固液分離装置および固液分離システム
【課題】目詰まりの問題を有効に解決できる新規な固液分離装置を実現する。
【解決手段】2以上のプーリに掛け回されてベルト上面が処理対象物搬送面の一部をなす細幅の無端ベルトB1、B2等を複数個、ベルト幅方向へ互いに細隙を隔して配列してなり、個々の無端ベルトB1、B2等のベルト上面が協働して処理対象物搬送面を形成するとともに、無端ベルト間の各細隙が水分を流下させるための水分流下部を構成する無端ベルト群と、この無端ベルト群における隣接する無端ベルト間の細隙を保つスペーサ群と、無端ベルト群の全ての無端ベルトを同一方向に回転駆動するとともに、隣接する無端ベルト同士が上下方向の所定の範囲で相対的に往復平行変位しあうように相対変位させる変位駆動手段(M等)とを有する。
【解決手段】2以上のプーリに掛け回されてベルト上面が処理対象物搬送面の一部をなす細幅の無端ベルトB1、B2等を複数個、ベルト幅方向へ互いに細隙を隔して配列してなり、個々の無端ベルトB1、B2等のベルト上面が協働して処理対象物搬送面を形成するとともに、無端ベルト間の各細隙が水分を流下させるための水分流下部を構成する無端ベルト群と、この無端ベルト群における隣接する無端ベルト間の細隙を保つスペーサ群と、無端ベルト群の全ての無端ベルトを同一方向に回転駆動するとともに、隣接する無端ベルト同士が上下方向の所定の範囲で相対的に往復平行変位しあうように相対変位させる変位駆動手段(M等)とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固液分離装置および固液分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多量の水分を含んだ汚泥状の処理対象物、例えば、汚泥水を脱水処理する処理方式として、処理対象物を濾布ベルト上に供給し、処理対象物中の水分を漉布ベルトにより濾過し、濾布ベルト上に残った固形分を回収する方式が広く知られている。この処理方式は、濾布ベルトの広い面を濾過面として利用できる点で優れているが、濾布ベルトが目詰まりを起こし易いという問題がある。出願人は先に、このような目詰まりの問題を有効に解決できる固液分離装置を提案した(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−118678
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、特許文献1に記載された固液分離装置と同様に、目詰まりの問題を有効に解決できる新規な固液分離装置の実現を課題とする。
この発明はまた、上記固液分離装置を用いて効率の良い固液分離を行い得る新規な固液分離システムの実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の固液分離装置は「多量の水分を含んだ処理対象物から水分を分離する装置」である。
「処理対象物」は、一般家庭や食品加工工場、養豚場や養鶏場、あるいはホテルやレストラン等から排出される下水、汚水等の汚泥状のものであり「多量の水分と固形分とが混合した状態の流動体」である。
【0006】
請求項1記載の固液分離装置は、無端ベルト群と、スペーサ群と、変位駆動手段とを有する。
「無端ベルト群」は、複数個の無端ベルトからなる。
個々の無端ベルトは2以上のプーリに掛け回され、掛け回されたベルトのベルト上面が「処理対象物搬送面の一部」をなす。また、無端ベルトの個々は「細幅」である。
【0007】
無端ベルト群を構成する複数の無端ベルトは、ベルト幅方向へ互いに細隙を隔して配列され、個々の無端ベルトのベルト上面の集合が「処理対象物搬送面」を形成する。
即ち、無端ベルト群を上方から見ると、配列した「一連の無端ベルト」の上面が、細隙を隔して「すのこ状」の処理対象物搬送面を形成し、無端ベルト間の各細隙が「水分(この明細書において「水分を主とする液状体」を謂う。)」を流下させるための水分流下部」を構成する。
【0008】
処理対象物は、汚泥状態で処理対象物搬送面上に供給され、無端ベルト群の回転により搬送される間に、水分を主とする液状体が水分流下部、即ち「無端ベルト間の細隙」を通って流下し、固形分が処理対象物搬送面上に残されることにより固液分離される。
【0009】
「スペーサ群」は、無端ベルト群における「隣接する無端ベルト間の細隙」を保つ。即ち、スペーサ群は「隣接する無端ベルト間に設けられて、無端ベルト間の細隙を保つ」ものであり、個々の無端ベルトと別体に設けられてもよいし、個々の無端ベルトを巻き掛けられるプーリの一部(例えばプーリの軸方向に形成されたフランジ状部分)として構成することもできる。
【0010】
「変位駆動手段」は、無端ベルト群の全ての無端ベルトを同一方向に回転駆動するとともに、隣接する無端ベルト同士が「上下方向の所定の範囲で、相対的に往復平行変位しあう」ように相対変位させる。
即ち、変位駆動手段により駆動される無端ベルト群はベルト本来の回転運動をするが、この回転運動と同時に「上下方向に往復運動」をする。この往復運動は一律に揃った運動ではなく、隣接する無端ベルト同士では「互いに相対的に往復平行変位」を行う。例えば、ある特定の無端ベルトに着目すると、この無端ベルト(第1の無端ベルト)に隣接する無端ベルト(第2の無端ベルト)は、第1の無端ベルトに対して上下方向に相対的な往復運動を行うのである。
【0011】
汚泥状の処理対象物における固形成分は「水中に均一に分散している」わけではなく、フロック化された塊や、豚毛等のような固形物として水中に混合している。このため、塊や固形物の中には「水分流下部に詰まったり引っかかったりして、水分流下部の目詰まりを起こす」原因となり得るものであるが、この発明の固液分離装置では、水分流下部をなす細隙を構成する「隣接する無端ベルト」が上下方向に相対的な往復運動を行うので、この往復運動により、細隙に詰まったり引っかかったりする塊や固形物が、細隙や「付着した無端ベルト」から引き剥がされるので水分流下部の目詰まりは有効に回避される。
【0012】
請求項1記載の固液分離装置は、無端ベルト群の各無端ベルトを「偏芯プーリ」に巻き掛け、偏芯プーリの回転に伴い、ベルト上面が回転しつつ上下方向へ往復変位するように構成し、配列方向において隣接する無端ベルトの「上下方向の往復運動の位相」が互いにずれるように「無端ベルト相互における偏芯プーリの偏芯相互の関係」を定め、全ての無端ベルトの駆動プーリを「共通の駆動軸に固設して同時に回転駆動」する構成とすることができる(請求項2)。
【0013】
無端ベルトを上下方向に往復移動させる方法は、上記の偏芯プーリによる方法に限らず、例えば、無端ベルトを巻き掛ける「1個のプーリ」をアイドルプーリとして上下方向に変位可能とし、アイドルプーリを偏芯カム等により上下方向へ変位させて上下方向に往復移動させるようにする方法等、種々の方法が可能である。
【0014】
上記請求項2記載の固液分離装置においては、無端ベルト群のベルト配列方向における「奇数番目の無端ベルト」の上下方向における往復運動を同一位相で行い、「偶数番目の無端ベルト」の上下方向における往復運動を、奇数番目の無端ベルトと略180度ずれた同一位相で行うようにすることができる(請求項3)。このようにすると、奇数番目の無端ベルトのベルト上面と、偶数番目の無端ベルトのベルト上面とが交互に上下する。
【0015】
勿論これに限らず、例えば、無端ベルト群のベルト配列方向において、ベルト配列順に3つのベルトを1組とし、これら3つのベルトに対する偏芯プーリを、回転軸に対して120度ずつ順次ずらした位置関係に設定すれば、nを自然数(n=0、1、2・・)として、ベルト配列方向における3n番目の無端ベルトと、3n+1番目の無端ベルトと、3n+2番目の無端ベルトが、それぞれ「120度ずつ位相のずれた上下方向の往復運動」を行うことになるが、この場合にも、勿論、互いに隣接する無端ベルト間では「上下方向の所定の範囲で、相対的な往復平行変位」が行われる。
【0016】
請求項1または2または3記載の固液分離装置はまた「無端ベルトの外周面がベルト回転方向に周期的な凹凸構造を有する」構成とすることができる(請求項4)。
請求項1〜4の任意の1に記載の固液分離装置は「無端ベルト群による処理対象物搬送面の上方から、処理対象物を加圧する加圧手段」を有することができる(請求項5)。このような加圧手段を用いることにより、重力による自然な水分分離に加え「加圧による絞り効果」により更なる水分分離を行うことができ、水分分離効率をより高めることが可能となる。また、分離された固形分が加圧されて圧縮されるので、固形分の回収容量を有効に高めることができる。
【0017】
請求項1〜5の任意の1に記載の固液分離装置における、無端ベルト群による処理対象物搬送面は「略水平方向」となるようにすることができるが、これに限らず、処理対象物搬送面が傾いていても良く、例えば、処理対象物搬送面が「下流側から上流側(搬送が開始される側)へ向かって傾下している」ようにしてもよい(請求項6)。
【0018】
また、請求項1〜6の任意の1に記載の固液分離装置は「無端ベルト群のベルト内周部にトレイを有する」ことができる(請求項7)。
「トレイ」は、ベルト内周部に、処理対象物搬送面に対して「上向きに対向」するように配設され、処理対象物搬送面から流下する水分(水分を主とする液状体)を受け、処理対象物搬送面側方(無端ベルト群の配列方向の配列端部側方)から無端ベルト群の下方へ導液する。
上述したように、処理対象物は汚泥状態で処理対象物搬送面上に供給され、無端ベルト群の回転により搬送される間に、水分を主とする液状体が無端ベルト間の細隙を通って流下し、固形分が処理対象物搬送面上に残されることにより固液分離されるが、その際に、細隙に詰まったり引っかかったりする塊や固形物が、隣接する無端ベルト間の上下方向に相対的な往復運動により、細隙部から除去されるので水分流下部の目詰まりは有効に回避される。
【0019】
しかし、このようにしても、固形分や塊が「プーリの下方を移動中の無端ベルトの内周面」に付着することがあり、無端ベルト内周面に付着した固形物等がさらにプーリに付着してプーリの径を増大させ、無端ベルト回転の負荷を増大させることが考えられる。
【0020】
請求項7記載の固液分離装置のように「無端ベルト群のベルト内周部に、処理対象物搬送面に対して上向きに対向するように配設され、処理対象物搬送面から流下する水分を受け、処理対象物搬送面側方から無端ベルト群の下方へ導液するトレイ」を設ければ、処理対象物搬送面から流下した水分が「プーリ下方を移動中の無端ベルト内周面」に掛かることがないので、上記の如き問題を有効に回避できる。
【0021】
この発明の固液分離システムは、固液分離装置と、処理対象物供給手段と、回収タンクと、制御手段とを有する(請求項8)。
「固液分離装置」は上記請求項1〜7の任意の1に記載の固液分離装置である。
「処理対象物供給手段」は、多量の水分を含んだ処理対象物を蓄え、汚泥状の処理対象物を固液分離装置に供給する手段である。
