のように既設の固化材充填用空間がある場合の地盤改良にもそのまま利用できる。その場合は、装置10Aの回転駆動を行わない。
【0057】
固化材充填用空間が予め形成されていない対象地盤が広い範囲あるいは長い距離に亘っている場合は、図6の実施例のような縦穴を水平方向に所定の間隔で削孔するか、溝掘削装置により所定の長さの溝を掘削する。
【0058】
図7は、本工法の別の実施例の各工程を概略的に示す断面構成図である。図7もまた図6と同様に、対象地盤に固化材充填用空間が予め形成されていない。図7の実施例は特に軟弱地盤に適用される。固化材振動注入装置10Aは、固化材充填機能及び振動発生機能に加えて、掘削機能を備えている。すなわち、棒状振動体11である外管の外周上に螺旋状の掘削羽16が設けられ、さらに棒状振動体11を軸周りの双方向に回転可能とする回転駆動手段を設けている。
【0059】
図7(A)は、対象地盤4に対し所定の固化材振動注入装置10Aを貫入開始する直前の状態を示している。掘削羽16により掘削可能な方向に固化材振動注入装置10Aを回転駆動しつつ、自重によりまたは下方への押圧力により棒状振動体11を貫入する。軟弱地盤であれば、比較的容易に貫入できる。
【0060】
図7(B)に示すように、本実施例では、棒状振動体11を貫入する過程(地表からでもよくまたは途中の深度からでもよい)において、固化材移送管12を介して棒状振動体11の周囲に固化材を充填しつつ振動発生装置15を駆動して棒状振動体から振動を発生させる。これにより、固化材及び周囲の対象地盤に振動力が付与され、固化材が周囲の対象地盤中へ浸透することができる。
【0061】
特に本実施例では、直接、固化材と同時に地盤に振動力を付与することにより、地盤の度粒子が振動していて、かつ固化材が地盤とともに振動することになるため、固化材の振動による浸透拡散を促進し、効率のよい地盤改良が可能となる。この結果、地盤改良する全体積が少なくて済むという利点もある。
【0062】
図7(C)は、所定の深度まで棒状振動体11を貫入した状態を示す。所定の深度まで達したならば、固化材の充填を停止させる。
【0063】
図7(D)は、施工完了時の状態を示しており、固化材振動充填装置10Aが地表まで引き上げられている。引き上げ過程においては、振動を発生させても発生させなくてもよい。また、引き上げ過程においては、棒状振動体11を貫入時とは逆方向に回転駆動することが好ましい。これにより、固化材注入領域1が形成される。
【0064】
図8は、本工法の別の実施例の各工程を概略的に示す断面構成図であり、図7の実施例の変形例である。
図8(A)では、上述の図7(A)(B)と同様に、掘削羽16により掘削可能な方向に固化材振動注入装置10Aを回転駆動しつつ、自重によりまたは下方への押圧力により棒状振動体11を貫入している。そして、図8(A)に示す所定の深度までは、固化材移送管12を介して棒状振動体11の周囲に固化材を充填しつつ振動発生装置15を駆動して棒状振動体から振動を発生させる。これにより、固化材及び周囲の対象地盤に振動力が付与され、固化材が周囲の対象地盤中へ浸透することができる。図8(A)に示す所定の第1の深度まで達したならば、固化材の充填と振動の発生を停止させる。この段階で、固化材注入領域1aが形成される。なお、固化材振動注入装置10Aの回転駆動は停止させる必要はなく、貫入操作は続けて行う。
【0065】
図8(B)に示すように、固化材の充填と振動の発生を停止させたまま回転駆動のみを行い、固化材振動注入装置10Aをさらに深く貫入させる。図8(B)に示す所定の第2の深度まで達したならば、再び固化材の充填と振動の発生を開始する。固化材振動注入装置10Aの回転駆動による貫入操作は続けて行う。
【0066】
図8(C)に示すように、所定の第3の深度まで達したならば、固化材の充填及び振動の発生並びに回転駆動を停止させる。この段階で、第2の固化材注入領域1bが形成される。その後、固化材振動注入装置10Aを引き上げる。
【0067】
図8(D)は、施工完了時の状態を示しており、固化材振動充填装置10Aが地表まで引き上げられている。引き上げ過程においては、振動を発生させても発生させなくてもよい。また、振動を発生させる場合、所定の領域(固化材を充填させた領域)のみで振動を発生させてもよい。また、引き上げ過程においては、棒状振動体11を貫入時とは逆方向に回転駆動することが好ましい。
【0068】
図8の実施例では、貫入長さの全長のうちの一部の領域でのみ固化材注入領域1a、1bが形成される。不連続に形成される固化材注入領域1a、1bは、図示の例では2箇所であるが、その数は1箇所でも3箇所以上でも任意でよい。
【0069】
上述の実施例では、固化材充填用空間が鉛直方向であったが、本工法は、水平方向、斜め上方向または斜め下方向のいずれにも施工可能である。水平方向の場合は反力装置を用いる。
【0070】
また、本発明の工法及び装置は、道路交通振動対策のための道路側面での施工に好適であるが、これに限定されない。コンパクトなシステムで低騒音の地盤改良工が可能であるので住宅地や都市部での施工にも好適であり、また斜面での施工にも好適である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明による固化材振動注入工法を、道路交通振動対策に適用した実施例の模式的な断面構成図である。
