説明

固定治具

【課題】多様な種類の形状の多様な被加工物を確実に固定することが可能な固定治具を提供する。
【解決手段】3次元方向で加工ヘッドを移動して被加工物に対して所定の加工を行う加工機に備えられて被加工物を固定する固定治具において、XYZ直交座標系のXY平面において移動可能な移動機構と、移動機構上に配設され、被加工物が載置される台部材と、移動機構上に配設され、X軸周りに回動可能であり、巻きバネによりX軸周りの所定の方向に付勢される回動部材と、回動部材に配設されて、回動部材によりX軸周りに回動し、Y軸周りに回動可能に前記台部材と対向するようにして配設された押圧部材とを備え、回動手段により、押圧部材によって台部材に載置された被加工物を台部材側に押圧して、押圧部材と台部材とにより被加工物を挟持する押圧手段とを有し、押圧部材において、被加工物と当接することが可能な領域に、開口部が形成されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定治具に関し、さらに詳細には、加工機において被加工物を固定する固定治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金、プラチナ、真鍮、アルミニウム、ステンレス鋼などの比較的塑性変形しやすい被加工物の表面に点状の打刻痕を複数形成することにより、所望の画像を形成する打刻機が知られている。
【0003】
こうした打刻機においては、被加工物を固定治具などにより固定し、針状に形成された打刻棒の先端部を被加工物の表面に打ち付け、当該表面上に点状の打刻痕を複数形成するものである。
【0004】
ここで、上記したような打刻機について、図1を参照しながら、より詳細に説明することとする。
【0005】
図1には、打刻機の一部を破断した概略構成説明図が示されている。
【0006】
この図1に示す打刻機100は、固定系のベース部材102と、ベース部材102の後方側においてベース部材102上に垂直に立設された後方部材(図示せず。)と後端部において接続されるとともに、ベース部材102の左方側においてベース部材102上に垂直に立設された側方部材104Lと、後方部材(図示せず。)と後端部において接続されるとともに、ベース部材102の右方側においてベース部材102上に垂直に立設された側方部材104Rと、後方部材(図示せず。)および側方部材104L、104Rの上端部において、ベース部材102と対向して配設される上方部材122とを有して構成されている。さらに、側方部材104L、104Rの近傍においてXYZ直交座標系のZ軸方向に延設されたガイドレール106a、106bに摺動自在に配設された昇降部材108と、昇降部材108の下方側においてY軸方向に延設されたガイドレール110a、110bに摺動自在に配設されたスライド部材112と、スライド部材112の前方側においてX軸方向に延設されたガイドレール114a、114bに摺動自在に配設されたキャリッジ116と、キャリッジ116に配設された打刻ヘッド118と、ベース部材102の上面102aにおいて被加工物200を固定的に保持する固定治具120とを有して構成されている。
【0007】
なお、昇降部材108、スライド部材112およびキャリッジ116の移動や打刻ヘッド118による被加工物への打刻といった動作を含む全体の動作については、マイクロコンピューター(図示せず。)によって制御されている。
【0008】
上方部材122は、下面においてマイクロコンピューター(図示せず。)によりその駆動が制御されるステッピングモーター124が配設されており、このステッピングモーター124に、ネジ溝が形成されたネジ軸がZ軸方向に沿って延長する形状のZ軸方向送りネジ126が接続されている。
【0009】
このZ軸方向送りネジ126は、ステッピングモーター124の駆動によりそのネジ軸がZ軸方向周りに回転される。
【0010】
昇降部材108は、略中央部においてZ軸方向送りネジ126が貫通しており、Z軸方向送りネジ126が貫通する貫通部において送りナット108aが設けられ、当該送りナット108aにZ軸方向送りネジ126がネジ結合している。これにより、ステッピングモーター124の駆動によってZ軸方向送りネジ126が回転し、昇降部材108がZ軸方向において上方側および下方側に移動することが可能となる。
【0011】
また、昇降部材108は、後端部108bにおいてマイクロコンピューター(図示せず。)によりその駆動が制御されるステッピングモーター128が配設されており、このステッピングモーター128に、ネジ溝を形成されたネジ軸がY軸方向に沿って延長するY軸方向送りネジ130が接続されている。
【0012】
このY軸方向送りネジ130は、ステッピングモーター128の駆動によりそのネジ軸がY軸方向周りに回転される。