「回収タンク」は、固液分離装置により処理対象物から分離された(水分を主とする)液状体を回収して貯留するとともに、処理水を外部へ排出する。
「制御手段」は、少なくとも固液分離装置の動作を制御する。
【0022】
請求項8記載の固液分離システムは、回収タンクの底部に沈殿した「固形成分を含む分離液」を、処理対象物供給手段に再供給する再供給手段を有する構成とすることができる(請求項9)。また、請求項8または9記載の固液分離システムは、処理対象物供給手段が「固液分離装置への処理対象物の供給量を調整可能」である構成であることができ(請求項10)、この場合、固液分離装置として請求項6記載のものを用い、処理対象物供給手段が「処理対象物のオーバフロー量の調整により、処理対象物の固液分離装置への供給量を調整する機能」を有するものであることができる(請求項11)。
【0023】
なお、無端ベルトのベルト幅は数mm〜数10mm程度、ベルト厚みは5〜10mm程度、無端ベルト間の細隙の大きさは0.3mm〜数mm程度が実用的であり、処理対象物に応じて適宜に設定できる。無端ベルトの配列個数は、固液分離装置における処理対象物搬送面の幅と、個々の無端ベルトの幅および上記細隙幅とにより定まる。
【0024】
1例を挙げれば、処理対象物搬送面幅:1000mm、ベルト幅:9.5mm、細隙幅:0.5mmの場合で、無端ベルトの配列数は100個となる。
【発明の効果】
【0025】
上記の如く、この発明の固液分離装置によれば、「水分流下部」が無端ベルト間の細隙により形成されるので、濾布ベルトを用いる場合に比して水分の流下効率が良く、水分流下部に詰まったり引っかかったりする「固形物やフロック化された固形分の塊」は、隣接する無端ベルト相互の「相対的な上下運動」により細隙部から除去されるので目詰まりが生じ難い。
【0026】
従って、かかる固液分離装置を用いる固液分離システムによれば、効率よく目詰まりの生じ難い固液分離を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、この発明の固液分離装置の実施の1形態を要部のみ説明図的に示している。
図1において、符号P11、P12、P21、P22はプーリ、符号B1、B2は無端ベルトを示している。また、符号11、12は支軸、符号Mはモータ、符号13は加圧手段、符号14は掻取りブレード、符号15はシュータ、符号100は処理対象物をそれぞれ示している。なお、以下に説明するように、プーリP11とP21、プーリP12とP22との間には「スペーサ」が設けられるが、図が複雑になるので、図1においてはスペーサを図示していない。
【0028】
図2は、図1における無端ベルトB1、B2等の配列状態を説明図的に示す図であり、図1の状態を、図1の左方から見た状態として示している。
図2の左右方向は水平方向である。支軸11は水平方向に配置され、この支軸11にプーリP11、P21、・・・Pi1、Pj1、・・・が固定的に支持されている。図2に示すように、プーリの配列を右側から数えて「奇数番目のプーリ」をプーリPi1(i=1、3、5、・・)、「偶数番目のプーリ」をPj1(j=2、4、6、・・)とする。
【0029】
隣接するプーリ間にはスペーサS1、S2、・・Si、Sj、・・が設けられている。図2に示す如く、スペーサの配列を右側から数えて「奇数番目のスペーサ」をスペーサSi(i=1、3、5・・・)、「偶数番目のスペーサ」をスペーサSj(j=2、4、6・・・)とする。スペーサSi、Sjは隣接するプーリ間に配置され「隣接するプーリに巻き掛けられる無端ベルトの間隔」、即ち「水分流下部をなす細隙」を所定の間隔に保持する。
【0030】
図2には示されていないが、図3に即して後述するように、支軸12に支持されたプーリを上記プーリPi1、Pj1に対応させてプーリPi2、Pj2とする。支軸12に支持されたプーリPi2、Pj2の隣接するプーリ間には、それぞれスペーサSpi、Spj(iは奇数、Jは偶数)が設けられている。
【0031】
上記奇数番目のプーリPi1、Pi2に巻き掛けられたベルトをベルトBi(i=1、3、5、・・)とし、偶数番目のプーリPj1、Pj2に巻き掛けられたベルトをベルトBj(j=2、4、6、・・)とする。
【0032】
図1に例示するように、プーリP11、P12は支軸11、12に対して偏芯しており、プーリP21、P22も支軸11、12に対して偏芯している。
図2に示す如く、図の右側から数えて奇数番目のプーリPi1は全て「プーリP11と同じ」に偏芯しており、偶数番目のプーリPj1は全て「プーリP22と同じ」に偏芯している。プーリP11の偏芯と、プーリP21の偏芯とは「支軸11に対して同方向且つ反対向き」である。図2には示されていないが、支軸12に支持されたプーリPi2は全て「プーリPi1と同様」に偏芯しており、プーリP2jは全て「プーリPj1と同様」に偏芯している。
【0033】
図1は、奇数番目のプーリP11、P12(i=1)に巻き掛けられた奇数番目のベルトB1(i=1)と、偶数番目のプーリP21、P22(j=2)に巻き掛けられた偶数番目のベルトB2(j=2)とが上下方向に最も離れた状態、即ち、奇数番目のベルトBiの高さが最も高く、偶数番目のベルトBjの高さが最も低い状態を示している。
【0034】
図1においては、ベルトBiとBjとの間に「高さ方向の隙間」があるように描いてあるが、これは図を見やすくするためであり、実際には、ベルトBiとBjとの高さ方向の高低差は「ベルトの厚み以下」であり、ベルトBi、Bj間に「上下方向の隙間」が生じることはない。
【0035】
図3は「無端ベルトの配列の状況」を説明図的に示している。図の繁雑を避けるため、無端ベルトは隣接する2つの無端ベルトBi、Bjのみを「巻きかけ状態」で示し、他のベルトは「プーリに巻き付いた部分の断面」を示している。
図3の状態においては、無端ベルトBiとBjとが、ベルト搬送方向(図の上下方向)において「相互に最も大きくずれた状態」を示している。この状態においては、奇数番目のベルトBiのベルト上面と偶数番目のベルトBjのベルト上面とは同一の高さにある。なお、前述のように、支軸11に設けられたスペーサの個々に対応して支軸12に設けられたスペーサを、スペーサSi、Sjに対応させてスペーサSpi、Spjで示す。
【0036】
図2に戻ると、図2において符号C1は上ケース、符号C2は下ケースを示す。
上ケースC1を、図4を参照して説明する。
上ケースC1は、その上方から見た状態を示す図4(c)のように、2枚の側板C100、C101と、前板C102と後板C103とを「底のない箱状」に組み合わせて一体化してなる。図4において、上ケースC1を正面側から見た状態を示す(a)、ベルト搬送方向から見た状態を示す(b)、上面図(c)に示すように、側板C100、C101の下部は「折り曲げ部」をなし、この折り曲げ部の下部に4個の軸受C11、C12、C13、C14がボルトBTにより固定されている。4個の軸受C11〜C14の位置関係は図3に示す如くである。
【0037】
下ケースC2を、図5を参照して説明する。
下ケースC2は、これを上方から見ると、図5(b)に示すように、側板C200、C201、前板C202、C203と底板C204とを箱型に組み合わせて成り、側板C200、C201には軸受C21、C22、C23、C24が一体的に形成もしくは固設されている。底板C204は、長方形形状に開口している。図5(a)は側面図である。
【0038】
図2、図3に示すように、支軸11は上ケースC1の軸受C11、C13の軸穴を貫通し、さらに下ケースの軸受C21、C23を貫通し、下ケースC2に保持されており、モータMにより回転駆動されるようになっている。また、図3に示すように、支軸12は上ケースC1の軸受C12、C14の軸穴を貫通し、さらに下ケースC2の軸受C22、C24を貫通し、下ケースC2に保持され、回転自在である。
【0039】
図3に示すように、支軸11を貫通された軸受C11、C13の外側部はセットカラーCL1、CL3により固定され、支軸12を貫通された軸受C12、C14の外側部はセットカラーCL2、CL4により固定されている。
【0040】
図6を参照して、支軸11、12、プーリPi1、Pj1、Pi2、Pj2、スペーサSi、Sj、Spi、Spjを説明する。
支軸11、12は円柱状であり、図6(a)に断面形状を示すように、周面部に軸長手方向にわたるキー溝M1、M2が「軸心を挟んで反対側の位置」に形成されている。プーリPi1、Pi2、Pj1、Pj2は、図6(b)に示すように円形状で、その中心位置から偏芯量:δ(2〜5mm程度が好適である。)だけ偏芯させて、支軸11または12への嵌合穴Hが穿設されている。嵌合穴Hは支軸11、12の直径に等しい直径の円形状であって、その一部にキー溝M1もしくはM2に係合するキーH1が凸設されている。
【0041】
スペーサSi、Sj、Spi、Spjは、図6(d)に示すように円形状で、その中心部に支軸11または12に嵌合するように嵌合穴60(キー溝に係合する突起を有する。)を形成されている。スペーサSi、Sj、Spi、Spjの直径は、プーリPi1、Pj1、Pi2、Pj2の直径(80〜130mm程度が好適である。)と偏芯量:δと、無端ベルトBi、Bjの厚さとの和に2〜3mmを加えた大きさ(100〜150mm程度)が好ましく、厚みは0.3〜0.8mm程度が好適である。
【0042】
プーリPi1、Pj1、Pi2、Pj2は、図6(c)に示すように、支軸11または12に設けられる。プーリPi1、Pj1の支軸11への係合を例にとって説明すると、プーリPi1とプーリPj1は支軸11に対し「偏芯の向きが互いに逆向き(図6(c)において上下方向)」となるように嵌合される。図6(c)には図示されていないが、隣接するプーリPi1、Pj1の間にはスペーサSi、Sjが支軸11に嵌合配置される。
【0043】
上に説明した所から明らかなように、説明中の固液分離装置を上方から見ると、上ケースC1の上方が長方形形状に開口し、その下方に「一群の無端ベルトBi、Bjの配列」が、上ケースC1に対する「すのこ状の底部」をなすように設けられており、その下位に設けられた下ケースC2は、その下部が開放している。
【0044】
個々の無端ベルトBi、Bjのベルト上面は「処理対象物搬送面の一部」をなし、無端ベルト群のベルト上面は、個々の無端ベルトBi、Bjのベルト上面が集合して「処理対象物搬送面」を構成する。隣接する無端ベルト間の間隙はスペーサSi、Sj、Spi、Spjの厚さ(0.3〜0.8mm程度)に等しく、無端ベルトBi、Bjのベルト幅は5〜10mm程度が好適であり、厚さも8〜10mm程度が好適である。
【0045】
図1に戻ると、複数のベルトBi、Bjによる無端ベルト群の上部には、加圧手段13が設けられ、その左方に掻取りブレード14とシュータ15が設けられている。また、支軸11は駆動モータMにより回転駆動されるようになっている。
【0046】
