説明

固形状または粉末状整髪用組成物

【課題】通常の液体状、ペースト状、クリーム状の整髪料ではなく、洗髪後のタオルドライ後の濡れた髪に使用する整髪料であって、セット剤樹脂を溶解したり分散したりする溶液成分のエタノールや水の配合量を配合しないか、極端にその配合量を減少せしめた固形状または粉末状の整髪料を提供すること。
【解決手段】下記(a)成分と(b)成分とを含有することを特徴とする、固形状または粉末状である整髪用組成物。
(a)毛髪スタイリング剤
(b)質量平均分子量1,000〜25,000のポリエチレングリコール

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形状または粉末状整髪用組成物に関する。さらに詳しくは、洗髪後にタオルドライ後の濡れた髪に使用する整髪料であって、通常の液体状又はペースト状の整髪料ではなく、毛髪セット剤樹脂を溶解したり分散したりする溶液成分のエタノール、水を配合しないか極端にその配合量を減少せしめた固形状または粉末状の整髪料に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
整髪料とは、最終的に髪型を整えて毛髪をセットする場合に使用する毛髪化粧料である。すなわち、毛髪セットを行う乾いた髪に対して塗布する化粧料であって、多量のエタノールや水にスタイリング剤(例えば毛髪セット剤樹脂等)が溶解したヘアリキッドや、ジェル状のヘアジェルや、ペースト状やクリーム状のヘアワックス等の、液体状、ジェル状、ペースト状若しくはクリーム状の整髪料が一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1には、球状粉体シリコーンと、モノ若しくはポリグリセリン又はその誘導体とを含有し、毛髪セット力の向上を目的とする毛髪用化粧料が開示されている。その実施例7にはヘアジェルの例があり、エタノールが20質量%と水が65質量%以上も多量に配合されている。また、実施例10にはヘアワックスの例があり、当該ヘアワックスには水が65質量%以上も多量に配合されている。
【0004】
また、特許文献2には、(A)融点20〜50℃のロウ類及び油脂類から選ばれる1種又は2種以上と(B)アルキル変性シリコーンとを含有する整髪剤組成物が開示されている。そしてその実施例12にはヘアワックスの例があり、エタノールが5質量%と水が40質量%以上も多量に配合されている。また、その実施例13にはヘアジェルの例があり、エタノールが15質量%と水が65質量%以上も多量に配合されている。
【0005】
一方、非特許文献1には、ヘアスタイリング剤の種類として、ヘアフォーム、ヘアムース、ヘアスプレー、ヘアジェル、セットローション、ヘアリキッド、ヘアワックスなどの各種整髪料が挙げられている。そして、これらの整髪用組成物には、水又はエタノール等の溶媒が多量に含まれている。
【0006】
なお、従来、ポマードやチック等と呼ばれる固形ヘアワクッスという整髪料があり、水やエタノール成分が多量に含まれていない場合がある。これらの整髪料は、固形ワックスと液状の油分を混ぜ合わせペースト状から柔らかい固形状の形態を有する整髪料ではあるが、整髪主成分はワックスであり、本願発明で使用する整髪主成分のスタイリング剤(毛髪セット剤樹脂等)とは本質的に異なるものである。
本発明において、固形状または粉末状の整髪用組成物には、ポマードやチックのように固形ワックスを使用した固形ヘアワックスは含まない。本発明において、固形状または粉末状の整髪用組成物とは、ポマードやチック等に使用される固形ワックスとは異なるスタイリング剤(例えば毛髪セット剤樹脂)を整髪の主成分とし、これに水、エタノールを含有させないか、或いは、一定少量の水、エタノールのみ含有させた固形状の整髪用組成物を意味するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−191452号公報
【特許文献2】特開2007−169230号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】編者 光井武夫、「新化粧品学(第2版)」、南山堂、2009年3月20日 第5刷、P453-459
