説明

固形製剤およびワクチンの投与量

装置から低速非経口注入するための細長体が記載されている。細長体は、少なくとも1の尖端部を有し、少なくとも1の活性物質を含む。加えて、細長体は5ニュートン以上の圧縮強度を有し、尖端部は10〜50°の夾角を有する。また、無針非経口投与のための固形ワクチン製剤、細長体の製造方法、細長体の包装および細長体の使用、包装および適当なデリバリー装置も記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無針注射器と共に使用することができる装置から低速非経口注入するための細長体および固形製剤に関する。本発明の細長体は、少なくとも1の尖端部を有し、少なくとも1のワクチンなどの活性物質を含む。加えて、本発明の細長体は5ニュートン以上の圧縮強度を有し、尖端部は約10〜50°の夾角を有する。
【背景技術】
【0002】
ワクチンは、疾患に対する免疫を確立するために用いられる抗原性製剤である。ワクチンは、予防用(例えば、天然または「野生(wild)」の病原体による将来の感染の影響を防止または改善するため)、または、治療用(例えば、がんに対するワクチン)となりうる。
【0003】
伝統的なワクチンは4タイプ存在する。死滅した微生物を含むワクチンは、化学物質または熱によって死滅させているが、もともとは有毒の微生物から得られる。例として、インフルエンザ、コレラ、腺ペストおよびA型肝炎に対するワクチンが挙げられる。生存し、弱毒化した微生物を含むワクチンは、生存微生物から得られ、その有毒性を無力化する条件下で培養される。典型的には、それらはより持続的な免疫的応答を誘発し、健常な成人に好ましいタイプである。例として、黄熱病、はしか、風疹およびおたふく風邪が含まれる。トキソイドは、(むしろ微生物自体よりも)これらが病気を引き起こす場合は、微生物からの不活性化毒性化合物である。トキソイドベースのワクチンの例としては、破傷風およびジフテリアが含まれる。不活性化または弱毒化した微生物を免疫システムに導入することより、むしろ、微生物の断片が免疫応答を作り出すことができる。特徴的な例として、(酵母中で作られた)ウイルスの表面タンパク質のみを構成するHBVに対するサブユニット・ワクチン、および、ワクチンウイルスの主要キャプシドタンパク質を構成するヒトパピローマウイルス(HPV)に対するウイルス様粒子(VLP)が含まれる。
【0004】
また、多数の革新的なワクチンが、開発中および使用中である。ある種のバクテリアは、免疫原性が低い多糖の外側コーティングを有している。これらの外側コーティングをタンパク質(例えば、毒素)に結合させることにより、免疫システムによって、まるでタンパク質抗原であったかのように多糖が認識される。このアプローチは、インフルエンザ菌タイプBワクチンに使用される。あるいは、1の微生物とその他のDNAの生理学を組み合わせることにより、複合感染プロセスを有する疾病に対して免疫が作られうる。近年、感染因子のDNAから作られたDNAワクチン接種と呼ばれる新しいタイプのワクチンが開発されている。これは、ウイルスDNAまたはバクテリアDNAのヒト細胞または動物細胞への挿入(および、発現、免疫システム認識の誘発)によって機能する。免疫システムの細胞の中には、発現されたタンパク質を認識し、タンパク質およびそのタンパク質を発現する細胞に対する攻撃を備える細胞がある。これらの細胞は非常に長期間生存するため、通常これらのタンパク質を発現する病原体が後になって遭遇したとしても、免疫システムによって即座に攻撃されるであろう。DNAワクチンの1つの利点は、製造および保管が非常に簡便なことである。
【0005】
ワクチンの予防的使用は、広範囲の疾病から保護するために何十年間も実施されている。いくつかのワクチン接種キャンペーンが成功し、世界の多くの地域において多くの疾病が現在はまれなものとなっている。多くの新規ワクチンが、治療的使用および/または予防的使用のいずれかのために開発中である。
【0006】
いくつかのワクチンは経口投与または経鼻投与されているが、多くのワクチンは注入によって投与しなければならない。伝統的に、注入は、液状のワクチンを用いて針およびシリンジで投与されている。この方法には多くの重大な欠点があり、具体的には、針恐怖症によるコンプライアンス低下、液体製剤の安定性およびコールドチェーンストレージの問題、針の使い捨てによるクロス・コンタミネーションのおそれである。ワクチンの中には、たとえ保冷されていても液状では十分に安定でないものもあり、粉末として保存する必要がある。注入前に粉末は再調製しなければならず、さらにプロセスが煩雑になる。
【0007】
マイクロニードルパッチが、ワクチン接種のために開発中である。これらは小さなマイクロニードルを有し、抗原にコーティングされているか、または、その中に小さな穴がありそこから抗原が押し出される。このマイクロニードルは皮膚の外層に挿入され、皮膚中で強化した免疫原性から効果を得る。
【0008】
また、経鼻投与のためのワクチンも開発され、経鼻粘膜へのデリバリーによって効果を得る。しかし、これらのシステムの製造は非常に高価である。わずかな経口ワクチンしか市販されておらず、他の投与ルートは開発中であるが、たとえあったとしても、これらは長年の日常的な使用になりそうもない。
【0009】
治療組成物をデリバリーするために、多くの異なる経路が存在する。一般的には、多くの原薬が消化管で容易に吸収されるため、経口投与が好ましい経路である。また、経口投与は患者から広く受け入れられ、大抵は結果的に患者コンプライアンスが良好な投与形態である。しかし、すべての原薬が経口デリバリー用に製剤化できるわけではなく、このような投与ルートによって常に薬剤の最適なバイオアベイラビリティーが得られるわけではない。
【0010】
消化管を回避する1つの投与ルートは非経口投与と称され、経口投与されると分解するか吸収が不安定または不確実な薬剤のために一般的に選択される経路である。
皮膚は、治療化合物の非経口投与のためのより効率的な経路の1つであり、最も一般的には、この投与は液状の治療化合物のデリバリーシステムとして針および注射器を使用して行われる。針および注射器のデリバリーシステムには、針に伴う痛みおよび恐れ、液体製剤の必要性、針の使用や使い捨てによる尖った危険物(sharp hazard)を始めとする多くの欠点がある。
【0011】
無針ドラッグデリバリーシステムは、皮膚に液体を注入するために使用される。典型的には、このようなデリバリー方法は、皮膚を貫いて独自の穴を作る極細で高速度の液体ジェットによって達成される。しかし、このような方法には、跳ね返り(splash back)を含む多くの問題がある。
【0012】
液体は非圧縮性であるため、液体デリバリーの両形態で比較的大量の液体を注入し、収容させるには組織を引き裂く必要がある。また、治療化合物のすべてが良好な水溶性を有する訳ではないため、潜在的に有毒な添加物や界面活性剤を溶液に加える必要性が生じる。加えて、典型的には、いずれの所定の治療の水溶液も、同一の化合物の乾燥製剤より化学的に安定性が低い。水溶液は、微生物のコンタミネーションを受けやすく、加熱、放射線、濾過または化学的手段による安定化を必要とする。さらに、保存料、安定化剤、抗酸化剤などの添加または低温状態での特別保管のいずれかによって、活性成分の化学分解または微生物分解を回避し、通常水性製剤の有効期間が向上するはずである。
【0013】
経皮的な薬剤の注入は、標準的な液状薬剤で行う必要はない。粉末薬剤が皮膚の外皮を貫通できる速度まで加速させるために圧縮ガス源を使用するパウダージェクトシステムを用いて、固形の薬剤は成功裏に投与される。典型的には、このようなシステムは、直径100ミクロン未満の粉砕された薬剤粒子を使用し、ヒトの組織を貫通するために数百メートル/秒の速度を要する。しかし、このシステムは、制御されたデリバリーや貫通の正確な深度などの独自の内在的な問題を有する。皮膚を貫通しない薬剤は身体に取り込まれないため、非経口注入においては治療化合物を正確に組織にデリバリーすることが重要であり、薬剤の中には、所定の期間内に筋肉組織に到達するか、皮下組織を経て血流に取り込まれなければならないものがある。粉末粒子の注入に使用される活性化手段は、プロパン、ガソリンまたは火薬などの圧縮ガスや爆薬を含んでよい。このような爆発性の手段は、投与装置に独自の内在的で潜在的な危険を与える。
【0014】
また、インプラントとしてより伝統的なデリバリーが存在し、治療化合物の固体ロッドまたは破片が、針を必要としないで比較的低速で皮膚に押し込まれることが示されている。
【0015】
特許文献1は、活性成分および医薬的に許容される生分解性担体を含む針状または棒状の形態の徐放性製剤を開示する。徐放性製剤は、中空の針を通して押し込むことによる注入または埋め込み(implantation)によって身体に投与されてもよい。
【0016】
特許文献2〜4は、無針の非経口導入装置、および、皮膚を貫通するには十分に構造的に完全な尖端部を有する固形針の形態の医薬を開示する。その針は、直径2mm未満、好適には直径0.2〜0.8mmであり、長さ10〜30mmである。
【0017】
特許文献5は、主に制御放出水溶性ガラス針の使い捨て注入装置に関する。しかし、この文献も、医薬を含む直径約1mm、長さ10mmのこれらのガラス針を先駆発射体として使用し、組織を貫通する低抵抗の経路を作り、それに沿って液体懸濁液(PFC懸濁液中の薬剤として例示する)が流動し得ることを認めている。この文献は、医薬を導入可能にするために溶解可能な先駆発射体を使用することを認める、最初で唯一の文献である。しかし、この文献は、溶解可能な先駆発射体が、他の形態の医薬を導入するための一般的手法として使用できることを認識できていない。
【0018】
特許文献6は、ガラス質発射体を装置から低速で発射して固形治療製剤をデリバリーする方法に関する。発射体は、発射体の後に単独で続く治療組成物を収容する通路を皮膚の中に形成する。
【0019】
特許文献7は、組織ダメージを可能な限り少なくするように、無傷の皮膚を貫通させることを可能とする形状および強度を有さなければならない針状体の形態の固形製剤組成物を開示する。このことを達成するために、物体は、斜め切りにより形成される尖端部を有する細長い形状である。強度は、ベースとなる基質としてゼラチンおよび結晶またはカラメルにした炭水化物を含む組成物によって得られる。事前の推進力を用いないで静的なスタートから物体が皮膚に押し込まれることを必須とするため、物体は最低限でも15,000 lbs/in(約100N/mm)の圧縮強度を有さなければならない。棒は典型的な直径0.85mmを有するため、約56ニュートンの破壊強度(粉砕強度)になるであろう。
【0020】
また、特許文献7は、(1)ポリマーおよび任意の充填剤を活性薬剤物質と混合すること、(2)活性薬剤を含む混合物をダイから押出して細長体を成形すること、(3)物体を乾燥すること、(4)尖端部を成形するため物体を切断すること、を含んでなる製剤の製造方法を開示する。
【0021】
特許文献8は、少なくとも1の治療薬および少なくとも0.5重量%の量の炭水化物バインダーを含んでなる非経口注入用の固形製剤組成物を記載し、この炭水化物バインダーは非結晶質マトリックスを形成する。非結晶薬剤の添加は任意である。特許文献8の出願人は、非結晶質マトリックスの使用により組成物が、典型的には少なくとも5ニュートン、好適には10〜40ニュートンの低い圧縮強度を有することを見出した。しかし、標準的な組成物の押出しは、空気が組成物に取り込まれやすいため、強度が組織を貫通するのに不十分となり、皮下注射用の針、トロカールまたは類似の手段によって注入しなければならない組成物となる。したがって、組成物の強度は射出成形によって与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】EP0139286(Sumitomo Chemical Co Limited)
【特許文献2】US5542920(Cherif Cheikh)
【特許文献3】US6117443(Cherif Cheikh)
【特許文献4】US6120786(Cherif Cheikh)
【特許文献5】US6102896(Roser)
【特許文献6】WO03/23773(Caretek Medical Limited)
