説明

固定用長穴及び固定冶具

【課題】従来、ボルト締結位置を調整する手段として、長穴を設けた金物にボルトで締め付ける方法がとられているが、ボルト締め付けのみによる固定では、ボルト締め付けにより生じるボルト座面の摩擦力のみの力しか加わらず、ボルトの緩みや座面摩擦力以上の負荷が加わった際に、長穴方向へずれを生じてしまうという問題点があった。
【解決手段】ボルト締め付けによるボルト座面摩擦力のみに頼らず、本体長穴内部側面に凹凸をもうけ、同様に挿入部側面に凹凸がもうけられた固定冶具を締め込む、もしくは、はめ込み、ボルトを締め付ける事で、仮にボルト軸力が低下し、ボルト座面の摩擦力が低減しても固定用長穴及び固定冶具の双方でかみあった凹凸部の作用で機械的に長穴方向へのずれを防止する事ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築や機械、設備等において、締結の際に位置調整を行う為に長穴をもうけてある箇所における長穴方向へのずれを防止する固定用長穴及び固定冶具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルト締結位置を調整する手段として、長穴を設けた金物に長穴内の任意の位置にて、ボルトを締め付ける事で締結位置を調整し固定していた。しかし、ボルト締め付けのみによる固定では、締め付けにより生じるボルト座面の摩擦力のみで、ボルトの緩みや座面摩擦力以上の長穴方向への大きな負荷が加わった時に、長穴方向へずれを生じてしまうという問題点があった。
【0003】
ただし近年、特に建築関係に用いられる長穴を設けた金物について、ハイテンションボルト等を使用し高トルク、高軸力を加える事で座面摩擦力を上げる方法がとられているが、やはりボルト座面の摩擦力に頼る方法の為、緩みや経年軸力低下などによるボルト座面の摩擦力低下や摩擦力以上の負荷が加わった際にずれを生じる可能性があり、根本的な解決に至っていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、従来長穴の締結位置を固定する為に、ボルト締結により生じるボルト座面のみの摩擦力といった不確定な要素のみに頼っている点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する為に本発明の固定用長穴及び固定冶具は、長穴内部片側側面もしくは両側側面に凹凸をもうける様に加工された固定用長穴に、同様に挿入部片側側面もしくは両側側面に凹凸がもうけられた固定冶具をはめ込み、ボルトを締め付ける事で、仮にボルト軸力が低下し、ボルト座面の摩擦力が低減しても、相互にかみあった固定用長穴及び固定冶具の凹凸部の作用により、機械的に長穴方向へのずれを防止する事を特徴とする。固定用長穴及び固定冶具にもうけた凹凸については、図面では三角形の凹凸とされているが、用途により四角形や半円形でもよい。
【0006】
また、固定用長穴及び固定冶具にもうけられた凹凸部については、傾斜をもたせる事で、ボルト締結の様に締め付ける事も出来る。
【0007】
さらに、これらの方法では、長穴本来の意図である任意の位置でボルト締結を行うという目的を損なわず、同様に任意の位置でのボルト締結を行える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の固定用長穴及び固定冶具は、従来のボルト締結によるボルト座面の摩擦力のみに頼る事なく、固定用長穴に固定冶具をはめ込み、ボルトを挿入し締め付けるだけで、機械的に長穴方向へのずれを防止できる利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
固定用長穴に固定冶具をはめ込む事により、ボルト座面の摩擦力のみに頼らずに長穴方向へのずれを防止する事が可能となる。
【0010】
また、凹凸部は垂直方向への凹凸に限らず、傾斜をもった凹凸でも良い。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の実施例1の形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施例1の斜視図である。本体金物1にもうけた固定用長穴2に固定冶具3をはめ込む。その後、固定冶具3に開いている穴からボルト4を通し被締結物6に締結されている。図ではボルト4にナット5を用いて締結されているが、タップ穴へのボルトの締結等、ナット使用以外でも良い。
