固定具
【課題】 取り外した痕跡を残すことができる固定具を提供する。
【解決手段】 固定具は、被係合部材2と軸部材4とからなる。被係合部材2は筒状部20を有しており、その内部は軸部材4が挿入可能な挿入穴24となっている。筒状部20の内側面には複数の被係止片26が形成されている。軸部材4は、柱状の基材30と、複数の係止片32と、基材30よりも外周側に張り出した張出部34と、からなる。基材30における係止片32と張出部34との間には、周囲よりも肉薄に形成された破断領域36が設けられている。この固定具を突出片8aと突出片8bとに取り付けると、軸部材4と被係合部材2とが係合し、突出片8aと突出片8bとの重ね合わせ状態が保持される。被係合部材2と軸部材4とを無理に外そうとすると、応力に弱い破断領域36が破断し、軸部材4の再使用ができなくなるうえ、固定具を外した痕跡が残る。
【解決手段】 固定具は、被係合部材2と軸部材4とからなる。被係合部材2は筒状部20を有しており、その内部は軸部材4が挿入可能な挿入穴24となっている。筒状部20の内側面には複数の被係止片26が形成されている。軸部材4は、柱状の基材30と、複数の係止片32と、基材30よりも外周側に張り出した張出部34と、からなる。基材30における係止片32と張出部34との間には、周囲よりも肉薄に形成された破断領域36が設けられている。この固定具を突出片8aと突出片8bとに取り付けると、軸部材4と被係合部材2とが係合し、突出片8aと突出片8bとの重ね合わせ状態が保持される。被係合部材2と軸部材4とを無理に外そうとすると、応力に弱い破断領域36が破断し、軸部材4の再使用ができなくなるうえ、固定具を外した痕跡が残る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの板状の部材を重ね合わせた状態に保持する固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの板状の部材を重ね合わせた状態で保持する固定具として、板状の部材それぞれに形成された貫通穴を重ね合わせてその貫通穴に軸状の部材を通過させて固定する固定具が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−270630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
家電、産業機器、遊戯機器などの分野では、封緘するための固定具を取り外した場合には、および固定具を取り外した痕跡がわかることが要求される場合がある。
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、取り外した痕跡を残すことができる固定具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した問題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、同一の方向に突出する板状の部材である第1の突出片および第2の突出片を、当該第1の突出片および第2の突出片それぞれの主たる面に形成された貫通穴が並んで1つの連続穴となるように重ね合わせられた重ね合わせ状態に保持する固定具であり、周囲よりも肉薄である破断領域が形成されていることを特徴とする固定具である。
【0006】
このように構成された固定具は、重ね合わせ状態となった第1の突出片と第2の突出片とをその状態に保持することができる。
さらに、この固定具には周囲よりも肉薄の破断領域が形成されている。破断領域は周囲よりも肉薄であるため固定具に力が加えられると破断してしまう。その結果、固定具を取り外した場合には破断領域が破断した痕跡が残ることとなるため、固定具を見るだけで容易に固定具を取り外したか否かを確認することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の固定具において、柱状の部材であって、その一端に外周側に張り出した張出部が形成されてなる軸部材と、前記軸部材の他端を挿入可能な挿入穴を有し、当該挿入穴に前記軸部材の他端を挿入された状態においては前記軸部材と係合して前記軸部材が前記挿入穴から抜けることを抑制する被係合部材と、を備え、前記破断領域が、前記軸部材における前記被係合部材と係合する領域と前記張出部との間に形成されており、前記連続穴に挿入された前記軸部材における前記張出部と、前記軸部材と係合した前記被係合部材と、により前記第1の突出片および前記第2の突出片を挟み込むことで、前記重ね合わせ状態の保持を実現することを特徴とする。
【0008】
このように構成された固定具では、軸部材の張出部と被係合部材とによって、第1の突出片と第2の突出片とを重ね合わせ状態として保持することができる。
そして、軸部材における被係合部材と係合する領域と、張出部と、の間に破断領域が形成されていることから、固定具に力が加えられて破断領域が破断すると上記領域と張出部とが分離してしまう。その結果、固定具の軸部材を見るだけで容易に固定具を取り外したか否かを確認することができる。また、上述したように軸部材が分離すると、軸部材を再利用することができなくなる。即ち、当該固定具を使用して第1の突出片と第2の突出片とを重ね合わせ状態として保持することができなくなっているので、その点を確認することでも固定具を取り外したことを容易に確認することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の固定具において、前記軸部材が前記一端方向に傾斜するように前記軸部材から延び出し、前記軸部材の軸方向と交差する方向に弾性変形する係止片を備え、前記被係合部材が前記挿入穴に前記軸部材の他端が挿入された状態において前記係止片と係合して前記軸部材が前記挿入穴から抜けることを抑制する被係止片を備えることを特徴とする。
【0010】
このように構成された固定具であれば、軸部材に形成された係止片と、被係合部材に形成された被係止片と、によって、軸部材と被係合部材との係合を実現することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の固定具において、前記係止片および前記被係止片のうち少なくともいずれか一方は、前記軸部材を前記挿入穴に挿入するときの前記軸部材の軸方向に沿って複数配置されていることを特徴とする。
【0011】
このように構成された固定具であれば、係止片と被係止片とが係合できる位置(軸部材の挿入穴への挿入深さ)の調整が可能となる。第1の突出片と第2の突出片とを重ねた状態で適切に保持するためには、その重ねた状態での厚さと、それらを挟み込む被係合部材と張出部との距離と、が近いほど好ましいが、軸部材の挿入穴への挿入深さが調整できる場合、被係合部材と張出部との距離を調整できることとなる。
【0012】
よって、第1の突出片と第2の突出片とを重ねた状態での厚さが特定の厚さでなくてもよく、さまざまな厚さの第1の突出片および第2の突出片に対して良好に重ね合わせ状態の保持を実現することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の固定具において、前記重ね合わせ状態となった前記第1の突出片および前記第2の突出片を挿入可能な開口が形成され、当該開口に前記重ね合わせ状態となった前記第1の突出片および前記第2の突出片が挿入された際に、前記連続穴の両端の入口に挿入される2つのスナップが設けられたカバー部材を備え、前記破断領域は、前記カバー部材において、前記開口の周縁部から前記第1の突出片および前記第2の突出片の挿入方向に沿って形成されており、前記2つのスナップが前記連続穴の両端の入口から挿入されることで、前記重ね合わせ状態の保持を実現することを特徴とする。
【0014】
このように構成された固定具では、第1の突出片および第2の突出片を開口に挿入するとスナップが連続穴と係止して第1の突出片および第2の突出片が開口から抜けることを抑制するため、重ね合わせ状態に保持することができる。
【0015】
さらに、カバー部材における開口の周縁部から第1の突出片および第2の突出片の挿入方向に沿って破断領域が形成されているため、固定具に力が加えられて破断領域が破断するとカバー部材の開口の形状が変形してしまい、カバー部材によって重ね合わせ状態の保持ができなくなってしまう。その結果、固定具を見るだけで容易に固定具を取り外したか否かを確認することができる。また、上述したようにカバー部材が破損することにより、カバー部材を再利用して第1の突出片と第2の突出片とを重ね合わせ状態として保持することができなくなっているので、その点を確認することでも固定具を取り外したことを容易に確認することができる。
【0016】
請求項6に記載の固定具は、請求項4に記載の固定具において、前記カバー部材における前記破断領域に沿った位置から前記カバー部材の外側に向けて延びる延出部を備えることを特徴とする。
【0017】
このように構成された固定具では、延出部に荷重が加えられると破断領域に強い力が加えられることとなるため、破断領域が容易に破断されることとなる。すなわち、固定具を無理に外そうとする場合にはさらに容易に破断領域が破断されるため、固定具を取り外そうとしたことをより確実に確認できるようになる。一方、固定具を外す必要があるときには延出部に力を加えることで容易に固定具を破壊できるため都合がよい。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の固定具において、柱状の部材であって、その一端において外周側に張り出した張出部と、前記一端方向に傾斜するように前記軸部材から延び出し、前記柱の軸方向と交差する方向に弾性変形する係止片と、が形成されてなる軸部材と、前記軸部材の他端側が挿入可能な第1の開口と、前記重ね合わせ状態となった前記第1の突出片および前記第2の突出片を挿入可能な第2の開口と、を有するケース部材と、を備え、前記破断領域が前記軸部材における前記係止片と前記張出部との間に形成されており、前記第1の開口から前記軸部材の他端側が前記ケース部材内部に挿入され、かつ前記第2の開口から前記第1の突出片および前記第2の突出片が前記ケース部材内部に挿入された状態で、前記連続穴に挿入された前記軸部材における前記連続穴を通過した前記係止片が前記連続穴の周縁部に係止することで、前記重ね合わせ状態の保持を実現することを特徴とする。
