説明

固形臓器を検査するための方法、光プローブおよび共焦点顕微鏡システム

【解決手段】被験者の固形臓器を検査する方法は、針を固形臓器の所定の領域に導入するステップと、光プローブを針の内腔を通って挿入するステップと、光プローブを用いて所定の領域を撮像するステップと、を含む。光プローブは、被験者の固形臓器を検査するためのものである。光プローブは、針を通って固形臓器中に配置されるように構成されている。光プローブは、光ファイバー束と、光ファイバー束の遠位端を保護するためのへらとを含む。へらは、軸部と、頭部と、光ファイバー束および軸部を覆うケースとを含む。へらの頭部は、ケースが針の内部に保持されている間に、光プローブが固形臓器を撮像できるように構成された長さを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般には臓器検査に関する。より具体的には、本開示は診断目的および/または治療用途の生体の臓器検査に関連する。
【背景技術】
【0002】
以下の記述では、固形臓器は空洞つまり内腔を含まず、ガス性(gaseous)でない臓器として定義される。固形臓器は、たとえば実質および間質から構成されていてもよい。後者は(たとえば肝臓、腎臓を)支持するための小柱または周囲の柔細胞群として構成されることが多い。固形臓器はまた、嚢胞を含んでいてもよい。病変と疑われる部位および固形臓器、たとえば肝硬変における構造変化の組織学的検査または膵臓の悪性疾患の病期診断は継続的な挑戦である。放射線医学は、この論点に対して答えの一部しか示してくれない。それは、磁気共鳴映像法(MRI)、ヘリカルコンピュータ断層撮影(CT)スキャン、超音波内視鏡検査およびポジトロン放出断層撮影(PET)では、状況を大幅に過大評価および過小(understaging)評価することを伴う低精度の診断しか可能とならないからである。的確な診断を裏付けるために、生検を通じた標準的な組織病理学が現在でも標準的技法であり続けている。
【0003】
生体の組織試料を得るために、内視鏡検査の手順が一般に好まれる。図1(A)に示すように、胃腸管(GI管)を撮像するために、上部内視鏡検査または下部内視鏡検査を通じて内視鏡1が被験者7に挿入されてもよい。超音波内視鏡下穿刺吸引生検法(EUS−FNA)と呼ばれる特定の内視鏡検査の手順は、GI管の副臓器全体、たとえば肝臓、膵臓およびセンチネルリンパ節の超音波画像を提供するように設計されている。ここで図1(B)を参照する。図1(B)はEUS−FNAの手順を説明する。内視鏡1は、上部内視鏡検査を通じて十二指腸72との接続部の位置にて胃71に接近してもよい。内視鏡1の遠位端は、内視鏡1のワーキングチャンネルに挿入された内視鏡用針23を備えた膵臓73の腫瘤(mass)74を標的にするための超音波モジュール11を含んでもよい。
【0004】
本願明細書の記載および続く特許請求の範囲では、「針」との用語は、臓器を穿刺することが想定された先端を有する中空導管を示すために使用される。先端には傾斜がついていることが好ましい。本願明細書の記載および続く特許請求の範囲では、「内視鏡用針」との表現は、内視鏡のワーキングチャンネルに挿入されるように構成された中空導管を示すために使用される。選択された実施の形態では、内視鏡用針は傾斜した先端を有する。
【0005】
超音波の範囲は、図1(B)では点線で示されている。診断目的の生検を得るために、次に膵臓73は内視鏡用針23を用いて穿刺および貫通されてもよい。EUS−FNAの手順は内視鏡検査の分野では一般的であって、病変の診断にも治療行為にも使用される。EUS−FNAの主要な用途には以下のものが含まれる:
・膵臓の充実性病変または嚢胞性病変。固形化した腫瘤または嚢胞は膵臓中で成長しうる。これらが悪性腫瘍または良性病変かどうかを診断するために、これらを穿刺する必要がある。たとえば膵炎によって液化した嚢胞を、排水するためにEUS−FNAを用いて穿刺することもできる。
・周囲のリンパ節の内容を評価することによる癌の病期。肺癌、膵臓癌、胃癌または直腸癌を含む多くの癌では特に、転移はリンパ節で見つかることが多い。したがって、もしも癌が転移しているなら、リンパ節を穿刺することにより診断が可能となる。
【0006】
EUS−FNAの一般性が相対的に低い他の用途には、肝臓における病変またはGI管中の粘膜の損傷が含まれる。EUS−FNAの手順は、超音波内視鏡(先端に超音波モジュールを有する標準的な内視鏡)を用いることによって、GI管または気道を囲む領域(気道における病変の場合、この手順は内視鏡的超音波誘導経気管支的針吸引用のEUS−TBNAと呼ばれる)の超音波画像によって、病変と疑われる部位を突き止めるために役立つ。次に、微細な内視鏡用針が内視鏡のワーキングチャンネルに挿入され、標的とする病変に到達するために囲壁(GI管壁または気管支樹のいずれか)を穿刺する。あらゆる危険な血管穿刺を回避しつつ針を病変部位まで誘導するために、この穿刺はリアルタイムの超音波画像によって監視される。穿刺に使用される内視鏡用針は、様々な直径を有する。しかし、最もよく使用される内視鏡用針は、当該技術分野では19G針および22G針と呼ばれている。これらの内径は、それぞれ約890μmと約560μmである。
【0007】
しかし、細胞診は、増大するコスト、リスク、診断を行うのに必要な時間、血流量など生体内の情報の欠如、および疾病経過を予測する能力の限界を含む深刻な限界も有する。細針吸引は、限られた回数の吸引によるサンプリング誤差および時間のかかるサンプリング工程による診断の遅れによって特に制限される。
【0008】
本出願人らは以下において、固形臓器を検査するための方法、光プローブおよび共焦点顕微鏡システムを提案する。これらは上述した限界を克服すること、特に診断および/または治療に必要な時間を短縮することができる。
【発明の概要】
【0009】
少なくとも1つの態様では、本明細書中で開示する実施の形態は、被験者の固形臓器を検査するための方法に関連する。本方法は、針を固形臓器の所定の領域に導入するステップと、針の内腔を通って光プローブを挿入するステップと、光プローブを用いて所定の領域を撮像するステップと、を含んでもよい。
【0010】
針を固形臓器の所定の領域に導入するステップは、針の内腔を通って光プローブを挿入するステップの前に行われることが好ましい。別の実施の形態によると、針を固形臓器の所定の領域に導入するステップは、針の内腔を通って光プローブを挿入するステップの後に行われる。
【0011】
針を固形臓器内に導入するステップは、好ましくは傾斜のついた針の先端を用いて、固形臓器を穿刺することを含むことが好ましい。
【0012】
ある好ましい実施の形態によれば、針を固形臓器内に導入するステップは、探り針を用いて固形臓器を穿刺することを含む。探り針は針の内腔に事前に挿入されていることが好ましい。探り針は針から突出させられていることが好ましい。また、探り針は針の内腔を通って光プローブを挿入するステップの前に内腔から除去されることが好ましい。
【0013】
針は臓器に経皮的に挿入されることが好ましい。
【0014】
固形臓器は、膵臓、肝臓、脾臓、リンパ節、前立腺、腎臓、胸部および卵巣から構成された群から選択された1つであることが好ましい。
【0015】
ある好ましい実施の形態によれば、針は内視鏡のワーキングチャンネルを通過させられる。内視鏡のワーキングチャンネルは、固形臓器に接近するために、生まれ持った開口部(natural orifice)を通って被験者に挿入されることが好ましい。
【0016】
内視鏡は内部組織の切開部を通過して固形臓器に接近させることが好ましい。
【0017】
針は超音波モジュールを用いて誘導されることが好ましい。超音波モジュールは内視鏡の先端に配置されることが好ましい。
【0018】
針は内部組織の切開部を通過して固形臓器に接近させることが好ましい。
【0019】
針は、超音波モジュール、スキャナ、CTスキャンシステム、磁気共鳴映像システムまたは蛍光透視イメージシステムのいずれかを用いて誘導されることが好ましい。
【0020】
少なくとも1つの態様では、本明細書中で開示される実施の形態は、被験者の固形臓器を検査するために光プローブに関連する。光プローブは、針を通って固形臓器内に配置されることが想定されている。光プローブは、光ファイバー束と、好ましくは軸部および頭部を含む光ファイバー束の遠位端を保護するためのへら(ferule)と、好ましくは光ファイバー束および軸部を覆うケースと、を含むことが好ましい。へらの頭部は、ケースを針の内部に保持している間に光プローブが固形臓器を撮像するように構成された長さを有する。
【0021】
光プローブは、光ファイバー束の遠位端にて同軸上に接続された目的物をさらに含むことが好ましい。へらは、目的物を光ファイバー束の遠位端に接続することが好ましい。
【0022】
軸部およびへらの頭部は、同軸上に一緒に取り付けられていることが好ましい。軸部およびへらの頭部の両方が内腔を規定するチューブ形状を有することが好ましい。光ファイバー束および目的物は、内腔の内部に入れられていることが好ましい。
【0023】
光プローブは、軸部と頭部との間に、面取りがされた外部接合部をさらに含むことが好ましい。
【0024】
軸部、頭部および外部接合部は一体的に製造されることが好ましく、互いに一体的に成形されることが好ましい。
【0025】
光プローブは、好ましくはへらの頭部と軸部との間に配置された外部接合部に設けされた接着剤をさらに含むことが好ましい。
【0026】
臓器に接触して撮像できるようにするために、へらの頭部が目的物の先端まで伸長することが好ましい。
【0027】
臓器に接触して撮像できるようにするために、へらの頭部が光ファイバー束の先端まで伸長することが好ましい。
【0028】
光ファイバー束、へらおよびケースは、それぞれ0.9mm未満、好ましくは0.8mm未満、好ましくは0.7mm未満の外径を有することが好ましい。
【0029】
へらの長さは8mm未満であることが好ましい。へらの長さは好ましくは7mm未満、好ましくは6mmである。へらの軸長は8mm未満であることが好ましい。へらの軸長は好ましくは7mm未満、好ましくは6mm未満である。
【0030】
へらの頭部の外径は、ケースの外径と実質的に等しいことが好ましい。
【0031】
光プローブは、頭部が針から突出するのを防止するためのロック機構をさらに含むことが好ましい。ロック機構は、所定長を超えて頭部が針から突出するのを防止するように構成されていることが好ましい。
【0032】
ケースの内壁面は、軸部に張り付くように構成されていることが好ましい。
【0033】
光プローブは、少なくとも1つの中空断面と、好ましくは超音波による光プローブの可視化を促進するためにたとえば空気または他の適切な気体で充填された空洞部とをさらに含むことが好ましい。
【0034】
少なくとも1つの態様では、本明細書で開示された実施の形態は、被験者の固形臓器を検査するための共焦点顕微鏡システムに関連する。共焦点顕微鏡システムは、共焦点顕微鏡および上述した光プローブを含むことが好ましい。
【0035】
他の態様および本開示の有利な点は、以下の記述および添付の特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1(A)は、従来技術に従った人体における下部内視鏡検査および上部内視鏡検査を示す。図1(B)は、従来技術に従った標準的な超音波内視鏡下穿刺吸引生検法の技術(EUS−FNA)を示す。
【図2】従来技術に従った内視鏡用針システムを示す。
【図3】本開示のある実施の形態に従って膵臓中でEUS−FNAを用いて得られた超音波画像を示す。
【図4】本開示の実施の形態に従った光プローブの遠位端を示す。
【図5】本開示の実施の形態に従った光プローブの遠位端を示す。
【図6】(A)(B)(C)は、従来技術に従った針に挿入された、本開示の実施の形態に従った光プローブの3つの位置を示す。
【図7】本開示の実施の形態に従った共焦点顕微鏡システムを示す。
【図8】(A)(B)は、本開示の実施の形態に従った図7の方法および共焦点顕微鏡システムを用いて得られた膵臓の血管および肝臓の血管の共焦点画像をそれぞれ示す。
【図9】(A)(B)(C)は、本開示の実施の形態に従った図7の方法および共焦点顕微鏡システムを用いて得られた膵臓細胞、肝臓細胞および脾臓細胞の共焦点画像をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
特定の本開示の実施の形態を、添付の図を参照してここで詳細に説明する。各図における同じような要素は、同じような番号を用いて示すことがある。
【0038】
本開示に従った固形臓器を検査する方法では、針が被験者の固形臓器内に導入されてもよい。針の内腔に挿入された光プローブは、所定の領域を撮像するために臓器の所定の領域と接触させられてもよい。光プローブは、共焦点顕微鏡システムとともに使用されてもよい。本方法に従って臓器を撮像することにより、所定領域の顕微鏡写真が得られてもよく、リアルタイムな診断の確立に貢献してもよい。固形臓器は、膵臓、肝臓、脾臓、リンパ節、胸部、卵巣、腎臓または前立腺から構成される群から選択される1つの臓器であってもよい。
【0039】
針を固形臓器内に導入するステップは、好ましくは針の先端を用いて固形臓器を穿刺することを含んでもよい。穿刺を促進するために、臓器を穿刺することが意図された針の先端は、傾斜が付いていることが好ましい。針は、撮像するために臓器中に経皮的に挿入されてもよい。または、針は内視鏡用針であってもよく、たとえば上部または下部GI内視鏡検査の手順、気管支鏡検査法および他の内視鏡手術(たとえば経直腸的超音波、膀胱鏡検査など)を通じて、撮像用に固形臓器に接近するために、被験者に挿入された内視鏡のワーキングチャンネルを貫通させてもよい。針を固形臓器に直接接近できるようにするために、内部の切開部に内視鏡をさらに通過させてもよい。撮像する臓器に接近する前に、針は囲壁を穿刺してもよい。光プローブを針に挿入するステップは、針を用いて臓器を穿刺するステップの前に行われてもよいし後に行われてもよい。光プローブは、針から突出するように配置されてもよいし、ロック機構を用いて所定位置にて固定されてもよい。
