説明

固形揮散製剤およびこれに用いる組成物

【課題】吸水性樹脂で形成される水性ゲルからの有効成分の揮散途中あるいは揮散終了時において、ゲルの白濁が起こらない水性ゲル製剤を開発すること。
【解決手段】揮散性油性有効成分、界面活性剤、揮発性溶剤、ポリオール及び水を含有する揮散製剤組成物を吸水性樹脂粒子に吸液させてなる固形揮散製剤並びにこれにもちいる組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形揮散製剤に関し、更に詳細には、固形の水性ゲルを用い、香料、殺虫成分、防虫成分等を揮散することができ、かつ揮散に伴うゲルの白濁が抑制された固形揮散製剤およびこれに用いる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ゲルを用いた製剤(以下、「水性ゲル製剤」ということもある)は、容器から液がこぼれる心配がないことや意匠性に優れるという点から据え置き型の芳香剤などに幅広く取り入れられている。特に、球状にした吸水性樹脂に、香料などの芳香成分を溶解ないし分散させた溶液を吸収させて調製する水性ゲル芳香剤は、ゲルの表面積が大きいため、芳香成分の揮発が促進され、広い空間においても十分に強い香りを充満させることができるとともに、透明なビーズにより意匠性が高いということで広く受け入れられている(特許文献1ないし3等)。
【0003】
上記の水性ゲル製剤の調製に用いられ、香料などの芳香成分を分散した溶液を吸収する吸水性樹脂は、親水性ポリマーを架橋して調製された架橋型吸水性樹脂である。このような水性ゲル製剤に使用される架橋型吸水性樹脂としては、アクリルアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体を含む架橋型吸水性樹脂、ノニオン型ポリオキシアルキレンオキシドを含む架橋型吸水性樹脂、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体を含む架橋型吸水性樹脂、ポリアクリル酸(塩)を含む架橋型吸水性樹脂などが知られており、これらの架橋型吸水性樹脂は非常に安価で汎用性に優れるため幅広く使用されている。
【0004】
しかしながら、これらの吸水性樹脂を使用して調製したゲル芳香剤は、上面を開口した容器に入れて使用した場合、含有された成分が揮散するに従い、透明であった吸水性樹脂が白濁してしまうという傾向がある。この白濁した吸水性樹脂は、揮散に従いその数が増加するため、意匠性の点で大きくマイナスになるという問題があった。
【0005】
特に香料等の揮散性成分の配合割合を多くしたり、一度揮散させて収縮した吸収性樹脂に再度芳香液等を加えて再生させるようにした場合には、白濁は多く発生してしまうという問題があった。この白濁の問題を避けるためには、香料の配合量を少なく抑える必要があるが、そうすると水性ゲル製剤中に配合する香料が減り、十分な芳香効果が得られなくなってしまうという別の問題も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−167202号公報
【特許文献2】特開2000−212354号公報
【特許文献3】特開2002−331023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、吸水性樹脂で形成される水性ゲルからの成分の揮散に伴うゲルの白濁を抑制することのできる水性ゲル製剤の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題に鑑み、水性ゲル製剤の配合について鋭意研究を行なっていたところ、揮発性溶剤とポリオールを組み合わせ添加することにより、成分の揮散に伴うゲルの白濁を抑制できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち本発明は、揮散性油性有効成分、界面活性剤、揮発性溶剤、ポリオール及び水を含有する揮散製剤組成物を吸水性樹脂粒子に吸液させてなる固形揮散製剤である。
【0010】
また本発明は、揮散性油性有効成分、界面活性剤、揮発性溶剤、ポリオール及び水を含有する揮散製剤組成物である。
【0011】
更に本発明は、揮散性油性有効成分、界面活性剤、揮発性溶剤、ポリオール及び水を含有する揮散製剤組成物と、吸水性樹脂粒子とを組みあわせてなる固形揮散製剤用キットである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の固形揮散製剤は、これに使用する揮散製剤組成物中に、揮発性溶剤とポリオールとを必須成分として配合する結果、揮散性油性有効成分を含む溶液を吸水性樹脂粒子中に吸収させ、ゲルとして使用した場合に揮散に伴うゲルの白濁を抑制することが可能である。従って、特に揮散性油性有効成分の配合割合を多くした場合や、一旦揮散性油性有効成分を揮散してしまい、収縮した水性ゲルに再度揮散製剤組成物を加えて再生させるような場合であっても、揮散に伴うゲルの白濁の発生を抑制できる。