【0019】
このように構成された固定具では、第1の突出片と第2の突出片とを重ね合わせ状態として保持することができる。
そして、軸部材における係止片と張出部との間に破断領域が形成されていることから、固定具に力が加えられて破断領域が破断すると係止片と張出部とが分離してしまう。その結果、固定具における軸部材を見るだけで容易に固定具を取り外したか否かを確認することができる。また、上述したように軸部材が分離して破損することにより、当該固定具を使用して第1の突出片と第2の突出片とを重ね合わせ状態として保持することができなくなっているので、その点を確認することでも固定具を取り外したことを容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1の固定具を示す斜視図(A)、および左側面(矢印A方向)からみた断面図(B)
【図2】実施例1の固定具を物品に取り付けた状態を示す斜視図(A)、および左側面(矢印A方向)からみた断面図(B)
【図3】実施例1の軸部材を物品に取り付けた状態を示す斜視図(A)、および左側面(矢印A方向)からみた断面図(B)
【図4】実施例2の固定具を示す斜視図(A)、および左側面(矢印A方向)からみた断面図(B)
【図5】実施例2の固定具を物品に取り付けた状態を示す斜視図(A)、および左側面(矢印A方向)からみた断面図(B)
【図6】実施例3の固定具を示す斜視図(A)、正面図(B)、左側面図(C)、右側面図(D)、平面図(E)、底面図(F)、平面図におけるA−A断面図(G)
【図7】実施例3の固定具の変形例を示す正面図(A)、斜視図(B)
【図8】実施例4の固定具を示す斜視図(A)(B)、正面図(C)、左側面図(D)、右側面図(E)、平面図(F)、底面図(G)、平面図におけるA−A断面図(H)
【図9】実施例5の固定具を示す斜視図(A)、および左側面(矢印A方向)からみた断面図(B)
【図10】実施例5の固定具を物品に取り付けた状態を示す斜視図(A)、および左側面(矢印A方向)からみた断面図(B)
【図11】実施例6の固定具を示す斜視図(A)、および左側面(矢印A方向)からみた断面図(B)
【図12】実施例6の固定具を物品に取り付けた状態を示す斜視図(A)、および左側面(矢印A方向)からみた断面図(B)
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施例等により発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は下記の実施例等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまに実施できることは言うまでもない。
【0022】
[実施例1]
(1)固定具の構成
本実施例の固定具は、図1(A),(B)に示すように、いずれも樹脂製の被係合部材2と、軸部材4と、からなるものであって、2つの異なる物品6a,6bを固定する際に用いるものである。図1(A),(B)には物品6a,6bの一部分のみが示されている。
【0023】
物品6a,6bには、それぞれ板状の部材である突出片8a,8bが形成されている。この突出片8a,8bにおける主たる面には矩形の貫通穴10a,10bが形成されている。本実施例の固定具は、上述した貫通穴10a,10bが並んで1つの連続した穴となるように、かつ、突出片8aおよび突出片8bの突出方向が同一の方向に揃うように重ね合わせられた重ね合わせ状態(図1(A)に示す突出片8aおよび突出片8bの状態)に保持する。
【0024】
上述した被係合部材2は、断面四角形の筒状である筒状部20を有している。筒状部20を構成する壁面の一つは、他の面よりも広く延び出したプレート22となっている。このプレート22は、文字情報や図柄を予め形成して、或いは後から記入して表示することができる。
【0025】
筒状部20の内部は軸部材4が挿入可能な挿入穴24となっている。筒状部20の内側面のうち、プレート22側の面には筒状部20の軸方向に沿って複数(本実施例では3つ)の被係止片26が形成されている。
【0026】
また筒状部20を構成する壁面のうち、プレート22と対向する壁面には開口28が形成されている。
軸部材4は、柱状の基材30と、基材30に連接された複数(本実施例では5つ)の係止片32と、基材30よりも外周側に張り出した張出部34と、からなる。係止片32は基材30の他端30aから軸方向に沿って並ぶように設けられている。また張出部34は上記他端30aとは逆の一端30bに設けられている。
【0027】
係止片32は、一端30b方向に傾斜するように基材30から延び出し、基材30の軸方向と交差する方向に弾性変形する。
張出部34は矩形の板状であって、上述した物品6a,6bの貫通穴10a,10bよりも大きく形成されており、貫通穴10a,10bを通過できないようになっている。
【0028】
また、基材30における係止片32が設けられた領域と張出部34との間には、周囲よりも肉薄に形成された破断領域36が設けられている。この破断領域36は基材30におけるその周囲の部分と比較して引張強さが小さく、基材30に応力が加えられるとまずこの破断領域36が破断するように構成されている。
【0029】
(2)固定具の使用態様
本実施例の固定具を用いて突出片8aおよび突出片8bを上述した重ね合わせ状態として保持したものを図2(A),(B)に示す。
【0030】
固定具の取り付け手順を説明する。まず貫通穴10a,10bが一列に並ぶことによってできた連続穴に軸部材4の一端30a側を挿入して通過させる。次に、貫通穴10a,10bを通過した軸部材4の一端30a側を被係合部材2の挿入穴24に挿入する。
【0031】
このように固定具を取り付けると、係止片32が挿入穴24の内部に設けられた被係止片26と係合するため、軸部材4が挿入穴24から抜けることが抑制される(軸部材4と被係合部材2とが係合する)。このように、被係合部材2と張出部34とにより突出片8aおよび突出片8bを挟み込むことで、突出片8aと突出片8bとの重ね合わせ状態の保持を実現する。
【0032】
上述したように固定具が取り付けられた状態において、突出片8aと突出片8bとを離間しようとすると、被係合部材2と軸部材4との係合を解除する必要があるが、係止片32と被係止片26とは筒状部20の内部において係合しているため容易に解除することができない。
【0033】
ここで、被係合部材2と軸部材4とに強い力を加えて無理に外そうとすると、応力に弱い破断領域36が破断してしまう。その結果、軸部材4の再使用ができなくなるうえ、軸部材4が破断することで固定具を突出片8aと突出片8bから無理に外した痕跡が残るので、固定具を外したことを容易に判別することができる。
【0034】
また、係止片32と被係止片26は、軸部材4を挿入穴24に挿入するときの軸部材4の軸方向に沿って複数配置されているため、軸部材4と被係合部材2とが係合することのできる位置(軸部材4の挿入穴24への挿入深さ)を調節することができる。よって、突出片8aおよび突出片8bは特定の厚さのものに限られることなく、さまざまな厚さの突出片に対して重ね合わせ状態の保持を実現することができる。
【0035】
なお、上記実施例では係止片32および被係止片26ともに複数設けられている構成を例示したが、いずれか一方のみ複数設けれている場合でも同様の効果を得ることができる。
【0036】
また、本実施例の固定具における軸部材4は、図3(A),(B)に示すように、係止片32を被係止片26ではなく貫通穴10aの縁部に係止させることで、被係合部材2を用いずとも突出片8aと突出片8bの重ね合わせ状態の保持が可能となる。
【0037】
この状態では、指などにより係止片32を基材30側に押すだけで係止片32の貫通穴10aの縁部に対する係止を容易に解除することができる。すなわち、本実施例の固定具では、軸部材4のみを用いることで、突出片8aと突出片8bとの仮固定を行うことができる。
【0038】
[実施例2]
(1)固定具の構成
本実施例の固定具40を図4(A),(B)に示す。固定具40は樹脂製であり、実施例1と同様に2つの異なる物品6a,6bを固定する際に用いるものである。物品6a,6bについては実施例1と同様の構成であるため、同符号を使用して説明を省略する。
【0039】
固定具40は、カバー部材42と、プレート44と、カバー部材42とプレート44とをつなぐ連接部46と、からなる。
カバー部材42は中空の箱型の部材であって、1つの面(図4(A),(B)においては左側面)が、上述した重ね合わせ状態となっている突出片8aおよび突出片8bを挿入可能な開口50として構成されている。なお、上記1つの面は、本実施例ではその全面が開口となっているため実際にはその面に壁面は存在しない。
【0040】
上述した1つの面と対向する(図4(A),(B)においては右側に位置する)面42aには、先端が開口50側に向かって延びる一対のスナップ48が設けられている。一対のスナップ48は、重ね合わせ状態となっている突出片8aおよび突出片8bが挿入されたときに僅かに隙間が生じる間隔で配置されている。スナップ48の先端部48aは開口50方向を向く鏃状に形成されている。