【0040】
周囲の臓器(たとえば膵臓の病変の場合には胃または十二指腸)を穿刺した後、周囲の臓器の残存物から生じるごみ(dirt)は、針の内腔中に留まってもよい。ごみを内腔の外へと押し出すために、探り針が使用されてもよい。光プローブを挿入するステップが穿刺に続く場合、臓器の穿刺中に探り針が針の内腔中に搭載されることが有利であってもよい。また、ごみは光プローブを用いて針から押し出されてもよい。光プローブを針に挿入するステップが穿刺に先立つ場合、光プローブはごみを押し出すことが有利である。
【0041】
別の実施の形態では、固形臓器は針の内腔にあらかじめ搭載された探り針によって穿刺されてもよい。探り針は、臓器の穿刺を容易にするために傾斜した端部を有してもよい。探り針は、固形臓器の所定の領域を穿刺するために、針の内腔から外へと押し出されてもよい。針はその後、所定の領域にて固形臓器内に導入されてもよい。光プローブを上述した内腔内に挿入することができるようにするために、探り針は除去されてもよい。
【0042】
危険な血管穿刺を防ぐために、針は超音波、スキャナ、MRIなどを用いて所定の領域まで誘導されてもよい。針が内視鏡のワーキングチャンネルを通して使用される場合に、針を可視化するために、超音波モジュールが内視鏡の先端に配置されてもよい。穿刺を行うために使用される器具(つまり針または探り針)は、直接的な可視化または超音波誘導のもと、臓器中へと慎重に進められることによって、臓器を穿刺してもよい。光プローブが蛍光ファイバー顕微鏡とともに使用される場合、コントラストを高めるためにフルオレセインが静脈注射されることが有利であってもよい。次に、光プローブの遠位端が臓器の内部組織に接触できるようにするために、光プローブが操作されてもよい。
【0043】
図2は、細針吸引に使用されてもよい内視鏡用針システム2を示す。内視鏡用針システム2は、ハンドル21、保護用の注射針ケース22および内視鏡用針23を含んでもよい。探り針24は、針の内腔内の開口部を通って挿入されてもよい。開口部は、ハンドル21の端部に配置されてもよい。また、組織吸引を行うためにEUS−FNAの手順によって内視鏡用針システムが使用される場合、開口部に配置されてもよいシリンジ接続は、組織を吸引するためにシリンジを接続可能であってもよい。シリンジを接続するために、初めに探り針が取り除かれてもよい。本開示の実施の形態によると、光プローブは針の内腔中の開口部を通って挿入されてもよい。針23はケース22に入れられてもよい。またハンドル21は、注射針ケース22から針23の制御された突出を可能にするために、制御システムを含んでもよい。光プローブが針23の内腔に挿入された場合、内腔内における光プローブの位置は操作者によって手動で調整されてもよい。所定の臓器の穿刺を促進するために、針の遠位端は傾斜して形成されていてもよい。針の好ましい特徴は、たとえば以下の通りであってもよい:約0.30mm〜1mmの内径(ID);約0.6mm〜約1.2mmの外径(OD)。特に好ましい針は、22G針(ID=0.56mm;OD=0.71mm)および19G針(ID=0.89mm;OD=1.07mm)である。当業者であれば、別の口径やサイズを有する針も同様に使用されてもよいことを理解するであろう。
【0044】
臓器に接近するために、ケース22は針23とともに内視鏡の内部に挿入されてもよい。臓器に穴を開けるステップは、超音波による誘導の下で行われてもよい。図3は、内視鏡用針23を用いた膵臓の穿刺中に線形の超音波モジュール11とともに先端に配置された内視鏡を通じて撮影された膵臓の超音波画像を示す。
【0045】
図7を参照する。本開示のある実施の形態に従った光プローブ3は、ケースにより保護された数1000の光ファイバーから作られた光ファイバー束を含んでもよい。光ファイバーは、たとえばコア径が2μmで、平均コア間隔が3.3μmであってもよい。光プローブの近位端は、たとえばリアルタイムスキャニング共焦点顕微鏡4(マウナケアテクノロジーズ社のCellvizio(登録商標)など)に接続されていてもよい。また近位端は、任意のタイプのファイバー顕微鏡に接続されていてもよい。また、細胞レベルまたは微小血管レベルでの高感度な観察が可能になってもよい。近位の共焦点顕微鏡4は、光源を含んでもよい。光源は、内因性または外因性の蛍光色素分子を励起可能なレーザー光源であってもよい。また近位の共焦点顕微鏡4は、蛍光シグナルの収集および測定を可能にする検出チャンネルを含んでいてもよい。ある実施の形態では、共焦点顕微鏡は後方散乱光を収集および測定する反射型顕微鏡である。