説明

固化材

【課題】 高含水土や高有機質土等の軟弱土の固化処理に適する固化材を提供する。
【解決手段】 水硬率が1.8〜2.3、ケイ酸率が1.3〜2.3、鉄率が1.3〜2.8である焼成物Aの粉砕物と、2CaO・SiO2100質量部に対して、2CaO・Al2O3・SiO2を10〜2000質量部含有し、かつ、3CaO・Al2O3の含有量が20質量部以下である焼成物Bの粉砕物と、石膏を含有する固化材。
上記固化材は、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、石灰石粉末、珪石粉末及びシリカフュームから選ばれる1種以上の無機粉末を含有することができる。
また、上記焼成物は、産業廃棄物、一般廃棄物及び建設発生土から選ばれる一種以上を原料として製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良用の固化材に関するものであり、特に、高含水土や高有機質土等の固化処理に適した固化材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、土木・建設の分野では、河川、湖沼、海等の近くの汚泥等よりなる軟弱地盤を有効利用するために、それらを固化材で固化することが行われている。また、河川、湖沼、海等で行われる土木建設工事の過程で生じる建設汚泥の再汚泥化を防止するために固化材が使用されている。
【0003】
この種の固化材の一例として、800〜900℃で焼成した製紙スラッジ灰を原料として50〜70質量%、高炉スラグ微粉末10質量%と、石灰もしくは生石灰を10〜20質量%、無水石膏もしくは半水石膏10〜20重量%を混合してなる土壌固化材が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−88362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の土壌固化材では、土の種類(例えば、高含水土や高有機質土等)によっては、多量に使用しても目標強度を得ることが困難な場合があった。また、固化処理した土の耐久性が低いことがあった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、高含水土や高有機質土等の軟弱土の固化処理に適する固化材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、特定の水硬率、ケイ酸率および鉄率を有する焼成物と、2CaO・SiO2及び2CaO・Al2O3・SiO2を特定の割合で含有し、3CaO・Al2O3の含有量が20質量部以下である焼成物の粉砕物と、石膏とを組み合わせることにより、上記課題を解決することができることを見いだし、本発明を完成させたものである。
【0008】
即ち、本発明は、(A)水硬率が1.8〜2.3、ケイ酸率が1.3〜2.3、鉄率が1.3〜2.8である焼成物Aの粉砕物と、(B)2CaO・SiO2100質量部に対して、2CaO・Al2O3・SiO2を10〜2000質量部含有し、かつ、3CaO・Al2O3の含有量が20質量部以下である焼成物Bの粉砕物と、(C)石膏を含有することを特徴とする固化材である(請求項1)。このような構成の固化材であれば、高含水土や高有機質土等の軟弱土に使用した場合でも、高い強度を得ることができる。また、固化処理した土も耐久性に優れるものとすることができる。
本発明の固化材は、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、石灰石粉末、珪石粉末及びシリカフュームから選ばれる1種以上の無機粉末を含むことが好ましい(請求項2)。これらの無機粉末を含むことにより、固化処理した土の長期強度を増大させることができる。
本発明においては、上記焼成物A及び/又は焼成物Bは、産業廃棄物、一般廃棄物及び建設発生土から選ばれる一種以上を原料として製造した焼成物とすることができる(請求項3)。焼成物の原料として、産業廃棄物、一般廃棄物及び建設発生土から選ばれる一種以上のものを使用することにより、廃棄物の有効利用を促進させることができる。