【0013】
スライド部材112は、上方側後方においてY軸方向送りネジ130が貫通しており、Y軸方向送りネジ130が貫通する貫通部において送りナット112aが設けられ、当該送りナット112aにY軸方向送りネジ130がネジ結合している。これにより、ステッピングモーター128の駆動によってY軸方向送りネジ130が回転し、スライド部材112がY軸方向において前方側および後方側に移動することが可能となる。
【0014】
さらに、スライド部材112は、右方側前方においてマイクロコンピューター(図示せず。)によりその駆動が制御されるステッピングモーター132が配設されており、このステッピングモーター132にネジ溝が形成されたネジ軸がX軸方向に沿って延長する形状のX軸方向送りネジ134が接続されている。
【0015】
このX軸方向送りネジ134は、ステッピングモーター132の駆動によりそのネジ軸がX軸方向周りに回転される。
【0016】
キャリッジ116は、側面においてX軸方向送りネジ134が貫通しており、X軸方向送りネジ134が貫通する貫通部において送りナット(図示せず。)が設けられ、当該送りナットにX軸方向送りネジ134がネジ結合している。これにより、ステッピングモーター132の駆動によってX軸方向送りネジ134が回転し、キャリッジ116がX軸方向において右方側および左方側に移動することが可能となる。
【0017】
従って、キャリッジ116は、マイクロコンピューター(図示せず。)の制御により駆動するステッピングモーター124、128、132によって3次元方向で移動することが可能となる。
【0018】
また、打刻ヘッド118は、加工工具136およびホルダー138により構成されており、ホルダー138に被加工物の表面に所定の深さの打刻痕を形成するための加工工具136を着脱可能な構成となっており、加工工具136をZ軸方向で振動させるものである。
【0019】
具体的には、打刻ヘッド118は、ホルダー138内にソレノイド(図示せず。)およびスプリング(図示せず。)を備えている。
【0020】
ソレノイド(図示せず。)は、電気エネルギーを直線運動に変換する筒状の電磁機能部品であり、当該筒内に配置される加工工具136を通電によって下方側に押し出すものである。そして、このソレノイド(図示せず。)は、マイクロコンピューター(図示せず。)によりその駆動が制御されている。
【0021】
また、スプリング(図示せず。)は、ソレノイド(図示せず。)の下方に配置され当該ソレノイドの下端部から押し出される加工工具136を上方に向かって押し返す。
【0022】
即ち、打刻ヘッド118は、マイクロコンピューター(図示せず。)の制御によるソレノイド(図示せず。)への通電によって、加工工具136を下方に向かって突出させるとともに、当該ソレノイドへの通電の解除およびスプリング(図示せず。)の付勢力によって加工工具136を上方に向かって退避させるものである。
【0023】
なお、加工工具136は、被加工物より硬い材料、例えば、超合金や人工ダイヤモンドによって構成されている。
【0024】
また、打刻ヘッド118の上方側前面において、固定治具120に固定された被加工物の表面に対して投光して、加工工具136による複数の打刻痕により形成される画像の中心位置を表示する光学センサ150が設けられている。
【0025】
また、固定治具120は、ベース部材102の前方側において着脱可能に配設されており、基台部140の上面140aにX軸方向に延設され、互いに平行に設けられた板状部材142a、142bが設けられている(図2を参照する。)。
【0026】
そして、この板状部材142a、142bは、基台部140上にY軸方向に延設さられた溝144上において、それぞれX軸方向に平行な状態でY軸方向に移動可能な構成となっている。
【0027】
また、板状部材142aには、この溝144上の任意の位置において板状部材142aを固定することができる固定機構146が設けられており、同様に、板状部材142bにも、この溝144上の任意の位置において板状部材142bを固定することができる固定機構(図示せず。)が設けられている。
【0028】
こうした固定治具120において、被加工物200を固定する場合には、まず、板状部材142aを基台部140に形成された溝144の最も前方側に位置させるとともに、板状部材142bを当該溝144の最も後方側に位置させる。
【0029】
次に、板状部材142a、142bの間に被加工物200を載置し、その後、板状部材142aを後方側に移動させるとともに、板状部材142bを前方側に移動させて被加工物200を板状部材142a、142bにより挟持した状態とする。
【0030】