光プローブ3が生体組織と接触している場合に、光プローブ3の遠位の目的物は、光ファイバー束の遠心端を特定の画像面(image plane)において特定の作動距離にて結合させる。近位のスキャナによって次々に照らされた場合、束の各ファイバーは組織の内部において小さな空洞部(volume)の光源となる。この照射により内因性または外因性の蛍光色素分子が励起されてもよい。光源として機能することに加え、照射ファイバーはまた蛍光シグナルを収集し、蛍光シグナルを近位のスキャナへと伝達する。そこで戻りビームは空間的にろ過され、検出チャンネルへと向けられる。その結果、光プローブおよび近位のスキャナは組織の共焦点診断検査を行う。得られた画像は処理装置および記憶装置6で処理および保存されてもよく、また表示装置5に表示されてもよい。
【0046】
ここで図4を参照する。光プローブ3は、光ファイバー束31と、光ファイバー束31の遠位端にて同軸上に取り付けられた小型の目的物32と、目的物32を光ファイバー束31の遠位端に接続するへら33と、を含んでもよい。へら33は、軸部331および頭部332を含んでもよい。ケース34は、光ファイバー束31および軸部331の一部を覆ってもよい。撮像する臓器に接触させるために、頭部332を目的物32の先端まで伸ばしてもよい。また侵襲性を抑えるために、頭部332を磨いて滑らかにしてもよい。へら33の軸部331および頭部332はいずれも、チューブ形状を有し同軸上に配置されていてもよい。軸部331および頭部332は一体的に形成されていてもよい。光ファイバー束31および目的物32は、軸部331と頭部332を同軸上に配置して形成された内腔内に適合してもよい。軸部331と頭部332は同一の内径を有してもよい。軸部331と頭部332との外部接合部333は、面取りがされていてもよい。面取りがされた外部接合部333が接着剤により覆われることにより、外部接合部333に汚れがたまることが有利に防止されてもよい。
【0047】
ある実施の形態では、光プローブ3は目的物を含まなくてもよい。また、光ファイバー束31の遠位端は、撮像される臓器に直接接触させてもよい。この実施の形態では、頭部332は光ファイバー束31を保護してもよい。また、頭部332は光ファイバー束31の遠位端まで伸張していてもよい。
【0048】
図5に示されるように、光プローブ3の超音波による可視化を促進するために、光プローブ3は空気で充填された少なくとも1つの空洞部(hollow volume)334を含んでもよい。有利には、空洞部334中の空気は光プローブの超音波による可視化を促進する任意の流体または固体により置換されてもよい。頭部および軸部はチューブ形状を有していてもよい。軸部331の外径は、頭部332の内径と実質的に等しくてもよい。軸部を頭部332の内腔内に組み立てることにより空洞部334が形成されるようにするために、頭部332の内壁面は空洞を含んでもよい。
【0049】
図6(A)を参照する。光プローブ3は針23の内腔に挿入されてもよい。臓器の所定の領域(図6(A)〜(C)には示されていない)を撮像するために針の先端から突出させようとして(図6(C))、光プローブ3は針23の先端に向けて動かされてもよい(図6(B))。臓器の穿刺を容易にするために、針23は傾斜が形成されていてもよい。頭部332の先端が針23の先端を超えて動かされた場合に臓器と接触できるようにするために、光プローブの頭部332はケース34に適合した長手方向の長さを有してもよい。これにより、針23の内部に収容された状態を維持することができる。つまり、頭部332の先端が針の端部(斜面の端部の後ろ、つまり針23の開放端)から突出した場合に、ケース34が針の端部の前(好ましくは斜面の開始部の前)に留まるような軸長を、頭部332が有してもよい。頭部332は、斜面の端部を超えて約0〜5mm押されてもよい。針23の斜面は、針23の縦軸に対して約20°〜90°の角度であってもよい。針23の斜面は約20°であることが好ましい。頭部332の長さは約1〜8mmであってもよい。光プローブ3の頭部332の長さは、頭部332の軸長として規定されてもよい。針23の斜面は2mmを超える長さを有することが好ましい。斜面の長さは、斜面の開始部と斜面の端部との間、つまり針23の開放端の軸長として規定されてもよい。つまり、斜面の長さは、針23の縦軸にて傾斜した針23の端部の突き出した部分の長さと同じであってもよい。光プローブ3の頭部332の長さは、針23の斜面の長さよりも長いことが好ましい。
【0050】
長手方向の長さが約4mmである第1のへらおよび長手方向の長さが約8mmである第2のへらを用いた実験により、特に針23が曲がっている場合、たとえば十二指腸を通って病変部位に接近する際に、第1のへらは針23からのプローブ3の抜き出しを容易にすることが示されている。