【特許文献7】WO94/22423(Bukh Meditec A/S)
【特許文献8】WO00/62759(Novo Nordisk)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本出願人は、無針非経口投与用の改良された固形組成物のニーズがあることを知っている。具体的には、最小限の痛みとダメージで組成物が皮膚を貫通するのに必要な力に影響があるものが、組成物の形状(特に尖端部の形状)であることを、出願人は認識している。また、本出願人は、皮膚を突き刺す組成物として、製剤の速度と強度の組み合わせが、効率的な貫通のための最適デザインを与えることを見出した。実際に、皮膚を突き刺す前に組成物にある速度を与えることよって、組成物はより低い内在強度(inherent strength)を有することになる。これは、特許文献7と比較すると、皮膚を突き刺す前に組成物に与えられる速度がほとんどないか全くないため、非常に高い圧縮強度(約56ニュートン)を要求する。
【0024】
ワクチンの安定性は、ワクチン産業の中で最も大きな問題の1つである。大量のワクチンがコールドチェーンにおける分解のために毎年廃棄される。これらの問題は、特に開発途上国において深刻である。したがって、冷却を要しないワクチンの開発は、ワクチン産業への巨大な後押しとなるであろう。したがって、冷却を要しないワクチンの開発は、ワクチン産業への巨大な後押しとなるであろう。加えて、多くのワクチンは不安定なため、液体より安定な固形、典型的には凍結乾燥された粉末で保管されている。しかし、現在利用可能な固形であっても冷却を要する。現在、固形製剤中のワクチンは、針およびシリンジで注入する前に再調製する必要がある。もしワクチンが固形の剤型で生産および保管でき、同じ形態で投与もできれば、その後、再調製ステップの煩雑さがない、より安定な製剤の利益がある。再調製が追加される煩雑さに加えて、ワクチンだけではなく、水などの希釈剤の別のバイアルに必要なコストも加わる。
【0025】
また、多くのワクチンでは、単回投与後、および、主要投与とその後の(十分な免疫を得るために必要となり得る)1または2の「追加(boost)」投与によって、要求される免疫応答まで達しない。異なる抗原は異なる治療計画を有するが、典型的には、第1の追加注入は、主要投与から2〜4週間後に投与され、また、第2の追加は、さらに1〜6月後に与えられる。ワクチンの中には、持続的な保護が得られない患者が毎年ワクチン接種する必要があるものもあるであろう(例えば、インフルエンザ用ワクチン)。加えて、ワクチンの中には(例えば、インフルエンザ用)、適度な型に対する保護を確実にするために定期的に変化させる必要があるものがある(インフルエンザは年1回)。
【0026】
抗原と共にアジュバントを製剤に添加することにより、免疫応答が強化されうる。他のアジュバントは開発中であるか既に市販されているが、最も一般的なアジュバントは不溶性のalum(水酸化アルミニウム)である。
【0027】
皮膚が非常に免疫原性を示すことが証明されているため、皮内投与が行われると、免疫応答が強化されるはずである。このことは、より低い投与量の抗原の使用によって、必要な免疫応答を達成させる可能性を与える。針およびシリンジで真の皮内注入を行うことは非常に困難であり、そのため、通常、筋肉または皮下組織のいずれかに注入される。
【0028】
液体ジェットインジェクターは、集団ワクチン接種キャンペーンのために開発された。これらの技術は、液体製剤に伴うすべての問題を依然として有し、高価または複雑な動力源を必要とする傾向がある。以前、ワクチン接種の手順に起因した疾病のクロスコンタミネーションが患者に見られたときに、このタイプのシステムの信頼は失われた。
【0029】
パウダージェクトテクノロジー(現在、Pfizer所有)は、抗原またはパウダーにコーティングされた抗原のいずれかを含むパウダーを皮膚に対して撃ち込む。このシステムは、金担持粒子上にコーティングされたDNAワクチンのデリバリーに最も効果的であった。金粒子は真皮の細胞中にデリバリーするために十分小さく、細胞内投与によって免疫原性が強化されると考えられる。しかし、このシステムは、異なる皮膚タイプや身体の部位における、制御デリバリーや正確な貫通深度などの特有の内在的な問題を有する。粉末粒子を注入するために用いる力を与える手段には、ヘリウム、プロパン、ガソリンまたは火薬などの圧縮ガスおよび爆薬が含まれる。このような爆発性の手段は、投与装置に独自の内在的で潜在的な危険性を与える。また、これらの装置も複雑であり、そのため高価である。
【0030】
ワクチン産業は、少なくとも3の異なるエリア(先進工業国、開発途上国、バイオディフェンス)に分類することができる。
これら3つの各エリアは、表1に示すように特別なニーズおよびプライオリティーを有している。この表は、ワクチン産業の3つのエリアにおける、異なる特徴の相対的な重要性を示す。数字が大きい程、各領域にとってより重要な特徴である。
【0031】
【表1】

【0032】
先進工業国:先進工業国において、小児ワクチン接種が最も一般的なワクチン接種のタイプであるが、旅行ワクチンのための大きなマーケットも存在する。先進工業国における主要な問題は、コンプライアンスである。患者はワクチン接種が安全であると信じなければならず、より「患者に優しい」方法で投与できれば、より多くの人々がワクチン接種を受けるであろう。はしか、おたふく風邪および風疹の複合ワクチンの乳児期の接種が、その子供のうちの何人かに自閉症を引き起こす可能性が1998年にイギリスで報告された。この報告によって、多くの子供がワクチン接種を受けず、逆にイギリスにおいてはしかの発生が増加した。多くの新規ワクチンは開発中であり、これらはコスト的な制約により、当初は先進国においてのみ販売されるであろう。これらは、ヒトパピローマウイルス(HPV)などの感染症に対するワクチンを含む。
【0033】
開発途上国:開発途上国におけるワクチン接種プログラムの主要な問題は、(1)日常的に再使用されることからB型肝炎やHIVなどの血液感染性疾患の拡大を引き起こす針を回避すること、(2)冷却に依存しない、より安定なワクチンを得ること、である。周囲温度が高温になり、しばしば電気供給に信頼性がない一部の地域で物質を冷たいまま保持しなければならない場合以外は、先進国でコールドチェーンストレージを維持することは十分困難である。コールドチェーンストレージにおいて分解するため、ワクチンの50%を廃棄しなければならないことが報告されている。上記の2つの基準に加えて、開発途上国におけるワクチン接種プログラムはしばしはチャリティーによって資金を得ており、より多くの人々にワクチン接種が施されるように、低コストの技術のみが採用される。
【0034】
緊急用:2001年のアメリカにおけるテロ攻撃に続いて、米国政府は他の起こり得る攻撃に対する防御のためのワクチンの備蓄をはじめた。これには、炭疽菌や天然痘などのワクチンが含まれる。テロリストの脅威に加えて、インフルエンザなどの疾病のパンデミックの発生の脅威もある。現在、物質の限られた有効期間のため、炭疽菌や天然痘ワクチンの備蓄は、たとえ冷却されていても2〜3年ごとに取り換えなければならない。したがって、備蓄のための理想的なワクチンは、室温で何年も安定で、注入を行うための訓練を受けたヘルスケア従事者を緊急時に必要としないものであろう。備蓄ワクチンのデリバリーに理想的な技術は、流通が容易であり、好適には緊急時に非医療または非ヘルスケア担当者による使用が容易なものである。
【0035】
このような背景に対して、本出願人は現在利用可能な技術に代替する解決策を研究した。加えて、典型的には、現在の技術はワクチンマーケットの3つの主要エリアに求められる異なる要求を考慮に入れていない。そこで、本出願人は、3つの主要商業エリアにおける使用に適した溶液を供給して、現存技術の実質的にすべての問題を克服するワクチン製剤およびデリバリーシステムの供給を目指した。
【課題を解決するための手段】
【0036】
したがって、最も広範な側面において、本発明は、少なくとも1の尖端部を有し、少なくとも1の活性物質を含んでなる、装置から低速非経口注入する細長体に関し、細長体が5ニュートン以上の圧縮強度を有すること、および、尖端部が約10〜50°の夾角を有することを特徴とする。尖端部は、約10〜40°の夾角を有してもよい。
【0037】
他の側面において、製剤が1以上の抗原性物質(antigenic agent)または免疫原性物質(immunogenic agent)を含んでなる、無針非経口投与のための固形ワクチン製剤に本発明は関する。もう1つの方法で表現すると、固形製剤は細長体であり、装置からの低速非経口注入用であってもよい。活性は、とりわけワクチンであってもよい。固形製剤がワクチンを含む場合、「細長体」および「固形製剤」の用語は同じ意味で使用される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、非沈降ジフテリアトキソイドの第1および第2の追加投与後の抗−ジフテリアIgG価を示す。針および注射器による皮下投与、Glide SDI(商標)投与および再調製SDI(商標)固形製剤の皮下投与を比較した。透明な棒は第1の追加投与を表し、グレーの棒は第2の追加投与を表す。
【図2】図2は、非沈降ジフテリアトキソイドの第1および第2の追加投与後の抗−DTx中和抗体価を示す。針および注射器による皮下投与、Glide SDI(商標)投与および再調整SDI(商標)固形製剤の皮下投与を比較した。透明なボックスは第1の追加投与を表し、グレーのボックスは第2の追加投与を表す。
【図3】図3は、14週間にわたるELISAによって測定された抗−ジフテリア抗体価(沈降ジフテリアワクチンの主要投与の後、4週間目に追加投与)を示す。四角形の記号は、針および注射器による皮下投与を表す。三角形の記号は、Glide SDI(商標)による投与を表す。
【図4】図4は、IU/mlで較正された標準モルモット血清に対して表される沈降ジフテリアワクチンの投与後の抗−ジフテリア毒素中和抗体をIU/mlで示す。四角形の記号は、針および注射器による皮下投与を表す。三角形の記号は、Glide SDI(商標)による投与を表す。
【図5】図5は、針および注射器またはGlide SDI(商標)で投与したヘモフィルス・インフルエンザb型(Hib)ワクチンの第1の追加投与(レッドの棒)の2週間後、および、第2の追加投与(ブルーの棒)の2週間後の抗−PRP抗体価を示す。抗−PRP IgG価はlogスケールである。皮下についてのアームの力価10はアッセイの検出下限であり、測定可能な反応を示さない。
【発明を実施するための形態】
【0039】
抗原性物質または免疫原性物質は、動物の内部で免疫応答を誘導可能な作用物質である。このような作用物質に使用される他の用語は「抗原(antigen)」であり、これら2つの用語は、本明細書を通して代替可能であろう。「固形」という語は、物質の形状が堅固で安定であり、物質がその独自の形状を保持する場合に用いられる。具体的には、固形製剤は、固体ロッド、破片、棒または針の形状である。
【0040】
好適な態様において、固形製剤は少なくとも1の尖端部および5ニュートン以上の圧縮強度を有する。尖端部は、10〜50°の夾角を有してもよい。適当な製剤は、英国出願番号0703507.4(Glide Pharmaceutical Technologies Limited)に記載されており、その内容は参照により本明細書に含まれるものとする。
【0041】
理想的には、細長体は、無傷の皮膚の貫通を可能とさせる形状と固有強度を有する。
「圧縮強度」は、円周方向でなく、端から端まで縦方向に圧縮された際の物体の強度を指す。本出願人は、物体が皮膚を貫通するために十分な強度を有さなければならず、典型的には、この強度は5ニュートン以上を要することを見出した。しかし、5〜500ニュートンの圧縮強度は、物体の貫通を達成するのに適しており、好適な強度は5〜50ニュートンである。なお、さらに好適な強度は5〜50ニュートンであり、より好適には約10ニュートンである。あるいは、20〜50ニュートンの圧縮強度が好適であり、より好適な強度は約30ニュートンである。他の態様において、製剤は、1以上の抗原を含んでなる固形製剤と組み合わせた先駆発射体を含む。本態様において、先駆発射体は、後に続く固形製剤を提供する、先駆発射体とは独立した皮膚中の通路を作り出す。このような手順は、WO03/023773(Glide Pharmaceutical Technologies Limited)に記載され、その内容を参照により本明細書に含める。