図1は、無端ベルト群による処理対象物搬送面上に、水分含有率:99%以上の汚泥状態の処理対象物100が供給され、固液分離が行われつつある状態を示している。処理対象物100は「多量の水分を含んだ汚水をフロック化処理した汚泥状のもの」等であり、図1の上方から処理対象物搬送面上に供給される。
【0047】
駆動モータMにより支軸11を反時計回りに回転駆動すると、無端ベルトBi、Bjは反時計回りに回動しつつ、プーリPi1等の偏芯により上下方向に往復運動する。このとき配列方向に奇数番目の無端ベルトBiと偶数番目の無端ベルトBjは「回転に伴う上下運動の位相」が180度ずれており、従って、隣接する無端ベルト同士は「上下方向の所定の範囲(プーリPi1、Pj1の偏芯量:δの2倍の範囲)」で、相対的に往復平行変位しあう。
【0048】
処理対象物100に含まれる水分110は、「水分流下部をなす、隣接する無端ベルト間の隙間(スペーサSi、Sj、Spi、Spjの厚みによる0.3〜0.8mm程度の隙間)」を通って流下し、処理対象物搬送面上の処理対象物100から分離する。このようにして、処理対象物100は、無端ベルト群により搬送される間に、処理対象物100に含まれる水分が次第に減少し、脱水されて固形状になる。図1において、符号120は「固形状となった処理対象物」を示している。
【0049】
図1の実施の形態では、処理対象物100は搬送の途上において加圧手段13により加圧される。加圧手段13は圧板131とウエイトWTとを有し、ウエイトWTの加重を、厚板131を介して処理対象物100に印加するようになっている。厚板131は、長方形形状の板、例えばステンレス板を若干屈曲させてなり、処理対象物100を迎え入れる側が上方へ向かって傾斜している。このため、処理対象物100は搬送されるに従い、圧板131による押圧力を次第に強く受ける。
【0050】
圧板131による押圧力により処理対象物100は「さらに水分を絞られ」たのち、掻取りブレード14により無端ベルト群から分離され、シュータ15上を通って図示されない回収部へ回収される。
【0051】
図7は、無端ベルト群における「互いに隣接する無端ベルトBi、Bjの上下方向における相対的な往復運動」を説明するための図である。この図では、無端ベルトBjを固定して描き、無端ベルトBiの「無端ベルトBjに対する相対運動」を示している。
【0052】
支軸11の反時計回りの回転駆動に伴い、無端ベルトBiは、無端ベルトBjに相対的に回転運動する。図7(a)では、無端ベルトBiのベルト上面が無端ベルトBjのベルト上面より上位にあり、処理対象物120(図示の簡単のために固形化した状態を示している。)は主として無端ベルトBiのベルト面の回転により搬送される。
【0053】
図7(b)では無端ベルトBi、Bjはそのベルト上面が同じ高さにあり、(c)では無端ベルトBjのベルト面が無端ベルトBiのベルト上面より高く、(d)では無端ベルトBi、Bjはそのベルト上面が同じ高さにある。従って、図7(b)と(d)では、処理対象物120は無端ベルトBi、Bjのベルト上面により搬送され、図7(c)では主としてベルトBjのベルト上面により搬送される。
【0054】
処理対象物搬送面上に供給された処理対象物100の水分は、無端ベルト間の細隙部を通って流下するが、流下する部分には固形物やフロック化した塊も含まれている。流下する固形物(例えば、処理対象物が、養豚場からの汚水を含む汚泥である場合には餌くずや豚毛等)やフロック化した塊の一部は、無端ベルト間に引っかかったり付着したりするが、隣接する無端ベルトが「上下・前後方向に往復相対運動する」ので、細隙部や「付着した無端ベルト」から確実に除去され、細隙部の目詰まりを生じることがない。
【0055】
上に実施の形態を説明した固液分離装置は、多量の水分を含んだ処理対象物100から水分を分離する装置であって、2以上のプーリPi1、Pi2(Pj1、Pj2)に掛け回されてベルト上面が処理対象物搬送面の一部をなす細幅の無端ベルトBi、Bjを複数個、ベルト幅方向へ互いに細隙を隔して配列してなり、個々の無端ベルトのベルト上面の集合が処理対象物搬送面を形成するとともに、無端ベルト間の各細隙が水分を流下させるための水分流下部を構成する無端ベルト群と、この無端ベルト群における隣接する無端ベルト間の細隙を保つスペーサ群(Si、Sj、Spi、Spj)と、無端ベルト群の全ての無端ベルトを同一方向に回転駆動するとともに、隣接する無端ベルト同士が、上下方向の所定の範囲で、相対的に往復平行変位しあうように相対変位させる変位駆動手段とを有するものである(請求項1)。
【0056】
変位駆動手段は、偏芯したプーリPi1等、支軸11、12、駆動モータMにより構成されている。即ち、無端ベルト群の各無端ベルトBi、Bjは偏芯プーリPi1、Pi2、Pj1、Pj2に巻き掛けられ、偏芯プーリの回転に伴い、ベルト上面が「回転により移動しつつ、上下方向へ往復変位する」ように構成され、配列方向において隣接する無端ベルトの、上下方向の往復運動の位相が互いにずれるように「無端ベルト相互における偏芯プーリの偏芯相互の関係」が定められており、全ての無端ベルトBi、Bjの駆動プーリPi1、Pj1が共通の駆動軸11に固設されて同時に回転駆動される(請求項2)。
【0057】
そして、無端ベルト群のベルト配列方向における奇数番目の無端ベルトBiの上下方向における往復運動は同一位相で行われ、無端ベルト群のベルト配列方向における偶数番目の無端ベルトBjの上下方向における往復運動は、奇数番目の無端ベルトBiと「略180度ずれた同一位相」で行われる(請求項3)。さらに、無端ベルト群による処理対象物搬送面の上方から、処理対象物100を加圧する加圧手段13を有する(請求項5)。
【0058】
上記実施の形態に即して若干補足すると、無端ベルト群の各無端ベルトBi、Bjとこれらを巻きかけるプーリPi1等は「通常のベルトとプーリ」により構成することもできるが、無端ベルトやプーリが「処理対象物の水分により濡れた状態で駆動される」ことを考慮すると、無端ベルトとプーリとの間にスリップが生じないことが好ましく、このためには、少なくとも駆動側のプーリPi1、Pj1の外周に「駆動用の歯」を形成し、無端ベルトの内周に上記駆動用の歯と噛み合う溝を形成した「タイミングベルト」として個々の無端ベルトを構成するのがよい。
【0059】
個々の無端ベルトの外周面は「平坦な面」としてもよいが、図8に示す無端ベルトBのように、外周面がベルト回転方向(図の左右方向)に周期的な凹凸構造(図の例では、三角形状の凸部Btの配列により形成されている。)を有するようにすることにより、処理対象物に対する搬送性を向上させることができる(請求項4)。
【0060】
また、加圧手段13による加圧効果を「より効果的」に行うには、図9に示す例のように、無端ベルトBi等の内周側に、スライダ17を固定的に設け(下ケースC2の側板に固定すればよい。)、圧板131と共に無端ベルトBi等を挟むようにすることにより、圧板131の加圧力を有効に処理対象物100、120に作用させるのがよい。なお、加圧手段13の圧板131を、その左端部において軸支して上下方向に揺動可能とし、ウエイトWTを図の左右方向に位置調整可能として、圧板131による加圧力を調整するようにしてもよい。
【0061】
図10は、請求項7記載の固液分離装置の実施の1形態を説明するための図である。
図10(a)において、符号13は加圧手段、符号14は掻取りブレードを示し、符号Bは無端ベルト群を簡略化して示している。符号70はトレイを示す。
【0062】
トレイ70を、図11を参照して説明する。図11の(a)は、トレイ70の平面図、(b)は(a)におけるb−b断面図、(c)は(a)におけるc−c断面図である。図11(a)における左右方向が「処理対象物の搬送方向」に対応する。
【0063】
図11(a)に示されたように、トレイ70は、受け面71と、側斜面部72、73と、前斜面部74、後斜面部75と、取り付け部76a〜76dとを有し、この例では、1枚のステンレス板により形成されている。
【0064】
受け面71は、処理対象物搬送面に対して上向きに対向する部分であって、処理対象物搬送面から流下する水分を受ける部分である。前斜面部74および後斜面部75は、図11(b)に示すように、受け面71から斜め上方へ向かうように傾斜し、受け面71が受けた水分が受け面71の前後方向(処理対象物搬送方向)へ流れるのを防止する。
【0065】
また、側斜面部72、73は、図11(c)に示すように、受け面71から斜め下方に向かうように傾斜している。
【0066】
図10に戻ると、図10(b)は、トレイ70を下ケースC2に取り付けた状態を、処理対象物搬送方向(図面の手前側が前方である。)から見た状態を示している。トレイ70は、取り付け部76b、76d等により、下ケースC2の内壁部に凸設されているステ−CST1、CST2等に取り付けネジNb、Nd等により固定されて設けられる。
【0067】
図10(b)において符号BUは、無端ベルト群の「処理対象物搬送面」を構成する部分、符号BLは「プーリの下方を移動中の無端ベルト群」を示している。
【0068】
図10(b)に示すように、トレイ70の側斜面部72、73は、プーリの下方を移動中の無端ベルト群BLの側方において下方に傾斜している。
【0069】
従って、無端ベルト群の処理対象物搬送面をなす部分BU上を搬送される処理対象物から分離された水分は、トレイ70の受け面71上に落ちるが、前斜面部74、後斜面部75により搬送方向への流れを阻止され、側斜面部72、73から流れ落ちて下ケースC2内に落ちる。受け面71は幅方向(図10(b)における左右方向)において、処理対象物搬送面の幅全体をカバーし、プーリの下方を移動中の無端ベルト群BUの上を覆っているので、側斜面部72、73から流れ落ちる水分(固形物やフロック化した塊が含まれている。)は「プーリの下方を移動中の無端ベルトの内周面」に掛かることがない。
【0070】
従って、無端ベルト内周面に付着した固形物等がさらにプーリに付着してプーリの径を増大させ、無端ベルト回転の負荷を増大させる問題は有効に回避される。
【0071】
即ち、図10、11に即して実施の形態の特徴部分を説明した固液分離装置は、無端ベルト群Bのベルト内周部に、処理対象物搬送面に対して上向きに対向するように配設され、処理対象物搬送面から流下する水分を受け、処理対象物搬送面側方から無端ベルト群の下方へ導液するトレイ70を有する(請求項7)。
【0072】
図12は固液分離システムの実施の1形態を説明図的に示している。
この固液分離システムは、固液分離装置10と、処理対象物供給手段50と、回収タンク200と、図示されない制御手段と、ポンプ210を有する。
【0073】
固液分離装置10は上に実施の形態を説明したものであり、上ケース内に受け板150を有し、処理対象物供給手段50は、汚泥状の処理対象物100を受け板150の上方から固液分離装置10に供給する。
【0074】
処理対象物供給手段50は処理対象物となる汚水等を貯容するが、貯容された汚水等には、その種類により必要に応じて「高分子凝集剤」が添加され、所謂「フロック化処理」が行われる。上記汚水が、養豚場からの汚水で、これに含まれる固形成分が、餌の残骸や豚毛等である場合には、フロック化処理を行わなくても固液分離が可能な場合もある。