【0051】
プローブ3と針23の安全な接触は、へら33の存在により得られる。へら33は、プローブ3が針23の斜面により切断されるのを防止する。プローブ3が針23の内部に挿入された場合に、斜面の端部を超えるプローブ3の所定の前進の制限が決められてもよい。ある実施の形態では、プローブ3が針23の遠位端から2mmを超えて突出した場合に、この限界位置に到達してもよい。プローブ3が斜面から2mm突出したことにより、プローブ3の先端を検査する組織とより接触するように配置することが可能となり、したがって良好な画質を得ることが可能となってもよい。光プローブ3の頭部332の長さは、斜面の端部を超えるプローブ3の所定の前進の制限によって長くなった針23の斜面の長さよりも長いことが好ましい。
【0052】
光プローブ3の頭部は、約3mmの長さを有することが好ましい。これにより、有利にはケース34を針23の斜面にこすり付けて押さえることにより、光プローブ3の抵抗が改善されてもよい。内視鏡と針の柔軟性が十分な状態を保つために、へらの長さが12mm未満に保たれることが有利であってもよい。
【0053】
図8(A)(B)および図9(A)〜(C)は、本開示の実施の形態に従って得られた固形臓器の画像を示す。図8(A)(B)は、膵臓中および肝臓中で観察された血管731および血管751をそれぞれ示す。
【0054】
図9(A)は膵臓中で得られた。図9(A)は膵臓の腺房732を示す。腺房732は膵臓の外分泌腺部分の一部である。図9(B)は肝臓中で得られた。肝臓は非常に血管に富んだ臓器であり、小葉と呼ばれる小さな6面構造に分けられる。小葉自体は洞様毛細血管により分けられた肝細胞752から構成される。図9(C)は脾臓中で得られた。図9(C)により、脾臓の赤脾髄762と白髄761とを区別することが可能となる。
【0055】
本開示は、限られた数の実施の形態に関して説明した。しかし、本開示の恩恵を受ける当業者であれば、本願明細書に開示された開示の範囲から逸脱しない範囲で、他の実施の形態を考え出すことが可能であることを理解するであろう。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針を固形臓器内の所定の領域に導入するステップと、
針の内腔を通って光プローブを挿入するステップと、
光プローブを用いて所定の領域を撮像するステップと、を含むことを特徴とする被験者の固形臓器を検査するための方法。
【請求項2】
針を固形臓器内に導入するステップは、針の先端を用いて固形臓器を穿刺することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
針を固形臓器内に導入するステップは、針の内腔に事前に挿入された探り針を用いて固形臓器を穿刺することを含み、
探り針は、針から突出させられ、針の内腔を通って光プローブを挿入する前に内腔から除去されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
針を臓器に経皮的に挿入するステップをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
固形臓器は、膵臓、肝臓、脾臓、リンパ節、前立腺、腎臓、胸部および卵巣から構成される群から選択された1つであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
固形臓器に接近するために、生まれ持った開口部を通って被験者に挿入された内視鏡のワーキングチャンネルを通って針を通過させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
内視鏡を内部組織の切開部を通過させて固形臓器に接近させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
内視鏡の先端に配置された超音波モジュールを用いて針を誘導するステップをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
内部組織の切開部を通過して固形臓器に針を接近させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
超音波モジュール、スキャナ、CTスキャンシステム、磁気共鳴映像システムまたは蛍光透視イメージシステムのうちの少なくとも1つを用いて針を誘導するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