【0042】
本発明の物体または固形製剤は、押すことによる慣性力(inertia)で提供され、低速で皮膚を突き刺す。この慣性力により、低圧縮強度で物質が提供され、所望の非経口部位への物体のデリバリーが改良される。速度は、好適には0.5〜50m/s、より好適には0.5〜20m/s、最適には0.5〜10m/sである。
【0043】
典型的には、物体は1の尖端部と非尖頭状の他の端を有する。例えば、物体は、1の平面状端と、標的組織の貫通を助ける1の尖端部を有してよい。別の態様において、物体は両端に尖頭部を有してよい。本出願人は、このような態様によって切断工程がより簡便になり、また、包装に特別な配置を要しないため、物体の包装が容易になり得ることを見出した。
【0044】
本出願人は、尖端部の構造(geometry)が、物体の貫通に要する力に影響することを見出した。つまり、端部の角度が急であるほど、標的組織に物体を押し込むのに必要な力が小さくなる。しかし、角度が鋭すぎれば、好適な尖端部を繰り返し製造することが難しくなる。したがって、好適な尖端部の夾角が20〜30°であり、約23°の角度が最適であることを見出した。夾角は、尖端部の収束面(convergent faces)に対する(例えば、円錐の直径と交差する)か、または、正方形の横断面またはくさび(wedge)で先端の収束面に対することにより挟まれた角度である。先端に異なる対向面が1組より多くある場合(例えば楕円断面)、または、先端が長方形断面で先細になる場合は、2の対向面による最小の角度となる。尖端部は、「のみ状」の中心先端(a central ‘chisel’tip)を含んでもよい。のみ状の先端は、約10〜50°または10〜40°の夾角を有してもよい。1の態様において、先端の傾斜切削の好適な角度は約23°であり、我々の定義に従って先端は46°の夾角を有するであろう。
【0045】
尖端部は、平面状、円錐状、部分回転楕円面状、くさび状または破砕状であってもよい先端を有する。先端は、鋭くとがった先を末端とするのが理想的であり、場合によって、先端のある程度の成形または鈍化が、製造工程として望ましいか必然的である。
【0046】
活性物質の化学構造および物体の製造に使用される方法に応じて、物体は、少なくとも部分的に結晶質、または少なくとも部分的に非結晶質またはガラス質である。
物体中の活性物質は、ペプチド、タンパク質、DNA、RNA小分子、標識分子、染料、抗原、ワクチンおよび全細胞ワクチンを含んでなる群から選択されてもよい。小分子は、天然物または合成品であってもよく、有機物または無機物であってもよい。標識分子は、放射性標識または化学標識を含む任意の適当な標識で蛍光標識されていてもよいことが理解されるであろう。このような標識分子も染料も、診断目的で使用してもよい。
【0047】
好適な態様において、活性物質は医薬的に活性な化合物であり、あらゆる種類の薬剤またはワクチンであってもよく、1以上の薬剤またはワクチンの組み合わせであってもよい。ワクチンなどの医薬的に活性な物質の中には、1の抗原または複数の抗原などが、アジュバントと複合化されるか、アジュバントに吸収されてもよい。
【0048】
具体的には、医薬的に活性な化合物は、内分泌学、腫瘍学、心臓病学、感染症、皮膚病学、産科学、婦人科学、呼吸器、免疫学、ホルモン欠乏症の治療、CNS疾患、救急医療、ワクチン接種、疼痛コントロールまたは糖尿病の分野の疾病治療において使用されてもよい。このような治療には、予防および予防的治療が含まれる。
【0049】
前記または各抗原は、物体の表面に吸着されるか、物体の一部として含まれてもよい。
さらに、固形製剤は1以上のアジュバントを含む。この態様において、前記または各抗原は、アジュバントと複合化されてもよく、アジュバントに吸収されてもよい。適当なアジュバントとして、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムが挙げられる。製品に加えられているか開発中の他のアジュバントとして、スクアレン、MF59(Novartis所有)、高分子ミクロスフェアおよびオイルが挙げられる。本発明の固形製剤は、1以上の投与量を同時に固形の剤型へ注入するために使用してもよい。あるいは、本発明は、1以上の製剤の同時注入を可能とする。このことから、すばやく溶解する製剤と、ゆっくり溶解する製剤またはパルス製剤との同時投与の機会が得られる。このようにして、主要および追加の両投与が同時に行われうる。該製剤として、即時放出製剤および/または制御放出製剤が挙げられる。該製剤として、持続放出製剤および/またはパルス放出製剤が挙げられる。
【0050】
抗原を何日も何週間も組織内で生存させる場合には、固形の剤型中のワクチンの安定性を増強することが重要である。1回の注入で患者を完全に免疫化する能力により、患者を1回のみ治療することによる時間とお金の節約だけではなく、患者が完全に免疫化されたことも確実にするであろう。
【0051】
アジュバントは、皮膚中で局部の「刺激」を引き起こすと考えられ、それにより、免疫応答が強化される。固形製剤は、皮膚中で局部刺激を容易に引き起こし、この効果は、最初の剤型の一部を成形する任意のアジュバントの含有に加えて使用することができる。つまり、糖ベースの製剤は最初のアジュバント効果を有してもよい。糖のすばやい溶解により、組織内で他のアジュバント粒子のより長い持続性および/または第2の刺激を引き起こす。それゆえ、固形製剤が十分なアジュバント効果を引き起こすことにより、アジュバント粒子を製剤に含有させる必要がなくなりうる。あるいは、固形製剤が十分なアジュバント効果引き起こすことにより、製剤に添加するアジュバント粒子の投与量は低減できる。製剤中におけるアジュバント粒子のレベルの減少により、アジュバントの費用を抑えることができ、より重要なことに、このような製剤が注入されるヒト、動物またはトリの体内への異物を減少させる。このことは、水酸化アルミニウムなどのアジュバントが組織内で溶解しないことからも重要である。また、固形の剤型によって、制御放出製剤の選択肢も与えられる。このように、時間をかけた抗原の遅い持続放出、および/または、注入後の所定時間の一部の抗原のパルス放出のいずれかによって、ワクチン接種の免疫原性を増加してもよい。パルス放出は、組織内の製剤(例えば、抗原を含有するすばやい溶解性の中心部の周りの遅い溶解性コーティング)によって自動的に達成され、外側のコーティングが溶解したときに抗原はボーラス投与(bolus)として放出される。あるいは、抗原のパルス放出は、抗原が放出されるべき時間に外的刺激によって行われてもよい。
【0052】
あるいは、固形製剤がすばやく溶解し、高濃度量の抗原を供給してもよい。高濃度であることは、ワクチン接種の免疫原性に影響するであろう。
固形の剤型中でワクチンを製造することは、多くの抗原が一緒に処方されうることを意味する。すでに、多価ワクチンは製造されているが、個々の抗原が互いに反応しないことを確実にするためにかなりの試験を要する。抗原が固体の状態で互いに極めて反応しにくいため、これは固体製剤で克服できる。
【0053】
固形製剤のさらなる利点は、最適な免疫応答が、針と注射器による注入の標的となる組織の標準的な部分で見られないかもしれないことである。すなわち、固形製剤によって、皮膚などの組織や部分に抗原が投与され、より高く、より効率的な免疫応答が生じる。すなわち、好適な態様において、製剤は、皮膚投与、皮内投与、経皮的投与、皮下投与または筋肉内投与に適している。
【0054】
その上、固形製剤のさらなる利点は、針および注射器製剤と比較した場合に、より低い抗原投与量で適切な免疫応答を達成し得ることである。すなわち、製剤は免疫応答を強化しうる。言い換えると、針および注射器を経由して投与される液体製剤と比較した場合に、ワクチン接種の効率の上昇が固形製剤に見られる。代わりに、または加えて、製剤の皮膚投与、皮内投与、経皮的投与、皮下投与または筋肉内投与によって、免疫応答が強化されうる。つまり、同じ投与量の抗原でより高い抗体力価が達成されるか、あるいは、より低い投与量の抗原が使用されるか、のいずれかである。このように、固形製剤は、投与量を節約する機会を与え、そしてワクチン原料の費用に影響を及ぼす。また、ワクチン原料のバッチからより多くの投与物が得られることも意味する。このことは、インフルエンザの発生におけるパンデミックなどの状況において、ワクチンの需要が供給可能量を超えた場合に特に重要である。
【0055】
各注入ごとの抗原をたった10パーセント削減するだけでコストが削減されるが、固形製剤のさらなる効率化によって、標準的な針および注射器での液体注入と比較して、75%、50%または25%の抗原しか要しないことになり得る。しかし、抗原投与量は、典型的には、ヒトおよび他の動物において投与量に対する線形の応答を示さない。したがって、デリバリーする製剤または方法によって免疫応答が強化されれば、針と注射器による注入と比較した場合、同じか強化された免疫応答を引き起こすために、針および注射器による投与に必要な抗原投与量のたった10分の1または100分の1、あるいは1000分の1しか要さないかもしれない。
【0056】
抗原投与量を削減できれば、標準的な針および注射器による液体注入に必要なアジュバントに対して、必要なアジュバントの投与量を75%、50%または25%に削減し得る。ただ、アジュバントが投与量に対する非線形応答(non-linear dose response)をもたらせば、針および注射器と同じ免疫応答を引き起こすために、アジュバントの投与量のたった10分の1または100分の1、あるいは1000分の1しか固形投与製剤は要しないかもしれない。
【0057】
当然のことながら、抗原は、死滅、弱毒化または複合化した微生物、不活性化毒性化合物、全長もしくはフラグメントのタンパク質または多糖類、DNAまたはRNAなどの任意の好適な形態であってもよい。また、抗原は、ビロソーム、ウイルス様粒子(VLP)、DNA複合体またはDNA非複合体、アデノ随伴ウイルス、アルファウイルスベクター、アデノウイルスベクターまたはポックスウイルスベクターであってもよい。
【0058】
ワクチンは、腫瘍学、感染症、免疫学、救急医療およびワクチン接種の分野における疾病の治療に用いてもよい。このような治療には、予防および予防的治療が含まれる。
活性物質または抗原の量は必要投与量により決定されるが、本発明の物体の0.1重量%〜99.9重量%、好適には0.1〜60重量%、最も好適には0.1〜35重量%の量の活性物質を含んでもよい。ワクチンの効果を改良するためにアジュバントが要望または必要とされ、本発明の物体の0.5重量%〜99.9重量%、好適には0.5〜60重量%、最も好適には0.5〜35重量%の量のアジュバントを含んでもよい。
【0059】
活性物質は、即時放出製剤および/または制御放出製剤を含んでもよく、またはその中に含まれてもよい。活性物質は、持続放出製剤および/またはパルス放出製剤を含んでもよく、またはその中に含まれてもよい。
【0060】
他の態様において、本発明の物体は、1以上の賦形剤をさらに含む。典型的には、賦形剤は活性物質の嵩を増すために必要とされ、同様に、投与に適した強固な投与型とするためのバインダーとしても作用する必要がある。場合によっては、活性物質はバインダーや増量剤として機能し、これは、本発明の物体が100%の活性物質を含んでもよいことを意味する。場合によっては、抗原はバインダーや増量剤として作用することができ、物体が100%の活性物質を含んでもよいことを意味する。低投与量の活性物質を要する場合は、高い比率の賦形剤を使用してもよい。理想的には、任意の賦形剤は、医薬的用途、特に非経口投与のためにGRAS(Generally Regarded As Safe:一般的に安全と認められる)登録されている。
【0061】