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した如く、従来の整髪料(ヘアスタイリング製品)には溶液状からクリーム状の製品があり、低粘度から高粘度の剤型の整髪料が存在しているが、毛髪セット剤樹脂を整髪成分に配合する整髪料で完全に固形状のものは存在していない。
また、これらスタイリング製品は、水やアルコールを多量に含んでいるため、例えば洗髪後の濡れた髪へ使用すると乾きにくくセット力が低下する。
本発明の整髪組成物は、従来の整髪料が水やアルコールの液体系整髪料であり、主としてセット前の乾いた髪に使用する(例えば洗髪後であればタオルドライし、ヘアドライヤー等で乾燥させた髪に使用する)という前提条件を覆す整髪料であり、水やアルコールを基本的に多用しない(或いは使用しない)固形状または粉末状の整髪料であって、濡れた髪に対してそのまま使用することによって、適度にちょうど良いセット力を発揮する整髪料を提供するものである。
また、本発明の整髪用組成物は水やアルコールなどの溶媒を使用しないため、容器を極めてコンパクトに出来るという利点をも有する。
【0010】
本発明は、従来の整髪料の概念とは異なる固形状または粉末状整髪用組成物であって、水やアルコールを含有しないか又は僅かに含有する整髪料であって、主に濡れた髪に対してセットを行う整髪料を提供することを目的とする。
また、濡れた髪のみならず、乾いた髪に対しても使用でき、例えば、手のひらの上で本発明の整髪用組成物と水とを混合してなじませから、これを髪に塗布することにより適度な整髪を可能とする新規な整髪料を提供することを目的とする。
さらに、従来の整髪料に多量に配合されていた水やエタノールを基本的に配合しないことにより、整髪料の配合成分を少なくし、また、その容器サイズを極端にコンパクトにすることが可能な整髪料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、下記(a)成分と(b)成分とを含有することを特徴とする、固形状または粉末状である整髪用組成物を提供するものである。
(a)毛髪スタイリング剤
(b)質量平均分子量1,000〜25,000のポリエチレングリコール
【0012】
また、本発明は、前記整髪用組成物において、(c)水及び/又はエタノールの含有量が5質量%以下である上記の整髪用組成物を提供するものである。
【0013】
さらに、本発明は、上記整髪用組成物を使用して毛髪をセットする方法において、乾いた髪に対してではなく濡れた髪に対してそのまま塗布するか、或いは、当該整髪用組成物を手のひらで水になじませてから髪に塗布することを特徴とする上記の整髪用組成物の使用方法である。
【発明の効果】
【0014】
(1)本発明は、適度に濡れた髪に対してそのまま使用することによって、適度にちょうど良いセット力を発揮する整髪料である。例えば、洗髪後であっても、タオルドライ後の乾燥していない髪に対して直ちに使用することが可能であり、優れた整髪力を発揮する。
(2)本発明は、水やエタノールが配合されていないかその配合量が少ないので、例えば洗髪後の濡れた髪へ使用した場合に、乾きにくく難くセット力が低下するという問題点がない。
(3)本発明は、乾燥した髪に対しても、手のひらの上で本発明の整髪用組成物と水とを混合し、これを髪に塗布することにより、優れた整髪力を発揮する。
(4)本発明は、水やアルコールなどの溶媒を使用しないため、容器を極めてコンパクトに出来るという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<(a)毛髪スタイリング剤>
本発明において毛髪スタイリング剤は、整髪(毛髪のセット)を行うための主剤である。最も好ましい毛髪スタイリング剤は毛髪セット剤樹脂である。
本発明の固形状または粉末状整髪用組成物とは、固形ワックスを整髪成分とする固形へアワックスとは本質的に異なる整髪料であり、(a)成分にて好ましく用いる毛髪セット剤樹脂を(b)成分の固形剤で、固形状とした整髪用組成物、またはこれを粉砕して粉末状とした整髪用組成物を意味する。
