説明

固形粉末化粧料

【課題】 塗布時の伸びの軽さと滑かさが良好であり、肌への密着感に優れ、しかも耐衝撃性(誤って、化粧料を床に落とした場合や、ハンドバッグ等に入れて持ち歩いた場合の耐衝撃性)に優れる固形粉末化粧料を提供するものである。
【解決手段】 化粧料基材を溶剤と混合し、該混合物を容器に充填した後、前記溶剤を乾燥除去して成形する固形粉末化粧料において、以下の成分(a)及び成分(b);
(a)球状シリカ被覆マイカ
(b)二次粒子の平均面径が0.1〜10μm、且つ平均厚みが0.005〜1μmの薄片状シリカ
を配合することを特徴とする固形粉末化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体を主成分とする化粧料基材と溶剤とを混合し、該混合物を金皿や樹脂皿等の容器に充填した後、前記溶剤を乾燥除去して成形することを特徴する固形粉末化粧料に関するものであり、更に詳細には、特定形状の薄片状シリカと球状シリカ被覆マイカとを配合することを特徴とする固形粉末化粧料に関するものである。また、塗布時の伸びの軽さと滑かさが良好であり、肌への密着感に優れ、しかも耐衝撃性(誤って、化粧料を床に落とした場合や、ハンドバッグ等に入れて持ち歩いた場合の耐衝撃性)に優れる固形粉末化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固形粉末化粧料は、一般的には皿状容器に充填成形し、これをコンパクト容器に装着して用いる化粧料であり、ファンデーションやアイシャドウ等のメーキャップ化粧料に汎用されている剤型である。このような固形粉末化粧料は、通常、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等からなる粉体系に油剤を加えて分散した化粧料基材をアルミニウム等の金属製や樹脂製の皿状容器に充填し、成形することにより得られるものである。
【0003】
そして、固形粉末化粧料は携帯性が良いので、ハンドバック等に入れて日常的に持ち運ばれるため、成形物の耐衝撃性が悪いと、成形物が割れたり、崩れたりするので、耐衝撃性が優れていなければならない。また、固形粉末化粧料は、成形物表面を小道具で擦りとり、肌に塗布して使用されるので、小道具へのとれ具合、肌への塗布感等の使用感が商品の重要な品質となっている。
【0004】
このような固形粉末化粧料の使用感や耐衝撃性等の品質は、化粧料組成物の組成に影響されるだけでなく、充填成形方法に由来するものも多く、特に耐衝撃性を確保するためには、どのような充填成形方法を選択するかが重要である。
【0005】
固形粉末化粧料の充填成形方法としては、粉体を主成分とする化粧料基材を皿状容器に充填し、これを圧縮成形する方法(いわゆる、プレス成形法)が一般的に用いられてきた。しかしながら、このプレス成形法では、化粧料基材の組成によって、成形品内部に空気が残存し、これが原因となって耐衝撃性の低下、剥離、欠けといった成形不良の問題を生じる場合があり、この問題が発生しないように、処方構成を検討したり、圧縮成形条件を検討する必要があった。
【0006】
このようなプレス成形法の問題を解決するために、化粧料基材を水、エタノール、軽質流動イソパラフィン等の溶剤と混合し、皿状容器に充填した後、該溶剤を乾燥除去することにより固形粉末化粧料を得る方法(いわゆる、湿式成形法、例えば、特許文献1参照。)等が開発され、応用されてきた。
【0007】
【特許文献1】特開昭62−4218号公報(第1頁−第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1記載の方法だけでは、耐衝撃性を十分に満足できる固形粉末化粧料を得ることが難しく、特に粉体として板状粉体を多量に配合する場合には、十分な耐衝撃性を得ることはできなかった。この問題を解消するために、化粧料基材中に油剤を多く配合し、耐衝撃性を向上させる検討もなされているが、油剤を多く配合することにより、塗布具へのとれの悪化、伸び広がりの悪さ等を引き起こす場合があった。
【0009】
このため、塗布時の伸びの軽さと滑かさが良好であり、肌への密着感に優れ、しかも耐衝撃性に優れる固形粉末化粧料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる実情に鑑み、本発明者らは鋭意検討した結果、特定形状の薄片状シリカを固形粉末化粧料に応用した結果、粉体同士の結合効果に優れ、耐衝撃性が向上すること見出した。そして更に、化粧料基材を溶剤と混合し、該混合物を容器に充填した後、前記溶剤を乾燥除去して成形する固形粉末化粧料において、二次粒子の平均面径が0.1〜10μm、且つ平均厚みが0.005〜1μmの薄片状シリカと、球状シリカ被覆マイカを配合すると、前記課題が解決された固形粉末化粧料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち本発明は、化粧料基材を溶剤と混合し、該混合物を容器に充填した後、前記溶剤を乾燥除去して成形する固形粉末化粧料において、以下の成分(a)及び成分(b);