上記焼成物Aは、1.0質量%以下のフッ素を含有することができる(請求項4)。焼成物Aがフッ素を含有することにより、フッ素含有廃棄物を原料として使用することができ、廃棄物の有効利用をより促進させることができる。また、固化材をスラリー添加する際に、該スラリーの作業性を向上することや可使時間を長時間確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の固化材では、高含水土や高有機質土等の軟弱土に使用した場合でも、高い強度を得ることができる。また、固化処理した土も耐久性に優れるものとすることができる。
また、本発明の固化材では、産業廃棄物、一般廃棄物及び建設発生土から選ばれる一種以上を原料として製造した焼成物を用いることができるので、廃棄物の有効利用を促進させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用する焼成物Aは、水硬率(H.M.)が1.8〜2.3、ケイ酸率(S.M.)が1.3〜2.3、鉄率(I.M.)が1.3〜2.8のものである。
水硬率(H.M.)が小さくなると、該焼成物中の3CaO・SiO2(以降、C3Sと略す)の含有量が少なくなり、固化処理した土の初期強度発現性が低下する。また、焼成物Aの焼成も困難となる。一方、水硬率(H.M.)が大きくなると、固化処理した土の初期強度発現性は向上するが、長期強度の伸びが鈍くなる傾向にある。そのため、水硬率(H.M.)は1.8〜2.3が好ましく、2.0〜2.2がより好ましい。
ケイ酸率(S.M.)が小さくなると、焼成物Aの焼成が困難となる。一方、ケイ酸率(S.M.)が大きくなると、固化処理した土の強度発現性が低下する。また、3CaO・Al2O3(以降、C3Aと略す)と4CaO・Al2O3・Fe2O3(以降、C4AFと略す)の含有量が少なくなり、焼成物Aの焼成が困難になる。そのため、ケイ酸率(S.M.)は1.3〜2.3が好ましく、1.5〜2.0がより好ましい。
鉄率(I.M.)が小さくなると、焼成物Aの粉砕性が低下する。また、固化処理した土の初期強度発現性が低下する傾向にある。一方、鉄率(I.M.)が大きくなると、焼成物中のC3Aの含有量が多くなり、所要の固化性能を発現するために添加すべき石膏量が増加し、経済的でない。そのため、鉄率(I.M.)は1.3〜2.8が好ましく、1.5〜2.6がより好ましい。
【0011】
焼成物Aの原料としては、一般のポルトランドセメントクリンカー原料、すなわち石灰石、生石灰、消石灰等のCaO原料、珪石、粘土等のSiO2原料、粘土等のAl2O3原料、鉄滓、鉄ケーキ等のFe2O3原料を使用することができる。
なお、本発明においては、焼成物Aの原料として、前記原料に加えて、産業廃棄物、一般廃棄物及び建設発生土から選ばれる一種以上を使用することができる。焼成物Aの原料として、産業廃棄物、一般廃棄物及び建設発生土から選ばれる一種以上のものを使用することは、廃棄物の有効利用を促進させることができ好ましいことである。ここで、産業廃棄物としては、例えば、生コンスラッジ、各種汚泥(例えば、下水汚泥、浄水汚泥、建設汚泥、製鉄汚泥等)、建設廃材、コンクリート廃材、ボーリング廃土、各種焼却灰、鋳物砂、ロックウール、廃ガラス、高炉2次灰等が挙げられる。一般廃棄物としては、例えば、下水汚泥乾粉、都市ごみ焼却灰、貝殻等が挙げられる。建設発生土としては、建設現場や工事現場等から発生する土壌や残土、さらには廃土壌等が挙げられる。
【0012】
本発明においては、上記焼成物Aは1.0質量%以下のフッ素を含有することができる。フッ素を1.0質量%以下含有することにより、フッ素含有廃棄物を原料として使用することができ、廃棄物の有効利用をより促進させることができる。また、固化材をスラリー添加する際に、該スラリーの作業性を向上することや可使時間を長時間確保することが可能となる。
フッ素原料としては、蛍石(CaF2)の他、フッ酸の製造工程で発生するスラッジ、リン酸工業炉やリン酸肥料製造炉から製造される珪フッ化ソーダやその煤煙、半導体や電気電子機器工業で使用されたフッ素系洗浄剤を含む排水を処理した残渣等のフッ素含有廃棄物を使用することができる。