【0041】
連接部46は、中央に開口46aが形成されており、その結果周囲と比較して幅方向に肉薄に形成されている。すなわち、この連接部46が本発明における破断領域となる。
(2)固定具の使用態様
本実施例の固定具40を用いて突出片8aおよび突出片8bを上述した重ね合わせ状態として保持したものを図5(A),(B)に示す。
【0042】
カバー部材42の開口50に突出片8aおよび突出片8bを挿入すると、貫通穴10a,10bが並んでできた連続穴の両端の入口に(貫通穴10a,10bそれぞれに)スナップ48の先端部48aが挿入されて係合する。また突出片8aおよび突出片8bはカバー部材42の壁面とスナップ48に囲まれているため、このようにスナップ48が係合することにより上述した重ね合わせ状態の保持が実現される。
【0043】
ここで、固定具40に強い力を加えて物品6a,6bから無理に外そうとすると、肉薄に形成されて応力に弱い連接部46(破断領域)が破断してしまう。その結果、固定具40を物品6a,6bから無理に外そうとした痕跡が残るため、固定具40を外したことを容易に判別することができる。
【0044】
[実施例3]
(1)固定具の構成
本実施例の固定具60を図6(A)〜(G)に示す。固定具60は樹脂製であり、実施例1と同様に2つの異なる物品6a,6bを固定する際に用いるものである。物品6a,6bについては実施例1と同様の構成であるため図示および説明を省略する。
【0045】
固定具60は、カバー部材62と、プレート64とを有する。
カバー部材62は箱型(筒型)の部材であって、1つの面(図6(A)においては背面)が、上述した重ね合わせ状態となっている突出片8aおよび突出片8bが挿入可能な開口68として構成されている。なお、上記1つの面は、本実施例ではその全面が開口となっているため実際にはその面に壁面は存在しない。
【0046】
上述した1つの面と対向する(図6(A)においては正面に位置する)面62aには、先端が開口68に向かって延びる一対のスナップ66が設けられている。一対のスナップ66は、重ね合わせ状態となっている突出片8aおよび突出片8bが挿入されたときに僅かに隙間が生じる間隔で配置されている。
【0047】
カバー部材62における面62aと交差する面62b,62cには、突出片8aおよび突出片8bの開口68からの挿入方向(図6(A)においては正面−背面方向)に沿って周囲よりも肉薄の破断領域70が形成されている。また、この破断領域70に沿って破断領域70を挟むような位置関係で、2つの板状の延出部72,74がカバー部材62の外側に向けて延びるように設けられている。この延出部72,74は主たる面が互いに平行となるように設けられている。
【0048】
(2)固定具の使用態様
本実施例の固定具60において、カバー部材62と一対のスナップ66は、図5(A),(B)に示す実施例2のカバー部材42およびスナップ48と同様に作用して、突出片8aおよび突出片8bを上述した重ね合わせ状態として保持することができる。
【0049】
ここで、固定具60に強い力を加えて物品6a,6bから無理に外そうとすると、肉薄に形成されて応力に弱い破断領域70が破断し、カバー部材62が破損してその形状を維持できなくなる。よって、カバー部材62が破損することで固定具60を突出片8aと突出片8bから無理に外した痕跡が残るので、固定具60を外したことを容易に判別することができる。
【0050】
一方、物品6a,6bに取り付けられた固定具60を取り外すためには破断領域70が破断させてカバー部材62を破損させる必要があるが、その場合には延出部72,74に力を加えることで、容易に破断領域70を破断させることができる。例えば延出部72と延出部74との隙間に棒などを挿入してそれらの間隔が拡がるように力を加えたり、延出部72と延出部74との間隔が狭まるように指や工具などで操作したりすることで容易に破断領域70を破断させることができる。
【0051】
なお、本実施例では破断領域70を挟むように延出部72,74が設けられる構成を例示したが、破断領域に沿って1つの延出部が設けられる構成であってもよいし、図7(A),(B)に示す固定具80のように、1つの延出部82を2つの破断領域84にて挟み込むように構成されていてもよい。この固定具80では、例えば一対の延出部82を挟むように指で摘むことで破断領域84に応力を掛けて破断させることができる。図7(A),(B)の固定具80において、固定具60と同様の構成については同符号を使用している。
【0052】
また、延出部を設けず、破断領域のみが設けられる構成であってもよい。
[実施例4]
(1)固定具の構成
本実施例の固定具90を図8(A)〜(H)に示す。固定具90は樹脂製であり、実施例1と同様に2つの異なる物品6a,6bを固定する際に用いるものである。物品6a,6bについては実施例1と同様の構成であるため、同符号を使用して説明を省略する。
【0053】
固定具90は、カバー部材92と、プレート94とを有する。
カバー部材92は筒状の部材である。一方の開口96は、上述した重ね合わせ状態となっている突出片8aおよび突出片8bが挿入可能である。他方の開口98の周縁には、互いに対向し、カバー部材92の筒状の軸方向にそって延びる板状の一対の突出部100a,100bが設けられている。
【0054】
突出部100a,100bは、開口98から延び出す方向と交差する方向の両端部において一対のスナップ102が連接されている。この一対のスナップ102は、開口98からカバー部材92の内部に挿入されるように配置されている。スナップ102の一方はプレート94と同一面となるように形成されている。
【0055】
(2)固定具の使用態様
本実施例の固定具90において、カバー部材92と一対のスナップ102は、図5(A),(B)に示す実施例2のカバー部材42およびスナップ48と同様に作用して、突出片8aおよび突出片8bを上述した重ね合わせ状態として保持することができる。
【0056】
固定具90を取り外すためには、スナップ102の貫通穴10a,10bへの係合(図示しない)を解除する必要があるが、係合部分はカバー部材92によって覆われているため容易に動かすことができない。
【0057】
そこで、スナップ102におけるカバー部材92の外部に位置するスナップ102の根元部分を操作する必要があるが、スナップ102の根元を操作して係合している先端部分を動かすためには非常に強い力を加える必要がある。よって、スナップ102の根元に力を加えると、幅方向(図8(A),(B)における矢印方向)の厚みが周囲(プレート94やカバー部材92)よりも薄いスナップ102が折れてしまう。よって、スナップ102が破損することで固定具90を突出片8aと突出片8bから無理に外した痕跡が残るので、固定具90を外したことを容易に判別することができる。
【0058】
なお、スナップ102の根元近傍を周囲よりも肉薄に形成してもよい。このように構成すれば、スナップ102の係合を解除しようとして根元に力を加えたときにスナップ102が折れやすくなるため、スナップ102の係合を解除して固定具90を外した痕跡をより確実に残すことができる。
【0059】
[実施例5]
(1)固定具の構成
本実施例の固定具は、図9(A),(B)に示すように、いずれも樹脂製の被係合部材110と軸部材112とからなるものであって、実施例1と同様に2つの異なる物品6a,6bを固定する際に用いるものである。物品6a,6bについては実施例1と同様の構成であるため、同符号を使用して説明を省略する。
【0060】
上述した被係合部材110は、中空状の箱型のケース部材114を有している。ケース部材114を構成する面の一つは他の面よりも広く形成され、文字情報や図柄を予め形成して、或いは後から記入して表示可能なプレート116となっている。
【0061】
このケース部材114は、軸部材112が挿入可能な第1の開口118と、上述した重ね合わせ状態となった突出片8aおよび突出片8bを挿入可能な第2の開口120と、が形成されている。第2の開口120は、第1の開口118が形成された面(図9における下側面)と交差する面のうちプレート116でない3つの面に跨って形成されている。
【0062】
第2の開口120は、重ね合わせ状態となった突出片8aおよび突出片8bの厚さに合せて上下方向の幅が定められており、突出片8aおよび突出片8bが挿入された状態では、上下方向に僅かに隙間が生じるように構成されている。
【0063】
プレート116には第1の開口118に繋がる溝部122が形成されており、当該溝部122に軸部材112における後述する張出部126が収まるようになっている。
軸部材112は、柱状の基部124と、基部124の一端(図9(A),(B)における下端)において外周側に張り出した張出部126と、基部124の他端(図9(A),(B)における上端)において下方向に傾斜するように延び出し、基部124の軸方向と交差する方向に弾性変形する一対の係止片128と、を備える。
【0064】
基部124における張出部126と係止片128との間には、周囲よりも肉薄に形成された破断領域130が設けられている。
(2)固定具の使用態様
本実施例の固定具を用いて突出片8aおよび突出片8bを上述した重ね合わせ状態として保持したものを図10(A),(B)に示す。
【0065】
固定具の取り付け手順を説明する。まず第2の開口120から重ね合わせ状態とした突出片8aおよび突出片8bを挿入する。このとき、貫通穴10a,10bが並んでできた連続穴はケース部材114の内部に位置することとなる。次に、第1の開口118から軸部材112の他端(係止片128側)を挿入し、係止片128に連続穴を通過させる。その結果、係止片128が連続穴の周縁部(貫通穴10aの周縁部)に係止する。