種々の賦形剤を使用できるが、異なる賦形剤は異なる物理的性質を有し、異なる方法でバインダーとして作用する。典型的には、錠剤で使用される賦形剤がたいてい最適なバインダーであるが、可能であれば、すでに非経口医薬品で使用されている賦形剤を選択する。活性を体循環に即時放出する賦形剤を選択してもよく、持続または制御放出する賦形剤を選択してもよい。即時放出が必要な場合、水溶性の高い賦形剤(例えば、糖、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG))を使用してもよい。一方、活性物質の持続または制御放出が望ましい場合、生分解性高分子などの物質を賦形剤として使用してもよい。「制御放出」との用語は、活性物質の放出が徐放性、パルス放出、または徐放性と速放性のミックスなどである製剤を意味する。この製剤は、予防または予防的に使用、あるいは治療的にも使用され得る。
【0062】
また、活性物質の崩壊を助けるため、崩壊剤を所望により追加する。例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはPVPまたはクロスポビドン(CPVP)を始めとするセルロースなどの水溶性崩壊剤を使用し得る。
【0063】
製剤に物理的強度を与えるのと同様に、賦形剤が活性物質または抗原によって要求される化学安定性を付与するために賦形剤が必要とされるかもしれない。この賦形剤によって、室温またはコールドチェーンストレージに要求されるよりも高い温度での最終投与形態の保管が可能になり得る。また、これらの賦形剤は、有効期間を延長し、および/または、最終形態が無菌であることを確実にするために、電離放射線または他の滅菌形態などの工程を経て活性物質または抗原を保護してもよい。安定化剤の例として、トレハロース(trahalose)、ヒスタジン(histadine)、クエン酸塩、乳酸塩、アミノ酸、ポリエーテルおよびエデト酸2ナトリウムが挙げられる。典型的には、薬剤およびワクチンは、固形の剤型で保管された場合により安定であり、現在の多くの薬剤やワクチンは凍結乾燥粉末として保管され、針および注射器による注入の前に再調製される。抗原性物質または免疫原性物質は、固形製剤に製剤化される前に凍結乾燥する必要があるかもしれないが、それは、その後投与される固形製剤そのものである。再調製を必要とせず、固形製剤は、ワクチンにより長い有効期間を与える。凍結乾燥粉末および安定性をさらに考慮すると、粉末は比較的大きい表面積を有する。一方、本発明の固形製剤は空気に対する表面積が粉末よりも小さいため、改良された安定性および有効期間を示すはずである。
【0064】
したがって、賦形剤は、増量剤、抗酸化剤(ビタミンCおよびメタ重亜硫酸塩など)、崩壊剤、バインダー、生分解性高分子、塩およびバッファー、湿潤剤(ポロキサマーおよびポリビニルアルコール(PVA)など)、アジュバントおよび安定化剤を含んでなる群から選択されてもよい。
【0065】
賦形剤として使用できる典型的な物質として、マンニトール、ラクトース、ソルビトール、スクロース、フルクトース、トレハロース、ラフィノース、マルトース、グルコース、デキストロース、デキストラン、シクロデキストリン、マルトデキストリンおよびアルギン酸ナトリウムなどの糖および炭水化物が挙げられる。これらの物質のいくつかは、活性物質に応じて、バインダーおよび/または増量剤および/または安定化剤として作用してよい。典型的には、糖ベースの製剤によって、非常に速く溶解する製剤が得られる。ソルビトールはバインダーおよび充填剤/増量剤の両方として作用する好適な賦形剤であり、非経口投与用に認可される。他の増量剤はアルカリ金属塩でもよく、ナトリウムまたはマグネシウムの乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩およびグルコン酸塩が挙げられる。他のバインダーはPVPでもよい。また、アルギン酸ナトリウムは賦形剤として使用され、強固な製剤が得られる。したがって、賦形剤はアルギン酸ナトリウムでもよい。
【0066】
製品の有効期間を延長し、冷却を回避するために安定化剤を添加してもよい。また、薬剤/ワクチンを滅菌中の電離放射線から保護するために安定化剤を添加してもよい。物体は、各機能を達成する1つの安定化賦形剤を含んでもよく、機能の各々をそれぞれが達成する複数の安定化賦形剤を含んでもよい。
【0067】
好適な塩およびバッファーとして、クエン酸およびクエン酸ナトリウム、酒石酸および酒石酸ナトリウム、乳酸および乳酸ナトリウム、ならびにマレイン酸およびマレイン酸ナトリウムが挙げられる。
【0068】
使用できる他の物質として、ポリエチレングリコールなどのポリエーテルが挙げられ、、ポリエーテルはすばやく溶解する製剤に特に好適である。当然のことながら、1000kDaより小さい分子量の場合は化合物が室温で液体であるため、ポリエーテルは、1000kDaより大きい分子量を有するはずである。
【0069】
活性物質をゆっくり溶解させて体循環させることが必要な場合、生分解性高分子材料を添加してもよい。ポリラクチド−co−グリコリド(PLG)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)、ポリカプロラクトン、ポリ酸無水物およびポリオルトエステルなどの高分子が、すばやく溶解する基質でマイクロスフェアとして添加されてもよい。あるいは、製剤の主な増量剤またはバインダーとして、高分子を使用してもよい。
【0070】
また、すばやく溶解する製剤をゆっくり溶解する材料で被覆し、本発明の物体の投与の何時間、何日、何週間か後にすばやく溶解する製剤中の活性物質を放出して標的組織へ体循環させることも望ましい。
【0071】
好適には、活性物質は、本発明の物体の全体にわたって均一に分散される。しかし、本発明の物体は、物体の細長い部分にある活性物質を不活性な尖端部または先端と共に有してもよい。このような態様において、任意の好適な手段で活性物質を物体中の不活性物質から分離させてもよい。
【0072】
あるいは、本発明の物体がキャリアとして作用するように、本発明の物体の外側に抗原を噴霧してもよい。好適には、抗原は物体の全体にわたって均一に分散される。しかし、本発明の物体は、物体の細長い部分にある抗原を不活性な尖端部または先端と共に有してもよい。このような態様において、任意の好適な手段で抗原を物体中の不活性物質から分離させてもよい。
【0073】
細長体は約0.5mm〜3mmの直径を有することが好ましく、理想的な直径は約0.6mm〜1.5mmである。本発明の物体は、数ミリメートルから約15mmまでの長さを有してもよいが、2〜8mmの長さが好適である。
【0074】
当然のことながら、物体は、卵形、三角形、円形、長円形(2つの平行な辺と2つの半円形の末端を有する閉じられた図形)、長方形および多角形を始めとする、任意の好適な断面形状を有してもよい。
【0075】
別の側面において、本発明は、細長体を製造する方法の発明に関する。本発明の方法は、(1)乾燥材料である少なくとも1の活性物質および任意の賦形剤を流体と混合してペーストを作成すること、(2)ペーストを成形すること、(3)夾角が約10〜50°の少なくとも1の尖端部を有する形状にペーストを切断すること、を含み、切断工程の前後いずれかにペーストを乾燥させることをさらに含む。
【0076】
具体的には、本発明の方法は、(1)乾燥材料である少なくとも1の活性物質および任意の賦形剤を流体と混合してペーストを作成すること、(2)ペーストを成形すること、(3)ペーストを乾燥させること、(4)夾角が約10〜50°の少なくとも1の尖端部を有する形状にペーストを切断すること、を含む。
【0077】
本方法は、(1)乾燥材料として少なくとも1の活性物質および任意の賦形剤を流体と混合し、ペーストを作成すること、(2)ペーストを成形すること、(3)夾角が約10〜50°の少なくとも1の尖端部を有する形状にペーストを切断すること、(4)ペーストを乾燥させること、を含んでもよい。
【0078】
夾角は、約10〜40°であってもよい。
1つの態様において、任意の賦形剤を混合して乾燥均一混合物にした後に、活性物質および流体に添加してもよい。あるいは、一部または全部の活性物質および一部または全部の1以上の賦形剤を流体に添加した後に、残りの乾燥材料と混合してもよい。活性物質を流体に添加する1つの利点は、製剤中で、活性物質を非常に良好に混合できることである。さらにもう1つの代替として、一部または全部の1以上の賦形剤を流体に添加した後に、活性物質および任意の残りの乾燥材料と混合してもよい。
【0079】
さらなる態様において、活性物質を十分に少量の流体中に溶解または添加できない場合、流体への添加の前に活性物質および任意の賦形剤の乾燥混合物を調製してもよい。理想的には、この態様において、活性物質をほぼ等しい量の賦形剤と混合し、全体にわたって混合した後に他の同量の賦形剤を添加し、すべての賦形剤を使用するまで混合する。好適には、少量の賦形剤を添加して良好な混合を確実にする。均一な混合物を作成してから、好適には、流体を乾燥材料に添加し、残りの混合物を形成する。
【0080】
この工程のもう1つの利点は、方法を室温以下で行うことができることである。たとえ短時間の昇温であっても、タンパク質およびペプチドの分解を引き起こし得るため、4℃より高い温度、好適には周囲温度が有利であり、最適な温度は18℃〜22℃である。
【0081】
本出願人は、流体の乾燥材料への添加により混合物が滑らかになることで成形がより簡便で確実になり、このプロセスによる生産量が大きく増加することを見出した。流体は、本質的には造粒流体であり、乾燥材料を粒状にする。好適な造粒流体は水であるが、製剤に損傷を与えず、製剤の乾燥を可能とする任意の他の流体(すなわち、オイル以外)を使用できる。造粒流体は、好適にはスラリーであり、アルコール、溶媒または他の緩衝液であってもよい。この場合、緩衝液は、塩または化学物質を含む溶液である。典型的には、この塩または化学物質は、活性物質を安定化するよう作用する。
【0082】
このプロセスの重要な点は、成形した材料が乾きすぎ(滑らかな外観よりむしろ「シャークスキン」を有する)または湿りすぎ(自らの重量で形状を保持できない)にならないような、乾燥材料に対する造粒流体の添加量である。したがって、好適には10〜30%(体積/重量)以下の量で流体を乾燥材料に添加し、理想的には約15%(体積/重量)の乾燥材料を添加する。
【0083】
粒径は、製剤の強度に変化をもたらし得る。少なくとも1の活性物質および/または任意の賦形剤は、粒子の形態であってもよい。粒子は標準または均一な大きさ、例えば、標準もしくは均一な直径または最長寸法であってもよい。このような標準化された粒子は、本発明の細長体にさらに良好な強度を付与し得る。
【0084】
別の態様において、本発明の方法は、乾燥材料を粉砕することをさらに含む。
直径0.1〜1000μmの粒径が有利であるが、粒径が直径500μm未満が好適であり、直径300μm未満の粒径がさらに好適である。
【0085】
したがって、本発明の方法は、粒子の形態の活性物質/賦形剤から始めること、または、活性物質/賦形剤を粒子に粉砕することのいずれかを含む。
場合によっては、より高温で物体を成形することが望ましいであろう。したがって、本発明の方法は、ペーストを成形する前後いずれかに、軟化または溶解させることをさらに含んでもよい。このようにペーストの温度を上昇させると、少なくとも1の賦形剤または活性物質が軟化または溶解し、冷えるときに固まってバインダーとして作用する。ペーストの温度を上昇させることの欠点は、活性物質が必然的に加熱されて、活性物質の一部分解を引き起こすかもしれないことである。加えて、材料を部分的に溶解させる前に固体を完全に混合する必要があるため、均一な混合物がより得られにくくなるか、融解または部分的に溶解した形態で材料を混合するため、より長時間、材料を高温に保つことが必要になる。
【0086】
しかし、場合によっては温度を上昇させて混合物を軟化または溶解させることが望ましく、むしろ好適であることを本出願人は見出した。軟化または溶解した材料は、さらに成形するためにペースト状である。したがって、さらに他の態様において、本発明は、(1)乾燥材料である少なくとも1の活性物質および任意の賦形剤を流体と混合して乾燥混合物を作成すること、(2)混合物を軟化または溶解させること、(3)混合物を成形すること、(4)混合物を冷却すること、(5)任意に、夾角が約10〜50°の少なくとも1の尖端部を有する形状に混合物を切断すること、を含んでなる、本発明の細長体の製造方法にも関する。夾角は約10〜40°であってもよい。