【0013】
したがって、本発明によれば、十分な揮散効果を発揮できるとともに意匠性にも優れた、固形揮散製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の固形揮散製剤(以下、「揮散製剤」と略称する)は、揮散性油性有効成分、界面活性剤、揮発性溶剤、ポリオール及び水を含有する溶液状の揮散製剤組成物を、吸水性樹脂粒子に吸液させたものである。
【0015】
本発明の揮散製剤において使用される揮散性油性有効成分(以下、「油性成分」と略称する)は、水性ゲル中から放出され、環境内でその効果を発揮するものである。具体的な油性成分の例としては、防虫・殺虫成分、害虫忌避成分、誘引成分、香料等を挙げることができるが、これに限られるものではない。なお、本明細書において、揮散性とは、常温(25℃)において、その蒸気圧が1.0×10−6mmHg以上である性質を意味する。
【0016】
上記の油性成分のうち、防虫・殺虫成分としては、エンペントリン、トランスフルスリン、アレスリン、フェノトリン、エミネンス、プロフルトリン等のピレスロイド系防虫剤、パラジクロロベンゼン、ナフタリン、樟脳、2−フェノキシエタノール、ヒノキチオール、アリルイソチオシアネート等の揮散性防虫・殺虫剤が例示でき、これらの1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0017】
また、害虫忌避成分としては、ケロシン、クレオソート、クミンアルデヒド、1,8−シネオール等の揮散性忌避剤が例示でき、更に誘引成分としては、バジル、ローズマリー、パセリシードオイル若しくはラベンダーの抽出物若しくは精油又は1−オクテン−3−オール等の揮散性誘引剤が例示でき、これらはいずれもその1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
また香料としては、例えば、麝香、霊猫香、竜延香等の動物性香料、アビエス油、アクジョン油、アルモンド油、アンゲリカルート油、ページル油、ベルガモット油、パーチ油、ボアバローズ油、カヤブチ油、ガナンガ油、カプシカム油、キャラウェー油、カルダモン油、カシア油、セロリー油、シナモン油、シトロネラ油、コニャック油、コリアンダー油、クミン油、樟脳油、バジル油、エストゴラン油、ユーカリ油、フェンネル油、ガーリック油、ジンジャー油、グレープフルーツ油、ホップ油、レモン油、レモングラス油、ナツメグ油、マンダリン油、ハッカ油、オレンジ油、セージ油、スターアニス油、テレピン油、ローズマリー油、ユーカリ油、アニス油、ラベンダー油、クミン油、シナモン油、ヒバ油等の植物性香料を挙げることができる。この香料として、合成香料又は抽出香料等の人工香料を用いることもでき、例えば、ピネン、リモネン等の炭化水素系香料、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、メントール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、βフェネチルアルコール等のアルコール系香料、アネトール、オイゲノール等のフェノール系香料、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド等のアルデヒド系香料、カルボン、メントン、樟脳、アセトフェノン、イオノン等のケトン系香料、γ―ブチルラクトン、クマリン、シネオール等のラクトン系香料、オクチルアセテート、ベンジルアセテート、シンナミルアセテート、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル系香料等が挙げられる。さらに、上記香料の2種以上を混合した調合香料も使用することができる。
【0019】
上記の油性成分の配合量は、使用される後記界面活性剤の種類や、目的とする効果によって適宜変更できるが、一般には、吸水性樹脂粒子に吸液させる前の溶液状の揮散製剤組成物として、0.1〜10質量%(以下、単に「%」で示す)であり、好ましくは、0.1〜5%である。
【0020】
本発明の固形揮散製剤において配合される界面活性剤としては、従来公知の、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤又は両性界面活性剤が挙げられ、これらのいずれをも用いることができ、その1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0021】