(a)球状シリカ被覆マイカ
(b)二次粒子の平均面径が0.1〜10μm、且つ平均厚みが0.005〜1μmの薄片状シリカ
を配合することを特徴とする固形粉末化粧料を提供するものである。
【0012】
また、前記固形粉末化粧料中に成分(b)を0.1〜3質量%配合することを特徴とする前記固形粉末化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の固形粉末化粧料は、塗布時の伸びの軽さと滑かさが良好であり、肌への密着感に優れ、しかも耐衝撃性に優れる固形粉末化粧料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の固形粉末化粧料は、化粧料基材を溶剤と混合し、該混合物を容器に充填した後、前記溶剤を乾燥除去して成形することにより得られるものである。
【0015】
本発明に用いられる化粧料基材とは、粉体を主成分とするものであり、これに必要に応じて、油剤、水性成分、界面活性剤、水溶性高分子、紫外線吸収剤、被膜形成剤、保湿剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、香料等を本発明の効果を損なわない範囲にて配合することができる。
【0016】
本発明に用いられる成分(a)の球状シリカ被覆マイカは、マイカ表面に球状シリカを被覆させた粉体であり、滑沢性に優れた粉体である。成分(a)におけるマイカは、天然マイカ、焼成マイカ、合成マイカ、天然セリサイト、合成セリサイト等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。また、これらマイカの平均粒径(以下、本発明において平均粒径は、レーザー回折法により測定した値をいう。)は、滑沢性及び密着感の観点より、1〜50μmが好ましく、更に5〜30μmが好ましい。一方、成分(a)における球状シリカの平均粒径は、0.01〜5μmが好ましく、更に0.05〜2μmが好ましい。
【0017】
成分(a)における、マイカ表面に球状シリカを被覆させる方法としては、特開昭60―228406号公報に開示されているようなメカノケミカル反応による方法や珪酸アルカリ金属塩や有機珪酸化合物等を用いて母粉体上に珪素を析出させる方法、特開平3−45660号公報に開示されているような球状シリカとマイカを溶媒に分散させた後、噴霧乾燥させる方法、特許第2784261号公報に開示されているような固定化剤としてアルコキシシラン等を用いる方法等が挙げられる。本発明において、シリカはマイカ表面に強固に固着されたものでも良いが、化粧料使用時の摩擦により剥離される程度の弱い固着状態であっても良い。このような成分(a)としては、市販品として、平均粒径25μmの天然マイカに平均粒径0.3μmの球状シリカ(20%質量)を被覆したベルベットベール 320、平均粒径25μmの天然マイカに平均粒径0.6μmの球状シリカ(40%質量)を被覆したベルベットベール 640(何れも、触媒化成工業社製)、平均粒径20μmの天然マイカに平均粒径0.3μmの球状シリカ(20%質量)を被覆し、更にシリコーン処理したSXI−5(三好化成社製)等が挙げられる。尚、これら粉体は、分散性や付着性を改良するために、シリコーン類、フッ素化合物類、金属石鹸類、油剤類等の通常公知の方法により、表面処理して用いても良い。
【0018】
本発明の固形粉末化粧料における成分(a)の含有量は、1〜40質量%(以下、単に「%」と略す。)であり、10〜30%が好ましい。成分(a)の配合量がこの範囲であると、塗布時の伸びの軽さ、滑らかさが特に良好な固形粉末化粧料を得ることができる。
【0019】
本発明に用いられる成分(b)の薄片状シリカは、本発明において、粉体同士の結合剤として用いられるものであり、その形状は一次粒子が2〜10枚程度平行的に重なった積層構造の葉状の二次粒子を形成しているものが好ましい。
【0020】
前記薄片状シリカの二次粒子の平均面径(平均粒径)は0.1〜10μmであり、0.5〜5μmが特に好ましい。薄片状シリカの平均面径が0.1μm未満では、肌への密着感が強すぎて、塗布時の伸びの軽さや滑らかさが良好とならず、10μmを超えると、溶剤の揮発に伴う粉体同士の結合効果が弱いので、耐衝撃性が良好とならず、何れも好ましくない。
【0021】
また、前記薄片状シリカの二次粒子の平均厚みは0.005〜1μmであり、0.01〜0.5μmが特に好ましい。薄片状シリカの平均厚みが0.005μm未満では、肌への付着性が強すぎて、塗布時の伸び軽さや滑らかさが良好とならず、1μmを超えると、溶剤の揮発に伴う粉体同士の結合効果が弱いので、耐衝撃性が良好とならず、何れも好ましくない。