本発明に用いる毛髪セット剤樹脂は特に限定されず、通常、整髪料に毛髪セット剤樹脂として使用される成分であれば使用できる。例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸オクチルアミド・アクリル酸ヒドロキシプロピル・メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体、ビニルピロリドン・メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル・アクリル酸ステアリル・ジアクリル酸トリプロピレングリコール共重合体、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、架橋型N,N−ジメチルアクリルアミド−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム共重合体、N−メタクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、N−メタクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリビニルカプロラクタム、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、アクリル樹脂アルカノールアミン、(ポリウレタン−24/メタクリル酸メチル)クロスポリマーなど等の毛髪セット剤樹脂が挙げられる。
市販品としては、PVP K−30(アイエスピー・ジャパン株式会社)、PVP/VA S−630(化成品商事会社製)、アコーンM脱臭品(大阪有機化学工業株式会社)、カーボポール980(日光ケミカルズ株式会社)、カーボポール981(日光ケミカルズ株式会社)、シンタレンL(3V SIGMA)、シンタレンK(3V SIGMA)、PEMULEN TR−1(B.F.Goodrich Chemical Company)、PEMULEN TR−2(B.F.Goodrich Chemical Company)、CGポリマー(HV)(大阪有機化学工業株式会社)、ポリマーJR−400(ユニオン・カーバイド日本株式会社)、カチナールPC−100(東邦化学工業株式会社)、ケルトロール(ケルコ社)、ケルトロールT(ケルコ社)、ノムコートZZ(日清オイリオグループ株式会社)、NATROSOL 250HHR(Hercules Inc.)、SUpolymer G−1(東邦化学工業株式会社)、ユカフォーマー WPS(三菱化学株式会社)、ユカフォーマー R−205S(三菱化学株式会社)、ユカフォーマー 104−D(三菱化学株式会社)、RAMレジン−4000(大阪有機化学工業株式会社)、Luviskol Plus(ビーエーエスエフジャパン株式会社)、ヨドゾール PUD(日本エヌエスシー株式会社)、プラスサイズL−9909B(互応化学工業株式会社)、アクアリンカーSU150A(コニシ株式会社)などが好ましく使用される。
【0016】
一方、本発明において用いる毛髪セット剤樹脂以外の毛髪スタイリング剤としては、エリスリトール、果糖、ソルビトール、スクロース、マルチトール、トレハロース、グルコース、ポリオキシエチレンメチルグルコシドなどの糖や糖アルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ラウリン酸プロピレングリコール、ポリオキシエチレン(55)ポリオキシプロピレン(28)ジメチルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシプロピレンデカグリセリルエーテルなどの活性剤などが好ましい。
市販品としてはGlucam E-10J Humectant(池田物産株式会社)、エスセーフ 1324D(日本油脂株式会社)、エスセーフ 2010D(日本油脂株式会社)、エマレックス 125(日本エマルジョン株式会社)、リケマール PL−100(理研ビタミン株式会社)、マクビオブライドE−4060(日本油脂株式会社)、エマレックス HC-60(日本エマルジョン株式会社)、ベルタモールDG−25(日本油脂株式会社)などが好ましく使用される。
【0017】
<配合量>
毛髪スタイリング剤の配合量は、整髪用組成物全量に対して、1〜50質量%が好ましく、さらに好ましくは5〜40質量%であり、最も好ましくは10〜30質量%である。