上記界面活性剤のうち、アニオン系界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸石けん、石けん用素地、金属石けん、N−アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム(N−ココイル−N−メチルタウリンナトリウム)、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルβ−アラニンナトリウム液、ラウロイルメチルタウリンナトリウム等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
また、カチオン系界面活性剤としては、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
更にノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、第3級アミンオキサイド等が挙げられる。このポリオキシエチレンアルキルエーテルはポリオキシエチレン鎖が3から18好ましくは7から12であり、アルキル鎖は直鎖または分岐のどちらでも良く、アルキル鎖長は8〜22好ましくは12〜14である。また、前記脂肪酸アルカノールアミドは、椰子油脂肪酸、ステアリン酸、ラウリン酸のモノエタノールアミド、ジエタノールアミド等が挙げられ、第3級アミンオキサイドとしては、ラウリルジメチルアミンオキサイド、椰子油脂肪酸ジメチルアミンオキサイド、ラウロイルアミノプロピルジメチルアミンオキサイド、オクチルジメチルアミンオキサイド、ミリスチルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0024】
更にまた、両性界面活性剤としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の1又は2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
上記した界面活性剤のうち、油性成分に対する可溶化力および揮散製剤組成物の吸水性樹脂粒子に対する吸液性の点でノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。更に、ノニオン系界面活性剤のうちでも特にポリオキシエチレンアルキルエーテル、ラウリルジメチルアミンオキサイドを用いることが好ましい。
【0026】
本発明の揮散製剤組成物における上記界面活性剤の配合量は、配合される油性成分の種類、量により適宜選択することができるが、一般的には、揮散製剤組成物中0.1〜30%であり、好ましくは、0.1〜20%、さらに好ましくは、0.1〜10%である。これより少ないと油性成分を安定に分散もしくは可溶化することが困難となる場合があり、揮散製剤組成物が白濁や相分離する場合がある。また、これより多いと揮散残渣が多くなり、揮散速度が低下したり、取替え時期が不明瞭になる虞や、水性ゲルの離水の原因にもなる場合がある。
【0027】
本発明の揮散製剤組成物には、揮発性溶剤とポリオールが必須成分として配合される。このうち、揮発性溶剤としては、揮発性アルコールまたは揮発性グリコールエーテルが挙げられる。このうち、揮発性アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等の低級アルコールが挙げられる、また、揮発性グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルブチレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等を挙げることができる。これらの揮発性溶剤は単独で使用しても2種以上を混合して使用しても良い。
【0028】
一方、ポリオールとしては、その分子構造の末端に少なくとも2個以上の水酸基を持つ化合物を挙げることができ好ましくは二価または三価のアルコールを挙げることができる。具体的なポリオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、イソプレングリコール、へキシレングリコール、1,3−ブチレングリコール等を挙げることができ、概ね下記式で表されるものを含む。これらの揮発性溶剤は単独で使用しても2種以上を混合して使用しても良い。
【0029】
【化1】

(式中、R1、R2、R3はそれぞれ異なっても良い水素原子、メチル基またはヒドロキシメチル基を示し、mは0から15の数、nは0から1の数を意味する)
【0030】
上記揮散製剤組成物中における揮発性溶剤の配合量は、油性成分の種類、配合量や、界面活性剤の種類、配合量によって相違するが、一般的には、全組成物中0.1〜20%であり、好ましくは、0.1〜10%である。また、ポリオールの配合量は、一般的には0.1〜20%であり、好ましくは、1〜10%である。
【0031】