【0013】
固定用長穴2の内部片側側面もしくは両側側面にもうけられた凹凸部7に同様に挿入部片側側面もしくは両側側面に凹凸部8がもうけられた固定冶具3がはめ込まれている。はめ込まれた際に固定用長穴2内部の凹凸部7と固定冶具3挿入部の凹凸部8が相互にかみあい、干渉し、長穴方向へのずれを防止する様になっている。
【0014】
固定冶具については、図3及び図4の固定冶具斜視図の様に、通常は固定冶具座金部9と固定冶具挿入部10とを一体型としているが、座金を使用しない、もしくは特殊な座金を使用するといった用途により、図5の様に固定冶具座金部9及び固定冶具挿入部10に分割し固定冶具挿入部10のみで使用する事もできる。
【実施例2】
【0015】
以下、本発明の実施例2の形態を図6〜図10に基づいて説明する。
【0016】
図6は、本発明の実施例2の斜視図である。本体金物1にもうけた固定用長穴11に固定冶具12を締め込む、もしくは、はめ込む。その後、固定冶具12に開いている穴からボルト4を通し被締結物6に締結されている。図ではボルト4にナット5を用いて締結されているが、タップ穴へのボルトの締結等、ナット使用以外でも良い。
【0017】
固定用長穴11の内部片側側面もしくは両側側面にもうけられた傾斜した凹凸部13に同様に挿入部片側側面もしくは両側側面に傾斜した凹凸部14がもうけられた固定冶具12が締め込まれる、もしくは、はめ込まれている。はめ込まれた際に固定用長穴11内部の凹凸部13と固定冶具12挿入部の凹凸部14が相互にかみあい、干渉し、長穴方向へのずれを防止する様になっている。
【0018】
固定冶具については、図8及び図9の固定冶具斜視図の様に、通常は固定冶具座金部15と固定冶具挿入部16とを一体型としているが、座金を使用しない、もしくは特殊な座金を使用するといった用途により、図10の様に固定冶具座金部15及び固定冶具挿入部16に分割し固定冶具挿入部10のみで使用する事もできる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明による固定用長穴及び固定冶具は、現在用いられているボルト座面による摩擦のみの方法と比べ、強固に長穴方向へのずれを防止する為、安全性が大きく増す。また、建築や機械、設備等、組み立ての際に長穴を使用する箇所において、幅広い分野で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1の固定用長穴及び固定冶具をボルトで締結した状態の斜視図である。
【図2】実施例1の固定用長穴の斜視図である。
【図3】実施利1の固定冶具の上面斜視図である。
【図4】実施例1の固定冶具の下面斜視図である。
【図5】実施例1の固定冶具の座金部、挿入部分割状態図である。
【図6】実施例2の固定用長穴及び固定冶具をボルトで締結した状態の斜視図である。
【図7】実施例2の固定用長穴の斜視図である。
【図8】実施例2の固定冶具の上面斜視図である。
【図9】実施例2の固定冶具の下面斜視図である。
【図10】実施例2の固定冶具の座金部、挿入部分割状態図である。
【符号の説明】
【0021】
1,本体金物
2,実施例1の固定用長穴
3,実施例1の固定冶具
4,ボルト
5,ナット
6,被締結物
7,実施例1の固定用長穴凹凸部
8,実施例1の固定冶具凹凸部
9,実施例1の固定冶具座金部
10,実施例1の固定冶具挿入部
11,実施例2の固定用長穴
12,実施例2の固定冶具
13,実施例2の固定用長穴凹凸部
14,実施例2の固定冶具凹凸部
15,実施例2の固定冶具座金部
16,実施例2の固定冶具挿入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に長穴方向垂直に凹凸がもうけられた固定用長穴と、固定用長穴にはめ込む事により長穴方向へのずれを防止する固定冶具。
【請求項2】
側面に傾きをもたせた凹凸がもうけられた固定用長穴と、固定用長穴に締め込むもしくは、はめ込む事により長穴方向へのずれを防止する固定冶具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate