説明

固定装置

(I)第1および第2の端部を有する外科用ケーブル(16)、並びに、(II)第1及び第2の中心穴(6,8)と、前記第1及び第2の穴を取り囲む第1及び第2のリング(10,12)とを有する少なくとも第1および第2の固定プレート(2,4)を含む固定装置であって、各固定プレートの周囲(20)はリングの外縁を形成し、リングの内縁は、それが取り囲む穴に隣接し、第1の固定プレートは、第2のプレートの上に積み重ねられた位置にあり、プレート間に間隙(26)を残し、穴は互いに少なくとも部分的に重なり合い、ここで、固定プレートのうちの1つのリングの、もう一方の固定プレートに面する表面に、前記リングの外縁と内縁の間に延びる連続的な溝(52)が存在し、もう一方の固定プレートのリングの、該固定プレートのうちの1つに面する表面に、前記溝と合致する隆起(50)が存在し、ケーブル端部を引くことにより骨部分の周囲でケーブルに張力がかかり、これらを固定するように、ケーブル端部は、プレートの周囲およびプレート間、並びに穴を通って延びる連続的な軌道に従う。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、外科用ケーブルで骨部分を固定するための固定装置に関する。
【0002】
現代の外科手術では、多くの場合、手術中に分離され、癒合しなければならない、又は、1つの骨部分を別の骨部分若しくは整形外科用装置(スプリントなど)に対して定まった一定の距離および位置に保持しなければならない骨部分を動かないようにする必要があり、以下、骨部分の固定と表記する。また、骨折の治療中、分離した骨部分をこのように固定する必要が、少なくとも身体が骨折を修復するのに必要な時間、又はそれ以上の間、多くの場合何年もの間、要求される。
【0003】
固定されるべき骨部分の周囲にスチールケーブルを巻き付け、その部分が、例えば、荷重がかかって相対移動しないように固定するのに必要な張力がケーブルにかかった状態にし、それを少なくとも、骨部分が癒合して骨が再びその適切な機能を再開するのに十分回復するまで、又はケーブルを除去するための再手術を回避するため永久に、所定の位置に留置することが知られている。金属ブロック中の穴を通るように両側からケーブルの端部を案内し、端部に引く力を及ぼすことによりケーブルに張力をかけ、穴が崩壊しケーブルを固定するように金属ブロックを挟むことにより、ケーブルに張力をかけて固定する。
【0004】
スチールケーブルの使用は多くの欠点をもたらす。それらは疲労して、構成するスチール繊維の破壊を起こし、その後、鋭利な端部が突き出して体に刺さる傾向がある。外科医による適用中、繊維が破壊すると、刺入(stitching)および、おそらくは血液接触のリスクが生じる。更に、スチールは硬質材料であり、骨の周囲で張力をかけると、スチールケーブルが骨を削って入るリスクがある。
【0005】
米国特許第5,540,703号明細書は、金属ケーブルのある一定の欠点を克服するため、金属ケーブルの代わりに編組されたポリマー材料ケーブルを使用し、ピンと張って張力がかかったケーブルを緩まない結び目で固定することを教示している。高性能、即ち、高強度、高弾性率のポリエチレンが特にポリマー材料として適用される。しかし、この種の繊維は、張力がかかっているとき、結び目、クランプ、又は他の手段で固定し難いことが知られている。
【0006】
そこで、本発明は、既知の手段の欠点がなく、張力のかかった高性能繊維の適用に関する固定の問題点に対処する、ポリマー材料の外科用ケーブルで骨部分を固定する方法および手段を提供しようとするものである。
【0007】
この目的は、請求項1に記載の固定装置を提供することにより、本発明に従って達成される。
【0008】
骨部分と接触すべきプレートが第2のプレートとして示され、これらの部分の上にあると仮定される状態で軌道が画定されていることが理解される。他の状態は、回転および/又は鏡映された状態となり、これらの状態では、軌道中の部分の形状および順番は、本質的に同じままであるが、上向きおよび下向きは入れ替えなければならない場合がある。
【0009】
新規な固定装置は容易に適用され、固定されるべき部分の周囲にケーブルを適用し、指定された軌道の終点で固定プレートから突き出るケーブルの端部を引くことにより、骨部分を所定の位置に保持することができる。2つの端部を引くことによりケーブルに張力をかけるには、比較的小さい力ですみ、これは、同時に、プレートのリング間に延びるケーブル部分に対する2枚のプレートのクランプ力を増大させる。このクランプし固定する力は、ケーブルの張力によって及ぼされる力よりも、かなり大きいように思われた。
【0010】
本発明による方法では、2つの端部を有する繊維外科用ケーブルが適用される。繊維は、高性能繊維、好ましくは、少なくとも1.8GPaの引張強度および少なくとも60Gpaの弾性率を有するポリエチレン繊維である。このような繊維の例には、DSM高性能繊維(DSM High Performance Fibers)の様々なダイニーマ(Dyneema)グレード、および、ハニーウェル社(Honeywell Inc.)の様々なスペクトラ(Spectra)グレードがある。これらの繊維は、高分子量ポリエチレン、特に、少なくとも2,000,000の重量平均分子量を有するポリエチレンから調製されている。
【0011】
特に、ケーブルは、前述の種類の平行な、撚られた、又は編組された繊維の束である。それは、また、必要な強度および弾性率を有する高性能テープであってもよい。テープは、単一のテープであってもよく、又は、それは高性能繊維の平坦な組紐の形態であってもよい。撚りおよび編組は、ケーブル製造に通常適用される技術であり、これらの常法により得られるケーブルは、本発明による装置に適用可能である。これらの繊維の構成では、例えば、組紐および撚られた束では、効率損失が生じる、即ち、得られる構成の強度は、構成する繊維の強度の合計より低いことに留意すべきである。効率は、使用される組紐構成、編組期間(braiding period)および組機に依存する。組紐効率は30〜70%の範囲であってもよい。各場合、必要なケーブル強度から始めて、少なくともその必要な強度を有するケーブルが得られるように、初期繊維強度、ケーブル厚さ、およびケーブル構成の適切な組み合わせを選択することができる。骨部分を固定するのに必要な力は、固定されるべき骨のサイズおよび骨部分に及ぼされる力に応じて、一般に、500〜3000Nの範囲である。指におけるように、小さい骨では、より小さい力と厚さが妥当な場合がある。一般に、ケーブルの全厚は、500〜30,000dtexの範囲である。
【0012】
ケーブルは、骨部分の周囲に配置されるのに適していなければならず、長い形状を有する;特に、ケーブルは、固定されるべき骨部分の周囲に配設され、張力をかけられるのに十分な長さの平行な、撚られた、又は編組された繊維の束である。
【0013】
記載される形状の繊維束のケーブルは、2つの端部を有する。これらの端部は通常、束の解れ又は割裂を防止するように処理されている。端部は、例えば、繊維を一緒に接着する物質で処理されていてもよく、一緒に溶融されていてもよく、又は、他の方法で解けないようにされてもよい。この実施形態では、束の端部の方の最後の数センチメートルが端部分を形成する。本発明のある一定の実施形態では、繊維の一端は、端部をスプライスして元のように束にすることによって、小環(eye)に形成されていてもよい。
【0014】
装置は、2枚の固定プレートを含む。ここで、およびこれ以降、固定プレートは、骨の固定に必要な前述の引張力に耐えることができ、生体適合性のある平坦な又は僅かに湾曲した材料片と理解される。好適な材料の例には、強化熱硬化性樹脂、金属およびセラミック材料がある。材料は、ヒト又は動物の体内に埋植されるとき、痛み、炎症、刺激および中毒、又は、ヒトおよび動物の体に対する他の望ましくない効果を引き起こすことなく許容される場合、材料は生体適合性があると考えられる。
【0015】
固定プレートは、主に、平坦であるが、接触する骨部分に適合するように僅かに湾曲してもよい。
【0016】
各固定プレートは、中心穴およびその穴を取り囲むリングを含む。中心穴は、好ましくは、固定プレートの中心を包囲するが、この中心は必ずしも穴の中心ではない。穴は、円形、楕円形、正方形又は長方形又は他の任意の規則的な形状であってもよい。穴を取り囲むリングの外周について、同様のことが当てはまる。穴および外周の形状は、同じであっても又は異なってもよい。細長い形状が好ましいが、それは、これが、長い方の部分がケーブルの方向になるリングの向きに繋がるように思われるからである。この結果、滑らかな形状の構成が得られ、また、ケーブルはできるだけ広い面積でクランプされ、最適なクランプ力が得られる。リングは、穴に隣接する内縁と、リングの外周を形成する外縁とを有する。ヒト又は動物の体内に適用された後、周囲組織に対する切断又は刺入効果を防止するため、および、適用中とその後の両方の外科用ケーブルの完全な又は部分的な切断を防止するため、好ましくは、縁部には丸みがついている。
【0017】
固定プレートのサイズは、それが適用される骨部分のサイズと形状によって定まる強度要件とサイズ要件の両方に合致するように選択される。穴の最大寸法と、リングの最大幅、即ち、リングの内縁と外縁の間の距離との比は、広範囲にわたって様々であってよく、0.3〜0.9の間であってもよい。一般に、厚さは0.5〜4mmの範囲であり、リングの最大寸法は4〜30mmの範囲である。従って、固定プレートは、穴が比較的大きく、リングが比較的大きい厚さ対幅の比を有する、このスケールの一端のチェーンリンクの形状から、穴が比較的小さく、リングが比較的小さい厚さ対幅の比を有する、このスケールのもう一端の座金の形状を有してもよい。プレートを重ね合わせて安定に配置するため、好ましくは、プレートの厚さは、リングの最大幅の0.5倍以下から、更には0.1倍未満である。
【0018】
固定プレートのうちの1つのリングの、もう一方の固定プレートに面する表面に、前記リングの外縁と内縁の間に延びる連続的な溝が存在し、もう一方の固定プレートのリングの、該固定プレートのうちの1つに面する表面に、前記溝と合致する隆起が存在する。
【0019】
溝と隆起は連続的である、即ち、これらは穴を取り囲む途切れのないループとして延びる。隆起と溝は合致している、即ち、それらのそれぞれの位置と寸法は、それらが重ね合わせて置かれるとき、隆起が溝の中に入り、リング上と隆起−溝の対の中の両方で、2つの向かい合うリング表面間に事実上全く空間を残さずに嵌合するようになっている。隆起と溝の間に残される空間は、隆起と溝の外側の2つのリング表面間の空間に等しいか、又はそれより小さくすべきである。この形状は、張力のかかったケーブルが隆起と溝の間で最大にクランプされるという利点をもたらす。この形状は、張力のかかったケーブルが滑らないように、より良好に固定され、緊締されるという利点をもたらす。
【0020】
固定プレートの形状が非対称的であり、外科用ケーブルに張力がかかるとき固定プレートがどの位置を取るか十分な確実性で予測できる場合、本発明の別の実施形態では、固定プレートが前記予測される位置にあるときケーブルが延びているリングの部分だけに、合致する隆起と溝が存在してもよい。
【0021】
更に別の実施形態では、本発明は、ケーブルの一端は上記に画定された又は以下の様々な実施形態で指定される軌道に従うが、もう一端は張力調整装置に固定される装置に関し、張力調整装置は、固定プレート、および、第2の軌道の最後の部分が通って延びるプレート間の間隙に隣接する2つのリングの1つに接続され、前記間隙に面する表面の一部に、前記リングの外縁と内縁の間に延びる溝が存在し、前記間隙に隣接するもう一方のリングの前記間隙に面する表面に、前記溝と合致する隆起が存在する。
【0022】
この実施形態では、ケーブルの一端がプレートの積み重ねに接続されるプレートの側だけに、溝と隆起が存在すればよい。固定装置が存在する反対側では、溝と隆起は、機能を有しておらず、ここに存在する必要はない。
【0023】
隆起と溝の長手方向の形状は、リングの内縁および/又は外縁の輪郭と同じである必要はないが、好ましくは、大部分、それに従う。鋭利な縁部におけるケーブルの望ましくない切断のリスクを防止するため、好ましくは、それらは、滑らかな軌道、即ち、少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.3、更には少なくとも0.5mmの半径を有する丸みのついた湾曲を有する滑らかな軌道に従う。隆起の高さ、および、従って合致する溝の深さは、好ましくは固定プレートの厚さの少なくとも30%、且つ90%以下である。更に好ましくは、この高さは、前記厚さの40〜75%である。溝の深さは、ケーブルに張力をかける際、プレートが引く力に耐えることができるようなプレート強度になるようにすべきである。隆起の基部における幅は、以下に画定される高さと頂角から得られる。これらは、好ましくは、前記幅がリングの外縁と内縁の間の距離の95%を超えないように選択される。隆起と溝の中心線の位置は重要ではなく、それらはリングの内縁と外縁から等間隔で離間していてもよいが、また、そこからリングの局部幅の10〜90%内に位置していてもよい。隆起は、頂角が45〜120°、好ましくは60〜105°の三角形の形状を有してもよく、好ましくは0.1〜0.3mmの半径を有する丸みのついた頂部を有する。丸みつけ半径は、できるだけ多くの隆起表面を保持するように、通常はかなり小さいが、鋭利過ぎる縁部による繊維の切断は防止されなければならない。
【0024】
2枚の固定プレートは、積み重ねられた位置にあり、それらの間に間隙を残す。この間隙の幅は、最初、およそ外科用ケーブルの厚さである。ケーブルに張力がかかった後、固定プレートは、張力をかけるために及ぼされる力によって圧着され、このようにしてケーブルが滑って緩むことを防止する。
【0025】
中心が合うようにプレートが積み重ねられるとき、穴は互いに少なくとも部分的に重なり合う。好ましくは、2枚のプレートは、少なくともケーブルをクランプする部分に関して形状とサイズが等しく、また、好ましくは、穴はサイズとプレート内での位置が同じである。
【0026】
2枚のプレートは、特定の方法でケーブルに接合され、その結果、容易に張力をかけることができ、且つ、張力がかかった状態でケーブルが摺動して戻ることなく張力を保持できる装置が得られる。これを達成するため、ケーブルの少なくとも一端は、部分(j)として外縁の外側から第2のリングの下に第2の穴まで延びて、上向きに曲がり、第2および第1の穴を通って延びる第1の上向き部分(a)、湾曲部から第1のリングを横切ってその外縁の方向に延びる外向き部分(b)、上向き部分(a)の反対方向に延びる前記外縁の外側の下向き部分(c)、第2のリングの穴を通って延びる部分(d)であって、その一端が固定プレート間の間隙を通って延びる軌道部分(e)に接続され、そのもう一端が第2のリングの下に延びる軌道部分(f、g)に接続される部分(d)に至る連続的な軌道に従わなければならず、ケーブルのもう一端も固定プレートに接続される。
【0027】
第1の好ましい実施形態では、部分(c)が第2のリングの外縁の外側に更に延び、第2のリングの下にその外縁からその穴まで延びる軌道部分(f)を通って部分(d)の一端に接続され、部分(d)のもう一端が、固定プレート間の間隙を通って外方向に延び、プレートの外側でケーブル端部となって終わる部分(e)に直ぐに接続される。
【0028】
第2の好ましい実施形態では、軌道部分は、(j)、(a)、(b)、(c)、(e)、(d)、続いて、第2のリングの下にその穴からその外縁まで延び、プレートの外側でケーブル端部となって終わる軌道部分(g)の順番である。
【0029】
本発明の全ての実施形態において、更に大きいクランプ力が好ましい場合、画定された軌道の前に余分のループがあってもよく、余分のループは、穴を通って上向きに、リングの外縁に沿って下向きに延び穴に戻った後、画定された軌道が始まる。
【0030】
一般に、ケーブルの両端は、軌道のうちの1つに従ってもよく、2つの軌道は同じであっても、又は異なってもよい。
【0031】
ある一定の程度までのクランプ力は、ケーブルの端部を引っ張ることによりケーブルに更に張力がかかることを妨害する場合があるため、好ましい実施形態では、ケーブルの一端だけが画定された軌道に従い、もう一端は、固定プレートに接続される張力調整装置に接続される。このようにして、ケーブルの一端を引くことによりケーブルに最大に張力をかけた後、張力調整装置を操作することにより、更に張力をかけることができる。このような張力調整装置は、ターンバックル、ウォーム歯車と駆動スクリュの組み合わせ、又は相互に垂直な軸を中心に回転する2つの協働する45°歯車(tooth wheels)、又は、更には単純なスクリュに使用され、張力調整装置にねじ込まれ、結び目によりケーブルのもう一端に接続できるフックとなって終わるか、若しくはその端部で小環に掛止する機構を含んでもよい。引く力だけがケーブルに及ぼされ、その結果ケーブルが短くなって張力がかかるように、しかし、また、引く力の代わりに若しくは引く力の他に、捩る力もケーブルに及ぼされ、その結果またケーブルに更に張力がかかるように、これらの張力調整装置をケーブルに接続することができる。このような装置を使用するとき、ケーブルのもう一端を、例えば、張力調整装置のフックに結び付けてもよいが、好ましくは、ケーブルのもう一端には、例えば、割裂によって作られた小環、又はそれを張力調整装置に接続するための他のいずれかの滑り止め手段がある。
【0032】
更に、本発明は、ケーブルの2つの端部が、固定されるべき骨部分の周囲の前述の軌道に従う固定装置を適用する工程、続いて、ケーブルの端部を引き、骨部分の周囲のケーブルに張力をかけて、骨部分を固定するのに必要な張力にする工程を含む、対象物を一緒に結紮する方法、特に、骨部分を固定する方法に関する。