更に、本発明の揮散製剤組成物中での、上記揮発性溶剤とポリオールの配合割合は、特に制約されるものではないが、一般には、それらの重量比で、1:10ないし10:1であり、好ましくは、1:5ないし5:1、より好ましくは1:2ないし2:1である。ポリオールの比が、上記範囲より少ない場合は、 白濁抑制効果が充分発揮できなくなる虞や、揮散性油性有効成分の可溶化が不十分となる虞があるという問題が生じ、また、ポリオールの比が上記範囲より多い場合は、揮散残渣が多くなり、揮散速度が低下したり、取替え時期が不明瞭になる虞や、水性ゲルの離水の原因にもなるという問題が生じる。
【0032】
更にまた、本発明の揮散製剤組成物中には、水が配合される。この水は、後記する吸水性樹脂粒子を膨潤させ、その形状を維持する役割を有するものである。この水としては、脱イオン水や、水道水を利用することができる。
【0033】
以上の成分と、必要により後記する任意成分とを混合することにより本発明の揮散製剤組成物が調製されるが、この揮散製剤組成物は、次いで吸水性樹脂粒子に吸収させることにより、本発明の揮散製剤を調製することができる。
【0034】
本発明の揮散製剤の調製に使用される吸水性樹脂粒子としては、アクリルアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体を含む架橋型吸水性樹脂、ノニオン型ポリオキシアルキレンオキシドを含む架橋型吸水性樹脂、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体を含む架橋型吸水性樹脂、ポリアクリル酸(塩)を含む架橋型吸水性樹脂等の粒子を挙げることができる。
【0035】
上記の吸水性樹脂は、既に市販されているものであり、その具体例としては、アクアリックCA K4、アクアリックCA H2、アクアリックCA H3(以上、(株)日本触媒製)、サンフレッシュST−250、サンフレッシュST−250MPS、サンフレッシュST−500D、サンフレッシュST−MPSA、サンフレッシュST−573、アクアパールDSC30、アクアパールE−200(以上、サンダイヤポリマー(株)製)、アクアキープ、アクアコークTW、アクアコークTWB(住友精化株式会社製)、KIゲル−201K、KIゲル201K−F2、KIゲル201K−G1(以上、クラレトレーディング(株)製)などが挙げられる。
【0036】
上記の吸水性樹脂粒子は、その形状には特に制約はなく、球状、楕円状、俵状、サイコロ状、直方体状、多面体状等、種々の粒状形状とすること、また、吸収させた後破砕させて使用することも可能であるが、透明あるいは半透明の容器に充填する形態の場合は、その美観の観点から球状であることが好ましい。また、使用する吸水性樹脂の大きさも、適宜決めることができるが、前記した球状の吸水性樹脂粒子を利用する場合は、その美観の点から、揮散薬剤組成物を吸液した後の直径が1〜30mm程度となる粒径のものを使用することが好ましい。なお、揮散薬剤組成物を吸液した後の直径が1〜30mmとするためには、吸液前の直径が0.1〜10mm程度の吸水性樹脂粒子を利用する必要がある。
【0037】
吸水性樹脂粒子に揮散薬剤組成物を吸液させて揮散薬剤を調製するには、常法に従って、前記各成分を混合、攪拌し、均一として得た液状の揮散薬剤組成物を、上記した吸水性樹脂粒子に吸液させれば良い。この吸液は、吸水性樹脂粒子の揮散薬剤組成物の吸液能を勘案し、全ての揮散薬剤組成物を吸液するのに十分な量の吸水性樹脂粒子と揮散薬剤組成物を常温下(25℃程度)で混合し、10分ないし10時間程度放置することにより行われる。また、最終的な揮散製剤における吸水性樹脂粒子の量は、全質量中、0.1ないし10%程度となることが好ましい。
【0038】
なお、本発明の揮散製剤において使用可能な任意成分としては、消臭剤、防カビ剤、防菌剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、色素、効力増強剤、脱臭剤等を挙げることができ、これらは本発明の効果を損なわない範囲内において、配合することが可能である。
【0039】
以上説明した揮散製剤の実施態様の一つとして、揮散薬剤組成物と吸水性樹脂粒子を組みあわせた揮散製剤キットを挙げることができる。この揮散薬剤キットは、例えば、透明ないし半透明容器中に充填された吸水性樹脂粒子と、別の容器に充填された揮散薬剤組成物から構成され、消費者が容器中に充填された吸水性樹脂粒子中に揮散性薬剤組成物を注入することにより、吸水性樹脂粒子が徐々に膨潤し、例えば透明球形の揮散製剤となるものであり、商品として意匠的なおもしろさがある。
【0040】
また、本発明の揮散製剤は、これに吸液させた揮散薬剤組成物が揮散してしまった後に、再度揮散薬剤組成物を加えることで、揮散製剤を再生させて使用することができる。この場合は、揮散薬剤組成物を、別に追加用のものとして販売する。
【0041】
以上説明した揮散製剤は、種々の油性成分、例えば、防虫・殺虫成分、害虫忌避成分、誘引成分、香料等を徐々に放出可能なものであり、防虫・殺虫剤や、害虫忌避剤、誘引剤、芳香剤として利用可能なものである。しかもこのものは、油性成分の揮散に伴うゲルの白濁を抑制することが可能であり、外観的にも優れた意匠性の製品となるものである。
