説明

固形製剤

【課題】 L−カルニチンおよび難消化性オリゴ糖を配合した製剤において、褐変などの色調変化を示さない安定な固形製剤を提供する。
【解決手段】 L−カルニチンおよび難消化性オリゴ糖を含有する製剤において、二糖類アルコールを加えることにより、褐変などの色調変化が抑制された固形製剤を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色調安定性に優れた固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
L−カルニチンは、生体内に含まれるビタミン様物質であり、脂肪酸を細胞内のミトコンドリアに運搬する役割をもっており、エネルギー産生および脂質代謝に不可欠な物質である。L−カルニチンは体内でリジンとメチオニンから合成されるが、食事などからも摂取することができる。また、L−カルニチンはさまざまな生理活性機能を示すことが知られており、これまでにも体力増強剤(特許文献1参照)、脂質代謝改善剤(特許文献2参照)、痩身用組成物(特許文献3参照)などへの利用が報告されている。
【0003】
難消化性オリゴ糖は、ヒトの消化管内の消化酵素によりほとんど分解されずに大腸に到達し、腸内ビフィズス菌によって選択的に資化されるため、腸内ビフィズス菌を増殖させて腸内細菌叢を改善する作用を有することが知られている。また、難消化性オリゴ糖を利用したものとしては、貧血改善剤(特許文献4参照)なども報告されている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−103629号公報
【特許文献2】特開平7−196485号公報
【特許文献3】特許2005−247812号公報
【特許文献4】特開平7−145064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
L−カルニチンは体内で合成されるが加齢とともにその合成量は減少傾向にある。そのため、食事やサプリメントなどからL−カルニチンを摂取する人が増えており、L−カルニチンを配合した商品も種々市場に存在する。L−カルニチンを製剤化する際、その多くは単独ではなく他の成分と組み合わせることにより得るが、組み合わせる成分により安定性等に問題が生じる場合がある。難消化性オリゴ糖はその作用として、たとえば整腸作用などを示すことが知られており、L−カルニチンと組み合わせて製剤とした場合にはダイエット効果などが期待できるが、これら成分を用いて固形製剤とした場合には高温下や長期保存にて褐変などの色調変化をおこすという問題がある。したがって、本発明は高温下および/または長期保存において生じる褐変などの色調変化が抑制された安定な固形製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる課題を克服すべく鋭意研究を行った。その結果、糖アルコールのなかでも特に二糖類アルコールがL−カルニチンおよび難消化性オリゴ糖を配合した際に生じる褐変などの色調変化に対して優れた抑制効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明はL−カルニチン、難消化性オリゴ糖、二糖類アルコールを含有することを特徴とする色調安定性に優れた固形製剤を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高温下および/または長期保存において褐変などの色調変化が抑制された安定性に優れた固形製剤を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の色調安定性に優れた固形製剤は、L−カルニチン、難消化性オリゴ糖、二糖類アルコールを含有することを特徴とする。
【0009】
本発明におけるL−カルニチンとは、L−カルニチン単独および/またはその塩類を含む。
【0010】
本発明において使用されるL−カルニチンは、たとえば天然物からの抽出品、合成品、発酵生産品などを挙げることができる。また、その形態は特に限定されるものではなく、L−カルニチン単独の形態でも良いし、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸マグネシウム塩、乳酸塩、硫酸塩、塩酸塩などのL−カルニチンの塩類としても良い。固形製剤へ配合する際には、取り扱いの点よりL−カルニチンの塩類を用いることがより好ましい。また、これらL−カルニチン類は1種もしくは2種以上を混合して配合してもよい。
【0011】
本発明に使用される難消化性オリゴ糖としては、たとえば、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラクチュロース、ラフィノース、パラチノースオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ゲンチオリゴ糖、乳果オリゴ糖、メリビオース、スタキオースなどが挙げられ、より好ましくは、ラクチュロース、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、パラチノースオリゴ糖が用いられる。これら難消化性オリゴ糖は、1種もしくは2種以上を混合して配合しても良い。
【0012】
本発明に使用される二糖類アルコールとしては、たとえば、マルチトール、パラチニット、ラクチトールなどが挙げられる。これら糖アルコールは、1種もしくは2種以上を混合して配合してもよい。
【0013】
本発明は、錠剤、細粒剤、顆粒剤、チュアブル剤、カプセル剤、散剤などのさまざまな形態の固形製剤とすることができる。また、固形製剤とするにあたり、L−カルニチン、難消化性オリゴ糖、二糖類アルコールのほか必要に応じて他の添加剤、たとえば、賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、防腐剤、コーティング剤、保存剤、矯味剤、香料、可塑剤などを添加することができる。
【0014】
また、本発明において使用する糖アルコールは、低カロリーで非う蝕性の甘味料としても知られており、本発明による固形製剤は肥満や糖尿病、虫歯を予防する商品開発へも利用することができる。
【0015】
さらに実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0016】
試験例
表1に記載の原料をし過後、常法に従い細粒剤1600mgを調製し、これをサンプルとした。得られたサンプルを20mL密閉容器に入れたものを3個準備し、各サンプルを70℃、60℃、40℃の恒温槽にてそれぞれ7日間、7日間、60日間保管し、その後目視にて状態評価を行った。評価基準は次のとおりとした。◎:褐変などの色調変化なし、○:ごくわずかに褐変が認められる、△:褐変がみとめられる、×:著しい褐変が認められる。また、評価結果については表1にあわせて記載した。
表1の結果よりわかるように、糖アルコールを配合していない比較例1ではいずれの条件でも褐変が認められ、特に高温下ほどその程度が大きいことが確認された。それに対し、L−カルニチン、難消化性デキストリン、二糖類アルコールを配合した実施例1および2では、70℃、60℃、40℃の保管において褐変などの色調変化は認められなかった。一方、単糖アルコールであるエリスリトールやキシリトールを配合した比較例2および3ではいずれの条件においても褐変が認められ、比較例1と同様高温下ほどその程度は大きくなることを確認した。糖アルコールは全般的に褐変を起こしにくい糖類であるが、本試験において、併用する成分によってその効果が大きく異なることを確認した。つまり、L−カルニチン、難消化性オリゴ糖を有効成分として含有する製剤において生じる褐変に対して、単糖アルコールは全く抑制効果を示さないのに対し、二糖類アルコールは著しい褐変抑制効果を示すことを見出すことができた。また、本発明による実施例1および2では熱安定性に優れているだけでなく、長期安定性にも優れていることを見出すことができた。
【0017】
【表1】

