説明

固定子の複数のコイル端部を一緒に結合するための装置

【課題】
本発明は、発電機の固定子片2の複数のコイル端部1を一緒に結合するための装置10に関する。
【解決手段】
第1要素11及び第2要素12が、台形のカーソル14を収容し、2つの台形座部を形成する傾斜した対向している表面13と、軸線方向に固定され且つ前記第1要素11及び前記第2要素12に対して回転可能に可動であり且つ前記カーソル14のねじ孔17内にねじ込まれるねじ溝を付けた部分を有する1つ又は2つのねじ15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子片の複数のコイル端部を一緒に結合するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固定子片が固定子のスロット内に差し込まれる直線部又はスロット部と多くの場合に当該直線部に対して曲げられていて且つ一緒に電気接続されているコイル端部とから構成されることが知られている。
【0003】
特に固定子2のコイル端部1を示す図1を参照すると、コイル端部1は、インボリュート部3及び末端直線部5を有する。
【0004】
隣接したコイル端部1とコイル端部1との間の結合は、固定子片と固定子片との間の電気接続を実現する絶縁キャップを介した末端直線部5によって達成される。
【0005】
当該コイル端部1のインボリュート部3とインボリュート部3との間は結合されない。
【0006】
コイル端部1は、これらのコイル端部1の末端直線部5で固定されているだけであるので、振動が、運転中に発生しうる。
【0007】
振動は、位相リングに対するコイル端部1の結合部分に損傷を与える可能性があり、絶縁部分及び/又は固定子片が損傷を受ける原因になる。
【0008】
別の実施の形態では、複数の固定子片を一緒に固定するため、これらの固定子片が、コイル端部1の複数のインボリュート部3の間にプラスチックブロックを備えてもよい。
【0009】
一般にこれらのプラスチックブロックは、一定の寸法を有し且つ孔を備える。結合レースが、これらの孔内に挿入される。
【0010】
それにもかかわらず、不動の結合が緩む程度に、力が運転中に多くの場合にレースを緩ませるので、これらのプラスチックブロックは、複数のコイル端部1を不動に一緒に結合することはできない。この場合にも、振動が発生しうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、公知の従来の技術の上述した問題が排除される装置を提供することにある。
【0012】
本発明の観点は、この技術的な課題の範囲内で、不動の結合が運転中に緩む危険なしに又は限られた当該危険を伴うだけで、固定子片の複数のコイル端部を一緒に不動に固定することができる装置を提供することにある。
【0013】
本発明の別の観点は、発電機の運転中に振動の発生を阻止する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の当該技術的な課題は、特許請求の範囲に記載の装置を提供することによって解決される。
【0015】
本発明の実施の形態における装置を固定子片の複数のコイル端部を一緒に結合するために使用することが、発電機の信頼性を向上させることを有益的に可能にする。
【0016】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付した図面中の限定しない例によって示された本発明の装置の好適であるものの排他的でない実施の形態の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】固定子片のコイル端部の概略図である。
【図2】本発明の装置の2つの異なる実施の形態である。
【図3】本発明の装置の2つの異なる実施の形態である。
【図4】固定子片のコイル端部に結合されている装置の例である。この図では、2つの隣接した複数のコイル端部を一緒に結合する絶縁キャップが示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
これらの図を参照すると、これらの図は、発電機の固定子片2の複数のコイル端部1を一緒に結合するための装置10を示す。特に装置10は、発電機の当該コイル端部を不動にするために配置されている。
【0019】
装置10は、第1要素11及び第2要素12を有する。これらの第1要素11及び第2要素12は、装置の寸法を調整するため、隣接したコイル端部とコイル端部との間の隙間に完全に嵌合するため互いに離れている。
【0020】
特に第1要素11及び第2要素12は、台形のカーソル14を収容する台形座部を形成する表面13に面する傾斜を有する。
【0021】
さらに、ねじ15は、軸線方向に(つまり、縦軸線16に沿って)固定され、第1要素11及び第2要素12に対して回転可能に可動であってカーソル14のねじ孔17内にねじ込まれるねじ山の付いた部分を有する。
【0022】
特に、図中に示されたように、第1要素11及び第2要素12は、2つの台形座部を形成する傾斜した対向している表面13を有する。1つのカーソル14が、各台系座部内に収容されている。
【0023】
これらの台形座部は、別の台形座部と一体となっている。つまり、これらの台形座部は、他方の台形座部に対向しているより小さいベースを有する。
【0024】
さらに、これらの2つの台形座部は、装置の縦軸線16に沿って整列されている。
【0025】
ねじ15は、第1要素11及び第2要素12の溝形座部19内に収容されている(ねじの直径より大きい直径を有するディスクによって形成された)ガイド部18を有する。
【0026】
特に、図3は、1つの単一ねじ15が設けられている実施の形態を示す。このねじ15は、両カーソル14のねじ孔17内にねじ込まれていて且つ中心に設置されたガイド部18も備える。このガイド部18は、第1要素11及び第2要素12の溝形座部19内に摺動式に挿入される。
【0027】
この実施の形態では、ねじ孔17のうちの一方のねじ孔は右回りにねじ溝が付けられ、その他方のねじ孔は左回りにねじ溝が付けられ、ねじ15は、対応するねじ山の付いた部分を有する。
【0028】
図2は、既に説明した実施の形態に類似の実施の形態を示し、同等の参照符号は、同様の要素を示す。さらに、この実施の形態では、2つのねじ15が設けられているように、1つのねじ15が、各カーソル14のねじ孔17内にねじ込まれている。好ましくは、この実施の形態でも、カーソル14のねじ孔17のうちの一方のねじ孔は右回りにねじ溝が付けられ、その他方のねじ孔は左回りにねじ溝が付けられ、ねじ15は、対応するねじ山の付いた部分を有する。
【0029】
この実施の形態では、2つのねじ15が互いに独立して操作可能であり、これらのねじ15の各々が、第1要素11及び第2要素12の溝形座部19内に収容されているガイド部18を有する。
【0030】
特に、2つのねじ15の2つのガイド部18は、第1要素11及び第2要素12の同じ溝形座部19内に収容されている。
【0031】
第1要素11及び第2要素12の外面には、好ましくはパッドが施されている。つまり、当該外面は、例えば繊維ガラス製の柔らかいパッドを備える(図示せず)。
【0032】
第1要素11及び第2要素12は、装置10が発電機に取り付けられる時に隣接したコイル端部1とコイル端部との間に差し込み可能なリブ20を備えた外面も有する。
【0033】
当該リブは、好ましくは孔21を備える。これらの孔21は、例えばコードによって装置を固定することを可能にする。
【0034】
さらに、装置10は、絶縁材料から作られている。したがって、特に、第1要素11、第2要素12、ねじ15及びカーソル14は、プラスチック又はグラスファイバー強化プラスチック又はプラスチックマトリックス中に封入されたグラスファイバーのような絶縁材料から作られている。
【0035】
さらに、第1要素11、第2要素12、カーソル14及びねじ15を一緒に保持するため、適切な手段が提供される。例えば、第1要素11と第2要素12との間の結合要素又はカーソル14の両面と表面13との間のドブテイル又はその他の適切な手段も提供される。
【0036】
装置の操作は、説明され図示されたものから明らかであって以下で十分に説明する。
【0037】
装置10の幅が小さく、且つ、装置10が、コイル端部1とコイル端部1との間に差し込まれ得るように、カーソル14は、最初は装置10の中心から離れた位置にある。
【0038】
装置10が、コイル端部1とコイル端部1との間に差し込まれると、リブ20が、隣接したコイル端部1aと隣接したコイル端部1bとの間のスリット22内に設置される。必要な場合、装置10が、絶縁キャップと絶縁キャップとの間に設置されてもよいことが自明である。
【0039】
適切な位置で、カーソル14が装置10の中心に向かって前進し、且つ、第1要素11及び第2要素12が、図2及び3の矢印Fによって示されたように互いに離れるように、ねじ15がねじ締めされて、複数のコイル端部1を一緒に固定する。
【0040】
ねじ15を固定するため、接着剤又は樹脂を染み込ませたコードのような固定手段が提供される。
【0041】
各ねじ15の調整が、互いに独立して可能であるので、図2中に示された実施の形態は有益である。換言すれば、装置10を調整する場合、第1要素11及び第2要素12は互いに平行である必要はないものの、隣接したコイル端部1cとコイル端部1cとの間の隙間に完全に嵌合するため、これらの第1要素11及び第2要素12を回転させてもよい。
【0042】
装置を取り付ける場合、いろいろな配置が可能である。
【0043】