その後、被加工物200を挟持した状態の板状部材142a、142bをそれぞれ固定機構により固定することで、固定治具120により被加工物200を固定するようにする。
【0031】
こうした構成により、打刻機100によって被加工物200の表面に所定の画像を形成するには、被印刷物200を固定治具120により固定する。その後、マイクロコンピューターの制御により、打刻ヘッド118を、打刻ヘッド118により被加工物200の表面に打刻する際の打刻位置に移動させる。そして、被加工物200の表面において画像を形成しようとする領域の中心位置に光学センサから照射された光が位置するように、固定治具120に固定されている被加工物200の固定位置を微調整する。
【0032】
被加工物200を固定治具120により固定した後に、作業者により画像作成の指示がなされると、マイクロコンピューターの制御により、予め入力された画像情報に基づいて、打刻ヘッド118によって被加工物200の表面に対して複数の打刻を行い所望の画像を作成することとなる。
【0033】
このように、打刻機100における固定治具120では、X軸方向に延設された板部材142a、142bとにより、単に、挟持するような構成のため、例えば、被加工物200が直方体形状であれば、被加工物200と板部材142a、142bとが、それぞれ互いに接する面が平行となり固定治具120により当該被加工物200を確実に固定することができる。つまり、この場合には、板部材142a、142bと被加工物200とが当接する面が大きいため固定治具120により当該被加工物200を確実に固定することができる。
【0034】
しかしながら、例えば、被加工物200が円錐形状であれば、被加工物200と板部材142a、142bとが、それぞれ互いに接する面が平行にならないため、固定治具120により当該被加工物200を確実に固定することができなかった。つまり、この場合には、板部材142a、142bと被加工物200とが当接する面が小さいため固定治具120により当該被加工物200を確実に固定することが困難となっていた。
【0035】
これにより、打刻機100において画像形成が可能な被加工物200の形状が限定されてしまい、打刻機100においては、限られた形状の被加工物200にしか画像形成することができないものであった。
【0036】
このため、より多種類の形状の被加工物を確実に固定することが可能な固定治具の提案が望まれていた。
【0037】
なお、本願出願人が特許出願のときに知っている先行技術は、文献公知発明に係る発明ではないため、本願明細書に記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
本発明は、従来の技術の有する上記したような要望に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、多様な種類の形状の多様な被加工物を確実に固定することが可能な固定治具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0039】
上記目的を達成するために、本発明は、3次元方向で加工ヘッドを移動して、被加工物に対して所定の加工を行う加工機に備えられ、上記被加工物を固定する固定治具において、
【0040】
XYZ直交座標系のXY平面において移動可能な移動機構と、上記移動機構上に配設されるとともに、上記被加工物が載置される台部材と、上記移動機構上に配設されるとともに、X軸周りに回動可能であり、巻きバネによりX軸周りの所定の方向に常に付勢される回動部材と、上記回動部材に配設されて、上記回動部材によりX軸周りに回動するとともに、Y軸周りに回動可能に上記台部材と対向するようにして配設された押圧部材とを備え、上記回動手段における付勢力により、上記押圧部材により上記台部材に載置された上記被加工物を上記台部材側に押圧して、上記押圧部材と上記台部材とにより上記被加工物を挟持する押圧手段とを有し、上記押圧手段における上記押圧部材において、上記被加工物と当接することが可能な領域に、開口部が形成されるようにしたものである。
【0041】
また、本発明は、上記した発明において、上記台部材における上記被加工物が載置される面には溝が形成されるようにしたものである。
【0042】
また、本発明は、上記した発明において、上記台部材は、同形状の複数の金属板より構成された多層構造であるようにしたものである。
【0043】
また、本発明は、上記した発明において、上記複数の金属板においては、上記被加工物が載置される面に溝が形成されるようにしたものである。
【0044】
また、本発明は、上記した発明において、上記台部材上にシリコーンゴムが配設されるとともに、上記押圧部材における上記被加工物と当接する領域において樹脂部材が配設されるようにしたものである。