【0022】
更に、前記薄片状シリカは、前記二次粒子のアスペクト比(平均粒径/平均厚さ)が15以上であることが好ましい。薄片状シリカのアスペクト比が15以上であると、溶媒の揮発に伴い粉体同士の結合効果がより優れるので、耐衝撃性が特に良好な固形粉末化粧料を得ることができる。
【0023】
そして、前記薄片状シリカは、そのまま粉体として配合しても良いが、水、エタノール、イソプロパノール等の溶媒にコロイド分散した、いわゆるシリカゾルとして用いることにより、耐衝撃性が特に良好な固形粉末化粧料を得ることができる。
【0024】
このような薄片状シリカゾルは、例えば、水ガラス等を水で希釈し、シリカ/アルカリ(リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属)とのモル比を1.0〜3.4mol/molの範囲に調整した珪酸アルカリ水溶液を、イオン交換樹脂法或いは電気透析法等により、脱アルカリ化する方法等により製造することができる。
【0025】
更に、本発明に好適に用いられる薄片状シリカゾルは、その表面シラノール基(−SiOH)の含有量が30〜100μmol/mであるものが好ましい。シリカ表面のシラノール基がこの範囲内にある薄片状シリカゾルを用いると、粉体同士の結合効果がより優れるので、耐衝撃性が特に良好な固形粉末化粧料を得ることができる。このような大きいシラノール基含有量の薄片状シリカゾルは、化粧料基材との混合過程では、シリカの薄片状粒子同士が極めて強く結着し、自己造膜性を示し、その溶媒の乾燥過程では、シラノール基の縮合などが起こり、粒子結着が生じるために耐衝撃性が向上するものである。
【0026】
尚、本発明おいて、表面シラノール基の含有量とは、以下の式によって求められる値である。
表面シラノール基含有量(μmol/m)=(W×1111.1)/SA
※W:120℃に加熱したときの平衡質量と1200℃に加熱したときの
平衡質量の差
※SA:BET法よる比表面積
【0027】
更に、本発明に好適に用いられる薄片状シリカゾル中のシリカの濃度は、特に限定されないが、化粧料基材との混合性の観点より、1〜30%が好ましい。
【0028】
そして、このような薄片状シリカゾルは、市販品として、以下のような物理特性を有する薄片状シリカの水分散ゾルであるサンラブリーLFS−C(洞海化学工業社製)等が挙げられる。
シリカ濃度 :14%
シリカ純度 :99.0%以上
平均厚み :0.01〜0.5μm
平均面径 :0.1〜3μm
アスペクト比:20〜50
細孔容積 :0.10〜0.15mL/g
比表面積 :60m/g
細孔分布 :3.5〜4nm
表面シラノール基:50〜70μmol/m
【0029】
本発明の固形粉末化粧料の化粧料基材における成分(b)の配合量は、特に限定されないが、0.1〜3%が好ましい。成分(b)をこの範囲で用いると、耐衝撃性が特に優れた固形粉末化粧料を得ることができる。
【0030】
本発明の化粧料基材に配合可能な成分(a)及び(b)以外の粉体とは、着色剤、隠蔽剤(メーキャップ効果)、感触調整剤、賦形剤、紫外線遮蔽剤等の目的で用いられるものであり、通常化粧料に使用される粉体であればよく、不定形、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、有機粉体類、光輝性粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的に例示すれば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合体等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、澱粉、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末のラメ剤等が挙げられ、これらより一種又は二種以上用いることができる。尚、これら粉体は、フッ素化合物、シリコーン化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等により、表面処理を施して用いても良い。
【0031】
前記化粧料基材中における粉体の配合量は、特に限定されないが、60〜99.9%が好ましい。粉体の配合量がこの範囲内であれば、塗布時の伸び広がり、成形性が特に良好な固形粉末化粧料を得ることができる。
【0032】
また、化粧料基材に配合する粉体として、親水性粉体を20%以上配合すると、薄片状シリカの結合効果が特に優れるので好ましい。尚、本発明において、親水性粉体とは、水中に粉体を添加、攪拌した時に、水中に分散するものであり、水表面に浮くものは疎水性粉体と定義する。