【0066】
上述したように固定具が取り付けられた状態においては、突出片8aおよび突出片8bを第2の開口120から抜くことができず、また第2の開口120の周縁部に接触するため上下方向にも動かすことができないので、上記重ね合わせ状態が保持される。
【0067】
突出片8aと突出片8bとを第2の開口120から抜くためには係止片128と連続穴との係止を解除する必要があるが、その係止部分はケース部材114の内部であるため容易に解除することができない。
【0068】
ここで、突出片8aおよび突出片8bを第2の開口120から無理に抜こうとしたり、被係合部材110から軸部材112を無理に外そうとすると、応力に弱い破断領域130が破断する。その結果、軸部材112を再び使用することができなくなるうえ、軸部材112が破断することで固定具を突出片8aと突出片8bから無理に外した痕跡が残るので、固定具を外したことを容易に判別することができる。
【0069】
また、図10(A),(B)の状態では、張出部126が溝部122に収まっているため、張出部126がプレート116からはみ出して外観品質を低下させる虞がない。なお、張出部126が第1の開口118の内部に収まるように構成してもよい。
【0070】
[実施例6]
(1)固定具の構成
本実施例の固定具は、図11(A),(B)に示すように、いずれも樹脂製の被係合部材140と軸部材142とからなるものであって、実施例1と同様に2つの異なる物品6a,6bを固定する際に用いるものである。物品6a,6bについては実施例1と同様の構成であるため、同符号を使用して説明を省略する。
【0071】
上述した被係合部材140は、中空状の箱型のケース部材144を有している。このケース部材144は、軸部材142が挿入可能な第1の開口146と、上述した重ね合わせ状態となった突出片8aおよび突出片8bを挿入可能な第2の開口148と、が形成されている。第2の開口148は、第1の開口146が形成された面(図11(A),(B)における上側面)と交差する面に形成されている。
【0072】
第2の開口148は、重ね合わせ状態となった突出片8aおよび突出片8bの形状に合せて幅が定められており、突出片8aおよび突出片8bが挿入された状態では、突出片8aおよび突出片8bの周囲に僅かに隙間が生じるように構成されている。
【0073】
軸部材142は、柱状の基部150と、基部150の一端(図11(A),(B)における上端)において外周側に張り出した張出部152と、基部150の他端(図11(A),(B)における下端)において上方向に傾斜するように延び出し、基部150の軸方向と交差する方向に弾性変形する係止片154と、を備える。
【0074】
基部150における張出部152と係止片154との間には、周囲よりも肉薄に形成された破断領域156が設けられている。
(2)固定具の使用態様
本実施例の固定具を用いて突出片8aおよび突出片8bを上述した重ね合わせ状態として保持したものを図12(A),(B)に示す。
【0075】
固定具の取り付け手順を説明する。まず第2の開口148から重ね合せ状態とした突出片8aおよび突出片8bを挿入する。このとき、貫通穴10a,10bが並んでできた連続穴はケース部材144の内部に位置することとなる。次に、第1の開口146から軸部材142の他端(係止片154側)を挿入し、係止片154に連続穴を通過させる。その結果、係止片154が連続穴の周縁部(貫通穴10bの周縁部)に係止する。
【0076】
上述したように固定具が取り付けられた状態においては、突出片8aおよび突出片8bは第2の開口148によって囲まれており、かつ軸部材142によって突出片8aおよび突出片8bを第2の開口148から抜くこともできないので、上記重ね合わせ状態が保持される。
【0077】
突出片8aと突出片8bとを第2の開口148から抜くためには係止片154と連続穴との係止を解除する必要があるが、その係止部分はケース部材144の内部であるため容易に解除することができない。
【0078】
ここで、突出片8aおよび突出片8bを第2の開口148から無理に抜こうとしたり、被係合部材140から軸部材142を無理に外そうとすると、応力に弱い破断領域156が破断する。その結果、軸部材142を再び使用することができなくなるうえ、軸部材142が破断することで固定具を突出片8aと突出片8bから無理に外した痕跡が残るので、固定具を外したことを容易に判別することができる。
【0079】
なお、本実施例の固定具では、軸部材142のみを用いて突出片8aおよび突出片8bの固定を行うことも可能である。具体的には、突出片8aおよび突出片8bを上述した重ね合わせ状態として連続穴に軸部材142を通過させ、上述したように係止片154を連続穴の周縁部に係止することで固定できる。
【0080】
この状態では、指などにより係止片154を基部150側に押すだけで係止片154の貫通穴10aの縁部に対する係止を容易に解除することができる。すなわち、本実施例の固定具では、軸部材142のみを用いることで、突出片8aと突出片8bとの仮固定を行うことができる。
【0081】
なお上述したように、ケース部材144を同時に用いると、係止片154の外部からの操作が不能となるほか、第2の開口148によって突出片8aと突出片8bとがずれることを防止できるため、重ね合わせ状態をより強固に保持できる。
【符号の説明】
【0082】
2…被係合部材、4…軸部材、6a,6b…物品、8a,8b…突出片、10a,10b…貫通穴、20…筒状部、22…プレート、24…挿入穴、26…被係止片、28…開口、30…基材、32…係止片、34…張出部、36…破断領域、40…固定具、42…カバー部材、44…プレート、46…連接部、46a…開口、48…スナップ、48a…先端部、50…開口、60…固定具、62…カバー部材、64…プレート、66…スナップ、68…開口、70…破断領域、72…延出部、74…延出部、80…固定具、82…延出部、84…破断領域、90…固定具、92…カバー部材、94…プレート、96…開口、98…開口、100a,100b…突出部、102…スナップ、110…被係合部材、112…軸部材、114…ケース部材、116…プレート、118…開口、120…開口、122…溝部、124…基部、126…張出部、128…係止片、130…破断領域、140…被係合部材、142…軸部材、144…ケース部材、146…開口、148…開口、150…基部、152…張出部、154…係止片、156…破断領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの板状の部材を重ね合わせた状態に保持する固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの板状の部材を重ね合わせた状態で保持する固定具として、板状の部材それぞれに形成された貫通穴を重ね合わせてその貫通穴に軸状の部材を通過させて固定する固定具が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−270630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
家電、産業機器、遊戯機器などの分野では、封緘するための固定具を取り外した場合には、および固定具を取り外した痕跡がわかることが要求される場合がある。
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、取り外した痕跡を残すことができる固定具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した問題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、同一の方向に突出する板状の部材である第1の突出片および第2の突出片を、当該第1の突出片および第2の突出片それぞれの主たる面に形成された貫通穴が並んで1つの連続穴となるように重ね合わせられた重ね合わせ状態に保持する固定具であり、周囲よりも肉薄である破断領域が形成されていることを特徴とする固定具である。
【0006】
このように構成された固定具は、重ね合わせ状態となった第1の突出片と第2の突出片とをその状態に保持することができる。
さらに、この固定具には周囲よりも肉薄の破断領域が形成されている。破断領域は周囲よりも肉薄であるため固定具に力が加えられると破断してしまう。その結果、固定具を取り外した場合には破断領域が破断した痕跡が残ることとなるため、固定具を見るだけで容易に固定具を取り外したか否かを確認することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の固定具において、柱状の部材であって、その一端に外周側に張り出した張出部が形成されてなる軸部材と、前記軸部材の他端を挿入可能な挿入穴を有し、当該挿入穴に前記軸部材の他端を挿入された状態においては前記軸部材と係合して前記軸部材が前記挿入穴から抜けることを抑制する被係合部材と、を備え、前記破断領域が、前記軸部材における前記被係合部材と係合する領域と前記張出部との間に形成されており、前記連続穴に挿入された前記軸部材における前記張出部と、前記軸部材と係合した前記被係合部材と、により前記第1の突出片および前記第2の突出片を挟み込むことで、前記重ね合わせ状態の保持を実現することを特徴とする。
【0008】
このように構成された固定具では、軸部材の張出部と被係合部材とによって、第1の突出片と第2の突出片とを重ね合わせ状態として保持することができる。