【発明の効果】
【0045】
本発明は、以上説明したように構成されているので、多様な種類の形状の多様な被加工物を確実に固定することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、打刻機の一部を破断した状態を示す概略構成斜視説明図である。
【図2】図2は、従来の技術による固定治具を示す概略構成斜視説明図である。
【図3】図3は、本発明における固定治具の概略構成斜視図である。
【図4】図4は、本発明における固定治具の概略構成正面図である。
【図5】図5は、本発明における固定治具の概略構成背面図である。
【図6】図6は、本発明における固定治具の概略構成平面図である。
【図7】図7は、本発明における固定治具の概略構成右側面図である。
【図8】図8は、本発明における固定治具の概略構成左側面図である。
【図9】図9は、本発明における固定治具の概略構成斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による固定治具の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0048】
ここで、図3には、本発明による固定治具の概略構成斜視図が示されている。また、図4には、図3に示す固定治具の概略構成正面図が示されている。また、図5には、図3に示す固定治具の概略構成背面図が示されている。また、図6には、図3に示す固定治具の概略構成平面図が示されている。また、図7には、図3に示す固定治具の概略構成右側面図が示されている。また、図8には、図3に示す固定治具の概略構成左側面図が示されている。
【0049】
この図3に示す固定治具10は、固定系の基台部材12と、X軸方向およびY軸方向に移動可能な移動機構14と、移動機構14上に配設されてX軸方向に摺動可能に配設されたスライド部材16と、スライド部材16上に配設され、上面18aにシリコーンゴムなどにより成型されるシート材22を介して被加工物200が載置される台部材18と、スライド部材16上に配設され、台部材18に載置された被加工物200を上方側から押圧する押圧部材20とを有して構成されている。
【0050】
より詳細には、移動機構14は、基台部材12の前方側と後方側とにおいてX軸方向に延設されたガイドレール24a、24bに摺動自在にスライダー26a、26bが設けられており、Y軸方向に延設されるとともに、スライダー26aとスライダー26bとを接続するガイドレール28a、28bにスライダー32a、32bを介して摺動自在に板状部材30が配設されている。
【0051】
これにより、移動機構14においては、板状部材30をXY平面上において移動することが可能となる。
【0052】
この板状部材30は、板状部材30の左方側において突部30aが形成されており、この突部30aの端部30aaにおいて下方側に屈曲した屈曲面30abを形成している。
【0053】
板状部材30はスライダー32a、32bの上方側に設けられており、スライダー32a、32bがそれぞれ摺動自在に配設されるガイドレール28a、28bの間にはY軸方向調整ネジ40が回動可能に設けられいる。このY軸方向調整ネジ40は、作業者により頭部40aを回転すことにより、板状部材30をY軸方向に所定の範囲で動かすことができるようになされている。
【0054】
また、移動機構14においては、ガイドレール24a、24bおよびガイドレール28a、28b上を移動する板状部材30をXY平面上における所定の位置に固定する固定部材34が、板状部材30に設けられている。
【0055】
この固定部材34は、ネジ溝を形成されたネジ軸34cがZ軸方向に沿って延長されており、このネジ軸34cが板状部材30を貫通して配設されている。そして、板状部材30においては、固定部材34が貫通する貫通部においてナット36が設けられており、このナット36に固定部材34のネジ軸34cがネジ結合している。
【0056】
また、固定部材34のネジ軸34cの上端部には摘み部材34aが設けられており、下端部には、弾性部材34bが設けられている。
【0057】
これにより、作業者が摘み部材34aを回動することにより、固定部材34が上方側または下方側に移動することとなり、固定部材34が下方側に移動した場合には、弾性部材34が基台部材12を押圧することで、固定部材34により板状部材30が固定される。一方、固定部材34が上方側に移動した場合には、弾性部材34の基台部材12への押圧状態が解除されることとなり、固定部材34による板状部材30の固定状態が解除されることになる。
【0058】
また、スライド部材16は、略矩形形状の板状の部材であって、左方側において突部16bが形成されており、この突部16bの端部16baにおいて下方側に屈曲した屈曲面16bbを形成している。