【0018】
<(b)質量平均分子量1,000〜25,000のポリエチレングリコール>
本発明の整髪用組成物を固形状とする場合には、質量平均分子量1,000〜25,000のポリエチレングリコールを使用する。また、固形状を粉砕して粉末状にする場合には、質量平均分子量4,000〜25,000のポリエチレングリコールを使用することが好ましい。質量分子量が4000未満の低すぎる場合には、固形状を粉末状に加工することが困難になる場合がある。
なお、本発明に言う質量平均分子量とは、医薬部外品原料規格に従い評価した下記の平均分子量を意味する。
本品約12.5gを精密に量り、約200mLの耐圧共栓瓶に入れ、ピリジン約25mLを加え、加温して溶かし、放冷する。別に無水フタル酸42gをとり、新たに蒸留したピリジン300mLを正確に量って入れた1Lの遮光した共栓瓶に加え、強く振り混ぜて溶かした後、16時間以上放置する。この液25mLを正確に量り、先の耐圧共栓瓶に加え、密栓し、丈夫な布でこれを包み、あらかじめ98±2℃に加熱した水浴中に入れる。この際瓶の中の液が水浴の液の中に浸るようにする。98±2℃で30分間保った後、水浴から瓶を取り出し、室温になるまで空気中で放冷する。次に0.5mol/L水酸化ナトリウム液50mLを正確に加え、この液につき、0.5mol/L水酸化ナトリウム液で滴定する(指示薬:フエノールフタレインのピリジン溶液(1→100)5滴)。ただし、滴定の終点は液が15秒間持続する淡赤色を呈するときとする。同様の方法で空試験を行う。
平均分子量=(S×4000)/(a−b)
ただし、
S:試料の量(g)
a:空試験における0.5mol/L水酸化ナトリウム液の消費量(mL)
b:試料の試験における0.5mol/L水酸化ナトリウム液の消費量(mL)
【0019】
市販品としてはポリエチレングリコール20000(以下PEG−20000)(三洋化成工業株式会社)、ポリエチレングリコール11000(日油株式会社)、ポリエチレングリコール6000(三洋化成工業株式会社)、ポリエチレングリコール4000(以下PEG−4000)(東邦化学工業株式会社)などが好ましく使用される。
いずれにしても、市販品のPEG4000〜PEG20000のポリエチレングリコールを使用すれば、本発明の整髪料を固形状にする場合と、また、固形状の整髪料を後から粉末化する装置(ミルや、やすり状の粉砕器具)を使用して粉末状にする場合と、どちらの場合であっても好都合である。
【0020】
<配合量>
上記ポリエチレングリコールの配合量は、整髪用組成物全量に対して、40〜90質量%が好ましく、さらに好ましくは50〜80質量%であり、最も好ましくは50〜70質量%である。
【0021】
<(c)水及び/又はエタノール>
水及び/又はエタノールの配合量は、固形状とする場合には、整髪用組成物全量に対して5質量%以下としなければならない。水を配合する場合、エタノールを配合する場合、水とエタノールを任意の割合で混合する場合ともに、整髪用組成物全量に対して5質量%以下とすることが本発明の必須要件である。
なお、5質量%以下の配合量であれば、上記(a)成分と(b)成分との主成分から実質的に構成される必須成分からなる整髪用組成物が、固形状の形態が確保できる。なお、固形状の整髪用組成物をさらに粉末化する場合には、硬い固形状の方がよく(すなわち水及び/又はエタノールの配合量は、少ないか、又は無配合が好ましく)、水及び/又はエタノールの配合量は、整髪用組成物全量に対して3質量%以下であることが好ましい。
なお、本発明においては、水及び/又はエタノールを実質的に配合せず、固形状または粉末状の整髪用組成物を製造することもさらに好ましい。
従来のセット剤樹脂を配合した整髪料においては、多量の水及び/又はエタノールが配合されており、本発明の配合量である5質量%以下とはかなりかけ離れた量が配合されていることは、上述の「背景技術」で述べた通りである。
【0022】
<(d)油分>
本発明においては、油分を適宜配合することにより、滑らかさや艶を有する整髪料とすることが可能となるので、油分を併用する実施態様も好ましい。