【0033】
本発明の化粧料基材に配合可能な油剤としては、通常の化粧料に用いられる油剤であれば、固形状、ペースト状、液体状の何れのものでもよく、動物油、植物油、合成油等の起源を問わず、炭化水素類、油脂類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、固形パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、エチレンプロピレンコポリマー、セレシンワックス等の炭化水素類、ミツロウ、モクロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス等のロウ類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、パーム油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ホホバ油、リンゴ酸ジイソステアリル、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジステアリン酸プロピレングリコール、ゲイロウ等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性オルガノポリシロキサン、アルコキシ変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0034】
前記化粧料基材中における油剤の配合量は、特に限定されないが、15%以下が好ましい。油剤の配合量がこの範囲であると、ケーキング生じず、塗布具へのとれがより良好で、塗布時の伸び広がりが特に良好な固形粉末化粧料を得ることができる。
【0035】
前記化粧料基材に用いられる界面活性剤としては、通常の化粧料に用いられる界面活性剤であればよく、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。具体的には、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。また、アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸のような脂肪酸及びそれらの無機及び有機塩、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、N−メチル−N−アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシル−N−アルキルアミノ酸塩、ο−アルキル置換リンゴ酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。そして、カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノールアミン脂肪酸誘導体、アルキル四級アンモニウム塩、環式四級アンモニウム塩等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。更に、両性界面活性剤としては、アミノ酸タイプやベタインタイプのカルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型のものがあり、人体に対して安全とされるものが使用できる。例えば、大豆リン脂質、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシルメチルアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸、N,N,N−トリアルキル−N−スルフォアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビス(ポリオキシエチレン硫酸)アンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0036】
本発明の化粧料基材は、成分(a)及び(b)を混合し、必要に応じて他の粉体、油剤及びその他の成分を添加し、均一分散することにより製造されるものである。(但し、成分(b)は、化粧料基材とは別に、以下に記す溶剤と混合、分散してから混合しても良い。)具体的には、ヘンシェルミキサー(三井三池社製)中で均一分散し、これに油剤等を添加し、均一分散する方法等が挙げられる。
【0037】
本発明の固形粉末化粧料は、前記化粧料基材を溶剤と混合し、該混合物を容器に充填した後、前記溶剤を乾燥除去して成形することにより得られるものである。
【0038】