焼成物A中のフッ素含有量は1.0質量%以下が好ましい。焼成物A中のフッ素含有量が1.0質量%を越えると、固化処理した土の強度発現性が低下するので好ましくない。焼成物A中のより好ましいフッ素含有量は、固化処理した土の強度発現性やフッ素含有廃棄物の有効利用等の観点から、0.5質量%以下であり、特に好ましくは0.05〜0.4質量%である。
【0013】
上記各原料を所定のH.M.、S.M.、I.M.となるように混合し、好ましくは1200〜1550℃で焼成することにより、焼成物Aが製造される。より好ましい焼成温度は1350〜1450℃である。
各原料を混合する方法は、特に限定するものではなく、慣用の装置等で行えばよい。
また、焼成に使用する装置も特に限定するものではなく、例えば、ロータリーキルン等を使用することができる。ロータリーキルンで焼成する際には、燃料代替廃棄物、例えば、廃油、廃タイヤ、廃プラスチック等を使用することができる。
なお、本発明で使用する焼成物Aにおいては、固化処理した土の初期強度発現性や耐久性等から、フリーライム量が0.5〜1.5質量%であることが好ましい。
【0014】
本発明で使用する焼成物Bは、2CaO・SiO2(以降、C2Sと略す)100質量部に対して、2CaO・Al2O3・SiO2(以降、C2ASと略す)を10〜2000質量部含有し、かつ、3CaO・Al2O3(C3A)の含有量が20質量部以下のものである。C2AS含有量が、C2S100質量部に対して10質量部未満では、焼成物Bの焼成が困難となる。また、生成するC2Sが水和活性のないγ型C2Sである可能性が高くなり、固化処理した土の強度発現性が低下することがある。一方、C2AS含有量が、C2S100質量部に対して2000質量部を越えると、固化処理した土の強度発現性が低下する。
C2ASの好ましい含有量は、C2S100質量部に対して10〜200質量部であり、より好ましくは10〜100質量部である。
【0015】
また、焼成物Bは、C2S100質量部に対するC3Aの含有量が20質量部以下、好ましくは10質量部以下のものである。C3Aの含有量が20質量部を越えると、固化処理した土の強度発現性が低下する。
【0016】
焼成物Bの原料としては、一般のポルトランドセメントクリンカー原料、すなわち石灰石、生石灰、消石灰等のCaO原料、珪石、粘土等のSiO2原料、粘土等のAl2O3原料、鉄滓、鉄ケーキ等のFe2O3原料を使用することができる。
なお、本発明においては、焼成物Bの原料として、前記原料に加えて、産業廃棄物、一般廃棄物及び建設発生土から選ばれる一種以上を使用することができる。焼成物Bの原料として、産業廃棄物、一般廃棄物及び建設発生土から選ばれる一種以上のものを使用することは、廃棄物の有効利用を促進させることができ好ましいことである。ここで、産業廃棄物としては、例えば、石炭灰、生コンスラッジ、各種汚泥(例えば、下水汚泥、浄水汚泥、建設汚泥、製鉄汚泥等)、ボーリング廃土、各種焼却灰、鋳物砂、ロックウール、廃ガラス、高炉2次灰、建設廃材、コンクリート廃材等が挙げられる。一般廃棄物としては、例えば、下水汚泥乾粉、都市ごみ焼却灰、貝殻等が挙げられる。建設発生土としては、建設現場や工事現場等から発生する土壌や残土、さらには廃土壌等が挙げられる。
【0017】
なお、焼成物Bの原料組成によっては、特に、前記産業廃棄物、一般廃棄物及び建設発生土から選ばれる一種以上のものを使用した場合、4CaO・Al2O3・Fe2O3(以降、C4AFと略す)が生成することがあるが、本発明の焼成物Bにおいては、C2ASの一部、好ましくはC2ASの70質量%以下がC4AFで置換されても良い。C4AFがこの範囲を越えて置換されると、焼成の温度範囲が狭くなり、焼成物Bの製造の管理が難しくなる。
【0018】
焼成物Bの鉱物組成は、使用原料中のCaO、SiO2、Al2O3、Fe2O3の各含有量(質量%)から、次式により求めることができる。
C4AF=3.04×Fe2O3
C3A=1.61×CaO−3.00×SiO2−2.26×Fe2O3
C2AS=−1.63×CaO+3.04×SiO2+2.69×Al2O3+0.57×Fe2O3