【0087】
この方法は、混合物が1以上の炭水化物またはポリエーテルを賦形剤として含む場合に特に好適である。好適には、賦形剤は1以上のポリエーテルである
本発明の方法は、好適には30℃〜150℃の温度で、より好適には40℃〜100℃の範囲で行われる。温度の選択は、活性物質および任意の賦形剤の性質に部分的に依存するが、より低温が望ましく、それによって、1以上の活性物質のいかなる損傷や分解が抑制される。
【0088】
いずれかの方法でも、押出し、打錠または射出成形によってペーストまたは乾燥混合物を成形してもよい。理想的には、ペーストまたは乾燥混合物はダイを通す押出しによって成形される。
【0089】
しかし、押出しには難点や欠点があり、ダイのデザインも重要である。強力な薬剤を扱う際の小スケールの製剤作業や、商業規模であってもバッチの大きさが小さい場合、スクリュー押出機よりラム押出機を使用することがより効率的であることを本出願人は見出した。具体的には、スクリュー押出機によって、比較的大量の原料がスクリューの中で無駄になることが明らかになっている。したがって、高収量を得るにはラム押出機が好適である。
【0090】
押出しを補助するために、ダイ自体を加熱して、押出しの前に混合物の全量をダイの中で同じ物理的形状にしてもよい。あるいは、押出し工程の間、加熱部をダイの出口に近接させて、押出の中心部に影響を与えることなく混合物の外側の原料を溶解させるか柔軟にさせてもよい。
【0091】
押出後の長さの原料は、ドラッグデリバリーシステムによる投与の前に切断する必要がある。この切断は、ブレード(加熱または冷却)、超音波、レーザーまたはウォータージェットを始めとする異なる工程の範囲で行うことができる。したがって、ペーストは、ブレード、超音波、レーザーおよびウォータージェットからなる群から選択される切断手段を用いて切断してもよい。切断手段は、熱くても冷たくてもよく、例えば、レーザーは熱いことが多い。切断手段は、加熱されていても、室温または周囲温度でもよい。
【0092】
押出成形物がまだ柔らかい間に、例えばブレードを用いてペーストを切断できる。押出成形物が乾燥し、固体であるときは、例えば加熱したブレードを用いてペーストを切断できる。
【0093】
用いる切断工程によって、押出成形物に適した状態が決定されるであろう。ブレードで押出成形物を切断することが有利である。鋭く冷たいナイフを使用する場合は、好ましくは、押出成形物がまだ柔らかい間に切断する。ブレードは、ギロチンまたは回転ブレードなどでもよい。加熱したブレードを使用する場合、押出成形物が乾燥し、固体であるときも有利に切断されるが、柔らかいペースト状のときも押出成形物を切断するのに用いることができる。また、ギロチンまたは回転ブレードが使用できるが、加熱ブレードの切断によって、切断面の周りの物質が溶解するか柔軟になる。
【0094】
典型的には、超音波カッターは柔らかい材料に使用され、レーザーは柔らかい材料または硬い材料のいずれにも使用することができる。
押出しに代わる製造法がある。1つ目は、標準的な打錠工程である。打錠の主な欠点は、タブレットプレスに均一に材料を詰めた後に、道具を傷つけることなく材料の均一な圧縮を達成することである。また、この工程を用いた場合、一方の端に先端を有するタブレットの製造も困難であり、先端を別工程で切断しなければならないかもしれない。
【0095】
加熱溶解工程を使用した場合、別の工程は、標準的な射出成形法を用いて所望の材料を成形することである。この場合、個々の物体に尖端部を成形してもよく、より長い物体を成形した後に個々の物体を大きさおよび形状に切断できる。
【0096】
また、さらなる態様において、本発明の方法は、1以上の崩壊剤または制御放出剤を活性物質または乾燥混合物に添加することをさらに含む。
なお、さらなる代替において、本発明の物体は、不活性な尖端部と、活性物質を含んでなる物体の細長い部分とを有してもよい。したがって、尖端部が成形され、それとは別に、少なくとも1の活性物質を含んでなる物体のその後の断片が、成形、打錠、押出し、噴霧乾燥されるか、任意の他の標準的な製造工程を使用してもよい。
【0097】
いずれか方法によって作られた場合の本発明の製剤または本発明の物体は、好適には、キャップ、カートリッジ、カルーセルまたはカセットなどの包装を備える。標準的な包装が使用可能であるが、WO2004/014468に記載された包装で包装することが有利であり、そのすべての内容は本明細書に含まれるものとする。
【0098】
具体的には、包装は、(a)そこを通るチャンネルを有するケース(ドライブピンまたは他のエレメントが配置される)と、(b)本発明の製剤または物体と、を含む。製剤または物体は、ドライブピンに対する末端を有している。ケースは、(1)パッケージ化されたワクチンを、好適なデリバリー装置に対してスライド可能に成形する部位と、(2)皮膚に接触させて張力をかけるのに適した末端と、を含む。
【0099】
以下の記載において、「パッケージ化されたワクチン」との用語は、「パッケージ化された薬剤」を意味するとすることができ、逆もまた同様である。好適には、パッケージ化されたワクチンまたは薬剤は、使い捨ての末端キャップ、カートリッジ、カセットまたはカルーセルの形態をとり、単回または複数回投与量のワクチンを含む。
【0100】
有利には、スライド可能な方法でパッケージ化されたワクチンまたは薬剤をデリバリー装置へ接触させる部位は、その部位を装置に確実に固定する手段を追加的に含み、ケースは装置の中でスライドできるが、重力では脱落しない。この手段は、装置に対する摩擦力を生じるバネ付きのピンおよび栓であってもよく、または、パッケージ化されたワクチンまたは薬剤を特定の方向に挿入して回し、受け入れ可能な位置に戻されない限り、除去されない機構であってもよい。
【0101】
1つの態様において、ドライブピンまたはエレメントは、主要な物体から伸長する、柔軟または壊れやすい複数のアームを有してもよい。ケース上の傾斜した表面に乗せたときに外側に伸びる(外に広がる)これらのアームは、柔軟性または壊れやすさの結果、物体から遠ざけられ、ケース上の縁に乗せられる。アームが壊れやすい場合は、ショルダー部位に形成された脆弱部分および傾斜部位の空洞にある脆弱部分のために、アームがボキッと折れるであろう。壊れやすいシステムは、2つの利点を有する。1つ目は、確実にフル注入を行うことであり、2つ目は、パッケージ化されたワクチンまたは薬剤の再利用を回避できることである。傾斜は、好適には円形デザインであり、円錐台形表面の形態をとる。これにより、容易に成形でき、接触のためにアームを配向させることを要しないという利点がある。
【0102】
例えば、湿気、酸素、光、バクテリアまたは他のワクチンもしくは薬剤の侵入、あるいは、薬剤の分解またはコンタミネーションを回避するために、パッケージ化されたワクチンまたは薬剤をホイルの小袋または同様のものに密封することができる。
【0103】
好適には、皮膚に接触させて張力をかけるのに適した包装の先端が1以上のチャンネルの出口部分を含み、最適には、アニュラリングの形態であって、このような配置が最も効果的に皮膚に張力をかける。
【0104】
有利には、保持システムを採用して、本発明の製剤または物体をチャンネルの所定の位置で保持することができる。これは、例えば、多くの小さいスプライン(spline)または他の外面の特徴を有するように、物体を押し出すか成形することによって達成できる。ワクチンまたは薬剤の投与を妨げることなく、これらのスプラインまたは他の特徴は摩擦による適合(frictional fit)をもたらすはずである。あるいは、包装のチャンネルは、製剤または物体を押すことができる保持バンプ(retaining bump)または他の発射体などの小さな特徴を有してもよい。
【0105】
開封明示シールもしくは使用明示シールまたは他の表示手段をパッケージ化されたワクチンまたは薬剤の上部にさらに配置してもよく、それにより、パッケージ化されたワクチンまたは薬剤に手を加えられていないことおよび/または使用済みであることが使用者に明らかになる。
【0106】
追加的または代替的に、パッケージ化されたワクチンまたは薬剤のチャンネルの出口上に、シールを配置してもよい。ワクチンまたは薬剤の投与前にこのシールを取り除くことが好ましいが、理想的には、投与の間、シールが誤って包装に残された場合にも、シールを介して投与できるようにシールをデザインすべきである。
【0107】
また、好適なデリバリー装置は、英国出願番号0703507.4およびWO03/023773、またWO2004/014468およびWO2006/082439にも記載されており、その内容は参照により本明細書に含まれるものとする。好適な固形治療製剤は、Glide SDF(商標)(Solid Dose Injector)として知られている無針装置から低速で発射される。
【0108】
Glide SDI(商標)は、固形の剤型中に抗原または薬剤を経皮的に注入し、針を要しない。この技術は、ワクチンまたは薬剤を含む、小さい、シングルユースの、使い捨てカセット、および、再利用できるバネ式の作動装置を含む。
【0109】
Glide SDI(商標)は、ワクチンまたは薬剤の製剤を運搬する、小さい、低コストの、使い捨てカセットを含み、カセットは1度使用され、その後廃棄される。作動装置は、何百回も使用することができ、バネ式である。Glide SDI(商標)のワクチンまたは薬剤は、固形の剤型で保管できるため、標準的な液体ワクチンまたは薬剤よりも安定であることが期待される。このことは、有効期間の延長の可能性、さらには、コールドチェーンストレージの回避の可能性を提供する。Glide SDI(商標)は非常に簡便に使用でき、使用に訓練を受けたヘルスケア従事者を必要としない。このことは、パンデミックまたはテロ攻撃の場合に特に重要である。針恐怖症は、開発途上国において主要な問題ではなく、パンデミックの場合にも問題になりそうにない。針を好む人々は非常に少ないため、無針システムは、先進諸国、特に子供の中で、コンプライアンス率を助けるであろう。Glide SDI(商標)は、皮膚にピンポイントマークをつけるが、針および注射器による注入の後も同様に残るため、悪い効果をもたらさない。Glide SDI(商標)は針を要しないため、針刺しによる損傷、針の再利用およびクロスコンタミネーションに伴う危険がない。Glide SDI(商標)は、ワクチンまたは薬剤の製剤を運搬する小さく軽い、使い捨てカセットを有するため、かかるワクチンまたは薬剤は、ガラスバイアル中の液体ワクチンまたは薬剤よりも運搬がより簡便かつ軽量であるため、すばやく流通するであろう。このことは、緊急時、テロ攻撃またはパンデミックの発生時に特に重要である。
【0110】
このように、本発明は、主要な特徴である、費用、安定性、使いやすさ、針恐怖症、有害作用、クロスコンタミネーションおよびすばやい流通に対処する。同様に、ワクチン産業における3つのエリアすべてにおける使用に適し、また、家庭環境または医療の場の両方における薬剤の注入に適する、という解決法を本発明は提供するものである。
【0111】
Glide SDI(商標)は、ワクチンおよび薬剤を経皮的に注入する。したがって、抗原または薬剤を、筋肉または皮下組織に注入できる。あるいは、特にワクチンの場合には、一部の抗原を真皮に残して、皮膚の免疫学的特性の有効利用を行う。このことは、皮膚と平行に固形投与量を注入することにより(注入前に、皮膚をひとつまみすることにより)、および/または、製剤の深さ(level)の後ろ側の端(trailing end)を皮膚表面に残すことにより、達成し得る。
【0112】
Glide SDI(商標)は、固形の剤型中のワクチンを注入して、ミョウバン、金粒子またはPLGA粒子などのアジュバントを製剤に使用することを容易にする。アジュバント粒子を針および注射器を用いて注入する必要がある場合、針の詰まりを回避するため、粒子の大きさに制限がある。
【0113】
したがって、さらに他の側面において、本発明は、上記のパッケージ化されたワクチンまたは薬剤を含んでなるドラッグデリバリー装置に関する。任意の好適なドラッグデリバリー装置が使用され得るが、WO2004/014468に規定および記載された装置が好適であり、その内容は参照により本明細書に含まれるものとする。この装置は、(1)ケースと、(2)ヒト、動物またはトリの体内に包装から製剤を押し出し得る力を発生させる手段と、(3)ヒト、動物またはトリの体内に包装から製剤を押し出すための力を伝達する手段と、(4)装置を始動させるための手段と、を含む。