そして、軸部材における被係合部材と係合する領域と、張出部と、の間に破断領域が形成されていることから、固定具に力が加えられて破断領域が破断すると上記領域と張出部とが分離してしまう。その結果、固定具の軸部材を見るだけで容易に固定具を取り外したか否かを確認することができる。また、上述したように軸部材が分離すると、軸部材を再利用することができなくなる。即ち、当該固定具を使用して第1の突出片と第2の突出片とを重ね合わせ状態として保持することができなくなっているので、その点を確認することでも固定具を取り外したことを容易に確認することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の固定具において、前記軸部材が前記一端方向に傾斜するように前記軸部材から延び出し、前記軸部材の軸方向と交差する方向に弾性変形する係止片を備え、前記被係合部材が前記挿入穴に前記軸部材の他端が挿入された状態において前記係止片と係合して前記軸部材が前記挿入穴から抜けることを抑制する被係止片を備えることを特徴とする。
【0010】
このように構成された固定具であれば、軸部材に形成された係止片と、被係合部材に形成された被係止片と、によって、軸部材と被係合部材との係合を実現することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の固定具において、前記係止片および前記被係止片のうち少なくともいずれか一方は、前記軸部材を前記挿入穴に挿入するときの前記軸部材の軸方向に沿って複数配置されていることを特徴とする。
【0011】
このように構成された固定具であれば、係止片と被係止片とが係合できる位置(軸部材の挿入穴への挿入深さ)の調整が可能となる。第1の突出片と第2の突出片とを重ねた状態で適切に保持するためには、その重ねた状態での厚さと、それらを挟み込む被係合部材と張出部との距離と、が近いほど好ましいが、軸部材の挿入穴への挿入深さが調整できる場合、被係合部材と張出部との距離を調整できることとなる。
【0012】
よって、第1の突出片と第2の突出片とを重ねた状態での厚さが特定の厚さでなくてもよく、さまざまな厚さの第1の突出片および第2の突出片に対して良好に重ね合わせ状態の保持を実現することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の固定具において、前記重ね合わせ状態となった前記第1の突出片および前記第2の突出片を挿入可能な開口が形成され、当該開口に前記重ね合わせ状態となった前記第1の突出片および前記第2の突出片が挿入された際に、前記連続穴の両端の入口に挿入される2つのスナップが設けられたカバー部材を備え、前記破断領域は、前記カバー部材において、前記開口の周縁部から前記第1の突出片および前記第2の突出片の挿入方向に沿って形成されており、前記2つのスナップが前記連続穴の両端の入口から挿入されることで、前記重ね合わせ状態の保持を実現することを特徴とする。
【0014】
このように構成された固定具では、第1の突出片および第2の突出片を開口に挿入するとスナップが連続穴と係止して第1の突出片および第2の突出片が開口から抜けることを抑制するため、重ね合わせ状態に保持することができる。
【0015】
さらに、カバー部材における開口の周縁部から第1の突出片および第2の突出片の挿入方向に沿って破断領域が形成されているため、固定具に力が加えられて破断領域が破断するとカバー部材の開口の形状が変形してしまい、カバー部材によって重ね合わせ状態の保持ができなくなってしまう。その結果、固定具を見るだけで容易に固定具を取り外したか否かを確認することができる。また、上述したようにカバー部材が破損することにより、カバー部材を再利用して第1の突出片と第2の突出片とを重ね合わせ状態として保持することができなくなっているので、その点を確認することでも固定具を取り外したことを容易に確認することができる。
【0016】
請求項6に記載の固定具は、請求項4に記載の固定具において、前記カバー部材における前記破断領域に沿った位置から前記カバー部材の外側に向けて延びる延出部を備えることを特徴とする。
【0017】
このように構成された固定具では、延出部に荷重が加えられると破断領域に強い力が加えられることとなるため、破断領域が容易に破断されることとなる。すなわち、固定具を無理に外そうとする場合にはさらに容易に破断領域が破断されるため、固定具を取り外そうとしたことをより確実に確認できるようになる。一方、固定具を外す必要があるときには延出部に力を加えることで容易に固定具を破壊できるため都合がよい。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の固定具において、柱状の部材であって、その一端において外周側に張り出した張出部と、前記一端方向に傾斜するように前記軸部材から延び出し、前記柱の軸方向と交差する方向に弾性変形する係止片と、が形成されてなる軸部材と、前記軸部材の他端側が挿入可能な第1の開口と、前記重ね合わせ状態となった前記第1の突出片および前記第2の突出片を挿入可能な第2の開口と、を有するケース部材と、を備え、前記破断領域が前記軸部材における前記係止片と前記張出部との間に形成されており、前記第1の開口から前記軸部材の他端側が前記ケース部材内部に挿入され、かつ前記第2の開口から前記第1の突出片および前記第2の突出片が前記ケース部材内部に挿入された状態で、前記連続穴に挿入された前記軸部材における前記連続穴を通過した前記係止片が前記連続穴の周縁部に係止することで、前記重ね合わせ状態の保持を実現することを特徴とする。
【0019】
このように構成された固定具では、第1の突出片と第2の突出片とを重ね合わせ状態として保持することができる。
そして、軸部材における係止片と張出部との間に破断領域が形成されていることから、固定具に力が加えられて破断領域が破断すると係止片と張出部とが分離してしまう。その結果、固定具における軸部材を見るだけで容易に固定具を取り外したか否かを確認することができる。また、上述したように軸部材が分離して破損することにより、当該固定具を使用して第1の突出片と第2の突出片とを重ね合わせ状態として保持することができなくなっているので、その点を確認することでも固定具を取り外したことを容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1の固定具を示す斜視図(A)、および左側面(矢印A方向)からみた断面図(B)
【図2】実施例1の固定具を物品に取り付けた状態を示す斜視図(A)、および左側面(矢印A方向)からみた断面図(B)
【図3】実施例1の軸部材を物品に取り付けた状態を示す斜視図(A)、および左側面(矢印A方向)からみた断面図(B)
【図4】実施例2の固定具を示す斜視図(A)、および左側面(矢印A方向)からみた断面図(B)
【図5】実施例2の固定具を物品に取り付けた状態を示す斜視図(A)、および左側面(矢印A方向)からみた断面図(B)
【図6】実施例3の固定具を示す斜視図(A)、正面図(B)、左側面図(C)、右側面図(D)、平面図(E)、底面図(F)、平面図におけるA−A断面図(G)
【図7】実施例3の固定具の変形例を示す正面図(A)、斜視図(B)
【図8】実施例4の固定具を示す斜視図(A)(B)、正面図(C)、左側面図(D)、右側面図(E)、平面図(F)、底面図(G)、平面図におけるA−A断面図(H)
【図9】実施例5の固定具を示す斜視図(A)、および左側面(矢印A方向)からみた断面図(B)
【図10】実施例5の固定具を物品に取り付けた状態を示す斜視図(A)、および左側面(矢印A方向)からみた断面図(B)
【図11】実施例6の固定具を示す斜視図(A)、および左側面(矢印A方向)からみた断面図(B)
【図12】実施例6の固定具を物品に取り付けた状態を示す斜視図(A)、および左側面(矢印A方向)からみた断面図(B)
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施例等により発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は下記の実施例等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまに実施できることは言うまでもない。
【0022】
[実施例1]
(1)固定具の構成
本実施例の固定具は、図1(A),(B)に示すように、いずれも樹脂製の被係合部材2と、軸部材4と、からなるものであって、2つの異なる物品6a,6bを固定する際に用いるものである。図1(A),(B)には物品6a,6bの一部分のみが示されている。
【0023】
物品6a,6bには、それぞれ板状の部材である突出片8a,8bが形成されている。この突出片8a,8bにおける主たる面には矩形の貫通穴10a,10bが形成されている。本実施例の固定具は、上述した貫通穴10a,10bが並んで1つの連続した穴となるように、かつ、突出片8aおよび突出片8bの突出方向が同一の方向に揃うように重ね合わせられた重ね合わせ状態(図1(A)に示す突出片8aおよび突出片8bの状態)に保持する。
【0024】
上述した被係合部材2は、断面四角形の筒状である筒状部20を有している。筒状部20を構成する壁面の一つは、他の面よりも広く延び出したプレート22となっている。このプレート22は、文字情報や図柄を予め形成して、或いは後から記入して表示することができる。
【0025】
筒状部20の内部は軸部材4が挿入可能な挿入穴24となっている。筒状部20の内側面のうち、プレート22側の面には筒状部20の軸方向に沿って複数(本実施例では3つ)の被係止片26が形成されている。
【0026】