C2S=1.02×CaO+0.95×SiO2−1.69×Al2O3−0.36×Fe2O3
【0019】
焼成物Bの焼成温度は、好ましくは1000〜1350℃で、より好ましくは1150〜1350℃である。
各原料を混合する方法は、特に限定するものではなく、慣用の装置等で行えばよい。
また、焼成に使用する装置も特に限定するものではなく、例えば、ロータリーキルン等を使用することができる。ロータリーキルンで焼成する際には、燃料代替廃棄物、例えば、廃油、廃タイヤ、廃プラスチック等を使用することができる。
【0020】
焼成物Bの粉砕物の量は、固化処理した土の強度発現性や耐久性等から、焼成物Aの粉砕物100質量部に対して、10〜100質量部であることが好ましく、20〜60質量部であることがより好ましい。
【0021】
本発明で用いる石膏としては、特に制限されず、ニ水石膏、α型又はβ型半水石膏、無水石膏等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、固化処理した土の強度発現性や耐久性等から、無水石膏を用いることが好ましい。
【0022】
本発明の固化材において、石膏の含有量は、固化処理した土の強度発現性や耐久性等から、焼成物Aの粉砕物100質量部に対して、SO3換算で1〜15質量部であることが好ましく、3〜10質量部であることがより好ましい。
【0023】
本発明の固化材は、更に高炉スラグ粉末、フライアッシュ、石灰石粉末、珪石粉末及びシリカフュームから選ばれる1種以上の無機粉末を含有することが好ましい。これらの無機粉末を含有することにより、固化処理した土の長期強度を増大させることができる。
【0024】
本発明において、固化材中の無機粉末量は、該無機粉末の種類により異なる。例えば、高炉スラグ粉末であれば、固化処理した土の強度発現性や耐久性等から、焼成物Aの粉砕物100質量部に対して、10〜150質量部であることが好ましく、20〜100質量部であることがより好ましい。フライアッシュ、石灰石粉末や珪石粉末であれば、焼成物Aの粉砕物100質量部に対して、10〜100質量部であることが好ましく、20〜80質量部であることがより好ましい。シリカフュームであれば、焼成物Aの粉砕物100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。
【0025】
無機粉末の比表面積は、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、石灰石粉末、珪石粉末では、固化処理した土の強度発現性や耐久性、更には固化材のコスト等から、ブレーン比表面積が2500〜10000cm2/gが好ましく、3000〜9000cm2/gがより好ましい。
シリカフュームでは、BET比表面積が5〜25m2/gが好ましく、5〜20m2/gであるのがより好ましい。
【0026】
固化材の製造方法としては、例えば、
(1)焼成物Aと焼成物Bと石膏を同時に粉砕する方法、
(2)焼成物Aと焼成物Bと石膏と無機粉末を同時に粉砕する方法、
(3)焼成物Aと焼成物Bの同時粉砕物に石膏を混合する方法、
(4)焼成物Aと石膏の同時粉砕物に焼成物Bの粉砕物を混合する方法、
(5)焼成物Bと石膏の同時粉砕物に焼成物Aの粉砕物を混合する方法、
(6)焼成物A、焼成物Bを別々に粉砕し、該粉砕物と石膏を混合する方法、
(7)上記(1)、(3)、(4)、(5)又は(6)の固化材に無機粉末を混合する方法
等が挙げられる。
【0027】
上記(1)の場合は、焼成物Aと焼成物Bと石膏は、固化処理した土の強度発現性や耐久性等から、ブレーン比表面積2500〜5000cm2/gに粉砕することが好ましく、3000〜4500cm2/gに粉砕することがより好ましい。
上記(2)の場合は、焼成物Aと焼成物Bと石膏と無機粉末は、固化処理した土の強度発現性や耐久性等から、ブレーン比表面積2500〜5000cm2/gに粉砕することが好ましく、3000〜4500cm2/gに粉砕することがより好ましい。