【実施例】
【0042】
次に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0043】
実 施 例 1:
球状ゲル芳香消臭剤(1):
下記表1に示す割合で各成分を配合、混合して本発明芳香液1ないし5及び比較芳香液1を作製した。次いでこの各芳香液160gを、上面開口の筒状透明容器(直径5.5mm、高さ9.5cm)に入れたイソブチレン−無水マレイン酸ナトリウム共重合体粒子(球状吸水性樹脂:吸液前の平均直径3.5mm)4.2g(約150粒)中に注ぎ、3時間静置して球状ゲル芳香消臭剤(本発明品1ないし5及び比較品1)をた。吸液した後のゲルの直径は5〜15mmであった。
【0044】
【表1】

界面活性剤1:ポリオキシエチレン(12)アルキル(C12〜C15)エーテル
界面活性剤2:ラウリルジメチルアミンオキサイド
化合物1:プロピレングリコール
化合物2:エチレングリコール
化合物3:グリセリン
化合物4:ジエチレングリコール
化合物5:ジプロピレングリコール
香 料*:フローラル香料(高砂香料工業製)
消臭剤**:フレッシュシライマツFS500S(白井松新薬製)
【0045】
次に、上記で得た球状ゲル芳香消臭剤について、温度25℃、湿度60%の環境中で揮散させ、揮散経過日数における白濁(半透明を含む)したビーズの数を確認した。この結果を下記表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
表2の結果、比較品では揮散開始から10日目で白濁したビーズが生じ、34日目までに約半数の74個の白濁ビーズが生じてしまい、美観を損ねるものであった。一方、本発明品の白濁したビーズの発生量は、34日経過後も比較品の半分以下の数個〜36個に過ぎなかった。また比較品は変色したビーズのほとんどが白濁しているが、特に本発明品1から4はほとんどが半透明であり、全体の意匠性をあまり低下させるものではなかった。
【0048】
実 施 例 2
球状ゲル芳香消臭剤(2):
実施例1の本発明芳香液1を用い、これを実施例1と同様に、下記表3に示す球状吸水性樹脂に吸液させて球状ゲル芳香消臭剤を調製した。これを用い、実施例1と同様にして揮散に伴うゲルの白濁を調べた。この結果を表4に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
表4の結果から、本発明品の芳香液は吸水性樹脂の種類に関わらず、白濁の発生を抑制できることが明らかになった。
【0052】
実 施 例 3
球状ゲル芳香剤:
下記表5に示す組成で、揮発性溶剤とポリオールを異なる比率で含有する芳香液を調製し、これを実施例1で用いた球状吸水性樹脂に吸液させ、ゲル芳香剤を調製した。このゲル芳香剤について、実施例1と同様に白濁するまでの時間を調べたところ、下記表6のような結果であった。なお、比較芳香液としては、揮発性溶剤のみを配合したものを使用した。
【0053】
【表5】

界面活性剤1:ポリオキシエチレン(12)アルキル(C12〜C15)エーテル
界面活性剤2:ラウリルジメチルアミンオキサイド
化合物1:プロピレングリコール
香 料*:フローラル香料(高砂香料工業製)
【0054】
【表6】

【0055】
表6の結果から、本発明品のゲル芳香剤は、揮発性溶剤とポリオールが必須であり、揮発性溶剤のみでは白濁の発生を十分に抑制できないことが明らかになった。
【0056】
実 施 例 4
揮散性防虫剤:
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール3.2g、界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル3.2g、ラウリルジメチルアミンオキサイド0.32g、防虫剤として2−フェノキシエタノール1.6g、及び化合物1(プロピレングリコール)8gに水143.68gを入れ揮散性防虫液を作成した。この揮散性防虫液を、上面開口の透明筒状容器(直径5.5mm、高さ9.5mm)に入れたイソブチレン―無水マレイン酸共重合体粒子(球状吸水性樹脂:吸液前の平均直径3.5mm)34.2g(約150粒)中に注ぎ、3時間静置して球状ゲル防虫剤を得た。吸液した後のゲルの直径は5〜15mmであった。
【0057】
上記揮散性防虫剤は、20日間揮散させた後であってもゲルの白濁が認められなかった。
【0058】
実 施 例 5
揮散性忌避剤:
エタノール16g、界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル3.2g、ラウリルジメチルアミンオキサイド0.32g、忌避剤としてクミンアルデヒド0.8g、及び化合物1(プロピレングリコール)8gに水131.68gを入れ揮散性害虫忌避剤液を作成した。この忌避剤液を、上面開口の透明筒状容器(直径5.5mm、高さ9.5cm)に入れたイソブチレン―無水マレイン酸共重合体粒子(球状吸水性樹脂:吸液前の平均直径2.3mm)4.2g(約400粒)中に注ぎ、3時間静置して球状ゲル害虫忌避剤を得た。吸液した後のゲルの直径は2〜12mmであった。