【0075】
この例において、処理対象物供給手段50は「流量調整可能な計量槽とフロック化処理を行うフロック化装置とを合わせたもの」である。
【0076】
処理対象物100は固液分離装置10に供給される段階に於いて「含水率99%」程度の「汚泥状態」である。固液分離装置10により処理対象物100から水分を分離された汚泥の含水率は、処理対象物100の状態や固液分離装置10の運転状態にもよるが、80〜85%程度とすることができる。
【0077】
固液分離装置10により処理対象物100から分離した水分を含む液状体110は、回収タンク200内に回収される。回収タンク200の内部はバッフル板231、232により仕切られており、液状態110はバッフル板231よりも右側の領域に回収される。回収タンク200の底部はバッフル板231の下部において通底している。
【0078】
回収タンク200内に回収された液状体110には「固形分」も含まれており、この固形分は回収タンク200の底部に沈殿物240として沈殿する。回収タンク200の底部に設けられたポンプ210は、沈殿物240を含む分離液を処理対象物供給手段50へ戻す。即ち、ポンプ210は、回収タンク200の底部に沈殿した固形成分を含む分離液を、処理対象物供給手段50に再供給する再供給手段を構成する。
【0079】
戻された分離液は、処理対象物供給手段50から再度、固液分離装置10に供給されて固液分離を行われる。再供給手段としてのポンプ210による「沈殿物240を含む分離液の処理対象物供給手段50への還流」は所定時間ごとに定期的に行われる。
【0080】
固液分離装置10の動作、処理対象物供給手段50による処理対象物100の供給、ポンプ210による「沈殿物240を含む分離液の処理対象物供給手段50への還流」等は図示されない制御手段(マイクロコンピュータ等)により制御される。
【0081】
回収タンク200内に回収された液状体のうち「バッフル板232の左側の領域における上澄み液」が処理水として、オーバフローにより排出部220から回収タンク外へ排出される。
【0082】
即ち、図12に実施の形態を示した固液分離システムは、固液分離装置10と、多量の水分を含んだ処理対象物を蓄え、処理対象物を固液分離装置に供給する処理対象物供給手段50と、固液分離装置10により処理対象物100から分離された液状体を回収して貯留するとともに、処理水を外部へ排出する回収タンク200と、少なくとも固液分離装置の動作を制御する「図示されない制御手段」とを有し、固液分離装置10は、請求項1記載の固液分離装置である。
【0083】
また、回収タンク200の底部に沈殿した固形成分(沈殿物240)を含む分離液を、処理対象物供給手段50に再供給する再供給手段210を有する(請求項10)。
【0084】
勿論、処理対象物供給手段50が、固液分離装置10への処理対象物の供給量を調整可能であるようにすることができる(請求項11)。処理対象物供給手段50から固液分離装置10への処理対象物の供給量を調整する方法としては種々の方法が可能である。1例として、処理対象物を固液分離装置10に供給する供給管に調整弁を設け、この調整弁により処理対象物の流量を調整する方法を挙げることができる。
【0085】
図13は、請求項11記載の固液分離システムの実施の別形態を特徴部分のみ示している。符号10Aは固液分離装置を示している。固液分離装置10A下部の回収タンク部分の構成は図10の実施の形態におけるのと同様のものを用いることができる。
【0086】
この実施の形態においては、個々の無端ベルトBi等により構成される無端ベルト群による処理対象物搬送面が、下流側(図の左方)から上流側へ向かって傾下しており(請求項6)、処理対象物供給手段は「符号50Aにより示す処理対象物供給部と、固液分離装置10A内に形成された貯留部10Bと導液管10Cと還流部10Dと液面調整手段10E」を有している。処理対象物供給部50Aは「流量調整可能な計量槽とフロック化処理を行うフロック化装置とを合わせたもの」とすることができる。
【0087】
処理対象物中に含まれる「ゴミ」の量が極端に多い場合や、汚泥状の処理対象物100が粘性を持ち、離水性が低い場合、無端ベルト群の「処理対象物搬送面」上に多量の固形物が堆積して、処理対象物搬送面からの水分の流下が妨げられる場合がある。このような場合、図1の実施の形態のように、処理対象物搬送面が水平に近いと、処理対象物から水分が十分に分離されず「含水率の高いままの処理対象物が装置外へ排出される」ことがあり得る。
【0088】
図13に実施の形態を示す固形分離装置システムでは、このような不具合が以下の如く解消される。即ち、処理対象物100は、処理対象物供給部50Aから、貯留部10Bに供給され、貯留部10Bからオーバフローした部分が「傾斜した処理対象物搬送面」上に供給される。
【0089】
貯留部10Bに貯留された処理対象物100は、その一部がオーバフローにより導液管10Cに流れ込む。導液管10Cの端部は還流部10Dに連結している。還流部10Dは導液管10Cにより導液される処理対象物100を、処理対象物供給部50Aに還流させるようになっている。
【0090】
液面調整手段10Eはパイプ状であって、導液管10Cに近接して導液管10Cを囲繞し、導液管10Cに対して上下方向へ可動であり、図示されない調整機構により上下方向の位置を調整できるようになっている。液面調整手段10Eの上部開口は導液管10Cの上部開口よりも上位に位置するようになっており、従って、オーバフローにより導液管10Cに流れ込む流量は、液面調整手段10Eの上部開口の高さにより調整され、この調整により上記「傾斜した処理対象物搬送面」上に供給された処理対象物100の液面高さが調整される。この液面高さの調整により「処理対象物搬送面、即ち、固液分離装置10Aへの処理対象物の供給量」が調整される。このように供給量を調整することにより「処理対象物から水分が十分に分離されず、含水率の高いままの処理対象物が装置外へ排出される」事態を有効に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】固液分離装置の実施の1形態を説明するための図である。
【図2】図1の実施の形態におけるプーリとスペーサの配列を説明する図である。
【図3】図1の実施の形態における無端ベルトの配列を説明する図である。
【図4】図1の実施の形態における上ケースを説明する図である。
【図5】図1の実施の形態における下ケースを説明する図である。
【図6】図1の実施の形態におけるプーリ、支軸、スペーサを説明する図である。
【図7】図1の実施の形態における隣接する無端ベルト間の相対的な往復運動を説明する図である。
【図8】無端ベルトの外周面の形状の1例を説明するための図である。
【図9】固液分離装置の実施の別形態を特徴部分のみ示す図である。
【図10】請求項7記載の発明の実施の1形態の特徴部分を示す図である。
【図11】図10に示すトレイの形状を説明するための図である。
【図12】固液分離システムの実施の1形態を説明する図である。
【図13】固液分離システムの実施の別形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0092】
B1 無端ベルト
P11、P12 プーリ
B2 無端ベルト
P21、P22 プーリ
100 処理対象物
【技術分野】
【0001】
この発明は、固液分離装置および固液分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多量の水分を含んだ汚泥状の処理対象物、例えば、汚泥水を脱水処理する処理方式として、処理対象物を濾布ベルト上に供給し、処理対象物中の水分を漉布ベルトにより濾過し、濾布ベルト上に残った固形分を回収する方式が広く知られている。この処理方式は、濾布ベルトの広い面を濾過面として利用できる点で優れているが、濾布ベルトが目詰まりを起こし易いという問題がある。出願人は先に、このような目詰まりの問題を有効に解決できる固液分離装置を提案した(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−118678
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、特許文献1に記載された固液分離装置と同様に、目詰まりの問題を有効に解決できる新規な固液分離装置の実現を課題とする。
この発明はまた、上記固液分離装置を用いて効率の良い固液分離を行い得る新規な固液分離システムの実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の固液分離装置は「多量の水分を含んだ処理対象物から水分を分離する装置」である。
「処理対象物」は、一般家庭や食品加工工場、養豚場や養鶏場、あるいはホテルやレストラン等から排出される下水、汚水等の汚泥状のものであり「多量の水分と固形分とが混合した状態の流動体」である。
【0006】
請求項1記載の固液分離装置は、無端ベルト群と、スペーサ群と、変位駆動手段とを有する。
「無端ベルト群」は、複数個の無端ベルトからなる。
個々の無端ベルトは2以上のプーリに掛け回され、掛け回されたベルトのベルト上面が「処理対象物搬送面の一部」をなす。また、無端ベルトの個々は「細幅」である。
【0007】
無端ベルト群を構成する複数の無端ベルトは、ベルト幅方向へ互いに細隙を隔して配列され、個々の無端ベルトのベルト上面の集合が「処理対象物搬送面」を形成する。
即ち、無端ベルト群を上方から見ると、配列した「一連の無端ベルト」の上面が、細隙を隔して「すのこ状」の処理対象物搬送面を形成し、無端ベルト間の各細隙が「水分(この明細書において「水分を主とする液状体」を謂う。)」を流下させるための水分流下部」を構成する。
【0008】
処理対象物は、汚泥状態で処理対象物搬送面上に供給され、無端ベルト群の回転により搬送される間に、水分を主とする液状体が水分流下部、即ち「無端ベルト間の細隙」を通って流下し、固形分が処理対象物搬送面上に残されることにより固液分離される。
【0009】
「スペーサ群」は、無端ベルト群における「隣接する無端ベルト間の細隙」を保つ。即ち、スペーサ群は「隣接する無端ベルト間に設けられて、無端ベルト間の細隙を保つ」ものであり、個々の無端ベルトと別体に設けられてもよいし、個々の無端ベルトを巻き掛けられるプーリの一部(例えばプーリの軸方向に形成されたフランジ状部分)として構成することもできる。
【0010】
「変位駆動手段」は、無端ベルト群の全ての無端ベルトを同一方向に回転駆動するとともに、隣接する無端ベルト同士が「上下方向の所定の範囲で、相対的に往復平行変位しあう」ように相対変位させる。
