説明

固形香料の製造方法

本発明は、常温で液体である少なくとも1つの香料物質と常温で固体である少なくとも1つのキャリア材料6とによる固体香料物質の製造方法に関する。本方法によれば、少なくとも1つの微粒子キャリア材料6は流動床で少なくとも1つの液体香料物質の噴霧7に晒される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体香料及び固体基材から作られる固体香料の製造方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドイツ国特許公開公報DE−OS10247583A1によると、常温で固体である基材を加熱により液化させたものに液体香料を溶解し、香料・基材溶液を固化し、その後これを常温に冷却することによる固体香料の製造方法は公知である。この方法により、基材に香料を高い割合(最大60%)で溶解させることができ、そして固形石けん、微粉砕状や粒状の洗剤及び洗浄剤、芳香物等を製造するために且つ主に小形の香料チップ或いは粒状の形態で、保管及び搬送に優れた適性をもつ固体香料として市場へ出荷することができる。
【0003】
液体香料を、加熱した液体基材中に入れ、その後固化し造形処理してチップまたは粒状の形態にする上述の方法は、比較的複雑で費用がかかることが判っている。これとは別に、かかる従来技術の別な欠点としては、ほとんどの場合、既存のチップ或いは粒状の形態の中間製品は、完成品に固体香料を一様に分配するために、例えば粉砕したり粒化などの更なる処理を行う必要があるので、例えば石けん製造過程において精製された未加工の石けんに混合したり、或いは粉体洗剤または洗浄剤に混合するための直接的な更なる処理に適していないことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、本発明の主目的は、基材の集合状態を変化させずに固体基材及び液体香料から作られる固体香料を、直接的な更なる処理に適した粉体或いは粒状の形態で製造できるの製造方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題は、特許請求の範囲の請求項1及び7の特徴によって解決される。
【0006】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項2から6及び8から12の特徴に記載される。
【0007】
以下、本発明は、図1及び図2を参照して好ましい2つの実施形態に基いて説明されるべきである。
【0008】
図1に示す本発明による方法の第一の実施形態において、常温で固体の微粉砕した微細形態の基材6或いは複数の基材6の混合物は、空気送り装置2で非連続的に装填可能な流動床炉1内に入れられ、そして圧縮空気で流動床に保持される。常温で液体の少なくとも1つの細かな噴霧状の香料7は、流動床に保持されている基材粒子6に対して霧化噴霧の形態で噴霧され、一定の時間の間、基材粒子6と接触する。香料の霧化噴霧の液滴7と、流動床に保持されている基材粒子6の表面との密接な接触によって、霧化噴霧の液滴7は、流動床に保持されている微粉砕した微細基材6によって吸着及び/又は吸収される。流動床に保持されている基材粒子6の飽和の後、図1に示された方法の場合では真空排出装置4である排出装置4によって流動床炉1から回分式に運び出されることができ、その後、流動床炉1には同様に処理すべき新しい基材6が装填される。基材6が飽和されるまでの霧化噴霧7の作用時間は、主に基材6及び香料7の化学組成に依存しており、経験的に決定することができる。
【0009】
特定の基材6及び/又は香料7では、基材6への香料7の吸着作用は、粘着性物質の付加によって改善することができ、それにより基材に吸着されることになる香料の量を増加させる。
【0010】
粘着性物質としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)が好適である。 CMCは、微粉砕した微細形態で液体香料に添加でき、且つ香料とともに噴霧することができる固体物質である。このようにCMCは、その強い粘着力により基材の表面に非常に付着し易く、基材粒子の核の周囲に香料を吸着することができる。
【0011】
他の固体の粘着性物質は、香料粘着性物質溶液が噴霧できるよう常温で香料に可溶性であり、また粘着性物質は流動床における空気の流れで基材粒子の核のまわりで固化し、それにより、香料或いは香料混合物を吸着し、それでこの場合、香料に溶解した粘着性物質により大量の香料を基材粒子の核上に吸着することができる。
【0012】
別の例では、常温で固体でありしかも高温で液体香料に溶解するはずである付加的な粘着性物質或いは粘着性物質の混合物が使用される。香料と粘着性物質の溶液は、常温で流動床に保持されている基材混合物或いは基材に対して、比較的高い溶液温度で噴霧される。流動床において、香料と粘着性物質の溶液から成る霧化噴霧の液滴は、基材粒子上で冷却し、そしてこのようにして、粘着性物質は基材粒子上で固化し、香料或いは香料混合物を吸着する。このようにして、微細な基材粒子上に相対的な大量の香料或いは香料混合物を吸着させることができる。
【0013】
最後に述べた処理において重要なことは、それを常温に維持するために流動床の温度を正確に制御することにある。香料の吸着作用は、流動床における冷却に起因して香料と粘着性物質の溶液中の粘着性物質の凝集状態の変化から生じている。微細な基材粒子の核への香料或いは香料混合物の吸着は比較的短時間で起こり、流動床炉1における装填の変更を短い間隔で行うことができ、それで大量の固体香料を、相対的な短期間で生産することができる。