【0059】
スライド部材16には、長孔16−1、16−2が設けられており、スライド部材16は、長孔16−1、16−2から挿入されたネジ36、38により、板状部材30上に配設されている。
【0060】
また、スライド部材16は、屈曲面16bbにX軸方向調整ネジ42が回動可能に設けられており、このX軸方向調整ネジ42には、ネジ溝が形成されたネジ軸42bがX軸方向に延長されている。そして、X軸方向調整ネジ42は、作業者によえい頭部42aを回転することによりネジ軸がX軸方向周り回転する。
【0061】
板状部材30の突部30aに形成された屈曲面30abには、X軸方向調整ネジ42が貫通しており、屈曲面30abでは、X軸方向調整ネジ42が貫通する貫通部においてX軸方向調整ネジ42がネジ結合している。
【0062】
これにより、作業者によって頭部42aを回転することでX軸方向調整ネジ42が回転し、X軸方向調整ネジ42が設けられたスライド部材16が板状部材30上をX軸方向において所定の範囲で左方側および右方側に移動することが可能となる。
【0063】
なお、上記した所定の範囲は、長孔16−1、16−2の長軸の長さL2(図6を参照する。)により決定されるものであり、この長孔16−1、16−2の長軸の長さL2は、X軸方向調整ネジ42のネジ軸42bの長さL1(図5を参照する。)より短く設計されている。
【0064】
また、スライド部材16の上面には、一対の凹部(図示せず。)が形成されており、当該凹部に後述する台部材18の下面(つまり、金属板18−3の下面である。)に形成された一対の凸部(図示せず。)が嵌合してスライド部材16上に台部材18が載置されることとなる。
【0065】
台部材18は、3枚の金属板18−1、18−2、18−3よりなる3層構造となっており、下方側から順に金属板18−3、金属板18−2、金属板18−1で重なっている。
【0066】
金属板18−1は、金属板18−1の長手方向、つまり、X軸方向において左方側から所定の間隔で3本の溝18−1a、18−1b、18−1cが形成されている。また、金属板18−1の幅方向、つまり、Y軸方向においては、等間隔に3本の溝18−1d、18−1e、18−1fが形成されている。
【0067】
X軸方向に延長して形成された溝18−1a、18−1b、18−1cは、それぞれ同じ幅、同じ深さで形成されており、Y軸方向に延長して形成された溝18−1d、18−1e、18−1fのうち、溝18−1d、18−1fについては、それぞれ同じ幅、同じ深さで形成されている。Y軸方向に延長して形成された溝18−1eについては、金属板18−1の幅方向の略中心位置に形成されており、溝18−1d、18−1fより大きい幅、大きい深さで形成されている。
【0068】
さらに、金属板18−1には、上面において、所定の間隔で一対の凹部18−1g、18−1hが形成されており、上面と対向する下面において当該凹部18−1g、18−1hと対向する位置に一対の凸部(図示せず。)が形成されている。また、凹部18−1g、18−1hの間には、孔部18−1iが形成されている。
【0069】
また、金属板18−2は、18−1と同じ形状に形成されており、金属板18−2の長手方向、つまり、X軸方向において左方側から所定の間隔で3本の溝18−2a、18−2b、18−2cが形成されている。また、金属板18−2の幅方向、つまり、Y軸方向においては、等間隔に3本の溝18−2d、18−2e、18−2fが形成されている。
【0070】
X軸方向に延長して形成された溝18−2a、18−2b、18−2cは、それぞれ同じ幅、同じ深さで形成されており、Y軸方向に延長して形成された溝18−2d、18−2e、18−2fのうち、溝18−2d、18−2fについては、それぞれ同じ幅、同じ深さで形成されている。Y軸方向に延長して形成された溝18−2eについては、金属板18−2の幅方向の略中心位置に形成されており、溝18−2d、18−2fより大きい幅、大きい深さで形成されている。
【0071】
さらに、金属板18−2には、上面において、所定の間隔で一対の凹部18−2g、18−2hが形成されており、上面にと対向する下面において当該凹部18−2g、18−2hと対向する位置に一対の凸部(図示せず。)が形成されている。また、凹部18−2g、18−2hの間には、孔部18−2iが形成されている。
【0072】
また、金属板18−3は、18−1、18−2と同じ形状に形成されており、金属板18−3の長手方向、つまり、X軸方向において左方側から所定の間隔で3本の溝18−3a、18−3b、18−3cが形成されている。また、金属板18−3の幅方向、つまり、Y軸方向においては、等間隔に3本の溝18−3d、18−3e、18−3fが形成されている。