また筒状部20を構成する壁面のうち、プレート22と対向する壁面には開口28が形成されている。
軸部材4は、柱状の基材30と、基材30に連接された複数(本実施例では5つ)の係止片32と、基材30よりも外周側に張り出した張出部34と、からなる。係止片32は基材30の他端30aから軸方向に沿って並ぶように設けられている。また張出部34は上記他端30aとは逆の一端30bに設けられている。
【0027】
係止片32は、一端30b方向に傾斜するように基材30から延び出し、基材30の軸方向と交差する方向に弾性変形する。
張出部34は矩形の板状であって、上述した物品6a,6bの貫通穴10a,10bよりも大きく形成されており、貫通穴10a,10bを通過できないようになっている。
【0028】
また、基材30における係止片32が設けられた領域と張出部34との間には、周囲よりも肉薄に形成された破断領域36が設けられている。この破断領域36は基材30におけるその周囲の部分と比較して引張強さが小さく、基材30に応力が加えられるとまずこの破断領域36が破断するように構成されている。
【0029】
(2)固定具の使用態様
本実施例の固定具を用いて突出片8aおよび突出片8bを上述した重ね合わせ状態として保持したものを図2(A),(B)に示す。
【0030】
固定具の取り付け手順を説明する。まず貫通穴10a,10bが一列に並ぶことによってできた連続穴に軸部材4の一端30a側を挿入して通過させる。次に、貫通穴10a,10bを通過した軸部材4の一端30a側を被係合部材2の挿入穴24に挿入する。
【0031】
このように固定具を取り付けると、係止片32が挿入穴24の内部に設けられた被係止片26と係合するため、軸部材4が挿入穴24から抜けることが抑制される(軸部材4と被係合部材2とが係合する)。このように、被係合部材2と張出部34とにより突出片8aおよび突出片8bを挟み込むことで、突出片8aと突出片8bとの重ね合わせ状態の保持を実現する。
【0032】
上述したように固定具が取り付けられた状態において、突出片8aと突出片8bとを離間しようとすると、被係合部材2と軸部材4との係合を解除する必要があるが、係止片32と被係止片26とは筒状部20の内部において係合しているため容易に解除することができない。
【0033】
ここで、被係合部材2と軸部材4とに強い力を加えて無理に外そうとすると、応力に弱い破断領域36が破断してしまう。その結果、軸部材4の再使用ができなくなるうえ、軸部材4が破断することで固定具を突出片8aと突出片8bから無理に外した痕跡が残るので、固定具を外したことを容易に判別することができる。
【0034】
また、係止片32と被係止片26は、軸部材4を挿入穴24に挿入するときの軸部材4の軸方向に沿って複数配置されているため、軸部材4と被係合部材2とが係合することのできる位置(軸部材4の挿入穴24への挿入深さ)を調節することができる。よって、突出片8aおよび突出片8bは特定の厚さのものに限られることなく、さまざまな厚さの突出片に対して重ね合わせ状態の保持を実現することができる。
【0035】
なお、上記実施例では係止片32および被係止片26ともに複数設けられている構成を例示したが、いずれか一方のみ複数設けれている場合でも同様の効果を得ることができる。
【0036】
また、本実施例の固定具における軸部材4は、図3(A),(B)に示すように、係止片32を被係止片26ではなく貫通穴10aの縁部に係止させることで、被係合部材2を用いずとも突出片8aと突出片8bの重ね合わせ状態の保持が可能となる。
【0037】
この状態では、指などにより係止片32を基材30側に押すだけで係止片32の貫通穴10aの縁部に対する係止を容易に解除することができる。すなわち、本実施例の固定具では、軸部材4のみを用いることで、突出片8aと突出片8bとの仮固定を行うことができる。
【0038】
[実施例2]
(1)固定具の構成
本実施例の固定具40を図4(A),(B)に示す。固定具40は樹脂製であり、実施例1と同様に2つの異なる物品6a,6bを固定する際に用いるものである。物品6a,6bについては実施例1と同様の構成であるため、同符号を使用して説明を省略する。
【0039】
固定具40は、カバー部材42と、プレート44と、カバー部材42とプレート44とをつなぐ連接部46と、からなる。
カバー部材42は中空の箱型の部材であって、1つの面(図4(A),(B)においては左側面)が、上述した重ね合わせ状態となっている突出片8aおよび突出片8bを挿入可能な開口50として構成されている。なお、上記1つの面は、本実施例ではその全面が開口となっているため実際にはその面に壁面は存在しない。
【0040】
上述した1つの面と対向する(図4(A),(B)においては右側に位置する)面42aには、先端が開口50側に向かって延びる一対のスナップ48が設けられている。一対のスナップ48は、重ね合わせ状態となっている突出片8aおよび突出片8bが挿入されたときに僅かに隙間が生じる間隔で配置されている。スナップ48の先端部48aは開口50方向を向く鏃状に形成されている。
【0041】
連接部46は、中央に開口46aが形成されており、その結果周囲と比較して幅方向に肉薄に形成されている。すなわち、この連接部46が本発明における破断領域となる。
(2)固定具の使用態様
本実施例の固定具40を用いて突出片8aおよび突出片8bを上述した重ね合わせ状態として保持したものを図5(A),(B)に示す。
【0042】
カバー部材42の開口50に突出片8aおよび突出片8bを挿入すると、貫通穴10a,10bが並んでできた連続穴の両端の入口に(貫通穴10a,10bそれぞれに)スナップ48の先端部48aが挿入されて係合する。また突出片8aおよび突出片8bはカバー部材42の壁面とスナップ48に囲まれているため、このようにスナップ48が係合することにより上述した重ね合わせ状態の保持が実現される。
【0043】
ここで、固定具40に強い力を加えて物品6a,6bから無理に外そうとすると、肉薄に形成されて応力に弱い連接部46(破断領域)が破断してしまう。その結果、固定具40を物品6a,6bから無理に外そうとした痕跡が残るため、固定具40を外したことを容易に判別することができる。
【0044】
[実施例3]
(1)固定具の構成
本実施例の固定具60を図6(A)〜(G)に示す。固定具60は樹脂製であり、実施例1と同様に2つの異なる物品6a,6bを固定する際に用いるものである。物品6a,6bについては実施例1と同様の構成であるため図示および説明を省略する。
【0045】
固定具60は、カバー部材62と、プレート64とを有する。
カバー部材62は箱型(筒型)の部材であって、1つの面(図6(A)においては背面)が、上述した重ね合わせ状態となっている突出片8aおよび突出片8bが挿入可能な開口68として構成されている。なお、上記1つの面は、本実施例ではその全面が開口となっているため実際にはその面に壁面は存在しない。
【0046】
上述した1つの面と対向する(図6(A)においては正面に位置する)面62aには、先端が開口68に向かって延びる一対のスナップ66が設けられている。一対のスナップ66は、重ね合わせ状態となっている突出片8aおよび突出片8bが挿入されたときに僅かに隙間が生じる間隔で配置されている。
【0047】
カバー部材62における面62aと交差する面62b,62cには、突出片8aおよび突出片8bの開口68からの挿入方向(図6(A)においては正面−背面方向)に沿って周囲よりも肉薄の破断領域70が形成されている。また、この破断領域70に沿って破断領域70を挟むような位置関係で、2つの板状の延出部72,74がカバー部材62の外側に向けて延びるように設けられている。この延出部72,74は主たる面が互いに平行となるように設けられている。
【0048】
(2)固定具の使用態様
本実施例の固定具60において、カバー部材62と一対のスナップ66は、図5(A),(B)に示す実施例2のカバー部材42およびスナップ48と同様に作用して、突出片8aおよび突出片8bを上述した重ね合わせ状態として保持することができる。
【0049】
ここで、固定具60に強い力を加えて物品6a,6bから無理に外そうとすると、肉薄に形成されて応力に弱い破断領域70が破断し、カバー部材62が破損してその形状を維持できなくなる。よって、カバー部材62が破損することで固定具60を突出片8aと突出片8bから無理に外した痕跡が残るので、固定具60を外したことを容易に判別することができる。
【0050】
一方、物品6a,6bに取り付けられた固定具60を取り外すためには破断領域70が破断させてカバー部材62を破損させる必要があるが、その場合には延出部72,74に力を加えることで、容易に破断領域70を破断させることができる。例えば延出部72と延出部74との隙間に棒などを挿入してそれらの間隔が拡がるように力を加えたり、延出部72と延出部74との間隔が狭まるように指や工具などで操作したりすることで容易に破断領域70を破断させることができる。
【0051】
なお、本実施例では破断領域70を挟むように延出部72,74が設けられる構成を例示したが、破断領域に沿って1つの延出部が設けられる構成であってもよいし、図7(A),(B)に示す固定具80のように、1つの延出部82を2つの破断領域84にて挟み込むように構成されていてもよい。この固定具80では、例えば一対の延出部82を挟むように指で摘むことで破断領域84に応力を掛けて破断させることができる。図7(A),(B)の固定具80において、固定具60と同様の構成については同符号を使用している。
【0052】
また、延出部を設けず、破断領域のみが設けられる構成であってもよい。
[実施例4]
(1)固定具の構成