上記(3)の場合は、焼成物Aと焼成物Bは、ブレーン比表面積2500〜4500cm2/gに粉砕することが好ましく、3000〜4500cm2/gに粉砕することがより好ましい。石膏としては、ブレーン比表面積2500〜7000cm2/gのものを使用するのが好ましく、3000〜6000cm2/gのものを使用するのがより好ましい。
上記(4)の場合は、焼成物Aと石膏は、水硬性組成物の水和熱や、ブレーン比表面積2500〜4500cm2/gに粉砕することが好ましく、3000〜4500cm2/gに粉砕することがより好ましい。また、焼成物Bは、ブレーン比表面積2500〜4500cm2/gに粉砕することが好ましく、3000〜4500cm2/gに粉砕することがより好ましい。
上記(5)の場合は、焼成物Bと石膏は、ブレーン比表面積2500〜4500cm2/gに粉砕することが好ましく、3000〜4500cm2/gに粉砕することがより好ましい。また、焼成物Aは、ブレーン比表面積2500〜4500cm2/gに粉砕することが好ましく、3000〜4500cm2/gに粉砕することがより好ましい。
上記(6)の場合は、焼成物Aは、ブレーン比表面積2500〜4500cm2/gに粉砕することが好ましく、3000〜4500cm2/gに粉砕することがより好ましい。また、焼成物Bは、ブレーン比表面積2500〜4500cm2/gに粉砕することが好ましく、3000〜4500cm2/gに粉砕することがより好ましい。また、石膏としてはブレーン比表面積2500〜7000cm2/gのものを使用するのが好ましく、3000〜6000cm2/gのものを使用するのがより好ましい。
【0028】
なお、本発明の固化材のブレーン比表面積は、固化処理した土の強度発現性や耐久性等から、ブレーン比表面積2500〜5000cm2/gであることが好ましく、3000〜4500cm2/gであることがより好ましい。
【0029】
本発明の固化材においては、固化処理した土の強度発現性や耐久性の向上のために、減水剤(AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤も含む)等の混和剤を使用することができる。減水剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系の減水剤を使用できる。
【0030】
本発明の固化材を用いて地盤を固化処理する際の添加量は、対象土の性状や施工条件、固化処理した土の要求強度にもよるが、一般には、対象土1m3当り50〜300kgが好ましく、100〜250kgがより好ましい。
本発明の固化材は、例えば1)対象土に固化材を粉体のまま添加・混合するドライ添加、2)水を加えてスラリーとして添加・混合するスラリー添加、により使用することができる。スラリー添加の場合には、水/固化材(質量)比は、0.5〜1.5が好ましく、0.6〜1.0がより好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明を説明する。
実施例1〜6、比較例1
(1)焼成物Aの製造
原料として、下水汚泥、建設発生土と、石灰石等の一般のポルトランドセメントクリンカー原料を使用して、表1に示す水硬率(H.M.)、ケイ酸率(S.M.)および鉄率(I.M.)となるように原料を調合した。調合原料を小型ロータリーキルンで1400〜1450℃で焼成して、焼成物Aを製造した。この際、燃料として一般的な重油のほかに、廃油や廃プラスチックを使用した。焼成後、各焼成物Aをバッチ式ボールミルでブレーン比表面積が3250±50cm2/gとなるように粉砕した。
使用した下水汚泥、建設発生土の化学組成(質量%)は、表2に示すとおりである。
なお、各焼成物中のフリーライム量は0.6〜1.0質量%であった。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
(2)焼成物Bの製造
原料として、石灰石、下水汚泥を使用して、表3に示す組成で調合し、小型ロータリーキルンで1300℃で焼成した。この際、燃料として一般的な重油のほかに、廃油や廃プラスチックを使用した。焼成後、バッチ式ボールミルでブレーン比表面積が3250cm2/gとなるように粉砕した。
【0035】
【表3】

【0036】
(3)固化材の製造