【0033】
本方法の好ましい実施形態では、ケーブルに張力をかける前に、固定プレート間に棒を挿入し、ケーブルに張力がかかった後に取り出す。この実施形態は、棒が取り出された後にしかクランプ力は作用せず、その前はケーブルに張力がかかることを妨害しないという利点を有する。棒の厚さは小さくてもよいが、その存在の十分な利点を有するため、それは、好ましくは、少なくともケーブルの厚さに等しい。棒の取り出しは、張力のかかったケーブル部分の極僅かな伸長に繋がる場合があるため、棒は、薄くなければならず、好ましくは10mm以下、更に好ましくは5mm以下、又は更には2mm以下である。
【0034】
本発明による固定装置は、骨部分の固定に好適なだけではなく、それはまた、対象物を一緒に結紮するのにも非常に有用である。一緒に結紮されるべき対象物の周囲に1つ以上の装置を適用し、ケーブルに張力をかけることにより、対象物はしっかりと永久的に一緒に結紮される。
【0035】
従って、別の実施形態では、本発明は、ケーブルの一端が前述の軌道に従い、もう一端が、固定リング5に接続される張力調整装置に固定される前述の骨固定装置を、対象物の周囲の、特に固定されるべき骨部分の周囲に適用する工程、続いて、ケーブルの前記一端を引き、対象物の周囲の、特に骨部分の周囲のケーブルに張力をかける工程、ケーブルのたるみを取り除く工程、および、次いで、張力調整装置を操作することによりケーブルに張力をかけ、対象物を一緒に結紮するのに、特に骨部分を固定するのに必要な張力にする工程を含む、対象物を一緒に結紮する方法、特に骨部分を固定する方法に関する。
【0036】
図面から、ケーブルを適切な軌道に沿って固定プレートの周囲に導く方法としての、情報を得ることができる。記載される様々な実施形態および方法は、骨部分の固定に好適なだけではなく、それらはまた、何らかの整形外科的機能を提供する人工要素、例えば、スプリントに骨を接合するのにも有用である。「骨部分」の用語を使用する場合、これは、また、一緒に結紮又は固定される必要がある1つの骨部分および人工要素を包含するものと考えられる。
【0037】
本発明は、また、固定装置の本質的部分に関し、特に、本発明は更に、本発明による固定装置を構成するように調製若しくは適合された、又は本発明の方法に適用されるように調製された、少なくとも2枚の固定プレートと外科用ケーブルのセットに、外科用ケーブルに、およびリングに関する。
【0038】
以下の図面で本発明を更に説明する。
【0039】
図1では、数字2および4は、それぞれリング10及び12によって取り囲まれた穴6及び8を有する丸い固定プレートを示す。固定プレート間に、取り出し可能な棒14が存在する。ケーブル16は骨部分17(完全には図示されていない)を取り囲む。ケーブル16の一端は、部分(j)および(a)〜(f)が識別されている軌道に沿って延びる。ここでは、部分(j)は、外縁の外側から第2のリングの下に第2の穴まで延び、部分(a)は、下から穴8および6を通って上向きに延び、次いで右に外方向に曲がり、部分(b)としてリング10の上面18に沿ってその外縁まで延び、そこで、下向きに曲がって部分(c)としてリング10および12の外周20および22に沿って延びる。次いで、ケーブルは、左に内方向に曲がり、部分(f)としてリング12の下面24に沿ってこのリングの内縁まで延び、そこで上方向に曲がり部分(d)としてプレート4の穴8を通って延びる。最後に、ケーブルは部分(e)として間隙26を通り外方向に延び、端部28を間隙から外に至らせる。ケーブル16のもう一端は、類似の軌道に従うが、穴の中心に対して逆になっている。端部28および30を把持し、引いて骨部分の周囲のケーブル16に張力をかけるように操作し、これらを互いに対して固定された状態に保持することができる。棒14は、ケーブルが既にクランプされて、ケーブル16に張力をかけることが妨害されないようにする。固定プレート4に面する固定プレート2のリング10の表面に隆起50が存在する。この溝の詳細は、図7および図8に記載されている。固定プレート4のリング12の表面に、位置と寸法が隆起50と合致する溝52が存在する。このようにして、ケーブル16の作用端28は、ケーブルに張力がかかるとき、隆起によって溝の中にクランプされる。
【0040】
図2では、図1の実施形態の上面図が示されている。棒14は、プレート2の穴6を通して見ることができる。
【0041】