【図2】本発明の固化材振動注入工法により固化材1を注入された対象地盤の一部を模式的に示した拡大図である。
【図3】(A)〜(C)は、施工方法の一実施例の各工程を概略的に示す断面構成図である。
【図4】固化材振動注入装置10の先端部における振動発生装置15の設置例を概略的に示す一部切り欠き断面図である。
【図5】図3に示した固化材振動注入工法の一例において、固化材振動注入装置の実際の操作例を示した図である。
【図6】(A)〜(D)は、施工方法の別の実施例の各工程を概略的に示す断面構成図である。
【図7】(A)〜(D)は、施工方法の別の実施例の各工程を概略的に示す断面構成図である。
【図8】(A)〜(D)は、施工方法の別の実施例の各工程を概略的に示す断面構成図である。
【図9】図9は、従来の高圧噴射により固化材1を注入された対象地盤の一部を模式的に示した拡大図である。
【符号の説明】
【0072】
1 固化材
2 既設溝
3 道路
3a 舗装
3b 路床
3c 路盤
4 地盤
5 車両
6 住宅
10 地盤強化装置
11 棒状振動体
12 固化材移送管
13 固化材入口
14 固化材出口
15 振動発生装置
15a モータ
15b 回転シャフト
15c 偏心重錘
15d モータ駆動源
15f 振動子
15g 高周波発振源
16 掘削羽
41 土粒子
51、52 地盤中の間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象地盤に予め形成された固化材充填用空間にスラリー状の固化材を充填する工程と、
充填された前記固化材中において振動を発生させ該固化材に振動を付与することにより該固化材を周囲の対象地盤中へ浸透させる工程とを有する固化材振動注入工法。
【請求項2】
前記固化材を充填する工程に先立って前記固化材充填用空間を形成する工程をさらに有する請求項1に記載の固化材振動注入工法。
【請求項3】
前記固化材を充填する工程と前記振動発生する工程を同時に行う請求項1または2に記載の固化材振動注入工法。
【請求項4】
前記固化材充填用空間が鉛直方向、水平方向、斜め上方向または斜め下方向に延在することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固化材振動注入工法。
【請求項5】
振動発生装置及び固化材移送管を内蔵しかつ外周面上に掘削羽を設けた棒状振動体を、軸周りに回転させつつ対象地盤内に貫入する工程を有し、貫入する長さの全体に渡ってまたは貫入する長さのうち1又は複数の部分において該固化材移送管を介して該棒状振動体の周囲に固化材を充填しつつ該振動発生装置を駆動して該棒状振動体から振動を発生させ、該固化材及び周囲の対象地盤に振動を付与することにより、該固化材を周囲の対象地盤中へ浸透させることを特徴とする固化材振動注入工法。
【請求項6】
前記棒状振動体の貫入する方向が鉛直方向、水平方向、斜め上方向または斜め下方向であることを特徴とする請求項5に記載の固化材振動注入工法。
【請求項7】
前記振動の周波数が10〜20kHzである請求項1〜6のいずれかに記載の固化材振動注入工法。
【請求項8】
前記振動の周波数が超音波域である請求項1〜6のいずれかに記載の固化材振動注入工法。
【請求項9】
前記対象地盤として道路の路床、道路の路盤または道路下の地盤を含み、前記固化材充填用空間が道路側面、または道路に隣接した所定区域内に位置する請求項1〜6の記載の固化材振動注入工法。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載の固化材振動注入工法に用いる固化材振動注入装置であって、
外管を備えた棒状振動体と、
前記棒状振動体の前記外管内に設けた振動発生装置と、
前記棒状振動体の前記外管内に内管として設けられ基端側に固化材入口を備え先端側に前記外管の外部に開口する固化材出口を備えた固化材移送管とを有する固化材振動注入装置。
【請求項11】
前記棒状振動体の前記外管の外周面上に設けた掘削羽と、
前記棒状振動体を軸周りの双方向に回転可能とする回転駆動手段とをさらに有する請求項10に記載の固化材振動注入装置。
【請求項12】
前記振動発生装置の発生する振動の周波数が10〜20kHzである請求項10または11のいずれかに記載の固化材振動注入装置。
【請求項13】
前記振動発生装置の発生する振動の周波数が超音波域である請求項10または11のいずれかに記載の固化材振動注入装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−208633(P2008−208633A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46971(P2007−46971)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(507063919)
【Fターム(参考)】