【0073】
X軸方向に延長して形成された溝18−3a、18−3b、18−3cは、それぞれ同じ幅、同じ深さで形成されており、Y軸方向に延長して形成された溝18−3d、18−3e、18−3fのうち、溝18−3d、18−3fについては、それぞれ同じ幅、同じ深さで形成されている。Y軸方向に延長して形成された溝18−3eについては、金属板18−3の幅方向の略中心位置に形成されており、溝18−3d、18−3fより大きい幅、大きい深さで形成されている。
【0074】
さらに、金属板18−3には、上面において、所定の間隔で一対の凹部18−3g、18−3hが形成されており、上面にと対向する下面において当該凹部18−3g、18−3hと対向する位置に一対の凸部(図示せず。)が形成されている。また、凹部18−3g、18−3hの間には、孔部18−3iが形成されている。
【0075】
そして、同じ形状に成形される金属板18−1、18−2、18−3は、金属板18−2の下面に形成された一対の凸部(図示せず。)を金属板18−3の凹部18−3g、18−3hに嵌合させて金属板18−3の上面に金属板18−2を載置する。さらに、金属板18−1の下面に形成された一対の凸部(図示せず。)を金属板18−2の凹部18−2g、18−2hに嵌合させて金属板18−2の上面に金属板18−1を載置する。
【0076】
こうして、金属板18−1、18−2、18−3を重ねて3層構造として台部材18を構成し、この台部材18をスライド部材16上に載置するものであるが、このとき、金属板18−3の下面に形成された一対の凸部(図示せず。)がスライド部材16に形成された一対の凹部(図示せず。)に嵌合してスライド部16上に台部材18が載置されることとなる。このとき、各金属板の孔部18−1i、18−2i、18−3iは連通した状態となる。
【0077】
なお、金属板18−1の上面に形成された凹部18−1g、18−1hと、下面に形成された凸部(図示せず。)とは、金属板18−1の略中心部から左方側に形成されており、金属板18−2、18−3も同様の形状となっている。
【0078】
このため、台部材18をスライド部材16上に載置すると、スライド部材16に対して台部材18が右方側に突出した状態となって載置されることとなる。
【0079】
また、台部材18の上面18a(つまり、金属板18−1の上面である。)には、シリコーンゴムなどの樹脂材料により形成されたシート材22が載置されている。
【0080】
押圧部材20は、ヒンジ50に回動可能に配設された押圧板52が当該ヒンジ50を介してスライド部材16上に配設されている。
【0081】
押圧板52は、端面が略L字形状の金属板であり、ヒンジ50に接続される接続部52−1と、接続部52−1と直交して形成され、ヒンジ50における巻きバネ54(後述する。)による付勢力により被加工物200を押圧する押圧部52−2とにより構成されている。
【0082】
また、押圧部52−2には、開口部52−2aが形成されており、押圧部52−2の下面において、台部材18の上面(つまり、金属板18−1の上面のことである。)に形成された溝18−1eの上方側に位置する部分には樹脂部材52−2b、52−2cが配設されている。
【0083】
なお、この開口部52−2aにおいては、作業者が上方側から見た際に、台部材18の前方側端部および後方側端部が確認可能な程度に開口している。
【0084】
また、押圧部52−2の前方側には、摘み部52−2dが設けられており、作業者が巻きバネ54(後述する。)により付勢力に抗して摘み部52−2dを摘んで押圧板52を上方側に持ち上げて、押圧部材20と台部材18のとの間に空間を作るようにする。
【0085】
ヒンジ50は、一方の板部材50−1がスライド部材16上において固定的に配設され、他方の板部材50−2において板状部材56を介して押圧板52が配設されている。
【0086】
即ち、ヒンジ50の一方の板部材50−1がネジ60、62によりスライド部材16上に固定的に配設される。
【0087】
また、ヒンジ50の他方の板部材50−2には、他方の板部材50−2をスライド部材16に対して垂直な状態としたときの前面において板状部材56を当接した状態で、板状部材56を他方の板部材50−2における当該前面と対向する後面側からネジ64、66により固定的に配設されている。
【0088】
さらに、板状部材56において、ヒンジ50の他方の板部材50−2と接した面と対向する面に押圧板52における接続部52−1を当接した状態で、接続部52−1における板状部材56と当接した面と対向する面側からネジ68により、ネジ68を中心として回動可能に配設されている。
【0089】