即ち、変位駆動手段により駆動される無端ベルト群はベルト本来の回転運動をするが、この回転運動と同時に「上下方向に往復運動」をする。この往復運動は一律に揃った運動ではなく、隣接する無端ベルト同士では「互いに相対的に往復平行変位」を行う。例えば、ある特定の無端ベルトに着目すると、この無端ベルト(第1の無端ベルト)に隣接する無端ベルト(第2の無端ベルト)は、第1の無端ベルトに対して上下方向に相対的な往復運動を行うのである。
【0011】
汚泥状の処理対象物における固形成分は「水中に均一に分散している」わけではなく、フロック化された塊や、豚毛等のような固形物として水中に混合している。このため、塊や固形物の中には「水分流下部に詰まったり引っかかったりして、水分流下部の目詰まりを起こす」原因となり得るものであるが、この発明の固液分離装置では、水分流下部をなす細隙を構成する「隣接する無端ベルト」が上下方向に相対的な往復運動を行うので、この往復運動により、細隙に詰まったり引っかかったりする塊や固形物が、細隙や「付着した無端ベルト」から引き剥がされるので水分流下部の目詰まりは有効に回避される。
【0012】
請求項1記載の固液分離装置は、無端ベルト群の各無端ベルトを「偏芯プーリ」に巻き掛け、偏芯プーリの回転に伴い、ベルト上面が回転しつつ上下方向へ往復変位するように構成し、配列方向において隣接する無端ベルトの「上下方向の往復運動の位相」が互いにずれるように「無端ベルト相互における偏芯プーリの偏芯相互の関係」を定め、全ての無端ベルトの駆動プーリを「共通の駆動軸に固設して同時に回転駆動」する構成とすることができる(請求項2)。
【0013】
無端ベルトを上下方向に往復移動させる方法は、上記の偏芯プーリによる方法に限らず、例えば、無端ベルトを巻き掛ける「1個のプーリ」をアイドルプーリとして上下方向に変位可能とし、アイドルプーリを偏芯カム等により上下方向へ変位させて上下方向に往復移動させるようにする方法等、種々の方法が可能である。
【0014】
上記請求項2記載の固液分離装置においては、無端ベルト群のベルト配列方向における「奇数番目の無端ベルト」の上下方向における往復運動を同一位相で行い、「偶数番目の無端ベルト」の上下方向における往復運動を、奇数番目の無端ベルトと略180度ずれた同一位相で行うようにすることができる(請求項3)。このようにすると、奇数番目の無端ベルトのベルト上面と、偶数番目の無端ベルトのベルト上面とが交互に上下する。
【0015】
勿論これに限らず、例えば、無端ベルト群のベルト配列方向において、ベルト配列順に3つのベルトを1組とし、これら3つのベルトに対する偏芯プーリを、回転軸に対して120度ずつ順次ずらした位置関係に設定すれば、nを自然数(n=0、1、2・・)として、ベルト配列方向における3n番目の無端ベルトと、3n+1番目の無端ベルトと、3n+2番目の無端ベルトが、それぞれ「120度ずつ位相のずれた上下方向の往復運動」を行うことになるが、この場合にも、勿論、互いに隣接する無端ベルト間では「上下方向の所定の範囲で、相対的な往復平行変位」が行われる。
【0016】
請求項1または2または3記載の固液分離装置はまた「無端ベルトの外周面がベルト回転方向に周期的な凹凸構造を有する」構成とすることができる(請求項4)。
請求項1〜4の任意の1に記載の固液分離装置は「無端ベルト群による処理対象物搬送面の上方から、処理対象物を加圧する加圧手段」を有することができる(請求項5)。このような加圧手段を用いることにより、重力による自然な水分分離に加え「加圧による絞り効果」により更なる水分分離を行うことができ、水分分離効率をより高めることが可能となる。また、分離された固形分が加圧されて圧縮されるので、固形分の回収容量を有効に高めることができる。
【0017】
請求項1〜5の任意の1に記載の固液分離装置における、無端ベルト群による処理対象物搬送面は「略水平方向」となるようにすることができるが、これに限らず、処理対象物搬送面が傾いていても良く、例えば、処理対象物搬送面が「下流側から上流側(搬送が開始される側)へ向かって傾下している」ようにしてもよい(請求項6)。
【0018】
また、請求項1〜6の任意の1に記載の固液分離装置は「無端ベルト群のベルト内周部にトレイを有する」ことができる(請求項7)。
「トレイ」は、ベルト内周部に、処理対象物搬送面に対して「上向きに対向」するように配設され、処理対象物搬送面から流下する水分(水分を主とする液状体)を受け、処理対象物搬送面側方(無端ベルト群の配列方向の配列端部側方)から無端ベルト群の下方へ導液する。
上述したように、処理対象物は汚泥状態で処理対象物搬送面上に供給され、無端ベルト群の回転により搬送される間に、水分を主とする液状体が無端ベルト間の細隙を通って流下し、固形分が処理対象物搬送面上に残されることにより固液分離されるが、その際に、細隙に詰まったり引っかかったりする塊や固形物が、隣接する無端ベルト間の上下方向に相対的な往復運動により、細隙部から除去されるので水分流下部の目詰まりは有効に回避される。
【0019】
しかし、このようにしても、固形分や塊が「プーリの下方を移動中の無端ベルトの内周面」に付着することがあり、無端ベルト内周面に付着した固形物等がさらにプーリに付着してプーリの径を増大させ、無端ベルト回転の負荷を増大させることが考えられる。
【0020】
請求項7記載の固液分離装置のように「無端ベルト群のベルト内周部に、処理対象物搬送面に対して上向きに対向するように配設され、処理対象物搬送面から流下する水分を受け、処理対象物搬送面側方から無端ベルト群の下方へ導液するトレイ」を設ければ、処理対象物搬送面から流下した水分が「プーリ下方を移動中の無端ベルト内周面」に掛かることがないので、上記の如き問題を有効に回避できる。
【0021】
この発明の固液分離システムは、固液分離装置と、処理対象物供給手段と、回収タンクと、制御手段とを有する(請求項8)。
「固液分離装置」は上記請求項1〜7の任意の1に記載の固液分離装置である。
「処理対象物供給手段」は、多量の水分を含んだ処理対象物を蓄え、汚泥状の処理対象物を固液分離装置に供給する手段である。
「回収タンク」は、固液分離装置により処理対象物から分離された(水分を主とする)液状体を回収して貯留するとともに、処理水を外部へ排出する。
「制御手段」は、少なくとも固液分離装置の動作を制御する。
【0022】
請求項8記載の固液分離システムは、回収タンクの底部に沈殿した「固形成分を含む分離液」を、処理対象物供給手段に再供給する再供給手段を有する構成とすることができる(請求項9)。また、請求項8または9記載の固液分離システムは、処理対象物供給手段が「固液分離装置への処理対象物の供給量を調整可能」である構成であることができ(請求項10)、この場合、固液分離装置として請求項6記載のものを用い、処理対象物供給手段が「処理対象物のオーバフロー量の調整により、処理対象物の固液分離装置への供給量を調整する機能」を有するものであることができる(請求項11)。
【0023】
なお、無端ベルトのベルト幅は数mm〜数10mm程度、ベルト厚みは5〜10mm程度、無端ベルト間の細隙の大きさは0.3mm〜数mm程度が実用的であり、処理対象物に応じて適宜に設定できる。無端ベルトの配列個数は、固液分離装置における処理対象物搬送面の幅と、個々の無端ベルトの幅および上記細隙幅とにより定まる。
【0024】
1例を挙げれば、処理対象物搬送面幅:1000mm、ベルト幅:9.5mm、細隙幅:0.5mmの場合で、無端ベルトの配列数は100個となる。
【発明の効果】
【0025】
上記の如く、この発明の固液分離装置によれば、「水分流下部」が無端ベルト間の細隙により形成されるので、濾布ベルトを用いる場合に比して水分の流下効率が良く、水分流下部に詰まったり引っかかったりする「固形物やフロック化された固形分の塊」は、隣接する無端ベルト相互の「相対的な上下運動」により細隙部から除去されるので目詰まりが生じ難い。
【0026】
従って、かかる固液分離装置を用いる固液分離システムによれば、効率よく目詰まりの生じ難い固液分離を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、この発明の固液分離装置の実施の1形態を要部のみ説明図的に示している。
図1において、符号P11、P12、P21、P22はプーリ、符号B1、B2は無端ベルトを示している。また、符号11、12は支軸、符号Mはモータ、符号13は加圧手段、符号14は掻取りブレード、符号15はシュータ、符号100は処理対象物をそれぞれ示している。なお、以下に説明するように、プーリP11とP21、プーリP12とP22との間には「スペーサ」が設けられるが、図が複雑になるので、図1においてはスペーサを図示していない。
【0028】
図2は、図1における無端ベルトB1、B2等の配列状態を説明図的に示す図であり、図1の状態を、図1の左方から見た状態として示している。
図2の左右方向は水平方向である。支軸11は水平方向に配置され、この支軸11にプーリP11、P21、・・・Pi1、Pj1、・・・が固定的に支持されている。図2に示すように、プーリの配列を右側から数えて「奇数番目のプーリ」をプーリPi1(i=1、3、5、・・)、「偶数番目のプーリ」をPj1(j=2、4、6、・・)とする。
【0029】
隣接するプーリ間にはスペーサS1、S2、・・Si、Sj、・・が設けられている。図2に示す如く、スペーサの配列を右側から数えて「奇数番目のスペーサ」をスペーサSi(i=1、3、5・・・)、「偶数番目のスペーサ」をスペーサSj(j=2、4、6・・・)とする。スペーサSi、Sjは隣接するプーリ間に配置され「隣接するプーリに巻き掛けられる無端ベルトの間隔」、即ち「水分流下部をなす細隙」を所定の間隔に保持する。
【0030】
図2には示されていないが、図3に即して後述するように、支軸12に支持されたプーリを上記プーリPi1、Pj1に対応させてプーリPi2、Pj2とする。支軸12に支持されたプーリPi2、Pj2の隣接するプーリ間には、それぞれスペーサSpi、Spj(iは奇数、Jは偶数)が設けられている。
【0031】
上記奇数番目のプーリPi1、Pi2に巻き掛けられたベルトをベルトBi(i=1、3、5、・・)とし、偶数番目のプーリPj1、Pj2に巻き掛けられたベルトをベルトBj(j=2、4、6、・・)とする。
【0032】
図1に例示するように、プーリP11、P12は支軸11、12に対して偏芯しており、プーリP21、P22も支軸11、12に対して偏芯している。
図2に示す如く、図の右側から数えて奇数番目のプーリPi1は全て「プーリP11と同じ」に偏芯しており、偶数番目のプーリPj1は全て「プーリP22と同じ」に偏芯している。プーリP11の偏芯と、プーリP21の偏芯とは「支軸11に対して同方向且つ反対向き」である。図2には示されていないが、支軸12に支持されたプーリPi2は全て「プーリPi1と同様」に偏芯しており、プーリP2jは全て「プーリPj1と同様」に偏芯している。
【0033】
図1は、奇数番目のプーリP11、P12(i=1)に巻き掛けられた奇数番目のベルトB1(i=1)と、偶数番目のプーリP21、P22(j=2)に巻き掛けられた偶数番目のベルトB2(j=2)とが上下方向に最も離れた状態、即ち、奇数番目のベルトBiの高さが最も高く、偶数番目のベルトBjの高さが最も低い状態を示している。