【0114】
この装置は、本発明のパッケージ化されたワクチンまたは薬剤を収容する手段、および、装置を準備する手段をさらに含んでなる再利用可能な装置であってもよい。
あるいは、パッケージ化されたワクチンまたは薬剤が、装置の不可欠な部分であり得る場合、装置はシングルユース装置であってもよい。この装置として、単に始動を要するだけの予め調整された(pre-primed)形態、または、調整を要する形態を提供することができる。
【0115】
好適な態様において、パッケージ化されたワクチンまたは薬剤を挿入し、パッケージ化されたワクチンまたは薬剤の皮膚の引っ張り末端を固体対象に対して押し出すだけで、装置を作動させてもよい。装置の先端を皮膚に対して押し出すことによる、装置の調整および作動により、ワクチンまたは薬剤のデリバリーで、皮膚に確実および均一に接触させ、張力をかけることが可能となる。加えて、装置を設定することにより、作動に要する力は、例えば、10〜30ニュートンからであり、患者に対して力が大きすぎれば、張力がかかった皮膚に対して物体を誤って強く押さずに装置を作動できないため、有意な安全性が得られる。
【0116】
バネおよびキャップを配置することによって、バネの張力を変動させ、作動力を調整することができる。装置のバレルの上部でさらにキャップをねじって閉めることによりバネに張力がかかり、ねじって開けることにより力を低減できる。あるいは、主要な動力源としてコイルバネの代わりに、装置に任意の他のタイプの機械バネまたはガススプリングを加えることができる。別の態様においては、製造の間にバネに予め張力をかけ、ワクチンまたは薬剤の投与の際にバネに張力をかけなければならないことを回避する。上記したように、パッケージ化されたワクチンまたは薬剤が装置の不可欠な部分に極めてなりそうな場合、結果としてシングルユース装置になるであろう。
【0117】
製剤の投与の間の装置中のインパクトハンマーの速度は、50m/s未満であり、より好適には20m/s未満、さらに好適には10m/s未満である。当業者であれば、実際の速度がインパクトハンマーの大きさで変動し、製剤に衝撃が伝わることを理解できるであろう。結果として、(弾丸が銃身から出る場合のような)発射の動作よりむしろ、パッケージ化されたワクチンまたは薬剤の先端から押し出す動作によって物体をデリバリーする。
【0118】
正しい力がかかると装置が自動的に作動するように、ハンマーはある形状のショルダー部位を備えていてよく、それは、装置の上部バレルと下部のバレルの隔壁の対応する形状の表面に係合する。実質的に円錐台形部位が完全に接触した場合のみ、この装置は作動するであろう。これは、投与ごとに主要なバネに同時に張力がかかり、円錐台形部位が接触する前に投与を中止した場合、装置を準備することなく、パッケージ化されたワクチンまたは薬剤を安全に取り外すことができる。
【0119】
装置中のパッケージ化されたワクチンまたは薬剤がピストンに対して作用し、バネに張力がかかるため、好適な態様において、パッケージ化されたワクチンまたは薬剤が装置に加えられるまで装置は準備できない。このことにより、装置は特に安全になる。また、ロードされるまで装置が作動できないことを意味し、注入されると信じるオペレーターは装置を使用できない。
【0120】
再利用可能な装置の場合、各投与の最後に、非軸対称性の配列位置にインパクトハンマーを戻すために旋回バネを用いることができる。
さらに、システムの再利用可能な部品(そのパッケージ化されたワクチンまたは薬剤を除くすべての部品)は、ワクチン投与で標的組織に接触しないため、無菌にする必要がない。
【0121】
バネとは別のすべての部品は、好適には、装置を安価に製造するよう成形される。限られた数の部品とそれらの組み立て易さにより、製造費用を最小限に抑えることができる。
別の側面から、本発明は、病原体または腫瘍細胞の感染を治療するための医薬の製造における、上記固形投与量製剤の使用を含む。
【0122】
あるいは、本発明は、1以上の抗原、抗原性物質または免疫原性物質に対する免疫応答を強化するための医薬の製造における、上記固形投与量製剤の使用を含む。
理想的には、医薬の使用は予防的であり、感染の可能性を低くする。あるいは、当該使用は、感染後の治療であってもよい。
【0123】
好適な態様において、医薬は、皮膚投与、皮内投与、経皮的投与、皮下投与または筋肉内投与のためのものである。
理想的には、製剤は、1以上の抗原の免疫原性を強化する。あるいは、皮膚投与、皮内投与、経皮的投与、皮下投与または筋肉内投与によって、1以上の抗原の免疫原性が強化される。
【0124】
さらに別の側面において、本発明は、病原体または腫瘍細胞の感染に対する、哺乳類または鳥類などの脊椎動物のワクチン接種方法に関する。当該方法は、1以上の抗原性物質または免疫原性物質を含んでなる、免疫原性的または抗原的に有効量の固形製剤を投与することを含む。
【0125】
他にも、本発明は、脊椎動物において、抗原性物質または免疫原性物質から強化された免疫応答を誘発する方法に関し、当該方法は、有効量の1以上の抗原性物質または免疫原性物質を含む固形ワクチン組成物の皮膚投与、皮内投与、経皮的投与、皮下投与または筋肉内投与を含んでなる。
【0126】
上記したように、抗原性物質または免疫原性物質の有効量は、針および注射器による液体製剤の注入に要する投与量の75重量%、50重量%または25重量となり得る。言い換えると、有効量の抗原性物質または免疫原性物質は、針および注射器による液体製剤の注入に要する投与量の10分の1、100分の1または1000分の1しか要さないかもしれない。
【0127】
また、固形製剤中の抗原性物質または免疫原性物質の削減により、製剤に必要なアジュバントの量においても同等の削減がもたらされる。固形製剤そのものが皮膚中でアジュバントとして作用し得るため、固形製剤に添加するアジュバント粒子の投与量をさらに低減できる。
【0128】
もう1つの角度から、本発明は、固形製剤中の1以上の抗原を投与することを含んでなる、ワクチン製剤中の1以上の抗原に対する直接または事後の免疫的応答を強化する方法に関する。
【0129】
あるいは、本発明は、固形製剤中の有効量の1以上の抗原を、哺乳類または鳥類などの脊椎動物の皮膚、皮下層または筋肉を通して投与することを含んでなる、1以上の抗原の免疫原性を強化する方法に関する。
【0130】
さらに他には、本発明の方法は、哺乳類または鳥類などの脊椎動物に抗原の固形製剤を接触させることを含んでなる、脊椎動物における高効率の抗原提示を促進する方法を含む。
【0131】
固形組成物または製剤は、上記したように製剤中で調製すると有利である。
理想的には、本発明の製剤は、皮膚投与、皮内投与、経皮的投与、皮下投与または筋肉内投与される。本出願人は、皮膚表面と平行な面での製剤の投与が効率的であることを見出した。
【0132】
無針デリバリーシステム法による投与が有利である。好適には、当該デリバリーシステムは、低速で押す力を用いて製剤を投与する。速度は、50m/s未満、好適には20m/s未満、より好適には10m/s未満であってよい。
【0133】
本発明の側面を、非限定的な実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0134】
実施例1
以下のデータにより、本発明の固形製剤が、標準的な針と注射器による注入よりも安定して確実な免疫応答を引き起こすことが示される。
【0135】
何のアジュバントも含まない標準的なジフテリアワクチンを、Glide SDI(商標)によるデリバリーに適したものに製剤化した。2Lf/投与量の製剤を、モルモットモデルに使用した。これらの固形製剤の賦形剤としてソルビトールを使用した。以下の群を比較した。
1.標準的な針および注射器
2.Glide SDI(商標)
3.再調製され、針と注射器を通して注入されたGlide SDI(商標)製剤
動物に主要注入と4週間後および8週間後の追加注入を行った。図1に示すように、各追加投与の2週間後に、血液サンプルに抗−ジフテリア抗体力価が生じた。抗−ジフテリアIgG ELISAの結果を、標準モルモット血清(IU/mlで較正)に対する抗−ジフテリアIgG抗体(1ml中の国際単位(IU/ml))として表した。検出限界=0.001IU/ml。
【0136】
機能毒素中和抗体の測定を、ベロ細胞アッセイを使用して行った。標準モルモット血清(IU/mlで較正)に対する抗−ジフテリア毒素中和抗体(IU/ml)として表した結果を図2に示した。検出限界=0.0075IU/ml。
【0137】
この動物モデルの反応が本研究で最大化された場合も考えられるが、上記3つのコホートの結果に顕著な違いは見られなかった。抗原投与量が低い以下の実施例3からわかるように、固形剤型と比較すると、標準的な針および注射器を用いた投与との間に効果の差が見られた。
【0138】
実施例2
アジュバント化されたジフテリアワクチンを、Glide SDI(商標)によるデリバリーに適したものに製剤化した。アジュバントは、水酸化アルミニウム(alum)であり、賦形剤はソルビトールであった。1投与量あたり約2IU(約0.9Lf)の製剤を、モルモットモデルに使用した。以下の群を比較した。
1.標準的な針および注射器
2.Glide SDI(商標)
動物に、主要注入と4週間後の単回追加注入を行った。主要注入の2週間後と追加注入の2、6、12週間後に、血液サンプルを採取した。測定された抗−ジフテリア抗体力価を図3に示した。これらのデータは、実施例1と同様の方法で測定した。
【0139】
実施例1に沿って、ベロ細胞アッセイを用いて毒素中和抗体の機能的測定を行った。図4に示す結果を、標準モルモット血清(IU/mlで較正)に対する抗−ジフテリア毒素中和抗体(IU/ml)として表した。
【0140】
2つのデリバリー法の平均結果に顕著な違いがないことがわかる。しかし、Glide SDI(商標)で免疫した群で免疫応答の変動性が低い。追加後の抗体反応の反応速度が、総抗体力価と機能中和抗体力価で異なることに注目すべきである。追加後1週間は、総抗体レベルは一定のままか、やや低下したが、追加後2週間の測定値と比較して追加後12週間の機能抗体レベルは高い。
【0141】
実施例3
標準的なヘモフィルス・インフルエンザb型(Hib)ワクチン(アジュバント非含有)を、Glide SDI(商標)によるデリバリーに適したものに製剤化した。標準的なヒトへの投与量の約1/40の製剤を、モルモットモデルに使用した。使用した賦形剤はソルビトールであった。以下の群を比較した。
1.標準的な針および注射器
2.Glide SDI(商標)
動物に、主要注入と4週間後、8週間後の追加注入を行った。第1の追加の2週間後と、第2の追加の2週間後の血液サンプルは、図5に示す抗−PRP抗体価を生じた。
【0142】
Glide SDI(商標)によって、第1の追加の2週間後に低いけれども測定可能な免疫応答が引き起こされ、第2の追加でさらに強化されたことが見受けられる。標準的な針と注射器による本投与量のHibの注入によっては、モルモットの体内で免疫応答を引き起こさなかった。これらのデータにより、標準的な針と注射器による注入と比較したより安定で確実な反応と、投与量の節約効果が示されている。
【0143】
抗体力価の測定に加えて機能保護評価を行った。ラットの子供(生後3〜5日)に100μlのプール免疫血清(1:1希釈生理食塩水)を1日目に腹腔内投与した。24時間後(2日目)、その動物についてHib(1x10 CFU、Eagan strain)を用いて誘発した。さらに24時間後(3日目)、動物から採血し、Hibバクテリアの有無によって、10μLの血液(3つ)がチョコレート寒天血液上で24時間培養した。
【0144】
この結果は、Glide SDIを用いたHib投与によって導入された免疫血清が、ラットの子供の菌血症モデルで100%の保護を誘発したことを示す(10/10の動物が菌血症でない)。皮下からの針および注射器を用いたHibコホートの血清は、保護を50%誘発させた(5/10の動物が菌血症でない)。
【0145】
これらのデータにより、本研究の針および注射器コホートと比較してGlide SDIにより保護抗体が産生されたことが示された。