針を通って固形臓器中に配置されることにより、被験者の固形臓器を検査するための光プローブであって、
光ファイバー束と、
軸部および頭部を含み、光ファイバー束の遠位端を保護するへらと、
光ファイバー束および軸部を覆うケースと、を含み、
へらの頭部は、ケースを針の中に保持している間に、光プローブが固形臓器を撮像するのに適した長さを有することを特徴とする光プローブ。
【請求項12】
光ファイバー束の遠位端にて同軸上に目的物をさらに含み、
へらは目的物と光ファイバー束の遠位端とを接続することを特徴とする請求項11に記載の光プローブ。
【請求項13】
軸部およびへらの頭部は、同軸上に取り付けられ、いずれも内腔を規定するチューブ形状を有し、
光ファイバー束および目的物は、内腔の内部に収容されていることを特徴とする請求項12に記載の光プローブ。
【請求項14】
軸部と頭部との間に外部接合部をさらに含み、
外部接合部は、面取りがされていることを特徴とする請求項13に記載の光プローブ。
【請求項15】
軸部、頭部および外部接合部が一体的に成形されていることを特徴とする請求項14に記載の光プローブ。
【請求項16】
へらの頭部と軸部との間に配置され面取りがされた外部接合部に設けられた接着剤をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の光プローブ。
【請求項17】
臓器に接触して撮像するために、へらの頭部が目的物の先端まで伸長することを特徴とする請求項12に記載の光プローブ。
【請求項18】
臓器に接触して撮像するために、へらの頭部が光ファイバー束の先端まで伸長することを特徴とする請求項11に記載の光プローブ。
【請求項19】
光ファイバー束、へらおよびケースのそれぞれは、0.9mm未満の外径を有することを特徴とする請求項13に記載の光プローブ。
【請求項20】
へらの長さが8mm未満であることを特徴とする請求項11に記載の光プローブ。
【請求項21】
へらの頭部の外径が実質的にケースの外径に等しいことを特徴とする請求項13に記載の光プローブ。
【請求項22】
頭部が所定長を超えて針から突出することを防止するロック機構をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の光プローブ。
【請求項23】
ケースの内壁面は、軸部に密着するように構成されていることを特徴とする請求項11に記載の光プローブ。
【請求項24】
空気で充填されることにより光プローブによる超音波の可視化を促進するための少なくとも1つの中空断面をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の光プローブ。
【請求項25】
共焦点顕微鏡と、請求項11に記載の光プローブと、を含むことを特徴とする被験者の固形臓器を検査するための共焦点顕微鏡システム。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1(A)】
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【図1(B)】
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【図3】
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【図8(A)】
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【図8(B)】
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【図9(A)】
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【図9(B)】
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【図9(C)】
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【公表番号】特表2013−505043(P2013−505043A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529357(P2012−529357)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002653
【国際公開番号】WO2011/033390
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(504243970)マウナ ケア テクノロジーズ (12)
【Fターム(参考)】