本発明に用いられる溶剤は、特に限定されないが、沸点が260℃以下のものが好ましく、具体的には、水、エタノール。イソプロピルアルコール、代替フロン、軽質流動イソパラフィン、低重合度ジメチルポリシロキサン等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。また、これら溶剤中でも、水、エタノール、水−エタノール混合溶剤は、乾燥除去が容易なので特に好ましい。
【0039】
本発明では、化粧料基材と溶剤との混合割合は、特に限定されないが、化粧料基材100質量部に対する溶剤量は、5〜100質量部が好ましく、更には10〜80質量部がより好ましい。溶剤量がこの範囲内であると、乾燥除去が容易である。
【0040】
本発明において、化粧料基材を溶剤と混合すると、粉体を主成分とする化粧料基材中の空気が、溶剤により置換され、混合物がスラリー状となるように溶剤量を決めるのが好ましい。
【0041】
本発明では、前記混合物を充填する容器としては、特に限定されないが、アルミニウム等の金属製の皿、ナイロン、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂製の皿が好ましい。
【0042】
次に、本発明では、前記混合物を容器に充填した後、溶剤を乾燥除去するが、この場合の乾燥条件は、特に限定されないが、溶媒の沸点や配合量により適宜選択されるが、例えば、20〜70℃で24時間以上乾燥する方法等が挙げられる。尚、前記スラリーを容器に充填した後や、溶剤を乾燥除去した後に、圧縮成形(プレス成形)し、更に乾燥除去して成形することもできる。
【0043】
尚、本発明の方法により得られる固形粉末化粧料は、板状粉体が表面に対し平行に配向するので、塗布時の伸びが軽く、滑らかな固形粉末化粧料を得ることができる。
【0044】
本発明の固形粉末化粧料は、前述した製造方法により得られるものであり、ファンデーション、白粉、頬紅、口紅、アイシャドウ、アイライナー、アイブロウ、コンシーラー等のメーキャップ化粧料等が挙げられる。また、本発明の固形粉末化粧料の形態は、ケーキ状の他に、ドーム状、球状、半球状、円錐状、角錐状、ダイヤモンドカット状、スティック状等の多種多様な立体形状に成形することができる。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0046】
実施例1〜11及び比較例1〜4:ケーキ状ファンデーション
表1〜3に示す組成のケーキ状ファンデーションを調製し、「塗布時の伸びの軽さ」、「塗布時の滑らかさ」、「肌への密着感」、「耐衝撃性」の各項目について、以下に示す評価方法及び判定基準により、評価、判定し、結果を合わせて表1〜3に示した。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
(製造方法)
A.成分5〜16をヘンシェルミキサー(三井三池社製)で均一分散する。
B.Aをヘンシェルミキサーで攪拌しながら、成分1〜4及び成分17〜18
を添加し、均一分散する。
C.Bの100質量部に対して、成分19〜20を所定量添加し、均一混合
する。
D.Cを金皿に充填し、70℃で12時間乾燥させ、ケーキ状ファンデーショ
ンを得た。
【0051】
〔評価方法:「塗布時の伸びの軽さ」、「塗布時の滑らかさ」、「肌への密着感」〕
化粧品評価専門パネル20名に前記実施例及び比較例のファンデーションを使用してもらい、「塗布時の伸びの軽さ」、「塗布時の滑らかさ」、「肌への密着感」について、各自が以下の基準に従って5段階評価し、ファンデーション毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を以下の判定基準に従って判定した。
評価基準:
[評価結果] :[評 点]
非常に良好 : 5点
良好 : 4点
普通 : 3点
やや不良 : 2点
不良 : 1点
判定基準:
[評点の平均点] :[判 定]
4.5以上 : ◎
3.5以上〜4.5未満 : ○
1.5以上〜3.5未満 : △
1.5未満 : ×
【0052】
〔評価方法:耐衝撃性〕
前記実施例及び比較例のファンデーションをそれぞれ5個用意し、金皿に充填した状態のまま、50cmの高さからアクリル板上に正立方向で自由落下させ、落下後の表面状態を観察し、ファンデーション毎に以下の評価基準により評点を付し、そしてn=5の評点の平均点を算出し、以下の4段階の判定基準により判定した。
評価基準
[内 容] :[評 点]
変化無し : 4
僅かにヒビ割れがあるが、
使用性に問題無し : 3
ヒビ割れ、スキマ有り : 2
大きなヒビ割れやスキマ有り : 1
判定基準
[n=5の評点の平均点] :[判 定]
3.5以上 : ◎
3.0以上〜3.5未満 : ○
2.0以上〜3.0未満 : △
2.0未満 : ×
【0053】