実施例4
10グラムの粉末ソルビトールを1.5mlの水と混合し、滑らかな乾燥ペーストを作成した。ペーストをラム押出機のバレルに加え、混合物を直径0.9mm出口の穴のダイを通して押出した。得られた押出成形物は、乾燥チャンバーで一晩乾燥させた原料の滑らかなロッドである。乾燥原料を温かいブレードで切断し、個々の投与型について、一方の先端を平面状の先端に成型し、他方の先端を尖頭状に成型した。尖端部は、約23度の夾角と約4mmの長さであった。同じ原料の約6mmの長さの短いロッドは、両端を平面状に切断した。これらのロッドの縦粉砕強度の強さを測定器で評価し、約10Nであった。このプラセボ製剤をヒト組織に所望によりデリバリーできることを示す、WO 03/023773およびWO 2004/014468に記載されたGlide法(Glide Pharma(Abingdon, UK)によって開発)を使用して、尖端部を有する投与型をモルモットの皮膚に生体外で成功裏に注入した。
【0146】
実施例5
1.8グラムの粉末ソルビトールを量り分けた。200ミリグラムのクエン酸フェンタニルを約300マイクロリットルの水に加え、溶解させた。溶液を粉末ソルビトールに加え、滑らかな乾燥ペーストを作成した。ペーストを加工し、実施例1と同じ方法で評価したところ、いずれの結果にも違いはみられなかった。製剤に加えたフェンタニルの量は、最終投与形態ごとに一般成人投与量であった。多くの個々の投与量のフェンタニルの含量をアッセイし、混合により非常に良好な均一性を達成した。
【0147】
実施例6
2グラムのコハク酸スマトリプタンを2グラムのポリエチレングリコールと混合した。混合物を、約70℃に加熱し、出口直径約1.0mmのダイを通して押出し、滑らかなロッドとした。冷却で押出成形物を固形化して個々の長さに切断し、実施例1に記載したように評価した。Glide法を使用して、生体外におけるモルモットの皮膚への投与量のデリバリーに成功した。
【0148】
実施例7
500mgのアルギン酸ナトリウムを、500mgのコハク酸スマトリプタンと混合した。450μLの水を加え、乾燥状態で滑らかな原料を直径約0.77mmに押し出した。この原料の短片は約42Nの縦粉砕強度を有する。賦形剤としてアルギン酸ナトリウムを製剤に低濃度で使用でき、これは、Glide法により、生体外でモルモットの皮膚を貫通するのに十分な強度を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1の尖端部を有し、少なくとも1の活性物質を含んでなる、装置から低速非経口注入するための細長体であって、5ニュートン以上の圧縮強度を有し、尖端部が約10〜50°の夾角を有する、上記細長体。
【請求項2】
圧縮強度が、5〜500ニュートン、5〜50ニュートン、5〜20ニュートンまたは20〜50ニュートンである、請求項1に記載の物体。
【請求項3】
圧縮強度が、約10ニュートンまたは約30ニュートンである、請求項2に記載の物体。
【請求項4】
速度が、0.5〜50m/s、0.5〜20m/sまたは0.5〜10m/sである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の物体。
【請求項5】
一方に尖端部を有し、他の端が非尖頭状である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の物体。
【請求項6】
両端が尖頭状である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の物体。
【請求項7】
尖端部が約20〜30°の夾角を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の物体。
【請求項8】
尖端部が約23°の夾角を有する、請求項7に記載の物体。
【請求項9】
尖端部が、平面状、円錐状、部分回転楕円面状、くさび状または破砕状の先端を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の物体。
【請求項10】
少なくとも部分的に結晶質であるか、少なくとも部分的に非結晶質またはガラス質である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の物体。
【請求項11】
活性物質が、ペプチド、タンパク質、DNAおよびRNA小分子、標識分子、染料、抗原、ワクチンおよび全細胞ワクチンを含んでなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の物体。
【請求項12】
活性物質が、0.1重量%〜99.9重量%、0.1〜60重量%または0.1〜35重量%の量で存在する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の物体。
【請求項13】
活性物質が医薬的に活性な化合物である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の物体。
【請求項14】
医薬的に活性な化合物が、内分泌学、腫瘍学、心臓病学、感染症、皮膚科学、産科学、婦人科学、呼吸器、免疫学、ホルモン欠乏症の治療、CNS疾患、救急医療、ワクチン接種、疼痛コントロールまたは糖尿病の分野における疾病の治療に用いられるものである、請求項13に記載の物体。
【請求項15】
1以上の抗原性物質または免疫原性物質を含んでなる無針非経口投与のための固形ワクチン製剤である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の物体。
【請求項16】
前記各抗原性物質または各免疫原性物質が製剤の表面に吸着されている、請求項15に記載の物体。
【請求項17】
前記各抗原性物質または各免疫原性物質が製剤中に均一に分散している、請求項15または16に記載の物体。
【請求項18】
前記細長体の細長部分に分散した前記各抗原性物質または各免疫原性物質を有する不活性な尖端部を有する、請求項15〜17のいずれか1項に記載の物体。
【請求項19】
前記製剤が1以上のアジュバントをさらに含む、請求項15〜18のいずれか1項に記載の物体。
【請求項20】
アジュバントが水酸化アルミニウムである、請求項19に記載の物体。
【請求項21】
前記製剤が、複数の投与量の前記各抗原性物質または各免疫原性物質を含む、請求項15〜20のいずれか1項に記載の物体。
【請求項22】
前記製剤が、主要投与量および少なくとも1の追加投与量の前記各抗原を含む、請求項21に記載の物体。
【請求項23】
前記製剤が、複数の追加投与量の前記各抗原性物質または各免疫原性物質を含む、請求項22に記載の物体。
【請求項24】
前記製剤が、前記各抗原性物質または各免疫原性物質の製剤を複数含む、請求項15〜23のいずれか1項に記載の物体。
【請求項25】
前記活性物質が、即時放出製剤および/または制御放出製剤を含むか、その中に含まれる、請求項1〜24のいずれか1項に記載の物体。
【請求項26】
前記活性物質が、持続放出製剤および/またはパルス放出製剤を含むか、その中に含まれる、請求項1〜24のいずれか1項に記載の物体。
【請求項27】
前記各抗原性物質または各免疫原性物質が、死滅、弱毒化または複合化した微生物、不活性化有毒化合物、全長もしくはフラグメントのタンパク質または多糖類、DNAおよびRNAを含んでなる群から選択される、請求項15〜26のいずれか1項に記載の物体。
【請求項28】
前記製剤の抗原性物質または免疫原性物質の含量が、0.01重量%〜100重量%、0.01重量%〜60重量%、0.01重量%〜35重量%、0.5重量%〜99.9重量%、0.5重量%〜60重量%、0.5重量%〜35重量%である、請求項15〜27のいずれか1項に記載の物体。
【請求項29】
1の抗原性物質または免疫原性物質がジフテリアである、請求項15〜28のいずれか1項に記載の物体。
【請求項30】
1の抗原性物質または免疫原性物質がヘモフィルス・インフルエンザb型(Hib)である、請求項15〜28のいずれか1項に記載の物体。
【請求項31】
1の抗原性物質または免疫原性物質が腫瘍特異的抗原である、請求項15〜28のいずれか1項に記載の物体。
【請求項32】
1以上の賦形剤をさらに含む、請求項1〜31のいずれか1項に記載の物体。
【請求項33】
賦形剤が、増量剤、抗酸化剤、崩壊剤、バインダー、生分解性高分子、塩およびバッファー、湿潤剤、アジュバント、安定化剤、バインダーならびに充填剤を含んでなる群から選択される、請求項32に記載の物体。
【請求項34】
1以上の賦形剤が化学安定化剤である、請求項32または33に記載の物体。
【請求項35】
1以上の賦形剤が増量剤である、請求項32〜34のいずれか1項に記載の物体。
【請求項36】
賦形剤が1以上の糖を含む、請求項32または33に記載の物体。
【請求項37】
糖がソルビトールまたはアルギン酸ナトリウムである、請求項36に記載の物体。
【請求項38】
賦形剤が1以上のポリエーテルを含む、請求項32〜37のいずれか1項に記載の物体。
【請求項39】
ポリエーテルがポリエチレングリコールである、請求項38に記載の物体。
【請求項40】
前記製剤が1以上の崩壊剤をさらに含んでなる、請求項15〜39のいずれか1項に記載の物体。
【請求項41】
前記製剤が1以上の制御放出剤をさらに含んでなる、請求項15〜40のいずれか1項に記載の物体。
【請求項42】
前記製剤が、皮膚投与、皮内投与、経皮投与、皮下投与または筋肉内投与に適する、請求項15〜41のいずれか1項に記載の物体。
【請求項43】
前記活性物質が物体中に均一に分散している、請求項1〜14のいずれか1項に記載の物体。
【請求項44】
尖端部が不活性物質からなる、請求項1〜43のいずれか1項に記載の物体。
【請求項45】
前記活性物質が物体内の不活性物質から分離されている、請求項44に記載の物体。
【請求項46】
約0.5mm〜3mmまたは約0.6mm〜1.5mmの直径を有する、請求項1〜45のいずれか1項に記載の物体。
【請求項47】
1mm〜15mmまたは約2〜8mmの長さを有する、請求項1〜46のいずれか1項に記載の物体。
【請求項48】
卵形、三角形、円形、長円形、長方形および多角形からなる群から選択される断面形状を有する、請求項1〜47のいずれか1項に記載の物体。
【請求項49】
包装をさらに含んでなる、請求項15〜48のいずれか1項に記載の物体。
【請求項50】
前記包装が、キャップ、カートリッジ、カルーセルまたはカセットである、請求項49に記載の物体。
【請求項51】
前記包装が使い捨て可能である、請求項49または50に記載の物体。
【請求項52】
前記包装が単回投与または複数回投与の製剤を含む、請求項49〜51のいずれか1項に記載の物体。
【請求項53】
前記複数回投与が同一または異なる製剤である、請求項52に記載の物体。
【請求項54】
前記包装が開封明示シールまたは使用明示シールをさらに含んでなる、請求項49〜53のいずれか1項に記載の物体。
【請求項55】
前記製剤によって免疫応答が強化される、請求項15〜54のいずれか1項に記載の物体。
【請求項56】
皮膚投与、皮内投与、経皮投与、皮下投与または筋肉内投与によって免疫応答が強化される、請求項15〜55のいずれか1項に記載の物体。
【請求項57】
(1)乾燥材料である少なくとも1の活性物質および任意の賦形剤を流体と混合してペーストを作成すること、
(2)ペーストを成形すること、
(3)夾角が約10〜50°の少なくとも1の尖端部を有する形状にペーストを切断すること、
を含んでなる請求項1〜56のいずれか1項に記載の細長体を製造する方法であって、切断工程の前後いずれかにペーストを乾燥させることをさらに含んでなる、上記方法。
【請求項58】
任意の賦形剤を混合して乾燥均一混合物にした後に、活性物質および流体に添加する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
一部または全部の前記活性物質および一部または全部の前記1以上の賦形剤を前記流体に添加した後に、残りの乾燥材料を混合する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