なお、油分は特に限定されないが、例えば、流動パラフィン、2−エチルヘキサン酸セチル、スクワラン、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)等が好ましい。その配合量は適宜決定され特に限定されないが、整髪用組成物全量に対して5.0質量%以下が好ましく、0.01〜5.0質量%が好ましい。
【0023】
本発明の整髪用組成物は、上記した必須構成成分の他に通常化粧料に用いられる他の成分、例えば、粉末成分、保湿剤、増粘剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等を必要に応じて適宜配合し、目的とする剤型に応じて常法により製造することが出来る。
しかしながら、本発明の整髪用組成物においては、毛髪のセットを目的とする上記(a)成分と、その固形化を目的とする(b)〜(c)成分以外の成分としては、同目的のために、その他の成分を使用する必要はない。
但し、本発明においては、増粘剤を適宜配合することにより、濡れた髪に塗布した場合に、ジェルのような感触を有する整髪料とすることが可能となるので、増粘剤を併用する実施態様も本発明の好ましい態様の一つである。なお、増粘剤は特に限定されないがアクリル系増粘剤(例えば、ジメチルアクリルアミドと2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体)が好ましい。その配合量は適宜決定され特に限定されないが、整髪用組成物全量に対して5質量%以下が好ましい。
【0024】
本発明は、上記の固形状または粉末状整髪用組成物を使用して毛髪をセットする整髪用組成物の使用方法をも提供する。
通常、整髪料とは乾いた髪に対して使用して毛髪をセットする化粧料である。しかしながら、本発明は濡れた髪に対してそのまま塗布して整髪することが好ましい。特に、タオルドライ後の湿った髪に対して使用することが好ましい。
或いは、乾いた髪に対しては、当該整髪用組成物を手のひら上で水になじませてから、水との混合物を乾いた髪に塗布する方法も、本発明の好ましい態様の一つである。
本発明による毛髪をセットするための整髪用組成物の使用方法は、当業者が決して考え付かない従来の常識を覆した画期的な使用方法を提供するものである。
【実施例】
【0025】
以下実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における配合量は特に断りのない限り質量%で示す。
表1の処方にて、常法により固形状または粉末状整髪料を製造し、固形状または粉末状にするための水及び/又はエタノールの配合量に関する固形化(及び粉末化)と、本発明の整髪用組成物の毛髪セット力を検討した。先ず、評価方法について説明する。
【0026】
<固形化又は粉末化の評価方法>
本発明において、固形状とは指で軽く押して形がくずれない程度の硬さを意味する(通常の固形石鹸程度の硬さを有する固形状である。)。また、粉末は、ペッパーミル(装置)を使用して固形状組成物から粉末の加工を行った。
「判定」
○:固形状、粉末状の加工できる
○△、△:固形状に加工できる。柔らかい粉末状に加工できる。
×:全く固形状に加工できない。
【0027】
<濡れた髪に対する塗布のしやすさと毛髪セット力の評価方法>
パネラー(2名)により実使用試験を行って、洗髪後に軽くタオルドライした濡れた髪に対して塗布し、毛髪への塗布のしやすさと毛髪セット力を評価した。
「濡れた髪に対する塗布のしやすさの判定」
○:タオルドライ後の濡れた髪に対して、パネラー(2名全員)が容易に塗布でき、容易になじませやすいと感じた。
△:タオルドライ後の濡れた髪に対して、パネラー(2名全員)が塗布しやすく、なじませやすいと感じた。
×:タオルドライ後の濡れた髪に対して、パネラー(2名全員)が塗布しにくく、なじませにくいと感じた。
「濡れた髪に対する毛髪セット力の判定」
○:タオルドライ後の濡れた髪に対して、パネラー(2名全員)が希望する毛髪のセットが容易に出来た。
△:タオルドライ後の濡れた髪に対して、パネラー(2名全員)が希望する毛髪のセットが困難であった。
×:タオルドライ後の濡れた髪に対して、パネラー(2名全員)が希望する毛髪のセットが全くできなかった。
【0028】
【表1】