【0018】
[実施例3]錠剤
(1)L−カルニチンフマル酸塩 20.0 (mg)
(2)イソマルトオリゴ糖 5.0
(3)ラクチトール 103.5
(4)マルチトール 105.0
(5)トウモロコシデンプン 6.5
(6)グリセリン脂肪酸エステル 5.0
(7)香料 5.0
製法:(1)〜(5)を均一に混合し、次いで、グリセリン脂肪酸エステル、香料を添加して混合した。その後、常法により打錠して、全量が250mgの錠剤を得た。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によると色調変化を起こさず、高温下や長期保存に適した製剤を得ることができ、顆粒剤、錠剤、カプセル剤などの固形製剤の開発に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L−カルニチン、難消化性オリゴ糖、および二糖類アルコールを含有することを特徴とする固形製剤。
【請求項2】
難消化性オリゴ糖が、ラクチュロース、キシロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖およびパラチノースオリゴ糖から選ばれる1種もしくは2種以上である請求項1記載の固形製剤。
【請求項3】
二糖類アルコールが、マルチトール、パラチニットおよびラクチトールから選ばれる1種もしくは2種以上である請求項1記載の固形製剤。

【公開番号】特開2007−320885(P2007−320885A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151363(P2006−151363)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(591074231)常盤薬品工業株式会社 (20)
【出願人】(000135324)株式会社ノエビア (258)
【Fターム(参考)】