一部または全部の1以上の賦形剤を前記流体に添加した後に、前記活性物質およびいずれかの残りの乾燥材料と混合する、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
活性物質の乾燥混合物をほぼ同量の1以上の賦形剤と混合すること、および、同量の賦形剤をさらに添加する前にその混合物を均一な混合物へと混合することを含む、請求項57〜60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
4℃を超える温度で実施される、請求項57〜61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
周囲温度で実施される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
18℃〜22℃の温度で実施される、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記流体がスラリーである、請求項57〜64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記流体が水性液体である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記水性液体が、水、アルコールおよび/またはバッファーである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記流体が、10〜30%(体積/重量)以下の量で乾燥材料に添加される、請求項57〜67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記流体が、乾燥材料の約15体積重量%の量で添加される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記ペーストが、押出し、打錠または射出成形によって成形される、請求項57〜69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記ペーストが、ダイを通す押出しによって成形される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記ペーストが、ラム押出機によって押出される、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記ペーストが、押出しの間に軟化または溶解する、請求項71または72に記載の方法。
【請求項74】
押出ダイが加熱される、請求項71〜73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
ダイの出口が加熱される、請求項71〜73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記ペーストが、ブレード、超音波、レーザーおよびウォータージェットからなる群から選択される切断手段を使用して切断される、請求項57〜75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
押出成形物がまだ柔らかい際にペーストを切断する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
押出成形物が乾燥して固形であるときにペーストを切断する、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
少なくとも1の活性物質および/または任意の賦形剤が粒子の形状である、請求項57〜78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
粒子が標準または均一サイズである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
乾燥材料を粉砕することをさらに含む、請求項57〜78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
乾燥材料が直径0.1〜1000μmの粒径に粉砕される、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
粒径が直径500μm未満または直径300μm未満である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
1以上の崩壊剤または制御放出剤を活性物質に添加することをさらに含む、請求項57〜83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
(1)少なくとも1の活性物質と任意の賦形剤とを乾燥状態で混合して乾燥混合物を製造すること、
(2)混合物を軟化または溶解させること、
(3)混合物を成形すること、
(4)混合物を冷却すること、
(5)任意で、混合物をある形状に切断すること、
を含んでなる請求項1〜56のいずれか1項に記載された細長体を製造する方法であって、混合物が少なくとも1の約10〜50°の夾角の尖端部を有する形状に成形または切断される、上記方法。
【請求項86】
前記混合物が、1以上の炭水化物またはポリエーテルを賦形剤として含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
30〜150℃または40〜100℃の温度で実施される、請求項85または86に記載の方法。
【請求項88】
前記細長体が、押出し、打錠または射出成形によって成形される、請求項85〜87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記混合物が、ダイを通す押出しによって成形される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記混合物が、ラム押出機によって押出される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
押出ダイが加熱される、請求項89または90に記載の方法。
【請求項92】
ダイの出口が加熱される、請求項89または90に記載の方法。
【請求項93】
前記混合物が、ブレード、超音波、レーザーまたはウォータージェットからなる群から選択される切断手段によって切断される、請求項85〜92のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
押出成形物がまだ柔らかい際に混合物を切断する、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
押出成形物が乾燥して固形であるときに混合物を切断する、請求項93に記載の方法。
【請求項96】
乾燥混合物に1以上の崩壊剤または制御放出剤を添加することをさらに含む、請求項85〜95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
少なくとも1の活性物質および/または任意の賦形剤が粒子の形態である、請求項85〜96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
粒子が標準または均一サイズである、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
請求項1〜56のいずれか1項に記載の細長体を含んでなる、無針注射装置。
【請求項100】
病原体または腫瘍細胞の感染を治療するための医薬の製造における、請求項1〜56のいずれか1項に記載された物体の使用。
【請求項101】
1以上の抗原性物質または免疫原性物質に対する免疫応答を強化するための医薬の製造における、請求項15〜56のいずれか1項に記載された物体の使用。
【請求項102】
前記使用が予防的である、請求項100または101に記載の使用。
【請求項103】
前記医薬が、皮膚投与、皮内投与、経皮投与、皮下投与または筋肉内投与用である、請求項100〜102のいずれか1項に記載の使用。
【請求項104】
前記製剤が1以上の抗原性物質または免疫原性物質の免疫原性を強化する、請求項100〜103のいずれか1項に記載の使用。
【請求項105】
前記皮膚投与、皮内投与、経皮投与、皮下投与または筋肉内投与によって、1以上の抗原性物質または免疫原性物質の免疫原性が強化される、請求項103または104に記載の使用。
【請求項106】
1以上の抗原性物質または免疫原性物質を含んでなる固形製剤を免疫原性的または抗原的有効量で投与することを含んでなる、病原体または腫瘍細胞との感染に対する脊椎動物のワクチン接種方法。
【請求項107】
固形ワクチン組成物の皮膚投与、皮内投与、経皮投与、皮下投与または筋肉内投与を含んでなり、固形ワクチン組成物が有効量の1以上の抗原性物質または免疫原性物質を含む、脊椎動物における抗原性組成物または免疫原性組成物に対する強化された免疫応答を誘発させる方法。
【請求項108】
固形製剤において1以上の抗原性物質または免疫原性物質を投与することを含んでなる、ワクチン製剤における1以上の抗原性物質または免疫原性物質に対する直接的または事後的な免疫的応答を強化する方法。
【請求項109】
固形製剤において有効量の1以上の抗原性物質または免疫原性物質を、脊椎動物の皮膚、皮下層または筋肉に投与することを含んでなる、1以上の抗原性物質または免疫原性物質の免疫原性を強化させる方法。
【請求項110】
抗原の固形製剤に脊椎動物を接触させることを含んでなる、脊椎動物における高効率の抗原提示を促進する方法。
【請求項111】
固形組成物または製剤が、請求項15〜56のいずれか1項に記載の細長体中に処方されている、請求項106〜108のいずれか1項に記載の方法。
【請求項112】
脊椎動物が哺乳類または鳥類である、請求項106、107および109〜111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
前記製剤が、皮膚投与、皮内投与、経皮投与、皮下投与または筋肉内投与される、請求項106または108〜112のいずれか1項に記載の方法。
【請求項114】
前記製剤が無針デリバリーシステムによって投与される、請求項107〜113のいずれか1項に記載の方法。
【請求項115】
前記デリバリーシステムが低速の推進力によって製剤を投与する、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
速度が50m/s未満または20m/s未満または10m/s未満である、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
製剤が皮膚表面と平行な面で投与される、請求項106〜116のいずれか1項に記載の方法。
【請求項118】
請求項1〜56のいずれか1項に記載の物体または請求項57〜84もしくは請求項85〜98の方法によって製造される物体と、包装とを含んでなる、ドラッグデリバリー装置で使用するためのパッケージ化された薬剤。
【請求項119】
(1)ケースと、
(2)ヒトまたは動物の体内に包装から細長体を押し出すことができる力を発生させる手段と、
(3)ヒトまたは動物の体内に包装から薬剤を押し出すための力を伝達する手段と、
(4)装置を始動させるための手段と、
を含んでなる、請求項118に記載のパッケージ化された薬剤を含んでなるドラッグデリバリー装置。
【請求項120】
シングルユース用に予め調整された、請求項119に記載のドラッグデリバリー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−519282(P2010−519282A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550754(P2009−550754)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000589
【国際公開番号】WO2008/102136
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(507267045)グライド・ファーマスーティカル・テクノロジーズ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】