このとき、ネジ64、66のネジ軸64a、66aは、それぞれ板状部材56を貫通して、押圧板52における接続部52−1に設けられた長孔52−1a、52−1bも貫通している。また、ネジ68のネジ軸68aは、板状部材56を貫通してヒンジ50の他方の板部材50−2に到達することなく、板状部材56にのみ達している(図6を参照する。)。
【0090】
こうして、押圧板52は、ネジ68のネジ軸68cを中心として回動可能に配設される。つまり、押圧板52は、換言するとY軸周りに回動可能に配設されていることとなる。
【0091】
そして、その回動範囲は、長孔52−1a、52−1bの長軸の長さL3に依存しており、この回動範囲で矢印A方向および矢印B方向に回動可能となっている(図9を参照する。)。
【0092】
また、ヒンジ50は、回転軸50−3において巻きバネ54が配設されており、ヒンジ50の一方の板部材50−1がスライド部材16の固定的に配設された状態で、この巻きバネ54により他方の板部材50−2は、矢印C方向に付勢されており、これにより、押圧板52の押圧部52−2が下方側に付勢されることとなる。
【0093】
つまり、ヒンジ50は、X軸方周りに回動可能であって、ヒンジの他方の板部材50−2に設けられた押圧板52が巻きバネ54により矢印C方向に常に付勢されるものである。
【0094】
以上の構成による固定治具10を打刻機100に設置し、当該打刻機100により被加工物200に所定の画像を打刻する際の、固定治具10に被加工物200を固定する作業について説明する。
【0095】
まず、固定治具10において、作業者が摘み部52−2dを摘んで、巻きバネ54による付勢力に抗して押圧板52を上方側に持ち上げて、押圧部材20と台部材18との間に空間を作り、その空間に加工面を上方側に向け、当該加工面が押圧部材20の押圧部52−2に形成された開口部52−2a内に位置するようにして被加工物200を載置する。
【0096】
このとき、被加工物200の中心軸が溝18−1e上に位置するように載置することにより、押圧部材20における押圧板52に設けられた樹脂部材52−2b、52−2cを介して被加工物200が台部材18に押しつけられる。また、台部材18上には、シート材22が設けられているため、被加工物200は、樹脂部材52−2b、52−2cとシート材22とを介して押圧部材20と台部材18とにより挟持された状態となる。これにより、被加工物200が押圧部材20および台部材18により傷つくことを防止することができる。
【0097】
また、このとき、被加工物200が、例えば、円錐形状などの場合には、被加工物200の形状に応じて、押圧部材20の押圧板52が矢印A方向あるいは矢印B方向に回転することとなり、これにより、樹脂部材52−2b、52−2cによって被加工物200を台部材18に押しつけることができる。これにより、従来の技術による固定治具120に比べて、円錐形状などの被加工物200をより確実に固定することができることとなる。
【0098】
さらに、被加工物200が上下方向に大きい場合には、当該被加工物200の上下方向の大きさに応じて台部材18を構成する金属板18−1、18−2、18−3の枚数を減らすようにする。
【0099】
つまり、被加工物200の上下方向の大きさに応じて、台部材18を金属板18−2、18−3の2層または金属板18−3の1層とし、台部材18の厚さを調整する。
【0100】
そして、調整した台部材18の上面にシート材22を載置して、シート材22を介して台部材18に被加工物200を載置するものであるが、このとき、金属板18−1、18−2、18−3はそれぞれ同様の構成であるため、金属板18−2、18−3の上面には、金属板18−1の同様の溝が形成されているため、被加工物200の載置位置を容易に決定することができる。
【0101】
さらに、被加工物200が円筒形状の場合には、シート材22を取り外し金属板18−1(または、金属板18−2、18−3)に形成された溝18−1e(または、溝18−2e、18−3e)に当該被加工物200を載置することにより、安定して当該被加工物200を押圧部材20と台部材18とにより挟持することができ、確実に固定治具10により固定することができることとなる。
【0102】
このようにして、押圧部材20と台部材18とにより挟持された状態の被加工物200は、光学センサ150からの光が投影された位置に被加工物200の加工面における画像が形成される打刻領域の中心位置の近傍に位置するように、移動機構14によりXY平面上を移動し、所定の位置において固定部材34により固定する。
【0103】
その後、光学センサ150からの光が投影された位置に基づいて、X軸方向調整ネジ42およびY軸方向調整ネジ40によりX軸方向およびY軸方向における微調整を行って、被加工物200の加工面における画像が形成される打刻領域の中心位置に光学センサ150からの光が投影されるようにする。