【0059】
上記揮散性害虫忌避剤は、20日間揮散させた後であってもゲルの白濁が認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の固形揮散製剤は、吸水性樹脂で形成された水性ゲルから油性成分が揮散していく過程においてゲルの白濁を抑制することができるものである。
【0061】
したがって、本発明の揮散製剤は、油性成分の十分な揮散効果を発揮できるとともに白濁が生じにくい意匠性にも優れた固形揮散製剤として、芳香剤、防虫・殺虫剤、害虫忌避剤、誘引剤等の商品に広く利用しうるものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮散性油性有効成分、界面活性剤、揮発性溶剤、ポリオール及び水を含有する揮散製剤組成物を吸水性樹脂粒子に吸液させてなる固形揮散製剤。
【請求項2】
揮散製剤組成物中の揮散性油性有効成分の含有量が、0.1ないし10質量%である請求項1記載の固形揮散製剤。
【請求項3】
揮散性油性有効成分が、香料または防虫・殺虫成分である請求項1または2記載の固形揮散製剤。
【請求項4】
揮散製剤組成物中の界面活性剤の含有量が、0.1ないし30質量%である請求項1ないし3の何れかの項記載の固形揮散製剤。
【請求項5】
界面活性剤が、ポリオキシエチレン鎖が3から18で、アルキル鎖長が8〜22ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテルまたはラウリルジメチルアミンオキサイドである請求項1ないし4の何れかの項記載の固形揮散製剤。
【請求項6】
揮散製剤組成物中の揮発性溶剤の含有量が、0.1ないし20質量%である請求項1ないし5の何れかの項記載の固形揮散製剤。
【請求項7】
揮発性溶剤が、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールまたは3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールである請求項1ないし6の何れかの項記載の固形揮散製剤。
【請求項8】
揮散製剤組成物中のポリオールの含有量が、0.1ないし20質量%であるである請求項1ないし7の何れかの項記載の固形揮散製剤。
【請求項9】
ポリオールが二価または三価のアルコールである請求項1ないし8の何れかの項記載の固形揮散製剤。
【請求項10】
ポリオールが、次の式
【化1】

(式中、R1、R2、R3はそれぞれ異なっても良い水素原子、メチル基またはヒドロキシメチル基を示し、mは0から15の数、nは0から1の数を意味する)
で表されるものである請求項1ないし9の何れかの項記載の固形揮散製剤。
【請求項11】
揮散製剤組成物中の揮発性溶剤とポリオールの重量比が、1:10ないし10:1である請求項1ないし10の何れかの項記載の固形揮散性剤。
【請求項12】
揮散製剤組成物中の水の含有量が、10ないし99質量%である請求項1ないし11の何れかの項記載の固形揮散製剤。
【請求項13】
吸水性樹脂粒子が、アクリルアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体を含む架橋型吸水性樹脂、ノニオン型ポリオキシアルキレンオキシドを含む架橋型吸水性樹脂、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体を含む架橋型吸水性樹脂またはポリアクリル酸(塩)を含む架橋型吸水性樹脂の粒子である請求項1ないし12の何れかの項記載の固形揮散製剤。
【請求項14】
揮散製剤組成物を吸液した後の形状が球形であり、その直径が1ないし30mmである請求項1ないし13の何れかの項記載の固形揮散製剤。
【請求項15】
揮散性油性有効成分、界面活性剤、揮発性溶剤、ポリオール及び水を含有する揮散製剤組成物と、
透明ないし半透明容器に収納された吸水性樹脂粒子とを
組みあわせてなる揮散薬剤キット。
【請求項16】
揮散性油性有効成分、界面活性剤、揮発性溶剤、ポリオール及び水を含有する揮散製剤組成物。
【請求項17】
吸水性樹脂粒子に吸液させるものである請求項16記載の揮散製剤組成物。



【公開番号】特開2012−254184(P2012−254184A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128808(P2011−128808)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【Fターム(参考)】