【0034】
図1においては、ベルトBiとBjとの間に「高さ方向の隙間」があるように描いてあるが、これは図を見やすくするためであり、実際には、ベルトBiとBjとの高さ方向の高低差は「ベルトの厚み以下」であり、ベルトBi、Bj間に「上下方向の隙間」が生じることはない。
【0035】
図3は「無端ベルトの配列の状況」を説明図的に示している。図の繁雑を避けるため、無端ベルトは隣接する2つの無端ベルトBi、Bjのみを「巻きかけ状態」で示し、他のベルトは「プーリに巻き付いた部分の断面」を示している。
図3の状態においては、無端ベルトBiとBjとが、ベルト搬送方向(図の上下方向)において「相互に最も大きくずれた状態」を示している。この状態においては、奇数番目のベルトBiのベルト上面と偶数番目のベルトBjのベルト上面とは同一の高さにある。なお、前述のように、支軸11に設けられたスペーサの個々に対応して支軸12に設けられたスペーサを、スペーサSi、Sjに対応させてスペーサSpi、Spjで示す。
【0036】
図2に戻ると、図2において符号C1は上ケース、符号C2は下ケースを示す。
上ケースC1を、図4を参照して説明する。
上ケースC1は、その上方から見た状態を示す図4(c)のように、2枚の側板C100、C101と、前板C102と後板C103とを「底のない箱状」に組み合わせて一体化してなる。図4において、上ケースC1を正面側から見た状態を示す(a)、ベルト搬送方向から見た状態を示す(b)、上面図(c)に示すように、側板C100、C101の下部は「折り曲げ部」をなし、この折り曲げ部の下部に4個の軸受C11、C12、C13、C14がボルトBTにより固定されている。4個の軸受C11〜C14の位置関係は図3に示す如くである。
【0037】
下ケースC2を、図5を参照して説明する。
下ケースC2は、これを上方から見ると、図5(b)に示すように、側板C200、C201、前板C202、C203と底板C204とを箱型に組み合わせて成り、側板C200、C201には軸受C21、C22、C23、C24が一体的に形成もしくは固設されている。底板C204は、長方形形状に開口している。図5(a)は側面図である。
【0038】
図2、図3に示すように、支軸11は上ケースC1の軸受C11、C13の軸穴を貫通し、さらに下ケースの軸受C21、C23を貫通し、下ケースC2に保持されており、モータMにより回転駆動されるようになっている。また、図3に示すように、支軸12は上ケースC1の軸受C12、C14の軸穴を貫通し、さらに下ケースC2の軸受C22、C24を貫通し、下ケースC2に保持され、回転自在である。
【0039】
図3に示すように、支軸11を貫通された軸受C11、C13の外側部はセットカラーCL1、CL3により固定され、支軸12を貫通された軸受C12、C14の外側部はセットカラーCL2、CL4により固定されている。
【0040】
図6を参照して、支軸11、12、プーリPi1、Pj1、Pi2、Pj2、スペーサSi、Sj、Spi、Spjを説明する。
支軸11、12は円柱状であり、図6(a)に断面形状を示すように、周面部に軸長手方向にわたるキー溝M1、M2が「軸心を挟んで反対側の位置」に形成されている。プーリPi1、Pi2、Pj1、Pj2は、図6(b)に示すように円形状で、その中心位置から偏芯量:δ(2〜5mm程度が好適である。)だけ偏芯させて、支軸11または12への嵌合穴Hが穿設されている。嵌合穴Hは支軸11、12の直径に等しい直径の円形状であって、その一部にキー溝M1もしくはM2に係合するキーH1が凸設されている。
【0041】
スペーサSi、Sj、Spi、Spjは、図6(d)に示すように円形状で、その中心部に支軸11または12に嵌合するように嵌合穴60(キー溝に係合する突起を有する。)を形成されている。スペーサSi、Sj、Spi、Spjの直径は、プーリPi1、Pj1、Pi2、Pj2の直径(80〜130mm程度が好適である。)と偏芯量:δと、無端ベルトBi、Bjの厚さとの和に2〜3mmを加えた大きさ(100〜150mm程度)が好ましく、厚みは0.3〜0.8mm程度が好適である。
【0042】
プーリPi1、Pj1、Pi2、Pj2は、図6(c)に示すように、支軸11または12に設けられる。プーリPi1、Pj1の支軸11への係合を例にとって説明すると、プーリPi1とプーリPj1は支軸11に対し「偏芯の向きが互いに逆向き(図6(c)において上下方向)」となるように嵌合される。図6(c)には図示されていないが、隣接するプーリPi1、Pj1の間にはスペーサSi、Sjが支軸11に嵌合配置される。
【0043】
上に説明した所から明らかなように、説明中の固液分離装置を上方から見ると、上ケースC1の上方が長方形形状に開口し、その下方に「一群の無端ベルトBi、Bjの配列」が、上ケースC1に対する「すのこ状の底部」をなすように設けられており、その下位に設けられた下ケースC2は、その下部が開放している。
【0044】
個々の無端ベルトBi、Bjのベルト上面は「処理対象物搬送面の一部」をなし、無端ベルト群のベルト上面は、個々の無端ベルトBi、Bjのベルト上面が集合して「処理対象物搬送面」を構成する。隣接する無端ベルト間の間隙はスペーサSi、Sj、Spi、Spjの厚さ(0.3〜0.8mm程度)に等しく、無端ベルトBi、Bjのベルト幅は5〜10mm程度が好適であり、厚さも8〜10mm程度が好適である。
【0045】
図1に戻ると、複数のベルトBi、Bjによる無端ベルト群の上部には、加圧手段13が設けられ、その左方に掻取りブレード14とシュータ15が設けられている。また、支軸11は駆動モータMにより回転駆動されるようになっている。
【0046】
図1は、無端ベルト群による処理対象物搬送面上に、水分含有率:99%以上の汚泥状態の処理対象物100が供給され、固液分離が行われつつある状態を示している。処理対象物100は「多量の水分を含んだ汚水をフロック化処理した汚泥状のもの」等であり、図1の上方から処理対象物搬送面上に供給される。
【0047】
駆動モータMにより支軸11を反時計回りに回転駆動すると、無端ベルトBi、Bjは反時計回りに回動しつつ、プーリPi1等の偏芯により上下方向に往復運動する。このとき配列方向に奇数番目の無端ベルトBiと偶数番目の無端ベルトBjは「回転に伴う上下運動の位相」が180度ずれており、従って、隣接する無端ベルト同士は「上下方向の所定の範囲(プーリPi1、Pj1の偏芯量:δの2倍の範囲)」で、相対的に往復平行変位しあう。
【0048】
処理対象物100に含まれる水分110は、「水分流下部をなす、隣接する無端ベルト間の隙間(スペーサSi、Sj、Spi、Spjの厚みによる0.3〜0.8mm程度の隙間)」を通って流下し、処理対象物搬送面上の処理対象物100から分離する。このようにして、処理対象物100は、無端ベルト群により搬送される間に、処理対象物100に含まれる水分が次第に減少し、脱水されて固形状になる。図1において、符号120は「固形状となった処理対象物」を示している。
【0049】
図1の実施の形態では、処理対象物100は搬送の途上において加圧手段13により加圧される。加圧手段13は圧板131とウエイトWTとを有し、ウエイトWTの加重を、厚板131を介して処理対象物100に印加するようになっている。厚板131は、長方形形状の板、例えばステンレス板を若干屈曲させてなり、処理対象物100を迎え入れる側が上方へ向かって傾斜している。このため、処理対象物100は搬送されるに従い、圧板131による押圧力を次第に強く受ける。
【0050】
圧板131による押圧力により処理対象物100は「さらに水分を絞られ」たのち、掻取りブレード14により無端ベルト群から分離され、シュータ15上を通って図示されない回収部へ回収される。
【0051】
図7は、無端ベルト群における「互いに隣接する無端ベルトBi、Bjの上下方向における相対的な往復運動」を説明するための図である。この図では、無端ベルトBjを固定して描き、無端ベルトBiの「無端ベルトBjに対する相対運動」を示している。
【0052】
支軸11の反時計回りの回転駆動に伴い、無端ベルトBiは、無端ベルトBjに相対的に回転運動する。図7(a)では、無端ベルトBiのベルト上面が無端ベルトBjのベルト上面より上位にあり、処理対象物120(図示の簡単のために固形化した状態を示している。)は主として無端ベルトBiのベルト面の回転により搬送される。
【0053】
図7(b)では無端ベルトBi、Bjはそのベルト上面が同じ高さにあり、(c)では無端ベルトBjのベルト面が無端ベルトBiのベルト上面より高く、(d)では無端ベルトBi、Bjはそのベルト上面が同じ高さにある。従って、図7(b)と(d)では、処理対象物120は無端ベルトBi、Bjのベルト上面により搬送され、図7(c)では主としてベルトBjのベルト上面により搬送される。
【0054】
処理対象物搬送面上に供給された処理対象物100の水分は、無端ベルト間の細隙部を通って流下するが、流下する部分には固形物やフロック化した塊も含まれている。流下する固形物(例えば、処理対象物が、養豚場からの汚水を含む汚泥である場合には餌くずや豚毛等)やフロック化した塊の一部は、無端ベルト間に引っかかったり付着したりするが、隣接する無端ベルトが「上下・前後方向に往復相対運動する」ので、細隙部や「付着した無端ベルト」から確実に除去され、細隙部の目詰まりを生じることがない。
【0055】
上に実施の形態を説明した固液分離装置は、多量の水分を含んだ処理対象物100から水分を分離する装置であって、2以上のプーリPi1、Pi2(Pj1、Pj2)に掛け回されてベルト上面が処理対象物搬送面の一部をなす細幅の無端ベルトBi、Bjを複数個、ベルト幅方向へ互いに細隙を隔して配列してなり、個々の無端ベルトのベルト上面の集合が処理対象物搬送面を形成するとともに、無端ベルト間の各細隙が水分を流下させるための水分流下部を構成する無端ベルト群と、この無端ベルト群における隣接する無端ベルト間の細隙を保つスペーサ群(Si、Sj、Spi、Spj)と、無端ベルト群の全ての無端ベルトを同一方向に回転駆動するとともに、隣接する無端ベルト同士が、上下方向の所定の範囲で、相対的に往復平行変位しあうように相対変位させる変位駆動手段とを有するものである(請求項1)。
【0056】
変位駆動手段は、偏芯したプーリPi1等、支軸11、12、駆動モータMにより構成されている。即ち、無端ベルト群の各無端ベルトBi、Bjは偏芯プーリPi1、Pi2、Pj1、Pj2に巻き掛けられ、偏芯プーリの回転に伴い、ベルト上面が「回転により移動しつつ、上下方向へ往復変位する」ように構成され、配列方向において隣接する無端ベルトの、上下方向の往復運動の位相が互いにずれるように「無端ベルト相互における偏芯プーリの偏芯相互の関係」が定められており、全ての無端ベルトBi、Bjの駆動プーリPi1、Pj1が共通の駆動軸11に固設されて同時に回転駆動される(請求項2)。
【0057】