【0104】
このようにして固定治具10により固定された被加工物200においては、例えば、被加工物200がX軸方向に長尺であって、2カ所に打刻画像を形成する場合には、1カ所目を開口部52−2aに位置するようにし、2カ所目を台部材18上のスライド部材16から突出している領域に位置させることにより、固定治具10による位置調整を行わずに、打刻機100の打刻ヘッド118の移動だけで画像形成を行うことができるようになる。
【0105】
こうして、固定治具10に被加工物200を確実に固定した後に、所定の処理により打刻機100を作動して被加工物200に所望の画像を形成するものである。
【0106】
これにより、打刻機100においては、固定治具10を使用して被加工物200を固定することにより、固定治具120を使用して被加工物200を固定する場合と比較して、より多くの種類の形状の被加工物に対して、打刻画像を形成することができるようになる。
【0107】
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(3)に示すように変形するようにしてもよい。
【0108】
(1)上記した実施の形態においては、台部材18を金属板18−1、18−2、18−3の3層で構成するようにし、被加工物200の上下方向の大きさに応じて、台部材18を1層〜3層の間で調整するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、台部材18を1層または2層で構成するようにしてもよいし、4層以上で構成するようにしてもよい。
【0109】
より多層で台部材18を形成することにより、被加工物200の上下方向の大きさにより細かく対応することができるようになる。
【0110】
(2)上記した実施の形態においては、固定治具10を打刻機100に配設するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、例えば、3次元方向に移動する加工ヘッドを備えた切削機に配設するようにしてもよい。
(3)上記した実施の形態ならびに上記した(1)(2)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、被加工物に対して打刻や切削などの処理を行う装置において利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
10、120 固定治具、14 移動機構、18 台部材、20 押圧部材、22 シート材、50 ヒンジ、52 押圧板、54 巻きバネ、100 打刻機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元方向で加工ヘッドを移動して、被加工物に対して所定の加工を行う加工機に備えられ、前記被加工物を固定する固定治具において、
XYZ直交座標系のXY平面において移動可能な移動機構と、
前記移動機構上に配設されるとともに、前記被加工物が載置される台部材と、
前記移動機構上に配設されるとともに、X軸周りに回動可能であり、巻きバネによりX軸周りの所定の方向に常に付勢される回動部材と、前記回動部材に配設されて、前記回動部材によりX軸周りに回動するとともに、Y軸周りに回動可能に前記台部材と対向するようにして配設された押圧部材とを備え、前記回動手段における付勢力により、前記押圧部材により前記台部材に載置された前記被加工物を前記台部材側に押圧して、前記押圧部材と前記台部材とにより前記被加工物を挟持する押圧手段と
を有し、
前記押圧手段における前記押圧部材において、前記被加工物と当接することが可能な領域に、開口部が形成される
ことを特徴とする固定治具。
【請求項2】
請求項1に記載の固定治具において、
前記台部材における前記被加工物が載置される面には溝が形成される
ことを特徴とする固定治具。
【請求項3】
請求項1に記載の固定治具において、
前記台部材は、同形状の複数の金属板より構成された多層構造である
ことを特徴とする固定治具。
【請求項4】
請求項3に記載の固定治具において、
前記複数の金属板においては、前記被加工物が載置される面に溝が形成される
ことを特徴とする固定治具。
【請求項5】
請求項1、2、3または4に記載の固定治具において、
前記台部材上にシリコーンゴムが配設されるとともに、前記押圧部材における前記被加工物と当接する領域において樹脂部材が配設される
ことを特徴とする固定治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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