表1〜3の結果から明らかなように、本発明の実施品である実施例1〜11のケーキ状ファンデーションは、「塗布時の伸びの軽さ」、「塗布時の滑らかさ」、「肌への密着感」、「耐衝撃性」の全ての項目に優れた固形粉末化粧料であった。一方、成分(b)を配合していない比較例1は耐衝撃性が良好でなく、塗布時の滑らかさ、肌への密着感も良好ではなかった。成分(b)の代わりに粒状のシリカを用いた比較例2も耐衝撃性が良好でなく、塗布時の伸びの軽さや滑らかさが良好ではなかった。また、成分(b)の代わりに平均面径10μmの薄片状シリカを用いた比較例3は、耐衝撃性が良好ではなかった。そして、成分(a)の粉体の代わりに、球状シリカを単独で配合した比較例4は、耐衝撃性が良好でなく、塗布時の伸びの軽さや滑らかさが良好ではなかった。
【0054】
実施例12:ケーキ状アイシャドウ
(成分) (%)
1.薄片状シリカ
(平均面径0.5μmの水分散ゾル)(注1)※ 0.7
2.酸化チタン 1
3.ベンガラ 0.2
4.黄色4号アルミレーキ 1
5.黒酸化鉄 0.05
6.タルク(不定形) 残量
7.球状シリカ被覆マイカ(注8) 25
8.雲母チタン(平均面径20μm、アスペクト比50) 20
9.酸化チタン被覆板状アルミナ
(平均面径約18μm)(注9) 5
10.球状ポリウレタン(注10) 3
11.球状シリコーンパウダー(注11) 2
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.モノイソステアリン酸ソルビタン 0.4
14.流動パラフィン 3
15.ジメチルポリシロキサン 2
16.香料 0.1
※成分1は、シリカ換算量として記載した。
※注9:XIRONA SILVER(メルク社製)
※注10:PLASTIC POWDER D−400(根上工業社製)
※注11:KSP−100(信越化学工業社製)
【0055】
(製造方法)
A.成分2〜12をヘンシェルミキサー(三井三池社製)で均一分散する。
B.Aをヘンシェルミキサーで攪拌しながら、成分1及び成分13〜16を添加し、
均一分散する。
C.Bの100質量部に対して、軽質流動イソパラフィン50質量部を添加し、均一
分散してスラリー化する。
D.Cを金皿に充填し、70℃で12時間乾燥させ、ケーキ状アイシャドウを得た。
実施例12のケーキ状アイシャドウは、「塗布時の伸びの軽さ」、「塗布時の滑らかさ」、「肌への密着感」、「耐衝撃性」の全ての項目に優れた固形粉末化粧料であった。
【0056】
実施例13:ケーキ状頬紅
(成分) (%)
1.薄片状シリカ
(平均面径0.5μmの水分散ゾル)(注1)※ 0.7
2.酸化チタン 1
3.ベンガラ 0.2
4.赤色226号 0.5
5.タルク(不定形) 残量
6.球状シリカ被覆マイカ(注8) 10
7.ベンガラ被覆板状シリカ(注12) 10
8.雲母(平均面径15μm、アスペクト比30) 50
9.球状ポリスチレン 3
10.粉末ワックス(注13) 5
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
12.ジメチルポリシロキサン 5
13.香料 0.1
※成分1は、シリカ換算量として記載した。
※注12:XIRONA INDIAN SUMMER(メルク社製)
※注13:PRESS−AIDE−SP(プレスパース社製)
【0057】
(製造方法)
A.成分2〜11をヘンシェルミキサー(三井三池社製)で均一分散する。
B.Aをヘンシェルミキサーで攪拌しながら、成分1及び成分12〜13を添加し、
均一分散する。
C.Bの100質量部に対して、水65質量部を添加し、均一分散してスラリー化
する。
D.Cを金皿に充填し、70℃で12時間乾燥させ、ケーキ状頬紅を得た。
実施例13のケーキ状頬紅は、「塗布時の伸びの軽さ」、「塗布時の滑らかさ」、「肌への密着感」、「耐衝撃性」の全ての項目に優れた固形粉末化粧料であった。
以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料基材を溶剤と混合し、該混合物を容器に充填した後、前記溶剤を乾燥除去して成形する固形粉末化粧料において、以下の成分(a)
及び成分(b);
(a)球状シリカ被覆マイカ
(b)二次粒子の平均面径が0.1〜10μm、且つ平均厚みが0.005〜1μmの薄片状シリカを配合することを特徴とする固形粉末化粧料。
【請求項2】
前記固形粉末化粧料中に成分(b)を0.1〜3質量%配合することを特徴とする請求項1記載の固形粉末化粧料。

【公開番号】特開2006−213651(P2006−213651A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28317(P2005−28317)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】