*1:ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体
PVP/VA S−630(化成品商事会社製)
【0029】
【表2】

*1:ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体
PVP/VA S−630(化成品商事会社製)
【0030】
【表3】

*1:ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体
PVP/VA S−630(化成品商事会社製)






【0031】
【表4】

*1:ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体
PVP/VA S−630(化成品商事会社製)
【0032】
【表5】

*1:ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体
PVP/VA S−630(化成品商事会社製)
【0033】
【表6】

*1:ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体
PVP/VA S−630(化成品商事会社製)
*2:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル
エスセーフ 2010D(日本油脂株式会社)
【0034】
以下に本発明の固形状または粉末状整髪用組成物のその他の実施例を挙げる。いずれの実施例も、洗髪後にタオルドライし適度に濡れた髪に対して、優れた整髪力を有する整髪料である。
【0035】
〔実施例22:固形状または粉末状整髪料〕
配合成分 質量%
ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体
(PVP/VA−S630) 24
架橋型N,N−ジメチルアクリルアミド−2−アクリルアミド−2−
メチルプロパンスルホン酸ナトリウム共重合体*1 13
PEG4000 60
メントール 1
プロピレングリコール 1
香料 1
製造方法:
PEG4000を60〜70℃で溶解する。その後、他の原料を加え攪拌して均一に分散後、急冷して固め、固形状に調製する。固形状組成物は粉末ミルにより粉砕し粉末状にすることもできる。

*1:ジメチルアクリルアミド(興人製)を35gと2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸(Sigma製)17.5gおよびメチレンビスアクリルアミド70mgを260gのイオン交換水に溶解し水酸化ナトリウムでpH=7.0に調節する。還流装置を備えた1000ml三つ口フラスコに、n−ヘキサン260gとポリオキシエチレン(3)オレイルエーテル(エマレックス503、日本エマルション製)8.7gおよびポリオキシエチレン(6)オレイルエーテル(エマレックス506、日本エマルション製)17.6gを入れ混合溶解しN2置換する。この三つ口フラスコにモノマー水溶液を添加してN2雰囲気下で攪拌しながらオイルバスで65℃〜70℃に加熱する。系の温度が65℃〜70℃に達したところで系が半透明なマイクロエマルション状態になっていることを確認した後、過硫酸アンモニウム2gを重合系に添加し重合を開始する。重合系を65℃〜70℃に3時間攪拌しながら維持することでミクロゲルが生成する。重合終了後ミクロゲル懸濁液にアセトンを加えてミクロゲルを沈殿させ、引き続きアセトンで3回洗浄し、残存モノマーおよび界面活性剤を除去する。沈殿物は濾過後減圧乾燥し、白色粉末状のミクロゲル乾燥物を得る。
【0036】
〔実施例23:固形状または粉末状整髪料〕
配合成分 質量%
ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体
(PVP/VA−S630) 25
架橋型N,N−ジメチルアクリルアミド−2−アクリルアミド−2−
メチルプロパンスルホン酸ナトリウム共重合体*1 10
PEG4000 60
水 5
製造方法:
PEG4000を60〜70℃で溶解する。その後、他の原料を加え攪拌して均一に分散後、急冷して固め、固形状に調製する。固形状組成物は粉末ミルにより粉砕し粉末状にすることもできる。
*1:実施例22と同一。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、濡れた髪に対して使用することによって、適度にちょうど良いセット力を発揮する整髪料を提供できる。例えば、洗髪後であっても、タオルドライ後の乾燥していない髪に対して直ぐに使用することが出来て、優れた整髪力を発揮する。
また、本発明によれば、乾燥した髪に対しても、手のひらの上で本発明の整髪用組成物と水とを混合し、髪に塗布することにより、優れた整髪力を発揮する。
さらに、本発明によれば、水やアルコールなどの溶媒を使用しないため、容器を極めてコンパクトに出来るという利点を有する。
以上から本発明の新規な整髪料は産業上の利用可能性が極めて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分と(b)成分とを含有することを特徴とする、固形状または粉末状である整髪用組成物。
(a)毛髪スタイリング剤
(b)質量平均分子量1,000〜25,000のポリエチレングリコール
【請求項2】
前記整髪用組成物において、(c)水及び/又はエタノールの含有量が5質量%以下である請求項1記載の整髪用組成物。
【請求項3】
前記整髪用組成物を使用して毛髪をセットする方法において、乾いた髪に対してではなく濡れた髪に対してそのまま塗布するか、或いは、当該整髪用組成物を手のひらで水になじませてから髪に塗布することを特徴とする請求項1又は2記載の整髪用組成物の使用方法。

【公開番号】特開2011−213618(P2011−213618A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81408(P2010−81408)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】