焼成物Aの粉砕物、焼成物Bの粉砕物、無水石膏(ブレーン比表面積5800cm2/g)、高炉スラグ粉末(ブレーン比表面積4500cm2/g)を表4に示す割合で混合して、固化材を得た。
【0037】
【表4】

【0038】
(4)一軸圧縮強さ試験
「JGS 0821(安定処理土の締固めをしない供試体作製方法)」に準拠して作製した供試体を、「JIS A 1216(土の一軸圧縮試験方法)」に準じて、圧縮強度(7日および28日)を測定した。
その結果を表5に示す。
なお、本試験に使用した対象土は、含水率30%の砂質土、含水率75%の粘性土、含水率175%の関東ロームおよび含水率400%のヘドロであり、固化材の添加量は、砂質土に対しては1m3当り60kg、粘性土に対しては1m3当り100kg、関東ロームに対しては1m3当り250kg、ヘドロに対しては1m3当り200kgとした。
【0039】
【表5】

【0040】
表5より、本発明の固化材(実施例1〜6)を使用した場合では、固化処理した土の強度発現性が良好であり、実用的な値を越えていることが分かる。
【0041】
実施例7〜10
(5)焼成物Aの製造
原料として、下水汚泥、建設発生土、フッ酸の製造工程で発生するスラッジと、石灰石等の一般のポルトランドセメントクリンカー原料を使用して、表6に示す水硬率(H.M.)、ケイ酸率(S.M.)および鉄率(I.M.)となるように原料を調合した。調合原料を小型ロータリーキルンで1400〜1450℃で焼成して、焼成物Aを製造した。この際、燃料として一般的な重油のほかに、廃油や廃プラスチックを使用した。焼成後、各焼成物Aをバッチ式ボールミルでブレーン比表面積が3250±50cm2/gとなるように粉砕した。
なお、各焼成物中のフリーライム量は0.6〜1.0質量%であった。
【0042】
【表6】

【0043】
(6)固化材の製造
表6の焼成物Aの粉砕物、上記焼成物Bの粉砕物、無水石膏(ブレーン比表面積5800cm2/g)、高炉スラグ粉末(ブレーン比表面積4500cm2/g)を表7に示す割合で混合して、固化材を得た。
【0044】
【表7】

【0045】
(7)一軸圧縮強さ試験
「JGS 0821(安定処理土の締固めをしない供試体作製方法)」に準拠して作製した供試体を、「JIS A 1216(土の一軸圧縮試験方法)」に準じて、圧縮強度(7日および28日)を測定した。
その結果を表8に示す。
なお、本試験に使用した対象土は、含水率73%の粘性土および含水率170%の関東ロームであり、固化材の添加量は、粘性土に対しては1m3当り100kg、関東ロームに対しては1m3当り250kgとした。
【0046】
【表8】

【0047】
表8より、本発明の固化材(実施例7〜10)を使用した場合では、固化処理した土の強度発現性が良好であり、実用的な値を越えていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水硬率が1.8〜2.3、ケイ酸率が1.3〜2.3、鉄率が1.3〜2.8である焼成物Aの粉砕物と、(B)2CaO・SiO2100質量部に対して、2CaO・Al2O3・SiO2を10〜2000質量部含有し、かつ、3CaO・Al2O3の含有量が20質量部以下である焼成物Bの粉砕物と、(C)石膏を含有することを特徴とする固化材。
【請求項2】
高炉スラグ粉末、フライアッシュ、石灰石粉末、珪石粉末及びシリカフュームから選ばれる1種以上の無機粉末を含有する請求項1記載の固化材。
【請求項3】
焼成物A及び/又は焼成物Bが、産業廃棄物、一般廃棄物及び建設発生土から選ばれる一種以上を原料として製造した焼成物である請求項1又は2に記載の固化材。
【請求項4】
焼成物Aが、1.0質量%以下のフッ素を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の固化材。

【公開番号】特開2006−143990(P2006−143990A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215222(P2005−215222)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】