図3では、棒14は取り出されており、プレートは、プレートを取り囲むケーブルによって圧着されている。プレートが(e)でケーブルに及ぼす圧力によって、ケーブルは滑って戻らないように緊締され、溝26はこのとき閉鎖されている。特に、ケーブルは、溝52にぴったりと嵌合する隆起50によってクランプされ、ケーブル端部28が滑って戻らないように緊締されることに大いに寄与する。図4では、図1と同じ相対配置の同じ2枚のプレートが存在する。
【0042】
図4では、対応する品目の番号は400だけ大きくなっており、そのため、例えば、402は図1の2と同じ品目である。ケーブル416の一端は、部分(j)および(a)〜(g)((f)は除外する)を識別することができる軌道に沿って延びる。ここで、部分(j)は、外縁の外側から第2のリングの下に第2の穴まで延び、部分(a)は、下から穴408および406を通って上向きに延び、次いで右に外方向に曲がり、部分(b)としてリング410の上面418に沿ってその外縁まで延び、そこで下向きに曲がり、部分(c)としてリング410の外周420に沿って延びる。次いで、ケーブルは、左に内方向に曲がり、部分(e)として間隙426を通り、穴の間の間隙の部分に達するまで延び、そこで下向きに曲がり部分(d)としてプレート404の穴408を通って延びる。最後に、ケーブルは部分(g)として外方向にリング404の下面424の下に延び、端部428を間隙から外に至らせる。ケーブル416のもう一端は、類似の軌道に従うが、穴の中心に対して逆になっている。端部428および430を把持し、引いて骨部分417の周囲のケーブル416に張力をかけるように操作し、これらを互いに対して固定された状態に保持することができる。棒14は、ケーブルが既にクランプされて、ケーブル16に張力をかけることが妨害されないようにする。隆起450と溝452は図1におけるように位置し機能する。
【0043】
図5では、502および504は、それぞれ穴506および508を有する2枚の非対称的な固定プレートである。各穴の周囲のリングは、第1の部分510及び512を有し、その表面積は前述の軌道に従うケーブルに十分なクランプ力を付与するほど大きい。この図5では、ケーブルの一端は、図1に記載される軌道に従う。第1の部分に対して穴の反対側にあるリングの部分532及び534は、第1の部分より小さい。張力調整装置536は、第1の部分538からなり、その中に、フック540が取り付けられる雌ねじが設けられている長手方向の穴部が存在する。ケーブルのもう一端530は、フック540が取り付けられた小環546を有する。張力調整装置536は、更に、ほぼ装置の中心から、穴部が存在する側と反対側の端部まで延び、その全幅にわたって延びる凹部542から本質的になる第2の部分からなる。凹部は、壁544で終わる。この壁の厚さは、それがプレートの穴に嵌合するようなものであり、ケーブルが穴を通りクランプ軌道に沿って案内されるのに十分な余裕を残している。下プレート504は、張力調整装置の一部を形成している。プレート502は、プレート504に対して上向きおよび下向きに移動することができる。凹部542の底部は、プレート504の表面と同じレベルにある。これは、ケーブル端部528を引いてケーブルに張力をかけ、プレート502が下向きに押圧されるとき、リング510がその全表面積にわたって下プレートのリング部分512と接触することを可能にする。プレート502は、壁544が穴506を通って延びるように張力調整装置に取り付けられる。回転フック540を反時計回り方向に回すとケーブルに更に張力がかかる。隆起550および溝552は図1におけるように位置し、機能するが、それらは、非対称的な固定プレート502および504の部分510および512だけを横切って延びる。
【0044】
更に、この実施形態でも、張力をかける間にリング間に棒を挿入し、その後、所望の張力がかかったときに取り出すことができる。
【0045】
図6では、上部プレート602の穴606に、前記穴を通り突き出している壁644の上部を見ることができる。小環646を有するケーブル端部630は、フック640に接続されている。
【0046】
図7aでは、754は、穴758を取り囲むリング756からなる円形の固定プレートである。リング756の表面760に、同様に円形の隆起750が存在し、その中心線は、リング756の中心線と一致する。
【0047】
図7bでは、リング756上に、90°の頂角と丸みのついた頂部762を有する三角形の形状を有する隆起750が存在する。