例えば、装置は、隙間ごとに、一つおきに、又は試験若しくは計算中に測定される大きい振動が測定される位置だけに差し込まれてもよい。さらに、1つの発電機に結合される装置の数は、1つの装置10を複数のコイル端部間に一つおきに結合することによって低減され得る。その他の結合は、一定の寸法を有するブロックを介して実現され得る。
【0044】
当然に、説明した特徴は、互いに別々に提供されてもよい。
【0045】
使用される材料及び寸法は、要求及び従来の技術に応じて任意に選択され得る。
【符号の説明】
【0046】
1 コイル端部
1a,b 隣接したコイル端部
1c 隣接したコイル端部
2 固定子片
3 2のインボリュート部
5 2の末端直線部
10 装置
11 第1要素
12 第2要素
13 11,12の表面
14 カーソル
15 ねじ
16 縦軸線
17 14のねじ孔
18 15のガイド部
19 11,12の溝形座部
20 リブ
21 20の孔
22 スリット
F 11,12の移動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機の固定子片(2)の複数のコイル端部(1)を一緒に結合するための装置(10)において、
前記装置(10)は、この装置の寸法を調整するため互いに離れるように可動な第1要素(11)及び第2要素(12)を有することを特徴とする装置(10)。
【請求項2】
前記第1要素(11)及び前記第2要素(12)は、台形のカーソル(14)を収容し、少なくとも1つの台形座部を形成する傾斜した対向している表面(13)と、軸線方向に固定され且つ前記第1要素(11)及び前記第2要素(12)に対して回転可能に可動であり且つ前記カーソル(14)のねじ孔(17)内にねじ込まれるねじ溝を付けた部分を有する少なくとも1つのねじ(15)とを備えることを特徴とする請求項1に記載の装置(10)。
【請求項3】
前記第1要素(11)及び前記第2要素(12)は、2つの台形座部を形成する傾斜した対向している表面(13)を有すること、及び、1つのカーソル(14)が、各台形座部内に収容されていることを特徴とする請求項2に記載の装置(10)。
【請求項4】
各台形座部は、別の台形座部と一体となっていることを特徴とする請求項3に記載の装置(10)。
【請求項5】
2つの台形座部は、前記装置(10)の縦軸線(16)に沿って整列されていることを特徴とする請求項4に記載の装置(10)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのねじ(15)は、前記第1要素(11)及び前記第2要素(12)の溝形座部(19)内に収容されているガイド部(18)を有することを特徴とする請求項2に記載の装置(10)。
【請求項7】
1つの単一ねじ(15)が設けられていて、このねじ(15)は、両カーソル(14)のねじ孔(17)内にねじ込まれていることを特徴とする請求項6に記載の装置(10)。
【請求項8】
1つのねじ(15)が、各カーソル(14)の前記ねじ孔(17)内にねじ込まれていて、2つのねじ(15)が、互いに独立して操作可能であることを特徴とする請求項6に記載の装置(10)。
【請求項9】
各ねじ(15)は、前記第1要素(11)及び前記第2要素(12)の溝形座部(19)内に収容されているガイド部(18)を有することを特徴とする請求項8に記載の装置(10)。
【請求項10】
両ねじ(15)の前記ガイド部(18)は、前記第1要素(11)及び前記第2要素(12)の同じ前記溝形座部(19)内に収容されていることを特徴とする請求項9に記載の装置(10)。
【請求項11】
前記第1要素(11)及び前記第2要素(12)は、隣接したコイル端部(1)とコイル端部(1)との間に差し込み可能なリブ(20)を備えた外面を有することを特徴とする請求項1に記載の装置(10)。
【請求項12】
前記第1要素(11)、前記第2要素(12)、前記ねじ(15)及び前記カーソル(14)は、絶縁材料から作られていることを特徴とする請求項2に記載の装置(10)。
【請求項13】
前記リブ(20)は、孔(21)を備え、これらの孔(21)は、前記装置を固定することを可能にすることを特徴とする請求項11に記載の装置(10)。
【請求項14】
前記ねじ(15)を固定するため、接着剤又は樹脂を染み込ませたコードのような固定手段が提供されることを特徴とする請求項2に記載の装置(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−188735(P2011−188735A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45990(P2011−45990)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】