【0014】
図2は、微粉砕した微細な基材を連続的に装填できる流動床炉11の横断面図であり連続的に装填できる流動床炉11の処理区域18で流動床に保持されている微粉砕した微細な基材或いは基材混合物6のまわりに或いは微粉砕した微細な基材或いは基材混合物6に、液体香料の霧化噴霧13を吸着及び/又は吸収させる。
【0015】
微粉砕した微細な基材の供給は、空気送り装置15によって行なわれる。連続的に装填可能な流動床炉11を通しての処理速度は、空気送り装置15及び空気排出装置14により制御され、また第一の処理形態に関連して詳細に説明したように、基材粒子6の飽和速度に依存している。
【0016】
また、連続的に装填可能な流動床炉11において、基材における香料の吸着作用は、粘着性物質或いは粘着性物質混合物を添加することにより改善できる。これは、主として、図1による処理方法に関連して詳細に説明したものと同様の方法で行われる。
【0017】
本発明は、固体香料を例えば低温でそれを微粉砕したり粉砕するような追加的な造形処理を行う必要なしに微細な基材によって香料或いは香料混合物を吸着及び/又は吸収できるという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による第一の処理形態を実施する装置を示す概略横断面図。
【図2】本発明による第二の処理形態を実施する別の装置を示す概略断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの常温で液体の香料と、少なくとも1つの常温で固体の基材(6)とから作られる固体香料の製造方法において、
微粉砕した微細形態の少なくとも1つの基材(6)が流動床において少なくとも1つの液体香料の霧化噴霧(7)に晒されることを特徴とする方法。
【請求項2】
霧化噴霧(7)が少なくとも1つの香料とは別に少なくとも1つの粘着性物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
微粉砕した微細形態の基材(6)が非連続的に装填可能な流動床炉(1)内に回分式に入れられ、決められた時間の間流動床で香料の霧化噴霧或いは香料と粘着性物質との霧化噴霧(7)に晒され、その後排出装置(4)により炉(1)から運び出されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
微粉砕した微細形態の基材(6)が連続的に装填可能な流動床炉(11)内に送り装置(15)によって連続的に入れられ、炉(11)の処理区域(18)で香料の霧化噴霧或いは香料と粘着性物質との霧化噴霧(13)に晒され、処理区域(18)の終端部で排出装置(14)によって運び出されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
微粉砕した微細形態の基材(6)が脂肪アルコール、或いは脂肪アルコール混合物、或いは脂肪酸(類)及び/又は脂肪アルコールエトキシレン及び/又はポリエチレングリコールと脂肪アルコール(類)との混合物であること特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
カルボキシメチルセルロース(CMC)が粘着性物質として使用されることを特徴とする請求項2から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの圧縮空気送り装置(2)と、少なくとも1つの霧化装置(3)と、少なくとも1つの排出装置(4)とを有する非連続的に装填可能な流動床炉(1)を備えていることを特徴とする請求項3に記載の方法を実施する装置。
【請求項8】
排出装置(4)が非連続的に動作する真空装置であることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
送り装置(15)、及び少なくとも1つの圧縮空気送り装置(12)と、霧化装置(13)と、排出装置(14)を有する連続的に装填可能な流動床炉(11)を備えていることを特徴とする請求項4に記載の方法を実施する装置。
【請求項10】
送り装置(15)が空気式送り装置であることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
排出装置(14)が連続的に動作する真空装置であることを特徴とする請求項9及び/又は10に記載の装置。
【請求項12】
排出装置(14)が非連続的に動作する真空装置であることを特徴とする請求項9及び/又は10に記載の装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−518062(P2008−518062A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538286(P2007−538286)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010505
【国際公開番号】WO2006/048087
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(507140944)ベル フラフオーアス ウント フラークランチエス ドゥフト ウント アロマ ゲゼルシヤフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】