【0048】
図8aでは、854は、穴858を取り囲むリング856からなる円形の固定プレートである。リング856の表面860に、同様に円形の溝852が存在し、その中心線は、リング856の中心線と一致する。
【0049】
図8bでは、リング856の中に、90°の頂角を有する三角形の形状を有し、図7bの隆起750と合致する溝852が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による固定装置の第1の実施形態の概略側面図である。
【図2】前記第1の実施形態の上面図である。
【図3】張力のかかった状態の第1の実施形態の概略側面図である。
【図4】このような固定装置の第2の実施形態の概略側面図である。
【図5】このような固定装置の第3の実施形態の概略側面図である。
【図6】前記第3の実施形態の上面図である。
【図7a】隆起を有する本発明による固定プレートの上面図である。
【図7b】図7aのこの固定プレートの側面図である。
【図8a】溝を有し、図7aの固定プレートと合致する本発明による固定プレートの上面図である。
【図8b】図8aのこの固定プレートの側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)第1および第2の端部を有する外科用ケーブル(16、416)、並びに、(II)第1(6、406)及び第2(8、408)の中心穴と、前記第1(6、406)及び第2(8、408)の穴を取り囲む第1(10、410)及び第2(12、412)のリングとを有する少なくとも第1(2、402)および第2(4、404)の固定プレートを含む固定装置であって、各固定プレートの周囲(20、420及び22、422)はそのリング(10、410及び12、412)の外縁を形成し、そのリング(10、410及び12、412)の内縁は、それが取り囲む前記穴(6、406及び8、408)に隣接し、前記第1の固定プレート(2、402)は前記第2のプレート(4、404)の上に積み重ねられた位置にあり、前記プレート(2、402、4、404)間に間隙(26、426)を残し、前記穴(6、406、及び8、408)は互いに少なくとも部分的に重なり合い、前記固定プレート(2、402及び4、404)のうちの1つのリングの、もう一方の固定プレート(4、404及び2、402)に面する表面に、前記リングの外縁と内縁の間に延びる連続的な溝(52、452)が存在し、前記もう一方の固定プレート(4、404及び2、402)のリングの、前記固定プレート(2、402及び4、404)のうちの1つに面する表面に、前記溝(52、452)と合致する隆起(50、450)が存在し、ここで、前記ケーブル(16、416)の少なくとも一端は、部分(j)として、前記外縁の外側から前記第2のリング(12)の下に前記第2の穴(8)まで延び、上向きに曲がり、前記第2および第1の穴(8、408及び6、406)を通って延びる第1の上向き部分(a)、湾曲部から前記第1のリング(10、410)を横切ってその外縁(20、420)の方向に延びる外向き部分(b)、前記上向き部分(a)と反対の方向に延びる前記外縁(20、420)の外側の下向き部分(c)、前記第2のリング(12、412)の前記穴(8、408)を通って延びる部分(d)であって、その一端が前記固定プレート(2、402及び4、404)間の前記間隙(26、426)を通って延びる軌道部分(e)に接続され、そのもう一端が前記第2のリング(12、412)の下に延びる軌道部分(f、g)に接続される部分(d)に至る連続的な軌道に従い、前記ケーブル(16、416)のもう一端も前記固定プレート(2、402及び4、404)に接続される、固定装置。
【請求項2】
部分(c)は、前記第2のリング(4)の外縁(22)の外側に更に延び、前記第2のリング(12)の下にその外縁(22)からその穴(8)まで延びる軌道部分(f)を通って部分(d)の一端に接続され、前記部分(d)のもう一端は、前記固定プレート間の間隙(26)を通って外方向に延び、前記プレートの外側でケーブル端部(28)となって終わる部分(e)に直ぐに接続される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記軌道部分が、(a)、(b)、(c)、(e)、(d)、続いて、前記第2のリング(412)の下に前記穴(408)から前記外縁(422)まで延び、前記プレートの外側でケーブル端部(428)となって終わる軌道部分(g)の順番である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