本実施例の固定具90を図8(A)〜(H)に示す。固定具90は樹脂製であり、実施例1と同様に2つの異なる物品6a,6bを固定する際に用いるものである。物品6a,6bについては実施例1と同様の構成であるため、同符号を使用して説明を省略する。
【0053】
固定具90は、カバー部材92と、プレート94とを有する。
カバー部材92は筒状の部材である。一方の開口96は、上述した重ね合わせ状態となっている突出片8aおよび突出片8bが挿入可能である。他方の開口98の周縁には、互いに対向し、カバー部材92の筒状の軸方向にそって延びる板状の一対の突出部100a,100bが設けられている。
【0054】
突出部100a,100bは、開口98から延び出す方向と交差する方向の両端部において一対のスナップ102が連接されている。この一対のスナップ102は、開口98からカバー部材92の内部に挿入されるように配置されている。スナップ102の一方はプレート94と同一面となるように形成されている。
【0055】
(2)固定具の使用態様
本実施例の固定具90において、カバー部材92と一対のスナップ102は、図5(A),(B)に示す実施例2のカバー部材42およびスナップ48と同様に作用して、突出片8aおよび突出片8bを上述した重ね合わせ状態として保持することができる。
【0056】
固定具90を取り外すためには、スナップ102の貫通穴10a,10bへの係合(図示しない)を解除する必要があるが、係合部分はカバー部材92によって覆われているため容易に動かすことができない。
【0057】
そこで、スナップ102におけるカバー部材92の外部に位置するスナップ102の根元部分を操作する必要があるが、スナップ102の根元を操作して係合している先端部分を動かすためには非常に強い力を加える必要がある。よって、スナップ102の根元に力を加えると、幅方向(図8(A),(B)における矢印方向)の厚みが周囲(プレート94やカバー部材92)よりも薄いスナップ102が折れてしまう。よって、スナップ102が破損することで固定具90を突出片8aと突出片8bから無理に外した痕跡が残るので、固定具90を外したことを容易に判別することができる。
【0058】
なお、スナップ102の根元近傍を周囲よりも肉薄に形成してもよい。このように構成すれば、スナップ102の係合を解除しようとして根元に力を加えたときにスナップ102が折れやすくなるため、スナップ102の係合を解除して固定具90を外した痕跡をより確実に残すことができる。
【0059】
[実施例5]
(1)固定具の構成
本実施例の固定具は、図9(A),(B)に示すように、いずれも樹脂製の被係合部材110と軸部材112とからなるものであって、実施例1と同様に2つの異なる物品6a,6bを固定する際に用いるものである。物品6a,6bについては実施例1と同様の構成であるため、同符号を使用して説明を省略する。
【0060】
上述した被係合部材110は、中空状の箱型のケース部材114を有している。ケース部材114を構成する面の一つは他の面よりも広く形成され、文字情報や図柄を予め形成して、或いは後から記入して表示可能なプレート116となっている。
【0061】
このケース部材114は、軸部材112が挿入可能な第1の開口118と、上述した重ね合わせ状態となった突出片8aおよび突出片8bを挿入可能な第2の開口120と、が形成されている。第2の開口120は、第1の開口118が形成された面(図9における下側面)と交差する面のうちプレート116でない3つの面に跨って形成されている。
【0062】
第2の開口120は、重ね合わせ状態となった突出片8aおよび突出片8bの厚さに合せて上下方向の幅が定められており、突出片8aおよび突出片8bが挿入された状態では、上下方向に僅かに隙間が生じるように構成されている。
【0063】
プレート116には第1の開口118に繋がる溝部122が形成されており、当該溝部122に軸部材112における後述する張出部126が収まるようになっている。
軸部材112は、柱状の基部124と、基部124の一端(図9(A),(B)における下端)において外周側に張り出した張出部126と、基部124の他端(図9(A),(B)における上端)において下方向に傾斜するように延び出し、基部124の軸方向と交差する方向に弾性変形する一対の係止片128と、を備える。
【0064】
基部124における張出部126と係止片128との間には、周囲よりも肉薄に形成された破断領域130が設けられている。
(2)固定具の使用態様
本実施例の固定具を用いて突出片8aおよび突出片8bを上述した重ね合わせ状態として保持したものを図10(A),(B)に示す。
【0065】
固定具の取り付け手順を説明する。まず第2の開口120から重ね合わせ状態とした突出片8aおよび突出片8bを挿入する。このとき、貫通穴10a,10bが並んでできた連続穴はケース部材114の内部に位置することとなる。次に、第1の開口118から軸部材112の他端(係止片128側)を挿入し、係止片128に連続穴を通過させる。その結果、係止片128が連続穴の周縁部(貫通穴10aの周縁部)に係止する。
【0066】
上述したように固定具が取り付けられた状態においては、突出片8aおよび突出片8bを第2の開口120から抜くことができず、また第2の開口120の周縁部に接触するため上下方向にも動かすことができないので、上記重ね合わせ状態が保持される。
【0067】
突出片8aと突出片8bとを第2の開口120から抜くためには係止片128と連続穴との係止を解除する必要があるが、その係止部分はケース部材114の内部であるため容易に解除することができない。
【0068】
ここで、突出片8aおよび突出片8bを第2の開口120から無理に抜こうとしたり、被係合部材110から軸部材112を無理に外そうとすると、応力に弱い破断領域130が破断する。その結果、軸部材112を再び使用することができなくなるうえ、軸部材112が破断することで固定具を突出片8aと突出片8bから無理に外した痕跡が残るので、固定具を外したことを容易に判別することができる。
【0069】
また、図10(A),(B)の状態では、張出部126が溝部122に収まっているため、張出部126がプレート116からはみ出して外観品質を低下させる虞がない。なお、張出部126が第1の開口118の内部に収まるように構成してもよい。
【0070】
[実施例6]
(1)固定具の構成
本実施例の固定具は、図11(A),(B)に示すように、いずれも樹脂製の被係合部材140と軸部材142とからなるものであって、実施例1と同様に2つの異なる物品6a,6bを固定する際に用いるものである。物品6a,6bについては実施例1と同様の構成であるため、同符号を使用して説明を省略する。
【0071】
上述した被係合部材140は、中空状の箱型のケース部材144を有している。このケース部材144は、軸部材142が挿入可能な第1の開口146と、上述した重ね合わせ状態となった突出片8aおよび突出片8bを挿入可能な第2の開口148と、が形成されている。第2の開口148は、第1の開口146が形成された面(図11(A),(B)における上側面)と交差する面に形成されている。
【0072】
第2の開口148は、重ね合わせ状態となった突出片8aおよび突出片8bの形状に合せて幅が定められており、突出片8aおよび突出片8bが挿入された状態では、突出片8aおよび突出片8bの周囲に僅かに隙間が生じるように構成されている。
【0073】
軸部材142は、柱状の基部150と、基部150の一端(図11(A),(B)における上端)において外周側に張り出した張出部152と、基部150の他端(図11(A),(B)における下端)において上方向に傾斜するように延び出し、基部150の軸方向と交差する方向に弾性変形する係止片154と、を備える。
【0074】
基部150における張出部152と係止片154との間には、周囲よりも肉薄に形成された破断領域156が設けられている。
(2)固定具の使用態様
本実施例の固定具を用いて突出片8aおよび突出片8bを上述した重ね合わせ状態として保持したものを図12(A),(B)に示す。
【0075】
固定具の取り付け手順を説明する。まず第2の開口148から重ね合せ状態とした突出片8aおよび突出片8bを挿入する。このとき、貫通穴10a,10bが並んでできた連続穴はケース部材144の内部に位置することとなる。次に、第1の開口146から軸部材142の他端(係止片154側)を挿入し、係止片154に連続穴を通過させる。その結果、係止片154が連続穴の周縁部(貫通穴10bの周縁部)に係止する。
【0076】
上述したように固定具が取り付けられた状態においては、突出片8aおよび突出片8bは第2の開口148によって囲まれており、かつ軸部材142によって突出片8aおよび突出片8bを第2の開口148から抜くこともできないので、上記重ね合わせ状態が保持される。
【0077】
突出片8aと突出片8bとを第2の開口148から抜くためには係止片154と連続穴との係止を解除する必要があるが、その係止部分はケース部材144の内部であるため容易に解除することができない。
【0078】
ここで、突出片8aおよび突出片8bを第2の開口148から無理に抜こうとしたり、被係合部材140から軸部材142を無理に外そうとすると、応力に弱い破断領域156が破断する。その結果、軸部材142を再び使用することができなくなるうえ、軸部材142が破断することで固定具を突出片8aと突出片8bから無理に外した痕跡が残るので、固定具を外したことを容易に判別することができる。
【0079】
なお、本実施例の固定具では、軸部材142のみを用いて突出片8aおよび突出片8bの固定を行うことも可能である。具体的には、突出片8aおよび突出片8bを上述した重ね合わせ状態として連続穴に軸部材142を通過させ、上述したように係止片154を連続穴の周縁部に係止することで固定できる。