そして、無端ベルト群のベルト配列方向における奇数番目の無端ベルトBiの上下方向における往復運動は同一位相で行われ、無端ベルト群のベルト配列方向における偶数番目の無端ベルトBjの上下方向における往復運動は、奇数番目の無端ベルトBiと「略180度ずれた同一位相」で行われる(請求項3)。さらに、無端ベルト群による処理対象物搬送面の上方から、処理対象物100を加圧する加圧手段13を有する(請求項5)。
【0058】
上記実施の形態に即して若干補足すると、無端ベルト群の各無端ベルトBi、Bjとこれらを巻きかけるプーリPi1等は「通常のベルトとプーリ」により構成することもできるが、無端ベルトやプーリが「処理対象物の水分により濡れた状態で駆動される」ことを考慮すると、無端ベルトとプーリとの間にスリップが生じないことが好ましく、このためには、少なくとも駆動側のプーリPi1、Pj1の外周に「駆動用の歯」を形成し、無端ベルトの内周に上記駆動用の歯と噛み合う溝を形成した「タイミングベルト」として個々の無端ベルトを構成するのがよい。
【0059】
個々の無端ベルトの外周面は「平坦な面」としてもよいが、図8に示す無端ベルトBのように、外周面がベルト回転方向(図の左右方向)に周期的な凹凸構造(図の例では、三角形状の凸部Btの配列により形成されている。)を有するようにすることにより、処理対象物に対する搬送性を向上させることができる(請求項4)。
【0060】
また、加圧手段13による加圧効果を「より効果的」に行うには、図9に示す例のように、無端ベルトBi等の内周側に、スライダ17を固定的に設け(下ケースC2の側板に固定すればよい。)、圧板131と共に無端ベルトBi等を挟むようにすることにより、圧板131の加圧力を有効に処理対象物100、120に作用させるのがよい。なお、加圧手段13の圧板131を、その左端部において軸支して上下方向に揺動可能とし、ウエイトWTを図の左右方向に位置調整可能として、圧板131による加圧力を調整するようにしてもよい。
【0061】
図10は、請求項7記載の固液分離装置の実施の1形態を説明するための図である。
図10(a)において、符号13は加圧手段、符号14は掻取りブレードを示し、符号Bは無端ベルト群を簡略化して示している。符号70はトレイを示す。
【0062】
トレイ70を、図11を参照して説明する。図11の(a)は、トレイ70の平面図、(b)は(a)におけるb−b断面図、(c)は(a)におけるc−c断面図である。図11(a)における左右方向が「処理対象物の搬送方向」に対応する。
【0063】
図11(a)に示されたように、トレイ70は、受け面71と、側斜面部72、73と、前斜面部74、後斜面部75と、取り付け部76a〜76dとを有し、この例では、1枚のステンレス板により形成されている。
【0064】
受け面71は、処理対象物搬送面に対して上向きに対向する部分であって、処理対象物搬送面から流下する水分を受ける部分である。前斜面部74および後斜面部75は、図11(b)に示すように、受け面71から斜め上方へ向かうように傾斜し、受け面71が受けた水分が受け面71の前後方向(処理対象物搬送方向)へ流れるのを防止する。
【0065】
また、側斜面部72、73は、図11(c)に示すように、受け面71から斜め下方に向かうように傾斜している。
【0066】
図10に戻ると、図10(b)は、トレイ70を下ケースC2に取り付けた状態を、処理対象物搬送方向(図面の手前側が前方である。)から見た状態を示している。トレイ70は、取り付け部76b、76d等により、下ケースC2の内壁部に凸設されているステ−CST1、CST2等に取り付けネジNb、Nd等により固定されて設けられる。
【0067】
図10(b)において符号BUは、無端ベルト群の「処理対象物搬送面」を構成する部分、符号BLは「プーリの下方を移動中の無端ベルト群」を示している。
【0068】
図10(b)に示すように、トレイ70の側斜面部72、73は、プーリの下方を移動中の無端ベルト群BLの側方において下方に傾斜している。
【0069】
従って、無端ベルト群の処理対象物搬送面をなす部分BU上を搬送される処理対象物から分離された水分は、トレイ70の受け面71上に落ちるが、前斜面部74、後斜面部75により搬送方向への流れを阻止され、側斜面部72、73から流れ落ちて下ケースC2内に落ちる。受け面71は幅方向(図10(b)における左右方向)において、処理対象物搬送面の幅全体をカバーし、プーリの下方を移動中の無端ベルト群BUの上を覆っているので、側斜面部72、73から流れ落ちる水分(固形物やフロック化した塊が含まれている。)は「プーリの下方を移動中の無端ベルトの内周面」に掛かることがない。
【0070】
従って、無端ベルト内周面に付着した固形物等がさらにプーリに付着してプーリの径を増大させ、無端ベルト回転の負荷を増大させる問題は有効に回避される。
【0071】
即ち、図10、11に即して実施の形態の特徴部分を説明した固液分離装置は、無端ベルト群Bのベルト内周部に、処理対象物搬送面に対して上向きに対向するように配設され、処理対象物搬送面から流下する水分を受け、処理対象物搬送面側方から無端ベルト群の下方へ導液するトレイ70を有する(請求項7)。
【0072】
図12は固液分離システムの実施の1形態を説明図的に示している。
この固液分離システムは、固液分離装置10と、処理対象物供給手段50と、回収タンク200と、図示されない制御手段と、ポンプ210を有する。
【0073】
固液分離装置10は上に実施の形態を説明したものであり、上ケース内に受け板150を有し、処理対象物供給手段50は、汚泥状の処理対象物100を受け板150の上方から固液分離装置10に供給する。
【0074】
処理対象物供給手段50は処理対象物となる汚水等を貯容するが、貯容された汚水等には、その種類により必要に応じて「高分子凝集剤」が添加され、所謂「フロック化処理」が行われる。上記汚水が、養豚場からの汚水で、これに含まれる固形成分が、餌の残骸や豚毛等である場合には、フロック化処理を行わなくても固液分離が可能な場合もある。
【0075】
この例において、処理対象物供給手段50は「流量調整可能な計量槽とフロック化処理を行うフロック化装置とを合わせたもの」である。
【0076】
処理対象物100は固液分離装置10に供給される段階に於いて「含水率99%」程度の「汚泥状態」である。固液分離装置10により処理対象物100から水分を分離された汚泥の含水率は、処理対象物100の状態や固液分離装置10の運転状態にもよるが、80〜85%程度とすることができる。
【0077】
固液分離装置10により処理対象物100から分離した水分を含む液状体110は、回収タンク200内に回収される。回収タンク200の内部はバッフル板231、232により仕切られており、液状態110はバッフル板231よりも右側の領域に回収される。回収タンク200の底部はバッフル板231の下部において通底している。
【0078】
回収タンク200内に回収された液状体110には「固形分」も含まれており、この固形分は回収タンク200の底部に沈殿物240として沈殿する。回収タンク200の底部に設けられたポンプ210は、沈殿物240を含む分離液を処理対象物供給手段50へ戻す。即ち、ポンプ210は、回収タンク200の底部に沈殿した固形成分を含む分離液を、処理対象物供給手段50に再供給する再供給手段を構成する。
【0079】
戻された分離液は、処理対象物供給手段50から再度、固液分離装置10に供給されて固液分離を行われる。再供給手段としてのポンプ210による「沈殿物240を含む分離液の処理対象物供給手段50への還流」は所定時間ごとに定期的に行われる。
【0080】
固液分離装置10の動作、処理対象物供給手段50による処理対象物100の供給、ポンプ210による「沈殿物240を含む分離液の処理対象物供給手段50への還流」等は図示されない制御手段(マイクロコンピュータ等)により制御される。
【0081】
回収タンク200内に回収された液状体のうち「バッフル板232の左側の領域における上澄み液」が処理水として、オーバフローにより排出部220から回収タンク外へ排出される。
【0082】
即ち、図12に実施の形態を示した固液分離システムは、固液分離装置10と、多量の水分を含んだ処理対象物を蓄え、処理対象物を固液分離装置に供給する処理対象物供給手段50と、固液分離装置10により処理対象物100から分離された液状体を回収して貯留するとともに、処理水を外部へ排出する回収タンク200と、少なくとも固液分離装置の動作を制御する「図示されない制御手段」とを有し、固液分離装置10は、請求項1記載の固液分離装置である。
【0083】
また、回収タンク200の底部に沈殿した固形成分(沈殿物240)を含む分離液を、処理対象物供給手段50に再供給する再供給手段210を有する(請求項10)。
【0084】
勿論、処理対象物供給手段50が、固液分離装置10への処理対象物の供給量を調整可能であるようにすることができる(請求項11)。処理対象物供給手段50から固液分離装置10への処理対象物の供給量を調整する方法としては種々の方法が可能である。1例として、処理対象物を固液分離装置10に供給する供給管に調整弁を設け、この調整弁により処理対象物の流量を調整する方法を挙げることができる。
【0085】
図13は、請求項11記載の固液分離システムの実施の別形態を特徴部分のみ示している。符号10Aは固液分離装置を示している。固液分離装置10A下部の回収タンク部分の構成は図10の実施の形態におけるのと同様のものを用いることができる。
【0086】
この実施の形態においては、個々の無端ベルトBi等により構成される無端ベルト群による処理対象物搬送面が、下流側(図の左方)から上流側へ向かって傾下しており(請求項6)、処理対象物供給手段は「符号50Aにより示す処理対象物供給部と、固液分離装置10A内に形成された貯留部10Bと導液管10Cと還流部10Dと液面調整手段10E」を有している。処理対象物供給部50Aは「流量調整可能な計量槽とフロック化処理を行うフロック化装置とを合わせたもの」とすることができる。
【0087】
処理対象物中に含まれる「ゴミ」の量が極端に多い場合や、汚泥状の処理対象物100が粘性を持ち、離水性が低い場合、無端ベルト群の「処理対象物搬送面」上に多量の固形物が堆積して、処理対象物搬送面からの水分の流下が妨げられる場合がある。このような場合、図1の実施の形態のように、処理対象物搬送面が水平に近いと、処理対象物から水分が十分に分離されず「含水率の高いままの処理対象物が装置外へ排出される」ことがあり得る。
【0088】
図13に実施の形態を示す固形分離装置システムでは、このような不具合が以下の如く解消される。即ち、処理対象物100は、処理対象物供給部50Aから、貯留部10Bに供給され、貯留部10Bからオーバフローした部分が「傾斜した処理対象物搬送面」上に供給される。
【0089】
貯留部10Bに貯留された処理対象物100は、その一部がオーバフローにより導液管10Cに流れ込む。導液管10Cの端部は還流部10Dに連結している。還流部10Dは導液管10Cにより導液される処理対象物100を、処理対象物供給部50Aに還流させるようになっている。