(j)と(a)が、(j)の端部で始まり、穴(8、408)および(6、406)を通って上方向に、次いで、前記第1のリング(10、410)を横切って外方向に、次いで、外縁(20、420および22、422)に沿って下方向に、次いで、前記第2のリング(12、412)の下に内方向に延び、最終的に軌道(a)に接続する追加の完全なループを通って接続される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記ケーブルのもう一端も、前記軌道のうちの1つに従う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記もう一端(530、630)が、前記固定リングに接続される張力調整装置に固定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記固定されるべき骨部分(17、417)の周囲に、請求項1〜5のいずれか一項に記載の固定装置を適用する工程、続いて、前記ケーブルの端部(28、428、30、430)を引いて前記骨部分の周囲の前記ケーブルに張力をかけ、前記骨部分を固定するのに必要な張力にする工程を含む、対象物を一緒に結紮する方法、特に、骨部分を固定する方法。
【請求項8】
前記ケーブルに張力をかける前に、前記固定プレート(2、402、4、404)間に棒(14、414)を挿入し、前記ケーブルに張力がかかった後に取り出す、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記固定されるべき骨部分の周囲に、請求項6に記載の骨固定装置を適用する工程、続いて、前記ケーブルの前記一端(528、628)を引いて前記骨の周囲の前記ケーブルに張力をかけ、次いで、前記張力調整装置(536、646)で前記ケーブルに張力をかけて前記骨部分を固定するのに必要な張力にする工程を含む、対象物を一緒に結紮する方法、特に、骨部分を固定する方法。
【請求項10】
それぞれが中心穴(6及び8)と、前記穴(6及び8)を取り囲むリング(10及び12)とを有する2枚の固定プレート(2及び4)のセットであって、各固定プレート(2及び4)の周囲はそのリング(10及び12)の外縁(20及び22)を形成し、(そのリング(10及び12)の)内縁は、それが取り囲む前記穴(6及び8)に隣接し、前記固定プレート(2及び4)のうちの1つのリング(10及び12)の表面に、前記リング(10及び12)の外縁(20及び22)と内縁の間に延びる連続的な溝(52)が存在し、もう一方の固定プレート(4及び2)の前記リング(12及び10)の表面に、前記溝(52)と合致する隆起(50)が存在する、2枚の固定プレート(2及び4)のセット。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の固定装置を構成するように、又は請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法に適用されるように適合された、請求項10に記載の少なくとも2枚の固定プレートと外科用ケーブルのセット。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の固定装置に適用されるように、又は請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法に適用されるように調製された外科用ケーブル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7a】
image rotate

【図7b】
image rotate

【図8a】
image rotate

【図8b】
image rotate


【公表番号】特表2007−519456(P2007−519456A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550134(P2006−550134)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000936
【国際公開番号】WO2005/074827
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】