【0080】
この状態では、指などにより係止片154を基部150側に押すだけで係止片154の貫通穴10aの縁部に対する係止を容易に解除することができる。すなわち、本実施例の固定具では、軸部材142のみを用いることで、突出片8aと突出片8bとの仮固定を行うことができる。
【0081】
なお上述したように、ケース部材144を同時に用いると、係止片154の外部からの操作が不能となるほか、第2の開口148によって突出片8aと突出片8bとがずれることを防止できるため、重ね合わせ状態をより強固に保持できる。
【符号の説明】
【0082】
2…被係合部材、4…軸部材、6a,6b…物品、8a,8b…突出片、10a,10b…貫通穴、20…筒状部、22…プレート、24…挿入穴、26…被係止片、28…開口、30…基材、32…係止片、34…張出部、36…破断領域、40…固定具、42…カバー部材、44…プレート、46…連接部、46a…開口、48…スナップ、48a…先端部、50…開口、60…固定具、62…カバー部材、64…プレート、66…スナップ、68…開口、70…破断領域、72…延出部、74…延出部、80…固定具、82…延出部、84…破断領域、90…固定具、92…カバー部材、94…プレート、96…開口、98…開口、100a,100b…突出部、102…スナップ、110…被係合部材、112…軸部材、114…ケース部材、116…プレート、118…開口、120…開口、122…溝部、124…基部、126…張出部、128…係止片、130…破断領域、140…被係合部材、142…軸部材、144…ケース部材、146…開口、148…開口、150…基部、152…張出部、154…係止片、156…破断領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の方向に突出する板状の部材である第1の突出片および第2の突出片を、当該第1の突出片および第2の突出片それぞれの主たる面に形成された貫通穴が並んで1つの連続穴となるように重ね合わせられた重ね合わせ状態に保持する固定具であり、
周囲よりも肉薄である破断領域が形成されている
ことを特徴とする固定具。
【請求項2】
柱状の部材であって、その一端に外周側に張り出した張出部が形成されてなる軸部材と、
前記軸部材の他端を挿入可能な挿入穴を有し、当該挿入穴に前記軸部材の他端を挿入された状態においては前記軸部材と係合して前記軸部材が前記挿入穴から抜けることを抑制する被係合部材と、を備え、
前記破断領域は、前記軸部材における前記被係合部材と係合する領域と前記張出部との間に形成されており、
前記連続穴に挿入された前記軸部材における前記張出部と、前記軸部材と係合した前記被係合部材と、により前記第1の突出片および前記第2の突出片を挟み込むことで、前記重ね合わせ状態の保持を実現する
ことを特徴とする請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記軸部材は、前記一端方向に傾斜するように前記軸部材から延び出し、前記軸部材の軸方向と交差する方向に弾性変形する係止片を備え、
前記被係合部材は、前記挿入穴に前記軸部材の他端が挿入された状態において前記係止片と係合して前記軸部材が前記挿入穴から抜けることを抑制する被係止片を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の固定具。
【請求項4】
前記係止片および前記被係止片のうち少なくともいずれか一方は、前記軸部材を前記挿入穴に挿入するときの前記軸部材の軸方向に沿って複数配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の固定具。
【請求項5】
前記重ね合わせ状態となった前記第1の突出片および前記第2の突出片を挿入可能な開口が形成され、当該開口に前記重ね合わせ状態となった前記第1の突出片および前記第2の突出片が挿入された際に、前記連続穴の両端の入口に挿入される2つのスナップが設けられたカバー部材を備え、
前記破断領域は、前記カバー部材において、前記開口の周縁部から前記第1の突出片および前記第2の突出片の挿入方向に沿って形成されており、
前記2つのスナップが前記連続穴の両端の入口から挿入されることで、前記重ね合わせ状態の保持を実現する
ことを特徴とする請求項1に記載の固定具。
【請求項6】
前記カバー部材における前記破断領域に沿った位置から前記カバー部材の外側に向けて延びる延出部を備える
ことを特徴とする請求項4に記載の固定具。
【請求項7】
柱状の部材であって、その一端において外周側に張り出した張出部と、前記一端方向に傾斜するように前記軸部材から延び出し、前記柱の軸方向と交差する方向に弾性変形する係止片と、が形成されてなる軸部材と、
前記軸部材の他端側が挿入可能な第1の開口と、前記重ね合わせ状態となった前記第1の突出片および前記第2の突出片を挿入可能な第2の開口と、を有するケース部材と、を備え、
前記破断領域は、前記軸部材における前記係止片と前記張出部との間に形成されており、
前記第1の開口から前記軸部材の他端側が前記ケース部材内部に挿入され、かつ前記第2の開口から前記第1の突出片および前記第2の突出片が前記ケース部材内部に挿入された状態で、前記連続穴に挿入された前記軸部材における前記連続穴を通過した前記係止片が前記連続穴の周縁部に係止することで、前記重ね合わせ状態の保持を実現する
ことを特徴とする請求項1に記載の固定具。
【請求項1】
同一の方向に突出する板状の部材である第1の突出片および第2の突出片を、当該第1の突出片および第2の突出片それぞれの主たる面に形成された貫通穴が並んで1つの連続穴となるように重ね合わせられた重ね合わせ状態に保持する固定具であり、
周囲よりも肉薄である破断領域が形成されている
ことを特徴とする固定具。
【請求項2】
柱状の部材であって、その一端に外周側に張り出した張出部が形成されてなる軸部材と、
前記軸部材の他端を挿入可能な挿入穴を有し、当該挿入穴に前記軸部材の他端を挿入された状態においては前記軸部材と係合して前記軸部材が前記挿入穴から抜けることを抑制する被係合部材と、を備え、
前記破断領域は、前記軸部材における前記被係合部材と係合する領域と前記張出部との間に形成されており、
前記連続穴に挿入された前記軸部材における前記張出部と、前記軸部材と係合した前記被係合部材と、により前記第1の突出片および前記第2の突出片を挟み込むことで、前記重ね合わせ状態の保持を実現する
ことを特徴とする請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記軸部材は、前記一端方向に傾斜するように前記軸部材から延び出し、前記軸部材の軸方向と交差する方向に弾性変形する係止片を備え、
前記被係合部材は、前記挿入穴に前記軸部材の他端が挿入された状態において前記係止片と係合して前記軸部材が前記挿入穴から抜けることを抑制する被係止片を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の固定具。
【請求項4】
前記係止片および前記被係止片のうち少なくともいずれか一方は、前記軸部材を前記挿入穴に挿入するときの前記軸部材の軸方向に沿って複数配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の固定具。
【請求項5】
前記重ね合わせ状態となった前記第1の突出片および前記第2の突出片を挿入可能な開口が形成され、当該開口に前記重ね合わせ状態となった前記第1の突出片および前記第2の突出片が挿入された際に、前記連続穴の両端の入口に挿入される2つのスナップが設けられたカバー部材を備え、
前記破断領域は、前記カバー部材において、前記開口の周縁部から前記第1の突出片および前記第2の突出片の挿入方向に沿って形成されており、
前記2つのスナップが前記連続穴の両端の入口から挿入されることで、前記重ね合わせ状態の保持を実現する
ことを特徴とする請求項1に記載の固定具。
【請求項6】
前記カバー部材における前記破断領域に沿った位置から前記カバー部材の外側に向けて延びる延出部を備える
ことを特徴とする請求項4に記載の固定具。
【請求項7】
柱状の部材であって、その一端において外周側に張り出した張出部と、前記一端方向に傾斜するように前記軸部材から延び出し、前記柱の軸方向と交差する方向に弾性変形する係止片と、が形成されてなる軸部材と、
前記軸部材の他端側が挿入可能な第1の開口と、前記重ね合わせ状態となった前記第1の突出片および前記第2の突出片を挿入可能な第2の開口と、を有するケース部材と、を備え、
前記破断領域は、前記軸部材における前記係止片と前記張出部との間に形成されており、
前記第1の開口から前記軸部材の他端側が前記ケース部材内部に挿入され、かつ前記第2の開口から前記第1の突出片および前記第2の突出片が前記ケース部材内部に挿入された状態で、前記連続穴に挿入された前記軸部材における前記連続穴を通過した前記係止片が前記連続穴の周縁部に係止することで、前記重ね合わせ状態の保持を実現する
ことを特徴とする請求項1に記載の固定具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−77865(P2012−77865A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224849(P2010−224849)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】
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