【0090】
液面調整手段10Eはパイプ状であって、導液管10Cに近接して導液管10Cを囲繞し、導液管10Cに対して上下方向へ可動であり、図示されない調整機構により上下方向の位置を調整できるようになっている。液面調整手段10Eの上部開口は導液管10Cの上部開口よりも上位に位置するようになっており、従って、オーバフローにより導液管10Cに流れ込む流量は、液面調整手段10Eの上部開口の高さにより調整され、この調整により上記「傾斜した処理対象物搬送面」上に供給された処理対象物100の液面高さが調整される。この液面高さの調整により「処理対象物搬送面、即ち、固液分離装置10Aへの処理対象物の供給量」が調整される。このように供給量を調整することにより「処理対象物から水分が十分に分離されず、含水率の高いままの処理対象物が装置外へ排出される」事態を有効に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】固液分離装置の実施の1形態を説明するための図である。
【図2】図1の実施の形態におけるプーリとスペーサの配列を説明する図である。
【図3】図1の実施の形態における無端ベルトの配列を説明する図である。
【図4】図1の実施の形態における上ケースを説明する図である。
【図5】図1の実施の形態における下ケースを説明する図である。
【図6】図1の実施の形態におけるプーリ、支軸、スペーサを説明する図である。
【図7】図1の実施の形態における隣接する無端ベルト間の相対的な往復運動を説明する図である。
【図8】無端ベルトの外周面の形状の1例を説明するための図である。
【図9】固液分離装置の実施の別形態を特徴部分のみ示す図である。
【図10】請求項7記載の発明の実施の1形態の特徴部分を示す図である。
【図11】図10に示すトレイの形状を説明するための図である。
【図12】固液分離システムの実施の1形態を説明する図である。
【図13】固液分離システムの実施の別形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0092】
B1 無端ベルト
P11、P12 プーリ
B2 無端ベルト
P21、P22 プーリ
100 処理対象物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多量の水分を含んだ処理対象物から水分を分離する装置であって、
2以上のプーリに掛け回されてベルト上面が処理対象物搬送面の一部をなす細幅の無端ベルトを複数個、ベルト幅方向へ互いに細隙を隔して配列してなり、個々の無端ベルトのベルト上面の集合が処理対象物搬送面を形成するとともに、無端ベルト間の各細隙が水分を流下させるための水分流下部を構成する無端ベルト群と、
この無端ベルト群における隣接する無端ベルト間の細隙を保つスペーサ群と、
上記無端ベルト群の全ての無端ベルトを同一方向に回転駆動するとともに、隣接する無端ベルト同士が、上下方向の所定の範囲で、相対的に往復平行変位しあうように相対変位させる変位駆動手段とを有することを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
請求項1記載の固液分離装置において、
無端ベルト群の各無端ベルトは偏芯プーリに巻き掛けられ、上記偏芯プーリの回転に伴い、ベルト上面が回転しつつ上下方向へ往復変位するように構成され、
配列方向において隣接する無端ベルトの、上下方向の往復運動の位相が互いにずれるように無端ベルト相互における偏芯プーリの偏芯相互の関係が定められており、
全ての無端ベルトの駆動プーリが、共通の駆動軸に固設されて同時に回転駆動されることを特徴とする固液分離装置。
【請求項3】
請求項2記載の固液分離装置において、
無端ベルト群のベルト配列方向における奇数番目の無端ベルトの、上下方向における往復運動は同一位相で行われ、
上記無端ベルト群のベルト配列方向における偶数番目の無端ベルトの、上下方向における往復運動は、上記奇数番目の無端ベルトと略180度ずれた同一位相で行われることを特徴とする固液分離装置。
【請求項4】
請求項1または2または3記載の固液分離装置において、
無端ベルトの外周面がベルト回転方向に周期的な凹凸構造を有することを特徴とする固液分離装置。
【請求項5】
請求項1〜4の任意の1に記載の固液分離装置において、
無端ベルト群による処理対象物搬送面の上方から、処理対象物を加圧する加圧手段を有することを特徴とする固液分離装置。
【請求項6】
請求項1〜5の任意の1に記載の固液分離装置において、
無端ベルト群による処理対象物搬送面が、下流側から上流側へ向かって傾下していることを特徴とする固液分離装置。
【請求項7】
請求項1〜6の任意の1に記載の固液分離装置において、
無端ベルト群のベルト内周部に、処理対象物搬送面に対して上向きに対向するように配設され、処理対象物搬送面から流下する水分を受け、処理対象物搬送面側方から上記無端ベルト群の下方へ導液するトレイを有することを特徴とする固液分離装置。
【請求項8】
固液分離装置と、
多量の水分を含んだ処理対象物を蓄え、上記処理対象物を固液分離装置に供給する処理対象物供給手段と、
上記固液分離装置により処理対象物から分離された液状体を回収して貯留するとともに、処理水を外部へ排出する回収タンクと、
少なくとも上記固液分離装置の動作を制御する制御手段とを有し、
上記固液分離装置が、請求項1〜7の任意の1に記載の固液分離装置であることを特徴とする固液分離システム。
【請求項9】
請求項8記載の固液分離システムにおいて、
回収タンクの底部に沈殿した固形成分を含む分離液を、処理対象物供給手段に再供給する再供給手段を有することを特徴とする固液分離システム。
【請求項10】
請求項8または9記載の固液分離システムにおいて、
処理対象物供給手段が、固液分離装置への処理対象物の供給量を調整可能であることを特徴とする固液分離システム。
【請求項11】
請求項10記載の固液分離システムにおいて、
固液分離装置が請求項6記載のものであり、
処理対象物供給手段が、処理対象物のオーバフロー量の調整により、処理対象物の固液分離装置への供給量を調整する機能を有することを特徴とする固液分離システム。
【請求項1】
多量の水分を含んだ処理対象物から水分を分離する装置であって、
2以上のプーリに掛け回されてベルト上面が処理対象物搬送面の一部をなす細幅の無端ベルトを複数個、ベルト幅方向へ互いに細隙を隔して配列してなり、個々の無端ベルトのベルト上面の集合が処理対象物搬送面を形成するとともに、無端ベルト間の各細隙が水分を流下させるための水分流下部を構成する無端ベルト群と、
この無端ベルト群における隣接する無端ベルト間の細隙を保つスペーサ群と、
上記無端ベルト群の全ての無端ベルトを同一方向に回転駆動するとともに、隣接する無端ベルト同士が、上下方向の所定の範囲で、相対的に往復平行変位しあうように相対変位させる変位駆動手段とを有することを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
請求項1記載の固液分離装置において、
無端ベルト群の各無端ベルトは偏芯プーリに巻き掛けられ、上記偏芯プーリの回転に伴い、ベルト上面が回転しつつ上下方向へ往復変位するように構成され、
配列方向において隣接する無端ベルトの、上下方向の往復運動の位相が互いにずれるように無端ベルト相互における偏芯プーリの偏芯相互の関係が定められており、
全ての無端ベルトの駆動プーリが、共通の駆動軸に固設されて同時に回転駆動されることを特徴とする固液分離装置。
【請求項3】
請求項2記載の固液分離装置において、
無端ベルト群のベルト配列方向における奇数番目の無端ベルトの、上下方向における往復運動は同一位相で行われ、
上記無端ベルト群のベルト配列方向における偶数番目の無端ベルトの、上下方向における往復運動は、上記奇数番目の無端ベルトと略180度ずれた同一位相で行われることを特徴とする固液分離装置。
【請求項4】
請求項1または2または3記載の固液分離装置において、
無端ベルトの外周面がベルト回転方向に周期的な凹凸構造を有することを特徴とする固液分離装置。
【請求項5】
請求項1〜4の任意の1に記載の固液分離装置において、
無端ベルト群による処理対象物搬送面の上方から、処理対象物を加圧する加圧手段を有することを特徴とする固液分離装置。
【請求項6】
請求項1〜5の任意の1に記載の固液分離装置において、
無端ベルト群による処理対象物搬送面が、下流側から上流側へ向かって傾下していることを特徴とする固液分離装置。
【請求項7】
請求項1〜6の任意の1に記載の固液分離装置において、
無端ベルト群のベルト内周部に、処理対象物搬送面に対して上向きに対向するように配設され、処理対象物搬送面から流下する水分を受け、処理対象物搬送面側方から上記無端ベルト群の下方へ導液するトレイを有することを特徴とする固液分離装置。
【請求項8】
固液分離装置と、
多量の水分を含んだ処理対象物を蓄え、上記処理対象物を固液分離装置に供給する処理対象物供給手段と、
上記固液分離装置により処理対象物から分離された液状体を回収して貯留するとともに、処理水を外部へ排出する回収タンクと、
少なくとも上記固液分離装置の動作を制御する制御手段とを有し、
上記固液分離装置が、請求項1〜7の任意の1に記載の固液分離装置であることを特徴とする固液分離システム。
【請求項9】
請求項8記載の固液分離システムにおいて、
回収タンクの底部に沈殿した固形成分を含む分離液を、処理対象物供給手段に再供給する再供給手段を有することを特徴とする固液分離システム。
【請求項10】
請求項8または9記載の固液分離システムにおいて、
処理対象物供給手段が、固液分離装置への処理対象物の供給量を調整可能であることを特徴とする固液分離システム。
【請求項11】
請求項10記載の固液分離システムにおいて、
固液分離装置が請求項6記載のものであり、
処理対象物供給手段が、処理対象物のオーバフロー量の調整により、処理対象物の固液分離装置への供給量を調整する機能を有することを特徴とする固液分離システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−346620(P2006−346620A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177881(P2005−177881)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(502141393)ジャステック株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(502141393)ジャステック株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
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